特許第5970352号(P5970352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5970352
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】スナップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A44B 17/00 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   A44B17/00
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-256328(P2012-256328)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2013-128766(P2013-128766A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-258029(P2011-258029)
(32)【優先日】2011年11月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500534131
【氏名又は名称】株式会社日本シールボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】森 遠
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−152809(JP,A)
【文献】 米国特許第03466714(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の生地に合成樹脂製雄部材を一体成形により固定し、他方の生地に合成樹脂製雌部材を一体成形により固定し、前記雄部材を前記雌部材に押し込んで係合させるスナップの製造方法であって、
前記雄部材及び前記雌部材の非係合面のリング状突起の内側の生地露出部のいずれかの部分に位置するゲートから、生地を挟んだ金型内に熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーを射出成形することにより、
前記雄部材と前記雌部材の非係合面はともにリング状突起を有し、前記リング状突起の内側は前記生地が露出しており、
係合面における前記雌部材は底面が前記生地を覆い、周囲がリング状突起で先端が内側に向かって突出し底面との間で凹部を形成し、前記雄部材は底面が前記生地を覆い、周囲がリング状突起で先端が外側に向かって突出して凸部を形成し、
前記雄部材を前記雌部材に押し込むと前記雄部材の凸部が前記雌部材の凹部に係合するとともに、係合面は前記雄部材及び前記雌部材を構成する樹脂で形成されるスナップを得ることを特徴とするスナップの製造方法
【請求項2】
前記雄部材及び前記雌部材と一体成形されている生地部分は略直線状態であり、周囲を含めてシワの発生がない請求項1に記載のスナップの製造方法
【請求項3】
前記雄部材及び前記雌部材は熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーで成形されている請求項1又は2に記載のスナップの製造方法
【請求項4】
前記雄部材及び前記雌部材の係合状態において、雌雄部材全体の厚みは4mm以下、最大直径は10mm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のスナップの製造方法
【請求項5】
前記ゲートの位置は、前記雄部材及び前記雌部材の非係合面のリング状突起の内側の生地露出部の中央である請求項1〜4のいずれか1項に記載のスナップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣類、鞄、袋物、履物などの係合に使用されるスナップ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類の掛け合わせ部、鞄、袋物、履物などの開閉部の係合にはスナップ、ボタン、ファスナー、面ファスナー、フックなど様々な手段が使用されている。スナップは長尺のテープ生地に所定の間隔で列状に配列され、上品な係合手段して従来から知られている。
【0003】
従来の提案として特許文献1にはスナップの雌雄部材とも表面に生地を露出させることが提案されている。特許文献2にはスナップの雌雄部材とも係合部内面の生地を露出させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3604983号公報
【特許文献2】特開平10−033211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の提案は雌雄部材の係合面が生地となっており、生地が傷むという問題があった。また、雌雄いずれか又は双方の部材内の生地を変形させて成形することから、生地にシワが入り易いという問題もあった。
【0006】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、雌雄部材の係合面を樹脂とすることにより生地の傷みの発生を防止し、かつ雌雄双方の部材内の生地にシワの発生がないスナップ製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスナップの製造方法は、一方の生地に合成樹脂製雄部材を一体成形により固定し、他方の生地に合成樹脂製雌部材を一体成形により固定し、前記雄部材を前記雌部材に押し込んで係合させるスナップの製造方法であって、前記雄部材及び前記雌部材の非係合面のリング状突起の内側の生地露出部のいずれかの部分に位置するゲートから、生地を挟んだ金型内に熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーを射出成形することにより、前記雄部材と前記雌部材の非係合面はともにリング状突起を有し、前記リング状突起の内側は前記生地が露出しており、係合面における前記雌部材は底面が前記生地を覆い、周囲がリング状突起で先端が内側に向かって突出し底面との間で凹部を形成し、前記雄部材は底面が前記生地を覆い、周囲がリング状突起で先端が外側に向かって突出して凸部を形成し、前記雄部材を前記雌部材に押し込むと前記雄部材の凸部が前記雌部材の凹部に係合するとともに、係合面は前記雄部材及び前記雌部材を構成する樹脂で形成されるスナップを得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスナップは、雌雄部材の係合面をそれぞれの部材を構成する樹脂とすることにより、係合面の生地の傷みを防止できる。また、雌雄部材の係合面と反対面のリング状突起の内側中央部は生地を露出させることにより、雌雄双方部材の生地にシワの発生がないスナップとすることができる。加えて、雌雄部材の係合面側は樹脂で生地を覆っているため、強度の高いスナップとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の一実施例におけるスナップの係合時の断面図である。
図2図2は本発明の一実施例におけるスナップの雌部材の平面図である。
図3図3は本発明の一実施例におけるスナップの雄部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、一方の生地に合成樹脂製雄部材を一体成形により固定し、他方の生地に合成樹脂製雌部材を一体成形により固定し、雄部材を雌部材に押し込んで係合させるスナップである。係合面と反対の面では雄部材と雌部材はともにリング状突起を有し、リング状突起の内側中央部では生地が露出し、両部材の係合面は樹脂で生地を覆っている。これにより、双方の生地を略直線状態にでき、周囲を含めてシワの発生を防止できる。
【0012】
雌部材の係合面の周囲はリング状突起が形成され、先端が内側に向かって突出して底面との間で凹部を形成している。また雄部材の係合面は周囲がリング状突起で先端が外側に向かって突出して凸部を形成し、雄部材を雌部材に押し込むと雄部材の凸部が雌部材の凹部に係合する。これにより、強固な係合ができる。
【0013】
雌雄部材の係合面は雄部材及び雌部材を構成する樹脂が存在する。これにより、係合面の生地の傷みを防止できる。
【0014】
雄部材及び雌部材は熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーで成形されていることが好ましい。熱可塑性樹脂としては例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、塩化ビニル(PVC)樹脂、メタクリル(PMMA)樹脂、ポリエステル(PET,PBT)樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、エチレン−ビニルアルコール(E/VAL)樹脂、アイオノマー、ポリアミド(ナイロン)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等を挙げることができる。熱可塑性エラストマーとしては例えばスチレン系(SBC)、オレフィン系(TPO)、塩ビ系(TPVC)、ウレタン系(TPU)、エステル系(TPEE)、ポリアミド系(TPAE)、フッ素系、塩素化ポリエチレン(CPE)等を挙げることができる。
【0015】
雄部材及び雌部材の係合状態において、雌雄部材全体の好ましい厚みは4mm以下、さらに好ましくは3.2mm以下である。好ましい最大直径は10mm以下でありさらに好ましくは9mm以下である。コンパクトな形状とするためである。
【0016】
本発明のスナップの製造方法は、雄部材及び雌部材は生地露出面のいずれかの部分、好ましくは略中央部から射出成形により成形する。この位置から射出成形すると最も効率よく樹脂が回り込み、生地を通過して雌雄部材の係合面と反対の面のリング状突起まで溶融樹脂が行き渡る。
【0017】
以下図面を用いて説明する。以下の図面において同一符号は同一部材又は部品を示す。図1は本発明の一実施例におけるスナップの係合時の断面図である。生地1には雌部材3が、生地2には雄部材10がそれぞれ射出成形により一体成形されている。雌部材3は係合面と反対の面にリング状突起4を有し、リング状突起4の内側中央は生地露出部5である。雌部材3の係合面では底面が生地1を覆い、周囲はリング状係合突起6で先端7が内側に向かって突出し底面との間で凹部8を形成している。
【0018】
雄部材10は係合面と反対の面にリング状突起11を有し、リング状突起11の内側中央は生地露出部12である。雄部材10の係合面では底面が生地2を覆い、周囲がリング状係合突起で先端が外側に向かって突出して凸部14を形成している。
【0019】
雄部材10を雌部材3に押し込むと、雄部材10の凸部14が雌部材3の凹部8に係合する。また、雄部材10と雌部材3の係合面は雄部材及び雌部材を構成する樹脂である。9は雌部材の係合面、13は雄部材の係合面である。
【0020】
図2は本発明の一実施例におけるスナップの雌部材3の係合面と反対から見た平面図である。生地1にリング状突起4が一体成形され、リング状突起4の内側中央は生地露出部5である。この生地露出部5の略中央部のゲート位置15から射出成形により生地1を挟んだ金型(図示省略)内に熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーを射出することにより成形する。
【0021】
図3は本発明の一実施例におけるスナップの雄部材の係合面と反対から見た平面図である。生地2にリング状突起11が一体成形され、リング状突起11の内側中央は生地露出部12である。この生地露出部12の略中央部のゲート位置16から射出成形により生地2を挟んだ金型(図示省略)内に熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーを射出することにより成形する。なお、図1〜3において生地1,2の厚みは任意でよく、好ましくは0.1〜1.0mm,さらに好ましくは0.2〜0.8mmである。また、生地1,2の種類も一般的なテープ生地を使用でき、例えば織物、編み物、不織布などを使用できる。
【実施例】
【0022】
以下実施例を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
樹脂としてポリアセタール(POM)樹脂を使用し、図1〜3に示すスナップを射出成形した。寸法は、雄部材は外形直径6.7mm、厚み1.5mm、雄部材と一体成形するテープ生地の厚みは0.5mmとした。雌部材は外形直径8.7mm、厚み1.95mm、雄部材と一体成形するテープ生地の厚みは0.5mmとした。スナップ(雌雄部材)の係合状態における全体の厚みは3.1mm、最大直径は8.7mmとした。スナップはテープ生地に80mm間隔に7個形成した。雌雄双方部材の生地は略直線状態で成形でき、周囲を含めてシワは発生しなかった。テープ生地はシャツ地に縫製し、着用試験をした。この結果、長期間使用しても係合面の生地の傷みを防止でき、スナップの強度は高く、着脱も容易で使い勝手は良かった。
【0024】
(実施例2)
樹脂としてポリアセタール(POM)樹脂を使用し、図1〜3に示すスナップを射出成形した。寸法は、雄部材は外形直径6.7mm、厚み1.5mm、雄部材と一体成形するテープ生地の厚みは0.3mmとした。雌部材は外形直径8.7mm、厚み1.95mm、雄部材と一体成形するテープ生地の厚みは0.3mmとした。スナップ(雌雄部材)の係合状態における全体の厚みは2.7mm、最大直径は8.7mmとした。スナップはテープ生地に80mm間隔に7個形成した。雌雄双方部材の生地は略直線状態で成形でき、周囲を含めてシワは発生しなかった。テープ生地はシャツ地に縫製し、着用試験をした。この結果、長期間使用しても係合面の生地の傷みを防止でき、スナップの強度は高く、着脱も容易で使い勝手は良かった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のスナップは、シャツ、カーデガン、ジャケット、ジャンパー等の下着、中着、上着を含む衣類の掛け合わせ部、袖部、ポケット部、ズボン下部の折り返し部、ベルトのストッパー、鞄、袋物、履物などの開閉部などの係合に広く適用できる。
【符号の説明】
【0026】
1,2 生地
3 雌部材
4,11 リング状突起
5,12 生地露出部
6 リング状突起
7 リング状突起の先端部
8 リング状突起の凹部
9 雌部材の係合面
10 雄部材
13 雄部材の係合面
14 雄部材の凸部
15,16 ゲート位置
図1
図2
図3