特許第5970384号(P5970384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5970384
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】管楽器の清掃工具
(51)【国際特許分類】
   G10D 9/00 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   G10D9/00 140
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-12277(P2013-12277)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-142558(P2014-142558A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】513020445
【氏名又は名称】長 良久
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】長 良久
【審査官】 千本 潤介
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3158457(JP,U)
【文献】 米国特許第6005179(US,A)
【文献】 センニン,頭部管のお掃除[楽器],フルートと音楽の日々,日本,2007年 2月23日,URL,http://music-1000.blog.so-net.ne.jp/2007-02-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管楽器の頭部管の内部を清掃する長尺の掃除棒の先端部分に取付けられる、可撓性を有する掃除棒取付け部と、
前記掃除棒取付け部よりも先端側に設けられ、前記頭部管の内部に挿入した際に前記頭部管の内部に配置された反射板と清掃布を介して当接する、先端の輪郭が円状であり、かつ可撓性を有する当接部と、
前記掃除棒取付け部と前記当接部との間に設けられ、前記反射板との当接時に前記当接部を支持し、前記当接部よりも高い剛性を有する支持部と、
を備える管楽器の清掃工具。
【請求項2】
前記支持部は、前記掃除棒の挿入方向における挿入位置を規制する挿入位置規制部を有することを特徴とする請求項1に記載の管楽器の清掃工具。
【請求項3】
前記支持部は、径方向における外側面に当接部がさらに伸延して設けられることによって少なくとも2層構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の管楽器の清掃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルート等の管楽器の頭部管を清掃する管楽器の清掃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
フルートやアルトフルート、バスフルート、及びピッコロ等の管楽器においては、演奏者の呼気に水分が含まれることによって、楽器の発音の際にフルートを構成する金属管内面に水分が付着する。このような水分は金属管の腐食防止や衛生の観点等から取り除く必要があり、従来では非特許文献1のように木製等の掃除棒の先端付近に設けられた穴にガーゼや布を通して、先端部分にガーゼ等を被せる。そして、掃除棒の側面にガーゼ等を巻き付けた後、フルートを構成する頭部管等の内部に挿入して清掃を行っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Shimokura Musical Instrument Co.,Ltd、カテゴリ:管楽器お手入れ方法−イベント情報、管楽器お手入れ方法〜フルート、[online]、株式会社 下倉楽器、インターネット<URL:http://blog.shimokura−webshop.com/?cat=35>.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フルートを構成する足部管、主管、頭部管の中でも頭部管にはヘッドキャップ、コルク、及び反射板が挿入されて取付けられている。反射板の位置は調律に影響を及ぼすため、ユーザーは反射板の位置を変えないように、通常反射板等を頭部管に挿入した状態で頭部管内部の清掃を行っている。非特許文献1のような従来の掃除棒は、頭部管の内側面の汚れを取り除くことはできても、掃除棒の先端形状は頭部管の内部形状と一致せず尖っていて固く、この部分に単にガーゼが被せられて巻き付けられるのみである。
【0005】
そのため、反射板の縁部まできれいに清掃するために掃除棒の先端部分を頭部管内部の反射板に当てて動かすと、突き当てた際の衝撃によっては反射板の位置が変わってしまったり、反射板を傷つけたりしてしまう、といった問題がある。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決するために発明されたものであり、反射板の位置を変えたり、反射板を傷つけたりすることなく反射板の縁部まできれいに清掃が可能な管楽器の清掃工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る管楽器の清掃工具は、管楽器の頭部管の内部を清掃する長尺の掃除棒の先端部分に取付けられる、可撓性を有する掃除棒取付け部と、掃除棒取付け部より先端側に設けられ、頭部管の内部に挿入した際に頭部管の内部に配置された反射板と清掃布を介して当接する、先端の輪郭が円状であり、かつ可撓性を有する当接部と、掃除棒取付け部と当接部との間に設けられ、反射板と当接した際に当接部を支持し、当接部よりも高い剛性を有する支持部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る管楽器の清掃工具は、先端部分が円状の輪郭を有するため、掃除棒取付け部に掃除棒を取付け、当接部にガーゼを被せて巻き付けると、掃除棒の先端部分には円状の平面と外周縁部がはっきりと形成される。この状態で掃除棒を頭部管内部に挿入すると、当接部より手元側には支持部が設けられているため、当接の際に抗力を発揮して頭部管の内部に配置された反射板の縁部にまで清掃工具の平面をしっかりと当接させることができる。また、反射板との当接時に当接部は可撓性を有するため、反射板に当接した際にも衝撃により反射板の位置を変えたり、反射板を傷つけたりするといったことを防止し、反射板の縁部の汚れまできれいに清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る管楽器の清掃工具を示す斜視図である。
図2】同管楽器の清掃工具を示す平面図である。
図3図2の3−3線に沿う断面図である。
図4】同管楽器の清掃工具を取付ける掃除棒を示す正面図である。
図5】同管楽器の清掃工具を取付けた掃除棒の先端部分を示す拡大図である。
図6】同管楽器の清掃工具を取付けた掃除棒の穴部にガーゼを通した状態を示す説明図である。
図7】同管楽器の清掃工具を掃除棒に取付け、ガーゼを巻き付けた際の掃除棒の先端部分を示す斜視図である。
図8】同管楽器の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る管楽器の清掃工具を示す斜視図、図2は同管楽器の清掃工具を示す平面図であり、図3図2の3−3線に沿う断面図、図4は同管楽器の清掃工具を取付ける掃除棒を示す正面図である。また、図5は同管楽器の清掃工具を取付けた掃除棒の先端部分を示す拡大図、図6は同管楽器の清掃工具を取付けた掃除棒の穴部にガーゼを通した状態を示す説明図、図7は同管楽器の清掃工具を掃除棒に取付け、ガーゼを巻き付けた際の掃除棒の先端部分を示す斜視図である。
【0012】
図1図4を参照して、本実施形態に係る管楽器の清掃工具100は、長尺の掃除棒300の先端部分に取付けられる略円柱状部材である。清掃工具100は、管楽器の頭部管内部を清掃する掃除棒300の先端部分に取付けられる、可撓性の部材からなる掃除棒取付け部10を有する。
【0013】
また、清掃工具100は、掃除棒取付け部10より先端側に設けられ、頭部管内部に配置された反射板とガーゼ200を介して当接する、先端の輪郭が円状であり、かつ可撓性の部材からなる当接部30を有する。さらに、清掃工具100は、掃除棒取付け部10と当接部30との間に設けられ、頭部管の内部に挿入した際に当接部30を支持し、当接部30よりも高い剛性を有する支持部20をも有している。
【0014】
本実施形態において清掃工具100は内側手元部材40と、内側先端部材50と、外側部材60と、から構成している。清掃工具100における掃除棒取付け部10は内側手元部材40及び外側部材60の手元部分に相当し、支持部20は内側先端部材50及び外側部材60の挿入方向における中央部分に相当し、当接部30は外側部材60の先端部分に相当する。以下、詳述する。
【0015】
内側手元部材40は、シリコン等の弾性部材から形成される透明な中空の円筒状部材であり、清掃工具100を掃除棒300に取付けて固定するために設けられる。内側手元部材40が弾性部材で形成されることによって、掃除棒300の取付け時に内側手元部材40は柔軟に変形し、弾性部材の復元力と表面の摩擦により掃除棒300にしっかりと固定される。内側手元部材40は本実施形態において軸方向に貫通して形成されている。
【0016】
内側先端部材50は、プラスチック等の比較的硬度の高い材料から形成され、当接部30が反射板と当接した際に当接部30を支持する。内側先端部材50が外側部材60及び内側手元部材40より剛性の高い材料から形成されることにより、清掃工具100を頭部管内部の反射板に当接させた際に清掃工具100が挿入方向に抗力を発揮して反射板にしっかりと当接し、ガーゼ200によって汚れをしっかりと取り除くことができる。
【0017】
また、本実施形態において内側先端部材50は内側手元部材40の内径と同じ内径で中空に形成している。しかし、内側先端部材50は中実に形成して、掃除棒300を清掃工具100に取付ける際のストッパー機能をさらに付加してもよい。内側手元部材40と掃除棒300との摩擦により掃除棒300の挿入位置は適切に規制できるが、内側先端部材50を中実に形成することによって、掃除棒300の過剰な挿入を確実に防止し、取付け作業をさらに簡便にすることができる。
【0018】
外側部材60は、内側手元部材40と同様にシリコン等から形成され、頭部管内部の反射板と当接する部材である。外側部材60は、本実施形態において、先端部分だけでなく手元部分にまで伸延して、清掃工具100の外周部分を覆う透明な中空の円筒状部材で形成されている。
【0019】
このように外側部材60は、本実施形態において、清掃工具100における先端部分だけでなく内側先端部材50の外側にも配置され、支持部20に相当する部分が径方向に2層構造を有するように構成している。そのため、内側先端部材50の外側面と外側部材60の内側面にせん断力が作用し、これにより当接部30に相当する外側部材60の先端部において反射板に対する抗力が作用する。このように内側先端部材50と外側部材60によって支持部が2層構造を有するように構成することで、当接部30を反射板にしっかりと当接させることができ、反射板をきれいに清掃することができる。
【0020】
また、外側部材60は、本実施形態において、内側手元部材40及び内側先端部材50を取付けられるように中空に形成されている。このような構成において頭部管内部の反射板との当接時に内側先端部材50が外側部材60よりも先端側に突出しないように、内側先端部材50は外側部材60の先端から所定距離手前側に配置されている。
【0021】
内側手元部材40及び内側先端部材50は外側部材60と嵌合によって一体に構成している。そのため、内側先端部材50と外側部材60との段差h1を使用者が微調整することができる。
【0022】
また、本実施形態に係る清掃工具100を取付ける掃除棒300は先端部分にガーゼ200を通して巻き付けるためのガーゼ通し穴301を有し、掃除棒300を挿入するための持ち手部302が形成されている。
【0023】
なお、本実施形態に係る清掃工具100の大きさは特に限定されないが、頭部管の大きさや掃除棒300のガーゼ通し穴301の挿入方向における配置を考慮して定めることができる。一例を挙げれば図2図3に示す外側部材60の外径d1は12mmであり、内径d2は10mm、内側手元部材40の内径d3は6mmである。また、外側部材60の先端側端面から内側先端部材50の先端側端面までの段差h1は1mm、内側先端部材50の高さh2は10mm、内側手元部材40の高さh3は10mmである。
【0024】
次に本実施形態に係る管楽器の清掃工具100を用いた管楽器の清掃について説明する。まず、図5に示すように掃除棒300の先端部分を清掃工具100の掃除棒取付け部10に相当する内側手元部材40に挿し込んで、清掃工具100を掃除棒300に固定する。次に図6に示すように、掃除棒300のガーゼ通し穴301にガーゼ200を通し、清掃工具100の先端部にガーゼ200を被せる。
【0025】
そして、図7に示すように掃除棒300の先端部分におけるガーゼ200の形を整えて平面部S及び外周縁部Fを形成する。平面部Sと外周縁部Fが形成できたら、ガーゼ200を掃除棒300の長手方向に沿ってらせん状に巻き付ける。この状態で掃除棒300の持ち手部302を持ち、頭部管の内部に挿入して頭部管との接触を触覚により確認しながら掃除棒300を適宜回転させ、頭部管の内側面や反射板の汚れを取り除く。
【0026】
管楽器の口元に当たる頭部管の内部にはヘッドキャップ、コルク、反射板等が取付けられ、呼気を導入する際に呼気に混入される水分等が原因となって頭部管の内部に付着する。従来の清掃工具は、掃除棒が頭部管の内部形状と一致しておらず、硬い掃除棒にガーゼを被せたものを巻き付けた状態で単に挿入して内部を清掃するため、反射板に掃除棒を当接させた際に反射板の位置が変わったり、反射板を傷付けたりしてしまうおそれがある。
【0027】
これに対し、本実施形態に係る管楽器の清掃工具100によれば、清掃工具100の先端の輪郭が円状に形成されているため、ガーゼ200を被せると先端部分には平面部S及び外周縁部Fをはっきりと形成することができる。この状態で頭部管の内部に配置された反射板に当接させると、当接部30が可撓性を有するように形成され、当接部30より手元側には支持部20が配置されているため、当接部自体は柔らかいものの、適度に抗力を発揮して反射板と当接させることができる。そのため、従来のように硬い掃除棒300を直接反射板に当てることなく、反射板の位置ズレを防止し、反射板を傷付けることなく反射板の縁部の汚れまできれいに清掃することができる。
【0028】
以上、説明したように本実施形態に係る管楽器の清掃工具100は、管楽器の頭部管内部を清掃する掃除棒300の先端部分に取付けられる可撓性を有する掃除棒取付け部10と、掃除棒取付け部10よりも先端側に設けられ、先端の輪郭が円状であり、かつ可撓性を有する当接部30と、掃除棒取付け部10と当接部30との間に設けられ、頭部管の内部に配置された反射板と当接した際に当接部30を支持し、当接部30よりも高い剛性を有する支持部20を備えるように構成している。
【0029】
そのため、清掃工具100を掃除棒300に取付けてガーゼ200を先端部分に被せて掃除棒300に巻き付けると、掃除棒300の先端には平面部S及び外周縁部Fがはっきりと形成される。よって、清掃工具100を反射板に当接させて回転させれば、硬い掃除棒が反射板に直接突き当たることがなく、反射板の位置を変えたり、反射板を傷付けたりすることなく反射板の縁部の汚れまできれいに清掃することができる。
【0030】
また、支持部20を構成する内側先端部材50を中実に構成した場合、掃除棒300は清掃工具100への取付けの際に内側先端部材50により長手方向の挿入位置が規制される。そのため、掃除棒300の清掃工具100への過度の挿入を確実に防止して取付け作業をより容易なものとすることができる。
【0031】
また、内側先端部材50の径方向外側には外側部材60を配置して、支持部20に相当する部分が2層構造を有するように構成している。そのため、内側先端部材50の外側面と外側部材60の内側面にせん断力が作用し、これにより当接部30に相当する外側部材60の先端部において反射板に対する抗力が作用する。このように内側先端部材50と外側部材60によって支持部が2層構造を有するように構成することで、当接部30を反射板にしっかりと当接させることができ、反射板をきれいに清掃することができる。
【0032】
本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。
【0033】
図8は、本発明の一実施形態に係る管楽器の清掃工具の変形例を示す断面図である。清掃工具100は、上述のように内側手元部材40、内側先端部材50、及び外側部材60から構成し、外側部材60と内側手元部材40及び内側先端部材50とが嵌合し、外側部材60が内側先端部材50よりも段差h1だけ先端側に突出している実施形態について説明した。しかし、本発明はこれに限定されず、図8に示すように清掃工具100Aを中空円筒状の掃除棒取付け部10A、中実円筒状の支持部20A及び当接部30Aから構成し、当接部30Aが支持部20Aの挿入方向先端部における端面で接合されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
10、10A 掃除棒取付け部、
100、100A 管楽器の清掃工具、
20、20A 支持部、
200 ガーゼ、
300 掃除棒、
30、30A 当接部、
40 内側手元部材、
50 内側先端部材、
60 外側部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8