(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記対象画像の1画素の描画タイミングを規定するビデオクロック信号に同期して前記直交方向にレーザー光を走査して、前記対象画像に対応する潜像を1ライン分ずつ形成する露光制御部を更に備え、
前記画像伸長部は、前記露光制御部が形成する前記潜像のライン間隔を前記搬送方向伸長率に応じて長くし、前記ビデオクロック信号の周期を前記直交方向伸長率に応じて長くする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の画像形成装置の一実施形態に係るプリンター1を図面に基づいて説明する。尚、本実施形態では、画像形成装置としてプリンター1を例に説明するが、画像形成装置は、コピー機、ファクシミリ装置、またこれらの複数の機能を備えた複合機であってもよい。
【0030】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態に係るプリンター1の概略構造図である。
図1に示すように、プリンター1は、用紙貯留部10、用紙搬送部50、画像形成部20、定着部30、用紙検査装置70、操作部90、及び制御部80を備えている。
【0031】
用紙貯留部10は、用紙Pを貯留する。用紙貯留部10は、制御部80の制御により、貯留された用紙Pを繰り出して用紙搬送部50へ給紙する。用紙貯留部10には、例えば、加熱によって伸長しない洋紙や、加熱によって繊維の方向に伸長する和紙等の用紙Pが貯留される。用紙貯留部10には、用紙束から用紙Pを1枚ずつ繰り出させる不図示のピックアップローラーが設けられている。ピックアップローラーは、制御部80の制御により、回転駆動する。ピックアップローラーの駆動によって繰り出された用紙Pは、用紙搬送部50に給紙される。
【0032】
用紙搬送部50は、制御部80の制御により、用紙貯留部10から給紙された用紙Pを画像形成部20及び定着部30へ搬送する。用紙搬送部50は、制御部80の制御により回転駆動する搬送ローラー51、52、53を備えている。搬送ローラー51、52は、用紙貯留部10から給紙された用紙Pを画像形成部20へ搬送する。搬送ローラー53は、画像形成部20を通過した用紙Pを定着部30へ搬送する。
【0033】
画像形成部20は、感光体ドラム22、帯電器23、露光器24、現像器25、及び転写ローラー26を備えている。
【0034】
感光体ドラム22は、主走査方向(
図1における紙面表裏方向)を長尺とする円筒状の部材である。感光体ドラム22は、不図示のドラムモーターによって、前後方向(
図1の紙面と直交する方向)に延びるドラム軸回りに回転可能に設けられている。帯電器23は、感光体ドラム22の表面を略一様に帯電する。
【0035】
露光器24は、レーザーダイオード等の光源を備え、帯電器23によって略一様に帯電された感光体ドラム22の周面に対して、画像データに応じたレーザー光を照射して、画像データの潜像を形成する。画像データは、例えば、ネットワークを介してプリンター1に接続されたパーソナルコンピューター等の外部装置から送信された画像データを、不図示のネットワークインターフェイス回路を用いて受信することによって取得される。
【0036】
現像器25は、トナーを収納するトナーコンテナを備え、潜像が形成された感光体ドラム22の表面にトナーを供給してトナー像を形成する。転写ローラー26は、感光体ドラム22と対向する位置に配設されている。転写ローラー26は、感光体ドラム22に形成されたトナー像を用紙搬送部50により搬送された用紙Pに転写する。
【0037】
定着部30は、制御部80の制御により、用紙Pを加熱して、転写されたトナー像を用紙Pに定着させる。定着部30は、内部に通電発熱体が装着されたヒートローラー31と、このヒートローラー31と対向して周面同士が対向配置された加圧ローラー32とを備えている。転写後の用紙Pは、ヒートローラー31と加圧ローラー32との間のニップ部を通過する。このとき、ヒートローラー31により用紙Pが加熱され、転写されたトナー像が用紙Pに定着される。
【0038】
操作部90は、情報を表示するための表示部91と、ユーザーによって各種指示の操作を行わせるための操作キー部92と、を備えている。
【0039】
用紙検査装置70は、制御部80の制御により、用紙貯留部10から給紙された用紙Pの表面及び裏面に光を照射し、用紙Pの表面において反射された反射光及び用紙Pを透過した透過光の強度を示す検出信号を制御部80へ出力する。用紙検査装置70の詳細については、後述する。
【0040】
制御部80は、用紙貯留部10、用紙搬送部50、画像形成部20、定着部30、用紙検査装置70、及び操作部90等に接続され、これら各部の動作の制御を司る。制御部80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、CPUによって実行される種々のプログラムやその実行に必要なデータ等を予め記憶するROM(Read Only Memory)、CPUのいわゆるワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)及び、例えば数百MHz程度の高い周波数で発振する時間精度の高い基準クロック信号を発振する水晶発振器や、基準クロック信号の周波数を分周する分周回路や、基準クロック信号の周波数を逓倍する逓倍回路等の周辺回路を備えている。
【0041】
次に、画像形成部20による画像形成動作について簡単に説明する。先ず、帯電器23により感光体ドラム22の表面が略均一に帯電される。そして、帯電された感光体ドラム22の表面が、露光器24により露光され、用紙Pに形成する対象の画像(対象画像)の潜像が感光体ドラム22の表面に形成される。この潜像が、現像器25によって感光体ドラム22の周面にトナーが付着されることによりトナー像化され、転写ローラー26により感光体ドラム22の表面のトナー像が用紙Pに転写される。この画像形成部20による画像形成動作が行われた後、定着部30により、転写されたトナー像が用紙Pに定着される。
【0042】
図2は、プリンター1の電気的構成を示す概略構成図である。
図2に示すように、露光器24と、制御部80と、用紙検査装置70は、互いに通信可能に接続されている。
【0043】
露光器24は、レーザー光源61と、コリメータレンズ62と、プリズム63と、ポリゴンミラー64と、f−θレンズ65と、ポリゴンモーター66と、BD(Beam Detect)センサー67と、を備えている。制御部80は、露光器24によるレーザー光の走査を制御するために、特に、露光制御部81、用紙判別部82、検出強度記憶部83、伸長方向特定部84、基準強度記憶部85、伸長率算出部86、及び画像伸長部87として機能する。
【0044】
レーザー光源61は、後述の露光制御部81から供給されるパルス状の駆動電流に応じて、駆動電流が供給されている間はレーザー光を出力し、駆動電流が供給されていない間はレーザー光の出力を停止する。コリメータレンズ62は、レーザー光源61から出力されるレーザー光を集光する。プリズム63は、コリメータレンズ62を透過した光を平行光に変換する。
【0045】
ポリゴンミラー64は、レーザー光源61から出力され、コリメータレンズ62及びプリズム63を透過したレーザー光を感光体ドラム22に向けて反射させる反射面を複数有している(例えば、
図2においては8面有している)。ポリゴンミラー64は、例えば、
図2の矢印方向にポリゴンモーター66により一定速度V0で回転駆動されることによって、レーザー光をポリゴンミラー64の各反射面で反射させる。
【0046】
fθレンズ65は、ポリゴンミラー64により反射されたレーザー光を偏向して、レーザー光を感光体ドラム22の回転軸方向である主走査方向(
図2の矢印A方向)に等速度で走査させる。これにより、感光体ドラム22表面上の電荷が除去される。その結果、感光体ドラム22の表面に潜像が形成される。尚、感光体ドラム22の回転軸方向は、用紙搬送部50に備えられた搬送ローラー51、52、53の回転軸方向に一致している。つまり、主走査方向は、用紙搬送部50によって搬送される用紙Pの搬送方向に直交する方向(直交方向)に一致している。
【0047】
BDセンサー67は、感光体ドラム22よりも主走査方向上流側に設けられている。BDセンサー67は、レーザー光を受光すると、レーザー光を受光したことを示す検出信号BDを制御部80へ出力する。
【0048】
露光制御部81は、不図示のドラムモーターの駆動を制御して、感光体ドラム22を回転動作させる。また、露光制御部81は、ポリゴンモーター66の駆動を制御して、ポリゴンミラー64を回転動作させる。これとともに、露光制御部81は、レーザー光源61にレーザー光を出力させ、ポリゴンミラー64の反射面で反射されたレーザー光をf−θレンズ65を介してBDセンサー67に入射させる。そして、露光制御部81は、BDセンサー67によって検出信号BDが出力されたタイミングに基づいて、予め定められた基準露光時間Tdの間、潜像の1ライン分に対応するレーザー光をレーザー光源61に出力させる。露光制御部81は、これら一連の動作を潜像のライン数分繰り返す露光処理を行う。
【0049】
図3は、露光制御部81による露光処理の動作を示すタイムチャートである。例えば、
図3に示すように、露光制御部81は、時刻t0において露光処理を開始すると、ドラムモーターを駆動し、感光体ドラム22を予め定められた一定の回転速度で回転動作させる。これとともに、露光制御部81は、ポリゴンモーター66を駆動し、ポリゴンミラー64を予め定められた一定の基準回転速度V0で回転動作させる。更に、露光制御部81は、レーザー光源61に予め定められた大きさの駆動電流を供給する。これによって、レーザー光源61は、予め定められた強度のレーザー光を出力する。
【0050】
レーザー光源61から出力されたレーザー光は、ポリゴンミラー64のある一の反射面で反射され、f−θレンズ65によって偏向される。そして、時刻t1において、当該偏向されたレーザー光がBDセンサー67に入射されると、BDセンサー67は、検出信号BDを制御部80へ出力する。このとき、露光制御部81は、感光体ドラム22の回転動作を停止させる。
【0051】
露光制御部81は、BDセンサー67による検出信号BDの出力時刻t1から、予め定められた非露光時間Tnの間、レーザー光源61への駆動電流の供給を停止する。尚、非露光時間Tnは、試験運転等の実験値に基づいて、例えば、BDセンサー67による検出信号BDの出力時刻t1から、基準回転速度V0で回転するポリゴンミラー64の反射面で反射されたレーザー光が感光体ドラム22上の予め定められた潜像形成領域に到達するまでに要する時間に定められている。
【0052】
露光制御部81は、BDセンサー67による検出信号BDの出力時刻t1から、非露光時間Tnが経過した露光開始時刻t2になると、レーザー光が感光体ドラム22上の潜像形成領域に到達したと判断する。そして、露光制御部81は、露光開始時刻t2から予め定められた基準露光時間Tdが経過するまでの間、潜像の各ラインに対応するレーザー光をレーザー光源61に出力させる動作を開始する。
【0053】
具体的には、露光制御部81は、潜像の各ラインに対応するレーザー光をレーザー光源61に出力させる動作を以下のように行う。露光制御部81は、画像データに基づいて、感光体ドラム22に形成する潜像の各ラインに含まれる画素数をカウントする。露光制御部81は、不図示の水晶発振器から発振される基準クロック信号の周波数を不図示の逓倍回路及び/又は分周回路を用いて逓倍及び/又は分周することによって、カウントした画素数分のパルスからなる予め定められた基準周期Tvのパルス信号を生成する。以下、当該パルス信号をビデオクロック信号VCと示す。
【0054】
そして、露光制御部81は、生成したビデオクロック信号VCの各パルスのデューティー比を、画像データに基づいて潜像の各ラインに含まれる各画素の濃淡に応じて変化させる。例えば、露光制御部81は、画素の濃度が濃い場合には当該画素に対応するパルスのデューティー比を高くし(ハイレベルの期間を長くし)、画素の濃度が薄い場合には当該画素に対応するパルスのデューティー比を低くする(ハイレベルの期間を短くする)。
【0055】
露光制御部81は、各パルスのデューティー比を変化させたビデオクロック信号VCがハイレベルのときは所定の大きさの駆動電流をレーザー光源61に供給し、ビデオクロック信号がローレベルのときはレーザー光源61への駆動電流の供給を停止する。その結果、レーザー光源61は、露光制御部81から供給されるパルス状の駆動電流に応じて、駆動電流が供給されている間はレーザー光を出力し、駆動電流が供給されていない間はレーザー光の出力を停止する。
【0056】
このように、露光制御部81は、ビデオクロック信号VCの周期Tvと、ビデオクロック信号のパルス数、即ち、潜像の各ラインに含まれる画素数と、の積によって定められた基準露光時間Tdの間、1パルスが潜像の各ラインに含まれる各画素に対応するパルス状の駆動電流をレーザー光源61へ出力する。
【0057】
露光開始時刻t2から基準露光時間Tdが経過した露光終了時刻t3になると、露光制御部81は、レーザー光源61へのパルス状の駆動電流の出力を停止する。
【0058】
その後、BDセンサー67による検出信号BDの出力時刻t1から、予め定められた基準回転時間Trが経過した次面反射開始時刻t4になると、露光制御部81は、ポリゴンミラー64のある一の反射面へのレーザー光の入射が終了し、ポリゴンミラー64の次の反射面にレーザー光が入射されるタイミングになったと判断する。そして、露光制御部81は、当該次の反射面で反射されたレーザー光の走査によって、次のラインの潜像を形成すべく、時刻t0以降の処理を繰り返す。尚、基準回転時間Trは、試験運転等の実験値に基づいて、例えば、BDセンサー67による検出信号BDの出力時刻t1から、基準回転速度V0で回転するポリゴンミラー64の次の反射面にレーザー光が入射されるまでの時間に定められている。
【0059】
このようにして、露光制御部81は、画像データの1画素の描画タイミングを規定するビデオクロック信号VCに同期して主走査方向にレーザー光を走査させ、潜像を1ライン分ずつ形成する。
【0060】
尚、露光制御部81は、上記のように、レーザー光源61に予め定められた強度のレーザー光を出力させ、ポリゴンミラー64のある一の反射面に当該レーザー光が入射された時刻t0から、BDセンサー67により検出信号BDが出力される時刻t1までの間、感光体ドラム22を回転動作させる。そして、露光制御部81は、露光開始時刻t2になると、次のラインの潜像を感光体ドラム22に形成する。
【0061】
つまり、感光体ドラム22に形成される潜像のライン間隔は、時刻t0から、BDセンサー67により検出信号BDが出力される時刻t1までの間の感光体ドラム22の回転量に相当する。尚、時刻t0から時刻t1までの期間は、ポリゴンミラー64の回転速度が遅いほど長くなる。したがって、潜像のライン間隔は、ポリゴンミラー64の回転速度が遅いほど長くなる。
【0062】
次に、用紙検査装置70、用紙判別部82、検出強度記憶部83、伸長方向特定部84、基準強度記憶部85、伸長率算出部86、及び画像伸長部87について説明する。
【0063】
図4は、用紙検査装置70の概略構成図である。
図4に示すように、用紙検査装置70は、光源部71a、副光源部71b、偏光フィルター72、及び受光センサー73(光強度検出部)を備えている。
【0064】
光源部71aは、制御部80による制御の下、用紙搬送部50によって搬送された用紙Pの表面に光を照射する。光源部71aは、例えば、LED等で構成されている。
【0065】
副光源部71bは、制御部80による制御の下、用紙搬送部50によって搬送された用紙Pの裏面に光を照射する。副光源部71bは、例えば、LED等で構成されている。
【0066】
偏光フィルター72は、制御部80による制御の下、光源部71a及び副光源部71bにより光が照射された用紙Pの紙面に交差する(
図4の例では直交する)回転軸72aを中心に回転可能に構成されている。偏光フィルター72は、光源部71aにより照射された光が用紙Pにおいて反射された反射光、及び、副光源部71bにより照射された光が用紙Pを透過した後の透過光のうち、予め定められた偏光方向の光を通過させる。
【0067】
図5(a)は、偏光フィルター72が用紙Pの搬送方向Xの光を通過させるときの状態を示す説明図であり、
図5(b)は、偏光フィルター72が用紙Pの搬送方向Xに対して45度をなす方向の光を通過させるときの状態を示す説明図である。
【0068】
図5(a)及び
図5(b)は、回転軸72aが用紙Pに交差する交差方向Y(
図4)からみた偏光フィルター72を示している。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、偏光フィルター72は、制御部80による制御の下、交差方向Yに伸びる回転軸72aを中心にして時計回りに回転動作する。例えば、
図5(a)は、偏光フィルター72が、用紙Pにおいて反射された反射光及び用紙Pを透過した透過光のうち、搬送方向Xの光を通過させる状態を示している。つまり、この場合、上記偏光方向は、搬送方向Xである。
【0069】
そして、偏光フィルター72は、
図5(a)に示す状態から、回転軸72aを中心にして時計回りに45度回転すると、
図5(b)に示すように、用紙Pにおいて反射された反射光及び用紙Pを透過した透過光のうち、搬送方向Xに対して45度をなす方向の光を通過させる状態になる。つまり、この場合、上記偏光方向は、搬送方向Xに対して45度をなす方向である。このように、偏光フィルター72の回転に応じて、偏光フィルター72が光を通過させる偏光方向が変化する。
【0070】
受光センサー73は、例えば、光電変換素子で構成され、偏光フィルター72を通過した光を受光し、受光した光の強度を示す検出信号を制御部80へ出力する。以下、受光センサー73により受光された光の強度を検出強度と示す。
【0071】
用紙判別部82は、偏光フィルター72を回転させた場合に受光センサー73によって出力された検出信号が示す検出強度の変化に基づいて、用紙Pが加熱によって伸長する伸長用紙であるか否かを判別する。例えば、繊維が一定方向に向いている和紙は、加熱によって伸長するので伸長用紙であるといえる。
【0072】
検出強度記憶部83は、例えばRAMによって構成されている。検出強度記憶部83には、後述するように、用紙判別部82及び伸長方向特定部84が偏光フィルター72を回転させた場合の検出強度が記憶される。
【0073】
以下、用紙判別部82が、偏光フィルター72を回転させた場合の検出強度の変化に基づいて、用紙Pが伸長用紙であるか否かを判別する動作について詳述する。
図6(a)〜(c)は、偏光方向が搬送方向Xから搬送方向Xに対して180度をなす方向になるまで偏光フィルター72を回転させた場合の検出強度Dを示すグラフである。
図6(a)は、後述の非伸長用紙、繊維が搬送方向Xに向いている用紙P、及び繊維が主走査方向に向いている用紙Pを用いた場合の検出強度D0、D1、D2を示している。
図6(b)は、繊維が搬送方向Xに対して30度及び120度をなす方向に向いている用紙Pを用いた場合の検出強度D3、D4を示している。
図6(c)は、繊維が搬送方向に対して60度及び150度をなす方向に向いている用紙Pを用いた場合の検出強度D5、D6を示している。
【0074】
用紙Pが、例えば洋紙等の繊維の方向が均一ではない紙である場合、光源部71aにより用紙Pの表面に照射された光は、多方向に拡散して反射される。また、用紙Pの繊維の方向が均一ではない場合、副光源部71bにより用紙Pの裏面に照射された光のうち、繊維の隙間に入り込んで用紙Pの表面まで透過した光には、多方向の偏光が含まれる。このため、用紙Pの繊維の方向が均一ではない場合、
図6(a)に示すように、偏光フィルター72が光を通過させる偏光方向がどの方向であっても、検出強度Dはある程度の強度D0を示すと考えられる。
【0075】
また、用紙Pの繊維の方向が均一ではない場合、当該用紙Pは、加熱されたとしても特定方向に伸長しない紙であると考えられる。以下、このように、加熱によって伸長しない紙を非伸長用紙と示す。例えば、繊維が方向が均一ではない洋紙は、加熱によって伸長しないので非伸長用紙であるといえる。
【0076】
一方、用紙Pが、例えば和紙等の繊維が一定方向に向いている紙である場合、光源部71aにより用紙Pの表面に照射された光のうち、繊維の隙間に入り込む光の量が多くなる。これによって、用紙Pにおいて反射される反射光のうち、繊維の方向に対応する偏光の量は少なくなる。また、用紙Pの繊維が一定方向に向いている場合、副光源部71bにより用紙Pの裏面に照射された光のうち、繊維の隙間に入り込んで用紙Pの表面まで透過した光には、繊維の方向に対応する偏光はほぼ含まれない。
【0077】
このため、用紙Pの繊維が一定方向に向いている場合、偏光フィルター72が光を通過させる偏光方向が用紙Pの繊維の方向に近くなるほど、検出強度Dは小さくなると考えられる。反対に、偏光方向が用紙Pの繊維の方向から遠くなるほど、つまり、偏光方向が用紙Pの繊維の方向に直交する方向に近くなるほど、検出強度Dは大きくなると考えられる。また、用紙Pの繊維が一定方向に向いている場合、当該用紙Pは、加熱されたときに繊維の方向に伸長すると考えられる。
【0078】
例えば、用紙Pの繊維が搬送方向Xに向いている場合、
図6(a)に示すように、偏光方向が用紙Pの繊維の方向、つまり、搬送方向Xに対して0度及び180度をなす方向に近くなるほど、検出強度D1は小さくなる。一方、偏光方向が繊維の方向に直交する方向、つまり、搬送方向Xに対して90度をなす方向に近くなるほど、検出強度D1は大きくなる。
【0079】
また、用紙Pの繊維が搬送方向Xに直交する主走査方向に向いている場合、
図6(a)に示すように、偏光方向が用紙Pの繊維の方向、つまり、搬送方向Xに対して90度をなす方向に近くなるほど、検出強度D2は小さくなる。一方、偏光方向が繊維の方向に直交する方向、つまり、搬送方向Xに対して0度及び180度をなす方向に近くなるほど、検出強度D2は大きくなる。
【0080】
同様に、用紙Pの繊維が搬送方向Xに対して30度をなす方向に向いている場合、
図6(b)に示すように、偏光方向が搬送方向Xに対して30度をなす方向に近くなるほど、検出強度D3は小さくなる。一方、偏光方向が搬送方向Xに対して120度をなす方向に近くなるほど、検出強度D3は大きくなる。また、用紙Pの繊維が搬送方向Xに対して120度をなす方向に向いている場合、
図6(b)に示すように、偏光方向が搬送方向Xに対して120度をなす方向に近くなるほど、検出強度D4は小さくなる。一方、偏光方向が搬送方向Xに対して30度をなす方向に近くなるほど、検出強度D4は大きくなる。
【0081】
また、用紙Pの繊維が搬送方向Xに対して60度をなす方向に向いている場合、
図6(c)に示すように、偏光方向が搬送方向Xに対して60度をなす方向に近くなるほど、検出強度D5は小さくなる。一方、偏光方向が搬送方向Xに対して150度をなす方向に近くなるほど、検出強度D5は大きくなる。同様に、用紙Pの繊維が搬送方向Xに対して150度をなす方向に向いている場合、
図6(b)に示すように、偏光方向が搬送方向Xに対して150度をなす方向に近くなるほど、検出強度D6は小さくなる。一方、偏光方向が搬送方向Xに対して60度をなす方向に近くなるほど、検出強度D6は大きくなる。
【0082】
そこで、用紙判別部82は、具体的には、偏光方向が、搬送方向Xに対して45度をなす方向から搬送方向Xに対して90度をなす方向まで変化するように、偏光フィルター72を回転させる。そして、用紙判別部82は、当該偏光フィルター72を回転させた場合に受光センサー73によって出力される検出信号が示す検出強度Dを検出強度記憶部83に記憶する。そして、用紙判別部82は、検出強度記憶部83に記憶した検出強度Dの変化に基づいて、用紙Pが伸長用紙であるか否かを判別する。
【0083】
例えば、
図6(a)の網掛部に示すように、偏光方向が搬送方向Xに対して45度をなす方向から搬送方向Xに対して90度をなす方向になるまで偏光フィルター72を回転させた場合に、検出強度Dが予め定められた閾値以上変化しなかったとする。尚、上記閾値は、試験運転等の実験値に基づいて、用紙Pが非伸長用紙である場合に、偏光方向が搬送方向Xに対して45度をなす方向から90度をなす方向になるまで偏光フィルター72を回転動作させたときの検出強度Dの変化量よりも、僅かに大きい値が設定されている。
【0084】
この場合、用紙判別部82は、当該検出強度Dの変化は、用紙Pが非伸長用紙であるときの検出強度D0の変化に相当すると考えられるので、用紙Pは、伸長用紙ではなく、非伸長用紙であると判別する。
【0085】
一方、用紙判別部82は、
図6(a)〜(c)の網掛部に示すように、偏光方向が搬送方向Xに対して45度をなす方向から搬送方向Xに対して90度をなす方向になるまで偏光フィルター72を回転させた場合に、検出強度Dが上記の閾値以上変化したとする。この場合、用紙判別部82は、当該検出強度Dの変化は、用紙Pの繊維が一定方向に向いているときの検出強度D1〜D5のうち何れかの変化に相当すると考えられるので、用紙Pが伸長用紙であると判別する。
【0086】
伸長方向特定部84は、用紙判別部82により用紙Pが伸長用紙であると判別された場合、偏光フィルター72を回転させたときの検出強度Dの変化に基づいて、用紙Pが加熱によって伸長するときの伸長方向を特定する。
【0087】
具体的には、伸長方向特定部84は、偏光方向が搬送方向Xから搬送方向Xに対して180度をなす方向になるまで偏光フィルター72を回転させた場合に、検出強度Dが最小となるときの偏光方向を伸長方向として特定する。
【0088】
以下、伸長方向特定部84が、偏光フィルター72を回転させた場合の検出強度の変化に基づいて伸長方向を特定する動作について詳述する。例えば、用紙判別部82によって検出強度記憶部83に記憶された検出強度Dが、偏光フィルター72の回転動作の開始当初は急上昇し、当該回転動作の終了時には緩やかに上昇するように変化していたとする。この検出強度Dの変化は、例えば
図6(a)の網掛部における検出強度D1の変化と同様であり、つまり、用紙Pの繊維の方向が搬送方向Xである場合の検出強度D1の変化と同様である。したがって、この場合、伸長方向特定部84は、用紙Pの繊維が搬送方向Xに近い方向に向いていると判断する。
【0089】
上記のように、偏光方向が用紙Pの繊維の方向である場合、検出強度Dが最も小さくなると考えられる。そこで、伸長方向特定部84は、偏光方向が搬送方向Xに近い方向になるように、例えば、偏光方向が搬送方向Xから搬送方向Xに対して22.5度をなす方向になるまで偏光フィルター72を回転させ、また、偏光方向が搬送方向Xに対して157.5度をなす方向から搬送方向Xに対して180度をなす方向になるまで偏光フィルター72を回転させる。
【0090】
そして、伸長方向特定部84は、当該偏光フィルター72を回転させたときの検出強度Dを検出強度記憶部83に記憶する。そして、伸長方向特定部84は、検出強度記憶部83に記憶されている検出強度Dのうちの最も小さい強度を特定する。そして、伸長方向特定部84は、検出強度Dが当該特定した最も小さい強度を示すときの偏光方向を、用紙Pの繊維の方向、つまり、用紙Pが加熱によって伸長するときの伸長方向として特定する。
【0091】
一方、用紙判別部82によって検出強度記憶部83に記憶された検出強度Dが、偏光フィルター72の回転動作の開始当初は急下降し、当該回転動作の終了時には緩やかに下降するように変化していたとする。この検出強度Dの変化は、例えば
図6(a)の網掛部における検出強度D2の変化と同様であり、つまり、用紙Pの繊維の方向が主走査方向である場合の検出強度D2の変化と同様である。したがって、この場合、伸長方向特定部84は、用紙Pの繊維が主走査方向に近い方向に向いていると判断する。
【0092】
この場合、伸長方向特定部84は、偏光方向が主走査方向に近い方向になるように、例えば、偏光方向が搬送方向Xに対して90度をなす方向から搬送方向Xに対して112.5度をなす方向になるまで偏光フィルター72を回転させる。そして、伸長方向特定部84は、上記と同様に、当該偏光フィルター72を回転させたときの検出強度Dを検出強度記憶部83に記憶する。そして、伸長方向特定部84は、検出強度記憶部83に記憶された検出強度Dのうちの最も小さい強度に対応する偏光方向を伸長方向として特定する。
【0093】
また、用紙判別部82によって検出強度記憶部83に記憶された検出強度Dが、偏光フィルター72の回転動作の開始当初は緩やかに上昇し、当該回転動作の終了時には急上昇するように変化していたとする。この検出強度Dの変化は、例えば
図6(b)の網掛部における検出強度D3の変化と同様であり、つまり、用紙Pの繊維の方向が搬送方向Xに対して30度をなす方向である場合の検出強度D3の変化と同様である。したがって、この場合、伸長方向特定部84は、用紙Pの繊維が、搬送方向Xに対して45度よりも小さい角度をなす方向であって、搬送方向Xに対して45度をなす方向に近い方向に向いていると判断する。
【0094】
この場合、伸長方向特定部84は、偏光方向が搬送方向Xに対して45度よりも小さい角度をなす方向であって、搬送方向Xに対して45度をなす方向に近い方向となるように、例えば、偏光方向が搬送方向に対して22.5度をなす方向から搬送方向Xに対して45度をなす方向になるまで偏光フィルター72を回転させる。そして、伸長方向特定部84は、上記と同様に、当該偏光フィルター72を回転させたときの検出強度Dを検出強度記憶部83に記憶する。そして、伸長方向特定部84は、検出強度記憶部83に記憶された検出強度Dのうちの最も小さい強度に対応する偏光方向を伸長方向として特定する。
【0095】
一方、用紙判別部82によって検出強度記憶部83に記憶された検出強度Dが、偏光フィルター72の回転動作の開始当初は緩やかに下降し、当該回転動作の終了時には急下降するように変化していたとする。この検出強度Dの変化は、例えば
図6(b)の網掛部における検出強度D4の変化と同様であり、つまり、用紙Pの繊維の方向が搬送方向Xに対して120度をなす方向である場合の検出強度D4の変化と同様である。したがって、この場合、伸長方向特定部84は、用紙Pの繊維が、搬送方向Xに対して135度よりも小さい角度をなす方向であって、搬送方向Xに対して135度をなす方向に近い方向に向いていると判断する。
【0096】
この場合、伸長方向特定部84は、偏光方向が搬送方向Xに対して135度よりも小さい角度をなす方向であって、搬送方向Xに対して135度をなす方向に近い方向となるように、例えば、偏光方向が搬送方向Xに対して112.5度をなす方向である状態から搬送方向Xに対して135度をなす方向になるまで偏光フィルター72を回転させる。そして、伸長方向特定部84は、上記と同様に、当該偏光フィルター72を回転させたときの検出強度Dを検出強度記憶部83に記憶する。そして、伸長方向特定部84は、検出強度記憶部83に記憶された検出強度Dのうちの最も小さい強度に対応する偏光方向を伸長方向として特定する。
【0097】
また、用紙判別部82によって検出強度記憶部83に記憶された検出強度Dが、偏光フィルター72の回転動作の開始当初は緩やかに下降し、その後、最も小さい強度を示した後、再び緩やかに上昇するように変化していたとする。この検出強度Dの変化は、例えば
図6(c)の網掛部における検出強度D5の変化と同様であり、つまり、用紙Pの繊維の方向が搬送方向Xに対して60度をなす方向である場合の検出強度D3の変化と同様である。したがって、この場合、伸長方向特定部84は、用紙Pの繊維が、搬送方向Xに対して45度よりも大きい角度をなす方向であって、搬送方向Xに対して45度をなす方向に近い方向に向いていると判断する。
【0098】
尚、偏光方向が搬送方向Xに対して45度をなす方向から搬送方向Xに対して90度をなす方向であるときの検出強度Dは、用紙判別部82によって、既に検出強度記憶部83に記憶されている。そこで、この場合、伸長方向特定部84は、偏光フィルター72を回転させることなく、検出強度記憶部83に記憶された検出強度Dのうちの最も小さい強度に対応する偏光方向を伸長方向として特定する。
【0099】
一方、用紙判別部82によって検出強度記憶部83に記憶された検出強度Dが、偏光フィルター72の回転動作の開始当初は緩やかに上昇し、その後、最も大きい強度を示した後、再び緩やかに下降するように変化していたとする。この検出強度Dの変化は、例えば
図6(c)の網掛部における検出強度D6の変化と同様であり、つまり、用紙Pの繊維の方向が搬送方向Xに対して150度をなす方向である場合の検出強度D6の変化と同様である。したがって、この場合、伸長方向特定部84は、用紙Pの繊維が、搬送方向Xに対して135度よりも大きい角度をなす方向であって、搬送方向Xに対して135度をなす方向に近い方向に向いていると判断する。
【0100】
この場合、伸長方向特定部84は、偏光方向が搬送方向Xに対して135度よりも大きい角度をなす方向であって、搬送方向Xに対して135度をなす方向に近い方向となるように、例えば、偏光方向が搬送方向Xに対して135度をなす方向から搬送方向Xに対して157.5度をなす方向になるまで偏光フィルター72を回転させる。そして、伸長方向特定部84は、上記と同様に、当該偏光フィルター72を回転させたときの検出強度Dを検出強度記憶部83に記憶する。そして、伸長方向特定部84は、検出強度記憶部83に記憶された検出強度Dのうちの最も小さい強度に対応する偏光方向を伸長方向として特定する。
【0101】
尚、伸長方向特定部84が、偏光フィルター72を回転させる範囲は、上記に限定する趣旨ではない。例えば、伸長方向特定部84は、用紙判別部82により用紙Pが伸長用紙であると判別された場合、検出強度Dが最小となるときの偏光方向を把握するために、必ず、偏光方向が搬送方向Xから搬送方向Xに対して180度をなす方向になるまで偏光フィルター72を回転させるようにしてもよい。
【0102】
基準強度記憶部85は、例えばROMによって構成されている。基準強度記憶部85には、試験運転等の実験値に基づいて、用紙Pが非伸長用紙である場合に、偏光方向が搬送方向Xから搬送方向Xに対して180度をなす方向になるまで偏光フィルター72を回転させたときの検出強度D0(
図6(a))が記憶されている。
【0103】
伸長率算出部86は、用紙判別部82により用紙Pが伸長用紙であると判別された場合、偏光方向が伸長方向であるときの検出強度Dである伸長方向強度Fと、基準強度記憶部85に記憶されている検出強度D0のうち、偏光方向が伸長方向であるときの検出強度である基準強度Gと、の比率に基づき、用紙Pが加熱されたときに伸長方向に伸長する伸長率Eを算出する。
【0104】
具体的には、用紙判別部82により用紙Pが伸長用紙であると判別された場合、伸長方向強度Fは基準強度Gよりも小さくなる。そこで、伸長率算出部86は、基準強度Gを伸長方向強度Fで除算する。そして、伸長率算出部86は、当該除算結果である伸長方向強度Fに対する基準強度Gの比率(=G/F)が、用紙Pが加熱されたときに伸長方向に伸長する度合を示すものとして、当該比率(G/F)を伸長率Eとする。
【0105】
また、伸長率算出部86は、算出した伸長率Eに基づき、用紙Pが加熱されたときに搬送方向Xに伸長する搬送方向伸長率Eaと、用紙が加熱されたときに主走査方向に伸長する主走査方向伸長率(直交方向伸長率)Ebと、を算出する。
【0106】
図7は、伸長率Eと搬送方向伸長率Eaと主走査方向伸長率Ebの関係を示す説明図である。用紙Pが加熱されたときに伸長方向に伸長率Eで伸長した場合、用紙Pの伸長方向の長さは、加熱前よりも伸長率Eから1を減算した結果(E−1)に応じた長さ分長くなる。同様に、用紙Pが加熱されたときに搬送方向Xに搬送方向伸長率Eaで伸長した場合、用紙Pの搬送方向Xの長さは、加熱前よりも搬送方向伸長率Eaから1を減算した結果(Ea−1)に応じた長さ分長くなる。また、用紙Pが加熱されたときに主走査方向に主走査方向伸長率Ebで伸長した場合、用紙Pの主走査方向の長さは、加熱前よりも主走査方向伸長率Ebから1を減算した結果(Eb−1)に応じた長さ分長くなる。
【0107】
つまり、
図7に示すように、用紙Pが伸長率Eで伸長方向に伸長した場合に伸長方向に伸長した長さ(E−1)を表すベクトルH(太線矢印)は、用紙Pが搬送方向Xに搬送方向伸長率Eaで伸長した場合に搬送方向Xに伸長した長さ(Ea−1)を表すベクトルHa(破線矢印)と、用紙Pが主走査方向に主走査方向伸長率Ebで伸長したときに主走査方向に伸長した長さ(Eb−1)を表すベクトルHb(破線矢印)と、の和で示すことができる。
【0108】
つまり、ベクトルHaは、ベクトルHを搬送方向Xに写像することにより得られ、ベクトルHbは、ベクトルHを主走査方向に写像することにより得られる。そこで、伸長率算出部86は、ベクトルH、Ha、Hbの上記写像の関係に基づき、搬送方向Xと伸長方向とのなす角度α及び伸長率Eを用いた以下の式で、搬送方向伸長率Ea及び主走査方向伸長率Ebを算出する。
Ea =(E−1)×|cosα| +1・・・(1)
Eb =(E−1)×|sinα| +1・・・(2)
【0109】
例えば、伸長率Eが「1.2」であり、搬送方向Xと伸長方向とのなす角度αが60度であったとする。この場合、伸長率算出部86は、上記式(1)を用いて、搬送方向伸長率Eaを「1.1」と算出する。また、伸長率算出部86は、上記式(2)を用いて、主走査方向伸長率Ebを「1.17」と算出する。
【0110】
つまり、この場合、用紙Pは、加熱によって搬送方向伸長率Ea「1.1」で搬送方向Xに伸長し、搬送方向Xの長さが加熱前の搬送方向Xの長さの「1.1」倍になると考えられる。また、用紙Pは、加熱によって主走査方向伸長率Eb「1.17」で主走査方向に伸長し、主走査方向の長さが加熱前の主走査方向の長さの「1.17」倍になると考えられる。その結果、用紙Pは、加熱によって用紙Pの伸長方向に伸長率「1.2」で伸長し、伸長方向の長さが加熱前の伸長方向の長さの「1.2」倍になると考えられる。
【0111】
また、伸長率Eが「1.2」であり、搬送方向Xと伸長方向とのなす角度αが0度又は180度であったとする。つまり、伸長方向が搬送方向Xであったとする。この場合、伸長率算出部86は、上記式(1)を用いて、搬送方向伸長率Eaを「1.2」と算出する。つまり、伸長方向が搬送方向Xであるので、伸長率Eと搬送方向伸長率Eaとが同じになる。また、伸長率算出部86は、上記式(2)を用いて、主走査方向伸長率Ebを「1」と算出する。
【0112】
つまり、この場合、用紙Pは、加熱によって搬送方向伸長率Ea「1.2」で搬送方向Xに伸長し、搬送方向Xの長さが加熱前の搬送方向Xの長さの「1.2」倍になると考えられる。また、用紙Pは、加熱によって主走査方向伸長率Eb「1」で主走査方向に伸長し、主走査方向の長さが加熱前の主走査方向の長さと同じになると考えられる。つまり、用紙Pは、加熱によって主走査方向に伸長しないと考えられる。その結果、用紙Pは、加熱によって用紙Pの伸長方向である搬送方向Xに伸長率「1.2」で伸長し、搬送方向Xの長さが加熱前の搬送方向Xの長さの「1.2」倍になると考えられる。
【0113】
また、伸長率Eが「1.2」であり、搬送方向Xと伸長方向とのなす角度αが90度であったとする。つまり、伸長方向が主走査方向であったとする。この場合、伸長率算出部86は、上記式(1)を用いて、搬送方向伸長率Eaを「1」と算出する。また、伸長率算出部86は、上記式(2)を用いて、主走査方向伸長率Ebを「1.2」と算出する。つまり、伸長方向が主走査方向であるので、伸長率Eと主走査方向伸長率Ebとが同じになる。
【0114】
つまり、この場合、用紙Pは、加熱によって搬送方向伸長率Ea「1」で搬送方向Xに伸長し、搬送方向Xの長さが加熱前の搬送方向Xの長さと同じになると考えられる。つまり、用紙Pは、加熱によって搬送方向Xに伸長しないと考えられる。また、用紙Pは、加熱によって主走査方向伸長率Eb「1.2」で主走査方向に伸長し、主走査方向の長さが加熱前の主走査方向の長さの「1.2」倍になると考えられる。その結果、用紙Pは、加熱によって用紙Pの伸長方向である主走査方向に伸長率「1.2」で伸長し、主走査方向の長さが加熱前の主走査方向の長さの「1.2」倍になると考えられる。
【0115】
画像伸長部87は、用紙判別部82により用紙Pが伸長用紙であると判別された場合、画像形成部20によって用紙Pに形成される対象画像を、伸長率算出部86により算出された伸長率Eで伸長方向に伸長する。
【0116】
具体的には、画像伸長部87は、伸長率算出部86により伸長率Eに基づき算出された搬送方向伸長率Eaで対象画像を搬送方向Xに伸長する。つまり、画像伸長部87は、露光制御部81が感光体ドラム22に形成する潜像のライン間隔を搬送方向伸長率Eaに応じて長くする。即ち、画像伸長部87は、露光制御部81が、
図3における時刻t0から時刻t1までの間、ポリゴンミラー54を回転動作させるときの回転速度を、基準回転速度V0を搬送方向伸長率Eaで除算した結果に対応する回転速度に設定する。
【0117】
このように、画像伸長部87は、ポリゴンミラー54の回転速度を基準回転速度V0よりも遅くすることにより、ポリゴンミラー54のある一の反射面にレーザー光が入射された時刻t0から、当該反射面で反射されたレーザー光がBDセンサー67に入射される時刻t1までの時間を長くする。その結果、感光体ドラム22の回転量が多くなり、感光体ドラム22に形成される潜像のライン間隔が伸長される。
【0118】
また、画像伸長部87は、伸長率算出部86により伸長率Eに基づき算出された主走査方向伸長率Ebで対象画像を主走査方向に伸長する。つまり、画像伸長部87は、露光制御部81が露光処理を行うときに用いるビデオクロック信号VCの周期を、基準周期Tv(
図3)に主走査方向伸長率Ebを乗算した結果に対応する周期に変更する。これにより、露光制御部81が、露光開始時刻t2から出力するパルス状の駆動電流の各パルスの周期が長くなる。その結果、感光体ドラム22に形成される潜像の各画素の主走査方向の幅が伸長される。
【0119】
以下、用紙Pが非伸長用紙及び伸長用紙である場合の画像形成動作について説明する。
図8は、用紙Pが非伸長用紙である場合の画像形成動作を示すフローチャートである。
図9は、用紙Pが伸長用紙である場合の画像形成動作を示すフローチャートである。
【0120】
図8に示すように、制御部80は、画像形成部20による用紙Pへの画像形成動作を開始すると、用紙貯留部10に用紙Pを給紙させ、用紙搬送部50に用紙Pの搬送動作を開始させる(S1)。そして、制御部80は、光源部71a及び副光源部71bを制御し、用紙搬送部50により搬送されてくる用紙Pの表面及び裏面に光を照射させる(S2)。
【0121】
そして、用紙判別部82は、偏光方向が搬送方向Xに対して45度をなす方向である状態から、偏光フィルター72の回転動作を開始させる(S3)。そして、用紙判別部82は、偏光フィルター72の回転中に受光センサー73から出力された検出信号が示す検出強度Dを検出強度記憶部83に記憶する(S4)。
【0122】
用紙判別部82は、偏光方向が搬送方向Xに対して90度以下の角度をなす方向である間(S5;NO)、ステップS4を繰り返す。そして、用紙判別部82は、偏光方向が搬送方向Xに対して90度をなす方向になるまで偏光フィルター72を回転させると(S5;YES)、上記のように、検出強度記憶部83に記憶された検出強度Dが予め定められた閾値以上変化したか否かを判定する(S6)。
【0123】
用紙判別部82は、ステップS6において、検出強度Dが予め定められた閾値以上変化していないと判定した場合(S6;NO)、用紙Pが非伸長用紙であると判断する(S7)。一方、用紙判別部82は、ステップS6において、検出強度Dが予め定められた閾値以上変化したと判定した場合(S6;YES)、用紙Pが伸長用紙であると判断する(S10)。
【0124】
ステップS10において、用紙判別部82により、用紙Pが伸長用紙であると判断された場合、
図9に示すように、伸長方向特定部84は、上記のように、偏光フィルター72を回転させたときの検出強度Dの変化に基づいて、用紙Pが加熱によって伸長するときの伸長方向を特定する(S21)。
【0125】
そして、伸長率算出部86は、上記のように、ステップS21において特定された伸長方向に対応する検出強度Dである伸長方向強度Fと、基準強度記憶部85に記憶されている検出強度D0のうち、当該伸長方向に対応する検出強度D0である基準強度Gと、の比率に基づき、用紙Pが伸長方向に伸長する伸長率E(=G/F)を算出する(S22)。
【0126】
また、伸長率算出部86は、上記のように、ステップS22で算出した伸長率E、ステップS21で特定された伸長方向と搬送方向Xとのなす角度α、上記式(1)及び(2)を用いて、搬送方向伸長率Eaと主走査方向伸長率Ebとを算出する(S23)。
【0127】
そして、画像伸長部87は、露光制御部81が、露光処理において上記
図3に示す時刻t0から時刻t1までの間、ポリゴンミラー54を回転動作させるときの回転速度を、基準回転速度V0をステップS23で算出された搬送方向伸長率Eaで除算した結果に対応する回転速度に設定する(S24)。つまり、画像伸長部87は、露光処理における
図3における時刻t0から時刻t1までの間のポリゴンミラー54の回転速度を搬送方向伸長率Eaに応じて基準回転速度V0よりも遅くする。
【0128】
また、画像伸長部87は、露光制御部81が露光処理を行うときに用いるビデオクロック信号VCの周期を、基準周期Tv(
図3)とステップS23で算出された主走査方向伸長率Ebとの積が示す周期に変更する(S25)。つまり、画像伸長部87は、露光制御部81が露光処理を行うときに用いるビデオクロック信号VCの周期を主走査方向伸長率Ebに応じて長くする。
【0129】
ステップS7の実行後、及び、ステップS25の実行後、露光制御部81は、露光処理を実行し、感光体ドラム22に潜像を形成する(S8)。尚、露光制御部81は、ステップS24で露光処理における上記
図3に示す時刻t0から時刻t1までの間のポリゴンミラー54の回転速度が遅く設定されたときは、上記
図3に示す時刻t0から時刻t1までの間、その設定された回転速度でポリゴンミラー54を回転動作させる。また、露光制御部81は、ステップS25でビデオクロック信号VCの周期が長く設定されたときは、上記
図3に示す露光開始時刻t2になると、その周期が長く設定されたビデオクロック信号VCを用いて、潜像の各ラインに含まれる各画素に対応するパルス状の駆動電流をレーザー光源61へ出力する。
【0130】
そして、制御部80は、上記のように、現像器25により、感光体ドラム22に形成された潜像をトナー像化(現像)させ、転写ローラー26を用いてトナー像を用紙Pに転写させる。そして、制御部80は、定着部30によりトナー像を用紙Pに定着させる(S9)。
【0131】
このように、上記実施形態の構成によれば、用紙判別部82は、偏光フィルター72を回転させて偏光方向を変化させた場合の検出強度Dの変化に基づいて、用紙Pが加熱されたときに伸長する伸長用紙であるか否かを適切に判別することができる。このため、用紙判別部82は、搬送される用紙Pが、例えば、加熱によって伸長する和紙であるか、加熱によって伸長しない洋紙であるかを適切に判別することができる。
【0132】
尚、用紙判別部82は、当該判別をするために、偏光方向が、搬送方向Xに対して45度をなす方向から、搬送方向Xに対して90度をなす方向まで変化するように、偏光フィルター72を回転させる。即ち、用紙判別部82は、偏光方向が用紙Pの繊維の方向として取りうる全方向に変化するように、つまり、偏光方向が用紙Pの搬送方向Xから搬送方向Xに対して180度をなす方向まで変化するように、偏光フィルター72を回転させる場合に比して、偏光フィルター72を回転させる量を4分の1にする。これにより、用紙判別部82は、偏光方向が用紙Pの搬送方向Xから搬送方向Xに対して180度をなす方向まで変化するように偏光フィルター72を回転させる場合に比して、用紙Pが伸長用紙であるか否かを判別するのに要する時間を短縮することができる。
【0133】
また、偏光フィルター72は、副光源部71bにより用紙Pの裏面に照射された光が用紙を透過した後の透過光のうちの偏光方向の光も通過させる。したがって、受光センサー73は、副光源部71bによって用紙Pの裏面に光を照射しない場合に比して、大きい光の強度を検出することができる。
【0134】
これによって、用紙判別部82は、副光源部71bによって用紙Pの裏面に光を照射しない場合に比して大きな検出強度Dの変化に基づき、用紙Pが加熱によって伸長する伸長用紙であるか否かを、副光源部71bによって用紙Pの裏面に光を照射しない場合に比して精度良く判別することができる。
【0135】
そして、用紙判別部82によって用紙Pが伸長用紙であると判別された場合、伸長方向特定部84は、偏光フィルター72を回転させて偏光方向を変化させたときの検出強度Dの変化に基づいて、用紙Pが加熱されたときに伸長する伸長方向を適切に特定することができる。
【0136】
また、用紙判別部82によって用紙Pが伸長用紙であると判別された場合、伸長率算出部86によって、偏光方向が伸長方向であるときの検出強度Dである伸長方向強度Fと、用紙Pが非伸長用紙であるときの伸長方向強度Fとしての基準強度Gとの比率(=G/F)に基づき、用紙Pが加熱されたときに伸長方向に伸長する伸長率Eが算出される。また、画像伸長部87によって、画像形成部20によって用紙Pに形成される対象画像が伸長率Eで伸長方向に伸長される。
【0137】
具体的には、画像伸長部87によって、対象画像が搬送方向Xと主走査方向の2回に分けて、それぞれ伸長方向の伸長率Eに基づき算出された伸長率Ea、Ebで伸長される。これにより、対象画像が伸長方向に伸長率Eに応じて適切に伸長される。
【0138】
尚、画像伸長部87によって対象画像が搬送方向Xに搬送方向伸長率Eaで伸長される場合、露光制御部81が形成する潜像のライン間隔が、搬送方向伸長率Eaに応じて長くされる。これによって、定着部30は、用紙Pを加熱したときに用紙Pが搬送方向Xに搬送方向伸長率Eaに応じて伸長したとしても、ライン間隔が搬送方向伸長率Eaに応じて伸長された対象画像を用紙Pに定着させることができる。
【0139】
また、画像伸長部87によって対象画像が主走査方向に主走査方向伸長率Ebで伸長される場合、ビデオクロック信号の周期が主走査方向伸長率Ebに応じて伸長される。これによって、定着部30は、用紙Pを加熱したときに用紙Pが主走査方向に主走査方向伸長率Ebに応じて伸長したとしても、各画素の主走査方向の幅が主走査方向伸長率Ebに応じて伸長された対象画像を用紙Pに定着させることができる。
【0140】
このように、定着部30は、用紙Pを加熱したときに用紙Pが伸長方向に伸長したとしても、その伸長するときの伸長率Eに応じて伸長方向に伸長された対象画像を用紙Pに定着させることができる。このため、暫くして当該用紙Pをユーザーが取得したときには、当該用紙Pが冷却されて伸長方向に縮小したことに合わせて、当該用紙Pに定着された対象画像も伸長方向に縮小した状態にすることができる。このように、本実施形態の構成によれば、用紙Pの種類に応じて適切な大きさの画像を用紙Pに定着させることができる。
【0141】
尚、上記実施形態において
図1乃至
図9に示した構成等は、本発明に係る実施形態の例示に過ぎず、本発明を上記実施形態に限定する趣旨ではない。
【0142】
例えば、用紙検査装置70に、副光源部71bを備えないように簡素化してもよい。
【0143】
また、画像伸長部87は、ステップS25(
図9)において、ビデオクロック信号VCの周期を主走査方向伸長率Ebに応じて長くすることに代えて、潜像の各ラインに対応する画像データを、各ラインに含まれる画素数が主走査方向伸長率Ebに応じて多くなるように拡大してもよい。例えば、主走査方向伸長率Ebが1.2であり、1ライン分の画像データが800画素で構成されている場合、画像伸長部87は、1ライン分の画像データを、960画素で構成された1ライン分の画像データとなるように拡大してもよい。
【0144】
また、画像伸長部87は、ステップS24(
図9)において、露光制御部81が、露光処理において上記
図3に示す時刻t0から時刻t1までの間、ポリゴンミラー54を回転動作させるときの回転速度を搬送方向伸長率Eaに応じて遅くすることに代えて、露光制御部81が、露光処理において感光体ドラム22を回転動作させるときの回転速度を、搬送方向伸長率Eaに応じて早くするようにしてもよい。例えば、搬送方向伸長率Eaが1.2である場合、画像伸長部87は、感光体ドラム22の回転速度を1.2倍に早めてもよい。
【0145】
また、用紙判別部82は、偏光方向が、搬送方向Xに対して45度をなす方向から、搬送方向Xに対して90度をなす方向まで変化するように、偏光フィルター72を回転させることに替えて、偏光方向が、搬送方向Xから、搬送方向Xに対して180度をなす方向まで変化するように、偏光フィルター72を回転させるようにしてもよい。
【0146】
この場合、偏光方向が、搬送方向Xから、搬送方向Xに対して180度をなす方向まで変化したときの検出強度Dが検出強度記憶部83に記憶されるようになる。このため、伸長方向特定部84は、偏光フィルター72を回転させることなく、検出強度記憶部83に記憶されている検出強度Dのうち、最小値を示す検出強度Dに対応する偏光方向を、伸長方向として特定することができる。