(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記気管内チューブに近接して、前記少なくとも一つの自己拡張要素の上に、生体液の存在及び不存在のうちの少なくとも一方を検出するための少なくとも一つのセンサーをさらに含み、前記吸引ユニットは、前記存在及び前記不存在のうちの少なくとも一方に従って操作される、請求項4または5に記載の気管内装置。
【背景技術】
【0002】
気管内チューブ(ETチューブ又はETTとも称される)は、全身麻酔、集中治療、並びに気道確保及び機械的人工換気のための救急医療に、そして静脈ラインが確立されることができないときの多くの薬剤のための代替経路として使用される。チューブは、気道が閉鎖されず、空気が肺に到達することができることを確実にするために患者の気道内に挿入される。気管内チューブは、患者の気道を保護するための最も信頼性のある利用可能な方法とみなされている。
【0003】
機械換気に関連した肺炎(VAP)は、ETTが使用されるときに起こる一般的な合併症である:細菌感染分泌物の気管内チューブカフを横切っての下気道内への吸引は、VAPにとって主要な危険要因である。かかる吸引は、高容量低圧気管内チューブカフが気管内で膨張されるときに形成される長手方向の折り目に沿って起こる。
【0004】
最近の数年の間、VAPを低減又は回避するための様々な解決策が提案されている。例えば、2007年10月29日に出願された米国特許出願No.2009/0107510は、肺炎の防止のための新規な二層気管内チューブ(ETT)カフが開示されることを記載する。開示された二層ETTは、標準的なHVLPカフをエラストマー材料の第二層で被覆し、層間に滅菌ゲルを挿入したものを含む。二層カフは、気道内で膨張したときに折り目を形成せず、漏れを防止し、標準的なETTカフに起因する肺炎に対する危険を実質的に減少する。
【0005】
別の解決策は、1996年2月21日に出願された米国特許第5725570号に記載され、それはカラーを有する気管内チューブを記載する。チューブに沿って導入される細菌によって起こされる肺炎感染の危険をできるだけ回避するために、抗菌作用を有する少なくとも一つの装置がチューブの外側表面に一つ以上の点で取り付けられる。この装置は、一枚の銀箔、蒸着銀又は銀化合物(銀塩)からなることが好ましく、又はチューブに取り付けられた一定長さのチューブ類であってもよい。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一部の実施形態によれば、気管内装置が提供される。気管内装置は、気管内チューブの少なくとも遠位セグメントが患者の気管内腔に位置されるように気管内に配置されるために寸法及び形状を決定された気管内チューブ、及び前記気管内チューブの周囲表面のまわりに配置され、かつ圧縮状態の第一厚さ及び拡張状態の第二厚さを有する少なくとも一つの自己拡張要素を含み、前記少なくとも一つの自己拡張要素は、湿分を吸収すると前記圧縮状態から前記拡張状態に切り換わる。前記第一厚さは前記第二厚さより薄い。
【0007】
任意選択的には、前記少なくとも一つの自己拡張要素は、前記拡張状態にあるときに前記気管のまわりで円板形状構造を有する。
【0008】
任意選択的には、前記少なくとも一つの自己拡張要素は、圧縮セルロース及びポリ酢酸ビニル(PVA)のうちの少なくとも一つを含む。
【0009】
任意選択的には、前記第二厚さは、前記第一厚さより少なくとも10倍厚い。
【0010】
任意選択的には、前記少なくとも一つの自己拡張要素は、その拡張速度の低速化を可能にするように溶解可能な材料に少なくとも部分的に浸漬される。
【0011】
任意選択的には、気管内装置は、前記少なくとも一つの自己拡張要素の上に、気管内に蓄積された生体液を吸引するために吸引力を付与するための吸引ユニットをさらに含む。
【0012】
さらに任意選択的には、前記吸引ユニットは、前記気管内チューブに近接して、前記吸引力を外部源から前記少なくとも一つの自己拡張要素の上の空間に伝達するためのプラグを有する。
【0013】
さらに任意選択的には、前記吸引ユニットは、前記付与のタイミングを図るための機械弁を有し、前記機械弁は前記吸引力によって操作される。
【0014】
さらに任意選択的には、気管内装置は、前記気管内チューブに近接して、前記少なくとも一つの自己拡張要素の上に、生体液の存在及び不存在のうちの少なくとも一方を検出するための少なくとも一つのセンサーをさらに含み、前記吸引ユニットは、前記存在及び前記不存在のうちの少なくとも一方に従って操作される。
【0015】
さらに任意選択的には、気管内装置は、前記吸引ユニットの操作のタイミングを図るための吸引タイミングユニットをさらに含む。
【0016】
さらに任意選択的には、気管内装置は、前記付与のタイミングを図るための機械弁を有する吸引タイミングユニットをさらに含む。
【0017】
さらに任意選択的には、気管内装置は、前記付与のタイミングを図るためのソレノイドベースの弁を有する吸引タイミングユニットをさらに含む。
【0018】
さらに任意選択的には、前記タイミングは予め設定された期間ごとに実施される。
【0019】
さらに任意選択的には、気管内装置は、前記吸引力が付与されているかどうかを表示するための吸引表示ユニットをさらに含む。
【0020】
任意選択的には、前記気管内チューブは、前記気管における切開を介して進むために寸法及び形状を決定されている。
【0021】
任意選択的には、少なくとも一つの自己拡張要素は、前記周囲表面のまわりに環状に配置される。
【0022】
さらに任意選択的には、気管内装置は、前記少なくとも一つの自己拡張要素の上に、蓄積された生体液を吸引するための吸引力を付与するための内蔵式蠕動ポンプをさらに含む。
【0023】
本発明の一部の実施形態によれば、気管内処置を実施するための方法が提供される。該方法は、以下のことを含む:
内部腔を有する気管内チューブと、その周囲表面のまわりに配置された少なくとも一つの自己拡張要素とを準備すること、但し前記少なくとも一つの自己拡張要素は圧縮状態の第一厚さ及び拡張状態の第二厚さを有し、前記少なくとも一つの自己拡張要素は、湿分を吸収すると前記圧縮状態から前記拡張状態に切り換わる;
前記気管内チューブの遠位セグメントが患者の気管内腔にあるように前記気管内チューブを気管内に配置すること;
前記気管内腔において前記圧縮状態から前記拡張状態に変えるように前記少なくとも一つの自己拡張要素に生体液を吸収させること;及び
気管内処置を実施するために前記内部腔を使用すること。
【0024】
任意選択的に、前記気管内処置は、診断処置、呼吸器処置、及び気管又は肺の処置、例えば薬剤注入からなる群の一つの要素である。
【0025】
本発明の一部の実施形態によれば、気管内チューブのブロッキング要素が提供される。気管内チューブのブロッキング要素は、気管内チューブを密接して受けるために寸法決定された開口を有する支持部材;及び前記気管内チューブの周囲表面のまわりに環状に配置されるように前記支持部材に結合された少なくとも一つの自己拡張要素を含む。前記少なくとも一つの自己拡張要素は、圧縮状態の第一厚さ及び拡張状態の第二厚さを有し、前記少なくとも一つの自己拡張要素は、湿分を吸収すると前記圧縮状態から前記拡張状態に切り換わる。
【0026】
本発明の一部の実施形態によれば、
気管内チューブの少なくとも遠位セグメントが患者の気管内腔に位置されるように気管内に配置されるために寸法及び形状を決定された気管内チューブ;及び
前記気管内チューブの外側に突出し、その横断面領域に延びるように前記気管内チューブの周囲表面のまわりにそれぞれ配置された少なくとも一つの可撓性の吸収要素
を含む気管内装置が提供される。
【0027】
任意選択的には、前記少なくとも一つの可撓性の吸収要素は、湿分を吸収すると厚さを変える。
【0028】
任意選択的には、前記少なくとも一つの可撓性の吸収要素は、スポンジ状の材料から作られる。
【0029】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0031】
【
図1A-1C】
図1Aは、本発明の一部の実施形態による、自己拡張要素を有する気管内装置の遠位先端の概略図である。
図1Bは、本発明の一部の実施形態による、拡張状態の
図1Aの自己拡張要素の引き延ばしである。
図1Cは、本発明の一部の実施形態による、非拡張状態の
図1Aの自己拡張要素の引き延ばしである。
【0032】
【
図1D】
図1Dは、本発明の一部の実施形態による、気道内に配置されるときの
図1Aに描かれた気管内装置の概略図である。
【0033】
【
図1E-1F】
図1E−1Fは、本発明の一部の実施形態による、水又は別の液体溶液を自己拡張要素102の方へ案内することを可能にするための流体案内チューブを有する気管内チューブの概略図である。
【0034】
【
図1G】
図1Gは、本発明の一部の実施形態による、気管切開又は気管開口のための気管内装置の概略図である。
【0035】
【
図2】
図2は、本発明の一部の実施形態による、気管内装置と気管壁の間に蓄積する内容物を除去するための吸引ユニットを有する、
図1Aに描かれた気管内装置の概略図である。
【0036】
【
図3】
図3は、本発明の一部の実施形態による、作動ユニットによって作動される歯車によって制御される弁円板を有する例示的な吸引タイミングユニットの概略図である。
【0037】
【
図4】
図4は、本発明の一部の実施形態による、例示的な弁円板の概略図である。
【0038】
【
図5A-5B】
図5A−5Bは、本発明の一部の実施形態による、開放及び閉鎖状態の吸引タイミングユニットによって制御されるソレノイド弁の例示的な概略図である。
【0039】
【
図5C-5D】
図5C−5Dは、本発明の一部の実施形態による、回転弁の例示的な概略図である。
【0040】
【
図6A-6B】
図6Aは、本発明の一部の実施形態による、真空調整器及び吸引表示ユニットを制御する吸引タイミングユニットを持ち、気管内装置と気管壁の間に蓄積する内容物を除去するための吸引ユニットを有する、
図1Aに描かれた気管内装置の概略図である。
図6Bは、本発明の一部の実施形態による、
図6Aに描かれた吸引表示ユニットの引き延ばしである。
【0041】
【
図7A】
図7Aは、本発明の一部の実施形態による、蠕動ポンプを含む吸引ユニットを有する、
図1Aに描かれた気管内装置の概略図である。
【0042】
【
図7B-7C】
図7B−7Cは、本発明の一部の実施形態による、唾液、血液、食物、及び/又は供給流体が気管内に蓄積されているかどうかを読みとるために置かれたセンサーを有する気管内装置を描く。
【0043】
【
図8】
図8は、本発明の一部の実施形態による、処置及び/又は診断の方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、その一部の実施形態では、医療用送出装置に関し、特に限定されないが、気管内チューブ及びその使用及び製造の方法に関する。
【0045】
本発明の一部の実施形態によれば、呼吸チューブ、呼吸チューブを有する機械的人工換気、肺プローブ案内チューブ、及び薬剤案内チューブのような気管内装置及び方法が提供される。チューブは、湿分を吸収すると任意選択的に拡張される一つ以上の自己拡張要素を使用する気管を介する患者の診断、呼吸、機械的人工換気、及び/又は処置時に唾液のような体液又は供給流体が肺に進むことを阻止するために自己拡張要素を有する。自己拡張要素という用語は、本明細書では、スポンジ状の材料から作られた可撓性の吸収要素のようないかなる可撓性の吸収要素、又は湿分を吸収すると厚さを変化するいかなる要素も記載するために使用されることが注意されるべきである。任意選択的に、気管内装置は、その少なくとも遠位セグメントが患者の気管内腔に位置されるように気管内に配置されるために寸法及び形状を決定された気管内チューブを含む。機械的人工換気装置であってもよい装置のチューブは、任意選択的に気管内チューブの周囲表面のまわりに配置され、かつ圧縮状態と拡張状態を有する一つ以上の自己拡張要素をさらに含む。自己拡張要素は、任意選択的に唾液、食物、供給流体、及び血液のような生体液を吸収すると圧縮状態から拡張状態に切り換えるか、又は気管のような身体の内腔で既に拡張されて配置されることができる。拡張状態の厚さは圧縮状態の厚さより厚く、従ってそれぞれの断面における気管の内壁と気管内チューブの周囲表面の間の間隙は封止されているか及び/又は実質的に閉じられている。任意選択的に、封止は、気管内の感染の防止のために静菌性材料で被覆されることができる。任意選択的に、拡張要素は潤滑剤で被覆される。任意選択的に、周期的に及び/又は一つ以上のセンサーの読みとりに従って操作される吸引ユニットは、気管から唾液、血液、食物、及び/又は供給流体を排出するために使用される。
【0046】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0047】
本発明の一部の実施形態による、自己拡張要素102を有する気管内装置100の遠位先端の概略図である
図1A、及び自己拡張要素102(簡単のため本明細書では拡張状態及び非拡張状態のそれぞれの自己拡張要素102として言及される)の引き延ばしである
図1B及び1Cを参照されたい。
【0048】
気管内装置100は、呼吸及び/又は薬剤送出のため、又は診断目的(プローブ)のための内部腔を有する気管内チューブ101を含む。気管内チューブ101は、一般的に使用される気管内チューブ、例えば機械的人工換気システムの呼吸チューブ、肺診断カテーテル、及び薬剤案内チューブとして本明細書に規定される。気管内チューブ101は、肺又は気管診断のためのプローブ及び/又はセンサー、例えば撮像センサーボアスコープを案内するために使用されてもよい。気管内チューブ101は、その遠位セグメントが患者の気管内腔に位置されるように気管内に配置されるために寸法及び形状を決定されている。任意選択的には、気管内チューブ101は、ポリ塩化ビニル又はシリコーンのような透明プラスチックから作られることが好ましい小さい直径の可撓性チューブを含む。気管内チューブ101の長さは患者の寸法に調整される。例えば、成人の患者のための気管内装置は、30cmより長くかつ1cm直径の気管内チューブ101を有し、幼児のための気管内装置は、20cmより長くかつ0.5cm直径の気管内チューブ101を有する。
【0049】
気管内装置100はさらに、任意選択的に実質的に水平に気管内チューブ101の表面の環状部分を気管内チューブ101の主長手方向軸111に実質的に垂直に取り巻くように位置される一つ以上の自己拡張要素102をさらに含む。それぞれの自己拡張要素102は、気管内チューブ101の横断面を少なくとも実質的に取り巻く一つ以上のセグメントを含んでもよい。例えば、多数のセグメントが共通の面のまわりで互いの側に配置されてもよく、及び/又は平行な面に互いの上に配置されてもよい。
【0050】
使用時には、自己拡張要素102は、気管内で拡張し、唾液、血液、食物、及び/又は供給流体が肺容積中に滴り落ちるのを阻止するように設定される。自己拡張要素102は少なくとも二つの状態、即ち圧縮状態及び非圧縮拡張状態を有する。自己拡張要素102が圧縮状態であるとき、気管内装置100は、内壁上に損傷圧力を付与せずに気管のような限定された直径を有する管状内腔を介して案内されてもよい。しかしながら、自己拡張要素102が拡張状態にあるとき、それらの直径は増加し、可撓性が管状内腔に対して作られる。
【0051】
任意選択的に、自己拡張要素102は、クリスタルバイオレット(一般的な生物学的染料として使用されるゲンチアナバイオレットから誘導される染料)、酸塩基指示薬、及び細菌、真菌、蟯虫、及び他の寄生虫による感染に対する薬剤のような生体適合性材料から作られる。生体適合性材料は任意選択的に多孔質であり、それは生体液を吸収すると拡張し、例えば材料は、圧縮セルロース、及びポリ酢酸ビニル(PVA)、又はブチルアルデヒドとの反応によりPVAから製造されるポリビニルホルマール(PVF)のようなスポンジ状材料である。任意選択的に、自己拡張要素102は、例えば湿分又は生体液に露出されるとき、圧縮状態では約0.2mm厚〜約2mm厚であり、拡張状態では約10倍厚くなる。各自己拡張要素102は、任意選択的に、チューブとして造形され、そのある横断面で直径を拡張するように気管内チューブ101の周囲表面上に結合される。かかる実施形態では、圧縮状態は、多孔質材料が非吸収状態であるときに達成され、拡張状態は、多孔質材料が生体液で吸収されるときに達成される。自己拡張要素102の拡張状態で得られる形状は、チューブ又は円柱ロールに近似し、その圧縮された非吸収状態に対して寸法を拡張させている。任意選択的に、自己拡張要素102は、互いの上に付けられた多数の環状層からなる。異なる層は、生体液に露出されるときに異なる拡張率を持ってもよい。
【0052】
使用において、気管内装置100の少なくとも一部分は鼻又は口腔を通って挿入され、気管の少なくとも一部を通過し、気管内腔で終わる。例えば、気管内装置100が呼吸器官の気管内装置であるとき、気管内腔における気管内チューブの遠位端の設置は、気管内チューブ101の内部腔を介する肺への直接換気を可能にする。
【0053】
気管内装置100の遠位セグメントに任意選択的に置かれる自己拡張要素102は、例えば
図1Dで示されるように封止として機能する。唾液、血液、食物、及び/又は供給流体が肺の方へ落下するとき、拡張状態の自己拡張要素102は気管通路を封止するか又は実質的に閉鎖する。
【0054】
任意選択的に、自己拡張要素102は、その剛性を低下するように及び/又はその拡張時間を低下するように気管内の装置100の配置前に湿潤される。
【0055】
使用において、拡張状態では、自己拡張要素102は、気管内チューブ101と食道壁の間の間隙を満たし、唾液、血液、食物、及び/又は供給流体の全て又は一部が気管から肺に進むことを防止する。かかる自己拡張要素102は能動的であり、作動手段を使用せずに封止を可能にするか又は気管通路を実質的に閉鎖する。
【0056】
本発明の一部の実施形態によれば、自己拡張要素102は、その拡張速度を低下する溶解可能な材料、又はスリーブとして使用される他のポリマー材料で少なくとも部分的に浸漬される。例えば、患者の気管に気管内チューブ101を置くときに自己拡張要素102が生体液を吸収することを抑制するゼラチンベース材料又は他の溶解可能な材料が適用される。かかる方法では、自己拡張要素102は、使用者が気管において気管内チューブ101を容易に位置決定することができる位置決定期間では圧縮状態のままである。ゼラチンベース材料は、気管内チューブ101が気管103の適所にあってから2,3分後に溶解する。位置決定期間の間、オペレータは気管内チューブを過剰な摩擦なしで容易にかつ快適に導入する。気管内チューブ101が適切な位置にあり、圧縮された自己拡張要素102が気管の下方部分にあるとき、ゼラチンは溶解し、自己拡張要素102は周囲から血液及び/又は供給流体を吸収し、結果として拡張する。
【0057】
自己拡張要素102が液を吸収するとき、それは柔らかくなり、より弾性的になることが注目されるべきである。これはその除去を容易にする。
【0058】
任意選択的に、
図1E及び1Fに示されるように、気管内チューブ101に沿って取り付けられる流体案内チューブ251により、水又は別の液体溶液を自己拡張要素102に向かって案内することができる。かかる方法では、自己拡張要素102の拡張が引き起こされてもよい。
図1Eは、案内される水に露出される前の自己拡張要素102を描き、
図1Fは、案内される水に露出した後の自己拡張要素102を描く。
【0059】
気管内装置100は、
図1Gに示されるように、気管切開及び/又は気管開口のために調整されてもよいことが注目されるべきである。かかる実施形態では、気管内チューブ101及び自己拡張要素102は、任意選択的に胸骨切痕と輪状軟骨の間の緩和された皮膚の緊張線(RSTL)に沿った気管における曲線の皮膚の切開のような切開に置くために寸法及び形状を決定されている。かかる実施形態では、気管内装置100は、切開を通って直接的な気道を開く。
【0060】
図2を参照すると、それは、本発明の一部の実施形態による、自己拡張要素102の上に、気管内装置100と気管壁の間に蓄積する内容物を除去するための吸引ユニット600を有する、
図1Aに描かれた気管内装置100の概略図である。吸引ユニット600は別個のユニットとして設定されてもよく、例えばキットの一部として及び/又は別個の製品として及び/又は気管内チューブ101に脱着可能に取り付けられた気管内装置100の一部として与えられてもよい。吸引ユニット600は、例えば607で示される吸引のための一つ以上の開口を有する遠位セグメントを持つ吸引チューブ602を含む。吸引チューブ602は、標準的な手術室の真空システム又はポンプ、例えば小型のピストンポンプ又は蠕動ポンプのような吸引源606に作動可能に接続するように設定される。吸引源606は手動、例えば注射器タイプのプランジャー(図示せず)であってもよい。この吸引ユニット600は、気管内装置100が患者の気管内に挿入されるとき、気管内チューブ101の外壁と気管壁の間に蓄積する血液、食物、及び/又は供給流体を、例えば予め決められた期間ごとに、要求により及び/又は一つ以上のセンサーから受けた信号などにより手動で排出することを可能にする。任意選択的に、
図2に描かれているように、吸引ユニット600は排液タンク603、フィルター604、及び/又は吸引源チューブ608を介して排液タンク603に接続された吸引タイミングユニット605を含む。使用において、排出された生体液は排液タンク603に蓄積される。排液タンク603は、任意選択的に吸引ユニット600に脱着可能に接続される。かかる方法では、排液タンク603は、完全に満されたとき及び/又は時間ごとに空にされてもよい。任意選択的に、導管が排液タンク603に接続され、それはその連続的な抜きとりを容易にする。フィルター604は、吸収源606の方へ排出される液を濾過し、排出された血液、食物、及び/又は供給流体によるその詰まりを防止する。任意選択的に、吸引タイミングユニット605は、弁を開放するように設定される。弁の開放は、蓄積された唾液、血液、食物、及び/又は供給流体を排出するか又は実質的に排出する吸引力の付与を可能にする。吸引タイミングユニット605は、予め決められた吸引期間、例えば10秒、30秒、1分、5分に対して、予め決められた待機期間ごとに、例えば1分、5分、10分、60分、120分ごとに、及び/又は中間又はより長い期間ごとに、及び/又は中間又はより短い期間ごとに、弁を開放するために設定されてもよい。
【0061】
図3は、タービン704のような作動ユニット703によって作動される歯車702によって制御される弁円板701を有する例示的な吸引タイミングユニット750の概略図である。この実施形態では、タービンは、吸引源606から付与される吸引力によって自動的に作動される。タービン作動力経路は数字721,722によって示される。
【0062】
弁円板701は、吸引源チューブ608の先端と吸引源606の間を接続する吸引力導管705の横断面に置かれる。歯車702は、弁円板701を予め設定されたペースで回転するように設定され、それは任意選択的に、
図4に描かれているように、吸引力開口セグメント801及びブロッキング表面セグメント802で造形されている。吸引力開口セグメント801が吸引力チューブ608の横断面に置かれるとき、吸引力が適用される。予め設定されたペースは、一定の予め規定された待機期間(即ち、ブロッキング表面セグメント802が吸引源チューブ608の横断面に置かれるとき)及び一定の予め規定された吸引期間(即ち、吸引力開口セグメント801が吸引源チューブ608の横断面に置かれるとき)を確保する。
図5A及び5Bは、本発明の一部の実施形態による、開閉状態の吸引タイミングユニット605によって制御されるソレノイド弁711の例示的な概略図である。ソレノイド弁711は、吸引チューブ602の先端と吸引源606の間を接続する吸引源チューブ608の横断面をブロックするために置かれる。吸引力をブロックするために、ソレノイドは吸引源チューブ608に圧力を付与する。吸引力を促進するために、圧力が開放される。
【0063】
図5C及び5Dは、回転弁の例示的な概略図である。本発明の一部の実施形態によれば、
図5Cでは、流体チューブ内で回転する板は吸引を調整し、
図5Dでは、二つの車輪を側方に取り付けた回転レバーがチューブに交替可能に圧力を付与し、それを開閉状態に動かすように設定される。
【0064】
追加的に又は代替的に、吸引力は、インピーダンスセンサーのような一つ以上のセンサーの読みとりに従って付与されてもよい。かかる実施形態では、吸引タイミングユニット605はインピーダンスセンサーの読みとりを受けとり、それに応じて吸引力弁及び/又は吸引源606を操作する。吸引タイミングユニット605は電池及び/又は外部AC電力によって操作されてもよい。任意選択的に、吸引タイミングユニット605は、病院及び/又は救急車及び/又は入院施設の吸引源606のソケットに適応されたプラグを有する。排出は、例えばチューブに接続された注射器で手でなされてもよい。
【0065】
図6Aを参照すると、それは、本発明の一部の実施形態による、自己拡張要素102の上に、気管内装置100と気管壁の間で蓄積する内容物を除去するための別の吸引ユニット800を有する、
図1Aに描かれた気管内装置100の概略図である。この実施形態では、吸引ユニット800は、例えば上記のように、一つ以上のセンサーの読みとりに従って及び/又は周期的に吸引力を調整するために真空調整器811を制御する吸引タイミングユニットを有する。任意選択的に、吸引ユニット800は、例えば
図6A、及び
図6Bに描かれている吸引表示ユニット810の引き延ばしにおいて描かれているように、任意選択的に機械的な、吸引表示ユニット810をさらに含む。吸引表示ユニット810は、吸引力が吸引ユニット800によって付与されるかどうかを表示する。例えば、
図6Bに描かれた実施形態では、ベロー811の下方端812は吸引ユニット800の吸引力導管705に接続されている。ベロー811の上方端813は、吸引力導管608における吸引力に応じて高められるか又は低められる表示部814に接続される。高さの変化は、任意選択的に透明ポリマー材料から作られる表示窓817から見ることができる。任意選択的に、表示部は、異なる色、例えば赤815及び緑816で交換可能に着色され、従って一方の色は低い圧力を示し、他方の色は高い圧力を示す。追加的に又は代替的に、固体状態は、高い圧力を示すために付与されてもよい。
【0066】
図7を参照すると、それは、本発明の一部の実施形態による、自己拡張要素102の上に、気管内装置100と気管壁の間で蓄積する内容物を除去するための別の吸引ユニット900を有する、
図1Aに描かれた気管内装置100の概略図である。吸引ユニット900は、気管内に付与された吸引力を使用時に変化する蠕動ポンプ901を含む。蠕動ポンプ901は任意選択的に内蔵され、例えば使用者がそれを操作するときに要求により及び/又はセンサーの読みとりに従って及び/又は周期的に、吸引タイミングユニット605によって操作されてもよい。例えば、
図7Bは、唾液、血液、食物、及び/又は供給流体が気管内に蓄積されているかどうかを読みとるために置かれるセンサー751を描く。センサー751は、その読みとりを吸引ユニットに送るように導電線753に接続される。吸引のためのチューブ752はまた、ここで描かれる。
図7Cは、拡張モードの自己拡張要素102を描く。任意選択的に、導電線753は、センサー753の読みとりに従って血液、食物、及び/又は供給流体の吸引を制御又は調整するコントローラに接続される。
【0067】
図8を参照すると、それは、本発明の一部の実施形態による、呼吸、処置、及び/又は診断の方法1200のフローチャートである。まず、1201で示されるように、内部腔を有する、101のような気管内チューブが準備される。気管内チューブは、呼吸のため、又は薬剤及び/又はpHセンサー、撮像センサー、流体センサーなどの一つ以上の診断センサーのために内部腔を有してもよい。
【0068】
図1Aで示されるような一つ以上の自己拡張要素102は、気管内チューブ101の周囲表面に環状に結合される。自己拡張要素102は、例えば上記のように圧縮状態にある。例えば、自己拡張要素102は、生体液吸収速度を低下するためにゼラチンベースの材料で浸漬されたPVAから作られる。任意選択的に、自己拡張要素102は、気管内の気管内チューブ101の位置決めを容易にするために潤滑剤で被覆される。
【0069】
さて、1202で示されているように、気管内チューブは、その遠位端が例えば
図1Dで示されるように患者の気管内腔にあるように気管内に配置される。これは、例えば上記のように、1203で示されるように自己拡張要素102を拡張可能にする。拡張は、例えば上記のように、気管を封止するか又は実質的に閉鎖する気管内チューブ101のまわりに環状要素を形成する。上記のように、自己拡張要素102は、任意選択的に肺の上に位置され、気管通路を封止するか又は実質的に閉鎖することによって唾液、血液、食物、及び/又は供給流体をブロックするために拡張する。1204で示されるように、気管内チューブ101は、呼吸、及び/又は気管内腔又は肺の処置を直接実施するために使用されてもよい。例えば、気管内チューブ101は、全身麻酔、集中治療及び気道確保のための救急医療に、及び/又は前記内部腔を介する薬剤の送出のために使用される呼吸チューブである。
【0070】
本出願から成熟する特許の存続期間の期間中には、多くの関連する装置および方法が開発されることが予想され、センサーの用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を先験的に包含することが意図される。
【0071】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0072】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。この用語は、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0073】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、特許請求される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0074】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0075】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0076】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0077】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0078】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0079】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0080】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0081】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0082】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。