(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5970462
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】低アウトガス用熱伝導性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 299/00 20060101AFI20160804BHJP
C09D 171/00 20060101ALI20160804BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20160804BHJP
C09J 171/00 20060101ALI20160804BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20160804BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
C08F299/00
C09D171/00
C09D7/12
C09J171/00
C09J11/04
C09J11/06
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-537579(P2013-537579)
(86)(22)【出願日】2012年10月5日
(86)【国際出願番号】JP2012076040
(87)【国際公開番号】WO2013051721
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年9月4日
(31)【優先権主張番号】特願2011-221850(P2011-221850)
(32)【優先日】2011年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 隼人
(72)【発明者】
【氏名】深尾 健司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慶次
【審査官】
井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/041708(WO,A1)
【文献】
特開2006−274094(JP,A)
【文献】
特開2001−302936(JP,A)
【文献】
特開平03−014873(JP,A)
【文献】
特開2000−063873(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/125636(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−299/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)成分、
(A)絶縁性を有する熱伝導性フィラー、
(B)加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール、
(C)有機チタン系硬化触媒、
(D)シランカップリング剤、
を含有し、
前記(A)成分は(A−1)平均粒径0.1μm以上2μm未満のフィラー成分、(A−2)平均粒径2μm以上20μm未満のフィラー成分、及び(A−3)平均粒径20μm以上100μm以下のフィラー成分を含有し、
(A)成分中の(A−1)、(A−2)及び(A−3)成分の混合割合(質量%)は、(A−1)<(A−2)<(A−3)の関係を満たす、
熱伝導性組成物。
【請求項2】
(B)成分が、粘度300〜3,000mPa・s、重量平均分子量3,000〜25,000の加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである請求項1記載の熱伝導性組成物。
【請求項3】
(B)成分が、(B−1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである請求項1〜2のうちの1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項4】
(B)成分が、(B−2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである請求項1〜2のうちの1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項5】
(B)成分が、(B−1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール、及び(B−2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールを含有してなる請求項1〜2のうちの1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項6】
(A)成分は熱伝導性組成物全体に対して60〜95質量%の量であり、(C)成分は(B)成分に対して0.01〜10質量%の量であり、(D)成分は(B)成分に対して0.01〜10質量%の量である請求項1〜5のうちの1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項7】
前記熱伝導性組成物から得られる硬化体が、柔軟な物性を示す、請求項1〜6のうちの1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項8】
湿気硬化型である請求項1〜7のうちの1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項9】
低アウトガス用である請求項1〜8のうちの1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項10】
光ピックアップモジュール用である請求項1〜9のうちの1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のうちの1項に記載の熱伝導性組成物を含有してなる放熱材。
【請求項12】
請求項1〜10のうちの1項に記載の熱伝導性組成物を含有してなる接着剤。
【請求項13】
請求項1〜10のうちの1項に記載の熱伝導性組成物を含有してなる塗布剤。
【請求項14】
請求項1〜10のうちの1項に記載の熱伝導性組成物を電子部品に塗布することにより、電子部品から発生した熱を外部へ放熱させる放熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性を有する組成物に関する。本発明は、例えば、発熱した熱を外部へ放熱させる放熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の集積化、高密度化、高性能化に伴い、電子部品自身の発熱量が大きくなってきている。熱によって、電子部品は、その性能が著しく低下、もしくは故障し得ることから、電子部品の効率的な放熱が重要な技術になってきている。
【0003】
電子部品の放熱方法として、発熱する電子部品と放熱器の間や、発熱する電子部品と金属製伝熱板との間に放熱材を導入し、電子部品から発生する熱を他の部材に伝えることにより、電子部品に蓄積させない方法が一般的である。この種の放熱材として放熱グリース、熱伝導性シート、熱伝導性接着剤等が用いられている。
【0004】
放熱グリースを用いた場合は、発熱量が多量であるため、グリース成分が蒸発してしまったり、グリース油と熱伝導性フィラーが分離してしまったりする。蒸発成分は、電子部品に悪影響を及ぼす可能性があるため好ましくない。フィラーと分離したグリース油は、電子部品から流出して電子部品を汚染する恐れがある(特許文献1参照)。
【0005】
熱伝導性シートを用いると、成分の流出の問題は解決するが、電子部品と放熱器等が、固体のシート状の物に押し付けられるため、両間の密着性に不安が残り、電子部品がずれてしまう恐れがある(特許文献2参照)。
【0006】
熱伝導性接着剤を用いると、その硬化性により、蒸発したり、液状成分が流れたり、電子部品を汚染したりすることはない。しかし、硬化の際に電子部品に応力がかかり、電子部品がずれてしまう恐れがある。接着した物を取り外す作業は困難であり、更に電子部品を破壊してしまう恐れがある(特許文献3参照)。
【0007】
それらに対して、電子部品と放熱材の間の表面部分のみが硬化し、内部には未硬化部分が残る熱伝導性接着剤が提案された。この熱伝導性接着剤は、電子部品と放熱材との密着性に優れ、内部に未硬化部分があるので、電子部品と放熱材との間の応力を取り除くことができ、取り外し作業を簡便にできる(特許文献4,5)。
【0008】
架橋性シリル基を平均して少なくとも一個有するビニル系重合体、及び、熱伝導性充填材を含有することを特徴とする放熱シート用組成物が記載されている(特許文献6)。
架橋性シリル基を平均して少なくとも一個有するビニル系重合体、及び、熱伝導性充填材を含有し、硬化前の粘度が3000Pa・s以下の、流動性を有する室温にて硬化可能な組成物を発熱体と放熱体との間に塗布した後、発熱体と放熱体との間にて硬化させてなる、硬化後の厚みが0.5mm未満の熱伝導材料が記載されている(特許文献7)。
シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有するポリオキシアルキレン系重合体および/ またはシロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有する( メタ) アクリル酸エステル系重合体、α 位に置換基を有するβ − ジカルボニル化合物でキレート化したチタニウムキレート、窒素置換基と加水分解性ケイ素基を有する化合物、を含有することを特徴とする硬化性組成物が記載されている(特許文献8)。
【0009】
最近では、更なる高熱伝導性に加えて絶縁性が要求され、用い得る熱伝導性フィラーが制限され、フィラーの高充填化が必要となってきている。
【0010】
更に、これら高熱伝導性接着剤の硬化触媒に使用されている材料として、主に有機錫系触媒が広く使用されているが、最近では有機錫系化合物の毒性が指摘されており、非有機錫系触媒を用いた材料設計が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平3−162493号公報
【特許文献2】特開2005−60594号公報
【特許文献3】特開2000−273426号公報
【特許文献4】特開2002−363429号公報
【特許文献5】特開2002−363412号公報
【特許文献6】特開2006−274094号公報
【特許文献7】特開2010−543331号公報
【特許文献8】特開2005−325314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来の熱伝導性接着剤は、未硬化成分が存在するため接着性に不安が残る、内部が未硬化であるために硬化時間が遅い、といった課題があった。更に絶縁性を付与した放熱材では、得られる熱伝導率に限りがあった。又、電子部品の小型化や製品の細部での使用のため、熱伝導性接着剤成分からのアウトガスによる、電子部品への汚染が指摘されてきている。アウトガスとは、例えば、ガス状汚染物質等の揮発成分をいう。加えて、環境上の問題で、非有機錫系触媒を使用しない材料設計が必要とされてきている。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するため、高い作業性、速い硬化性、高い熱伝導性、低アウトガス性を有する非有機錫系硬化型の組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは熱伝導性接着剤に関する研究する中で、下記(A')〜(D')成分を含有する樹脂組成物を調整し、その物性を評価した。
(A')フィラー
(B')加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール
(C')硬化触媒
(D')シランカップリング剤
しかしながら、単純にこれらの成分を混合しただけでは、高い作業性、速い硬化性、高い熱伝導性、及び低アウトガス性を有する樹脂組成物が得られないことに気がついた。
【0015】
その後、本発明者らはさらなる研究を行う過程で、上記の(A)〜(D)成分を含有する樹脂組成物が、「有機チタン系硬化触媒」及び「平均粒径の異なる3種類の絶縁性を有する熱伝導性フィラー成分」を含有しているときにのみ、高い作業性、速い硬化性、高い熱伝導性、及び低アウトガス性を達成できることを発見した。このような「有機チタン系硬化触媒」及び「平均粒径の異なる3種類のフィラー成分」を併用すること、及びそれによって得られる効果は、上記の特許文献1−8には記載されておらず、本願発明者らが初めて明らかにしたことである。
【0016】
即ち本発明によれば、下記(A)〜(D)成分、
(A)絶縁性を有する熱伝導性フィラー、
(B)加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール、
(C)有機チタン系硬化触媒、
(D)シランカップリング剤、
を含有し、
前記(A)成分は、(A−1)平均粒径0.1μm以上2μm未満のフィラー成分、(A−2)平均粒径2μm以上20μm未満のフィラー成分、及び(A−3)平均粒径20μm以上100μm以下のフィラー成分を含有する、熱伝導性組成物が提供される。
【0017】
なお好ましくは、上記(B)成分は、粘度300〜3,000mPa・s、重量平均分子量3,000〜25,000の加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである。好ましくは、上記(B)成分は、(B−1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである。好ましくは、上記(B)成分は、(B−2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである。好ましくは、上記(B)成分は、(B−1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール及び(B−2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールを含有してなる。好ましくは、上記(A)成分は、熱伝導性組成物全体に対して60〜95質量%の量であり、上記(C)成分は(B)成分に対して0.01〜10質量%の量であり、上記(D)成分は(B)成分に対して0.01〜10質量%の量である。好ましくは、上記熱伝導性組成物から得られる硬化体は、柔軟な物性を示す。好ましくは、上記熱伝導性組成物は、湿気硬化型である。好ましくは、上記熱伝導性組成物は、低アウトガス用である。好ましくは、上記熱伝導性組成物は、光ピックアップモジュール用である。
【0018】
また本発明によれば、上記熱伝導性組成物を含有してなる、放熱材が提供される。また本発明によれば、上記熱伝導性組成物を含有してなる、接着剤が提供される。また本発明によれば、上記熱伝導性組成物を含有してなる、塗布剤が提供される。また本発明によれば、上記熱伝導性組成物を電子部品に塗布することにより、電子部品から発生した熱を外部へ放熱させる放熱方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の組成物は、高い作業性、速硬化性、高熱伝導性、低アウトガス性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、同様な内容については繰り返しの煩雑を避けるために、適宜説明を省略する。
【0021】
本実施形態で使用する(A)成分のフィラーとしては、酸化アルミニウム等のアルミナ、酸化亜鉛、窒化アルミ、窒化ホウ素等、熱伝導性が高く、絶縁性を有するフィラーが好ましい。熱伝導性フィラーは、球状、破砕状等の形状のものであってよい。
【0022】
本実施形態で使用する(A)成分のフィラーは、(A−1)平均粒径0.1μm以上2μm未満のフィラー成分、(A−2)平均粒径2μm以上20μm未満のフィラー成分、(A−3)平均粒径20μm以上100μm以下のフィラー成分といった、3種類のフィラーを併用してもよい。
【0023】
(A−1)成分の平均粒径は、高い作業性、速い硬化性、高い熱伝導性、及び低アウトガス性の観点からは、0.1μm以上2μm未満が好ましく、0.2μm以上1μm以下がより好ましく、0.3μm以上0.8μm以下が最も好ましい。この平均粒径は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、又は1.99μmであってもよく、それらいずれか2つの範囲内であってもよい。(A−2)成分の平均粒径は、高い作業性、速い硬化性、高い熱伝導性、及び低アウトガス性の観点からは、2μm以上20μm未満が好ましく、2μm以上10μm以下がより好ましく、3.5μm以上8μm以下が最も好ましい。この平均粒径は、例えば、2、3、3.5、4、5、6、7、8、9、10、13、15、18、又は19.9μmであってもよく、それらいずれか2つの範囲内であってもよい。(A−3)成分の平均粒径は、高い作業性、速い硬化性、高い熱伝導性、及び低アウトガス性の観点からは、20μm以上100μm以下が好ましく、30μm以上80μm以下がより好ましく、35μm以上60μm以下が最も好ましい。この平均粒径は、例えば、20、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、又は100μmであってもよく、それらいずれか2つの範囲内であってもよい。なお本実施形態において「平均粒子径」には、体積平均粒子径を採用してもよい。また平均粒子径は、例えば、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径として求めてもよい。
【0024】
上記の3種類の(A)成分の混合割合としては、(A−1)、(A−2)及び(A−3)の合計100質量%中、(A−1)成分は5〜25質量%、(A−2)成分は20〜40質量%、(A−3)成分は45〜65質量%が好ましい。最密充填を考慮する観点から、(A−1)成分は10〜20質量%、(A−2)成分は25〜35質量%、(A−3)成分は50〜60質量%がより好ましい。なお、(A−1)成分は、例えば、5、10、15、20、25、又は30質量%であってもよく、それらいずれか2つの範囲内であってもよい。(A−2)成分は、例えば、15、20、25、30、35、40、又は45質量%であってもよく、それらいずれか2つの範囲内であってもよい。(A−3)成分は、例えば、40、45、50、55、60、65、又は70質量%であってもよく、それらいずれか2つの範囲内であってもよい。(A)成分中の(A−1)、(A−2)及び(A−3)成分の混合割合(質量%)は、(A−1)<(A−2)<(A−3)の関係を満たすことが好ましい。
【0025】
フィラーとしては、熱伝導性フィラーが好ましい。(A)成分としては、電子部品近辺に塗布する観点から、絶縁性を有する熱伝導性フィラーが好ましい。熱伝導性フィラーの絶縁性としては、電気抵抗値が10
8Ωm以上であることが好ましく、電気抵抗値が10
10Ωm以上であることがより好ましい。この電気抵抗値は、例えば、10
8、10
9、10
10、10
11、又は10
12Ωmであってもよく、それらいずれかの値以上、又はそれらいずれか2つの範囲内であってもよい。電気抵抗値とは、JIS R 2141に従って測定した、20℃体積固有抵抗をいう。
【0026】
(A)成分のフィラーの含有量は、本実施形態の熱伝導性組成物全体に対して60〜98質量%が好ましく、70〜97質量%がより好ましい。60質量%以上であれば熱伝導性能が十分であり、70質量%以上であれば特に熱伝導性能が優れている。また、98質量%以下であれば電子部品と放熱材との接着性が大きくなる。(A)成分のフィラーの含有量は、例えば、60、63、65、70、75、80、85、90、94、95、97、又は98質量%であってもよく、それらいずれか2つの範囲内であってもよい。
【0027】
本実施形態で使用する(B)加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールは、ケイ素原子に加水分解性基が結合したポリアルキレングリコールをいう。例えば、ポリアルキレングリコールの分子鎖の両末端又は片末端に、加水分解性シリル基が結合した化合物等が挙げられる。ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。これらの中では、ポリプロピレングリコールが好ましい。加水分解性基としては、例えば、カルボキシル基、ケトオキシム基、アルコキシ基、アルケノキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基等が結合したもの等が挙げられる(例えば、旭硝子社製「S−1000N」、カネカ社製「SAT−010」、「SAT−115」)。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。(B)成分の粘度は、ハンドリング性の観点からは、300〜3,000mPa・sであることが好ましく、500〜1,500mPa・sがより好ましい。この粘度は、例えば、300、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、2000、2500、又は3000mPa・sであってもよく、それらいずれか2つの範囲内であってもよい。(B)成分の重量平均分子量は、3,000〜20,000であることが好ましく、4,000〜15,000がより好ましい。この重量平均分子量は、例えば、3000、4000、4500、5000、5500、6000、7000、10000、12000、15000、17000、17500、18000、18500、19000、又は20000mPa・sであってもよく、それらいずれか2つの範囲内であってもよい。重量平均分子量とは、GPC(ポリスチレン換算)により測定した値をいう。具体的には、下記の条件にて、溶剤としてテトラヒドロフランを用い、GPCシステム(東ソ−社製SC−8010)を使用し、市販の標準ポリスチレンで検量線を作成して重量平均分子量を求めた。
流速:1.0ml/min
設定温度:40℃
カラム構成:東ソー社製「TSK guardcolumn MP(×L)」6.0mmID×4.0cm1本、および東ソー社製「TSK−GELMULTIPOREHXL−M」7.8mmID×30.0cm(理論段数16,000段)2本、計3本(全体として理論段数32,000段)
サンプル注入量:100μl(試料液濃度1mg/ml)
送液圧力:39kg/cm
2
検出器:RI検出器
【0028】
(B)成分の中では、(B−1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール、又は(B−2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールが好ましい。防振性が必要な場合、(B−1)成分と、(B−2)成分とを併用することが好ましい。(B−1)成分と、(B−2)成分とを併用する場合、それらの混合比は、質量比で、(B−1):(B−2)=2〜50:50〜98が好ましく、5〜40:60〜95がより好ましく、10〜30:70〜90が最も好ましい。また、(B−1)÷(B−2)で表される質量比率は、例えば、0、0.1、1.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1であってもよく、それらいずれか2つの範囲内であってもよい。
【0029】
本実施形態で使用する(C)成分の有機チタン系硬化触媒は、前記加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールの縮合反応を促進する化合物であることが好ましい。又、低アウトガス性の観点から、硬化触媒の配位子を限定させることが好ましい。(C)有機チタン系硬化触媒としては、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、チタンブトキシドダイマー、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド等のアルコキシド系、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等のケトエステル系、チタニウムジ−2−エチルヘキソキシビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、チタニウム−テトラキス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、テトラキス−2−エチルヘキソキシチタン等のジオレート系、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)等のヒドロキシアミネート系、チタンラクテート等のヒドロキシアシレート系、テトライソプロピルチタネートが挙げられる。これらの中では、低アウトガスの観点より、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、チタンブトキシドダイマー、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、チタニウムジ−2−エチルヘキソキシビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、チタニウム−テトラキス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、テトラキス−2−エチルヘキソキシチタンテトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネートからなる群のうちの1種以上が好ましく、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、テトライソプロピルチタネート、チタンアセチルアセトネートからなる群のうちの1種以上が最も好ましい。
【0030】
(C)成分の硬化触媒の含有量は、低アウトガスの観点より、(B)成分に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。0.1質量%以上であれば硬化促進の効果が確実に得られるし、10質量%以下であれば充分な硬化速度を得ることができる。この含有量は、例えば、0.01、0.05、0.1、0.3、0.5、0.7、1、1.5、2、2.5、2.8、3、3.2、3.5、4、5、8、又は10質量%であってもよく、それらいずれか2つの範囲内であってもよい。
【0031】
本実施形態で使用する(D)成分のシランカップリング剤は、硬化性、安定性を向上させるために使用するものであり、公知のシランカップリング剤が使用可能である。シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシシリルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、安定性の観点から、ビニルトリメトキシシランが好ましい。これらの中では、硬化性の観点から、3−グリシドキシプロピルメチルトリメトキシシラン及び/又は3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0032】
(D)成分のシランカップリング剤の含有量は、(B)成分に対して0.1〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。0.1質量%以上であれば保存安定性が十分であり、20質量%以下であれば硬化性と接着性が大きくなる。ビニルトリメトキシシランの場合は、(B)成分に対して0.1〜5質量%が好ましい。3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランの場合は、(B)成分に対して7〜15質量%が好ましい。なおこの含有量は、例えば、0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は20質量%であってもよく、それらいずれか2つの範囲内であってもよい。
【0033】
本実施形態では、更に添加剤として、有機溶剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、チクソ性付与剤等も必要により使用することができる。
【0034】
本実施形態の組成物は、例えば、熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物である。本実施形態の熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物は空気中の湿分により硬化することができる。
【0035】
本実施形態の組成物は、高精度固定した部材に塗布する点で、その硬化体が柔軟な物性を示すものであることが好ましい。硬化体の柔軟性としては、デュロメーターアスカー硬度計「CSC2型」による硬度が90以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。硬度が90以下であることが、硬化物による歪みが全く発生しない観点から、好ましい。
【0036】
本実施形態の組成物は、例えば、CPUやMPU等の演算回路、光ピックアップモジュール等の精密機器を使用したレーザーダイオードに適用される。本実施形態の組成物は、例えば、金属製伝熱板等の放熱材として使用される。
【0037】
本実施形態の組成物は、上記精密機器等に使用されるため、電子部品への汚染を抑えることが好ましい。電子部品への汚染を測定する一つの指針として、本実施形態の組成物の硬化体のアウトガス成分を測定することが挙げられる。硬化体からのアウトガス成分の全体量が少なければ電子部品への汚染性も低減できる。アウトガス成分の測定としては、硬化体をバイアル瓶に採取し、窒素ガスにて置換・封入し、バイアル瓶を70℃×4hrs加熱後、気層部をヘッドスペースガラガスクロマトグラフ−質量分析(Combi−PAL Agilent 6890GC−5973N HS−GC−MS システム)により測定し、検出された総イオン量のうち検出されるm/z値が50〜500の成分が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。この質量分析において、%とは、m/z値のピーク面積の%をいう。
【0038】
本発明の一実施形態は、上記熱伝導性組成物を硬化して得られる硬化体である。この硬化体は、柔軟性と低アウトガス性に優れている。また、本発明の一実施形態は、上記硬化体を用いた、電子部品におけるアウトガスの抑制方法である。
【0039】
なお、本明細書において「又は」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。
【0040】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、上記実施形態に記載の構成を組み合わせて採用することもできる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例及び比較例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。結果を表1〜7に示した。
【0042】
(実施例1)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール(ベースポリマーA、粘度800mPa・s、重量平均分子量5,000、カネカ社「SAT115」)30g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール(ベースポリマーB、粘度1,300mPa・s、重量平均分子量18,000、旭硝子社「S−1000N」)70g、チタン系硬化触媒A(ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、日本曹達社「T−50」)3g、熱伝導性フィラーA−1(平均粒径0.5μmの酸化アルミニウム、電気抵抗値が10
11Ωm以上、住友化学社製「AA−05」)240g、熱伝導性フィラーA−2(平均粒径5μmの酸化アルミニウム、電気抵抗値が10
11Ωm以上、電気化学工業社製「DAW−05」)480g、熱伝導性フィラーA−3(平均粒径45μmの酸化アルミニウム、電気抵抗値が10
11Ωm以上、電気化学工業社製「DAW−45S」)880g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0043】
(実施例2)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA−1 240g、熱伝導性フィラーA−2 480g、熱伝導性フィラーA−3 880g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0044】
(実施例3)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール10g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール90g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA−1 240g、熱伝導性フィラーA−2 480g、熱伝導性フィラーA−3 880g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0045】
(実施例4)
メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール100g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA−1 240g、熱伝導性フィラーA−2 480g、熱伝導性フィラーA−3 880g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0046】
(実施例5)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA−1 160g、熱伝導性フィラーA−2 480g、熱伝導性フィラーA−3 960g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0047】
(実施例6)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA−1 320g、熱伝導性フィラーA−2 480g、熱伝導性フィラーA−3 800g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0048】
(実施例7)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA−1 400g、熱伝導性フィラーA−2 480g、熱伝導性フィラーA−3 720g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0049】
(実施例8)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA−1 160g、熱伝導性フィラーA−2 560g、熱伝導性フィラーA−3 880g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0050】
(実施例9)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA−1 320g、熱伝導性フィラーA−2 400g、熱伝導性フィラーA−3 880g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0051】
(実施例10)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA−1 240g、熱伝導性フィラーA−2 320g、熱伝導性フィラーA−3 1040g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0052】
(実施例11)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA−1 240g、熱伝導性フィラーA−2 400g、熱伝導性フィラーA−3 960g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0053】
(実施例12)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA−1 240g、熱伝導性フィラーA−2 560g、熱伝導性フィラーA−3 800g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0054】
(実施例13)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA−1 240g、熱伝導性フィラーA−2 640g、熱伝導性フィラーA−3 720g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0055】
(実施例14)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA−1 264g、熱伝導性フィラーA−2 530g、熱伝導性フィラーA−3 968g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0056】
(実施例15)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒B(チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTA-30」)0.5g、熱伝導性フィラーA−1 264g、熱伝導性フィラーA−2 530g、熱伝導性フィラーA−3 968g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン13g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0057】
(実施例16)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒C(チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTC-200」)0.5g、熱伝導性フィラーA−1 264g、熱伝導性フィラーA−2 530g、熱伝導性フィラーA−3 968g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン13g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0058】
(実施例17)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒D(テトライソプロピルチタネート、マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTA-10」)0.5g、熱伝導性フィラーA−1 264g、熱伝導性フィラーA−2 530g、熱伝導性フィラーA−3 968g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン13g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0059】
(実施例18)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒E(チタンアセチルアセトネート、マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTC-100」)0.5g、熱伝導性フィラーA−1 264g、熱伝導性フィラーA−2 530g、熱伝導性フィラーA−3 968g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン13g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0060】
(実施例19)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒E(チタンアセチルアセトネート、マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTC-100」)3g、熱伝導性フィラーA−1 264g、熱伝導性フィラーA−2 530g、熱伝導性フィラーA−3 968g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン13g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0061】
(比較例1)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒(有機金属化合物、日本化学産業製「プキャットB7」)3g、熱伝導性フィラーA−1(平均粒径0.5μmの酸化アルミニウム、電気抵抗値が10
11Ωm以上)400g、熱伝導性フィラーA−2(平均粒径5μmの酸化アルミニウム、電気抵抗値が10
11Ωm以上)480g、熱伝導性フィラーA−3(平均粒径45μmの酸化アルミニウム、電気抵抗値が10
11Ωm以上)720g、ビニルトリメトキシシラン3g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0062】
(比較例2)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒3g、熱伝導性フィラーA−1 240g、熱伝導性フィラーA−2 480g、熱伝導性フィラーA−3 880g、ビニルトリメトキシシラン3g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0063】
(比較例3)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒3g、熱伝導性フィラーA−1 80g、熱伝導性フィラーA−2 1520g、ビニルトリメトキシシラン3g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0064】
(比較例4)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒3g、熱伝導性フィラーA−1 10g、熱伝導性フィラーA−2 1590g、ビニルトリメトキシシラン3g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0065】
(比較例5)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒3g、熱伝導性フィラーA−1 480g、熱伝導性フィラーA−3 1120g、ビニルトリメトキシシラン3g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0066】
(比較例6)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒3g、熱伝導性フィラーA−2 480g、熱伝導性フィラーA−3 1120g、ビニルトリメトキシシラン3g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0067】
(比較例7)
比較として市販されている湿気硬化型放熱樹脂「製品名:ThreeBond 2955(スリーボンド社製)」を評価した。
【0068】
(実施例20〜22)
表6に示す組成の熱伝導性樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0069】
(比較例8〜12)
表7に示す組成の熱伝導性樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0070】
(平均粒径評価)
平均粒径評価は「島津製作所製 SALD−2200」を用い、レーザー回析・散乱法にて測定した。
【0071】
(熱伝導率評価)
上記で得られた各組成物を使用して熱伝導率の評価を行った。熱伝導率の評価は、「NETZSCH社製 LFA447」を用い、レーザーフラッシュ法にて、25℃で測定した。熱伝導率は物質中の熱の伝わり易さを表す値であり、熱伝導率は大きいほうが好まれる。
【0072】
(タックフリー評価)
23℃・50%RH雰囲気下にて上記で得られた組成物を幅20mm×長さ20mm×厚さ5mmの型枠に流し込んで暴露させ、触指した。流し込んでから指に付着しなくなるまでの時間をタックフリー時間と定義し評価を行った。タックフリー時間は作業性や硬化性の一つの指針であり、タックフリー時間が長すぎると生産性が落ち、タックフリー時間が短すぎると作業途中で硬化が始まり、不良の発生原因となる。作業状況により求められるタックフリー時間の範囲は変わってくるが、作業性が良い観点から、10〜70分が好ましく、40〜60分がより好ましい。
【0073】
(硬度評価)
幅60mm×長さ40mm×厚さ5mmの各組成物を23℃・50%RH雰囲気下で10日間養生した試験片について、アスカー高分子計器社製、デュロメーターアスカー硬度計「CSC2型」により硬度の測定を行った。測定値が小さい場合、柔軟性を有する。
【0074】
(粘度測定)
粘度は、適切な値を示すことが好ましい。粘度の評価は「Anton Paar社製 レオメーター(型番:MCR301)」を用いて測定した。粘度測定はハンドリング性の一つの指針であり、粘度が高すぎると塗布性が悪く作業できなくなる。熱伝導性を向上させたい場合にはフィラー充填量を多くすると良いがハンドリング性が悪くなるため、粘度は、小さいことが好ましい。液状成分が流れたり、電子部品を汚染したりするのを防ぐためには、粘度は、大きいことが好ましい。
【0075】
(アウトガス測定)
各組成物の0.2gを20mLのバイアル瓶に採取し窒素ガスにて置換・封入した。70℃×4Hrs.加熱後の気層部をヘッドスペース−ガスクロマトグラフ−質量分析(HS−GC−MS)にて測定した。検出される総イオン量のうち検出されるm/z値50〜500の成分が全体の15%以下であればアウトガス性は問題なしとし、10%以下であれば特に問題なしとした。%は、検出されるm/z値のピーク面積の%である。15%以下であればアウトガス性は問題なしとする理由は、電子部品への汚染性を確認したところ、問題とならない基準値であったためである。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
以上の結果によると、本発明は優れた効果を示すことが分かる。実施例1〜6、実施例8〜9、実施例11〜12、実施例14〜22は、3種類の(A)成分の混合割合が、より好ましい範囲内にあるため、より優れた効果を示す。また、(B−1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール、及び(B−2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールを併用した場合、実施例1〜3、実施例5〜21は、3種類の(A)成分と2種類の(B)成分の混合割合が、より好ましい範囲内にあるため、より優れた効果を示す。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本熱伝導性組成物は、例えば、熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物である。本熱伝導性組成物は、高い作業性と高い熱伝導性を有し、硬化後の柔軟性と速硬化性が非常に良好であり、高精度に固定化された電子部品の放熱媒体として最適である。本熱伝導性組成物は、硬化速度が向上するため、高い生産性を有する。本熱伝導性組成物は、硬化の際に電子部品に応力をかけないほど軟らかい柔軟性を示す。本熱伝導性組成物は低アウトガス性を示すため、電子部品への汚染が低減されており、高い耐久性を有する電子部品を得ることができる。特に、光ピックアップモジュール等の精密機器に使用した場合、レーザーダイオードへの汚染が無く、レーザーダイオードは長期耐久性を有する。光ピックアップモジュールは、例えば、レーザーダイオード等の発光素子からの出射光を各種レンズ、プリズム、ミラー等を介して対物レンズに導き、光ディスク上で集光させた後に、光ディスクからの戻り光を、各種レンズ、プリズム、ミラー等を介してフォトダイオード等で受光し、光電気信号に変換する構成になっている。光ピックアップモジュールは、光ディスクの記録・再生に用いられる。本熱伝導性組成物を光ピックアップモジュールにおける放熱材(例えば、対物レンズを固定する電子部品への塗布剤や、電子部品を接着するための接着剤)に使用した場合、各種レンズ等に付着するアウトガスの量が少なくなるので、各種レンズ等の光学特性が低下し難い。
【0085】
本熱伝導性組成物は、例えば、放熱材、接着剤、塗布剤として使用できる。本熱伝導性組成物は、例えば、1剤常温湿気硬化型放熱材として使用できる。本熱伝導性組成物を発熱する電子部品に塗布することにより、電子部品から発生した熱を外部へ放熱させることができる。