特許第5970467号(P5970467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

<>
  • 特許5970467-赤色放射発光材料 図000004
  • 特許5970467-赤色放射発光材料 図000005
  • 特許5970467-赤色放射発光材料 図000006
  • 特許5970467-赤色放射発光材料 図000007
  • 特許5970467-赤色放射発光材料 図000008
  • 特許5970467-赤色放射発光材料 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5970467
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】赤色放射発光材料
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/64 20060101AFI20160804BHJP
   F21V 9/16 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   C09K11/64
   F21V9/16 100
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-541455(P2013-541455)
(86)(22)【出願日】2011年11月28日
(65)【公表番号】特表2014-504312(P2014-504312A)
(43)【公表日】2014年2月20日
(86)【国際出願番号】IB2011055329
(87)【国際公開番号】WO2012073177
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年11月6日
(31)【優先権主張番号】10193251.5
(32)【優先日】2010年12月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ペテル ヨゼフ
(72)【発明者】
【氏名】メイル ワルテル
(72)【発明者】
【氏名】シュライネマヒェル ベイビー−セリヤティ
(72)【発明者】
【氏名】メイエル ヨエルグ
(72)【発明者】
【氏名】ベヒテル ハンス−ヘルムト
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−093912(JP,A)
【文献】 特開2003−243726(JP,A)
【文献】 特開2006−213910(JP,A)
【文献】 特開2006−089547(JP,A)
【文献】 特表2009−534863(JP,A)
【文献】 特開2009−221318(JP,A)
【文献】 特開2004−161806(JP,A)
【文献】 特開2009−096882(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/087348(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/64
F21V 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
6μm以上の平均粒子径分布d50を持ち、組成式が(Ba1−x−y−zSrCaEuSi5−a−bAl8−a−4ba+4bで表される材料であって、0.3≦x≦0.9、0.01≦y≦0.04、0.005≦z≦0.04、0≦a≦0.2、且つ、0≦b≦0.2である、材料。
【請求項2】
0.02≦y≦0.04である、請求項1記載の材料。
【請求項3】
0.35≦x≦0.8である、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
0<b≦0.2である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の材料。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の材料を有する、発光構造体。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の材料を有する、及び/又は、請求項記載の発光構造体を有する、システムであって、前記システムは、以下のアプリケーション、
オフィス照明システム、
家庭用アプリケーションシステム、
店舗照明システム、
家庭照明システム、
アクセント照明システム、
スポット照明システム、
シアター照明システム、
光ファイバーアプリケーションシステム、
投射システム、
自己照明ディスプレイシステム、
ピクセル化されたディスプレイシステム、
セグメント化されたディスプレイシステム、
警告標識システム、
医療用照明アプリケーションシステム、
標識システム、
装飾用照明システム、
携帯システム、
自動車用アプリケーション、
温室照明システム
のうち、1又は複数において使用される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光デバイスのための新規の発光材料、とりわけ、LEDのための新規の発光材料の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスト材料として、ケイ酸塩、リン酸塩(例えば、リン灰石)、アルミン酸塩を有し、活性化材料として、遷移金属又は希土類金属がホスト材料に添加された、蛍光体が広く知られている。とりわけ、青色LEDは、近年、実用的になってきているため、かかる青色LEDを上記の蛍光体材料と組み合わせて利用した白色光源の開発が、精力的に推し進められている。
【0003】
特に、赤色放射発光材料が関心の的となっており、例えば、米国特許第6680569(B2)号の『Red Deficiency Compensating Phosphor for a Light Emitting Device』や、国際公開第2005/052087A1号などから、幾つかの材料が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、幅広いアプリケーションで使用でき、且つ、とりわけ、最適化された発光効率及び演色を有する温白色の蛍光体被覆発光ダイオード(pcLED)を製造可能とする、橙赤色放射発光材料に対する、なお継続的な要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、幅広いアプリケーションで使用でき、且つ、とりわけ、最適化された発光効率及び演色を有する温白色のpcLEDを製造可能とする、材料を提供することである。
【0006】
この目的は、本発明の請求項1に記載の材料によって解決される。従って、6μm以上の平均粒子径分布d50を持ち、組成式が(Ba1−x−y−zSrCaEuSi5−a−bAl8−a−4ba+4bで表される材料であって、0.3≦x≦0.9、0.01≦y≦0.1、0.005≦z≦0.04、0≦a≦0.2、且つ、0≦b≦0.2である、材料が提供される。
【0007】
「(Ba1−x−y−zSrCaEuSi5−a−bAl8−a−4ba+4b」なる用語は、特に、及び/又は、追加的に、本質的に当該組成を持つ、任意の材料を意味する、及び/又は、含むことに留意すべきである。このことは、本発明において言及される全ての他の材料についても同様である。
【0008】
「本質的に」なる用語は、特に、95%以上、好ましくは97%以上、最も好ましくは99%以上の質量百分率を意味する。しかしながら、幾つかのアプリケーションでは、微量の添加剤がバルク組成物中に存在してもよい。これらの添加剤は、特に、例えば当業者にとってフラックスとして知られる種類のものを含む。適切なフラックスは、アルカリ土類の若しくはアルカリの、金属酸化物、ホウ酸塩、リン酸塩及びフッ化物といったハロゲン化物、塩化アンモニウム、SiO、及び、同種の物、並びに、これらの混合物を含む。
【0009】
かかる材料は、以下の利点のうちの少なくとも1つを有するように、本発明の範囲内で、幅広いアプリケーションに対して示される。
−上記材料を発光材料として使用して作られたLEDは、改善された照明特性、特に熱的安定性を示す。
−より小さな粒子径を持つ材料と比較して、材料の光安定性が大幅に向上される。
−上記材料は、比較可能な材料よりも高い放射を持つ。
【0010】
同様の材料は、例えば、米国特許第7,671,529号から知られている。しかしながら、驚くべきことに、本発明で説明されるような材料組成を用いることにより、実際のアプリケーションに依存して、より大きな粒子径を有する材料及び更なる好適な材料特性がもたらされ得ることが分かった。
【0011】
任意の理論に縛られることなく、本発明者は、特に、上記カルシウムの量がより大きな粒子をもたらすと信じている(このことは、より詳細に後述されるであろう)。
【0012】
従って、本発明は、平均粒子径を大きくするための、窒化ケイ素材料におけるカルシウムの使用にも関する。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、0.02≦y≦0.04である。このようなカルシウムの量が、より大きな粒子径をもたらすために既に十分である一方、より多いカルシウム量が、発光バンドの不要な拡大、ひいては、蛍光体材料の低下された発光効率につながる可能性があることが分かっている。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、0.35≦x≦0.8であり、即ち、バリウムの量は、約20mol%〜約60mol%程度である。このことは、結果として生じる材料の改善された発光効率のために、多くのアプリケーションに対して好適であることが分かっている。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、0<b≦0.2であり、即ち、上記材料は、酸素を有する。驚くべきことに、このことは、本発明に含まれる多くのアプリケーションにおいて、上記材料の光安定性を大幅に増加させることが分かった。任意の理論に縛られることなく、窒素原子を架橋するケイ素を含む少量のSiN四面体が、MSi格子から除去され、結果として生じる電荷が、末端酸素原子によって補償されると信じられている。しかしながら、ほとんどのアプリケーションにおいて、酸素量は、高過ぎるべきでない、即ち、bは、0.2を超えるべきでないことが分かっている。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、10%未満の蛍光体粒子が、2μm以下の平均直径を示す。これにより、ほとんどのアプリケーションに対して光安定性が向上されるため、このことは、好適であることが分かっている。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、90%以上の蛍光体粒子に対して、最も長い粒子端の長さと最も短い粒子端の長さの比は、5以下である。
【0018】
上述のように、本発明は、平均粒子径を大きくするための、窒化ケイ素材料におけるカルシウムの使用に関する。これは、本発明の好ましい実施形態に関する限り、MSi5−a−bAl8−a−4ba+4b(0≦a≦2、且つ、0<b≦2)タイプの材料に特に当てはまる。
【0019】
カルシウムの本発明の使用は、幾つかが、粒子径を向上するために知られている、フラックス材料の既知の使用とは異なることに留意すべきである。本発明によれば、カルシウムは、本質的に、粉末中に均一に分布される一方、フラックス材料は、通常、不純物を別にすれば、発光材料の一部でない。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記材料は、MSi5−a−bAl8−a−4ba+4bであって、Mは、二価の金属イオンであり、0≦a≦2、且つ、0≦b≦2である構造を持つ。
【0021】
本発明の好ましい他の実施形態によれば、上記材料は、本発明に従った構造を持つ。
【0022】
本発明は、更に、本発明に従った少なくとも1つの材料を有する発光構造、特にLEDに関する。
【0023】
本発明は、本発明に従った材料を有する、及び/又は、本発明の上記方法に従って作られた材料を有する、システムであって、以下のアプリケーション、
オフィス照明システム、
家庭用アプリケーションシステム、
店舗照明システム、
家庭照明システム、
アクセント照明システム、
スポット照明システム、
シアター照明システム、
光ファイバーアプリケーションシステム、
投射システム、
自己照明ディスプレイシステム、
ピクセル化されたディスプレイシステム、
セグメント化されたディスプレイシステム、
警告標識システム、
医療用照明アプリケーションシステム、
標識システム、
装飾用照明システム、
携帯システム、
自動車用アプリケーション、
温室照明システム
のうち、1又は複数において使用される、システムに関する。
【0024】
上記のコンポーネント、請求項記載のコンポーネント、及び、上記実施形態において本発明に従って使用されるコンポーネントは、関連分野において既知の選択基準が限定なしに適用されるように、大きさ、形状、材料選択、及び、技術概念に関して、いかなる特例にも影響されない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の目的の、追加的な詳細、特徴、特性、及び、利点は、下位の請求項、図面、並びに、本発明に従った独創的な材料の幾つかの実施形態及び例を例示的に示す各図面及び各例の以下の説明において開示される。
図1図1は、本発明の例Iに従った材料の走査電子顕微鏡像を示している。
図2図2は、本発明の例IIに従った材料の走査電子顕微鏡像を示している。
図3図3は、比較例に従った材料の走査電子顕微鏡像を示している。
図4図4は、本発明の材料及び比較用の材料をそれぞれ有する2つのpcLEDについて、層の厚みに対する放射パワーのグラフを示している。
図5図5は、図4の本発明の材料及び比較用の材料をそれぞれ有する2つのpcLEDについて、波長に対する放射のグラフを示している。
図6図6は、図5の2つのpcLEDについて、CIEx色座標の関数としての総放射パワーのグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
・実験の項
【0027】
以下の発明は、図面とともに、単なる例示目的のためであり、且つ、拘束力のない、以下の例によって、更に理解されるであろう。
【0028】
・一般的な生成方法
【0029】
本発明又は比較用に関わらず、全ての材料は、以下の処方(及び同様の方法)に従って作られた。
【0030】
x=0、0.01、及び、0.02で変化する、(Ba0.485−0.5xSr0.485−0.5xCaEu0.03Si4.990.047.96組成の蛍光体は、(99%を超える純度のバリウムの棒の水和反応によって作られた)BaH、(99%を超える純度のストロンチウム顆粒の水和反応によって作られた)SrH、CaH(アルドリッチ社(登録商標))、(Euと炭素及びシリコンナイトライドとを1400℃で反応させることによって作られた)EuSi、及び、Ba+Sr+Ca+Eu/Si=0.417のモル比を有するSi(UBE SN E−10)の混合、並びに、モリブデンの炉において、H/N雰囲気下で、1620℃で、中間ボールミリングとともに2度燃やすことによって準備された。ボールミリング後、スクリーニング、及び、塩酸、水、イソプロパノールで粉末の洗浄が行なわれ、最終的に乾燥され、粉末の蛍光体が得られた。
【0031】
粒成長へのカルシウム添加の顕著な効果は、表Iから分かるように、粒子径分布(Beckman Coulter LS 200系列のレーザ回折粒子分析器を用いたレーザ散乱によって測定される、所与の体積分率に対する平均粒子直径)の変更によって観測することができる。
【表1】
【0032】
図1図3は、本発明例I、本発明例II、及び、比較例(カルシウム無し)の粉末の走査電子顕微鏡像をそれぞれ示している。
【0033】
本発明の材料の好適な特徴を更に示すために、本発明例III(下記参照)及び比較例の光安定性が調査された。
【0034】
表IIから分かるように、10W/cmの青色光を260℃の蛍光体温度で1時間放射した後の放射強度減少は、本発明例IIIでは、わずか6%であったのに対し、比較例II(カルシウム無し)では、31%の減少を示すことが分かった。
【表2】
【0035】
さらに、本発明例III及び比較例IIに従った材料を有するpcLEDの光学的特性が調査された。図4は、本発明例III(菱型を参照)及び比較例II(三角形を参照)の材料についての層の厚みに対するpcLED(444nmのピーク放射を有する、青色LED上の赤色蛍光体層)の総放射パワーを示している。両方の系において、層の厚みとともにパワーが減少しているが、本発明に従った材料を具備するpcLEDは、常に、より高い出力パワーを有している。
【0036】
図5は、本発明例III(「A」、実線)及び同等の青色放射を持つ比較例II(「B」、点線)に従った材料から作られた層の、(444nmピーク放射の)青色LED上の赤色蛍光体層の2つの放射スペクトルを示している。本発明に従った材料を用いたpcLEDは、約6%の追加的な光を供給する。
【0037】
図6は、図5の2つのpcLEDについてのCIEx色座標の関数として、総放射パワーのグラフを示している(「A」及び「B」は、図5における「A」及び「B」と同じ意味を持つ)。CIE色座標は、LED放射スペクトルにおける青色光に対する赤色光の比の指標として役立つ。図から、本発明の材料の効率における利点が、光の変換の増加とともに増すことが明確に分かる。
【0038】
上記の詳細な実施形態における要素及び特徴の特定の組み合わせは、単なる例示であり、これらの教示と他の教示との交換及び置換、並びに、参照により本願に組み込まれる特許/出願も明らかに考えられる。当該技術分野における当業者は、ここで述べられる物の変形、修正、及び、他の実装が、本発明の概念及び範囲を逸脱しないように、当業者が気付くことを理解するであろう。従って、以下の説明は、単なる例示であり、限定としての意図はない。請求項中、「有する」なる用語は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属項において言及されているという単なる事実は、これらの特徴の組み合わせが好適に用いられないということを示すものではない。本発明の範囲は、以下の請求項及び均等なものにおいて規定される。さらに、明細書及び請求項中で用いられた参照符号は、本発明の範囲を制限しない。
【0039】
・方法
【0040】
平均直径は、光散乱に基づく以下の工程によって測定されてもよい(「XU, R. Particle Characterization: Light Scattering Methods, Kluwer Academic Publishers, Dordrecht (2000)」を参照)。測定される粉末は、懸濁性を安定させるために添加された分散剤を有する脱塩水などの液状媒質において懸濁される。適用可能な散乱モデルに基づく、散乱角、散乱波長、及び、偏光の関数としての散乱強度の測定を通じて粒子径分布についての情報を得るため、粒子懸濁は、レーザ回折によって分析される。かかる方法は、本来、絶対的なものであり、校正機器の必要はない。
【0041】
あるいは、粒子径は、顕微鏡(光学顕微鏡、走査電子顕微鏡)を用いて直接測定されてもよく、粒子径分布は、イメージ処理工程に基づいて計算されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6