(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
再充電可能電池(6)によって電気的に補助される自転車(1)の電気装置を駆動するための電子システム(50)であって、前記電気装置は、前記電池から電力供給される電動機として、または前記電池を充電する発電機として動作するように構成されており、
前記システムは、
−前記自転車のペダルアームの角速度(Sω_ped)および前記ペダルアームのトルク(Sτ_ped)を測定するように構成された測定モジュール(8)と、
−前記電動機の角速度(Sω_mot)を測定するように構成されたセンサーと、
−前記電池の充電状態を検出するように構成された回路(23)と、
−プロセッサ(20)であって、
●前記電動機の角速度の関数として自転車速度を計算するステップ、
●前記ペダルアームの測定されたトルクおよび前記ペダルアームの測定された角速度の関数として人力(Pum)を計算するステップ、
●前記自転車の乗り手が前記電動機の角速度の関数として、かつ前記自転車速度の関数としてペダルをこぐ時に、前記乗り手および前記自転車により生じる摩擦力を表す前記自転車の摩擦力(Pattr)を推定するステップであって、前記摩擦力(Pattr)は、式Pattr=v×Fattr(v)で計算され、式中、vは前記自転車の速度であり、Fattr(v)は、速度vの関数として前記自転車の摩擦値を示す、前記自転車のコーストダウン関数である、ステップ、
●計算された人力と推定された自転車摩擦力を比較して前記電池の充電状態をチェックするステップ(101)、
●前記計算された人力が前記推定された自転車摩擦力より大きいか、または等しいことを検出した場合、かつ前記電池の充電状態が第一の閾値(Ssdc_min)より大きいか、または等しいことを検出した場合に、電動機として前記電気装置を動作し、かつ電動機として動作する前記電気装置を駆動するための、前記電池から供給される駆動電流値(ΔImot)を生成するステップ(103)であって、前記駆動電流値(ΔImot)は、前記人力(Pum)と前記摩擦力(Pattr)との差の関数として、かつ前記電池の充電状態の関数として計算される、ステップ(103)、ならびに
●前記計算された人力が前記推定された自転車摩擦力より小さいことを検出した場合に、発電機として前記電気装置を動作し、かつ前記人力の少なくとも一部を発電機として動作する前記電気装置によって電力に変換し、前記人力の少なくとも一部から変換された前記電力から発電機として動作する前記電気装置から前記電池を充電するための別の駆動電流値(Ichg)を生成するステップ(105)、
を実行するように構成される、プロセッサ(20)と、
を備える、電子システム。
前記自転車が走行中の道路の傾斜角を測定するように構成されたセンサー(9)をさらに備え、前記計算された人力が前記推定された自転車摩擦力より大きいか、または等しいことを検出した場合について、前記プロセッサ(20)は、
●前記道路の推定傾斜角がゼロより大きいか、または等しい場合、電動機として動作する前記電気装置を駆動するための駆動電流値(ΔImot)を生成するステップ(153)、および
●前記道路の推定傾斜角がゼロより小さい場合、発電機として動作する前記電気装置から前記電池を充電するための別の駆動電流値(Ichg)を生成するステップ(154)、
を実行するようにさらに構成される、請求項1に記載の電子システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に参照する
図1は、本発明の1つの実施形態による電気的補助自転車を模式的に示したものである。
【0013】
自転車1は、電池6、制御モジュール7、ペダルアームの角速度およびペダルアームのトルクを測定するための測定モジュール8、電動機ハウジング5を備える。好ましくは、自転車1は、走行中の道路の傾斜角を測定するための傾斜角センサー(
図1に図示せず)を備える。たとえば、この傾斜角センサーは、ペダルアームアセンブリ内に配置される。
【0014】
電池6および制御モジュール7は、たとえば、自転車フレームの前方部をペダルアームアセンブリ支持部に接合する部分に配置される。
【0015】
測定モジュール8は、
図1に模式的に示したペダルアームアセンブリ内に配置される。
【0016】
電動機ハウジング5は、たとえば、
図1に示すように前輪内に取り付けられるか、あるいは後輪内に取り付けられる。電動機ハウジング5は以下を備える。
−前輪に機械的に結合する電気装置
−電動機の角速度ω
mot(たとえば毎分の回転数)を測定するための電動機センサー
【0017】
たとえば、電動機ハウジング5が後輪内に取り付けられる場合、電気装置は前輪のハブに結合される。代替的に、電気装置は他の種類の支持部に取り付けられ、自転車は電動機から前輪または後輪に機械的動力を伝える伝達部材を備える。
【0018】
電動機ハウジング5に取り付けられる電気装置という用語は、本記述において、第一および第二の動作モードを有するような電気装置を意味する。第一の動作モードにおいて、電気装置は、電池6によって電力供給される電動機として動作し、電池6によって供給される電力を機械的動力に変換して電動機を回転させることにより、自転車1の走行に寄与する。第二の動作モードにおいて、電気装置は、電池6を充電するための発電機として動作する。
【0019】
電動機センサーは、たとえば、電動機の相対位置に関する情報を供給する一体型ホールセンサーを備え、その情報から電動機の相対位置を導出することによって電動機の速度が得られる。
【0020】
制御モジュール7は、電気装置および電池6を制御するための機能を有し、これにより、電気装置は第一のモードで電動機として動作するか、または第二のモードで発電機として動作する。
【0021】
次に参照する
図2は、自転車1の電気装置を駆動するための電子システム50を示す。
【0022】
電子システム50は以下を備える。
−自転車1のペダルアームの角速度ω
motおよび自転車1のペダルアーム上の乗員が発生するトルクΤ
pedの測定機能を有する測定モジュール8
−電動機の角速度ω
motを測定する電動機センサー(簡明のため
図2には示していないが、電動機センサーは電動機ハウジング5に収納されている)
−制御モジュール7
【0023】
具体的には、測定モジュール8は、自転車1のペダルアームの角速度ω
motを測定するとともに、ペダルアーム速度信号S
ω_pedを生成して、自転車1のペダルアームの角速度ω
pedの測定結果を示す働きをする。さらに、測定モジュール8は、自転車1のペダルアーム上の乗員が発生するトルクΤ
pedを測定するとともに、自転車1のペダルアーム上の乗員が発生するトルクΤ
pedの測定結果を示すペダルアームトルク信号S
τ_pedを生成する。
【0024】
有利点として、測定モジュール8を単一コンポーネントで実装し、ペダルアーム速度信号S
ω_pedとペダルアームトルク信号S
τ_pedの両方を出力するようにできる。たとえば、Alfred Thun GmbH(www.thun.de)が製造する「センサーBBカートリッジX−CELL RT」を使用することができ、この製品は、下記リンクからダウンロード可能な文書に記載された技術的特徴を有する。
www.thun.de/thun_eng/Datenblatt%20X−CELL_GB.pdf
【0025】
電動機センサーは、電動機の角速度ω
motを測定するとともに、電動機の角速度ω
motの測定結果を示す電動機速度信号S
ω_motを生成する。
【0026】
電気装置が電動機として動作する時、制御モジュール7は、入力側でペダルアーム速度信号S
ω_pedおよびペダルアームトルク信号S
τ_pedを受け取り、入力側で電動機速度信号S
ω_motを受け取り、同じく電池6に関連した1つ以上の電気的値を示す電池信号S
batを電池6から受け取り、同じく電池6の出力電流を運ぶ充電/放電電流信号I
csを電池6から受け取るとともに、電動機として動作する電気装置に供給するために充電/放電電流I
csを運ぶ電動機電流信号I
motを生成する。これらの働きについては、後述の該当箇所でより詳しく説明する。
【0027】
さらに、電気装置が発電機として動作する時、制御モジュール7は、入力側でペダルアーム速度測定信号S
ω_pedおよびペダルアームトルク測定信号S
τ_pedを受け取り、同じく電動機速度測定信号S
ω_motを受け取り、同じく電池信号S
batを電池6から受け取り、同じく発電機の出力電流を運ぶ電動機電流信号I
motを電動機ハウジング5から受け取るとともに、電池6を再充電するために電動機電流I
motを運ぶ充電/放電電流信号I
csを生成する。これらの働きについては、後述の該当箇所でより詳しく説明する。
【0028】
好ましくは、電子システム50は、自転車が走行している道路の勾配θ
strを測定するための傾斜角センサー9をさらに備える。傾斜角センサー9は、自転車が走行中の道路勾配θ
strを測定するとともに、自転車が走行中の道路勾配θ
strの測定結果を示す勾配信号S
θ_strを生成する。この場合、制御モジュール7は、電気装置が電動機として動作する時に勾配信号S
θ_strの値をさらに考慮に入れることにより、電動機に供給するための電動機電流信号I
motを生成する。これらの働きについては、後述の該当箇所でより詳しく説明する。
【0029】
次に参照する
図3は、制御モジュール7をより詳しく示したものである。制御モジュール7は以下を備える。
−プロセッサ20
−電流管理モジュール22
−電池6の充電状態を検出する充電状態検出回路23
【0030】
プロセッサ20は、自転車1の電動機ハウジング5内の電気装置を駆動するために、
図4aに示す方法100および
図4bに示す方法150を実行する。この方法は、複数のソフトウェアコード部分を用いて実装されるアルゴリズムによって実行される。たとえば、プロセッサ20はマイクロコントローラであり、ソフトウェアコードは「ANSI C」コードを用いて実装される。
【0031】
充電状態検出回路23は、電池信号S
batを受け取るとともに、その値の関数として、電池6の充電状態を示す充電状態信号S
sdcを計算する。たとえば、電池6は複数のセルから構成され、電池信号S
batはそれらのセルの電圧の値であり、充電状態信号S
sdcは電池6の充電状態を示す比率で表現される値である(例:100%=電池6が完全に充電された状態、50%=電池6が半分充電された状態)。
【0032】
プロセッサ20は、入力側でペダルアーム速度信号S
ω_ped、ペダルアームトルク信号S
τ_ped、電動機速度信号S
ω_mot、および充電状態信号S
sdcを受け取るとともに、入力側で受け取った信号値の関数として、電動機としての第一の動作モードを示す第一の論理値(たとえば低論理値)および発電機としての第二の動作モードを示す第二の論理値(たとえば高論理値)を有する選択信号S
selを生成する。さらに、プロセッサ20は、電池6を充電するための充電/放電電流信号I
csの値または電動機を駆動するための電動機電流信号I
motの値を運ぶ処理済み信号S
elabを生成する。
【0033】
電流管理モジュール22は、電池6と電気装置の間の電流の方向を制御する機能を有する。具体的には、電流管理モジュール22は、プロセッサ20から処理済み信号S
elabおよび選択信号S
selを受け取る。選択信号S
selが電動機としての第一の動作モードを示す第一の論理値を有する時、電流管理モジュール22は、電池6から充電/放電電流I
cs信号を受け取り、その充電/放電電流信号I
csに等しく、処理済み信号S
elabの値に応じた値を有する電動機電流信号I
motを送出する。選択信号S
selが発電機としての第二の動作モードを示す第二の論理値を有する時、電流管理モジュール22は、発電機から電動機電流I
mot信号を受け取り、その電動機電流I
mot信号に等しく、処理済み信号S
elabの値に応じた値を有する充電/放電電流I
cs信号を送出する。
【0034】
本発明を説明するために、プロセッサ20から電流管理モジュール22に情報を運ぶ2つの信号(S
sel、S
elab)について検討してきたが、これは非限定的な例として他の方法によっても実装可能な機能説明を意図したものであることに注意されたい。たとえば、プロセッサ20を電流管理モジュール22に接続するバスを使用することが可能である。この場合、プロセッサ20は、たとえばCAN型(コントローラエリアネットワーク)であるバス上の通信プロトコルによって電流管理モジュール22と情報を交換する。
【0035】
次に参照する
図4aは、本発明の第一の実施形態による電気的補助自転車1の電気装置を駆動する方法100のフローチャートを模式的に示したものである。
【0036】
この方法100は、ステップ101、103、105を含む。
【0037】
ステップ101において、人力P
umと摩擦力P
attrの比較が行われる。人力が摩擦力より大きいか、または等しい場合にはステップ103が実行され、他の場合にはステップ105が実行される。
【0038】
人力P
umという用語は、自転車1のペダルアーム上の乗員がペダルをこいでいる時に発生する動力を意味する。言い換えれば、これは乗員が足でペダルアームを押している時に費やすエネルギーの大きさである。たとえば、人力P
umは次式(1)で計算される。
P
um=Τ
ped×ω
ped (1)
【0039】
ここで、Τ
pedは自転車1のペダルアーム上の乗員が発生するトルクであり、かつω
pedは自転車1のペダルアームの角速度である。
【0040】
摩擦力P
attrという用語は、たとえば、乗員と空気の摩擦、自転車1と空気の摩擦、自転車1のホイールと地面の摩擦、ペダルの動きを後輪に伝達する自転車のギアの摩擦など、ペダルをこいでいる時に乗員および自転車によって生じる摩擦のために無駄に消費される動力の推定値を意味する。たとえば、摩擦力P
attrは次式(2)で計算される。
P
attr=R
rt×F
attr(v)×ω
rt (2)
【0041】
ここで、R
rtは自転車1の前輪半径であり、ω
rtは自転車1の前輪の角速度であり、vは自転車1の速度(たとえば式v=ω
rt×R
rtで計算される)であり、F
attr(v)(「コーストダウン」関数として知られている)は自転車1の速度の関数としての自転車の摩擦値を示し、たとえば、停止するまでペダルをこがない自転車の下り坂試験によって実験的に求められる。たとえば、関数F
attr(v)は、F
attr(v)=F
0+a×v
2という種類の放物線形状を有する(F
0およびaは所定の値)。
【0042】
本発明を説明するために、ω
mot=ω
rtと単純化していることに注意されたい。すなわち、自転車1の前輪の角速度ω
rtが前輪の電動機ハウジング5内に取り付けられた電動機の角速度ω
motに等しい(たとえば、電動機の角速度と前輪の角速度の比率を低下させるギアが存在しない)と仮定している。
【0043】
さらに、図示した実施形態では、電動機ハウジング5が前輪に取り付けられていると仮定しているが、電動機ハウジング5が後輪内に取り付けられている場合にも同様の考察が可能であることに注意されたい。この場合、ω
rtは後輪の角速度であり、ω
motは後輪の電動機ハウジング内に取り付けられた電動機の角速度になる。
【0044】
ステップ103では、電池6によって電力供給される電動機としての電気装置を駆動するための電動機電流信号I
motの値について、時間tから時間(t−1)までの変化量ΔI
motが計算される。すなわち、I
mot(t)=I
mot(t−1)+ΔI
mot(t)となる。たとえば、時間tと(t−1)の間隔は20μsよりも小さく、少なくとも50Hzの計算頻度に対応する。
【0045】
本記述において、ΔI
mot>0は、電気装置が電動機として動作し、したがって電動機電流が電池6から電動機に向かって流れ、電池から電動機に電流が供給されることを示すものとする。このとき、電気エネルギーが自転車1の前輪を回転させるための機械的エネルギーに変換される。
【0046】
電動機電流信号ΔI
motの値の変化量ΔI
motは、人力P
umと摩擦力P
attrの差ΔPの関数として、かつ充電状態信号S
sdcの値の関数として計算される。
【0047】
たとえば、電動機電流信号の値の変化量ΔI
motは次式(3)で計算される。
ΔI
mot=β(S
sdc)×[ΔP/(k
T×ω
rt)] (3)
上式において、
−k
Tは電動機の電気定数
−ΔP=P
um−P
attr (4)
ただし、
●P
um=τ
ped×ω
ped (5)
●P
attr=R
rt×F
attr(v)×ω
rt (6)
−β(S
sdc)は、充電状態信号S
sdcの関数であり、電池6の充電状態に依存する。
【0048】
具体的には、関数β(S
sdc)は、充電状態信号S
sdcに
正比例する。たとえば、関数β(S
sdc)は、値0から値1に大きく増加する傾向を有し、充電状態信号S
sdcが最小閾値S
sdc_min(ゼロより大きい)の時に値0を取り、充電状態信号S
sdcが最大閾値S
sdc_max(S
sdc_minより大きい)の時に値1を取る。最小閾値S
sdc_minおよび最大閾値S
sdc_maxは、あらかじめ規定されるか、または乗員によって変更可能であり、たとえば、S
sdc_min=0.1およびS
sdc_max=0.6になる。
【0049】
好ましくは、関数β(S
sdc)は
図5に示す傾向を有し、その傾向はS
sdc_minとS
sdc_maxからなる範囲において実質的に線形に増加している。
【0050】
ステップ105では、電池6を充電する発電機としての電気装置の動作に関する電動機電流信号I
motの値が計算される。本記述において、I
mot<0は、電気装置が発電機として動作し、したがって電流I
motが発電機から電池6に向かって流れ、発電機が自転車1の前輪の機械的動力を電力に変換するとともに、再充電される電池6に向かう電流を発生させることを示すものとする。これにより、電池6において電力が化学エネルギーに変換されて電池6内に保存される。
【0051】
ステップ105における電動機電流信号I
motの値は、自転車1の速度vの関数として、かつ充電状態信号S
sdcの値の関数として計算される。
【0052】
たとえば、電動機電流信号I
motの値は次式で計算される。
I
mot=[1−β(S
sdc)]×I
chg(v) (7)
ここで、β(S
sdc)は先に定義した関数であり、vは自転車1の速度(たとえば式v=ω
rt×R
rtによって計算される)であり、I
chg(v)は自転車1の速度vに依存する充電電流関数である。
【0053】
たとえば、充電電流関数I
chg(v)について、
図6に示すI
chg1(破線)またはI
chg2(実線)の傾向がありえる。具体的には、充電電流関数I
chg1は、0から速度閾値v
th(たとえば6km/hに等しい)までの範囲における自転車1の速度値として実質的にゼロの値を有し、速度閾値v
thより大きい自転車1の速度値として実質的に一定な(たとえば3アンペアに等しい)値I1
chg1を有する。このようにして、発電機として動作する電気装置によって発生される電流は自転車の速度vに依存しない。充電電流関数I
chg2は、自転車1の速度vに
正比例する。たとえば、充電電流関数I
chg2は、0に等しい速度に相当する値0を起点として実質的に線形に増加する傾向を有する。このようにして、発電機として動作する電気装置によって発生される電力が実質的に一定になる。
【0054】
次に参照する
図4bは、本発明の第二の実施形態による電気的補助自転車1の電気装置を駆動する方法150のフローチャートを模式的に示したものである。
図4bにおいて、
図4aと同一のステップおよび記号は同じ参照番号で示されていることに注意されたい。
【0055】
方法150は、ステップ101、102、153、154、105を含む。
【0056】
ステップ101では、人力P
umと摩擦力P
attrの比較が行われる。人力が摩擦力より大きいか、または等しい場合にはステップ102が実行され、他の場合にはステップ105が実行される。
【0057】
ステップ102では、自転車1が走行している道路の勾配θ
str(言い換えれば地面の勾配)が評価される。道路勾配θ
strがゼロより大きい(すなわち、乗員が上り坂を走行している)か、またはゼロに等しい(すなわち、乗員が平坦な道路を走行している)時は、ステップ153が実行される。道路勾配θ
strがゼロより小さい(すなわち、乗員が下り坂を走行している)場合には、ステップ154が実行される。
【0058】
ステップ153は、第一の実施形態による方法100のステップ103と同様であるが、異なる点として、ステップ153では、電池6によって電力供給される電動機としての電気装置を駆動するための電動機電流信号の値の変化量ΔI
mot’も、勾配動力P
pendの関数として、かつ勾配動力の時間変化量dP
pend/dtの関数として計算される。勾配動力という用語は、勾配に関連した動力、すなわち重力が車両に伝達する動力を意味し、次式で計算される。
P
pend=m×g×sen(θ
str)×R
rt×ω
rt (8)
ここで、mは自転車の質量と乗員の平均質量(たとえば乗員の平均質量は70kgに等しいと推定される)の和であり、gは重力加速度(9.81m/s
2)、θ
strは自転車が走行中の道路の勾配(すなわち道路と地平線のなす角度)である。
【0059】
したがって、電動機電流信号の値の変化量ΔI
mot’は、人力P
umと摩擦力P
attrおよび勾配動力P
pendの差ΔP’の関数として、勾配動力の時間変化量dP
pend/dtの関数として、かつ充電状態信号S
sdcの値の関数として計算される。
【0060】
たとえば、電動機電流信号の値の変化量ΔI
mot’は次式(9)で計算される。
ΔI
mot’=β(S
sdc)×[ΔP’/(k
T×ω
rt)+α×(dP
pend/dt)] (9)
ここで、
−勾配動力P
pendは式(8)で計算された値である。
−k
Tは電動機の電気定数である。
−αは所定の定数であり、上りの開始段階で乗員に与えられる補助の値に依存する。
−ΔP’=P
um−P
attr−P
pend
ただし、
●P
umは式(1)で定義された値である。
●P
attrは式(2)で定義された値である。
●P
pendは式(8)で定義された値である。
−β(S
sdc)は、本発明の第一の実施形態による方法100の説明において先に定義した充電状態信号S
sdcの関数である。
【0061】
ステップ154では、電池6を充電する発電機としての電気装置の動作に関する電動機電流信号I
motの値が本発明の第一の実施形態による方法100ステップ105と同じ方法で計算される。
【0062】
ステップ154における電動機電流信号I
motの値は、自転車1の速度vの関数として、かつ充電状態信号S
sdcの値の関数として計算される。簡明のため、ステップ154における電動機電流信号I
mot値はステップ105と同様に、すなわち式(7)によって計算されるものと仮定する。
【0063】
次に参照する
図7は、駆動システム50の動力信号の第一の想定しうる傾向を示したものである。具体的には、
図7の上側部分は、人力信号P
umおよび電動機出力信号P
motの所要動力信号P
reqの傾向を示し、
図7の下側部分は、充電状態信号S
sdcの傾向を示す。電動機出力P
motという用語は、自転車1の電気装置が電動機として動作する時に発生する機械的動力(この場合はP
mot>0と仮定する)および自転車1の電気装置が発電機として動作する時に発生する電力(この場合はP
mot<0と仮定する)を意味する。所要動力P
reqという用語は、自転車1によって道路の特定部分を走破するために乗員にとって必要とされる機械的動力の値を意味し、人力P
umと電動機出力P
motの和として定義される。すなわち、P
req=P
um+P
motになる。言い換えれば、人力P
umを発生する乗員と電動機出力P
motを発生する電動機の両方によって自転車1が駆動されるということである。
【0064】
時間t
0からt
1までの期間において、乗員は高い疲労感を知覚している。たとえば、乗員は直立の状態で出発したか、または道路の上り坂部分を走行している。この場合、自転車1の電動機ハウジング5に取り付けられた電気装置は電動機として動作するため、乗員が知覚する疲労感を低減することによって自転車1の走行中に乗員を補助する。したがって、この期間には、電池6によって供給される電気エネルギーが電動機を動作させるために使用される。電動機は、その電気エネルギーを、電動機を回転させるための機械的エネルギーに変換し、電動機出力P
mot>0を発生して(乗員が発生する人力P
umとともに)自転車1の前輪の走行に寄与する。
【0065】
したがって、t
0からt
1までの期間において、電気装置なしの人力P
um’(図示せず)、すなわち、自転車1の走行と同じ道路状況で電気的補助のない(電気装置を備えていない)自転車をこいでいる時にペダルアーム上の乗員が発生する動力は、電気装置を伴う人力P
umよりも明らかに大きい。図から確認されるように、充電状態信号S
sdcは減少傾向を有する。これは、高い疲労感を知覚している乗員を補助するために電池6が電動機に電力を供給し、放電し続けている状態である。図からさらに確認されるように、時間t
1における充電状態信号S
sdcの値は、最小閾値S
sdc_minより大きい。
【0066】
時間t
1からt
2までの期間において、乗員は低い疲労感を知覚している(たとえば道路の平坦部分を走行中)。この場合、時間t
1における充電状態信号S
sdcの値は最大閾値S
sdc_maxより小さく、電気装置は発電機として動作するため、電池6を充電する電流I
csを発生する。これにより、乗員の疲労感がわずかに増加するが、この増加は疲労感が低い動作状態(t
1からt
2の期間)で生じるため、乗員がそれを知覚することはない。したがって、この期間には、ペダルアーム上の圧力によって人間が供給する動力P
umの一部が電気装置を発電機として動作させるための機械的動力に変換され、その発電機が人間による動力P
umの一部を電力に変換し、それによって電池6が充電される。
【0067】
したがって、t
1からt
2までの期間には、電気装置なしの人力P
um’(図示せず)は電気装置を伴う人力P
umよりもわずかに小さくなる。図から確認されるように、充電状態信号S
sdcは増加傾向を有する。これは、発電機の機械的動力が電力に変換され、続いて電池6に保存するための化学エネルギーに変換されるというプロセスにより、乗員が発生する人力P
umの一部が電池6の充電に使用され、電池6が充電されている状態である。図からさらに確認されるように、時間t
2における充電状態信号S
sdcの値は最大閾値S
sdc_maxより小さい。
【0068】
時間t
2からt
3までの期間において、自転車1の電気装置は、t
0からt
1の期間と同様に電動機として動作し、乗員を補助する。
【0069】
時間t
3からt
4までの期間において、自転車1の電気装置は、t
1からt
2の期間と同様に発電機として動作し、電池6を充電する電流I
csを生成する。図から確認されるように、時間t
4における充電状態信号S
sdcは最大閾値S
sdc_maxに達しており、電池6は最大閾値で充電されている。
【0070】
時間t
4からt
5までの期間において、乗員は低い疲労感を知覚している(たとえば道路の平坦部分を走行中)。この場合、時間t
4における充電状態信号S
sdcの値は最大閾値S
sdc_maxに等しいため、自転車1の発電機が電流I
csをさらに発生することはなく、したがって、すでに最大閾値で充電されている電池6をさらに再充電することはない。
【0071】
図から確認されるように、時間t
0からt
5までの期間における充電状態信号S
sdcの値は、つねに最小閾値S
sdc_minから最大閾値S
sdc_maxまでの範囲である。このようにして自転車1の航続距離が増加するとともに、有利点として、自転車1の外部電源に接続して電池6を再充電する必要がなくなる(たとえば、電力網を電池6に接続する外部の充電器を使用する必要がない)。
【0072】
次に参照する
図8は、駆動システム50の動力信号の第二の想定しうる傾向を示したものである。
図7と同様、
図8の上側部分も人力信号P
umおよび電動機出力信号P
motの所要動力信号P
reqの傾向を示し、下側部分は、充電状態信号S
sdcの傾向を示す。
【0073】
時間t
0からt
10までの期間において、乗員は高い疲労感を知覚している。自転車1の電動機ハウジング5内に取り付けられた電気装置は、
図7のt
0からt
1の期間と同様に電動機として動作し、乗員の知覚する疲労感を低減することによって自転車1の走行中に乗員を補助する。
【0074】
時間t
10からt
11までの期間において、乗員は低い疲労感を知覚している。電気装置は、
図7のt
1からt
2の期間と同様に発電機として動作し、電池6を充電する電流I
csを発生する。
【0075】
時間t
11からt
12までの期間において、自転車1の電気装置は、t
0からt
10の期間と同様に電動機として動作し、自転車1の走行中に乗員を補助する。図から確認されるように、時間t
12における充電状態信号S
sdcは最小閾値S
sdc_minに達しており、電池6は最小閾値で放電されている。
【0076】
時間t
12からt
13までの期間において、乗員は高い疲労感を知覚している。この場合、時間t
12における充電状態信号S
sdcの値は最小閾値S
sdc_minに等しいため、自転車1の電気装置はもはや発電機として動作せず、乗員が高い疲労感を知覚している場合であれ、自転車1の走行中に乗員を補助することはない。これにより、電池6の過放電を防ぎ、自転車1の航続距離を増加させるとともに、有利点として、電池6を自転車1の外部電源に接続して再充電しなければならないほどの過放電が防止される。
【0078】
プロセッサ20は、自転車1の前輪の半径R
rtの値、自転車1の速度vの変化に伴う自転車1の摩擦F
attr(v)の値、電動機の電気定数k
Tの値、最小閾値S
sdc_minおよび最大閾値S
sdc_maxを(たとえば接続メモリから)読み出すことができるものと仮定する。たとえば、上記の値は、自転車1の走行が開始される時間t
0よりも前の構成段階で定義される。
【0079】
簡明のため、さらにω
rt=ω0
motと仮定する。
【0080】
時間t
0、t
1、t
2、t
3、t
4、t
5は、プロセッサ20が方法100を実行して、電動機電流信号I
motおよび充電/放電電流信号I
csの値を計算する各時点を表す。各時点の間隔はプロセッサ20が用いる計算周期(たとえば20μs)と必ずしも一致しない。連続する2つの時点間(たとえばt
0とt
1の間)で、プロセッサ20は方法100を1回または複数回実行することができるが、単純化してこれらの実行を無視する。
【0081】
時間t
0において、自転車1の乗員は直立の状態でペダルをこぎ始めるため、かなり高い疲労感を知覚する。
【0082】
測定モジュール8は、自転車1のペダルアームの角速度の第一の値ω0
pedを測定するとともに、自転車1のペダルアーム上の乗員が発生するトルクの第一の値τ0
pedを測定する。
【0083】
プロセッサ20は、プロセッサ20を実行するコンピュータプログラムおよび複数のソフトウェアコード部分によって方法100を実行する。たとえば、ソフトウェアコードに使用されるプログラミング言語は「ANSI C」言語である。
【0084】
具体的には、プロセッサ20は、ペダルアーム角速度の第一の値ω0
pedを有するペダルアーム速度信号S
ω_pedを受け取り、発生トルクの第一の値τ0
pedを有するペダルアームトルク信号S
τ_pedを受け取るとともに、式P0
um=τ0
ped×ω0
pedによって人力の第一の値P0
umを計算する。
【0085】
電動機センサーは、電動機角速度の第一の値ω0
motを測定し、プロセッサ20は、電動機角速度の第一の値ω0
motを有する電動機速度信号S
ω_motを受け取り、その値から、たとえば式v0=ω
rt×R
rt=ω0
mot×R
rtを用いて自転車1の速度v0を得る。
【0086】
プロセッサ20は、電動機角速度の第一の値ω0
motを有する電動機速度信号S
ω_motを受け取り、半径R
rtの値および自転車速度v0の関数である摩擦F
attr(v0)の値(すなわちF
attr(v0)=F0
attr)を読み出し、式P0
attr=R
rt×F0
attr×ω
rt=R
rt×F0
attr×ω0
motによって摩擦力推定値の第一の値P0
attrを計算する。
【0087】
ステップ101において、プロセッサ20は、第一の人力値P0
umと第一の摩擦力推定値P0
attrの比較を行い、P0
um>P0
attrであることを検出する。
【0088】
充電状態検出回路23は、電池信号S
batを受け取り、その値の関数として、電池6の充電状態を示す充電状態信号S
sdcの第一の値S0
sdcを計算する。
【0089】
ステップ103において、プロセッサ20は、充電状態信号の第一の値S0
sdcが最小閾値S
sdc_minより大きいことを検出し、電動機としての第一の動作モードを示す第一の低論理値を有する選択信号S
selを生成する。
【0090】
さらに、ステップ103において、プロセッサ20は、充電状態信号の第一の値S0
sdcに対応する関数βの第一の値β0を計算する(
図5参照)。すなわち、β0=β(S0
sdc)となる。
【0091】
さらに、ステップ103において、プロセッサ20は、人力P0
umと摩擦力P0
attrの差ΔP0を次式によって計算する。
ΔP0=P0
um−P0
attr=τ0
ped×ω0
ped−R
rt×F0
attr×ω0
mot
【0092】
その後、ステップ103において、プロセッサ20は、式(3)によって電動機電流信号I
motの変化量ΔI0
motを計算する。
ΔI0
mot=β0×[ΔP0/(k
T×ω
rt)]=β0×[ΔP0/(k
T×ω0
mot)] (3’)
【0093】
最後に、ステップ103において、プロセッサ20は、値ΔI0
motを運ぶ処理済み信号S
elabを生成する。
【0094】
電流管理モジュール22は、電動機としての第一の動作モードを示す第一の低論理値を有する選択信号S
selを受け取り、値ΔI0
motを運ぶ処理済み信号S
elabを受け取り、電動機としての動作モードで電動機ハウジング5内の電気装置を起動し、電池6から電動機ハウジング5内の電動機に向かう方向で充電/放電電流I
csに等しい電動機電流I
motを送るために必要な回路を作動させ、これにより、値ΔI0
motに等しい電動機電流I
motを発生する。すなわち、I
mot=I0
mot=ΔI0
motとなる。
【0095】
電動機ハウジング5内の電動機は、電動機電流I
motの値I0
motを受け取り、角速度が値ω0
mot’に等しい(ω0
motとは異なる)電動機の回転を生じさせる。
【0096】
電動機は自転車1の前輪に機械的に結合され、たとえば前輪のハブ内に取り付けられる。この場合、電動機の回転は、時間t
0においてペダルをこぐ乗員が発生する人力P0
umに加えて前輪の回転に寄与し、したがって乗員が知覚する疲労を低減させる。
【0097】
t
0からt
1までの(境界値を含まない)時間において、プロセッサ20は、引き続き、人力P
umの値が摩擦力P
attrの推定値より大きいことを検出する。その結果、t
0からt
1までの(境界値を含まない)時間における電子システム50の動作は、時間t
0における動作と同様になり、したがって電動機はペダルをこいでいる乗員を補助する。このとき電動機を作動させる電力として電池6の電気エネルギーが消費されるため、電池6は放電して充電状態信号の第一の値S0
sdcから充電状態信号の第二の値S1
sdcまで減少する(
図7の下側部分を参照)。
【0098】
時間t
1において、自転車1の乗員はほぼ平坦な道路でペダルをこいでおり、低い疲労感を知覚する。
【0099】
測定モジュール8は、自転車1のペダルアーム角速度の第二の値ω1
pedを測定するとともに、自転車1のペダルアーム上の乗員が発生するトルクの第二の値τ1
pedを測定する。
【0100】
先と同様、プロセッサ20は、プロセッサ20上で動作するコンピュータプログラムによって方法100を実行する。
【0101】
具体的には、プロセッサ20は、ペダルアーム角速度ω1
pedの第二の値を有するペダルアーム信号S
ω_pedを受け取り、発生トルクτ1
pedの第二の値を有するペダルアームトルク信号S
τ_pedを受け取って、人力の第二の値P1
umを式P1
um=τ1
ped×ω1
pedによって計算する。
【0102】
電動機センサーは、電動機角速度の第二の値ω1
motを測定し、プロセッサ20は、電動機角速度の第二の値ω1
motを有する電動機速度信号S
ω_motを受け取って、その値から、たとえば式v1=ω
rt×R
rt=ω1
mot×R
rtを用いて自転車1の速度v1を得る。
【0103】
プロセッサ20は、電動機角速度の第二の値ω1
motを有する電動機速度信号S
ω_motを受け取り、半径R
rtおよび自転車の速度v1の関数である摩擦F
attr(v1)の値(すなわちF
attr(v1)=F1
attr)を読み出し、式P1
attr=R
rt×F1
attr×ω
rt=R
rt×F1
attr×ω1
motによって摩擦力推定値の第二の値P1
attrを計算する。
【0104】
ステップ101において、プロセッサ20は、人力P1
umの第二の値と摩擦力推定値の第二の値P1
attrの比較を行い、P1
um<P1
attrであることを検出する。
【0105】
充電状態検出回路23は、電池信号S
batを受け取り、その値の関数として、電池6の充電状態を示す充電状態信号S
sdcの第二の値S1
sdcを計算する。
【0106】
ステップ105において、プロセッサ20は、充電状態信号の第二の値S1
sdcが最大閾値S
sdc_maxより小さいことを検出し、発電機としての第二の動作モードを示す第二の高論理値を有する選択信号S
selを生成する。
【0107】
さらに、ステップ105において、プロセッサ20は、充電状態信号の第二の値S1
sdcに対応する関数βの第二の値β1、すなわちβ1=β(S1
sdc)を計算する(
図5参照)。さらに、プロセッサ20は、速度v2の第二の値に対応する充電電流関数I
chg1(v)の値I1
chg1を計算する(
図6参照)。すなわちI
chg1(v1)=I1
chg1となる。
【0108】
その後、プロセッサ20は、ステップ105で充電/放電信号I
csの値を式(7)により、次のように計算する。
I1
mot=[1−β1]×I1
chg1
【0109】
したがって、プロセッサ20は、値I1
motを運ぶ処理済み信号S
elabを生成する。
【0110】
電流管理モジュール22は、発電機としての第二の動作モードを示す第二の高論理値を有する選択信号S
selを受け取り、電動機ハウジング5内の電気装置を電動機としての動作から発電機としての動作に切り替え、値I1
motを運ぶ処理済み信号S
elabを受け取り、電動機ハウジング5内の電動機から電池6に向かう方向で電動機電流I
motに等しい充電/放電電流I
csを送るために必要な回路を作動させ、これにより、値I1
motに等しい充電/放電電流I
csを発生する。すなわち、I
cs=I1
motとなる。
【0111】
電池6は、充電/放電電流I
csの値I1
motを受け取り、充電を開始する。
【0112】
したがって、乗員は、自転車1の走行中、時間t
1で人力P1
umを発生し、その一部が電動機ハウジング5内の発電機を動かすために使用される。発電機は充電/放電電流I
csを発生し、電池6の充電が開始される。
【0113】
t
1からt
2までの(境界値を含まない)時間において、プロセッサ20は、引き続き、人力P
umの値が摩擦力P
attrの推定値より小さいことを検出する。その結果、t
1からt
2までの(境界値を含まない)時間における電子システム50の動作は時間t
1における動作と同様になり、したがって発電機は電池6を再充電する。このときペダルアーム上の乗員が発生する動力の一部が電池6を再充電するために使用されるため、電池6の再充電によって充電状態信号の第二の値S1
sdcから充電状態信号の第三の値S2
sdcまで増加する(
図7の下側部分を参照)。
【0114】
時間t
2からt
3までの(境界値を含まない)期間において、電動機ハウジング5内の電気装置は、t
0からt
1の期間と同様、乗員を補助する電動機として動作する。したがって、t
0からt
1の期間における動作について行った考察がt
2からt
3の期間についても同様に適用される。
【0115】
時間t
3からt
4までの(境界値を含まない)期間において、電動機ハウジング5内の電気装置は、t
1からt
2の期間と同様、電池6を再充電する発電機として動作する。したがって、t
1からt
2の期間における動作について行った考察がt
3からt
4の期間についても同様に適用される。時間t
4において充電状態信号S
sdcが最大閾値S
sdc_maxに達しており、電池6が最大閾値で充電されていることに注意されたい。
【0116】
時間t
4において、乗員は低い疲労感を知覚している。充電状態検出回路23は電池信号S
batを受け取り、その値の関数として、電池6の充電状態を示す充電状態信号S
sdcの第四の値S4
sdcを計算する。プロセッサ20は、充電状態信号の第四の値S4
sdcが最大閾値S
sdc_maxに等しいことを検出し、最大閾値S
sdc_maxに対応する関数βの値を計算する(
図5参照)。すなわち、β4=β(S
sdc_max)=1となる。さらに、プロセッサ20は、速度v4の第四の値に対応する充電電流関数I
chg1(v)の値I1
chg1を計算する(
図6参照)。すなわち、I
chg1(v4)=I4
chg1となる。その後、プロセッサ20は、式(7)により、次のように充電/放電電流信号I
csの値を計算する。
I4
mot=[1−β4]×I4
chg1=[1−1]×I4
chg1=0
【0117】
したがって、充電/放電電流I
csの値も0に等しくなり、電池6はそれ以上再充電されない。
【0118】
t
4からt
5までの時間において、プロセッサ20は、引き続き、充電状態信号の第四の値S4
sdcが最大閾値S
sdc_maxに等しいことを検出し、t
4からt
5までの時間における電子システム50の動作は時間t
4における動作と同様になり、電池6はすでに最大値まで充電されているため、それ以上再充電されない。
【0119】
t
0からt
1までの時間における
図4bに示す方法150のステップ101、102、153を実行中のプロセッサ20の動作は、先に示した方法100のステップ101、103の中の1つと同様であるが、以下の違いがある。
【0120】
ステップ101の後でステップ102が実行され、自転車1が走行中の道路勾配の第一の値θ0
strを傾斜角センサー9が測定する。さらに、プロセッサ20は、第一の勾配値θ0
strを有する勾配信号S
θ_strを受け取り、θ0
str>0(すなわち乗員が上り坂を走行中)であることを検出して、ステップ153を実行する。
【0121】
ステップ153は方法100のステップ103と同様であるが、以下の違いがある。プロセッサ20は、式(8)によって勾配動力の第一の値P0
pendを計算する。
P0
pend=m×g×sen(θ0
str)×R
rt×ω
rt (8’)
【0122】
プロセッサ20は、次式によって人力P0
umと摩擦力P0
attrおよび勾配動力P0
pendの差ΔP0’を計算する。
ΔP0’=P0
um−P0
attr−P0
pend=τ0
ped×ω0
ped−R
rt×F0
attr×ω0
mot−m×g×sen(θ0
str)×R
rt×ω
rt
【0123】
プロセッサ20は、式(9)によって電動機電流信号I
motの値の変化量ΔP0’を計算する。
ΔI0
mot’=β0×[ΔP0’/(k
T×ω
rt)+α×(dP0
pend/dt)]=β0×[ΔP0’/(k
T×ω0
mot)+α×(dP0
pend/dt)] (9’)
【0124】
したがって、プロセッサ20は、値ΔI0
mot’を運ぶ処理済み信号S
elabを生成し、電流管理モジュール22は、値ΔI0
mot’に等しい電動機電流I
motを生成する。
【0125】
再充電可能電池によって電気的に補助される自転車の電気装置を駆動する方法も本発明の目的である。本方法は、自転車ペダルアームのトルクおよび自転車ペダルアームの角速度の関数として人力を計算するステップa)を含み、電動機の角速度の関数として、かつ自転車速度の関数として自転車の摩擦力を推定するステップb)を含み、人力の計算値を自転車摩擦力の推定値と比較して電池の充電状態をチェックするステップc)を含む。人力の計算値が自転車摩擦力の推定値より大きいか、または等しいことを検出した場合、および電池充電状態が第一の閾値より大きいか、または等しいことを検出した場合について、本方法は、電動機として動作する電気装置を駆動するための、電池から供給される駆動電流値を生成するステップd)を含む。人力の計算値が自転車摩擦力の推定値より小さいことを検出した場合について、本方法は、発電機として動作する電気装置から電池を充電するための別の駆動電流値を生成するステップe)を含む。
【0126】
有利点として、ステップd)は、人力の計算値が自転車摩擦力の推定値より大きいか、または等しいという検出後に、自転車が走行中の道路の傾斜角を測定するステップをさらに含む。推定傾斜角がゼロより大きいか場合、または等しいについて、本方法は、電池の充電状態をチェックするとともにステップd)を実行するステップd2.1)を含む。推定傾斜角がゼロより小さい場合について、本方法は、発電機として動作する電気装置から電池を充電するための別の駆動電流値を生成するステップd2.2)を含む。
【0127】
有利点として、ステップe)またはd2.2)は、電池充電状態が第一の閾値より大きい第二の閾値よりも低いことを検出した場合について、電池を充電するための別の駆動電流値の生成を含む。
【0128】
有利点として、ステップd)において、駆動電流値の生成は、第一の閾値から第二の閾値までの範囲で電池の充電状態の値
に正比例する。
【0129】
本発明による本方法の各ステップは、ソフトウェアコードからなり、プロセッサ20上で動作するコンピュータプログラムによって実行することができる。