【実施例】
【0021】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
なお、本発明における転化率および収率はそれぞれ次の通り定義される。
【0022】
原料化合物転化率(モル%)=(反応した原料化合物のモル数/供給した原料化合物のモル数)×100
収率(モル%)=(生成した目的化合物のモル数/供給した原料化合物のモル数)×100
【0023】
上記計算式において、原料化合物をプロピレンとする酸化反応の場合、目的化合物は(アクロレイン+アクリル酸)である。原料化合物をイソブチレンおよび/またはターシャリーブチルアルコールとする酸化反応の場合の目的化合物は(メタクロレイン+メタクリル酸)である。また、原料化合物をn−ブテンとする酸化脱水素反応の場合、目的化合物はブタジエンである。
【0024】
実施例1
(触媒の製造)
蒸留水3000重量部を加熱攪拌しながらモリブデン酸アンモニウム四水和物423.8重量部と硝酸カリウム3.0重量部を溶解して水溶液(A1)を得た。別に、硝酸コバルト六水和物302.7重量部、硝酸ニッケル六水和物162.9重量部、硝酸第二鉄九水和物145.4重量部を蒸留水1000重量部に溶解して水溶液(B1)を、また濃硝酸42重量部を加えて酸性にした蒸留水200重量部に硝酸ビスマス五水和物164.9重量部を溶解して水溶液(C1)をそれぞれ調製した。上記水溶液(A1)に(B1)、(C1)を順次、激しく攪拌しながら混合し、生成した懸濁液をスプレードライヤーを用いて乾燥し440℃で6時間焼成して予備焼成粉末(D1)を得た。このときの触媒活性成分の酸素を除いた組成比は原子比でMo=12、Bi=1.7、Ni=2.8、Fe=1.8、Co=5.2、K=0.15であった。
その後、予備焼成粉末100重量部に結晶セルロース5重量部を混合した粉末を不活性担体(アルミナ、シリカを主成分とする直径4.5mmの球状物質)に、上記式(2)で定義される担持率が、50重量%を占める割合になるように、成型に使用する担体重量および予備焼成粉末重量を調整した。20重量%グリセリン水溶液をバインダーとして使用し、直径5.2mmの球状に担持成型して成型触媒(E1)を得た。
担持成型には直径23cmの円柱状の成型機を使用し、底板の回転数を150rpmとした。このときの相対遠心加速度は2.9Gであった。
成型触媒(E1)を、焼成温度510℃で4時間、空気雰囲気下で焼成することで成型触媒(F1)を得た。
【0025】
(酸化反応試験)
熱媒体としてアルミナ粉末を空気により流動させるためのジャケット及び触媒層温度を測定するための熱電対を管軸に設置した、内径28.4mmのステンレス製反応器に成型触媒(F1)を68ml充填し、反応浴温度を320℃にした。ここに原料モル比がプロピレン:酸素:窒素:水=1:1.7:6.4:3.0となるようにプロピレン、空気、水の供給量を設定したガスを空間速度862h
−1で酸化反応器内へ導入し、反応器出口圧力を0kPaGとして反応開始後20時間後に触媒性能を評価した。結果を表1に示した。
【0026】
(強度測定)
成型触媒(F1) 50.0gを、内部に一枚の邪魔板を備えた、半径14cmの円筒型回転機に仕込み23rpmで10分間回転させた。その後剥離した粉末を1.7mm間隔のふるいで除去し、残存量(g)を測定し、以下の式から磨損度を求めた。結果を表1に示した。
磨損度(%)=(50.0−残存量)/50.0 × 100
【0027】
実施例2
成型の際の底板の回転数を210rpmとして、相対遠心加速度を5.7Gとしたこと以外は実施例1と同様の方法で成型触媒(F2)を製造した。成型触媒F2の酸化反応試験結果と強度測定結果を表1に示した。
【0028】
実施例3
成型の際の底板の回転数を260rpmとして、相対遠心加速度を8.7Gとしたこと以外は実施例1と同様の方法で成型触媒(F3)を製造した。成型触媒(F3)の酸化反応試験結果と強度測定結果を表1に示した。
【0029】
実施例4
成型の際の底板の回転数を430rpmとして、相対遠心加速度を24Gとしたこと以外は実施例1と同様の方法で成型触媒(F4)を製造した。成型触媒(F4)の酸化反応試験結果と強度測定結果を表1に示した。
【0030】
比較例1
成型の際の底板の回転数を75rpmとして、相対遠心加速度を0.72Gとしたこと以外は実施例1と同様の方法で成型触媒(V1)を製造した。成型触媒(V1)の酸化反応試験結果と強度測定結果を表1に示した。
【0031】
実施例5
(触媒の製造)
蒸留水12000重量部を加熱攪拌しながらモリブデン酸アンモニウム四水和物3000重量部と硝酸セシウム55.2重量部を溶解して水溶液(A2)を得た。別に、硝酸コバルト六水和物2782重量部、硝酸第二鉄九水和物1144重量部、硝酸ニッケル六水和物412重量部を蒸留水2300重量部に溶解して水溶液(B2)を、また濃硝酸397重量部を加えて酸性にした蒸留水1215重量部に硝酸ビスマス五水和物1167重量部を溶解して水溶液(C2)をそれぞれ調製した。上記水溶液(A2)に(B2)、(C2)を順次、水溶液(A2)を激しく攪拌しながら混合し、生成した懸濁液を、スプレードライヤーを用いて乾燥し、得られた粉末を460℃で5時間焼成して予備焼成粉末(D2)を得た。このときの触媒活性成分の酸素を除いた組成比は原子比でMo=12、Bi=1.7、Fe=2.0、Co=6.75、Ni=1.0、Cs=0.20であった。
その後、予備焼成粉末100重量部に結晶セルロース5重量部を混合した粉末を不活性担体(アルミナ、シリカを主成分とする直径4.5mmの球状物質)に、上記式(2)で定義される担持率が、50重量%を占める割合になるように、成型に使用する担体重量および予備焼成粉末重量を調整した。20重量%グリセリン水溶液をバインダーとして使用し、直径5.2mmの球状に担持成型して成型触媒(E5)を得た。
担持成型には直径23cmの円柱状の成型機を使用し、底板の回転数を260rpmとした。このときの相対遠心加速度は8.7Gであった。
成型触媒(E5)を、焼成温度500℃で4時間、空気雰囲気下で焼成することで成型触媒(F5)を得た。
【0032】
(酸化反応試験)
熱媒体としてアルミナ粉末を空気により流動させるためのジャケット及び触媒層温度を測定するための熱電対を管軸に設置した、内径22mmのステンレス製反応器に成型触媒(F5)を34ml充填し、反応浴温度を350℃にした。ここに原料モル比がイソブチレン:酸素:窒素:水=1:2.2:12.5:1.0となるようにイソブチレン、空気、水、窒素の供給量を設定したガスを空間速度1200h
−1で酸化反応器内へ導入し、反応器出口圧力を0.5kPaGとして反応開始後20時間後に触媒性能を評価した。結果を表1に示した。
【0033】
(強度測定)
実施例1と同一の方法で磨損度を求めた。結果を表1に示した。
【0034】
実施例6
成型の際の底板の回転数を430rpmとして、相対遠心加速度を23.8Gとしたこと以外は実施例5と同様の方法で成型触媒(F6)を製造した。成型触媒(F6)の酸化反応試験結果と強度測定結果を表1に示した。
【0035】
実施例7
(触媒の製造)
実施例5と同様の方法で、成型の際の底板の回転数を260rpmとし、相対遠心加速度を8.7Gとして成型触媒(F7)を製造した。以下に記載する方法で行った成型触媒(F7)の酸化脱水素反応試験結果と強度測定結果を表1に示した。
【0036】
(酸化脱水素反応試験)
熱媒体としてアルミナ粉末を空気により流動させるためのジャケット及び触媒層温度を測定するための熱電対を管軸に設置した、内径28.4mmのステンレス製反応器に成型触媒(F7)を53ml充填し、反応浴温度を340℃にした。ここに原料モル比が1−ブテン:酸素:窒素:水=1:2.1:10.4:2.5となるように1−ブテン、空気、水、窒素の供給量を設定したガスを空間速度1440h
−1で酸化反応器内へ導入し、反応器出口圧力を0kPaGとして反応開始後15時間後に触媒性能を評価した。
【0037】
実施例8
成型の際の底板の回転数を430rpmとして、相対遠心加速度を23.8Gとしたこと以外は実施例7と同様の方法で成型触媒(F8)を製造した。成型触媒(F8)を用いて実施例7と同様にして行った酸化脱水素反応試験結果と強度測定結果を表1に示した。
【0038】
比較例2
成型の際の底板の回転数を550rpmとして、相対遠心加速度を38.9Gとしたこと以外は実施例7と同様の方法で成型触媒(V2)を製造した。成型触媒(V2)を用いて実施例7と同様にして行った酸化脱水素反応試験結果と強度測定結果を表1に示した。
【0039】
比較例3
成型の際の底板の回転数を60rpmとして、相対遠心加速度を0.46Gとしたこと以外は実施例7と同様の方法で成型触媒(V3)を製造した。成型触媒(V3)を用いて実施例7と同様にして行った酸化脱水素反応試験結果と強度測定結果を表1に示した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果から明らかなように、同一触媒成分(Mo=12、Bi=1.7、Ni=2.8、Fe=1.8、Co=5.2、K=0.15)で相対遠心加速度のみを変えて製造した成型触媒(F1)〜(F4)(実施例1〜4)では、磨損度が最大でも約1%と小さな値になっており、実用強度が十分であることがわかる。また、成型触媒(F1)〜(F4)を用いて行った反応試験では、原料転化率、収率ともに良好な結果となっている。これに対して、相対遠心加速度を1G以下の条件で成型した成型触媒(V1)(比較例1)では、磨損度が3%を超えてしまい実用上触媒強度が不足していることがわかる。
【0042】
また、上記実施例とは別の触媒成分で、作成した同一触媒成分(Mo=12、Bi=1.7、Fe=2.0、Co=6.75、Ni=1.0、Cs=0.20)で相対遠心加速度のみを変えて製造した成型触媒(F5)〜(F8)(実施例5〜8)では、磨損度が1%以下であり十分な実用強度に達していることが分かる。これに対して、相対遠心加速度を1G以下の条件で成型した成型触媒(V3)(比較例3)では、磨損度が3%を超えてしまい実用上触媒強度が不足していることがわかる。
また、成型触媒(F5)あるいは成型触媒(F6)を用いて、イソブチレンの酸化反応を行った結果、良好な原料転化率、および有効収率が得られた。
同様に、成型触媒(F7)あるいは成型触媒(F8)用いて、1−ブテンの酸化脱水素反応を行った結果、良好な原料転化率、および有効収率が得られたが、本発明の範囲以上の相対遠心加速度の条件で成型した成型触媒(V2)では、同条件で実施した1−ブテンの酸化脱水素反応において、原料転化率が明らかに低下していることがわかる。
以上の結果から、本発明の方法によれば、触媒強度に優れ、良好な反応成績を示す触媒が製造できることは明らかである。
【0043】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2012年4月23日付で出願された日本国特許出願(特願2012−098259)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。