(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2つの熱交換プレート(1)の間に画定された反応区画(3)の注入口における反応物質の受け入れ、反応区画(3)の排出口における反応生成物の取り出し、および反応区画(3)内への物質の注入を含む化学反応プロセスであって、各熱交換プレート(1)は、その間に少なくとも1つの熱交換空間(4)を画定する2つの壁(2a、2b)を含み、それぞれの壁(2a、2b)は接合領域(5)によって互いに固定されており、物質の注入は、プレートのそれぞれの接合領域(5)において熱交換プレート(1)を通過する少なくとも1つの物質注入装置(6)よって実行される、化学反応プロセス。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ここで本発明は、以下の説明においてより詳細に、および非限定的に、記載される。
【0033】
反応器の概要
主に
図1および
図4を参照すると、本発明による反応器はチャンバを含み、これは有利なことに基本的に円形断面を備える円筒形であり、その内部には、その間に反応区画3を画定する熱交換プレート1のアセンブリが配置されている。
【0034】
反応区画3は有利なことに、実行される反応に適した触媒で満たされており、この触媒は好ましくは固体粒子(ビーズ、粒子、または粉末)の形態、あるいは多孔性モノリスの、または多孔性モノリスブロックの形態である。
【0035】
反応器は少なくとも2つのモードにしたがって動作することができる。すなわち、目的とする化学反応が反応区画内で行われる生産モードと、少なくとも部分的に不活性化された触媒が再生される再生モードである。
【0036】
本願の文脈において、「反応ストリーム」という表現は広義に理解され、反応区画3を通過するストリームを示しており、反応ストリームの組成は反応区画3の注入口と排出口との間で異なることが理解される。
【0037】
生成
段階において、反応区画3の注入口における反応ストリームは、反応物質の全てまたは一部を含み(場合により反応物質の別の部分が、下記に記載される物質注入装置を介して導入されることも可能である)、反応区画3の排出口における反応ストリームは、少なくとも部分的に、反応の生成物を含む。
【0038】
再生
段階において、反応区画3の注入口における反応ストリームは、触媒を再生することが可能な1つ以上の化合物を含むことができ、反応区画3の排出口における反応ストリームは、再生の残留物を含む。あるいは、反応区画3の注入口における反応ストリームは、単純な不活性ストリームであってもよい(触媒を再生することが可能な化合物は、下記に記載される物質注入装置6によって注入されることも可能である)。
【0039】
多管幾何形状と比較して、プレート幾何形状は、製造、使用、および保守のさらなる簡素性を有する。
【0040】
各熱交換プレート1は、平均平面を画定する。「長さ」という用語は、反応器のチャンバの主軸(通常は円柱軸)に沿ったこの平面内のプレート1の寸法を示し、「幅」という用語は、この同じ平面内の先の寸法に対して直角な、プレート1の寸法を示す。
【0041】
通常、反応器のチャンバの軸は、垂直方向に沿って位置する。これは、プレート1の長さが垂直方向に沿っていること、およびプレート1の幅および厚みが水平方向に沿っていることを、暗示している。
【0042】
プレート1の幅は一般的に、製造上の判断によって決定される。これはたとえば100から2500mm、具体的には500から1500mmであってもよい。プレート1の長さは、反応に、具体的にはその温度プロファイルに依存する。これはたとえば500から7000mm、具体的には3000から4000mmであってもよい。
【0043】
一実施形態によれば、熱交換プレート1は、チャンバ内の放射状配置にしたがって位置決めされる。このような放射状配置は、たとえば米国特許出願公開第2005/0226793号明細書に、具体的には
図6に関連して記載されている。この配置は、チャンバが円形断面を備える円筒形であるときに、反応器のチャンバ全体の最適な使用を可能にする。
【0044】
反応ストリームの流れを簡素化して均一にするために好ましい、上記に対する代替実施形態によれば、(熱交換プレート1の局所的変形を除いて)反応区画3が全体的に均一な厚みを備える体積となるように、熱交換プレート1は基本的に互いに平行に配置される。
【0045】
この場合、チャンバ内で利用可能な空間のより良い使用を可能にするために、熱交換プレート1および介在する反応区画3を直方体の形状の反応モジュールに分割することが有利になり得る。熱交換プレート1をモジュールにするこのような配置は、たとえば米国特許出願公開第2005/0020851号明細書に、具体的には
図1A、
図1C、
図1D、
図1E、および
図1Fに関連して、記載されている。
【0046】
このようなモジュール構造は、たとえばその容量を調節するために反応器内にモジュールの一部のみを取り付けることによって、あるいは反応ストリームからこれらを隔離するためにいくつかのモジュールを閉鎖することによって、必要とされる容量に関して柔軟に反応器を適応させることができるようにする。
【0047】
モジュールは同じ寸法を有することができ、これはその製造を簡素化する。これらはまた、反応器のチャンバ内の空間の占有を最適化するために、異なる寸法を有することもできる。
【0048】
好ましくは、モジュールは個別に取り出され、置き換えられ、または交換されることが可能であり、これは保守操作を簡素化する。
【0049】
各モジュールは好ましくは、たとえば長方形フレーム10などの適切なガイドによって、チャンバ内で所定位置に保持されて安定化されるが、これに対してモジュールのプレート1は固定手段11によって固定されることが可能である。様々なモジュールのガイドまたはフレーム10は、モジュールとモジュールの間のいかなる流れも防止するために、互いに封止されることが可能である。
【0050】
チャンバの壁と1つまたは複数の隣接するモジュールとの間に位置する中間空間は、この領域におけるいかなる物質の反応または蓄積も防止するために、封止すること(および場合により不活性物質で満たすことおよび加圧)によって、反応区画3から分離されることが可能である。
【0051】
チャンバ内のモジュールの実装の、およびアセンブリの封止の、様々な可能性のある形態は、米国特許出願公開第2005/0020851号明細書に、詳細に記載されている。
【0052】
主に
図2から
図5を参照すると、各熱交換プレート1は、少なくとも1つの熱交換空間4が間に配置されている、2つの壁2a、2bで形成されている。壁2a、2bは、たとえば、全体的に長方形の、ステンレス鋼のシートからなってもよい。壁2a、2bの厚みは、たとえば1から4mm、具体的には1.5から3mm、特に2から2.5mmであってもよい。
【0053】
2つの壁2a、2bは、接合領域5によって互いに固定されている。この固定は、たとえば壁2a、2bを互いに溶接することによって、実行されることが可能である。接合領域5は、いずれの形状であってもよい。
【0054】
一実施形態によれば、接合領域5は(
図1から
図4の場合と同様に)点状である。
【0055】
「点」という用語は本明細書において、熱交換プレート1の全体的なサイズに対して比較的小さいサイズを有する接合領域5を意味すると理解されるが、これは熱交換プレート1の長さ方向および幅方向の両方において該当する。
【0056】
一例として、点タイプの各接合領域5は、プレートの全幅の5%以下、または1%以下、または0.5%以下の幅、ならびにプレート1の全長の5%以下、または1%以下、または0.5%以下の長さを有する。
【0057】
このため、「点状」接合領域5は、好ましくは円形/円盤形の形状を有することができるが、場合により多角形の形状(たとえば正方形)を有することもできる。
【0058】
接合領域5が本願の意味の範囲内で「点」の形状であるとき、これらの点は、たとえば長方形メッシュを有するかまたは正方形メッシュを有するネットワークなど、各熱交換プレート1上の二次元ネットワークにしたがって、あるいはたとえば六角舗装にしたがって、分布させられることが可能である。
【0059】
特定の実施形態によれば、点状の接合領域5は、平行な列状に分布され、同一の列内の連続する接合領域の間の間隔は、たとえば30から80mm、または35から70mm、または40から60mmである。加えて、点の列は好ましくは等距離であり、列間の距離はたとえば5から80mm、または8から70mm、または10から60mmである。点の連続する列は、たとえば全く同一の列の点の間の間隔の半分だけ、列の方向に沿って互いに対してずれてもよい。言い換えると、この場合、列の点は、2列中1列の割合で、列に対して直角になっている。
【0060】
図5に示される別の実施形態によれば、接合領域5はストリップ、すなわち列の形状である。ストリップは湾曲してもよく、あるいは好ましくは直線状である。(連続する)隣接ストリップは好ましくは互いに平行であり、たとえば等距離である。これらのストリップはたとえば、熱交換プレート1の長さの方向に、またはその幅に沿って、配置されることが可能である。一例として、ストリップ間の距離は、反応器の長さ方向に配置されるときには100から1500mm、および好ましくは400から1000mmであってもよく、反応器の幅方向に配置されるときには5から2000mm、および好ましくは40から120mmであってもよい。
【0061】
接合領域5が点の形状であるとき、熱交換プレート1の壁2a、2bの間の熱交換空間4は一般的に単一の空間である。一方で、接合領域5がストリップの形状であるとき、熱交換プレート1の壁2a、2bの間の熱交換空間4は一般的に、連続する接合領域5によって区切られた複数のチャネルで構成される。
【0062】
なお、点状の接合領域5をストリップ状の接合領域5と組み合わせることが可能であることは、特筆すべきである。
【0063】
上述の接合領域5に加えて、各熱交換プレート1の壁2a、2bは有利なことに互いに接合され、または熱交換空間4内に熱交換流体を閉じ込めるためにその周囲において封止されている。好ましくは、熱交換空間4内への熱交換流体の侵入のための少なくとも1つの開口部、および熱交換流体の排出のための少なくとも1つの開口部を挿入するために、この接合またはこの封止は完全ではない。
【0064】
通常、熱交換流体は、反応区画3内に熱を導入するため(吸熱反応の場合)、または反応区画から熱を取り除くために(発熱反応の場合)、各プレート1の熱交換空間4内を循環する。熱交換流体はまた、鉱物油または合成油、たとえばJarythermまたはDowthermであってもよい。熱交換流体はまた、低融点および高熱容量を有する、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、および亜硝酸ナトリウムの共融混合物など、溶融硝酸塩および/または亜硝酸塩の混合物であってもよい。好ましくは、熱交換流体は熱除去の目的で使用される。
【0065】
熱交換流体は具体的には、ヒドラジンまたはアンモニアまたは腐食防止剤など、場合により添加物を含む水溶液であってもよい。熱交換空間4内の熱交換流体の循環は、隣接する反応区画3の反応ストリームの循環に対して、並流または逆流または横断(交差)タイプであってもよい。
【0066】
最適な熱伝達のため、熱交換流体は熱交換空間4を通過している間、その状態を部分的に変化させる。たとえば、発熱反応の場合には、少なくとも部分的に液体状態から気相状態に変化する。
【0067】
熱交換空間4内の熱交換流体の存在を可能にするために、熱交換プレート1の壁2a、2bは、接合領域5から所定距離で変形(膨張)する。言い換えると、各熱交換プレート1は使用中、壁2a、2bの接合領域5における最小厚みの部分(または陥凹)、および壁2a、2bの接合領域5から所定距離における最大厚みの部分(または突起12)を含む。
【0068】
それぞれのプレート1の突起12が整列するように、およびそれぞれのプレート1の陥凹がプレートに対して直角に整列するように、プレート1上に接合領域5を配置して、連続する熱交換プレート1を揃えることが、可能である。このような配置は、プレート1に対して直角な、下記に記載される物質注入装置6の実装を容易にする。
【0069】
しかしながら、それぞれのプレート1の突起12がずれるように、およびそれぞれのプレート1の陥凹がずれるように、プレート1上に接合領域5を配置して、連続する熱交換プレート1を揃えることも、可能である。たとえば、各プレート1の突起12は、その隣接する1つまたは複数のプレート1の陥凹をプレート1に対して直角に、またはその逆に、揃えられることが可能である。このような配置は、反応区画3の厚みのばらつきを減少させることを可能にする。米国特許出願公開第2005/0226793号明細書は、このタイプの配置の一例を提供している。しかしながら本発明の文脈では、この配置は、下記に記載される物質注入装置6がプレート1に対して直角な方向に傾斜して位置決めされることを必要とし、これは反応器の設計を複雑にする可能性がある。
【0070】
通常、反応区画3の最小厚み(つまり、隣接するプレートが少なくとも離間している1つまたは複数の点での厚み)は、8から150mm、たとえば10から100mm、具体的には12から50mm、特に14から25mm、および実例としては16から20mmである。いずれにせよ、反応区画3の厚みは、たとえば粒子の形状の触媒で反応区画3を満たすことができるようにするため、適合されなければならない。触媒粒子は一般的に1から10mm、たとえばおよそ5mmのサイズ(Dv50)を有する。反応区画3の厚みは、これらを容易に満たすことができるようにするために、少なくとも3から5粒程度とすることが望ましい。たとえば20mmの厚みのモノリシックブロックとしての触媒形態も、使用してもよい。
【0071】
反応器の内部で異なる厚みを有する反応区画3を提供することも、可能である。
【0072】
反応区画3は、封止によって互いに隔離されることが可能であり、そうでなければこれらはその末端を介して連通することができる。
【0073】
プレート1の変形、およびプレート1の関連するずれを制限するために、連続する熱交換プレート1の間に、離間要素が設けられてもよい。
【0074】
熱交換流体を分配するためのシステム、および熱交換流体を収集するためのシステムが、熱交換プレート1の両側に設けられる。たとえば、モジュール式分配システムおよびモジュール式収集システムを提供することが可能である。
【0075】
熱交換流体は、熱交換空間4内で自然に、または強制的に、循環することができる。この第二のケースでは、ポンピング手段が注入口に設けられてもよい。
【0076】
熱膨張接合部が、チャンバ上に(その周囲に、および/または末端に)設けられてもよい。上述の分配システムは有利なことに、熱膨張を補完できるようにする、湾曲または傾斜部分を有する。
【0077】
反応ストリームの分配のためのシステム9および反応ストリームを収集するためのシステム(図示せず)は、反応区画3の両側に設けられる。たとえば、モジュール式分配システムおよびモジュール式収集システムを提供することが可能である。反応ストリームは、液体または気体または混合タイプであってもよい。反応ストリームは、チャンバに対して上部から下向きに、または底部から上向きに、循環することができる。
【0078】
触媒保持手段(通常は有孔プレート)は、反応区画3の注入口および排出口に設けられる。
【0079】
熱交換流体および/または反応ストリームを所定の経路に沿って強制的に流すために、反応区画3および/または熱交換空間4内にバフリングを設けることが可能である。
【0080】
反応区画内へのインサイチュでの物質の注入
本発明は、反応区画3内に少なくとも1つ、好ましくは複数の、物質注入装置6を設ける。物質注入装置6は、熱交換プレート1、および熱交換プレート1の間の反応区画3を、通過する。
【0081】
実施するのが特に容易な、図示される実施形態によれば、物質注入装置6は、基本的に互いに平行であって、好ましくは熱交換プレート1に対して直角な、物質注入パイプ6である。
【0082】
物質注入パイプ6は、たとえばステンレス鋼から、または多孔質セラミックから製造されることが可能である。
【0083】
物質注入パイプ6は、上述の接合領域5において熱交換プレート1を通過する。このため、熱交換流体によって占有される熱交換空間4と、反応ストリームによって占有される反応区画3との間の連通のいかなる危険性も、回避される。
【0084】
このために、接合領域5は、熱交換空間4の漏れ防止性を損なうことなくこれらの接合領域5内に開口部7が穿孔されるようにするのに十分な寸法を有する必要があり、開口部7は、物質注入パイプ6の通過に適している。
【0085】
物質注入パイプ6は、(組み立てを許容するのに十分な剛性を持たせるために)たとえば10から100mm、および好ましくは20から50mmの直径を有する。たとえば円形の溶接部からなる接合領域5は、好ましくは、物質注入パイプ6よりもわずかに(たとえば1から5mm)大きい直径を備えるそれぞれの開口部7を、その中心に有する。
【0086】
封止手段は、反応区画3の間のいかなる連通も防止することが望ましい場合に、接合領域5上の開口部7の物質注入パイプ6の周りに設けられてもよい。
【0087】
さらに、各物質注入パイプ6は物質注入手段を含み、これは、好ましくは反応区画3を通過するその全長にわたる、単純なオリフィスであってもよい。
【0088】
物質注入パイプ6の全ては、(それ自体が注入される物質の供給源に接続されている)少なくとも1つの物質分配システム8に接続されることが可能である。モジュール間で独立した物質分配システム、または全てのモジュール向けに単一の物質分配システムを提供することが、可能である。場合により、たとえばモジュールごとに1つずつなど、少なくとも1つまたはいくつかの物質収集システム(図示せず)もまた、(1つまたは複数の)物質分配システム8に対して物質注入パイプ6の反対の末端に設けられる。これは、パイプ6内を循環している物質ストリームの一部のみが、通過してきた反応区画3内に侵入することが望ましいときに(たとえば任意の注入点において十分な圧力を保証するために)、有用であることを証明している。
【0089】
接合領域5が点の形状であるとき、各接合領域5を通過する物質注入装置6を提供することが可能であり、あるいはいくつかの接合領域5のみを通過する物質注入装置6を提供することが可能であり、すると他方の接合領域5は好ましくは開口部7を回避する。
図1から
図4に示されているのは、この実施形態である。
【0090】
接合領域5がストリップの形状であるとき、各ストリップを通過する物質注入装置6を提供することが可能であり、あるいはいくつかのストリップのみを通過する物質注入装置6を提供することが可能であり、すると他方のストリップは好ましくは開口部7を回避する。全く同一のストリップを通過するいくつかの物質注入装置6を提供することもまた可能であり、これには、これを通過する物質注入装置6の数に適した数の開口部が穿孔される。
【0091】
好ましくは、物質注入装置6の配置は、反応区画3内への物質の基本的に均質な注入を可能にする。
【0092】
物質注入装置によって反応区画3内に注入される物質は、気体または液体またはこれら2つの混合物であってもよい。
【0093】
これは、反応物質、または触媒化合物、または反応区画3内に存在する触媒を再生することが可能な化合物であってもよい。
【0094】
生成
段階の間のみ、または再生
段階の間のみ、または両方の
段階の間に、反応区画3内に物質を注入することが可能である。
【0095】
時間をかけて異なる物質を注入することも可能である(たとえば、反応器が生成
段階で動作しているときに第一の物質、および反応器が再生
段階で動作しているときに第二の物質)。
【0096】
好ましくは、注入される物質は酸素含有ガス、たとえば実質的に純粋な酸素、または空気、または不活性ガスと酸素との混合物である。
【0097】
これは、触媒がコークス化によって不活性化される反応について、再生
段階の間の酸素の注入が燃焼およびひいては触媒の再生を実行可能にするからであり、これは全ての反応区画内の温度のより良い制御、およびさらなる安全を伴って、実行される。具体的には、こうして触媒床全体を通じての高温前部の移動を回避することが可能である。加えて、生成
段階の間の酸素の注入は、やはり改善された温度の制御および安全性に関する上述の利点を伴って、触媒の不活性化の持続時間を延長できるようにする。
【0098】
酸素の注入はまた触媒にとっても有用であり、その再生は酸素化を伴い、たとえばアクロレインを生成するためのプロピレンの、およびメタクロレインを生成するためのイソブテン/t−ブタノールの酸化に使用されるモリブデン酸ビスマス型の触媒、またはホルムアルデヒドを生成するためのメタノールの酸化、アセトアルデヒドを生成するためのエタノールの酸化、ジメトキシメタンを生成するためのメタノールの酸化、ジエトキシエタンを生成するためのエタノールの酸化などの、複数の反応に使用されるモリブデン酸鉄型の触媒がある。
【0099】
注入される物質の別の例は、特にフッ素化反応の実行の文脈においては、塩素である。これは、生成
段階における塩素の注入が、触媒が不活性化される反応を抑制できるようにするからである。
【0100】
必要であれば、注入物質のストリームは、注入部位にしたがって異なるように調整されることが可能である。ポンピングまたは圧縮手段および弁は、各物質注入装置6内および各反応区画3内の物質の流量を調節できるようにする。
【0101】
本発明によって実行可能な反応
本発明は、再生可能起源のアクリル酸の生成、具体的にはアクロレインを生成するためのグリセリンの脱水の第一
ステップ、続いてこうして得られたアクロレインの気相での酸化の
ステップを含む、グリセリンからのアクリル酸の生成のために、あるいは2−ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)または3−ヒドロキシプロピオン酸およびこれらのエステルの脱水によるアクリル酸の生成において、有利に採用される。
【0102】
本発明は、特にアクロレインを生成するためのグリセリンの脱水のプロセスを実行することを可能にする。このタイプのプロセスにおいて、グリセリンは、重量比で20から95%の濃度の水溶液の形態で供給される。グリセリンがより濃縮されるほど、触媒がコークスを形成する傾向が強くなり、このため定期的に触媒を再生する必要がある。国際公開第2006/087083号に記載されるプロセスによれば、反応は酸素の存在下で有利に実行され、グリセリンの脱水のための反応に酸素を加えることで、触媒の寿命を延長し、再生に間隔を空けることができるようにする。
【0103】
反応は通常、220から350℃、および好ましくは280から320℃の温度で、ならびに大気圧から数バール(たとえば5)まで変化する圧力で、実行される。反応物質の濃度は部分的に、可燃限界によって決定または付与される。先行技術による反応器では、O
2/不活性ガス/グリセリン/蒸気ガス混合物の可燃限界が、気相におけるグリセリンおよび酸素の低濃度を規定する。
【0104】
本発明の反応器を用いると、追加の酸素がインサイチュの注入によって導入されるので、先行技術の反応器よりもグリセリンが濃い混合物を採用することができる。たとえば、グリセリン6%および酸素1から2%、を含む混合物を使用することが可能であり、残りはインサイチュで導入される。
【0105】
この反応に使用されることが可能な触媒は、具体的には、たとえば欧州特許第1848681号明細書、国際公開第2009/12855号、国際公開第2009/044081号、または国際公開第2010/046227号に記載されるような、+2未満のハメット酸度を有する、酸触媒である。多くの酸触媒が、この反応に適していると思われる。リン酸化ジルコニア、タングステン化ジルコニア、シリカジルコニア、タングステン酸塩またはリンタングステン酸塩またはシリコタングステン酸塩を含浸したチタンまたはスズ酸化物、リン酸化アルミナまたはシリカ、ヘテロポリ酸またはヘテロポリ酸塩、リン酸鉄および助触媒を含むリン酸鉄が、言及される。
【0106】
このプロセスの文脈において、触媒は、具体的にはコークス化による、不活性化を受ける。しかしながら、この不活性化は、生成
段階における、反応器の反応区画内へのインサイチュでの酸素の注入によって、遅延可能である。反応器注入口におけるO
2/グリセリンのモル比は0.1から1.5(好ましくは0.3から1.0)であり、酸素分圧は7%未満である。分子酸素の、空気の、または酸素と反応用に不活性のガスとの混合物の形態での補充酸素の追加は、反応器の全長にわたって分散される。好ましくは、2から10の注入部位が、反応器の全長にわたって設けられる。したがって、反応器に沿って追加される酸素の累積分圧は、1から10%である。
【0107】
さらに、再生
段階において、反応器の反応区画内へのインサイチュでの酸素の注入は、安全かつ制御されたやり方で触媒を再生することを、可能にする。
【0108】
一般的に、再生
段階において、触媒を不可逆的に損傷し、反応器さえも損傷する可能性のある、触媒の非常に高い温度上昇を生じることになる、反応の暴走のための条件を抑制するために、触媒の温度を適切に制御する必要がある。このため、ガス蒸気を非常に薄く希釈することによって、および/または蒸気またはCO
2等の不活性熱交換化合物を添加することによって、触媒が到達することが可能な温度を制限することを、目的とする。すると再生は、高温前部がコークスの燃焼に対応する触媒床を通って移動する際に、非常に長い時間をかける。このため、コークスの燃焼による再生の反応を加速することが、望ましい。この再生は、温度および/または酸素分圧を上昇させることによって加速可能であるが、しかしそうすると、上記に挙げられた不都合に遭遇する危険性がある。本発明の反応器は、反応器のいくつかの点において酸素の添加の間隔を空けること、および結果的に反応器内の高温前部を拡大しながら再生を実行することを、可能にする。このため、複数の列で、好ましくは反応器の長さの5%から33%、好ましくは反応器の長さの10%から20%ごとに間隔を空けた列で、酸素を注入することが望ましい。
【0109】
本発明はまた、アクリル酸を生成するための乳酸または3−ヒドロキシプロピオン酸(およびこれらの対応するエステル)の脱水のためのプロセスを実行することも、可能にする。
【0110】
乳酸は217℃近傍の沸点を有し、3−ヒドロキシプロピオン酸は279℃近傍の沸点を有する(計算値)。空気中の乳酸の可燃限界は3.1%(下限)および18%(上限)である。乳酸のメチルエステルは、1.1%および3.6%の可燃限界で、145℃の沸点を有する(これは酸よりも優れた使用柔軟性をもたらす)。3−ヒドロキシプロピオン酸のメチルエステルは、179℃(計算値としては180℃)の沸点を有する。乳酸のエチルエステルは、154℃の沸点と、1.6%および10.6%の可燃限界とを有する。3−ヒドロキシプロピオン酸のエチルエステルは、187.5℃の沸点を有する。
【0111】
これらの反応においては、グリセリンの脱水と実質的に同じ反応器構成が使用される。脱水条件は、220から400℃、および好ましくは250から350℃の温度、ならびに0.5から5バールの圧力である。
【0112】
これらの反応に適していると思われる触媒は、具体的には+2未満のハメット酸度を有する、酸触媒である。触媒は、自然または合成のケイ酸含有物質または酸性ゼオライト;一酸、二酸、三酸、または多酸無機酸で被覆された、酸化物などの無機担体;具体的にはW、Mo、およびVからなる群より選択された少なくとも1つの元素を含む、酸化物または混合酸化物またはヘテロポリ酸またはヘテロポリ酸塩、から選択されることが可能である。混合酸化物の中でも、鉄およびリンに基づくもの、ならびにセシウム、リン、およびタングステンに基づくものが、特に言及されてよい。
【0113】
これらの反応にやはり適していると思われるその他の触媒は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属のリン酸塩および/または硫酸塩、ならびにこれらの混合物から得られる。したがってこの群は、リン酸ランタンおよびオキシリン酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、および対応するリン酸水素、リン酸アルミニウム、リン酸ホウ素を含む。上述の活物質の全ては、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、またはシリカ、ならびに対応する混合酸化物、および炭化ケイ素などの、いずれのタイプの担体上にも含浸または被覆されることが可能である。
【0114】
乳酸または3−ヒドロキシプロピオン酸の分圧は一般的に1%から10%、および好ましくは2%から6%である。
【0115】
やはりこれらの反応の文脈において、触媒は、具体的にはコークス化による、不活性化を受ける。この不活性化は、生成
段階において、反応器の反応区画内にインサイチュで酸素を注入することによって、遅延可能である。酸素の注入に関する条件は、グリセリンの脱水に関連して先に記載されたものと同じである。
【0116】
さらに、再生
段階において、反応器の反応区画内へのインサイチュでの酸素の注入は、安全かつ制御されたやり方で触媒を再生することを、可能にする。酸素の注入に関する条件は、グリセリンの脱水に関連して先に記載されたものと同じである。
【0117】
本発明はまた、メタクリル酸を生成するための、2−ヒドロキシイソ酪酸または3−ヒドロキシイソ酪酸の脱水のプロセスを実行することも、可能にする。
【0118】
このタイプの反応には、グリセリンの脱水用と実質的に同じ反応器構成が使用される。脱水条件は、200から400℃、および好ましくは250から350℃の温度、ならびに0.5から5バールの圧力である。これらの反応に適していると思われる触媒は、具体的には+2未満のハメット酸度を有する、酸触媒である。触媒は、自然または合成のケイ酸含有物質または酸性ゼオライト;一酸、二酸、三酸、または多酸無機酸で被覆された、酸化物などの無機担体;具体的にはW、Mo、およびVからなる群より選択された少なくとも1つの元素を含む、酸化物または混合酸化物またはヘテロポリ酸またはヘテロポリ酸塩、から選択されることが可能である。混合酸化物の中でも、鉄およびリンに基づくもの、ならびにセシウム、リン、およびタングステンに基づくものが、特に言及されてよい。
【0119】
この反応にやはり適していると思われる触媒は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属のリン酸塩および/または硫酸塩、ならびにこれらの混合物から得られる。したがってこの群は、リン酸ランタンおよびオキシリン酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、および対応するリン酸水素、リン酸アルミニウム、リン酸ホウ素を含む。上述の活物質の全ては、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、またはシリカ、ならびに対応する混合酸化物、および炭化ケイ素などの、いずれのタイプの担体上にも含浸または被覆されることが可能である。
【0120】
(2−または3−)ヒドロキシプロピオン酸の分圧は一般的に1%から10%、および好ましくは2%から6%である。
【0121】
やはりこれらの反応の文脈において、触媒は、具体的にはコークス化による、不活性化を受ける。この不活性化は、生成
段階において、反応器の反応区画内にインサイチュで酸素を注入することによって、遅延可能である。酸素の注入に関する条件は、グリセリンの脱水に関連して先に記載されたものと同じである。
【0122】
さらに、再生
段階において、反応器の反応区画内へのインサイチュでの酸素の注入は、安全かつ制御されたやり方で触媒を再生することを、可能にする。酸素の注入に関する条件は、グリセリンの脱水に関連して先に記載されたものと同じである。
【0123】
本発明はまた、ホルムアルデヒドまたはジメトキシメタンを生成するためのメタノールの酸化、アセトアルデヒドまたはジエトキシエタンを生成するためのエタノールの酸化、無水フタル酸を生成するためのオルトキシレンまたはナフタレンの酸化、あるいは無水マレイン酸を生成するためのベンゼン、ブテン、ブタノール、またはブタンの酸化などの、選択的酸化を実行することも、可能にする。
【0124】
これらの酸化反応において、共通の問題は、反応器の暴走の危険性および爆発の危険性を確実に制限しながら、炭化水素反応物質の完全な変換または少なくとも最大限可能な変換を保証するのに十分な量の酸素(またはその他の酸化剤)の、反応器注入口における注入の問題である。選択された解決策は、炭化水素化合物の分圧を制限することによって、反応器の生産性を制限することになってしまう。本発明は、反応器注入口においてより低いO
2/炭化水素反応物質比を用いることを可能にし、反応に必要な酸素の残りは注入装置によって導入される。
【0125】
ホルムアルデヒドまたはジメトキシメタンを生成するためのメタノールの酸化、およびアセトアルデヒドまたはジエトキシエタンを生成するためのエタノールの酸化の反応の場合、適していると思われる触媒は、ビスマス、バナジウム、タングステン、銅、ニッケル、またはコバルトら選択された金属を含む酸化鉄モリブデンまたは酸化モリブデンなどの、混合酸化物である。動作条件は、200から350℃、好ましくは250から300℃の温度、ならびに1から5バールの間の圧力である。アルコール分圧は、所望の生成物のタイプに応じて、3%から50%、好ましくは5%から40%の、広い範囲内で変動することが可能である。アルデヒドが所望の生成物である場合には、アルコール分圧は3%から10%の間、および好ましくは5%から9%の間である。アセタールが所望の生成物である場合には、アルコール分圧は10%から50%の間、および好ましくは20%から40%の間である。
【0126】
無水フタル酸を生成するためのオルトキシレンおよびナフタレンの酸化の反応の場合には、選択される触媒は好ましくはバナジウム、および好ましくは担持酸化バナジウムを含む。動作条件は、1から5バールの圧力および280から450℃の反応温度である。
【0127】
無水マレイン酸を生成するためのブタン、ブテン、ブタノール、およびベンゼンの酸化の反応の場合には、適している触媒は、担持酸化バナジウムの形態の、または担持混合酸化バナジウム/リンの形態の、バナジウムを含む。反応温度は350から500℃であり、圧力は1から5バールである。
【0128】
アクロレインを生成するためのプロピレンの、またはメタクロレインを生成するためのイソブテンまたはtert−ブタノールの酸化の反応の場合には、適している触媒は圧倒的にモリブデンからなり、以下の元素から選択される(しかしこれらに限定されない)元素を含む:ニッケル、鉄、コバルト、タングステン、カリウム、ビスマス、アンチモン、またはクロム。反応温度は320から450℃である。全圧は1から5バールの間である。炭化水素化合物の分圧は5%から15%の間であり、反応器注入口におけるO
2/炭化水素化合物比は0.5から4の間、好ましくは0.8から2の間、より好ましくはやはり1から1.8の間、およびさらに好ましくは1.2から1.6の間である。
【0129】
アクリル酸を生成するためのアクロレインの、およびメタクリル酸を生成するためのメタクロレインの酸化の反応の場合には、適している触媒は圧倒的にモリブデンからなり、以下の元素から選択される(しかしこれらに限定されない)元素を含む:バナジウム、タングステン、銅、アンチモン、ニオブ、ストロンチウム、リン、または鉄。動作温度は250から350℃の間であり、全圧は1から5バールである。アルデヒド分圧は5%から15%の間であり、反応器注入口におけるO
2/アルデヒド比は0.3から1.2の間、および好ましくは0.5から1の間である。
【0130】
本発明によって実行されることが可能なその他の酸化反応は、以下のとおりである。
【0131】
たとえば300から400℃の温度および1から3バールの圧力で、アクロレイン、酢酸、マレイン酸、プロピオン酸、アセトアルデヒド、およびアセトンを副産物とする、プロピレンおよび酸素からのアクリル酸の生成。
【0132】
たとえば230から290℃の温度および10から30バールの圧力で、アセトアルデヒドおよびホルムアルデヒドを副産物とする、エチレンおよび酸素からの酸化エチレンの生成。
【0133】
たとえば220から300℃の温度および2から6バールの圧力で、一酸化炭素、クロラール、および様々な塩素化合物を副産物とする、エチレン、塩酸、および酸素からの1,2−ジクロロエタンの生成。
【0134】
たとえば175から230℃の温度および15から30バールの圧力で、無水マレイン酸、o−トルイル酸、および安息香酸を副産物とする、p−キシレンおよび酸素からのテレフタル酸の生成。
【0135】
本発明による反応器はまた、アンモニア/酸素/不活性ガス/炭化水素化合物の混合物を伴う、アンモ酸化反応にも適していると思われる。使用可能な炭化水素化合物は、プロピレン、イソブテン、アクロレイン、メタクロレイン、ならびに芳香族化合物も含む。アンモ酸化反応は、対応する酸化温度よりも50から100℃高い温度で実行される。本発明による反応器は、注入装置によっていずれかの反応物質を注入することを可能にする。場合により、注入された反応物質は、反応器の長さに沿って交互になっていてもよい。好ましくは、酸素(または空気/富化空気)が注入装置によって注入される。とは言うものの、アクロレインなどのアルデヒドのアンモ酸化反応の場合、注入装置によるアンモニアの多
段注入は、反応器注入口において堆積物を形成する傾向のある副反応を制限できるようにする。
【0136】
一例として、アクリロニトリル(アセトニトリル、シアン化水素酸、および一酸化炭素を同時生成しながら)は、たとえば400から500℃の温度および1から4バールの圧力で、プロピレンおよび/またはプロパン、酸素、およびアンモニアから生成されることが可能である。
【0137】
本発明はまた、フッ素化プロセス、すなわち塩素化合物からフッ素化化合物を調製するためのプロセスも、実行できるようにする。好ましくは、反応は、塩素化合物をフッ化水素(HF)と反応させることによって、実行される。
【0138】
塩素化合物は少なくとも1つの塩素原子を有するいずれの分子であってもよく、フッ素化化合物は少なくとも1つのフッ素原子を有するいずれの分子であってもよい。
【0139】
好ましくは、塩素化合物は、F、Cl、I、およびBrから(好ましくはFおよびClから)選択される1つ以上の置換基を含む、直線状または分岐状(好ましくは直線状)C
2またはC
3またはC
4またはC
5アルカンまたはアルケンであり、置換基のうちの少なくとも1つはClである。
【0140】
好ましくは、フッ素化化合物は、F、Cl、I、およびBrから(好ましくはFおよびClから)選択される1つ以上の置換基を含む、直線状または分岐状(好ましくは直線状)C
2またはC
3またはC
4またはC
5アルカンまたはアルケンであり、置換基のうちの少なくとも1つはFである。
【0141】
さらに好ましくは、塩素化合物は、F、Cl、I、およびBrから(好ましくはFおよびClから)選択される1つ以上の置換基を含むC
3アルカンまたはアルケンであって、置換基のうちの少なくとも1つはClであり、フッ素化化合物はF、Cl、I、およびBrから(好ましくはFおよびClから)選択される1つ以上の置換基を含むC
3アルカンであって、置換基のうちの少なくとも1つはFである。
【0142】
あるいは、塩素化合物はF、Cl、I、およびBrから(好ましくはFおよびClから)選択される1つ以上の置換基を含むC
4アルカンまたはアルケンであって、置換基のうちの少なくとも1つはClであり、フッ素化化合物はF、Cl、I、およびBrから(好ましくはFおよびClから)選択される1つ以上の置換基を含むC
4アルケンであって、置換基のうちの少なくとも1つはFである。
【0143】
一実施形態によれば、フッ素化化合物はハイドロフルオロオレフィンである(したがってCl置換基を含まない)。
【0144】
好ましくは、反応の間、塩素化合物の少なくとも1つのCl置換基はF置換基に置き換えられる。
【0145】
塩素化合物からフッ素化化合物への変換は、直接変換(一
ステップのみの、または動作条件の1つの組み合わせのみによる)、および間接変換(2つ以上の
ステップの、または動作条件の2つ以上の組み合わせを用いる)を含む。
【0146】
特に好ましいフッ素化反応は、
2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生成するための2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf)の、
2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生成するための1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db)の、
2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生成するための1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240aa)の、
2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生成するための2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243db)の、
2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生成するための1,1,2,3‐テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xa)の、
2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)を生成するための2,3,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xf)の、
2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf)を生成するための1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db)の、
2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf)を生成するための1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240aa)の、
2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf)を生成するための2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243db)の、
2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf)を生成するための1,1,2,3‐テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xa)の、
2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf)を生成するための2,3,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xf)の、反応である。
【0147】
フッ素化反応は、典型的に3:1から150:1のHFモル比で、6から100秒の接触時間で、および大気圧から20バールの圧力で、実行されることが可能である。反応の温度は200から450℃が可能である。
【0148】
HFCO−1233xfからHFO−1234yfを調製することを可能にするプロセスの具体例が、国際公開第2010/123154号に見られる。このプロセスは、本発明の反応器を用いて実行されることが可能である。
【0149】
上記のフッ素化反応に使用される触媒は、担持されてもされなくてもよい。
【0150】
これはたとえば金属触媒、すなわち元素金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物、および/または金属塩タイプ、具体的にはこのような金属の遷移金属酸化物またはハロゲン化物またはオキシハライドであってもよい。
【0151】
これは具体的にはハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タリウム、ハロゲン化チタン、ハロゲン化鉄、およびこれらの組み合わせであってもよい。たとえばSbCl
5、SbCl
3、SbF
5、SnCl
4、TiCl
4、FeCl
3、およびこれらの組み合わせなど、金属塩化物およびフッ化物が好ましい。
【0152】
その他の適切な触媒は、オキシフッ化クロム、Cr
2O
3(場合によりフッ素化処理される)などの酸化クロム、フッ化クロム、およびこれらの組み合わせなど、クロムに基づくものである。
【0153】
その他の可能な触媒は、アルミニウムに基づくもの(たとえばAlF
3、Al
2O
3、およびオキシフッ化アルミニウム)である。
【0154】
触媒は、フッ素化アルミナ、フッ素化酸化チタン、フッ素化ステンレス鋼、活性炭および黒鉛から選択されることが可能である。
【0155】
これは、クロムとマグネシウムの混合物(元素、塩、酸化物、またはハロゲン化物の形態)、またはクロムと別の金属の混合物(元素、塩、酸化物、またはハロゲン化物の形態)であってもよい。
【0156】
これはまた、担体上に金属を含む触媒であってもよい。
【0157】
金属は、周期表の3、4、5、6、7、8、9、および13族から選択されることが可能であり、具体的にはAl、Cr、Mn、Co、Ni、Zn、Ti、V、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Zr、Mo、Re、Sc、Y、La、Hf、Cu、Ag、Au、Ge、Sn、Pb、またはMg、特にAl、Cr、Mn、Ni、またはCoであってもよい。これはランタニド(周期表の58から71の金属)であってもよい。触媒の金属は、その活性化またはその再生の間に、たとえば酸化物、ハロゲン化物(フッ化物、臭化物、塩化物)、オキシハロゲン化物、または擬ハロゲン化物(シアン化物、シアン酸塩、チオシアン酸塩)など、金属誘導体に変換されることが可能である。
【0158】
担体は、アルミニウム、ハロゲン化アルミニウムおよびオキシハロゲン化アルミニウム、アルミナ、活性アルミナ、フッ素化アルミナ、フッ化アルミニウム、活性炭(フッ素化または非フッ素化)、および黒鉛(場合によりフッ素化)から選択されることが可能である。
【0159】
触媒はたとえば、金属の可溶性化合物(たとえば硝酸塩または塩化物)の溶液中の担体の浸漬によって調製されることが可能であり、あるいは溶液が担体上に噴霧されることも可能である。担体は乾燥させられ、担体または金属を部分的にまたは完全にハロゲン化するために、加熱を伴って蒸気状態のハロゲン化剤(たとえば、フッ化水素、塩酸、クロロフルオロハイドロカーボン、あるいはやはりSiF
4、CCl
3F、CCl
2F、CHF
3、またはCCl
2FCClF
2)と接触させられることが可能である。
【0160】
担持触媒の例は、炭素上に担持されるFeCl
3、炭素上に担持されるアルミナ、炭素上に担持されるフッ化アルミニウム、炭素上に担持されるフッ化アルミナ、フッ化アルミニウム上に担持されるフッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム上に担持されるより一般的な金属(元素金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物、および/または金属塩)、アルミナ上に担持される金属、炭素上に担持される金属、または金属の混合物である。
【0161】
担持触媒のその他の例は、Cr
2O
3上に担持されるハロゲン化マグネシウムまたはハロゲン化亜鉛、炭素上に担持されるハロゲン化クロム(III)、黒鉛上に担持されるクロムおよびマグネシウムの混合物(元素、酸化物、ハロゲン化物、または塩の形態)、フッ化アルミニウムなど、黒鉛またはアルミナまたはハロゲン化アルミニウム上に担持されるクロムおよびその他の金属の混合物(元素、塩、酸化物、またはハロゲン化物の形態)である。
【0162】
担持触媒の総金属含有量は、(触媒の総重量に対して)好ましくは重量比で0.1%から20%、たとえば重量比で0.1%から10%である。
【0163】
好適な実施形態は、クロムおよびニッケルの両方を含む担持混合触媒である、特定の触媒を使用する。Cr:Niのモル比(金属元素に対して)は一般的に0.5から5、たとえば0.7から2、具体的には1前後である。触媒は、重量比で0.5%から20%のクロムおよび0.5%から20%のニッケルを含むことができ、好ましくはいずれの金属も2%から2%から10%である。この点に関して、国際公開第2009/118628号、特に4ページ30行目から7ページ16行目までの触媒の記述が、参照されてもよい。
【0164】
有利な触媒は、結晶質アルファ−酸化クロムタイプのクロム化合物を含むクロム系触媒であり、アルファ−酸化クロム格子の原子のおよそ0.05%から6%が3価コバルト原子に置き換えられている(場合によりフッ素化剤で処理される)。この件については、米国特許出願公開第2005/0228202号明細書が参照される。
【0165】
触媒はフッ素化を受けることができる。フッ素化の一例として、アルミナを加熱しながらフッ化水素と接触させることによって、または周囲温度でフッ化水素水溶液を噴霧することによって、またはアルミナを溶液中に浸漬することによって、および後に乾燥することによって、フッ素化アルミナを調製することが可能である。触媒のフッ素化は、本発明による反応器において実行されてもされなくてもよい。フッ素化の間の温度は一般的に200から450℃である。
【0166】
触媒は場合により、Co、Zn、Mn、Mg、V、Mo、Te、Nb、Sb、Ta、P、およびNi塩など、低含有量の1つ以上の共触媒を含むことができる。好適な共触媒はニッケルである。別の好適な共触媒はマグネシウムである。
【0167】
たとえば、非担持クロム系触媒は場合により、コバルト、ニッケル、亜鉛、またはマンガンから選択される1つ以上の低含有量の共触媒を含むことができ、含浸、粉末とその他との混合など、それ自体周知のプロセスによって調製されることが可能である。
【0168】
存在する場合には、共触媒の量は、重量比で1%から10%、好ましくは重量比で1%から5%の間で変動してもよい。共触媒は、水溶液または有機溶液からの吸着に続いて溶媒の蒸発など、それ自体周知のプロセスによって触媒に添加されることが可能である。好適な触媒は、共触媒としてニッケルまたは亜鉛を用いる純粋な酸化クロムである。あるいは、微細混合物を生成するために共触媒は摩砕によって触媒と物理的に混合されることが可能である。
【0169】
別の好適な触媒は、フッ素化アルミナ上に担持される混合クロム/ニッケル触媒である。米国特許第5,731,481号明細書は、この別の触媒の調製のためのプロセスを記載している。
【0170】
活性化の前に、触媒は、好ましくは窒素などの乾燥ガスを用いる、乾燥の
ステップに曝される。乾燥
ステップは、大気圧から20バールまでの範囲の圧力で実行されることが可能である。乾燥
ステップの間の触媒の温度は、20℃から400℃、好ましくは100℃から200℃の範囲であってもよい。
【0171】
触媒の活性化は、好ましくはHFまたはフルオロ−またはハイドロフルオロアルカンおよび/または酸化剤(好ましくは酸素または塩素)を用いて実行されることが可能である。触媒の再生は、酸化剤(好ましくは酸素または塩素)および場合によりHFを用いて、1つ以上の
ステップで実行されることが可能である。
【0172】
触媒の不活性化の持続時間を延長するために、たとえば酸化剤および塩素化合物の混合物に対して0.05mol%から15mol%の割合で、生成
段階の間に酸化剤(好ましくは酸素または塩素)を添加することが可能である。
【0173】
再生
ステップの間の温度はおよそ250から500℃、および圧力は大気圧からおよそ20バールであってもよい。酸素と組み合わせてHFが使用されるときは、酸素の割合は、HF/酸素混合物に対して2mol%から98mol%まで変動することが可能である。
【0174】
本発明は具体的には、生成
段階および/または再生
段階において、ならびに場合により触媒の初期活性化のために、反応器内へのインサイチュでの酸素の(または塩素の)注入を実行することを可能にする。