(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粘度調整剤が、水溶性ポリビニルアルコール及びその誘導体、水溶性ポリアクリル酸エステル及びその誘導体、水溶性ポリウレタン及びその誘導体、水溶性ポリエチレンオキサイド及びその誘導体、水溶性ポリアミド及びその誘導体、スチレンとアクリル酸の水溶性の共重合体及びその誘導体、水溶性ポリエステル及びその誘導体、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリビニルピロリドン、天然ガム糊、繊維素誘導体、多糖類、海藻類、及び動物性糊料からなる群より選択された1種又は2種以上を配合する事を特徴とする請求項1に記載の捺染法。
前記助剤が、染料溶解剤、分散剤、界面活性剤、保湿剤、pH調整剤、濃染剤、防腐剤、防黴剤、脱気剤、消泡剤、酸化還元防止剤及び金属イオン封鎖剤からなる群より選択された1種又は2種以上からなる事を特徴とする請求項1または請求項2に記載の捺染法。
前記捺染用紙又は捺染用フィルムが、上質紙、中質紙、再生紙、クラフト紙、グラシン紙、コート紙、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、又はポリアミドフィルムに、インキ受容層を形成した捺染用紙又は捺染用フィルムである事を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の捺染法。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2001−30611号公報)の段落0002に記載がある通り、従来のグラビア印刷においては一般的に有機溶剤型(油性)インキが使用されている。このインキは有機溶剤型であるため、印刷工場の労働環境問題、防災上の問題、地球環境問題等、安全衛生問題と環境問題が指摘されている。最近では油性インキを拭き取る作業で胆管癌の問題が発生した。
【0003】
又、現在のグラビア印刷の場合、印刷までの段取り時間ロス、調色ロス、残インキ量の増大によるコストへの影響の問題があり、省資源の立場からも改善が必要とされている。特に、最近、市場動向が多品種、小ロット化、短納期化しているため、コスト問題がますます厳しくなり、さらに環境問題、食品衛生問題が大きな社会問題としてクローズアップされている。しかし、有機溶剤型インキを使用すると、これら社会のニーズに応えにくいという問題がある。
【0004】
上記の問題の解決に向けて有機溶剤型インキの代わりに水性インキの開発が進められており、特許文献2(特開平11−172168号公報)、特許文献3(特許第4151801号公報)、特許文献4(特開2009−256659号公報)、特許文献5(特表2005−518459号公報)等に開示されている。しかし、これらは、繊維材料以外のフィルムや包装紙、ダンボール等を対象とした顔料系の水性インキである。顔料系インキには顔料の固着に必要なバインダー等が配合され、繊維材料等の印刷に使用される水性染料系印刷インキとは要求される物性も異なっており、前記の顔料系インキを、本発明の方法により、繊維材料等の捺染に使用する事はできない。
【0005】
繊維材料に染料で図柄を堅牢・精細に描く方法として、高粘度色糊を使用するスクリーン捺染、ローラー捺染、ロータリースクリーン捺染、及びこれらのプリント技法を用いた転写捺染法等が知られており、工業的に実施されている。しかし、これらの製版プリント方式には、色数に制約がある、プリント加工の再現性や精細性を欠く恐れが大きい場合がある、製版費用が割高となり採算が悪化する、多量の排水負荷が発生し環境汚染がある等の問題が指摘されている。
【0006】
これらの問題点を解決する新たな捺染法として、コンピュータで画像処理を行い、水性の染料インクを用いてインクジェット方式でプリントする無製版プリント(ダイレクト法)が脚光を浴びている。水性染料系印刷インキは、このインクジェットプリンター用のインクとして知られており、多用されている。
【0007】
しかし、インクジェットプリンター用インクとしての水性染料系印刷インクは、グラビア印刷又はフレキソ印刷用インキとしては、不適当な物性であり使用できない。インクジェットプリンターと、グラビア印刷又はフレキソ印刷では、インキの付与方法が違い、インキに要求される物性も大きく異なっているので、インクジェットプリンター用インクとグラビア印刷又はフレキソ印刷用のインキとの互換性は無いのである。
【0008】
このように、従来は、グラビア印刷又はフレキソ印刷に適した水性染料系印刷インキは知られておらず、その開発が望まれていた。
【0009】
又、繊維材料に染料で図柄を描く方法として知られている乾式又は湿式の転写捺染法については、従来、生産効率と品質について種々の問題が指摘されており、生産効率と品質の優れた繊維材料の捺染法の開発が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、グラビア印刷又はフレキソ印刷に適した水性染料系印刷インキを提供する事を課題とする。
【0012】
本発明は、又、前記水性染料系印刷インキを用いて、捺染用紙や捺染用フィルムに、グラビア印刷又はフレキソ印刷する事を特徴とし、有機溶剤型インキを使用した場合の種々の問題が解決された、捺染紙又は捺染フィルムの製造方法、及び前記製造方法により製造(印刷)された捺染紙又は捺染フィルムを提供する事を課題とする。
本発明は、さらに、前記捺染紙又は捺染フィルムを用いる事を特徴とし、生産効率と品質が優れかつ環境問題等のない捺染法、及び前記捺染法により捺染された繊維材料を提供する事を課題とする。
【0013】
なお、ここで、捺染用紙、捺染用フィルムとは、それぞれ、インキ受容層が付与された紙(塗工用原紙)、インキ受容層が付与されたフィルム(塗工用のフィルム)を意味する。又、捺染紙、捺染フィルムは、それぞれ、インキ受容層にインキが印刷された捺染用紙、インキ受容層にインキが印刷された捺染用フィルムを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、グラビア印刷やフレキソ印刷に使用可能で、有機溶剤を用いない(油性でない)水性染料系印刷インキを開発するために鋭意検討を行った結果、
染料と水とともに、粘度調整剤、助剤、水混和性有機溶剤を含有させ、かつ、その粘度が、インクジェットプリンター用インクとしての水性染料系印刷インキの場合よりはるかに高い範囲内にある水性染料系印刷インキを用いる事により、生産効率や品質に優れ、環境問題等がない、紙やフイルムを媒介としたグラビア印刷やフレキソ印刷方式による捺染を、繊維材料に対して行える事を見出し、以下に示す構成からなる発明(水性染料系印刷インキの製法と、それを用いた繊維材料の捺染法)を完成した。
【0015】
即ち、本発明は、
染料と、粘度調整剤と、助剤と、水混和性有機溶剤と、水とを含有し、その粘度(25℃)が30mPas以上で800mPas以下である事を特徴とする水性染料系印刷インキ(請求項1)である。より好ましくは50〜500mPasである。
【0016】
前記染料としては、例えば、水溶性の反応染料、酸性染料、金属錯塩型染料、直接染料、カチオン染料及び、分散染料の水分散液からなる群より選ばれる1種又は2種以上の染料(請求項2)を挙げる事ができる。
【0017】
前記粘度調整剤としては、例えば、水溶性ポリビニルアルコール及びその誘導体、水溶性ポリアクリル酸エステル及びその誘導体、水溶性ポリウレタン及びその誘導体、水溶性ポリエチレンオキサイド及びその誘導体、水溶性ポリアミド及びその誘導体、スチレンとアクリル酸の水溶性の共重合体(水溶性ポリスチレンアクリル酸)及びその誘導体、水溶性ポリエステル及びその誘導体、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリビニルピロリドン、天然ガム糊、繊維素誘導体、多糖類、海藻類、動物性糊料からなる群より選択された1種又は2種以上からなるもの(請求項3)を挙げる事ができる。
【0018】
前記助剤としては、例えば、染料溶解剤、分散剤、界面活性剤、保湿剤、pH調整剤、濃染剤、防腐剤、防黴剤、脱気剤、消泡剤、酸化還元防止剤、及び金属イオン封鎖剤からなる群より選択された1種又は2種以上からなるもの(請求項4)を挙げる事ができる。
【0019】
前記水混和性有機溶剤としては、例えば、炭素数1〜5のモノアルコール類、炭素数2〜5のアルキレングリコール、炭素数2〜5のアルキレングリコールのエーテル、炭素数2〜5のアルキレングリコールのエステル、炭素数2〜5のモノオキシアルキレンジオール、炭素数5〜10のポリオキシアルキレンジオール、グリセリン、チオジグリコール、モノ−アルカノールアミン、ジ−アルカノールアミン、及びトリ−アルカノールアミンからなる群より選択された1種又は2種以上を含有するもの(請求項5)を挙げる事ができる。
【0020】
前記水混和性有機溶剤の含有量は、前記水混和性有機溶剤と前記水との合計の含有量の10質量%以上、60質量%以下である(請求項6)事が好ましい。
【0021】
本発明は、さらに、
前記の水性染料系印刷インキを、捺染用紙又は捺染用フィルムに、グラビア印刷又はフレキソ印刷する工程を有する事を特徴とする捺染紙又は捺染フィルムの製造方法(請求項7)、及びこの捺染紙又は捺染フィルムの製造方法により作製された捺染紙又は捺染フィルム(請求項7,8)、を提供する。
【0022】
本発明者は、さらに、前記水性染料系印刷インキを用いてグラビア印刷又はフレキソ印刷が適用された紙又はフィルム(捺染紙又は捺染フィルム)を媒介とする繊維材料の捺染法であって、生産効率と品質に優れ、かつ環境問題が抑制された捺染法を開発するために鋭意検討した結果、
前記水性染料系印刷インキを用いて、捺染用紙又は捺染用フィルムにグラビア印刷又はフレキソ印刷して捺染紙又は捺染フィルムを作製し、その捺染紙又は捺染フィルムを用いる事により、生産効率や製品の品質に優れ、かつ環境問題が小さい捺染を行える事を見出し、以下に示す構成からなる発明(捺染法)を完成した。
【0023】
即ち、
前記の水性染料系印刷インキを、捺染用紙又は捺染用フィルムにグラビア印刷又はフレキソ印刷して捺染紙又は捺染フィルムを作製する工程、及び
前記捺染紙又は捺染フィルムを繊維材料に密着して転写発色する工程、
を含む事を特徴とする捺染法(請求項9)である。
【0024】
前記捺染用紙又は捺染用フィルムとして、好ましくは、上質紙、中質紙、再生紙、クラフト紙、グラシン紙、コート紙、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム又はポリアミドフィルムに、インキ受容層を形成したもの(請求項10)を挙げる事ができる。
【0025】
本発明は、さらに、前記の捺染法により製造された繊維材料(請求項11)を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の水性染料系印刷インキを使用する事により、生産効率や品質に優れたグラビア印刷やフレキソ印刷を、紙やフィルム(捺染用紙や捺染用フィルム)に対して行う事ができる。本発明により、従来の有機溶剤型グラビアインキ、フレキソインキに代わる、グラビア印刷やフレキソ印刷に適した水性染料系印刷インキが提供される。従来の有機溶剤型のグラビアインキ、フレキソインキを使用した場合は、安全衛生問題と環境問題が指摘されていたが、この水性染料系印刷インキは、水不溶性有機溶剤を用いない(油性でない)ので、従来のような安全衛生問題や環境問題を生じない。
【0027】
又、本発明の捺染法により、即ち本発明の水性染料系印刷インキを使用して捺染紙や捺染フィルムを作製し、この捺染紙や捺染フィルムを用いて繊維材料を捺染する事により、従来の捺染法で問題となっていた環境問題、生産効率問題等が改良される。即ち、本発明は、従来の捺染法では問題が大きかった環境問題、品質問題、高額な設備投資問題、生産効率問題等を解決するものであり、優れた経済性とエコロジー性の元に、優れた品質の製品を再現性良く提供できる全繊維材料を対象とする捺染法を提供するものである。
【0028】
本発明の意義は、特に、染料を含有する水性グラビア印刷用インキ又は水性フレキソ印刷用インキを開発した事、その結果、既存の印刷機を活用して効率の良い印刷と捺染という生産システムを構築できる事、環境適合性と共に経済性と品質効果も優れた捺染法を開発した事にあり、本発明により、捺染繊維製品の高品質・大量生産に大きく貢献する新規な捺染法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態をより具体的に説明するが、本発明は、以下の具体的な形態により限定されるものではない。
【0030】
1.水性染料系印刷インキ
本発明の水性染料系印刷インキは、染料、粘度調整剤、助剤、水混和性有機溶剤及び水を必須成分とする。前記必須成分のみからなる場合、及び、前記必須成分とともに発明の趣旨を損ねない範囲で他の成分を含有する場合の、いずれもが含まれる。
【0031】
(1)染料
本発明の水性染料系印刷インキは、色素として染料を使用する事を特徴とする。使用される染料としては、例えば、反応染料、酸性染料、金属錯塩型染料、直接染料、カチオン染料及び、分散染料の水分散液を挙げる事が出来、これらから選ばれる1種又は2種以上が好ましく使用される。インキ中の染料(色素原体)の含有量は、要求される色柄の濃淡によって変動し特に限定されないが、通常1質量%〜20質量%が好ましい。
【0032】
(2)粘度調整剤
本発明の水性染料系印刷インキに使用される粘度調整剤としては、水溶性ポリビニルアルコール及びその誘導体、水溶性ポリアクリル酸エステル及びその誘導体、水溶性ポリウレタン及びその誘導体、水溶性ポリエチレンオキサイド及びその誘導体、水溶性ポリアミド及びその誘導体、スチレンとアクリル酸の水溶性の共重合体(水溶性ポリスチレンアクリル酸)及びその誘導体、水溶性ポリエステル及びその誘導体、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリビニルピロリドン、天然ガム糊、繊維素誘導体、多糖類、海藻類、動物性糊料等を挙げる事ができ、これらから選択された1種又は2種以上が、本発明の水性染料系印刷インキに配合される。
【0032】
ここで、水溶性ポリビニルアルコール及びその誘導体とは、水溶性のポリビニルアルコールのホモポリマー、及び、ポリビニルアルコールに他のモノマーを水溶性が保てる範囲で共重合させたもの、ポリビニルアルコールの一部にカルボキシル基、カルボニル基、アルキル基等を導入したもの等のポリビニルアルコールの変性体を含む意味である。具体的には、ポリビニルアルコールの変性体として、例えば、ポリビニルアルコールにでんぷん又はアクリル酸等をグラフトさせたもの、ポリビニルアルコールとアクリル酸、アクリル酸エステルとの二元共重合体を挙げることができる。水溶性ポリアクリル酸エステル及びその誘導体、水溶性ポリウレタン及びその誘導体、水溶性ポリエチレンオキサイド及びその誘導体、水溶性ポリアミド及びその誘導体、水溶性ポリスチレンアクリル酸及びその誘導体、水溶性ポリエステル及びその誘導体についても、同様の意味である。
【0033】
繊維素誘導体とは、セルロースの変性体であって水溶性のものである。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等を挙げる事ができる。
【0034】
本発明において粘度調整剤として使用可能な市販品として、マーポローズ類(松本油脂社製:水溶性セルロースエーテル)、CMC類(ダイセルファインケム社製)、HPC類(日本曹達社製:ヒドロキシプロピルセルロース)、ポバール類(日本酢ビ・ポバール社製:変成ポリビニルアルコール)、ゴーセノール類(日本合成化学社製:ポリビニルアルコール)、メトローズ類(信越化学社製:水溶性セルロースエーテル)等を、具体例として挙げる事が出来る。
【0035】
粘度調整剤の配合量は、水性染料系印刷インキの粘度(25℃)を、30〜800mPasの範囲に調整する量である。
【0036】
前記例示の粘度調整剤の中でも、繊維素誘導体及びポリビニルアルコール誘導体が粘度の安定性を保つ上で特に良好な結果をもたらすので好ましい。
【0037】
(3)助剤
本発明の水性染料系印刷インキに使用される助剤としては、例えば、染料溶解剤、分散剤、界面活性剤、保湿剤、pH調整剤、濃染剤、防腐剤、防黴剤、脱気剤、消泡剤、酸化還元防止剤及び金属イオン封鎖剤を挙げる事ができ、これらから選択された1種又は2種以上を配合する事で良好な水性染料系印刷インキが得られる。
【0038】
染料溶解剤としては、例えば、チオジグリコール、ε−カプロラクタム、ブチルカルビトール、2−ピロリドン、N―メチルピロリドン等を挙げる事ができる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、例えば、オルフィンPD−002W、E1004、E1010、E1020、PD−003、PD−201、サーフィノール420,440,465,485、シルフェイス(日信化学社製)等の表面張力調整剤、消泡剤、分散剤を挙げる事ができる。保湿剤としては尿素を初めとするヒドロトロピー剤等を挙げる事ができる。酸化還元防止剤としては、例えば、ニトロベンゼンスルフォン酸ソーダの様な還元防止剤を挙げる事ができる。金属イオン封鎖剤としては、例えば、EDTAを挙げる事ができる。
【0039】
これらの助剤は、本発明の水性染料系印刷インキに0.5〜30質量%配合される。配合される助剤の種類は、染料の種類、即ち染料個々の物性、及びインキに求められる物性により変化する。例えば、溶解性が不十分な染料の場合は、染料溶解剤が使用されるが、溶解性の良い染料や分散染料の場合は染料溶解剤の使用を省く事が出来る。
【0040】
(4)水混和性有機溶剤
本発明の水性染料系印刷インキに使用される水混和性有機溶剤とは、水と適当な濃度範囲で均一に混合する事ができる有機溶剤である。水混和性有機溶剤としては、炭素数1〜5のモノアルコール類、炭素数2〜5のアルキレングリコール、炭素数2〜5のアルキレングリコールのエーテル、炭素数2〜5のアルキレングリコールのエステル、炭素数2〜5のモノオキシアルキレンジオール、炭素数5〜10のポリオキシアルキレンジオール、グリセリン、チオジグリコール、モノ−アルカノールアミン、ジ−アルカノールアミン、及びトリ−アルカノールアミン等を挙げる事ができ、これらから選択される1種又は2種以上が、本発明の水性染料系印刷インキに含有される。
【0041】
炭素数1〜5のモノアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノールを挙げる事ができる。炭素数2〜5のアルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等を挙げる事ができる。炭素数2〜5のモノオキシアルキレンジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール類を挙げる事ができる。炭素数5〜10のポリオキシアルキレンジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコールを挙げる事ができる。
【0042】
前記例示の中でも、炭素数1〜5のモノアルコール類がインキの物性や印刷適性を保つ上で特に好ましい。
【0043】
水混和性有機溶剤の含有量は、水混和性有機溶剤と水との合計の含有量の10質量%以上、60質量%以下が好ましい。水混和性有機溶剤の含有量をこの範囲内とする事で目的に適った水性印刷インキが得られる。特に炭素数1〜5のアルコール類を用い、かつ水混和性有機溶剤の含有量を前記の範囲内とする事で好ましい効果が得られる。
【0044】
(5)水性染料系印刷インキの粘度
本発明の水性染料系印刷インキは、その粘度(25℃)が30mPas以上で800mPas以下である事を特徴とする。粘度として30〜800mPasに調整されたインキを用いる事により、グラビア印刷用又はフレキソ印刷用に適した水性インキが得られる。粘度(25℃)が30mPas未満では、印刷画像に流れムラが発生しやすくなる。一方、800mPasを超えると、印刷画像にカスレムラが発生しやすくなる。
【0045】
(6)水性染料系印刷インキの作製
本発明の水性染料系印刷インキは、前記の必須成分等を混合し溶解してインキ化後、ろ過して異物を除去して得る事ができる。このろ過工程はインクジェット用インクの様に目詰まり対策上行われている1μ以下のメンブレンフイルターを用いて精密濾過する必要はなく、紙濾過装置又はスクリーンで濾過すればよい。従って、操作は極めて簡単であり生産性が高い。
【0046】
(7)水性染料系印刷インキによる印刷
本発明の水性染料系印刷インキを使用して、捺染用紙又は捺染用フィルムにグラビア印刷又はフレキソ印刷する事により、優れた印刷物(印刷された捺染紙又は捺染フィルム)を得る事ができる。
【0047】
2.捺染法
本発明の捺染法は、前記の本発明の水性染料系印刷インキを、捺染用紙又は捺染用フィルムにグラビア印刷又はフレキソ印刷する、捺染紙又は捺染フィルムの作製工程、及び
前記の作製工程で得られた捺染紙又は捺染フィルムを紙又は繊維材料に密着して、印刷されたインキを転写する転写発色工程、
を含む事を特徴とする。そしてこの捺染法により、高い生産性で綺麗に捺染できる。
【0048】
(1)捺染紙又は捺染フィルムの作製工程
捺染紙又は捺染フィルムの作製に使用される捺染用紙又は捺染用フィルムとしては、例えば、特許第4778124号等に記載のペーパー捺染用紙、特許第5054673号等に記載の乾式転写捺染用紙、公知の湿式転写捺染用紙、昇華転写用紙、インキ受容層を有する既製の紙、又はインキ受容層が形成されたフィルムを挙げる事ができる。捺染用紙や捺染用フィルムは、以下に示す塗工用原紙(フィルムも含む)に、下記の方法でインキ受容層を形成する事により得る事ができる。
【0049】
(2)塗工用原紙(フィルムも含む)
捺染用紙や捺染用フィルムの作製に使用される塗工用原紙は、インキ受容層の形成のための塗工工程に於いて、糊液から付与される湿潤状態で破れたり皺にならない事、即ち、糊液付与が原因となる湿潤状態で強度を有する紙等であれば使用でき、特に限定されない。例えば、塗工用原紙としては、一般的に使用されている安価なパルプ紙、上質紙、中質紙、クラフト紙、再生紙、又はコート紙等の加工紙を挙げる事ができる。紙の吸水度(コブテスト)はあまり高くない方が好ましい。離型紙を用いても良い場合がある。又、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ乳酸フィルム又はポリアミドフィルム等のフィルムを挙げる事もできる。
【0050】
好ましくは、坪量10g〜150g/m
2、より好ましくは30〜120g/m
2、のクラフトパルプ又はグラインドパルプ等のパルプ又はリサイクル紙を原料として抄紙されたパルプ紙、上質紙、再生紙、コート紙等が用いられる。作業性から厚さ0.01〜0.5mm程度のものが好ましい。具体例を挙げると、日本製紙社製の上質紙、純白、晒し又は未晒しクラフト紙、銀竹、銀嶺、白銀、片艶クラフト紙、グラシン紙、三島製紙社製の各種コート紙、三菱製紙社製の上質紙、パールコート紙、スイングマット紙、ビスタグロス紙等の各種コート紙を挙げる事が出来るが、これらはほんの一例に過ぎない。
【0051】
(3)インキ受容層
塗工用原紙の上に塗布されるインク受容層は、水溶性合成系樹脂、天然系糊剤と各種助剤が配合された混合糊剤の層(多成分系糊層)である。インキ受容層には、染料インクとの相溶性が良好である、インク吸収性が良い、染料インクを均一に吸収保持する、染料の染着を阻害せずに染着を促進する、見掛け上のインク乾燥性が良好である、色柄の精細性(滲みがない事)にも優れている、等が望まれる。さらに、加圧で布帛との一時的接着力が強くなる、染料固着処理後の水洗で落ち易い事も望まれる。水溶性合成系樹脂又は/及び天然系糊剤を主成分とする混合糊剤であって、前記の条件を満たすインク受容層を形成できるものであれば、本発明の目的を達成できるので、使用する事ができる。
【0052】
混合糊剤には各種物性を向上するため、又は染料の染着促進剤として、各種助剤を加えてもよい。この助剤としては、アニオン系又はノニオン系界面活性剤、例えばオルフイン系等、前記インキ助剤の項で記載したと同じ表面張力調整剤、浸透剤(0.1〜5%)、インク受容層の布帛への糊着力と染着力向上のために湿潤・保湿剤、例えばポリエチレングリコール、グリセリン、チオジグリコール、ジエチレングリコール等の多価アルコール類、尿素、チオ尿素、ジシアンジアミド等(1〜15%)、コーティング時の糊液粘度の増加のためにアクリル酸系合成糊(0〜3%)、防腐剤、防黴剤、消泡剤、脱気剤、還元防止剤、反応染料インク用の場合はソーダ灰、重炭酸ソーダ、硅酸ソーダ、酢酸ソーダ等のアルカリ剤(1〜15%)、分散染料用や酸性染料インク用の場合は硫安、酒石酸や第ーリン酸ソーダの様なpH調整剤(0.1〜3%)等を挙げる事ができ、これらを配合すると好ましい結果が得られる。なお、この例示中の( )内は、各助剤の混合糊液中の好ましい配合量の範囲を質量%で表したものである。
【0053】
前記の混合糊剤を、前記の塗工用原紙(又は塗工用フィルム)の表面に、塗工装置で付与して乾燥させる事により、インキ受容層が形成される。混合糊液の塗布装置としては、コンマコーター、グラビアコーター、リバースコーター、エアナイフコーター、ジェットコーター、キスコート、オフセットグラビア、アークグラビア、含浸装置等を挙げる事ができる。望ましい塗工量は目的によって異なるが一般的には1〜60g/m
2である。なお、昇華転写用紙の場合は通常の市販の紙をそそまま使用する事も可能である。
【0054】
インキ受容層が形成された紙又はフィルムの塗工表面は、好ましくは平滑処理がされる。平滑処理は、斑のない印刷を行うために好ましい。平滑処理は、2本のローラーで強く加圧して表面の凹凸を平滑にする方法により行う事ができる。
【0055】
(4)捺染紙又は捺染フィルムの作製
塗工用原紙又は塗工用フィルムにインキ受容層を形成して作製された捺染用紙又は捺染用フィルムに対して、又はインキ受容層を有する市販の既成紙に対して、本発明の水性染料系印刷インクをグラビア印刷機又はフレキソ印刷機でグラビア印刷又はフレキソ印刷し、乾燥して、捺染紙又は捺染フィルムを作製する事ができる。
【0056】
(5)捺染
捺染紙又は捺染フィルムを作製した後、捺染紙又は捺染フィルムと、捺染の対象となる繊維材料、例えば布帛やニットを合わせ、圧着(加圧及び/又は加熱)する。ペーパー捺染法の場合は、圧着により捺染紙又は捺染フィルムを布帛に貼り付けたままスチーミング等を施すにより染料の固着処理を行い、染料を布帛に染着させる事ができる。乾式転写法又は湿式転写法の場合は、圧着してインク受容層を丸ごと布帛に転移した後、捺染紙又は捺染フィルムを剥離してから染料の固着処理を行い、染料を布帛に染着させる事ができる。昇華転写法の場合は、160〜220℃で30秒〜10分間加熱するだけで良い。
【0057】
固着処理は通常の直接捺染法で採用されている固着条件がそのまま採用できる。例えば、反応染料の1相スチーム固着法では、100〜105℃、5〜20分間のスチーミング処理、アルカリを含まないインク受容層の場合は、2相法(例えばコールドフィックス法)が適用できる。酸性染料では100〜105℃、10〜30分間のスチーミング処理を行う。分散染料の場合は、160〜220℃、1〜20分間のHTスチーミング又は乾熱処理を行う。ペーパー捺染の場合のスチーミング後、布帛の生地から紙をはがす際、水分や湿気を付与された状態であるので紙はがしは容易である。
【0058】
染料の固着処理後、常法の洗浄条件(水洗、ソーピング、水洗。分散染料の場合は水洗、還元洗浄、水洗)で処理して仕上げる事により、少量ながら布帛に付着している水溶性樹脂や糊剤が水洗除去され、繊維の風合が良好で精細、濃厚な捺染物(生地又はプリント製品)を得る事が出来る。分散染料(S又はSEタイプの非昇華型分散染料、及びEタイプの昇華型分散染料)の場合(ポリエステル等の場合)は洗浄工程を省略しても風合が良好で精細、濃厚な捺染物を得る事が出来る。
【0059】
本発明の場合、糊やインキの使用量が少なくて済む上に、染料を布帛に固着処理した後に剥離除去される紙には少量の未固着染料と、糊剤の大部分が付着しており、布帛には余剰染料や糊剤が殆ど付着していないので、布帛洗浄時の排水負荷が公知方法に比べて大幅に軽減される。離型紙を用いる乾式転写捺染、湿式転写捺染、及びダイレクト法の場合は、インク受容層(糊とインク)が全量布帛へ転移、又は付与されるため、未固着の余剰染料と糊剤による排水負荷が大きい。
【0060】
本発明に於いて使用される布帛(繊維材料)としては、例えば、綿、麻、リヨセル、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維材料、絹、羊毛等の蛋白質系繊維材料、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリアクリル等の合成繊維材料の織物、編物、不織布等の単独、混紡、混繊又は交織品を挙げる事ができる。更に複合系繊維でも良い。
【0061】
必要に応じて布帛は、染料の染着に影響を及ぼす薬剤又は染着促進に効果のある薬剤等で前処理したり、浸透剤や湿潤剤等含有の水、又は水だけで加湿した後に用いても良い。ペーパー捺染法の場合は、圧着工程で、繊維の公定水分率(綿は約8%)より多くなるように加湿(追加水分は5〜20%)すると発色性が一層改善される。但し、30%以上の過剰な加湿は、滲みの原因となり綺麗な柄模様の捺染が出来なくなる場合もある。
【実施例】
【0062】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例中、「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味する。
【0063】
実施例1
1.水性染料系印刷インキ(グラビアインク)の製造
粘度調整剤として、カルボキシメチルセルロース(ダイセル社製:品番1150)及びポリビニルアルコール(日本合成化学社製:ゴーセノールGL−05)を用い、
助剤として、脱気剤(北広ケミカル社製:MAC−100S)及びはじき防止剤(佐野社製:1004)を用い、
水混和性有機溶剤として、イソプロパノール(以下「IPA」と略記する)を用い、
染料として、反応染料のC.I.Reactive Red 226原粉を用いた。
【0064】
カルボキシメチルセルロース225部、ポリビニルアルコール225部、脱気剤75部、はじき防止剤75部を、精製水11500部とIPA5000部に加えて混合撹拌して、均一無色透明なペーストを得る。合計17100部の前記ペーストに、C.I.Reactive Red 226原粉1300部を加えて撹拌混合し、溶解した。溶解後、150mesh紗を通してろ過し、ろ液をポリタンクに収容する。このようにして得られたろ液の合計18400部に、30%IPA水を加えて粘度を210mPasに調整し、水性染料系印刷インキ(グラビアインキ)を得た。
【0065】
2.捺染用紙の作製
20%水溶性ポリビニルアルコール系樹脂水溶液(日本酢ビ・ポバール社製:ポバールAP−17)20部、60%水溶性アクリル系樹脂(DIC社製:ボンコートS−5)10部、25%水溶性ポリエステル系樹脂(互応化学社製:プラスコートZ−730)80部、20%パイオスターチLT(日澱化学社製:エーテル化澱粉)50部、エンバテックスD−23(珪酸アルミニュウム誘導体:共栄化学社製)5部、ソルビトーゼC−5(加工澱粉:AVEBE社製)5部、尿素10部、ジシアンジアミド5部、NS酸ソーダ(還元防止剤:明成化学社製)5部、チオ尿素5部、脱気剤3部、ソーダ灰20部、はじき防止剤3部、及び水50部の混合物を、高速デスパー型攪拌機(約5000r.p.m.)でよく攪拌し、高粘度のペースト(混合糊液)を作製した。この混合糊液を、塗工機(横山製作所製コンマコーター)を使用して、紙(日本製紙社製、晒クラフト紙、坪量75g/m
2、厚さ0.15mm)に塗布した後、乾燥して、紙の表面にインク受容層兼接着層を形成し塗工紙を得た。混合糊液の塗工量(乾燥重量)は20g/m
2であった。この塗工紙を、金属製と硬質ゴム製の2本のローラーで30kg/cm
2の圧力をかけて平滑処理を行い反応染料用の捺染用紙を得た。
【0066】
3.捺染紙の作製(印刷工程)
前記の水性染料系印刷インキと前記の反応染料用の捺染用紙をグラビア印刷試験機(クラボウテクノシステム社販売:GP−10)にセットし15m/min.のスピードで印刷して乾燥し、捺染紙を得た。
【0067】
4.捺染工程
得られた捺染紙と綿ブロード布を、加熱金属ローラーと硬質ゴムローラーで構成された圧着機を用いて、綿布を金属ローラー側に、紙をゴムローラー側に当てる様に密着させ、加熱・加圧(200℃、35kg/cm
2、8m/min.)して、綿ブロード布に捺染紙を貼り付けた。次いで捺染紙を貼りつけたまま綿ブロード布を、100℃、10分間、HTスチーム処理を行った。その後、紙を剥離した後、常法により水洗・ソーピング・水洗・乾燥した。この様にして得た製品(捺染布)は、繊細なデザインが精細・堅牢・濃厚に染着しており、柔軟な風合を示す捺染布であった。
【0068】
実施例2
実施例1に於けるカルボキシメチルセルロースとゴーセノールGL−05の代わりに、メトローズ65SH・400(100部、信越化学社製の水溶性メチルセルロース)とメトローズ65SH・4000(50部、信越化学社製の水溶性メチルセルロース)並びにポバールAP−17(250部、日本酢ビ・ポバール社製のカルボキシ変成ポリビニルアルコール)を使用し、水性染料系印刷インキの粘度を190mPasに調整する以外は実施例1と同様に処理した結果、繊細なデザインが精細・堅牢・濃厚に染着した柔軟な風合を示す捺染布が得られた。
【0069】
実施例3
1.水性染料系印刷インキの製造
染料として、C.I.Reactive Red 226原粉の代わりに、酸性染料のC.I.Acid Red 257原粉を1300部用いる以外は実施例1同様にして水性染料系印刷インキ(酸性インキ)を作製した。
【0070】
2.捺染用紙の作製
水溶性ポリビニルアルコール系樹脂(日本酢ビ・ポバール社製:ポバールAP−17)20部、25%水溶性ポリエステル系樹脂(互応化学社製:プラスコートZ−730)75部、ペノンJE66(日澱化学社製:エーテル化澱粉)35部、尿素10部、ジシアンジアミド3部、チオ尿素20部、脱気剤5部、はじき防止剤5部、硫安10部及び水120部の混合物を、高速デスパー型攪拌機でよく攪拌し、高粘度のペースト(混合糊液)を作製した。この混合糊液を、塗工機(横山製作所製コンマコーター)を使用して、紙(日本製紙社製、上質紙、坪量80g/m
2)に塗布した後、乾燥して、紙の表面にインク受容層兼接着層を形成し塗工紙を得た。混合糊液の塗工量(乾燥重量)は22g/m
2であった。更に実施例1と同様に平滑処理して酸性染料用の捺染用紙を得た。
【0071】
3.捺染紙の作製(印刷工程)
前記の水性染料系印刷インキ(酸性インキ)と前記の酸性染料用の捺染用紙をグラビア印刷試験機(GP−10)にセットし20m/min.のスピードで印刷して乾燥し、捺染紙を得た。
【0072】
4.捺染工程
得られた捺染紙とナイロンタフタを、実施例1と同様な操作法によって圧着機を用いて、密着させ、加熱・加圧(170℃、35kg/cm
2、5m/min.)して、ナイロン生地に捺染紙を貼り付けた。次いで捺染紙を貼りつけたままナイロン生地を100℃・30分間、HTスチーム処理を行った。その後、紙を剥離した後、常法により水洗・ソーピング・水洗・乾燥した。この様にして得たナイロンの捺染布は繊細なデザインが精細・堅牢・濃厚に染着しており、柔軟な風合を示す捺染布であった。
【0073】
実施例4
1.水性染料系印刷インキ(分散染料インク液)の製造
染料として、平均粒径が0.5μmとなるように直径が0.3mmのジルコニュームビーズを用いたビーズミルで微粒化した非昇華型分散染料C.I.Disperse Blue60を用いた。この分散染料5%、エチレングリコール5%、ノニオン系分散剤5%、アニオン系分散剤5%、並びに実施例2で使用されたものと同じ粘度調整剤2.4%とIPA含有イオン交換水77.6%となる組成で、粘度が250mPasとなる様にして、水性染料系印刷インキ(分散染料インク液)を調整した。
【0074】
2.捺染紙の作製
前記の水性染料系印刷インキ(分散染料インク液)を、実施例3からプラスコートZ−730を省き、後は同様にして得た捺染用紙上に、フレキソ印刷機によって印刷した後乾燥し、捺染紙を得た。
【0075】
3.捺染工程
得られた捺染紙とポリエステルサテン生地を、ローラー型圧着機を用いて加熱・加圧(180℃、32kg/cm
2、5m/min.)して、ポリエステル生地に捺染紙を貼り付けた。次いで捺染紙を貼りつけたままポリエステル生地を180℃・8分間、HTスチーム処理を行った。その後、紙を剥離した後、常法により水洗・還元洗浄・水洗・乾燥をした。この様にして得られたポリエステル捺染布は繊細なデザインを有し、繊維の風合は柔軟であり、各種堅牢性も4級以上であった。この生地の還元洗浄液は無色透明であり、洗浄有無による風合いにも変化はなく、還元洗浄が省略できる事が証明された。
【課題】従来公知の油性インキを用いないグラビア又はフレキソ印刷に使用可能な水性染料インキを開発すると同時に、そのインキを用いて紙又はフィルムを媒介とする高速印刷方式によって生産効率と品質の優れた繊維材料の捺染法の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】染料と、粘度調整剤と、助剤と、水混和性有機溶剤と、水とを含有し、その粘度(25℃)が30mPas以上、800mPas以下である事を特徴とする水性染料系印刷インキ、この水性染料系印刷インキを、捺染用紙又は捺染用フィルムにグラビア印刷又はフレキソ印刷する工程を有する事を特徴とする捺染紙又は捺染フィルムの製造方法、前記捺染紙又は捺染フィルムを繊維材料に密着して転写発色する捺染法、及びその方法により捺染された繊維材料。