(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、仰臥の姿勢で書物を読むことができる書見台として、高さ及び水平回転可能な支柱部材と、この支柱部材の上端にスライド接続手段を介して取り付けられるアーム部材と、このアーム部材の先端に回転及び起伏自在に取り付けられる書物受け部と、書物のページ抑えと、を具備する書見台が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の書見台によれば、支柱部材の高さ調節と回転によって書物受け部の向きを調節し、アーム部材を進退させて進出長さを調節し、書物受け部を回転及び起伏することにより、書物受け部にページ抑えによって抑えられた書物を読書する者に対応させることができる。
【0004】
また、別の書見台として、ベース部材に立設されたポールと、ポールに高さ調整可能に取り付けられるアーム支持体と、アーム支持体に左右方向の位置を調節でき、かつ、水平方向に回動可能な取付具を介して取り付けられた天秤アームと、天秤アームの一端部に回動可能に取り付けられた書籍支持板と、天秤アームの他端部に位置調整可能に係止し、書籍支持板を所定の高さに位置させる天秤重りと、を具備する書見台が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2記載の書見台によれば、取付具をポールの適当な位置に取り付けて天秤アームの高さを設定した後、取付具に所定間隔で形成されたボルト挿入孔の任意の位置に蝶ナットを取り付けてポールから天秤アームの一端部の突出量を設定すると共に、天秤アームを回動して書籍支持板の角度を設定することができ、また、天秤アームの他端部に天秤重りを係止して書籍支持板の高さ調整を行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の書見台においては、書物受け部の高さ調整を支柱部材の伸縮操作によって行うため、書物受け部側から高さ調整を行うことができない。また、書物受け部は起伏による調節は可能であるが、書物受け部の面方向の回動ができず、書物受け部の最適な位置調整ができないという懸念がある。
【0008】
また、特許文献2に記載の書見台においても、書籍支持板の高さ調整は、天秤アームを取り付けた取付具をポールの適当な位置に取り付けて行うため、書籍支持板側から高さ調整を行うことができない。また、書籍支持板は天秤アームを回動することにより角度調整は可能であるが、特許文献1に記載の書見台と同様に書籍支持板の面方向の回動ができず、書物受け部の最適な位置調整ができないという懸念がある。
【0009】
また、特許文献1及び2に記載の書見台においては、いずれも重量のある書物に対応した位置調整及び安定保持に関しては言及されておらず、重量のある書物を仰臥や横臥等の異なる姿勢に対応した位置調整の自由度が十分でないという懸念があった。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、仰臥や横臥等の異なる姿勢に対応して書物保持体の位置調整を容易に行えるようにすると共に、書物の安定保持を行えるようにした書物用スタンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明は、基盤に立設される支柱と、上記支柱の上端部に第1の継手を介して水平方向及び鉛直方向に回動自在に装着されると共に、摺動自在に装着される支持アームと、上記支持アームの先端部に第2の継手を介して支持アームの軸心に対する周方向及び直交方向に回動自在に装着される保持アームと、上記保持アームの先端部に取り付けられる、書物押さえ部を有する書物保持体と、を具備し、上記第1の継手は、上記支柱の上端に取り付けられる第1の継手基部と、上記支持アームを回動及び摺動自在に貫通する第1のアーム支持部と、上記第1のアーム支持部における上記支持アームの貫通部において支持アームの回動力及び摺動力を調整する回動・摺動調整部材と、上記第1の継手基部と上記第1のアーム支持部とを回動自在に取り付ける枢軸と、上記第1のアーム支持部における枢軸受け孔内に嵌挿され、上記支持アームの先端側の上昇移動時にはフリー状態で回動させ、下降移動時にはロック状態で回動させるワンウエイベアリングと、を具備し、上記第2の継手は、上記支持アームの先端部に取り付けられる第2のアーム支持部と、上記第2のアーム支持部に一端部が枢着され、他端に上記保持アームの基端部が回動自在及び抜け止め部材を介して抜け止め状態で嵌装される第2の継手基部と、上記第2の継手基部に設けられて上記保持アームの外周面に当接可能な回動調整部材と、を具備する、ことを特徴とする(請求項1)。
【0012】
このように構成することにより、支柱の上端部に第1の継手を介して装着される支持アームを、水平方向及び鉛直方向に回動することができると共に、該支持アームを軸心に対して回動及び軸方向に摺動(スライド)して進退移動することができる。この際、支持アームの先端側を上昇するときは小さな力で容易に支持アームの先端側を上昇方向に回動することができ、支持アームの先端側を下降するときは、摩擦抵抗を与えて支持アームの先端側を下降方向に回動することができる。したがって、書物保持体側と支持アームの基端側のいずれの位置においても支持アームすなわち書物保持体を、水平方向及び鉛直方向に容易に回動することができる。
【0013】
また、支持アームの先端部に第2の継手を介して装着される保持アーム及び保持アームに取り付けられる書物保持体を、支持アームの軸心に対する周方向及び直交方向に回動することができる。また、第2の継手の第2の継手基部を、保持アームの基端部に回動自在及び抜け止め部材を介して抜け止め状態で嵌装することにより、書物保持体が保持アームから抜け出るのを防止することができる。
【0014】
請求項1記載の書見用スタンドにおいて、上記抜け止め部材は、上記保持アームの外周面に設けられた外周溝と、上記第2の継手基部の嵌装内周面に設けられた内周溝との間に介在される略楕円C字状の弾性変形可能な抜け止めリングにて形成されるのが好ましい(請求項2)。
【0015】
このように構成することにより、抜け止め部材を介在した保持アームと第2の継手基部との取付を容易にすることができると共に、抜け止め状態を強固にすることができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の書見用スタンドにおいて、上記第1の継手基部は、上記支柱の上端に嵌装される取付部と、上記取付部の上端に対峙状に立設され、外方に向かって膨隆する半球面部を有すると共に上記枢軸を貫挿する貫通孔を有し、かつ、上端から上記貫通孔に渡ってスリットを有する一対の円形状の起立部と、上記両起立部における上記スリットを介して対向する部分に貫通され、少なくとも一方にねじ部が設けられる締結用孔と、上記締結用孔のねじ部にねじ結合されて上記枢軸の締結力を調整可能な締結調整ねじ部材と、を具備し、上記第1のアーム支持部は、上記支持アームを回動及び摺動自在に貫通するアーム貫通孔を有すると共に、上端から上記アーム貫通孔に渡ってスリットを有するアーム取付部と、上記アーム取付部に突設され、上記ワンウエイベアリングを嵌挿した状態で上記一対の起立部間に挿入される上記起立部と略同径円形状の回動部と、上記回動部における上記起立部と対向する面に設けられた環状嵌合溝に嵌合されて上記起立部に摺接可能な合成ゴム製のOリングと、具備し、上記アーム取付部における上記スリットを介して対向する部分にねじ孔を設け、上記ねじ孔にねじ結合する上記回動・摺動調整部材によって上記支持アームの回動力及び摺動力を調整可能にする、ことを特徴とする。
【0017】
このように構成することにより、締結調整ねじ部材の締結力を調整することによって支持アームの鉛直方向の回動力を調整することができる。この際、第1の継手基部の起立部と第1のアーム支持部の回動部との間に介在される合成ゴム製のOリングによって第1の継手基部と第1のアーム支持部の接触部の摩耗を防止することができる。また、回動・摺動調整部材をアーム取付部のねじ孔にねじ結合することで、支持アームとアーム取付部のアーム貫通孔との摩擦抵抗を調整して、支持アームの回動力及び摺動力を調整することができる。更には、第1の継手基部の起立部と第1のアーム支持部の回動部を、略同径の円形状に形成することにより、支持アームの回動時の第1の継手の外形の変化を抑制して外方への突出を少なくすることができる。
【0018】
また、請求項4記載の発明は、請求項1記載の書見用スタンドにおいて、上記第2の継手基部は、上記保持アームを回動自在に嵌挿するスリットを介して2分割された開口穴を有する取付部と、上記取付部の先端に対峙状に突設され、外方に向かって膨隆する半球面部を有すると共に、少なくとも一方にねじ部が設けられる貫通孔を有する一対の円形状の突出部と、を具備し、上記回動調整部材は、上記スリットにより2分割された上記取付部の一方から上記開口穴に貫通するねじ孔にねじ結合し、上記保持アームの外周面に当接する回動調整ねじ部材にて形成され、上記第2のアーム支持部は、上記支持アームに嵌装されるアーム取付部と、上記アーム取付部に突設され、中央部に貫通孔を有し、かつ、上記一対の突出部間に挿入される上記突出部と略同径円形状の回動部と、上記回動部における上記突出部と対向する面に設けられる環状嵌合溝に嵌合されて上記突出部に摺接可能な合成ゴム製のOリングと、を具備し、上記第2の継手基部の突出部に設けられた貫通孔と、上記第2のアーム支持部の回動部に設けられた上記貫通孔を貫通し、一方の貫通孔に設けられたねじ部にねじ結合する締付け調整ねじ部材によって上記第2の継手基部と第2のアーム支持部の締付け力を調整可能にする、ことを特徴とする。
【0019】
このように構成することにより、回動調整ねじ部材によって保持アームの支持アームの軸心に対する周方向の回動を調整することができ、また、締付け調整ねじ部材の締付け力を調整することによって保持アームの支持アームの軸心に対する直交方向の回動を調整することができる。また、第2の継手基部の突出部と第2のアーム支持部の回動部との間に介在される合成ゴム製のOリングによって第2の継手基部と第2のアーム支持部の接触部の摩耗を防止することができる。更には、第2の継手基部の突出部と第2のアーム支持部の回動部を、略同径の円形状に形成することにより、保持アームの回動時の第2の継手の外形の変化を抑制して外方への突出を少なくすることができる。
【0020】
また、この発明の書見用スタンドにおいて、上記支柱は、上記基盤上に固定される支柱本体と、上記支柱本体の上端に緩衝材を介して回動自在に連結される回動軸と、を具備するのが好ましい(請求項5)。
【0021】
このように構成することにより、支持アームの水平方向の回動を安定させると共に、回動に伴う支柱の摩耗を抑制することができる。
【0022】
また、請求項6記載の発明は、請求項1又は5に記載の書見用スタンドにおいて、上記支柱を回避して上記基盤上に載置可能な重りを更に具備する、ことを特徴とする。
【0023】
このように構成することにより、書物保持体に保持される書物の重量に対応させて重りを基盤上に載置することができ、書物用スタンドの安定化を図ることができる。
【0024】
また、上記支柱は、上記基盤上に固定される支柱本体と、上記支柱本体の上端に緩衝材を介して回動自在に連結される回動軸と、を具備する場合は、上記支柱を回避して上記基盤上に載置可能な重りを、上記支柱に関して偏倚した形状に形成し、上記
回動軸と上記重りとを連結部材にて連結し、上記重りの偏倚部を上記
回動軸の回動に伴って上記支持アームの基端側に追従させるようにするのが好ましい(請求項7)。
【0025】
このように構成することにより、重りの偏倚部を支柱の
回動軸の回動に伴って支持アームの基端側に追従させるので、重りの機能を有効にすることができると共に、重りの重量及び材料の削減が図れる。
【0026】
また、この発明の書見用スタンドにおいて、上記書物保持体は、書物を載置する載置板と、上記載置板の下端に沿設され、書物の下端部を支持する支持片を具備し、上記書物押さえ部は、上記支持片の中央部に一端が固定され、他端が上記載置板の裏面に突設された係止突起に着脱可能に係止する伸縮自在な中央保持紐と、上記載置板の両側の表裏面に着脱可能に掛け渡される伸縮自在な頁押さえ紐と、上記頁押さえ紐上を移動自在に緩装される球状押さえ部材と、を具備するのが好ましい(請求項8)。
【0027】
このように構成することにより、中央保持紐によって書物の中央の頁綴り部を押さえ、必要に応じて、頁押さえ紐と該頁押さえ紐に緩装される球状押さえ部材によって書物の開かれた頁表面を押さえることができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、書物保持体側と支持アームの基端側のいずれの位置においても支持アーム及び書物保持体を、水平方向、鉛直方向及び支持アームに対する周方向に回動する自由度の向上が図れるので、仰臥や横臥等の異なる姿勢に対応して書物保持体の位置調整を容易に行うことができる。また、書物保持体が保持アームから抜け出るのを防止して、書物の安定保持を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】この発明に係る書見用スタンドの第1実施形態を示す正面斜視図(a)、この発明における第1の継手の一部断面図(b)及びこの発明におけるワンウエイベアリングの一部拡大断面図(c)である。
【
図2】第1実施形態の書見用スタンドの背面斜視図である。
【
図3】この発明における基盤と支柱の取付状態を示す斜視図(a)及び基盤の底面図(b)である。
【
図4】この発明における基盤、支柱及び重りを示す分解斜視図である。
【
図5】この発明における第1の継手を示す斜視図である。
【
図5A】この発明における支柱と第1の継手の取付状態を示す一部断面図である。
【
図5B】この発明における締結調整ねじ部材の取付状態を示す一部断面図である。
【
図6】上記第1の継手を示す分解斜視図(a)及び第1の継手基部を示す斜視図(b)である。
【
図7】ここの発明における第2の継手を示す斜視図(a)及び上記第2の継手と保持アームの連結部を示す断面図(b)である。
【
図8】上記第2の継手と保持アームを示す分解斜視図である。
【
図9】この発明における第2の継手基部を示す斜視図である。
【
図10】この発明における保持アームと抜け止め部材を示す分解斜視図である。
【
図11】この発明における書物保持体を示す斜視図である。
【
図12】上記書物保持体、保持アーム及び第2の継手を示す分解斜視図である。
【
図13A】この発明に係る書見用スタンドの使用状態の一例を示す概略斜視図である。
【
図13B】上記書見用スタンドの使用状態の別の一例を示す概略斜視図である。
【
図14】この発明における重りの別の形態を示す斜視図である。
【
図15】この発明における基盤の下面にキャスタを取り付けた支柱を示す斜視図(a)及び基盤の底面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、この発明に係る書見用スタンドの実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
この発明に係る書見用スタンドは、基盤10に立設される支柱20と、支柱20の上端部に第1の継手30を介して水平方向(X,Y方向)及び鉛直方向(Z方向)に回動自在に装着されると共に、回動及び摺動自在に装着される支持アーム50と、支持アーム50の先端部に第2の継手60を介して支持アーム50の軸心に対する周方向及び直交方向に回動自在に装着される保持アーム70と、保持アーム70の先端部に取り付けられる、書物押さえ部80を有する書物保持体90と、を具備している。この場合、支持アーム50と保持アーム70は、ステンレス製のパイプ部材にて形成されている。また、支持アーム50の基端部には合成樹脂製のキャップ51が被着されている。なお、基盤10上には、支柱20を回避して重り16が着脱可能に載置される。
【0032】
上記支柱20は、
図3及び
図4に示すように、アルミニウム製の円板状の基盤10の中心部に立設固定される円柱状の例えばステンレス製の支柱本体21と、支柱本体21の上端に緩衝材23を介して回動自在に連結される円柱状の例えばステンレス製の回動軸22とで構成されている。この場合、支柱本体21は上端部及び下端部に上部小径軸21aと下部小径軸21bが延在されており、下部小径軸21bが基盤10に固定される厚肉円筒状の支持部材11に設けられた貫通孔11a内に挿入され、基盤10の中心部に設けられた取付孔13aを貫通する取付ねじ14aによって固定されている。なお、支持部材11は、基盤10の中心部に設けられた円形凹部10aに嵌挿され、円形凹部10aの同心円上に設けられた複数例えば6個の取付孔13bを貫通する複数の取付ねじ13bを支持部材11の下端に設けられたねじ孔(図示せず)にねじ結合することによって固定されている。このように構成することにより、支柱20は支持部材11によって基盤10上に強固に取り付けられる。
【0033】
また、支柱本体21の上部小径軸21aには、ドーナツ円板状の例えばウレタン製の緩衝材23を介して回動軸22の下端に設けられた円形穴(図示せず)が嵌装されて、回動軸22が水平方向に回動自在に連結されている。なお、回動軸22の上端には上部小径軸22aが延在しており、この上部小径軸22aに第1の継手30が装着される。
【0034】
なお、基盤10の下面の外周側の同心円上には複数例えば10個の凸球面を有する例えばフッ素樹脂等の合成樹脂製の滑り材15が装着されている。
【0035】
また、上記基盤10の上面に着脱可能に載置される重り16は、所定の重量を有する複数例えば2個のステンレス製の大径円板状重り16aと小径円板状重り16bとからなる。各重り16a,16bの中心部には、支柱20を回避すべく支持部材11を遊嵌する嵌挿孔16cが設けられている。
【0036】
上記第1の継手30は、
図5及び
図6に示すように、支柱20の回動軸22の上端の上部小径軸22aに取り付けられる第1の継手基部31と、支持アーム50を回動及び摺動自在に貫通する第1のアーム支持部32と、第1のアーム支持部32における支持アーム50の貫通部において支持アーム50の回動力及び摺動力を調整可能な回動・摺動調整部材33と、第1の継手基部31と第1のアーム支持部32とを回動自在に取り付ける枢軸34と、第1のアーム支持部32における枢軸受け孔32e内に嵌挿され、支持アーム50の先端側の上昇移動時にはフリー状態で回動させ、下降移動時にはロック状態で回動させるワンウエイベアリング35と、を具備している。
【0037】
上記ワンウエイベアリング35は、
図1(c)に示すように、第1のアーム支持部32に設けられた枢軸受け孔32eに嵌挿固定される外輪35aと、枢軸34に嵌合される内輪32bと、外輪35aと内輪32bとの隙間内に配設される複数のボール32cと、複数のボール32cを一定の間隔をおいて転動自在に保持する保持部材32dと、を具備している。また、外輪35aの内周面には、ボール32cの転動を許容する凹所32fと凹所32fの周方向の一端に連なってボール32cの転動を阻止する傾斜部32gとが周方向に適宜間隔をおいて形成されている。更に、保持部材32dにおける傾斜部32gと反対の凹所32f側にはボール32cを弾性保持する圧縮ばね部材35eが配設されている。なお、この場合、ワンウエイベアリング35の外輪35aに設けられる傾斜部32gは、支持アーム50の先端部が上昇移動する回動方向U側に位置している。これにより、支持アーム50の先端側の上昇移動時の回動方向Uにはフリー状態で回動させ、下降移動時の回動方向Dにはロック状態で回動させることができる。
【0038】
また、第1の継手基部31は、
図5及び
図6に示すように、支柱20の回動軸22の上端の上部小径軸22aに嵌装される取付部36と、取付部36の上端に対峙状に立設され、外方に向かって膨隆する半球面部37aを有すると共に枢軸34を貫挿する貫通孔37bを有し、かつ、上端から貫通孔37bに渡ってスリット37cを有する一対の円形状の起立部37と、両起立部37におけるスリット37cを介して対向する部分に貫通され、ねじ部37dが設けられる締結用孔37eと、締結用孔37eのねじ部37dにねじ結合されて枢軸34の締結力を調整可能な締結調整ねじ部材38と、を具備している。
【0039】
この場合、
図5Aに示すように、取付部36には、回動軸22の上部小径軸22aが挿入可能な下端開口穴36aと、この下端開口穴36aを径方向に2分割するスリット36bと、下端開口穴36aの上方側におけるスリット36bを介して対向する部分に位置するねじ孔36cとが設けられている。このように形成される取付部36の下端開口穴36aを回動軸22の上部小径軸22aに嵌装した状態で、ねじ孔36cに締結ねじ36dをねじ結合(締結)することで、回動軸22と第1の継手30とが連結される。
【0040】
また、
図5Bに示すように、締結調整ねじ部材38を、両起立部37におけるスリット37cを介して対向する部分に貫通された締結用孔37eのねじ部37dにねじ結合(締結)することで、枢軸34の締結力が調整される。この場合、スリット37cを介して対向する両締結用孔37eにねじ部37dを設けているが、少なくとも一方、すなわち締結調整ねじ部材38が挿入される先端側の締結用孔37eにねじ部37dが設けられていればよい。なお、締結調整ねじ部材38は、頭部38aに六角穴38bが設けられており、六角レンチ等の工具を用いて締結用孔37eのねじ部37dに締結される。
【0041】
一方、第1のアーム支持部32は、支持アーム50を回動及び摺動自在に貫通するアーム貫通孔32aを有する略矩形ブロック状のアーム取付部32bと、アーム取付部32bに突設され、ワンウエイベアリング35を嵌挿した状態で一対の起立部37間に挿入される、起立部37と略同径円形状の回動部32cと、回動部32cにおける起立部37と対向する面に設けられた環状嵌合溝32dに嵌合されて起立部37に摺接可能な合成ゴム製のOリング39と、を具備している。なお、回動部32cには、ワンウエイベアリング35を嵌挿する枢軸受け孔32eが設けられると共に、回動部32cの先端から枢軸受け孔32eに渡ってスリット32fが設けられ、スリット32fを介して対向する部分にはねじ孔32gが貫通して設けられている。このように形成される回動部32cの枢軸受け孔32e内にワンウエイベアリング35を嵌挿した状態で、ねじ孔32gに締結ねじ32hをねじ結合(締結)することによって回動部32cの枢軸受け孔32eにワンウエイベアリング35が嵌挿固定される。この場合、締結ねじ32hは頭部32iに六角穴32jが設けられており、六角レンチ等の工具を用いてねじ孔32gに締結される。
【0042】
また、アーム取付部32bの上端中央部からアーム貫通孔32aに渡ってスリット32kが設けられ、スリット32kを介して対向するアーム取付部32bにはねじ孔32mが設けられており、このねじ孔32mに、上記回動・摺動調整部材33がねじ結合されている。この場合、回動・摺動調整部材33は、ねじ孔32mにねじ結合するねじ軸33aの一端に摘み部33bを有する蝶ボルトにて形成されている。上記のように形成される回動・摺動調整部材33のねじ軸33aを、アーム取付部32bのスリット32kを介して対向する部分に設けられたねじ孔32mにねじ結合することによってアーム貫通孔32aの内径を変化させて支持アーム50の軸心に対する回動力及び軸方向の摺動力すなわちアーム貫通孔32aと支持アーム50の摩擦力を調整することができる。なお、ねじ孔32mはスリット32kを介して対向する部分の一方に設けられていればよく、他方には回動・摺動調整部材33のねじ軸33aを貫通する貫通孔であってもよい。
【0043】
上記のように形成される第1の継手基部31と第1のアーム支持部32を回動自在に枢着する枢軸34は抜け止めリング40によって第1の継手基部31と第1のアーム支持部32から抜け出るのを阻止されている。この場合、枢軸34は、
図6に示すように、円筒状に形成されており、一端側の外周面には外周溝34aが周設されている。また、第1の継手基部31の起立部37に設けられる貫通孔37bの内周面には内周溝34bが周設されている。抜け止めリング40は、後述する保持アーム70の抜け止めリング40と同様に、略楕円C字状の弾性変形可能に形成されており、枢軸34に設けられた外周溝34aに取り付けられた状態で、起立部37に設けられた貫通孔37b内に挿入されると、楕円形状の短径部が膨隆状に弾性変形して、抜け止めリング40が、枢軸34に設けられた外周溝34aと起立部37に設けられた内周溝34bに係合して、枢軸34が第1の継手基部31と第1のアーム支持部32から抜け出るのを阻止している。
【0044】
上記第2の継手60は、
図7及び
図8に示すように、支持アーム50の先端部に取り付けられる第2のアーム支持部62と、第2のアーム支持部62に一端部が枢着され、他端に保持アーム70の基端部が回動自在及び抜け止め部材である抜け止めリング40を介して抜け止め状態で嵌装される第2の継手基部61と、第2の継手基部61に設けられて保持アーム70の外周面に当接可能な回動調整部材63と、第2のアーム支持部62と第2の継手基部61の枢着部の締付け力を調整する締付け調整ねじ部材64と、を具備している。
【0045】
上記第2の継手基部61は、
図7ないし
図9に示すように、保持アーム70を嵌挿する取付部65と、取付部65の先端に対峙状に突設され、外方に向かって膨隆する半球面部66aを有すると共に、ねじ部66cが設けられる貫通孔66bを有する一対の円形状の突出部66と、を具備している。
【0046】
この場合、取付部65には、取付部65の一端に開口する保持アーム70の基端部が回動自在に挿入可能な開口穴65aと、この開口穴65aを径方向に2分割するスリット65bと、スリット65bによって分割された取付部65の一方から開口穴65aに貫通するねじ孔65cが設けられている。また、回動調整部材63は、ねじ孔65cにねじ結合して、保持アーム70の外周面に当接するねじ軸63aの一端の大径頭部63bに摘まみ部63cを有する蝶ボルトと同様な回動調整ねじ部材にて形成されている。
【0047】
上記のように形成される取付部65のねじ孔65cに回動調整部材63(以下に回動調整ねじ部材63という)をねじ結合して回動調整ねじ部材63の先端を保持アーム70の外周面に当接し、その当接力を調整することによって、支持アーム50の軸心に対する保持アーム70の回動力を調整することができる。したがって、保持アーム70の先端に取り付けられる書物保持体90の面方向の回動を調整することができる。
【0048】
また、抜け止めリング40は、略楕円C字状の弾性変形可能に形成されており、保持アーム70の基端側の外周面に設けられた外周溝71aに取り付けられた状態で、取付部65に設けられた開口穴65a内に挿入されると、
図7(b)に示すように、楕円形状の短径部が膨隆状に弾性変形して、抜け止めリング40が、保持アーム70に設けられた外周溝71aと開口穴65aの内周面に設けられた内周溝71bに係合して、保持アーム70が取付部65の開口穴65aから抜け出るのを阻止している。
【0049】
上記第2のアーム支持部62は、支持アーム50に嵌装されるアーム取付部62aと、アーム取付部62aに突設され、中央部に貫通孔62bを有し、かつ、上記一対の突出部66間に挿入される突出部66と略同径円形状の回動部62cと、回動部62cにおける突出部66と対向する面に設けられる環状嵌合溝62dに嵌合されて突出部66に摺接可能な合成ゴム製のOリング67と、を具備している。
【0050】
この場合、アーム取付部62aには、
図8に示すように、アーム取付部62aの一端に開口する支持アーム50の先端部が挿入可能な開口穴62eと、この開口穴62eを径方向に2分割するスリット62fと、スリット62fによって分割されたアーム取付部62aの一方から開口穴62eに貫通するねじ孔62gが設けられている。このように形成されるアーム取付部62aの開口穴62e内に支持アーム50の先端部を挿入し、ねじ孔62gにねじ結合する締結ねじ部材62hを支持アーム50の外周面に当接し押圧することで、支持アーム50の先端部にアーム取付部62aを嵌装固定することができる。
【0051】
上記締付け調整ねじ部材64は、第2の継手基部61の突出部66に設けられた貫通孔66bと、第2のアーム支持部62の回動部62cに設けられた貫通孔62bを貫通し、突出部66の貫通孔66bに設けられたねじ部66cにねじ結合して、第2の継手基部61と第2のアーム支持部62の締付け力を調整可能に形成されている。これにより、第2の継手基部61と第2のアーム支持部62とを締付け力が調整可能な状態で枢着される。この場合、締付け調整ねじ部材64は、ねじ部66cにねじ結合するねじ軸64aの一端の大径頭部64bに操作レバー64cを突設してなる。
【0052】
なお、上記説明では、第2の継手基部61の一対の突出部66に設けられた貫通孔66bにねじ部66cが設けられる場合について説明したが、ねじ部66cは一方の貫通孔66bに設けられていればよく、他方には締付け調整ねじ部材64のねじ軸64aを貫通する貫通孔であってもよい。
【0053】
上記書物保持体90は、書物100を載置する木製の載置板91と、載置板91の下端に沿設され、書物100の下端部を支持すべく表面側に突出する木製の支持片92を具備しており、載置板91の両側縁部には木製の額縁93が装着されている。
【0054】
上記書物保持体90は、載置板91の裏面中央部に固定される円板状の取付板94に突設された筒状取付部95に保持アーム70の先端部を嵌挿し、固定ねじ(図示せず)を筒状取付部95を貫通して保持アーム70の外周面に押圧することで保持アーム70に取り付けられている。
【0055】
この場合、取付板94には、同心円上に複数例えば8個の取付ねじ孔96が設けられている。また、載置板91には取付ねじ孔96と対向する複数例えば同心円上に等間隔の8個の透孔97が設けられており、載置板91の表面側から透孔97を貫通する固定ねじ98a〜98hと載置板91の表面との間にそれぞれ座金99aとゴムパッキン99bを介在して固定ねじ98a〜98hを取付板94の取付ねじ孔96にねじ結合(締結)して取付板94と載置板91とを固定している。なお、この場合、8個の透孔97のうちの2個を載置板91の中心部の垂直方向の2箇所に設けると共に、残りの6個のうちの2個を載置板91の中心部の水平方向の2箇所に設け、これら4個の透孔を貫通する固定ねじ98a〜98dの頭部を皿状にし、残りの4個の固定ねじ98e〜98hの頭部を大径円柱状に形成するのが好ましい。このように構成することにより、固定ねじ98e〜98hの大径円柱状頭部が載置板91の表面における中心垂直線に対して左右対称に位置するので、載置板91に載置される書物100(例えば厚みのある書籍)の背表紙を保持してずれを防止することができる。
【0056】
上記書物押さえ部80は、支持片92の中央部に一端が固定され、他端が載置板91の裏面に突設された係止突起84に着脱可能に係止する伸縮自在な中央保持紐81と、載置板91の両側の表裏面に着脱可能に掛け渡される伸縮自在な頁押さえ紐82と、頁押さえ紐82上を移動自在に緩装される球状押さえ部材83と、を具備する。
【0057】
この場合、中央保持紐81は、一端に固定用球体81aが連結され、支持片92に設けられた取付孔92aを貫通して載置板91の裏面側に伸びる他端に係止リング81bが取り付けられている。中央保持紐81の係止リング81bは、載置板91の裏面側において取付板94の上端側を固定する固定ねじ98aにねじ結合される段付き円筒状のフック金具により形成される係止突起84に係脱可能に係止されるようになっている。
【0058】
上記のように構成される書物押さえ部80を用いることにより、載置板91に載置される書物100(例えば厚みのある書籍)の背表紙部を固定ねじ98e〜98hの大径円柱状頭部で保持すると共に、開かれた状態の頁綴り部を中央保持紐81によって保持し、開かれた左右の頁を頁押さえ紐82上を移動自在に緩装される球状押さえ部材83によって保持することができる。
【0059】
上記のように構成される上記実施形態の書見用スタンドによれば、支柱20の上端部に第1の継手30を介して装着される支持アーム50を、水平方向(X,Y方向)及び鉛直方向(Z方向)に回動することができると共に、支持アーム50を軸心に対して回動及び軸方向に摺動(スライド)して進退移動することができる。この際、支持アーム50の先端側を上昇するときは小さな力で容易に支持アーム50の先端側を上昇方向に回動することができ、支持アーム50の先端側を下降するときは、摩擦抵抗を与えて支持アーム50の先端側を下降方向に回動することができる。
【0060】
また、上記X,Y及びZ方向に回動自在な支持アーム50の先端部に第2の継手60を介して支持アーム50の軸心に対する周方向及び直交方向に回動自在に装着される保持アーム70の先端部に、書物押さえ部を有する書物保持体を取り付けるので、書物保持体90側と支持アーム50の基端側のいずれの位置においても支持アーム50すなわち書物保持体90を、水平方向及び鉛直方向に容易に回動することができ、書物保持体90を任意の位置に調整することができる(
図13A,
図13B参照)。
【0061】
また、第2の継手60の第2の継手基部61を、保持アーム70の基端部に回動自在及び抜け止めリング40を介して抜け止め状態で嵌装することにより、書物保持体90が保持アーム70から抜け出るのを防止することができるので、特に重量のある書物100においても安定した状態で、読書することができる。
【0062】
また、書見用スタンドを使用しない場合は、支柱20に対して支持アーム50を略平行状態に起立させることにより、占有スペースを少なくすることができる。
【0063】
なお、上記実施形態では、基盤10上に着脱可能に載置される重り16が、支柱20の支持部材11を嵌挿する嵌挿孔16cを有するドーナツ円板状の2つの重り16a,16bである場合について説明したが、重りはこれに限定されるものではなく、別の形態にしてもよい。例えば、
図14に示すように、支柱20を回避して基盤10上に載置可能な重り16Aを、支柱20に関して偏倚した形状例えば扇形に形成し、支柱20の回動軸22部と重り16Aとを連結部材17にて連結し、重り16Aの偏倚部16dを回動軸22部の回動に伴って支持アーム50の基端側に追従させるように形成してもよい。
【0064】
このように構成することにより、重り16Aの偏倚部16dを支持アーム50の基端側に位置させることができるので、書物100を保持した書物保持体90側の重量に対する重量バランスを効率良く行うことができると共に、重り16Aの材料の削減を図ることができる。
【0065】
また、上記実施形態では、基盤10の底面に滑り材15を設ける場合について説明したが、
図15に示すように、滑り材15に代えて基盤10の底面に水平方向に回動自在なキャスタ18を装着してもよい。このように構成することにより、書見用スタンドの移動を容易にすることができる。
【0066】
なお、書物保持体90に保持される書物としては、一般的な書籍の他に厚みのある辞書、図鑑や専門書等は勿論、電子書籍も含まれる。また、これら書物の他に、ノートパソコンや液晶テレビ等の電子機器類を書物保持体90に載置保持することも可能である。
【0067】
また、この発明に係る書見用スタンドは、仰臥や横臥等の他の異なる姿勢においても書物保持体90の位置調整を容易に行うことができるので、例えば教壇での講義の資料等の書物を書物保持体90に保持して、講義に供することができる。