(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施例1〕
図1は実施例1の充電装置を備えた車両の充電時の様子を表す概略図である。車両3の前方であって、ボンネットフード31より更に前方側には、車両3のフロアに搭載された車載バッテリ6とケーブル43により電気的に接続された充電ポート4が設けられている。この充電ポート4は、タイヤホイルアーチ33の上端と略同じ高さであってサイドミラー34よりも低い位置に設けられ、非充電時は充電リッド32により閉塞されている。充電スタンド1には、電力供給用の充電用コネクタ2が設けられており、充電時には、充電リッド32を開き、充電用コネクタ2を充電ポート4に差し込んで接続することで、充電を実施する。尚、実施例1の車両では、急速充電器に接続する場合の急速充電ポートと、家庭用電気等で充電する場合の通常充電ポートとの両方を備えており、実施例1の場合は通常充電ポートを例に説明する。急速充電ポートを使用する場合、比較的短時間の接続であり、長時間放置するような場面は少ないからである。尚、急速充電ポート側にロック機構を備えてもよいことは言うまでもない。
【0010】
図2は実施例1の充電用コネクタと充電ポートとを接続した状態を表す概略断面図である。充電ポート4は、ボディ構成部材B1にブラケット74を介して車両側に固定され充電用コネクタ2が挿入される被挿入部材41と、被挿入部材41と車体内側において接続されたケーブル43と、このケーブル43の接続部を被覆するチューブ42とを有する。被挿入部材41の外周には凸部41a(被係合部)が形成され、被挿入部材41の内周には挿入部22と所定の位置関係においてのみ挿入可能とする挿入穴が形成されている。
【0011】
充電用コネクタ2は、一般に広く設置されるタイプであり、統一規格により形式やサイズが決定された規格品であり、操作者によって車両の充電ポート4に接続される。充電用コネクタ2は、操作者が把持するグリップ部21と、車両側の充電ポート4に対して挿入される挿入部22と、操作者により充電ポート4との間で係合・解除が可能な係合部材23とを有する。係合部材23は、充電用コネクタ2を充電ポート4に接続したときに、充電ポート4側に設けられた凸部41aと係合することで、充電ポート4から充電用コネクタ2を抜き出す方向への移動を規制する。
【0012】
係合部材23は、充電用コネクタ2のケース部材に対して固定された支持点23c(第1の回動軸)を中心として回動する部材である。係合部材23は、図示しない弾性体により解除ボタン23aが
図2中上方に位置するように(爪部23dが
図2中下方に位置するように)付勢されている。グリップ部21側の端部には、操作者がグリップ部21を把持したまま押圧可能な解除ボタン23aを有する。一方、挿入部22側の端部には、凸部41aと係合する爪部23dを有する。爪部23dは先端部分が挿入方向に対して滑らかな曲面を有する曲面部23d1と、抜き方向に対して鋭角な段部23d2と、を有するカギ爪形状である。一方、凸部41aの車体外側となる端面には斜面41a1が形成され、車体内側となる端面には抜き方向に対して略垂直な係合面41a2が形成され、これにより異方凸形状を形成している。
【0013】
充電用コネクタ2を充電ポート4に挿入するときには、特段の解除ボタン23a操作をすることなく、爪部23dの先端部分の曲面部23d1が凸部41aの斜面を乗越えられる。その後、段部23d2が係合面41a2を通過すると、図外の弾性体の作用により爪部23dが下方に押し下げられ、爪部23dと凸部41aとが係合する。尚、解除ボタン23aを押しながら充電用コネクタ2を挿入してもよい。これにより、操作者が解除ボタン23aを操作しない状態で充電用コネクタ2を抜き出す方向に引っ張ったとしても、段部23d2と係合面41a2とが係合することで抜き出す方向への移動を規制する。この係合を解除する際には、解除ボタン23aを押し込むことで係合部材23を支持点23c中心に回動させ、爪部23dを係合面41a2よりも上方に移動させることで係合が解除される。
【0014】
図3は実施例1のロック機構の構成を表す側面図、
図4は実施例1のロック機構の構成を表す底面図である。
充電ポート4の上方には、係合部材23の回動を制限するロック機構7が設けられている。ロック機構7は、爪部23dが凸部41aから離間する方向に位置することで離間を制限する状態を達成し、離間する方向に位置しないことで離間を制限しない状態を達成するスイングアーム71と、このスイングアーム71を駆動するロックアクチュエータ73と、ロックアクチュエータ73及び充電ポート4の被挿入部材41を固定支持するブラケット74とを有する。
【0015】
図3の側面図及び
図4の底面図に示すように、ブラケット74は、ロックアクチュエータ73をボルト74eにより固定支持する上面部74dと、上面部74dからスイングアーム71の可動範囲を覆うように延設された支持延設部74bと、上面部74dに対して略直角に折り曲げられ被挿入部材41等がボルトにより取り付けられる側面部74cと、上面部74dに対向する側から取り付けられ、ロックアクチュエータ73を上面部74dと挟み込むカバー部材74gを有する。上面部74dとロックアクチュエータ73とカバー部材74gとは、複数のボルト74e及びナット74fにより一体に組み付けられる。上面部74dには、後述する固定ネジ72を操作可能なフェール時強制作動用開口74aが形成され(
図2,7等参照)、操作者がボンネットフードを開けてドライバ等で回動可能とされている。尚、理由については後述する。
【0016】
図5は実施例1のロック機構の機械構成を表す内部構造図である。ロックアクチュエータ73は、外部電源及びコントローラと接続するコネクタ部73aと、指令信号に基づいて回転駆動するモータ731と、モータ731のロータと一体に回転するウォーム732と、ウォーム732と噛合し回転するウォームホイール734と、ウォームホイール734より小径であって同一回転軸を有しウォームホイール734と一体回転する駆動ギヤ735と、駆動ギヤ735と噛合し外周に歯面を有する従動部材735と、を有する。従動部材735は、略扇形であって外周に歯面が形成された噛合部735aと、スイングアーム71と一体となるように組みつけられる回動軸部735bとを有する。スイングアーム71は回動軸部735bを回動軸として作動する部材であり、言い換えると、充電用コネクタ2の抜き差し方向と異なる方向であって、かつ、係合部材23の回動軸(第1の回動軸)方向と異なる回動軸(第2の回動軸)を有する。実施例1のロック機構は、スイングアーム71が所定角度範囲で作動すればよいため、部分的に歯面を有する従動部材735を用いることで、小さなモータ731であってもトルクを確保した作動を実現できる。尚、このロックアクチュエータ73は、一般の車両のオートドアロック機構等にも採用されているものであり、これらの部品をそのまま流用することで製造コストの低減を図ることもできる。
【0017】
図6は実施例1のロック機構のスイングアームの構成を表す底面図である。スイングアーム71は、ロックアクチュエータ73の回動軸部735bに相対回転しないように取り付けられる取り付け部710と、取り付け部710の外周を覆う円筒状の円筒壁713とを有する。取り付け部710には円周上に三箇所の凹部712が形成され、この凹部712に回動軸部735b側に形成された凸部が嵌り込むことで回転方向への相対移動を規制する。取り付け部710の中心には貫通孔711が形成され、スイングアーム71と回動軸部735とを一体に固定する固定ネジ72が貫通する。この貫通孔711は、スイングアーム71の上部とロックアクチュエータ73側とを連通状態とするため、仮に凍結等によってスイングアーム71の作動が困難となり、お湯をかけて凍結状態を改善する場合には、お湯が流通する流通路としても機能することで、素早く凍結状態を改善するものである。固定ネジ72は、回動軸部735側に設けられた雌ネジ部によりネジ止めされ、これにより回動軸部735とスイングアーム71とが一体に作動する。
【0018】
ここで、固定ネジ72の締め付け方向は、スイングアーム71がロック解除方向に回動する方向と同じに設定している。すなわち、ロックアクチュエータ73にフェール等が発生し、全く解除動作が出来なくなった場合であっても、この固定ネジ72を締めこむことで、スイングアーム71を解除方向に回動させることを可能とするためである。
【0019】
図7は実施例1の充電用コネクタと充電ポートとを接続した状態における概略斜視図である。
図7及び
図2を参照して詳述すると、この固定ネジ72は、フェール時強制作動用開口74a内であって、ボンネットフード内に露出するように設けられている。ボンネットフードを開けるには、通常、車室内のボンネットフード解除レバーを操作する。この解除レバー操作ができれば、簡単にアクセス可能な位置とされており、言い換えると、充電リッド32を開けたとしてもアクセスできない位置とされている。よって、車室内にアクセスできない他者が勝手に操作することはできないように工夫されている。また、車載工具等に装備されているプラスドライバ等で簡単に操作可能とされているため、操作者により解除可能である。
【0020】
円筒壁713から
図6中の左側には板状のアーム部材71dが延在されている。このアーム部材71dは先端において扇状に拡大し、爪部23dと上面視において重なるように設計されている(係合部材の離間方向に位置したときに相当)。アーム部材71dには、軽量化を図るための肉抜き部71d1と、必要な強度を確保するためのリブ714が形成されている。
【0021】
スイングアーム71は、樹脂により成形されており、
図6に示すように上面視において上下非対称な形状に形成されている。以下、スイングアーム71の回動中心(スイングアーム71の厚さ方向の中心と回動軸とが一致する点)と、ロック状態において係合部材23の回動中心(係合部材23の幅方向の中心と回動軸と一致する点)とを結ぶ線である軸線01を上面視において基準線とし、上下で対称な対称仮想線を点線で描き、この対称仮想線との関係に基づいて説明する。軸線01よりも上側部分は、言い換えると、ロック機構による制限状態から非制限状態に移行するときにスイングアーム71が脱出していく領域である。よって、軸線01より上の領域を脱出領域、下の領域を通過領域と定義する。
【0022】
スイングアーム71が脱出領域と通過領域において対称形状であると、爪部23dよりも脱出領域側に位置する領域が多く存在する。この場合、以下に示す問題があった。すなわち、充電ポート4の位置は比較的車両の低い位置に設けられていることから、他車両が近くを走行するとシャーベット状の雪や泥水等を巻き上げ、充電ポート4に飛散してくる場合が想定される。また、極低温環境下で充電を行なう場合、これら飛散してきたシャーベット状の雪や泥水が凍結し、スイングアーム71のアーム部材71dを屋根としてツララ状の障害物を形成することが想定される。この場合、脱出領域においてアーム部材71dの領域が広いと、ツララ状の障害物等を形成しやすくなり、ロック解除指令を出力したとしても、スイングアーム71の障害物と爪部23dとが引っかかり、ロックを解除できないおそれがある。
【0023】
そこで、対称仮想線から爪部23dの辺りまでアーム部材71dを大きく削り取ることとした。言い換えると、アーム部材71dの脱出領域に存在する面積71d3(爪部23dの離間方向に位置したときのスイングアーム71の回動中心と爪部23dの回動中心とを結ぶ線を基準として、制限する状態への回動方向側の上面視面積)が、アーム部材71dの通過領域に存在する面積71d2(爪部23dの離間方向に位置したときの回動中心と爪部23dの回動中心とを結ぶ線を基準として、制限しない状態への回動方向側の上面視面積)よりも小さくすることとした。よって、脱出領域における屋根部分を小さくすることができ、ツララ状の障害物等が形成しにくくなるため、ロック解除時にスイングアーム71をスムーズに作動させることができる。特に、上面視において爪部23dと重なる領域ぎりぎりまで削り取ることで、爪部23dの離間方向への動きを確実に制限しつつ、より障害物等が形成される可能性を低くすることができる。
【0024】
次に、スイングアーム71の最外径部71fの上面視形状にあっては、軸線01を基準線として対称な形状とした。すなわち、ロックアクチュエータ73の作動によりスイングアーム71が回動するとき、フェール等によって十分に回動しない場合を想定すると、やはり最外径部71fの長さが確保されるほうが、より確実に爪部23dの離間方向にスイングアーム71を位置させることができるからである。
【0025】
図8は実施例1の充電用コネクタと充電ポートとを接続した状態における斜視図である。充電ポート4に充電用コネクタ2を挿入し、ロック機構7を作動させてスイングアーム71が爪部23dの離間方向に位置することで、解除ボタン23aを押しても爪部23dが離間方向に移動できない。これにより、凸部41aと爪部23dとの係合を外すことができず、充電用コネクタ2を抜き出すことを禁止している。このとき、車両の充電ポート4には、ロック機構7等へのゴミ等の侵入を保護するためのカバー部材9が設けられている。カバー部材9は、ロック機構7を充電用コネクタ2の抜き差し方向側から覆うと共に、爪部23dを挿入可能であってスイングアーム71の一部が露出する開口部91を有する。
【0026】
操作者が充電ポート4に充電用コネクタ2を挿入し、ロック機構7を作動させることで、その場を離れ、充電を開始したとする。このとき、
図8のように、スイングアーム71の最外径部71fは露出した状態となる。仮に、カバー部材9と最外径部71fとの隙間が大きいと、その隙間に指等を入れてスイングアーム71を強制的にこじ開けることが可能となる。そこで、スイングアーム71とカバー部材9との間の隙間は接触しない範囲で狭く設定する。
【0027】
更に、ロック機構7により充電用コネクタ2の取り外しが制限されている状態では、開口部91の全てがスイングアーム71の最外径部71fにより閉塞された状態とする。言い換えると、最外径部71fの回動方向長さは、開口部91の開口幅(回動方向の長さ)よりも長く設定した。これは、上述のように、開口部91の端部と、スイングアーム71の端部との間に隙間があった場合、そこに指等を入れてスイングアーム71が強制的にこじ開けられる可能性を排除するためである。
【0028】
更に、
図6に戻ってカバー部材9とスイングアーム71との関係について詳述する。
図6に示すように、カバー部材9の内周面とスイングアーム71が回動したときの最外径部71fの軌跡との間隔は、開口部91から離れるに連れて大きくなるように設定されている。すなわち、爪部23dにゴミ等(ガムや、泥、埃の塊等)が付着している状態で充電ポート4に充電用コネクタ2を接続した場合、スイングアーム71が回動することで、それらゴミを擦り取りながら(スウィープ)作動することになる。このとき、仮にカバー部材9の内周面と最外径部71fの軌跡との間隔が徐々に狭くなっていくように設定すると、擦り取られたゴミがこの間隔に嵌り込んでしまい、大きな抵抗となってスイングアーム71の作動を阻害するおそれがある。そこで、カバー部材9の内周面と最外径部71fの軌跡との間隔が、開口部91から離れるに連れて大きくなるように設定することで、擦り取られたゴミが適宜下方に落下し、ゴミ詰まり等を回避している。
【0029】
図9は実施例1の係合部材とスイングアームとの位置関係を表す概略断面図である。スイングアーム71の上面と支持延設部74bとの間には所定の隙間a1を有し、スイングアーム71の下面と爪部23dとの間にも所定の隙間b1を有する。よって、スイングアーム71が回動するにあたり、支持延設部74bや爪部23dと接触することがないため、スムーズにスイングアーム71を作動させることができる。ここで、充電用コネクタ2を抜き差しする方向から見て、段部23d2と係合面41a2の重なる領域の高さをc1とすると、c1>(a1+b1)の関係が成立するように構成されている。よって、
図10に示すように爪部23dを無理に押し上げて隙間a1,b1が無くなったとしても、段部23d2と係合面41a2との係合が維持される。
【0030】
図10は実施例1の係合部材を無理に離間方向に作動させたときの係合部材とスイングアームとの位置関係を表す概略断面図である。ロック機構7が作動し、係合部材23の離間方向への移動が制限されている状態で、仮に解除ボタン23aを押し込むと、爪部23dの上面がスイングアーム71の下面に当接してスイングアーム71を押し上げる。このとき、スイングアーム71自体は樹脂製であり、ロックアクチュエータ73の回動軸部735bもさほど強固に設計されているものではないため、スイングアーム71は変形もしくは回動軸の倒れによって容易に上方に押し上げられてしまう。しかしながら、支持延設部74bが設けられているため、この支持延設部74bとの当接によりそれ以上の変形は抑制される。また、スイングアーム71の厚み方向に力が加わるだけであるから、樹脂製のスイングアーム71であっても圧縮力に対して十分な強度を確保できる。すなわち、スイングアーム71の回動軸は、充電用コネクタ2の抜き差し方向と異なる方向であって、かつ、係合部材23の回動軸(第1の回動軸)方向と異なる回動軸(第2の回動軸)を有する。更に言い換えると、スイングアーム71の回動軸方向と係合部材23の回動軸方向とが平行関係になく、爪部23dの離間方向にスイングアーム71を介在させて制限する構成であり、かつ、支持延設部74bを備えた。よって、無理な力が爪部23dから入力されたとしても、スイングアーム71の回動方向には作用しないため、スイングアーム71を回動方向に対して頑強にする必要もなく、また、回動軸付近の構造を頑強にする必要もないまま、十分な制限状態の維持を達成することができる。
【0031】
以上説明したように、実施例1にあっては下記に列挙する作用効果を奏する。
(1)車両に搭載されたバッテリ6を充電するための車両側充電ポート4と接続されたときに、車両側に設けられた凸部41a(被係合部)と係合することで充電ポート4から抜き出す方向への移動を規制し、解除操作によって凸部41aと離間することで係合を解く係合部材23を有する充電用コネクタ2により充電する充電装置において、車両側に設けられ、係合部材23と凸部41aとの離間を制限する状態と、制限しない状態とに切り替え可能なロック機構7(制限手段)を備えた。
よって、充電中に不意に充電用コネクタ2が解除されることを回避することができる。また、車両側にロック機構7を備えたことで、既存の充電スタンド等でも活用できる。
【0032】
(2)ロック機構7のスイングアーム71は、充電用コネクタ2の抜き差し方向と異なる方向であって、かつ、係合部材23の回動軸(第1の回動軸)方向と異なる回動軸(第2の回動軸)を有する回動部材である。
よって、係合部材23を無理やり離間させようとしたとしても、その力によってスイングアーム71を回動することがなく、充電用コネクタ2の解除を回避することができる。
【0033】
(3)ロック機構7により係合部材23と凸部41a(被係合部)との離間を規制する状態において、スイングアーム71と係合部材23とは非接触状態である。
よって、スイングアーム71をスムーズに作動させることができる。
【0034】
〔実施例2〕
次に実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。
図11は実施例2の係合部材とスイングアームとの位置関係を表す概略断面図である。実施例1では、スイングアーム71の回動軸は、係合部材23の抜き差し方向の直交面上に設けていた。これに対し、実施例2では、抜き差し方向の直交面と交差する方向、すなわち直行方向に対して所定角度αを有する。所定角度αは、爪部23d側に倒れる方向に設定されている。これにより、爪部23dが無理やり押し上げられたとしても、その力をスイングアーム71の回動軸の軸部で受けることができ、より安定して制限することができる。尚、実施例2においても支持延設部74bを形成した例を示したが、強度が確保されている場合には、特に支持延設部74bを設けなくても構わない。
【0035】
以上説明したように、実施例2にあっては下記の作用効果を得ることができる。
(4)スイングアーム71の回動軸(第2の回動軸)は、充電用コネクタ2の抜き差し方向の直交面と交差する方向に設定されている。よって、係合部材23からスイングアーム71に力が入力されたとしても、スイングアーム71の回動軸で受けることができ、安定して係合部材23の離間方向への作動を制限することができる。尚、スイングアーム71の回動軸に十分な強度が確保されていない場合には、所定角度αとして、爪部23d側とは反対側に倒れる方向に設定してもよい。この場合、係合部材23からスイングアーム71に力が入力されたとしても、力を適宜逃がしながらスイングアーム71を撓ませることができ、耐久性の向上を図ることができる。
【0036】
〔実施例3〕
次に実施例3について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。
図12は実施例3のロック機構のスイングアームの構成を表す底面図である。実施例1では、軸線01において非対称となる形状としたのに対し、実施例3では対称な形状とした点が異なる。また、スイングアーム71の回動により制限状態に移行する際、爪部23dの上面視側端部形状とスイングアーム71の上面視側端部71gの形状とが一致する角度に形成している。よって、制限状態に移行する際、上面視においてスイングアーム71と爪部23dとが重なる面積が大きな状態を素早く達成できる。これにより、例えばスイングアーム71を作動中にロックアクチュエータ73等がフェール状態となり、十分に回動できない場合であっても、より確実に制限状態を維持することができる。
【0037】
〔実施例4〕
次に実施例4について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。
図13は実施例4のロック機構の構成を表す上面図、
図14は実施例4のロック機構の歯車軸間断面図である。実施例1のロック機構7は、スイングアーム71を回動させたのに対し、実施例4のロック機構8は、ロータリプレート81を回動させる点が異なる。ロック機構8はロックアクチュエータ83を有し、このロックアクチュエータ83のハウジング84内に収装された複数の歯車組と、ロータリプレート81から構成されている。ハウジング84は、上面が開放された下側ハウジング部84bと、この下側ハウジング部84bを上面から覆う上側ハウジング部84aと、ロータリプレート81の下方に形成され、充電ポート4等が取り付けられるブラケット部84dと、モータ831を収装するモータ収装部84cとを有する。また、ブラケット部84dには、車体側に固定支持するための支持部材85dと、モータ831及び図外のセンサ等とハーネスを接続するためのハーネス用ポート85a,85b,85cが設けられている。
【0038】
モータ831に接続されたピニオン832は、第1回転軸834と一体に回転する第1歯車833と常時噛合する。第1回転軸834の外周には第1回転軸ギヤ834aが形成され、第2回転軸835と一体に回転する第2歯車835aと常時噛合する。第2歯車835aは、第3回転軸836と一体に回転する第3歯車836aと常時噛合する。第1回転軸834,第2回転軸835及び第3回転軸836はそれぞれ上側ハウジング部84a及び下側ハウジング部84bに対しベアリング834b,835b,836bにより回転可能に軸支されている。これにより、軸倒れ方向への力に対して十分な強度を確保している。モータ831に駆動指令が出力されると、第1回転軸834から第2回転軸835そして第3回転軸836に回転駆動力が伝達され、ロータリプレート81を回動する。
【0039】
第3回転軸836は、軸両端の軸心部にねじ穴836cが形成され、上側ハウジング部84a側から緊急用ネジ82が取り付けられると共に、下側ハウジング部84b側からはロータリプレート81がネジ82aによりネジ止め固定されている。尚、緊急用ネジ82は、プラスドライバで回すこともできるし、その外周に形成された六角ボルト部をレンチで回すこともできる。
【0040】
ここで、緊急用ネジ82の締め付け方向は、ロータリプレート81がロック解除方向に回動する方向と同じに設定している。すなわち、ロックアクチュエータ83にフェール等が発生し、全く解除動作が出来なくなった場合であっても、この緊急用ネジ82を締めこむことで、ロータリプレート81を解除方向に回動させることを可能とするためである。この緊急用ネジ82は、ボンネットフード内に露出するように設けられている。ボンネットフードを開けるには、通常、車室内のボンネットフード解除レバーを操作する。この解除レバー操作ができれば、簡単にアクセス可能な位置とされており、言い換えると、充電リッド32を開けたとしてもアクセスできない位置とされている。よって、車室内にアクセスできない他者が勝手に操作することはできないように工夫されている。また、車載工具等に装備されているプラスドライバ等で簡単に操作可能とされているため、操作者により解除可能である。
【0041】
図15は実施例4のロータリプレートの構成を表す上面図である。ロータリプレート81は、中心に第3回転軸836が貫通する二面幅貫通孔811が形成された略円盤形状の部材であり、円周上に部分的に切り欠かれた切り欠き部812と、切り欠かれていないプレート部813とを有する。尚、
図15に示すロータリプレート81と爪部23dとの位置関係は、ロック機構8が非制限状態で充電用コネクタ2を充電ポート4に差し込んだときの位置関係を表す。以下、この爪部23dの中央位置を0°とし、時計回り方向を正方向としてそれぞれの位置関係を説明する。
【0042】
切り欠き部812は、円周方向に−65°から+30°にわたる範囲、すなわち95°の大きさに形成されている。爪部23dの先端は、円周方向に最大で40°程度の大きさを占有するため、この切り欠き部812は、爪部23dの回動方向長さの2倍以上といえる。これにより、ロックアクチュエータ83に解除指令を出力した際、フェール等により戻り位置が戻り過ぎた場合であっても、解除状態を維持できる。
【0043】
また、切り欠き部812の円周方向長さを爪部23dの円周方向長さよりも十分長くとったのは以下の理由による。すなわち、仮にゴミ等が切り欠き部812に付着した場合、粘着性のゴミの場合だと、切り欠き部812をゴミにより塞いでしまう場合がある。このとき、切り欠き部812の円周方向長さが短いと、切り欠き部812の両端部に渡ってより強固にゴミが付着してしまう。これに対し、切り欠き部812の円周方向長さを長くすることで、両端部に渡ってゴミが付着してしまう状態を回避し、また、一方の端部にのみゴミが付着しても、ゴミの他方側は開放端となっていることからゴミが下方へ落ちやすく、適度にゴミを排除することができる。
【0044】
プレート部813は、+30°から+295°にわたる範囲、すなわち265°の大きさに形成されている。プレート部813の径方向端は、全周に亘って滑らかな端部形状とされている。プレート部813の円周方向開始端であって切り欠き部812の円周方向端部でもある切り欠き端部813aは、半径方向に対して傾斜して形成されている。
図15の部分拡大図に示すように、この切り欠き端部813aは、切り欠き部812の領域が狭くなる側に傾斜している。更に具体的には、ロータリプレート81が回動し、爪部23dの離間方向側に位置し始めるときに、爪部23dの回動方向側端部と略平行となるように傾斜している。これにより、より素早く爪部23dと多くの範囲が上面視において重なることができ、早期に確実なロック状態を実現できる。
【0045】
図16は
図15のロータリプレートの円周方向に描かれた断面線に沿った断面形状を直線状に伸ばした断面図である。この断面図に示すように、30°〜165°の範囲で示す第1ロータリプレート面813bには、回動方向に向かって爪部23dに近づくテーパー面が形成されている。これにより、爪部23dの厚みにばらつきがあり、若干厚めのタイプであったとしても、爪部23dの離間方向にロータリプレート81を介在させることができる。また、仮に爪部23dに噛みこんだとしても、ロータリプレート81は樹脂製とすれば、摩擦抵抗が小さく変形しやすいことから比較的容易に噛み込みを解除できる。
【0046】
第1ロータリプレート面813bに続く第2ロータリプレート面814bは水平面として形成されている。すなわち、回動方向に沿って継続的にテーパー面を形成していると、ロータリプレート81全体の厚みが厚くなってしまい、車両搭載性が悪化する。また、仮にモータ831にフェール等が発生し、過回転した場合、過度に爪部23dに対して噛み込んでしまい、解除動作を妨げるおそれもある。そこで、水平面を形成することでコンパクト化及びフェール時の過度の噛み込みを回避している。この第2ロータリプレート面814bは、130°の範囲に亘って形成されており、爪部23の占有する領域よりも大きい。よって、仮にモータ831にフェール等が発生し、過回転した場合であっても、爪部23dを制限する状態を維持することができる。
【0047】
図17は実施例4の係合部材とロータリプレートとの位置関係を表す概略断面図である。ロータリプレート81の下面と爪部23dとの間には所定の隙間d1を有する。この隙間d1は、ロータリプレート81の回動停止位置によって若干異なるが、第2ロータリプレート面814bとの関係においても所定の隙間を有する値に設定されている。よって、ロータリプレート81が回動するにあたり、爪部23dと接触することがないため、スムーズにロータリプレート81を作動させることができる。ここで、充電用コネクタ2を抜き差しする方向から見て、段部23d2と係合面41a2の重なる領域の高さをc1とすると、c1>d1の関係が成立するように構成されている。よって、爪部23dを無理に押し上げて隙間d1が無くなったとしても、段部23d2と係合面41a2との係合が維持される。
【0048】
また、ロック機構8が作動し、係合部材23の離間方向への移動が制限されている状態で、仮に解除ボタン23aを押し込むと、爪部23dの上面がロータリプレート81の下面に当接してロータリプレート81を押し上げる。このとき、ロックアクチュエータ83の第3回転軸836はベアリング836bにより強固に設計されているため、爪部23dを押さえ込むことができる。また、仮にロータリプレート81が変形したとしても、下側ハウジング部84bが設けられているため、この下側ハウジング部84bとの当接によりそれ以上の変形は抑制される。尚、下側ハウジング部84bにロータリプレート81を上面視において完全に覆うような延設部を形成してもよい。この場合、ロータリプレート81の変形や第3回転軸836の倒れ等が発生した場合でも、ロータリプレート81の変形を十分に抑制できる。
【0049】
この場合、ロータリプレート81の厚み方向に力が加わるだけであるから、樹脂製のロータリプレート81であっても圧縮力に対して十分な強度を確保できる。すなわち、ロータリプレート81の回動軸は、充電用コネクタ2の抜き差し方向と異なる方向であって、かつ、係合部材23の回動軸(第1の回動軸)方向と異なる回動軸(第2の回動軸)を有する。更に言い換えると、ロータリプレート81の回動軸方向と係合部材23の回動軸方向とが平行関係になく、爪部23dの離間方向にロータリプレート81を介在させて制限する構成であり、かつ、下側ハウジング部84bを備えた。よって、無理な力が爪部23dから入力されたとしても、ロータリプレート81の回動方向には作用しないため、ロータリプレート81を回動方向に対して頑強にする必要もなく、また、回動軸付近の構造を頑強にする必要もないまま、十分な制限状態の維持を達成することができる。
【0050】
以上説明したように、実施例4にあっては下記に列挙する作用効果を奏する。
(5)車両に搭載されたバッテリ6を充電するための車両側充電ポート4と接続されたときに、車両側に設けられた凸部41a(被係合部)と係合することで充電ポート4から抜き出す方向への移動を規制し、解除操作によって凸部41aと離間することで係合を解く係合部材23を有する充電用コネクタ2により充電する充電装置において、車両側に設けられ、係合部材23と凸部41aとの離間を制限する状態と、制限しない状態とに切り替え可能なロック機構8(制限手段)を備えた。
よって、充電中に不意に充電用コネクタ2が解除されることを回避することができる。また、車両側にロック機構8を備えたことで、既存の充電スタンド等でも活用できる。
【0051】
(6)ロック機構8のロータリプレート81は、充電用コネクタ2の抜き差し方向と異なる方向であって、かつ、係合部材23の回動軸(第1の回動軸)方向と異なる回動軸(第2の回動軸)を有する回動部材である。
よって、係合部材23を無理やり離間させようとしたとしても、その力によってロータリプレート81を回動することがなく、充電用コネクタ2の解除を回避することができる。
【0052】
(7)ロック機構8により係合部材23と被係合部との離間を規制する状態において、ロータリプレート81と係合部材23とは非接触状態である。
よって、ロータリプレート81をスムーズに作動させることができる。
【0053】
以上、各実施例に基づいて本願発明を説明してきたが、他の構成であってもよい。実施例1では充電ポートとして車両前方に備えられた例を示したが、車両後方に備えた場合や車両側面に備えた場合でもよい。また、実施例では電気自動車について説明したが、プラグインハイブリッド車両等でも構わない。