(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に発明を実施するための形態に係るプリンタの給紙機構
と、その給紙機構を備えたプリンタ装置に関して説明する。なお、以下に記載する、本実施の形態に係るプリンタの給紙機構を用いたプリンタ装置は多色印刷が可能なプリンタで、多色印刷プリンタ装置では印刷用紙に複数回印刷するので給紙とともに排紙も可能な構造となっているが、排紙機構は本発明の技術範囲ではないので説明は省略する。
【0016】
はじめに、
図1および
図2を参照して、本実施形態におけるプリンタの給紙機構を用いたプリンタ装置の構造を説明する。
図1は本実施形態におけるプリンタの給紙機構を用いたプリンタ装置の外観斜視図である。
図2は本実施形態の給紙機構が使用されたプリンタメカ100の外観図で、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【0017】
図1に示すように、プリンタ装置は印刷用紙に画像を印刷するプリンタメカ100と、消耗品である印刷用紙が複数枚積層して収容された用紙トレイ120、および、消耗品である長尺のインクリボンを巻回して収容したリボンカセット110よりなる。用紙トレイ120はプリンタメカ100の正面側に用紙カセット挿入方向D1に挿入する事によりプリンタメカ100に装着され、リボンカセット110はプリンタメカ100の右側面側にリボンカセット挿入方向D2に挿入する事によりプリンタメカ100に装着される。
用紙トレイ120およびリボンカセット110は収容する消耗品が無くなると新しい物に交換される。
【0018】
なお、以降の説明では、
図1に示すように、プリンタメカ100に用紙トレイ120を装着する方向をBD方向、プリンタメカ100に用紙トレイ120を装着する方向と反対の方向をFD方向、プリンタメカにリボンカセット110を装着する方向をLD方向、プリンタメカにリボンカセット110を装着する方向と反対の方向をRD方向、と記述し、用紙トレイ120の上面側をUP方向、用紙トレイ120の下面側をDN方向と記述する。
【0019】
本実施形態の給紙機構101が使用されたプリンタメカ100は、
図2に示すように、用紙トレイ120(
図1参照)が取り付けられる正面側に、給紙機構101を構成する用紙ガイド1,セパレータ3,給紙ローラ2が設けられ、給紙機構101の他に、図示しない印刷用紙押圧機構,印刷用紙送り機構、および印刷部、その他センサー等が設けられている。
【0020】
プリンタメカ100の左側面側には送りカム付きギア機構103を介してプリンタメカ100の印刷用紙押圧機構,印刷用紙送り機構、および印刷部等を動作させる駆動モータ23、および送りギア機構102を介して印刷用紙送り機構および給紙ローラ2を動作させる送りモータ22が設けられている。
【0021】
次に、
図3を参照して、本実施形態におけるプリンタの給紙機構101の構成を説明する。
図3はプリンタメカ100を前方右側から見たときの、給紙機構101の構成部品を示す外観斜視図である。なお、
図3では、説明対象の部品のみを記載しているが、給紙機構101の構造を明示するため、右側保持部材17および左側保持部材18を破線にて記載している。
【0022】
給紙機構101は、
図3に示すように、給紙ローラ2,用紙ガイド1,セパレータ3を有する。
【0023】
給紙ローラ2は棒状のローラ軸2aと、ゴム等の摩擦抵抗の大きい材料で形成されたリング形状の複数のローラリング2bよりなり、ローラ軸2aの長手方向の中間位置に複数個のローラリング2bが固定されている。
【0024】
セパレータ3は成形材料等で略箱状に形成され、最上面には頂部3bを有しており、頂部3bにつながる前方側(FD方向)の壁部は、わずかに傾斜した傾斜面3aとなっている。なお、セパレータ3はプリンタメカ100のフレーム(図示しない)に固定される。
【0025】
用紙ガイド1は成形材等により、平面視が略長方形である板状に形成され、長手方向の一方の辺から延出する複数の係合腕部1bを有し、係合腕部1bの先端近傍にはローラ軸2aに回動自在に係合する窪み部1eを有する。また、用紙ガイド1の本体部のうち、用紙ガイド1をローラ軸2aに係合させたときにセパレータと対向する部分は、開放された開放部1cとなっている。さらに、長方形状の両短辺にはそれぞれ、短辺に略平行な幅の狭い弾性腕部1dが係合腕部1bの突出方向とは反対方向に突出している。なお、用紙ガイド1の本体部の下面側は印刷用紙を印刷部に給紙するときのガイドとなる搬送案内面1aとなっている。
【0026】
給紙ローラ2のローラ軸2aはフレーム(図示しない)に固定された右側保持部材17および左側保持部材18に回転自在に保持され、送りモータ22(
図2参照)に連結された給紙ギア機構(
図2参照)により回転させられる。
【0027】
用紙ガイド1は、係合腕部1bの窪み部1eが給紙ローラ2のローラ軸2aと回動自在に係合することにより、ローラ軸2aを回転中心として回転可能となる。用紙ガイド1がローラ軸2aを中心として搬送案内面1aが下がる方向(DN方向)に回動させられると、搬送案内面1aが左側保持部材の用紙ガイド受け面18aと当接して用紙ガイド1は停止する。また、用紙ガイド1がローラ軸2aを中心として搬送案内面1aが上がる方向(UP方向)に回動させられると、用紙ガイド1の弾性腕部1dの上面が左側保持部材18の左側リミット壁18bの下面部および右側保持部材17の右側リミット壁17bの下面部と当接して用紙ガイド1は停止するが、搬送案内面1aが上がる方向(UP方向)に用紙ガイド1がさらに回動させられると弾性腕部1dが弾性変形し、用紙ガイド1は弾性腕部1dにより付勢されながら、搬送案内面1aが上がる方向(UP方向)にさらに回動する。
【0028】
次に、
図4を参照して、本実施形態におけるプリンタの印刷用紙押圧機構105,印刷用紙送り機構106の構成を説明する。
図4(a)はプリンタメカ100を前方左側から見たときの、印刷用紙押圧機構105の構成部品の外観斜視図である。また、
図4(b)はプリンタメカ100を前方左側から見たときの、印刷用紙送り機構106の構成部品の外観斜視図である。なお、
図4(a)では、印刷用紙押圧機構105を駆動するカム付きギア機構103も記載している。
【0029】
印刷用紙押圧機構105は、印刷用紙をプリンタメカ100(
図1参照)に給紙するときに、用紙トレイ120(
図1参照)内に積層された印刷用紙を給紙ローラ2(
図3参照)に押しつける機構である。
【0030】
印刷用紙押圧機構105は、
図4(a)に示すように、押し上げ板14,押し上げ腕15およびねじりバネ16により構成され、駆動モータ23により駆動されるカム付きギア機構103により動作させられる。
【0031】
押し上げ板14は金属材等で形成され、略長方形の本体部の2つの短辺には略直角に折り曲げられた回動腕部14aがそれぞれ設けられ、2つの回動腕部14aはそれぞれ略半円状の窪み部14bを有し、一方の回動腕部14aはさらに延出し、カム付きギア機構103のカム溝103aと係合する突出部14cが設けられる。
【0032】
押し上げ板14の略中央には、押し上げ腕15が回動可能に取り付けられ、ねじりバネ16が押し上げ腕15を上方(UP方向)に付勢する。このとき、押し上げ腕15の一部が押し上げ板14の本体部と当接することにより、押し上げ腕15は、ねじりバネ16の付勢力を受けながら、押し上げ板14の本体部と略平行となる姿勢で停止する。
【0033】
押し上げ腕15は、2つの腕部の窪み部14bによりフレーム(図示しない)に回動可能に取り付けられ、突出部14cがカム付きギア機構103のカム溝103aと係合する。
【0034】
動作する前の印刷用紙押圧機構105は、押し上げ板14の本体部および押し上げ腕15が略水平である初期位置にあるが、駆動モータ23がカム付きギア機構103を回転させると、カム付きギア機構103のカム溝103aにより、押し上げ板14は、押し上げ腕15が上方(UP方向)に移動する方向に回動し傾斜する。
駆動モータ23がさらに回転すると、押し上げ板14は最大角度まで回動し傾斜して停止するが、さらに駆動モータ23が回転すると、押し上げ板14はカム溝103aにより押し上げ腕15が下方(DN方向)に移動する方向に回動させられ、やがて初期位置に戻される。
【0035】
印刷用紙送り機構106は、印刷用紙を印刷部内で移動させる機構で、
図4(b)に示すように、送りモータ22と送りギア機構102、および、送りローラ11で構成され、印刷用紙を移動させる送りローラ11が送りギア機構102を介して送りモータ22に連結されている。送りローラ11は送りモータ22により、印刷用紙を印刷部に送り込む方向(BD方向)と、印刷用紙を印刷部から引き出す方向(FD方向)の両方向に回転可能である。
【0036】
なお、送りギア機構102は給紙機構101の給紙ローラ2とも連結されている。給紙ローラ2は、送りローラ11の回転方向によらず、常に印刷用紙をプリンタメカ100(
図1参照)内に送り込む方向(BD方向)に回転するとともに、印刷用紙が給紙ローラ2の送り速度より早く移動すると、給紙ローラ2と送りモータ22との連結が開放される構成となっている。
【0037】
次に、
図5および
図6を参照して、本実施形態の給紙機構101が使用されたプリンタメカ100の構成と、用紙ガイド1の動作を説明する。
図5は本実施形態の給紙機構101が使用されたプリンタメカ100の構成を示す、
図2のA−A断面図である。また、
図6は用紙ガイド1の動作を説明する要部断面図で、(a)は給紙機構101が給紙動作しておらず用紙ガイド1は搬送案内面1aが下がる方向に回動した状態を示す要部断面図で、(b)は、例えば、印刷用紙125が給紙機構101により印刷部104に送られ、印刷用紙125の後端が用紙ガイド1の搬送案内面1aの下にある、等の場合で用紙ガイド1が上方に押し上げられた状態を示す要部断面図である。
なお、以降の説明では、用紙トレイ120に収容された印刷用紙が、給紙機構101により搬送される方向(BD方向)を奥側と記載する。
【0038】
用紙トレイ120(
図1参照)が取り付けられるプリンタメカ100の正面側には給紙ローラ2,用紙ガイド1およびセパレータ3からなる給紙機構101が設けられ、給紙機構101の奥側には印刷部104が設けられている。
【0039】
給紙ローラ2は、プリンタメカ100の正面側端付近に配置されており、給紙ローラ2の奥側にはセパレータ3と、搬送案内面1aを有する用紙ガイド1の本体部が配置されている。
【0040】
用紙ガイド1は給紙ローラ2のローラ軸2aに回動可能に保持され、給紙動作していないときは搬送案内面1aが下がる方向(DN方向)に回動し、搬送案内面1aが左側保持部材18(
図3参照)の用紙ガイド受け面18a(
図3参照)に当接して停止している。
【0041】
給紙機構101の奥側は印刷部104が配置されており、印刷部104は、送りローラ11,圧力ローラ12,プラテンローラ13および印刷ヘッド21を有する。
【0042】
印刷ヘッド21はフレーム(図示しない)に回動自在に保持されており、カム付きギア機構103(
図2参照)により、印刷ヘッド21がプラテンローラ13に当接する位置まで回動させられる。
【0043】
圧力ローラ12は圧縮バネ等の弾性部材により送りローラ11に圧接されており、印刷用紙を送りローラ11と圧力ローラ12で挟持することにより、印刷用紙を送りローラ11にて精度良く送ることが可能となる。
【0044】
プラテンローラ13はフレーム(図示しない)に回動自在に保持されており、印刷用紙とインクリボンをプラテンローラ13と印刷ヘッド21の間に挟持し、印刷ヘッド21により印刷用紙に印刷する。
【0045】
また、給紙機構101の下方(DN方向)には、押し上げ板14,押し上げ腕15および、ねじりバネ16からなる印刷用紙押圧機構105が設けられており、給紙ローラ2の下方(DN方向)には、印刷用紙押圧機構105の押し上げ腕15が配置されている。
【0046】
次に、
図6を参照して、用紙ガイド1の動作を説明する。
【0047】
給紙機構101が給紙動作していないとき等で、用紙ガイド1の搬送案内面1aの下に印刷用紙が無いときは、
図6(a)に示す様に、用紙ガイド1は係合腕部1bの窪み部1eを中心にして下方(DN方向)に回動する。このとき、用紙ガイド1の開放部1c(
図3参照)にセパレータ3の頂部3bが入り込み、用紙ガイド1の搬送案内面1aはセパレータ3の頂部3bより下方まで移動して停止する。
【0048】
また、例えば、
図6(b)に示す様に、印刷用紙125が給紙機構101により印刷部104に送られ、印刷用紙125の後端が用紙ガイド1の搬送案内面1aの下にある、等の場合には、用紙ガイド1は印刷用紙125で上方に押し上げられ、用紙ガイド1の搬送案内面1aはセパレータ3の頂部3bより上方(UP方向)に位置する。
【0049】
この後、印刷用紙125が給紙機構101により印刷部104にさらに送りこまれ、印刷用紙125の後端が用紙ガイド1の搬送案内面1aの下から抜け出すと、用紙ガイド1は下方(DN方向)に回動し、用紙ガイド1の搬送案内面1aはセパレータ3の頂部3bより下方まで移動する。
【0050】
次に、
図7から
図14を参照して、本実施の給紙機構101が使用されたプリンタメカ100における給紙動作を説明する。
図7はプリンタメカ100に用紙トレイ120が取り付けられた状態を示す、
図2のA−A位置の断面図である。
図8は積層された用紙トレイ120内の印刷用紙125が給紙ローラ2に押しつけられた、給紙動作開始前の状態を示す、
図2のA−A位置の断面図である。
図9は積層された用紙トレイ120内の印刷用紙125が給紙ローラ2により用紙トレイ120から引き出され、印刷用紙125がセパレータ3の傾斜面3aに当接した、給紙開始時の状態を示す、
図2のA−A位置の断面図である。
図10は最上層の印刷用紙125が給紙ローラ2により給紙され、用紙ガイド1の搬送案内面1aの下に入った状態を示す、
図2のA−A位置の断面図である。
図11は最上層の印刷用紙125が送りローラ11により搬送され、搬送案内面1aの下を通過して最上層の印刷用紙125の先端が送りローラ11に保持された状態を示す、
図2のA−A位置の断面図である。
図12は最上層の印刷用紙125が送りローラ11によりに印刷部104に送り込まれ、最上層の印刷用紙125の後端が給紙ローラ2から離れた状態を示す、
図2のA−A位置の断面図である。
図13は最上層の印刷用紙125が送りローラ11によりに印刷部104に送り込まれ、最上層の印刷用紙125の後端が用紙ガイド1から離れる直前の状態を示す、
図2のA−A位置の断面図である。
図14は最上層の印刷用紙125が送りローラ11によりに印刷部104に送り込まれ、最上層の印刷用紙125の後端が用紙ガイド1から離れ、最上層以外の印刷用紙125が用紙ガイド1により用紙トレイ120に戻された状態を示す、
図2のA−A位置の断面図である。
なお、
図7から
図14までのすべての図において、理解を容易とするために、リボンカセット110の記載は省略している。
【0051】
まず、
図7を参照して、給紙動作の最初の状態である、用紙トレイがプリンタメカ100に装着された状態を説明する。
【0052】
用紙トレイ120が装着されると、積層された印刷用紙125と、印刷用紙125の下にある用紙トレイ120のトレイ底板121は給紙ローラ2の下方に位置するが、印刷用紙押圧機構105は初期位置にあり、積層された印刷用紙125の上面と給紙ローラ2は接しておらず、最上層の印刷用紙125と給紙ローラ2の間には隙間がある。
【0053】
次に、
図8を参照して、積層された印刷用紙125が給紙ローラ2に押圧された状態を説明する。
【0054】
駆動モータ23(
図4(a)参照)が回転すると、押し上げ板14は、カム付きギア機構103(
図4(a)参照)を介して、押し上げ腕15が積層された印刷用紙125を持ち上げる方向(UP方向)に回動させられ、やがて、押し上げ腕15はトレイ底板121に当接する。
【0055】
駆動モータ23がさらに回転すると、押し上げ板14はさらに回動し、押し上げ腕15はトレイ底板121とトレイ底板121上に積層された印刷用紙125を持ち上げ、最上層の印刷用紙125は給紙ローラ2に押圧される。
この後、駆動モータ23がさらに回転すると、押し上げ板14はさらに回動するが、押し上げ腕15はトレイ底板121に当接したまま、ねじりバネ16の付勢力に抗しながら、印刷用紙125から遠ざかる方向(DN方向)に回動する。これにより、印刷用紙押圧機構105は、用紙トレイ120に収容された印刷用紙125を、ねじりバネ16によるほぼ一定の付勢力で給紙ローラ2に押圧するので、安定した印刷用紙押圧動作が可能となる。
【0056】
次に、
図9を参照して、積層された印刷用紙125が給紙ローラ2に押圧された状態で、給紙ローラ2が回転したときの状態を説明する。
【0057】
送りモータ22(
図4(b)参照)が回転し、送りギア機構102(
図4(b)参照)を介して給紙ローラ2が回転させられると、最上層の印刷用紙125は奥側に搬送される。このとき、最上層の印刷用紙125のみが奥側に搬送されれば印刷用紙の重送は発生しないが、積層された複数枚の印刷用紙125間の摩擦力が大きい場合等では、積層された複数枚の印刷用紙125が積層状態のまま搬送され、
図9に示すように、複数枚の印刷用紙125の端面がセパレータ3の傾斜面3aに当接する。
【0058】
次に、
図10を参照して、複数枚の印刷用紙125の端面が傾斜面3aに当接したのちに、給紙ローラ2がさらに回転した状態を説明する。
【0059】
給紙ローラ2がさらに回転を続けると、複数枚の印刷用紙125はセパレータ3の傾斜面3aに当接しながら傾斜面3aを上昇し、最上層の印刷用紙125が用紙ガイド1の搬送案内面1aに当接する。
【0060】
用紙ガイド1の搬送案内面1aに当接した最上層の印刷用紙125は、
図10に示すように、用紙ガイド1を押し上げながら、用紙ガイド1の搬送案内面1aとセパレータ3の頂部3bの間を通過する。このとき、最上層の印刷用紙125により押し上げられた用紙ガイド1の2つの弾性腕部1d(
図3参照)が右側リミット壁17b(
図3参照)および左側リミット壁18bに当接し弾性変形するため、用紙ガイド1は最上層の印刷用紙125を、印刷用紙125が傾斜面3aを下降する方向(DN方向)に付勢する。
【0061】
最上層の印刷用紙125は印刷用紙押圧機構105により給紙ローラ2に押圧されながら、摩擦抵抗の大きい給紙ローラ2により搬送されているため最上層の印刷用紙125は確実に奥側に搬送される。最上層の印刷用紙125が奥側に搬送される力は、用紙ガイド1が2つの弾性腕部1dの弾性変形により付勢される力より大きいので、最上層の印刷用紙125は用紙ガイド1を押し上げながら、搬送案内面1aの下を奥側に搬送される。
このとき、最上層の印刷用紙125は用紙ガイド1の搬送案内面1aとセパレータ3の頂部3bの間を通過するので、最上層の印刷用紙125の下面とセパレータ3の頂部3bは接しており、最上層の印刷用紙125の下面とセパレータ3の頂部3bの間には隙間はない。
【0062】
最上層より下側の印刷用紙125が、最上層の印刷用紙125の下面とセパレータ3の頂部3bの間に入ると重送が発生するが、この場合、最上層より下側の印刷用紙125は、用紙ガイド1をさらに押し上げなければ最上層の印刷用紙125の下面とセパレータ3の頂部3bの間に入れない。しかし最上層より下側の印刷用紙125が搬送される力は、最上層の印刷用紙125と下側の印刷用紙125との摩擦力のみで、最上層の印刷用紙125が給紙ローラ2により搬送される力より、はるかに小さい。このため、最上層より下側の印刷用紙125は2つの弾性腕部1dの弾性変形により付勢された用紙ガイド1を押し上げることができないので、最上層より下側の印刷用紙125はセパレータの頂部3bの手前の傾斜面3aで停止し、重送は発生しない。
【0063】
上記のように本実施形態におけるプリンタの給紙機構101では、用紙トレイ(トレイ)120に積層されて装着される印刷用紙(記録媒体)125を、用紙トレイ120から引き出し、印刷部(印刷手段)104側に搬送する給紙ローラ2と、印刷用紙125を印刷部104側に案内する用紙ガイド1と、を備えており、給紙機構101には、セパレータ(分離手段)3が設けられている。これにより、用紙トレイ120から複数枚の印刷用紙125が引き出された場合に、セパレータ3が最上層の印刷用紙125以外の印刷用紙125を分離する。
【0064】
最上層の印刷用紙125が給紙ローラ2により搬送案内面1aの下をさらに奥側へと搬送されると、
図11に示すように、やがて、最上層の印刷用紙125の先端は印刷部104の送りローラ11と圧力ローラ12に保持され、以降、最上層の印刷用紙125は送りローラ11により印刷部104側に送られる。
【0065】
送りギア機構102(
図4(b)参照)により、送りローラ11が印刷用紙125を送る速度は、給紙ローラ2が印刷用紙125を送る速度より早くなるように構成されているので、最上層の印刷用紙125が送りローラ11と圧力ローラ12の間に入ると、送りローラ11により最上層の印刷用紙125は速い速度で移動させられ、給紙ローラ2は送りローラ11により移動させられる印刷用紙125に追従して従動的に回転する。
【0066】
最上層の印刷用紙125が送りローラ11により送られる状態になると、駆動モータ23が回転し、カム付きギア機構103により、押し上げ板14は初期位置に戻され、印刷用紙押圧機構105による印刷用紙の給紙ローラ2への押圧は解除される。
【0067】
次に、
図12を参照して、最上層の印刷用紙125が送りローラ11によりに印刷部104に送り込まれ、最上層の印刷用紙125の後端が給紙ローラ2から離れた状態を説明する。
【0068】
最上層の印刷用紙125は送りローラ11によりさらに搬送され、やがて、
図12に示すように、最上層の印刷用紙125の後端は給紙ローラ2から離れる。このとき、印刷用紙押圧機構105は初期位置に戻っているため、用紙トレイ120に収容された複数枚の印刷用紙125も初期位置に戻るが、
図12に示すように、複数枚の印刷用紙125の一部はセパレータ3の傾斜面3aの上端部付近にとどまる場合があり、このような場合には次の印刷用紙の給紙動作が不安定になるおそれがある。
【0069】
送りローラ11により最上層の印刷用紙125がさらに搬送されると、
図13に示すように、最上層の印刷用紙125の後端は用紙ガイド1の搬送案内面1aの端部に到達する。このときでも、用紙トレイ120に収容された複数枚の印刷用紙の一部がセパレータの傾斜面3aにとどまり続けている場合がある。
【0070】
次に、
図14を参照して、最上層の印刷用紙125が給紙機構101を通過し、印刷部に送り込まれた状態を説明する。
【0071】
送りローラ11により最上層の印刷用紙125がさらに搬送されると、やがて、
図14に示すように、最上層の印刷用紙125の後端は用紙ガイド1の搬送案内面1aから離れる。用紙ガイド1は搬送案内面1aが下降する方向(DN方向)に付勢されているので、最上層の印刷用紙125の後端が用紙ガイド1の搬送案内面1aから離れると、用紙ガイド1は搬送案内面1aが下がる方向(DN方向)に回動する。
【0072】
用紙ガイド1が、搬送案内面1aが下がる方向(DN方向)に回動すると、セパレータの傾斜面3aの上端部付近にとどまり続ける印刷用紙125がある場合には、用紙ガイド1の搬送案内面1aがセパレータの傾斜面3aの上端部付近にとどまり続けた印刷用紙125を、印刷用紙125が傾斜面3aを下降する方向(DN方向)に付勢する。このとき用紙ガイド1の搬送案内面1aはセパレータ3の頂部3bより下方側まで移動する様に付勢されているので、用紙ガイド1の搬送案内面1aはセパレータ3の傾斜面3aにとどまり続ける印刷用紙125を用紙トレイ120内に押し戻す。
これにより用紙トレイ120内のすべての印刷用紙125が、平らに積層された状態となるので、次の印刷用紙125を給紙する場合にも、安定した給紙動作が可能となる。
【0073】
上記のように本実施形態におけるプリンタの給紙機構101では、セパレータ(分離手段)3により分離された印刷用紙(記録媒体)125が、分離開放手段である用紙ガイド1の搬送案内面1aにより、印刷用紙125がセパレータ3の傾斜面3aを下降し用紙トレイ(トレイ)120に戻される方向に移動させられる。用紙ガイド1は、搬送案内面1aがセパレータ3の頂部3bより下方側まで移動する様に付勢されているので、セパレータ3により分離された印刷用紙125は用紙ガイド1の搬送案内面1aにより用紙トレイ120に戻される方向に確実に移動させられる。
【0074】
また、最上層の印刷用紙125が印刷部(印刷手段)104側に供給された後、用紙ガイド1の搬送案内面(分離開放手段)1aがセパレータ(分離手段)3の頂部3bよりも下方に移動する。これにより、分離された印刷用紙125がセパレータ3の傾斜面3aにとどまり続けた場合でも、搬送案内面1aにより分離された印刷用紙125は用紙トレイ120に戻され、用紙トレイ120に積層された印刷用紙125が初期状態となるので、次の給紙時にも印刷用紙125の重送を回避できる。
【0075】
さらに、本実施形態におけるプリンタの給紙機構101では、用紙ガイド1は、給紙ローラ2の回転軸を中心として回動可能であるとともに、印刷用紙125を印刷部(印刷手段)104側に案内する搬送案内面1aを備えるとともに、用紙ガイド1の搬送案内面1aは分離開放手段となっているので、新たな部品を追加することなく分離開放手段を構成でき、簡単な構造で印刷用紙125の重送を回避できる。
【0076】
以上のように、本実施形態におけるプリンタの給紙機構101では、用紙トレイ(トレイ)120から複数枚の印刷用紙125が引き出された場合に、セパレータ(分離手段)3が最上層の印刷用紙125以外の印刷用紙125を分離し、分離開放手段が、分離された印刷用紙125を、印刷用紙125がセパレータ3の傾斜面3aを下降し用紙トレイ120に戻される方向に移動させるので、分離手段と分離開放手段を設けただけの簡単な構造で、用紙トレイ120に積層されて装着される印刷用紙(記録媒体)125の重送を回避できる、プリンタの給紙機構101を提供することができる。
【0077】
以上のように、本発明の実施形態に係るプリンタの給紙機構101を具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0078】
本実施形態において、用紙ガイド1に幅の狭い弾性腕部1dを設け、用紙ガイド1を付勢する構造としたが、弾性腕部1dを廃止し、別途バネ等の弾性部材を追加しても良い。または、弾性腕部1dと併用してバネ等の弾性部材を追加して付勢力を高めても良い。