(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外部に出射される光のピーク波長を前記半導体層の屈折率で割った値をλとした場合に、前記位相シフト層は、膜厚がλ/4の第1半導体層と、膜厚がλ/2で前記第1半導体層よりもバンドギャップエネルギーが小さい第2半導体層と、膜厚がλ/4の前記第1半導体層と、の組合せからなる半導体層である、請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。
外部に出射される光のピーク波長を前記半導体層の屈折率で割った値をλとした場合に、前記位相シフト層は、前記多層膜反射鏡とλ/4位相が異なる多層膜反射鏡である、請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0030】
図1に、本実施の形態の画像形成装置の一例の概略を示す概略構成図を示す。
図2に、本実施の形態の光源ヘッドの一例の内部構成を示す概略断面図を示す。
図3に、本実施の形態に係る半導体発光素子アレイの一例の外観を示す斜視図を示す。
【0031】
本実施形態に係る画像形成装置10は、
図1に示すように、矢印A方向に定速回転する感光体12を備えている。
【0032】
この感光体12の周囲には、感光体12の回転方向に沿って、感光体12表面を帯電する帯電器14、帯電器14により帯電された感光体12表面に静電潜像を形成するために露光するための光源ヘッド16(露光手段)、トナー像を形成するために静電潜像を現像剤により現像する現像器18(現像手段)、トナー像を用紙28(記録媒体)に転写する転写体20(転写手段)、転写後に感光体12の残存した残トナーを除去するためのクリーナ22、感光体12を除電し電位を均一化するイレーズランプ24が順に配設されている。
【0033】
すなわち、感光体12は、帯電器14によって表面が帯電された後、光源ヘッド16によって光ビームが照射されて、感光体12上に潜像が形成される。なお、光源ヘッド16は駆動部(不図示)と接続されており、駆動部によって半導体発光素子100の点灯を制御して、画像データに基づいて光ビームを出射するようになっている。
【0034】
形成された潜像には、現像器18によってトナーが供給されて、感光体12上にトナー像が形成される。感光体12上のトナー像は、転写体20によって、搬送されてきた用紙28に転写される。転写後に感光体12に残留しているトナーはクリーナ22によって除去され、イレーズランプ24によって除電された後、再び帯電器14によって帯電されて、同様の処理を繰り返す。
【0035】
一方、トナー像が転写された用紙28は、加圧ローラ30Aと加熱ローラ30Bからなる定着器30(定着手段)に搬送されて定着処理が施される。これにより、トナー像が定着されて、用紙28上に所望の画像が形成される。画像が形成された用紙28は装置外へ排出される。
【0036】
次に、本実施の形態の光源ヘッド16の構成を詳細に説明する。本実施の形態の光源ヘッド16は、SLED(Self−scanning LED:自己走査型LED)を用いている。SLEDは、LEDアレイとその駆動部分を一体化したものであり、複数のサイリスタ構造を有する発光部(半導体発光素子100、詳細後述)を備えている。
図2に示すように、半導体発光素子アレイ50と、半導体発光素子アレイ50を支持するとともに、半導体発光素子アレイ50の駆動を制御する各種信号を供給するための回路(不図示)とが実装された実装基板52と、セルフォックスレンズアレイ等の(セルフォックは、日本板硝子(株)の登録商標)ロッドレンズアレイ54と、を備えている。
【0037】
実装基板52は、半導体発光素子アレイ50の取り付け面を感光体12に対向させて、ハウジング56内に配設され、板バネ58によって支持されている。
【0038】
半導体発光素子アレイ50は、
図3に示すように、例えば、感光体12の軸線方向に沿って当該軸線方向の解像度に応じて、複数の半導体発光素子100が配列されて構成されたチップ62が、さらに複数個直列に配列して構成されており、感光体12の軸線方向に、予め定められた解像度で光ビームを照射するようになっている。
【0039】
なお、本実施の形態では、チップ62が複数個直列に1次元状に配列された例を示したが、これに限らず、複数列に分けて2次元状に配置してもよい。例えば千鳥状に配置する場合には、複数のチップ62は、感光体12の軸線方向に沿って並ぶように一列に配置されると共に、当該軸線方向と交わる方向に一定間隔ずらして二列に配置される。複数のチップ62単位に分けられていても、複数の半導体発光素子100の各々は、互いに隣接する2つの半導体発光素子100の感光体12の軸線方向の間隔が、ほぼ一定の間隔となるように配列されている。
【0040】
ロッドレンズアレイ54は、
図2に示すように、ホルダー64によって支持されており、各半導体発光素子100から出射された光ビームを感光体12上に結像させる。
【0041】
ここで、本実施の形態の半導体発光素子100について詳細に説明する前に、まず、比較のために、従来の半導体発光素子について説明する。
【0042】
図24に従来の半導体素子(発光ダイオード)の一例の概略構成の断面図を示す。従来の発光ダイオード1000は、基板1002、DBR層1004、発光層1006、クラッド層1013、コンタクト層1012、下部電極1014、及び上部電極116を備えている。発光層1006は、バリヤ層1006A1、活性層1006B、及び発光層1006A2を備えている。
【0043】
従来の発光ダイオード1000では、コンタクト層1012と上部電極1016との界面が上部ミラーとして機能し、当該上部ミラーと、発光層1006と、DBR層1004とにより共振器が構成されている。発光ダイオード1000から出射される光の発光スペクトルは、共振器の共振器スペクトルと発光層106による自然発光スペクトルとの掛け合わせになる。ここで、共振器スペクトルとは、発光層で波長依存のない白色光が発光した際に、外部に出射される光の、発光ダイオードの層構造によって決まるスペクトルと定義する。
図25に、発光ダイオード1000の自然発光スペクトル及び共振器スペクトルの波長と強度との具体的一例を示す。また、
図26に、この場合における発光スペクトルの波長と強度との具体的一例を示す。共振器スペクトルは、共振器の構造により定まり、自然発光スペクトルは発光層106の材料により定まる。
図25及び26に示すように、出射光の発光スペクトルは、共振器スペクトルにより波長選択性が生じ、自然発光スペクトルよりもシャープになる。
【0044】
このような発光ダイオード等の半導体発光素子では、一般に、製造過程において、結晶成長時のウエハ内の成長速度の差により、膜厚分布が生じるため、ウエハ内で共振器スペクトルのピークが分布する。すると、共振器の波長と自然発光の波長とのズレに分布が生じ、ウエハ内で発光量のばらつきが発生する場合がある。このように、ウエハ内でばらつきが発生するということは、個々の発光ダイオード個々の発光量がばらつくことになる。
図27に、従来の発光ダイオードの光量分布を示す。
図27に示すように、膜厚により、発光量(光強度)がばらついている。
【0045】
さらに、共振器の波長の温度依存性が発光層1006の自然発光波長の温度依存性に比べて小さいため、温度が変化すると、共振器スペクトルのピーク(主モード)と、自然発光スペクトルのピークがずれるという現象が生じる。その結果、
図28に示すように、温度依存性の膜厚によるばらつきが大きくなる。
【0046】
たとえば、発光ダイオードを複数備えた発光ダイオードアレイを用いて上述の光源ヘッド16を構成した場合には、半導体発光素子毎に光量がばらつくと、形成される画像の画質が劣化する。光量のばらつきを抑制するためには、各半導体発光素子毎に個別に光量を調整することがあげられるが、この場合、別途光量を調整する機構等が必要となるため、コストの増大や、装置の大型化を招くおそれがある。
【0047】
次に、本実施の形態の半導体発光素子100について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本実施の形態の基本的な半導体発光素子100の概略構成について説明する。
図4に、本実施の形態の基本的な半導体発光素子100の一例の概略構成の断面図を示す。なお、ここでは、半導体発光素子100を、Al
xGa
1−xAs系の、λ共振器を備えた共鳴空洞型発光ダイオード(RCLED)とした場合を示している。
【0048】
半導体発光素子100は、基板102、DBR(Distributed Bragg Reflector)層104、発光層106、位相シフト層108、位相調整層110、コンタクト層112、下部電極114、及び上部電極116を備えている。
【0049】
下部電極114及び上部電極116の材料は、接触する半導体層またはp型GaAs基板104との良好なオーミック接触を保つために適した材料がそれぞれ用いられる。具体的例としては、金(Au)や、金とゲルマニウムとの合金(AuGe)、金と亜鉛との合金(AuZn)、ニッケル(Ni)等が挙げられる。
【0050】
発光層106は、バリヤ層106A1とバリヤ層106A2との間にノンドープの活性層106Bが挟まれた構造になっている。本実施の形態の半導体発光素子100では、下部電極114及び上部電極116の間に電圧が印加されると、活性層106Bが励起されて、活性層106B内でキャリア(電子及び正孔)が再結合する。当該再結合により、光が発生される。
【0051】
本実施の形態では、コンタクト層112と上部電極116との界面が上部ミラーとして機能し、当該上部ミラーと、DBR層104とにより、発光層106で発光した光を共振させるための共振器を構成している。また、位相シフト層108とDBR層104とにより共振器を構成している。
【0052】
位相シフト層108は、位相をシフト(変調)させて複数の主モード(詳細後述)を有する共振スペクトルの定在波を発生させる機能を有している。
【0053】
半導体発光素子100内での光のピーク波長をλとすると、位相シフト層108は、基板102側から順に、膜厚がλ/4の第1半導体層108A1と、膜厚がλ/2の第2半導体層108Bと、膜厚がλ/4の第1半導体層108A2とが、積層されている。なお、ピーク波長λは、外部に取り出す光の基準波長(出射光のピーク波長)をλ0、基準波長λ0の光が共振器や発光層106を構成する半導体層(ここでは、AlGaAs)を伝搬する際の屈折率をnとした場合、λ=λ0/nとなる。本実施の形態では、具体的一例として基準波長λ0=780nmである。
【0054】
半導体発光素子100の発光面(上部電極116が形成されている側の面)から出射される光の発光スペクトルは、発光層106における自然発光スペクトルと、上述の共振器の共振器スペクトルを掛け合わせになる。
図5に、本実施の形態のRCLEDである半導体発光素子100の自然発光スペクトル及び共振器スペクトルの波長と強度との具体的一例を示す。また、
図6に、この場合における発光スペクトルの波長と強度との具体的一例を示す。
【0055】
図5に示すように、本実施の形態の半導体発光素子100の共振器スペクトルは、2つの主モードを有している。なお、本実施の形態において、主モードとは、予め定めた波長以上のピーク波長である。半導体層は、屈折率の異なる層によって形成されているため、層境界で反射が生じ、複数の定在波が存在している。当該複数の定在波のうち、反射率が高い層境界間で生じる定在波が主モードとなる。本実施の形態では、位相シフト層108を設けたことにより位相がシフトした定在波が半導体層内に形成され、
図5に示したように、外部に出射される際2つの主モードを有する光が発生する。
【0056】
一方、自然発光スペクトルは、共振スペクトルの主モード間にピーク波長を有している。なお、発光層106は、当該ピーク波長となるように、半導体組成(具体的には、Al
XGa
1−XAsの組成)が定められている。
【0057】
発光スペクトルは、共振器スペクトルと自然発光スペクトルとの掛け合わせであるため、
図6に示すようにブロード(従来に比べてブロード)なスペクトルとなる。
【0058】
また、
図7に、本実施の形態の半導体発光素子100の光量分布を示す。本実施の形態の半導体発光素子100では、上述の従来技術において説明したように製造工程において、ウエハ内に膜厚分布が生じた場合、共振器スペクトルが短波長側もしくは、長波長側にシフトする。共振器スペクトルがシフトすると、2つの主モードの一方のモードからの光強度(光量)は増加するが、もう一方の主モードからの光強度(光量)は減少する。従って、トータルの光量の変動が抑えられる。そのため、
図7に示すように、膜厚による光量のばらつきが抑えられる。
【0059】
さらに、
図8に、本実施の形態の半導体発光素子100の温度特性を示す。本実施の形態の半導体発光素子100では、自然発光スペクトルのピークが温度変化によってシフトした場合も上述と同様に、一方の主モードからの光量が増加すると共に、もう一方の主モードからの光量が減少するため、トータルの光量のばらつきが抑えられる。従って、トータルの光量の変動が抑えられる。そのため、
図8に示すように、温度依存性の膜厚によるばらつきも抑えられる。
【0060】
次に、本実施の形態の半導体発光素子100の具体例について説明する。なお、各実施例で共通の構成及び動作については、説明を省略する場合がある。
【0061】
(実施例1)
発光層106と発光面との間に位相シフト層108を設けた半導体発光素子100について示す。また、本実施例の半導体発光素子100では、位相調整層110の厚みをその他の実施例に比べて厚くしている。
【0062】
図9に、本実施例の半導体発光素子100の各層のAl組成及び膜厚の具体的一例を示す。なお、本実施例の半導体発光素子100では、一例として、p型の場合は、ドーパントとしてZnを用いており、n型の場合は、ドーパントとしてSiを用いている。
【0063】
n型GaAs基板102上に、n型GaAs系のバッファ層を介して、n型AlGaAs系のDBR層104が積層されている。なお、
図4では図示を省略しているが、本実施例の半導体発光素子100では、
図9に示すように、n型GaAs基板102と、n型AlGaAs系のDBR層104との結晶性を良好にするためにn型GaAs系のバッファ層を設けている。
【0064】
n型AlGaAs系のDBR層104は、Al組成が0.30で膜厚が0.25(1/4)λの半導体層と、Al組成が0.90で膜厚が0.25(1/4)λの半導体層とのペアが基板102側から順に、10層繰り返して積層されている。
【0065】
DBR層104上には、Al組成が0.30で膜厚が1.75λのn型AlGaAs系バリヤ層106A1と、Al組成が0.14で膜厚が0.5λのノンドープAlGaAs系活性層106Bと、Al組成が0.30で膜厚が1.25λのp型AlGaAs系バリヤ層106A2とが順に積層されている。活性層106Bには、バリヤ層106A1側からから小数キャリアとして注入されたキャリア(電子)が移動してくる。また、活性層106Bには、バリヤ層106A2側からから小数キャリアとして注入されたキャリア(正孔)が移動してくる。活性層106B内では、移動してきた電子と正孔とが発光再結合する。
【0066】
p型AlGaAs系位相シフト層108は、基板側から順に、Al組成が0.90で膜厚が0.25(1/4)λの半導体層108A1と、Al組成が0.30で膜厚が0.5(1/2)λの半導体層108Bと、Al組成が0.90で膜厚が0.25(1/4)λの半導体層108A1と、が積層されている。
【0067】
また、p型AlGaAs系位相調整層110は、Al組成が0.30で膜厚が2.138λである。さらに、p型GaAsコンタクト層112は、膜厚が0.142λとしている。本実施例では、このように位相調整層110の膜厚をその他の実施例(後述参照)よりも厚くしている。一般に、コンタクト層112上に上部電極116を設けることにより、上部電極116によって出射光が遮光されるため、出射光量が減少する。発光層106と上部電極116との距離が近い場合、上部電極116から注入された電流が横方向に十分拡散されないため、発光層106全体の発光量に対し上部電極116下部の発光層106における発光量の割合が多くなり、発光層106の中心で発光した光の多くが遮光されてしまう。そこで本実施例では、発光層106と上部電極116との間に設けられた位相調整層110の厚さを厚くすることにより、発光層106と上部電極116との距離を広げている。距離が広がることにより、上部電極116から注入された電流は横方向に拡散して発光層106で発光再結合するため、発光層106全体の発光量に対し上部電極116下部の発光層106における発光量の割合が少なくなり、上部電極116により遮光される光量を低減させている。従って、発光面から出射される光量の減少が抑制される。
【0068】
また、位相調整層110の厚さを変化させることにより、共振器長が変化するため、コンタクト層112とDBR層104とで形成される共振器の主モードを変化させられる。従って、2つの主モードの間隔(ピークtoピーク)を調整させられる。
【0069】
なお、半導体発光素子100の各層の結晶成長には、例えば、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法が適用される。
【0070】
図10に、本実施例の半導体発光素子100の光量分布を示す。
図11に、本実施例の半導体発光素子100の温度特性を示す。
【0071】
上述したように、本実施例の半導体発光素子100においても、位相シフト層108を設けたことにより、膜厚による光量のばらつきが抑えられる。さらに、温度依存性の膜厚によるばらつきも抑えられる。
【0072】
(実施例2)
発光層106と発光面との間に位相シフト層108を設け、かつ、発光層106と位相シフト層108との間に共振器調整層を備えた半導体発光素子100について示す。
【0073】
図12に、本実施例の半導体発光素子100の各層のAl組成及び膜厚の具体的一例を示す。
【0074】
n型GaAs基板102上に、n型GaAs系のバッファ層を介して、n型AlGaAs系のDBR層104が積層されている。n型AlGaAs系のDBR層104は、Al組成が0.30で膜厚が0.25(1/4)λの半導体層と、Al組成が0.90で膜厚が0.25(1/4)λの半導体層とのペアが基板102側から順に、10層繰り返して積層されている。DBR層104上には、発光層106が形成されている。発光層106の構成は、Al組成が0.30で膜厚が1.75λのn型AlGaAs系バリヤ層106A1と、Al組成が0.14で膜厚が0.5λのノンドープAlGaAs系活性層106Bと、Al組成が0.30で膜厚が1.5λのp型AlGaAs系バリヤ層106A2とが順に積層されている。
【0075】
さらに本実施例では、発光層106上に共振器調整層が設けられている。当該共振器調整層は、Al組成が0.30で膜厚が2.0λのp型AlGaAs系半導体層である。
【0076】
一般に、定在波の波長は、層境界の間の光学長によりモードが選択され、モード間隔は、光学長が長いほど短く、光学長が短いほど長くなる。本実施例の半導体発光素子100では、DBR層104と位相シフト層108とで構成される共振器と、DBR層104とコンタクト層112の界面とで構成される共振器が強いモードとなり、それぞれ主モードとなる。この際、共振器調整層の厚さを変えることによって、それぞれの共振器の共振器長が変化する。さらに、共振器長の変化に伴い、主モードの間隔も変化する。従って、本実施例では、共振器調整層により、主モードの間隔を調整させられる。
【0077】
また、共振器調整層を設けることにより、発光層106と上部電極116との距離が広がるため、上述したように、位相調整層110の厚さを厚くした場合と同様の効果が得られる。
【0078】
共振器調整層上には、実施例1と同様に位相シフト層108が形成されており、その上には、Al組成が0.30で膜厚が0.138λのp型AlGaAs系位相調整層110が形成されている。さらにその上には、膜厚が0.142λのp型AlGaAs系コンタクト層112が形成されている。
【0079】
(実施例3)
発光層106と発光面との間に位相シフト層108を設け、かつ、位相シフト層108の上層にDBR層を備えた半導体発光素子100について示す。
【0080】
図13に、本実施例の半導体発光素子100の各層のAl組成及び膜厚の具体的一例を示す。
【0081】
n型GaAs基板102上に、n型GaAs系のバッファ層を介して、n型AlGaAs系のDBR層104が積層されている。n型AlGaAs系のDBR層104は、Al組成が0.30で膜厚が0.25(1/4)λの半導体層と、Al組成が0.90で膜厚が0.25(1/4)λの半導体層とのペアが基板102側から順に、10層繰り返して積層されている。DBR層104上には、発光層106が形成されている。発光層106の構成は、Al組成が0.30で膜厚が1.75λのn型AlGaAs系バリヤ層106A1と、Al組成が0.14で膜厚が0.5λのノンドープAlGaAs系活性層106Bと、Al組成が0.30で膜厚が1.25λのp型AlGaAs系バリヤ層106A2とが順に積層されている。発光層106上には、実施例1と同様に位相シフト層108が形成されている。
【0082】
発光層106上には、Al組成が0.30で膜厚が0.25(1/4)λの半導体層と、Al組成が0.90で膜厚が0.25(1/4)λの半導体層とのペアが基板102側から順に、4層繰り返して積層された、p型DBR層が形成されている。
【0083】
また、p型DBR層上には、実施例2と同様に、p型AlGaAs系位相調整層110及びp型AlGaAs系コンタクト層112が形成されている。
【0084】
(実施例4)
発光層106と発光面との間に位相シフト層108を設け、かつ、位相シフト層108がDBR層104に対して位相をλ/4シフトさせるDBR層からなる半導体発光素子100について示す。
【0085】
図14に、本実施例の半導体発光素子100の各層のAl組成及び膜厚の具体的一例を示す。
【0086】
n型GaAs基板102上に、上記実施例2及び実施例3と同様に、バッファ層、DBR層104、及び発光層106が形成されている。さらに本実施例では、発光層106上に、p型AlGaAs系位相シフトDBR層が形成されている。
【0087】
p型AlGaAs系位相シフトDBR層は、Al組成が0.30で膜厚が0.25(1/4)λの半導体層と、Al組成が0.90で膜厚が0.25(1/4)λの半導体層とのペアが発光層106側から順に、4層繰り返して積層されている。
【0088】
発光層106に近接するDBR層104のAl組成は、0.90であり、一方、発光層106に近接する位相シフトDBR層のAl組成は、0.30である。このように、両DBR層は、発光層106からみたDBRの順序が異なっているため、発光層106に接するAlの組成が異なっている。
【0089】
上述の各実施例では、位相シフト層108を膜厚がλ/4の半導体層108A1、108A2の間に膜厚がλ/2の半導体層108Bを設けることにより、位相をシフトさせていた。これに対して本実施例では、DBR層104の位相と、位相シフトDBR層の位相とをλ/4ずらしておくことで、位相が異なる定在波を発生させられる。従って、共振スペクトルの主モードを複数(二つ)にさせられる。
【0090】
なお、本実施例においても、上述の実施例2で示した共振器調整層を用いることにより、DBR層104と位相シフトDBR層とで構成される共振器の光学長を変えられる。光学長が変えられるため、主モード間隔を調整させられる。特に、位相シフトDBR層の反射率が大きいため、ここでのモードが強く、より効果が大きい。
【0091】
(実施例5)
発光層106と発光面との間に位相シフト層108を設けた発光サイリスタである半導体発光素子100について示す。また、本実施例の半導体発光素子100では、位相調整層110の厚みを実施例1と同様に、厚くしている。
【0092】
図15に、本実施例の発光サイリスタである半導体発光素子100の各層のAl組成及び膜厚の具体的一例を示す。
【0093】
p型GaAs基板102上に、p型GaAs系バッファ層が形成されており、バッファ層上には、p型のDBR層104が形成されている。また、DBR層104上には、発光層106が形成されている。
【0094】
発光サイリスタであるため、本実施例の発光層106は、DBR層104側から順に、Al組成が0.30で膜厚が1.5(1/4)λのn型AlGaAs系ゲート層と、Al組成が0.14で膜厚が0.5(1/4)λのノンドープの活性層と、Al組成が0.30で膜厚が1.5(1/4)λのp型AlGaAs系ゲート層とが積層されてなる。
【0095】
また、発光層106上には、n型AlGaAs系位相シフト層108、膜厚が2.138λのn型AlGaAs系位相調整層110、及びn型GaAs系コンタクト層112が形成されている。
【0096】
このように、半導体発光素子100を発光サイリスタとして形成した場合において、上述したように、本実施例の半導体発光素子100においても、膜厚がλ/4の半導体層108A1、108A2の間に膜厚がλ/2の半導体層108Bを設けた位相シフト層108を備えることにより、膜厚による光量のばらつきが抑えられる。さらに、温度依存性の膜厚によるばらつきも抑えられる。
【0097】
(実施例6)
コンタクト層112及び位相調整層110の一部がエッチングにより除去された半導体発光素子100について示す。
図16に、本実施例の半導体発光素子100の具体的一例の概略構成の断面図を示す。なお、ここでは、一例として、上述の
図4に示した半導体発光素子100と略同様の構成としているが、上述の各実施例のいずれを用いてもよい。
【0098】
図16に示すように、本実施例の半導体発光素子100では、上部電極116を形成した後に、発光面の発光領域の一部にあたる、コンタクト層112及び位相調整層110をエッチングによって除去している。なお、エッチングにより除去される発光面の面積は、除去されない面積と略同等とすることが好ましい。
【0099】
エッチングによって除去された領域の共振器スペクトルは、除去されていない領域の共振器スペクトルと位相が変わり、主モードの波長が長波長側、もしくは短波長側へシフトする。除去された領域の主モードのスペクトルが、除去されていない領域の共振器スペクトルの2つの主モードの間に位置するように、エッチング深さを調整することにより、出射された光は両者の重ねあわせとなるため、あたかも共振器スペクトルが3つの主モードを有するようになる。
【0100】
従って、膜厚分布や温度変動による光量変動がさらに平均化され、よりばらつきが抑えられる。
[第2の実施の形態]
まず、本実施の形態の基本的な半導体発光素子200の概略構成について説明する。
図17に、本実施の形態の基本的な半導体発光素子200の一例の概略構成の断面図を示す。なお、本実施の形態は第1の実施の形態と略同様の構成であるため、略同様な部分はその旨を記し、詳細な説明を省略する。
【0101】
本実施の形態の半導体発光素子200は、発光面の上部電極116を除いた領域に光の反射を防止する反射防止膜202が設けられている。
【0102】
図18に、本実施の形態の半導体発光素子200の自然発光スペクトル及び共振器スペクトルの波長と強度との具体的一例を示す。また、
図19に、この場合における発光スペクトルの波長と強度との具体的一例を示す。
【0103】
図18に示すように、本実施の形態の半導体発光素子200の共振器スペクトルは、3つの主モードを有している。第1の実施の形態の半導体発光素子100の共振器スペクトル(
図5参照)の主モードの間(谷の部分)が持ち上がった形状となっており、よりフラットな共振器スペクトルとなっている。
【0104】
反射防止膜202の屈折率が空気に近いと、半導体層内に形成される共振器のモードが主になるが、屈折率がある範囲内になると、半導体層内のモードとDBR層104上に半導体層に反射防止膜202を加えて新たに形成された共振器のモードが同程度の強度を持つようになる。これにより、共振器の二つの主モードの谷の部分に新たなモードが発生したものと考えられる。
【0105】
自然発光スペクトルのピークが2つの主モード間に谷となる部分がなくなり、フラットな共振器スペクトルを有することにより、谷の部分により光量低下が抑制される。これにより、共振器スペクトルや自然発光スペクトルがシフトした場合でも、光量の変動を抑えられる。
【0106】
反射防止膜202の屈折率は、空気の屈折率よりも大きく、化合物半導体層(ここではAlGaAs)の屈折率よりも小さければ効果は得られるが、より好ましくは以下のようになる。
【0107】
図20に、反射防止膜202の屈折率を変化させた場合の共振器スペクトルの変化の具体的一例を示す。屈折率が小さい場合には、主モードは2つである。一方、屈折率が大きい場合は、主モードは3つになる。自然発光スペクトルと共振器スペクトルの相対位置が変化しても、出射光の光量が変動しないためには、屈折率が小さい場合は、2つの主モードの間が、主モードの高さの半分以上であることが望まれる。また、屈折率が大きい場合は、3つの主モードの中央のモードが両端のモードと同レベル以下であることが望まれる。従って、
図20に示すように、
図17に示した構造の半導体発光素子200では、屈折率が1.8以上、2.2以下とすることが好ましい。このような屈折率を有する材料としては、SiNxやCeO
2、HfO
2、La
2O
3、Ta
2O
5、Y
2O
3、ZnO、ZrO等があげられる。
【0108】
また、膜厚は、DBR層104上に半導体層に反射防止膜202を加えて新たに形成された共振器により発生するモードが主モード間となるような膜厚ならばよい。具体的には、共振器の光学長が、(0.5×m+0.25)×λ(ただし、mは整数)とすることが好ましい。なお、膜厚が不適切な場合は、主モードの間ではなく、外部が盛り上がる(モードが発生する)場合がある。
【0109】
(実施例1)
発光層106と発光面との間に位相シフト層108を備え、反射防止膜202が設けられた発光サイリスタである半導体発光素子200について示す。なお、膜厚以外の構成は、第1の実施の形態の実施例1と同様としている。
【0110】
図21に、本実施例の発光サイリスタである半導体発光素子200の各層のAl組成及び膜厚の具体的一例を示す。
【0111】
本実施例の半導体発光素子200では、上述したように、共振器スペクトルの主モード間(谷間)にモードが発生し、共振器スペクトルがフラットになるため、共振器スペクトルや自然発光スペクトルがシフトした場合でも、光量の変動を抑えられる。
【0112】
(実施例2)
発光層106と発光面との間に多層の位相シフト層108を備え、反射防止膜202が設けられた発光サイリスタである半導体発光素子200について示す。なお、膜厚以外の構成は、第1の実施の形態の実施例1と同様としている。
【0113】
図22に、本実施例の発光サイリスタである半導体発光素子200の各層のAl組成及び膜厚の具体的一例を示す。
【0114】
本実施例の半導体発光素子200では、実施例1と位相シフト層108の構成が異なっている。本実施例では、位相シフト層108が5層構造となっている。Al組成が0.90で膜厚が0.25(1/4)λの半導体層108Aが3層と、Al組成が0.30で膜厚が0.5(1/2)λの半導体層108Bとが2層と、により構成されてあり、位相シフト層108Aの間に位相シフト層108Bが挟まれている。
【0115】
このように、多層構造とすることにより、共振器スペクトルの主モードが複数(3つ以上)になる。従って、共振器スペクトルがよりフラットになる。
【0116】
(実施例3)
発光層106と基板102との間に多層の位相シフト層108を備え、反射防止膜202が設けられた発光サイリスタである半導体発光素子200について示す。
図23に、本実施例の発光サイリスタである半導体発光素子200の各層のAl組成及び膜厚の具体的一例を示す。
【0117】
本実施例の半導体発光素子200では、基板102と、発光層106との間にn型AlGaAs系位相シフト層106が設けられている。なお、本実施例では、DBR層104を上記各実施例と異なり、8層としている。
【0118】
このように位相シフト層108を基板102と発光層106との間に設けた場合であっても、上述したように共振器スペクトルの主モードが2つになる。なお、この場合、位相シフト層108は、DBR層104と発光層106との間であることが好ましい。
【0119】
以上、上記各実施の形態及び実施例で説明したように、半導体発光素子100、200では、位相シフト層108を設けたことにより、共振器の共振スペクトルに複数のモードを発生させるため、光量のばらつきが抑えられる。これにより、温度依存性のばらつきも抑えられる
また、第2の実施の形態で説明したように、発光面に反射防止膜202を設けることにより、共振器スペクトルの主モード間(谷)にモードを発生させられるため、共振器スペクトルがフラットなる。これにより、共振器スペクトルや自然発光スペクトルがシフトした場合でも、光量の変動を抑えられる。
【0120】
なお、上記各実施の形態及び実施例は、本発明の一例であり、これらを組み合わせてもよいし、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることはいうまでもない。
【0121】
例えば、発光層106は、上記各実施の形態、実施例に示したように、ノンドープであってもよいし、p型、n型、いずれでもよい。なお、正孔は、電子に比べて移動度が小さいため、空間的な広がり(厚み方向及び層の面内方向の広がり)が小さく発光効率が高いため、p型またはノンドープとすることが好ましい。
【0122】
また、半導体発光素子100、200は、発光ダイオードであっても、発光サイリスタであってもよい。さらに、PNP型でも、NPN型でもよいし、PNPN型でも、NPNP型でもよい。
【0123】
また、本実施の形態では、具体的一例として、AlGaAs系材料を用いた半導体発光素子100、200について説明したがこれに限られず、InGaAsP系や、AlGaInP系、InGaN/GaN系材料等を用いた発光サイリスタに対しても適用してもよい。
【0124】
また、本実施の形態では、自己走査型の電子写真式の画像形成装置10の光源ヘッド16に適用した場合について説明したがこれに限らず、本実施の形態の半導体発光素子100を他の光源ヘッドや他の画像形成装置に適用するようにしてもよい。また、半導体発光素子100を、例えば、スキャナ等、他の装置の光源に適用してもよい。