特許第5970888号(P5970888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5970888
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】画像形成装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20160804BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   G03G15/00 303
   G03G15/16
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-62810(P2012-62810)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-195711(P2013-195711A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 朋士
(72)【発明者】
【氏名】杉本 修一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 延和
【審査官】 後藤 孝平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−131494(JP,A)
【文献】 特開2003−057885(JP,A)
【文献】 特開2009−080393(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0244566(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0142982(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/16
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体の表面に転写する際の挟み荷重が互いに異なる各々のテストパターンが形成された前記被転写体から読み取られた画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記被転写体の表面の平滑度を表す平滑度情報を取得する取得手段と、
前記画像データが表す前記各々のテストパターンの濃度ムラの評価値を生成する評価値生成手段と、
前記各々のテストパターンの濃度ムラの評価値に基づいて、前記取得手段により取得した前記平滑度情報に対応する前記挟み荷重の最適値を決定する最適値決定手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記最適値決定手段は、表面の平滑度が互いに異なる各々の被転写体について前記挟み荷重の最適値を決定し、
前記被転写体の表面の平滑度を表す平滑度情報と前記挟み荷重の最適値を表す最適値情報との対応関係を表す対応情報を生成する対応情報生成手段をさらに備える、
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項3】
像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体の表面に転写する際の挟み荷重が互いに異なる各々のテストパターンが形成された前記被転写体から読み取られた画像データを取得する画像データ取得手段、
前記被転写体の表面の平滑度を表す平滑度情報を取得する取得手段と、
前記画像データが表す前記各々のテストパターンの濃度ムラの評価値を生成する評価値生成手段、及び、
前記各々のテストパターンの濃度ムラの評価値に基づいて、前記取得手段により取得した前記平滑度情報と対応する前記挟み荷重の最適値を決定する最適値決定手段、
としてコンピュータを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像濃度ムラを検出して二次転写電圧を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−39090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、被転写体の表面の平滑度が比較的低い場合であっても濃度ムラを抑制することが可能な画像形成装置、画像形成システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体の表面に転写する転写手段と、前記被転写体の表面の平滑度を表す平滑度情報を取得する平滑度情報取得手段と、前記平滑度情報に基づいて、前記被転写体の表面に前記転写手段により前記トナー像を転写する際の挟み荷重を決定する挟み荷重決定手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、前記被転写体の銘柄を表す銘柄情報を取得する銘柄情報取得手段をさらに備え、前記平滑度情報取得手段は、前記銘柄情報に対応する前記平滑度情報を取得する、請求項1に記載の画像形成装置である。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、前記被転写体の坪量を表す坪量情報を取得する坪量情報取得手段と、前記坪量情報に基づいて、前記トナー像を前記被転写体の表面に転写する際の転写電圧を決定する転写電圧決定手段と、をさらに備える請求項1に記載の画像形成装置である。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体の表面に転写する際の挟み荷重が互いに異なる各々のテストパターンが形成された前記被転写体から読み取られた画像データを取得する画像データ取得手段と、前記被転写体の表面の平滑度を表す平滑度情報を取得する取得手段と、前記画像データが表す前記各々のテストパターンの濃度ムラの評価値を生成する評価値生成手段と、前記各々のテストパターンの濃度ムラの評価値に基づいて、前記取得手段により取得した前記平滑度情報に対応する前記挟み荷重の最適値を決定する最適値決定手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0009】
また、請求項5に記載の発明は、前記最適値決定手段は、表面の平滑度が互いに異なる各々の被転写体について前記挟み荷重の最適値を決定し、前記被転写体の表面の平滑度を表す平滑度情報と前記挟み荷重の最適値を表す最適値情報との対応関係を表す対応情報を生成する対応情報生成手段をさらに備える、請求項5に記載の画像形成装置である。
【0010】
また、請求項6に記載の発明は、像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体の表面に転写する転写手段と、前記被転写体の銘柄を表す銘柄情報を取得する銘柄情報取得手段と、前記銘柄情報と、前記被転写体の表面の平滑度を表す平滑度情報との対応関係を表す第1の対応情報を保持する第1の対応情報保持手段と、前記銘柄情報と、前記被転写体の坪量を表す坪量情報との対応関係を表す第2の対応情報を保持する第2の対応情報保持手段と、前記第1の対応情報に基づいて、前記銘柄情報に対応する前記平滑度情報を取得する平滑度情報取得手段と、前記第2の対応情報に基づいて、前記銘柄情報に対応する前記坪量情報を取得する坪量情報取得手段と、前記平滑度情報に基づいて、前記被転写体の表面に前記転写手段により前記トナー像を転写する際の挟み荷重を決定する挟み荷重決定手段と、前記坪量情報に基づいて、前記被転写体の表面に前記転写手段により前記トナー像を転写する際の転写電圧を決定する転写電圧決定手段と、を備えることを特徴とする画像形成システムである。
【0011】
また、請求項7に記載の発明は、像保持体の表面に形成されたトナー像が転写される被転写体の表面の平滑度を表す平滑度情報を保持する平滑度情報保持手段、及び、前記平滑度情報に基づいて、前記トナー像を前記被転写体の表面に転写する際の挟み荷重を決定する挟み荷重決定手段、としてコンピュータを機能させるプログラムである。
【0012】
また、請求項8に記載の発明は、像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体の表面に転写する際の挟み荷重が互いに異なる各々のテストパターンが形成された前記被転写体から読み取られた画像データを取得する画像データ取得手段、前記被転写体の表面の平滑度を表す平滑度情報を取得する取得手段と、前記画像データが表す前記各々のテストパターンの濃度ムラの評価値を生成する評価値生成手段、及び、前記各々のテストパターンの濃度ムラの評価値に基づいて、前記取得手段により取得した前記平滑度情報と対応する前記挟み荷重の最適値を決定する最適値決定手段、としてコンピュータを機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1,7によると、被転写体の表面の平滑度が比較的低い場合であっても濃度ムラを抑制することが可能である。
【0014】
請求項2によると、被転写体の銘柄に応じた挟み荷重を用いることが可能である。
【0015】
請求項3によると、被転写体の坪量に応じた転写電圧を用いることが可能である。
【0016】
請求項4,8によると、テストパターンから挟み荷重の最適値を決定することが可能である。
【0017】
請求項5によると、平滑度に応じた挟み荷重の最適値を求めることが可能である。
【0018】
請求項6によると、被転写体の銘柄に応じた挟み荷重及び転写電圧を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成例を表す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る画像形成システムの構成例を表す図である。
図3】銘柄と平滑度の対応関係が記述されたテーブルを表す図である。
図4】平滑度と挟み荷重の対応関係が記述されたテーブルを表す図である。
図5】銘柄と坪量の対応関係が記述されたテーブルを表す図である。
図6】坪量と転写電圧の対応関係が記述されたテーブルを表す図である。
図7】上記画像形成装置により形成されるテストパターン例を表す図である。
図8】評価値生成処理の例を表すフローチャートである。
図9】空間周波数と明度の関係を表すグラフである。
図10】挟み荷重と濃度ムラ評価値の関係を表すグラフである。
図11】平滑度と挟み荷重の関係を表すグラフである。
図12】従来例の課題及び実施例の効果を説明するための図である。
図13】本発明の変形例に係る画像形成システムの構成例を表す図である。
図14】銘柄と挟み荷重の対応関係が記述されたテーブルを表す図である。
図15】銘柄と転写電圧の対応関係が記述されたテーブルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の画像形成装置、画像形成システム及びプログラムの実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の構成例を表す図である。画像形成装置100は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色のトナー像を形成する複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、一次転写部10と、二次転写部20と、定着部57と、を備えている。一次転写部10は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成される各色のトナー像を、像保持体の一例としての中間転写ベルト15の表面に順次積層する(すなわち、一次転写する)。二次転写部20は、中間転写ベルト15の表面に一次転写された各色のトナー像の積層体である重畳トナー像を、被転写体の一例としての用紙Pの表面に一括転写する(すなわち、二次転写する)。定着部57は、用紙Pの表面に二次転写された重畳トナー像を、用紙Pに定着させる。また、画像形成装置100は、各部の動作を制御するための制御部9を備えている。
【0022】
各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15に対して接離可能な、矢印A方向に回転する感光体ドラム11を備えている。感光体ドラム11の周囲には、上流から順に、感光体ドラム11の表面を帯電させる帯電器12と、露光ビームBmにより感光体ドラム11の表面に静電潜像を書込むレーザー露光器13と、トナーが収容され、感光体ドラム11の表面の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14と、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像を中間転写ベルト15に一次転写する一次転写ローラー16と、感光体ドラム11の表面の残留トナーを除去するドラムクリーナー17と、が配置されている。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に配置されている。
【0023】
二次転写部20は、中間転写ベルト15の表面に一次転写された重畳トナー像を、用紙収容部から搬送される用紙Pの表面に二次転写する一対の二次転写ローラー21,22と、二次転写ローラー21,22の間隔を変化させることで挟み荷重(ニップ荷重)を調整可能な挟み荷重調整部23と、二次転写ローラー21,22による二次転写時の転写電圧を調整可能な転写電圧調整部24と、を備えている。挟み荷重調整部23及び転写電圧調整部24は、制御部9からの指令に応じて挟み荷重及び転写電圧をそれぞれ調整する。重畳トナー像が二次転写された用紙Pは、搬送ベルト55によって搬送され、定着入口ガイド56を介して定着部57へ導かれる。定着部57は、用紙Pに二次転写された未定着の重畳トナー像を熱と圧力によって定着させる。定着部57から排紙される用紙Pは、排紙ガイド58を介して、排紙ローラー59により外部へ排出される。
【0024】
一般に、上記のような中間転写方式の画像形成装置では、以下のような課題がある。すなわち、画像形成に供される用紙はその銘柄に依って表面の平滑度が様々であり、この平滑度がトナー像の転写具合に影響を及ぼすことがある。特に、用紙の表面の平滑度が比較的低い場合(すなわち、用紙の表面が比較的粗い場合)、用紙の表面に存在する微小な凹凸によってトナー像が均一に転写されずに、濃度ムラが生じることがある。図12の従来例(破線)によると、用紙の表面の平滑度が低下するのに伴って濃度ムラが増加する傾向にあることが分かる。
【0025】
そこで、本実施形態では、用紙の表面の平滑度が比較的低い場合であっても濃度ムラを抑制するために、以下に説明する構成を備えている。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態に係る画像形成システム110の構成例を表す図である。画像形成システム110は、画像形成装置100に加えて、銘柄−平滑度対応情報保持部112と、平滑度−挟み荷重対応情報保持部114と、銘柄−坪量対応情報保持部116と、坪量−転写電圧対応情報保持部118と、を備えている。これらの保持部は、画像形成装置100に含まれてもよいし、画像形成装置100と通信可能なサーバーとして構成されてもよい。
【0027】
画像形成装置100の制御部9は、画像形成時に挟み荷重及び転写電圧を設定するパラメータ設定処理と、平滑度と挟み荷重の関係を表すテーブルを更新するテーブル更新処理と、を主に実行する。制御部9は、パラメータ設定処理を実行するための構成として、銘柄情報取得部91と、平滑度情報取得部92と、挟み荷重決定部93と、坪量情報取得部94と、転写電圧決定部95と、を備えている。また、制御部9は、テーブル更新処理を実行するための構成として、画像データ取得部96と、評価値生成部97と、最適値決定部98と、対応情報生成部99、を備えている。
【0028】
制御部9の各部は、CPU(Central Processing Unit)等の演算部がROM(Read Only Memory)等の記憶部に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。プログラムは、CD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な情報記録媒体から提供されてもよいし、インターネット等の通信線を介して提供されてもよい。
【0029】
[パラメータ設定処理]
銘柄情報取得部91は、画像形成に供される用紙の銘柄を表す銘柄情報を取得する。この銘柄情報は、例えば、画像形成装置100の不図示の操作部をユーザーが操作すること等によって入力される。
【0030】
平滑度情報取得部92は、画像形成に供される用紙の表面の平滑度を表す平滑度情報を取得する。具体的には、平滑度情報取得部92は、銘柄−平滑度対応情報保持部112が保持するテーブルを参照して、銘柄情報取得部91から入力される銘柄情報に対応する平滑度情報を取得する。銘柄−平滑度対応情報保持部112が保持するテーブルには、図3に示すように、用紙の銘柄と平滑度の対応関係が記述されている。
【0031】
挟み荷重決定部93は、平滑度情報取得部92から入力される平滑度情報に基づいて、トナー像を用紙の表面に転写する際の挟み荷重を決定する。具体的には、挟み荷重決定部93は、平滑度−挟み荷重対応情報保持部114が保持するテーブルを参照して、平滑度情報取得部92から入力される平滑度情報に対応する挟み荷重情報を取得する。平滑度−挟み荷重対応情報保持部114が保持するテーブルには、図4に示すように、平滑度と挟み荷重の対応関係が記述されている。なお、このテーブルに記述された平滑度と挟み荷重の対応関係は、後述するテーブル更新処理によって更新される。
【0032】
坪量情報取得部94は、画像形成に供される用紙の坪量を表す坪量情報を取得する。具体的には、坪量情報取得部94は、銘柄−坪量対応情報保持部116が保持するテーブルを参照して、銘柄情報取得部91から入力される銘柄情報に対応する坪量情報を取得する。銘柄−坪量対応情報保持部116が保持するテーブルには、図5に示すように、銘柄と坪量の対応関係が記述されている。
【0033】
転写電圧決定部95は、坪量情報取得部94から入力される坪量情報に基づいて、トナー像を用紙の表面に転写する際の転写電圧を決定する。具体的には、転写電圧決定部95は、坪量−転写電圧対応情報保持部118が保持するテーブルを参照して、坪量情報取得部94から入力される坪量情報に対応する転写電圧情報を取得する。坪量−転写電圧対応情報保持部118が保持するテーブルには、図6に示すように、坪量と転写電圧の対応関係が記述されている。
【0034】
以上のように決定された挟み荷重及び転写電圧は、画像形成に利用される。例えば、制御部9が、挟み荷重決定部93で決定された挟み荷重を目標値とする制御信号を挟み荷重調整部23に出力すると、挟み荷重調整部23が、二次転写ローラー21,22の間に生じる挟み荷重を目標値に近付ける。同様に、制御部9が、転写電圧決定部95で決定された転写電圧を目標値とする制御信号を転写電圧調整部24に出力すると、転写電圧調整部24が、二次転写ローラー21,22に生じる転写電圧を目標値に近付ける。
【0035】
[テーブル更新処理]
画像データ取得部96は、画像形成装置100によってテストパターンが形成された用紙から読み取られた画像データを取得する。こうした画像データは、例えば、画像形成装置100が備える不図示のスキャナによって生成される。画像形成装置100によるテストパターンの形成は、平滑度が既知である用紙ごとに、挟み荷重を複数回変えて行われる。このため、画像データ取得部96が取得する画像データは、平滑度が既知である用紙ごとかつ挟み荷重ごとに生成される。
【0036】
図7は、画像形成装置100により形成されるテストパターン例を表す図である。テストパターンは、各色について濃度が互いに異なる複数のセルSを含んでいる。濃度ムラの評価は、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の何れかからなる単色であって、かつ濃度が40〜60%程度のハーフトーンであるセルSの画像から好適に求められる。
【0037】
評価値生成部97は、画像データが表す各々のテストパターンの濃度ムラの評価値を生成する評価値生成処理を実行する。図8は、評価値生成処理の例を表すフローチャートである。このフローチャートに示される評価値生成処理の例は、濃度ムラの評価値を生成する公知の方法である。
【0038】
まず、評価値生成部97は、画像データ取得部96からテストパターンを表す画像データを取得すると(S1)、画像データのRGB値をXYZ値に変換し(S2)、さらにL値に変換する(S3)。次に、評価値生成部97は、L値のそれぞれに対して2次元フーリエ変換を行い、空間周波数のスペクトル値を算出する(S51〜S53)。図9は、空間周波数と明度(L)の関係を表すグラフである。以降の図において、平滑度は、p<q<rの関係にある。次に、評価値生成部97は、空間周波数のスペクトル値に対し、人間の視覚感度に関する空間周波数特性VTFを乗算して、空間周波数のスペクトル値を補正する(S61〜S63)。次に、評価値生成部97は、補正された空間周波数のスペクトル値のうち、空間周波数が比較的低い範囲(すなわち、人間の視覚感度が比較的高い範囲)の積分値を算出する(S71〜S73)。空間周波数が比較的低い範囲は、例えば0.1〜3 cycle/mm である。その後、評価値生成部97は、それぞれの積分値に対し、予め定められた重み付け係数を適用して、重み付け線形和を算出し(S8)、これにより算出される値を濃度ムラ評価値とする(S9)。
【0039】
最適値決定部98は、各々のテストパターンから算出される濃度ムラ評価値に基づき、各々の平滑度について挟み荷重の最適値を決定する。図10は、挟み荷重と濃度ムラ評価値の関係を表すグラフである。評価値生成部97により生成される濃度ムラ評価値は、平滑度ごとかつ挟み荷重ごとに得られるので、これらの関係に基づいて、各々の平滑度における挟み荷重の最適値が決定される。具体的には、濃度ムラ評価値は、ある挟み荷重において極小値を示すことから、最適値決定部98は、このような濃度ムラ評価値が極小値を示す挟み荷重を、挟み荷重の最適値として決定する。
【0040】
対応情報生成部99は、用紙の表面の平滑度を表す平滑度情報と、挟み荷重の最適値を表す最適値情報との対応関係を表す対応情報を生成する。図11は、平滑度と挟み荷重の関係を表すグラフである。これによると、用紙の表面の平滑度が低くなるほど(すなわち、用紙の表面が粗くなるほど)、挟み荷重の最適値が増加している。また、対応情報生成部99は、生成した対応情報に基づいて、平滑度−挟み荷重対応情報保持部114が保持するテーブルを更新する。その結果、上述の挟み荷重決定部93は、当該テーブルから濃度ムラを抑制するのに最適な挟み荷重を適用することができるようになる。
【0041】
以上に説明した本発明の実施形態によると、用紙の表面の平滑度が比較的低い場合であっても、濃度ムラを抑制するのに最適な挟み荷重を適用することで、画像の濃度ムラが抑制される。図12の実施例(実線)によると、用紙の表面の平滑度が比較的低い場合に、従来例(破線)よりも濃度ムラが低減していることが分かる。
【0042】
[変形例]
以下に、本発明の変形例について説明する。図13は、本発明の変形例に係る画像形成システム110の構成例を表す図である。本発明の変形例では、平滑度情報及び坪量情報を介さずに、銘柄情報から挟み荷重及び転写電圧を直接決定する。
【0043】
挟み荷重決定部93aは、銘柄情報取得部91から入力される銘柄情報に基づいて挟み荷重を決定する。具体的には、挟み荷重決定部93aは、銘柄−挟み荷重対応情報保持部113が保持するテーブルを参照して、銘柄情報取得部91から入力される銘柄情報に対応する挟み荷重情報を取得する。銘柄−挟み荷重対応情報保持部113が保持するテーブルには、図14に示すように、用紙の銘柄と挟み荷重の対応関係が記述されている。
【0044】
転写電圧決定部95aは、銘柄情報取得部91から入力される坪量情報に基づいて転写電圧を決定する。具体的には、転写電圧決定部95aは、銘柄−転写電圧情報保持部117が保持するテーブルを参照して、銘柄情報取得部91から入力される銘柄情報に対応する転写電圧情報を取得する。銘柄−転写電圧情報保持部117が保持するテーブルには、図15に示すように、用紙の銘柄と転写電圧の対応関係が記述されている。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのはもちろんである。
【0046】
例えば、上記実施形態では、ユーザーの操作等によって銘柄情報が入力され、その銘柄情報に対応する平滑度情報が取得されたが、この態様に限られず、ユーザーの操作等によって平滑度情報が直接入力されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1Y,1M,1C,1K 画像形成ユニット、10 一次転写部、11 感光体ドラム、12 帯電器、13 レーザー露光器、14 現像器、15 中間転写ベルト、16 一次転写ローラー、17 ドラムクリーナー、20 二次転写部、21,22 二次転写ローラー、23 挟み荷重調整部、24 転写電圧調整部、55 搬送ベルト、56 定着入口ガイド、57 定着部、58 排紙ガイド、59 排紙ローラー、91 銘柄情報取得部、92 平滑度情報取得部、93 挟み荷重決定部、94 坪量情報取得部、95 転写電圧決定部、96 画像データ取得部、97 評価値生成部、98 最適値決定部、99 対応情報生成部、100 画像形成装置、110 画像形成システム、112 銘柄−平滑度対応情報保持部、113 銘柄−挟み荷重対応情報保持部、114 平滑度−挟み荷重対応情報保持部、116 銘柄−坪量対応情報保持部、117 銘柄−転写電圧情報保持部、118 坪量−転写電圧対応情報保持部。
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