(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに押し合いながら接触する第1のロールと第2のロールに被搬送媒体を挟み込んで搬送する際の、前記被搬送媒体に作用する圧力と、前記被搬送媒体の表面と前記第1のロールまたは第2のロールの表面とにおける摩擦係数との積である搬送力を、前記第1のロールと第2のロールの軸方向の複数位置において前記被搬送媒体の搬送方向に積分した値である、前記被搬送媒体に作用する積分搬送力を算出する積分搬送力算出手段と、
前記積分搬送力の前記第1のロールと第2のロールの軸方向における分布を評価指標として、前記被搬送媒体のしわ状変形の発生の有無を予測する予測手段と、
を備えることを特徴とするしわ状変形予測装置。
前記予測手段は、前記積分搬送力の前記第1のロールと第2のロールの軸方向における分布から前記積分搬送力と前記軸方向位置との関係を2次曲線近似する2次曲線近似手段を有し、前記2次曲線の2次の係数を評価指標として、前記被搬送媒体のしわ状変形の発生の有無を予測することを特徴とする請求項1に記載のしわ状変形予測装置。
前記積分搬送力算出手段は、前記第1のロールと第2のロールが接触する接触領域全体で求めた、前記第1のロールと第2のロールの外周面からの被搬送媒体の食い込み量と、前記第1のロールと第2のロールの軸方向の1つの位置において前記被搬送媒体の搬送方向について求めた食い込み量と搬送速度との関係とに基づき、前記接触領域全体で求めた前記第1のロール、第2のロール及び被搬送媒体毎の搬送速度の差から決定した前記搬送力の方向を、前記搬送力の積分演算に使用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のしわ状変形予測装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0016】
図1には、実施形態にかかるしわ状変形予測装置の予測対象である搬送装置の構成例が示される。
図1において、搬送装置は、互いに押し合いながら接触する第1ロール100と第2ロール102とを備えており、第1ロール100と第2ロール102とが接触している領域(面的な広がりを持った領域であり、以後接触領域という)に印刷用紙等の被搬送媒体104を挟み込んで搬送する。このような搬送装置は、例えば電子写真装置の定着器等を例示することができる。定着器の場合には、例えば第1ロール100が加熱ロールとなり、第2ロール102が加圧ロールとなる。また、上記第1ロール100と第2ロール102の軸100a、102aには、図示しない手段により荷重がかけられ、この荷重を変更することにより互いに押し合う圧力を変更できる構成となっている。
【0017】
図1の搬送装置では、第1ロール100と第2ロール102の外周がゴムとフッ素樹脂等で構成されており、互いに押し合いながら接触すると外周面の断面が円形から変形し、被搬送媒体104が第1ロール100または第2ロール102の外周面に食い込まれた状態で搬送される。この場合に被搬送媒体104が搬送される方向を、以後搬送方向(
図1に矢印Aで示す)とする。
図1の例では、搬送方向Aが上記接触領域において、第1ロール100と第2ロール102の外周面の断面の変形に沿って曲がった線として現れている。これは、上記外周面の断面の変形により、それぞれの外周面の接触領域の、上記搬送方向における両端点(接触領域で挟まれた被搬送媒体104の搬送方向における最上流点と最下流点)P1、P2を結ぶ直線と被搬送媒体104の位置とにずれdが生じるためである。
【0018】
第1ロール100と第2ロール102とが荷重を付与されて互いに押し合いながら接触する場合に、荷重付与前の第1ロール100の軸100aと第2ロール102の軸102a間の距離と、荷重付与後の第1ロール100の軸100aと第2ロール102の軸102a間の距離の差を、以後、食い込み量という。
【0019】
被搬送媒体104が、上記第1ロール100と第2ロール102とに挟み込まれる際に、被搬送媒体104に波打ちが発生していると搬送後の被搬送媒体104にしわ状変形が発生する。しわ状変形とは、被搬送媒体104に微細な溝状の折れが発生することである。また、第1ロール100と第2ロール102とが、定着器の加熱ロールと加圧ロールである場合には、定着後の画像に画像乱れが発生することもある。画像乱れとは、画像面に擦られた痕跡が残ることをいう。
【0020】
本実施形態にかかるしわ状変形予測装置は、被搬送媒体104にしわ状変形が発生する可能性を予測するものであり、併せて上記画像乱れが発生する可能性も予測する。
【0021】
図2には、実施形態にかかるしわ状変形予測装置の構成例の機能ブロック図が示される。
図2において、しわ状変形予測装置は、食い込み量取得部10、圧力分布取得部12、ひずみ分布取得部14、速度分布取得部16、たわみ量取得部18、食い込み量展開部20、圧力分布展開部22、速度分布展開部24、積分搬送力算出部26、2次曲線近似部28、予測部30及び記憶部32を含んで構成されている。
【0022】
なお、上記しわ状変形予測装置は、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ、I/O等を備えており、各種演算を行うコンピュータとして構成されている。
【0023】
食い込み量取得部10は、上記接触領域に被搬送媒体104を挟み込んだ際に、上記第1ロール100と第2ロール102の軸100a、102aにかける荷重を変更した複数の条件で上記第1ロール100と第2ロール102のそれぞれの食い込み量を、
図1に示された搬送方向Aについて取得する。この場合、食い込み量は、実測してもよいし、2次元静解析により演算してもよい。2次元静解析としては有限要素法を用いることができ、被搬送媒体104が第1ロール100と第2ロール102との間でそれぞれに接した状態を初期配置とし、第1ロール100の軸100aを拘束した状態で第2ロール102の軸102aに、第1ロール100の軸100a方向の荷重を付与して食い込みを発生させて食い込み量を演算する。一方、実測した場合には、適宜な入力手段によりしわ状変形予測装置に実測値を入力する。また、搬送方向Aについて取得するとは、ある位置で第1ロール100と第2ロール102を軸方向に直交する面で切断した断面の2次元で食い込み量を取得することをいう。なお、第1ロール100と第2ロール102の軸方向のいずれの位置の断面とするかは、適宜決定することができる。
【0024】
圧力分布取得部12は、上記接触領域に被搬送媒体104を挟み込んだ際に、上記第1ロール100と第2ロール102の軸100a、102aにかける荷重を変更した複数の条件で被搬送媒体104にかかる圧力を、第1ロール100と第2ロール102毎に、搬送方向Aについて取得する。搬送方向Aについて取得するとの意義は、上記食い込み量の場合と同じである。
【0025】
図3には、被搬送媒体104にかかる圧力分布の例が示される。
図3において、横軸が搬送方向位置であり、縦軸が被搬送媒体104にかかる圧力である。なお、搬送方向位置とは、
図1に示された、接触領域の搬送方向における端点P1、P2の間の位置を、P1とP2の中間点を起点とした距離(例えばmm単位)で表すものである。なお、中間点よりP1側(搬送方向Aにおける上流側)をマイナスの距離とし、P2側(搬送方向Aにおける下流側)をプラスの距離としている。圧力分布取得部12が取得する圧力は、実測してもよいし、2次元静解析により演算してもよい。実測した場合には、適宜な入力手段によりしわ状変形予測装置に実測値を入力する。
【0026】
また、圧力分布取得部12は、食い込み量取得部10が取得した食い込み量と上記取得した圧力とを、同じ搬送方向位置毎に関係付ける。
【0027】
ひずみ分布取得部14は、上記接触領域に被搬送媒体104を挟み込んだ際に、上記第1ロール100と第2ロール102の軸100a、102aにかける荷重を変更した複数の条件で、第1ロール100、第2ロール102及び被搬送媒体104の各表面に発生する表面ひずみの分布を搬送方向Aについて取得する。ここで、表面ひずみとは、第1ロール100と第2ロール102では、それぞれの表面における材料の円周方向の長さ変化(伸びと縮み)をいい、被搬送媒体104では、第1ロール100側と第2ロール102側の表面における材料の搬送方向Aの長さ変化(伸びと縮み)をいう。また、搬送方向Aについて取得するとの意義は、上記食い込み量の場合と同じである。
【0028】
図4(a)、(b)、(c)、(d)には、表面ひずみ分布の例が示される。横軸が搬送方向位置であり、縦軸が表面ひずみ分布である。表面ひずみ分布は、もとの長さに対する伸びた長さまたは縮んだ長さの割合(%)であり、ひずみがない(伸び縮みがない)状態を0%とし、伸びた状態をプラス、縮んだ状態をマイナスの数値で表している。また、
図4(a)が第1ロール100の表面に発生した表面ひずみであり、
図4(b)が、被搬送媒体104の第1ロール100側の表面に発生した表面ひずみであり、
図4(c)が、被搬送媒体104の第2ロール102側の表面に発生した表面ひずみであり、
図4(d)が、第2ロール102の表面に発生した表面ひずみである。ひずみ分布取得部14が取得する表面ひずみは、実測してもよいし、2次元静解析により演算してもよい。実測した場合には、適宜な入力手段によりしわ状変形予測装置に実測値を入力する。
【0029】
また、ひずみ分布取得部14は、食い込み量取得部10が取得した食い込み量と上記取得した表面ひずみとを、同じ搬送方向位置毎に関係付ける。
【0030】
速度分布取得部16は、ひずみ分布取得部14が取得した表面ひずみに基づき、第1ロール100、第2ロール102及び被搬送媒体104毎に、搬送速度の分布を搬送方向Aについて取得する。この場合、
図4に示される表面ひずみが0の(表面ひずみが無い)点の搬送速度を搬送装置の基準の搬送速度(設計値)として、他の点の搬送速度を求める。すなわち、プラスの(伸びている)ひずみの絶対値が大きいほど搬送速度が速くなり、マイナスの(縮んでいる)ひずみの絶対値が大きいほど搬送速度が遅くなるので、ひずみの絶対値とプラス、マイナスに基づいて基準の搬送速度からの比例演算により搬送速度を求める。また、搬送方向Aについて取得するとの意義は、上記食い込み量の場合と同じである。
【0031】
図5には、
図4に示された表面ひずみに基づいて求めた搬送速度の分布の例が示される。
図5において、横軸が搬送方向位置であり、縦軸が搬送速度(mm/sec)である。
図5では、第1ロール100、第2ロール102及び被搬送媒体104毎に搬送速度の分布が示されている。
【0032】
また、ひずみ分布取得部14は、食い込み量と表面ひずみとを関係付けているので、これに基づき、速度分布取得部16は、食い込み量と搬送速度とを関係付ける。
【0033】
たわみ量取得部18は、第1ロール100及び第2ロール102の形状と、第1ロール100及び第2ロール102の軸100a、102aにかかる荷重に基づき、第1ロール100及び第2ロール102の軸方向に発生するたわみ量を取得する。たわみ量を取得するには、はりのたわみ式を用いることができる。具体的には、第1ロール100及び第2ロール102の断面形状から断面二次モーメントを求め、荷重を軸方向長さで割った線荷重が一様に作用すると仮定してたわみ量を計算する。上記形状は、搬送装置の設計データとして予め取得することができる。また、上記軸100a、102aにかける荷重は、複数の値を使用する上記複数の条件とする。なお、上記搬送装置の設計データは、例えば予め記憶部32に記憶しておき、これらのデータをたわみ量取得部18が読み出して使用する構成とすることができる。なお、たわみ量は実測してもよい。実測した場合には、適宜な入力手段によりしわ状変形予測装置に実測値を入力する。
【0034】
図6には、たわみ量取得部18が取得したたわみ量と軸方向位置との関係の例が示される。
図6において、横軸が軸方向位置であり、縦軸がたわみ量である。
【0035】
食い込み量展開部20は、上記たわみ量取得部18が取得した第1ロール100及び第2ロール102の軸方向に発生するたわみ量に基づき、第1ロール100と第2ロール102との食い込み量を接触領域全体に展開する。ここで、展開とは、接触領域全体に分布した複数点において食い込み量を取得することをいう。この処理は、例えば第1ロール100及び第2ロール102の軸方向に発生するたわみ量とそれぞれの材質から軸方向の食い込み量を上記接触領域全てについて演算することにより行う。なお、たわみ量からの食い込み量の演算は、基準となる食い込み量(第1ロール100と第2ロール102の材質と荷重から決まる)に対して、たわみによる変位量を加減算することにより行う。具体的には、たわみ量の平均値を算出し、軸方向各位置のたわみ量との差を計算して、平均値より食い込み側にたわんでいればその量を基準となる食い込み量に加算し、浮き側にたわんでいればその量を減算する。また、食い込み量を取得する接触領域内の点は、適宜決定することができる。
【0036】
圧力分布展開部22は、食い込み量展開部20が展開した食い込み量、及び圧力分布取得部12が関係付けた食い込み量と圧力との関係に基づき、被搬送媒体104を挟み込んだ際に被搬送媒体104にかかる圧力を接触領域全体に展開する。ここで、展開の意義は、上記食い込み量の場合と同じである。
【0037】
速度分布展開部24は、食い込み量展開部20が展開した食い込み量、及び速度分布取得部16が関係付けた食い込み量と搬送速度との関係に基づき、第1ロール100、第2ロール102及び被搬送媒体104毎の搬送速度を接触領域全体に展開する。ここで、展開の意義は、上記食い込み量の場合と同じである。
【0038】
積分搬送力算出部26は、圧力分布展開部22が展開した被搬送媒体104にかかる圧力と、被搬送媒体104の表面と第1ロール100または第2ロール102の表面とにおける摩擦係数との積(摩擦力)を、軸方向の複数の位置で互いに平行な搬送方向Aについて求める。以後、この摩擦力を被搬送媒体104に作用する搬送力という。また、積分搬送力算出部26は、速度分布展開部24が展開した第1ロール100、第2ロール102及び被搬送媒体104毎の搬送速度の差から、上記搬送力の方向を決定する。
【0039】
図7には、被搬送媒体104の表面に作用する搬送力の例が示される。
図7において、横軸が搬送方向位置であり、縦軸が搬送力である。また、
図7は、第1ロール100及び第2ロール102の軸100a、102aの方向の適宜な位置において、搬送方向Aについて求めた搬送力の分布である。また、
図7では、実線が第1ロール100から被搬送媒体104に作用する搬送力であり、破線が第2ロール102から被搬送媒体104に作用する搬送力である。
【0040】
次に、積分搬送力算出部26は、上記搬送方向Aについて求めた搬送力を、その方向も考慮しながら搬送方向Aで積分し、積分搬送力を算出する。この積分搬送力は、第1ロール100及び第2ロール102の軸方向の複数位置において、第1ロール100及び第2ロール102について算出する。
【0041】
図8には、積分搬送力の第1ロール100と第2ロール102の軸方向における分布の例が示される。上述した通り、積分搬送力は、軸方向の複数位置において搬送方向Aについて求めているが、
図8では、この積分搬送力の値を第1ロール100及び第2ロール102の軸100a、102aの方向に並べて表したものである。
図8において、横軸が軸方向位置であり、縦軸が積分搬送力である。なお、軸方向位置とは、第1ロール100及び第2ロール102の軸100a、102aの両端部の間の位置をいう。
【0042】
2次曲線近似部28は、上記積分搬送力の第1ロール100と第2ロール102の軸方向における分布から、積分搬送力と軸方向位置との関係を2次曲線近似する。この2次曲線近似は、第1ロール100及び第2ロール102について行う。ここで、2次曲線は、
図8の横軸をxとし、縦軸をyとしたときに、y=ax
2+bx+cで表される。
【0043】
予測部30は、2次曲線近似部28が近似して求めた2次曲線の2次の係数aを抽出する。また、予測部30は、上記抽出した2次の係数aを評価指標として、被搬送媒体のしわ状変形の発生の有無を予測する。なお、搬送装置が定着器を構成している場合には、定着後の画像について画像乱れの発生の有無を予測する。
【0044】
記憶部32は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリに、搬送装置の設計データ、被搬送媒体104の表面と第1ロール100または第2ロール102の表面とにおける摩擦係数、CPUの動作プログラム等の、上記各処理に必要な情報を記憶させる。
【0045】
本発明者らは、上記評価指標(係数a)がある範囲の値であるときに上述したしわ状変形と画像乱れが抑制されることを見いだした。そこで本実施形態では、上記評価指標が予め定めた範囲にあるか否かに基づいて、予測対象である搬送装置で被搬送媒体104を搬送する際にしわ状変形及び画像乱れが発生する可能性を予測する。
【0046】
図9には、本実施形態にかかるしわ状変形予測装置の動作例のフロー図が示される。
図9では、食い込み量取得部10、圧力分布取得部12、ひずみ分布取得部14、速度分布取得部16、たわみ量取得部18及び食い込み量展開部20の各処理が終了していることが前提となっている。
【0047】
図9において、圧力分布展開部22は、食い込み量展開部20が展開した食い込み量を、第1ロール100及び第2ロール102の軸方向の1つの位置で搬送方向Aについて圧力分布取得部12が関係付けた食い込み量と圧力との関係にあてはめて、被搬送媒体104を挟み込んだ際に被搬送媒体104にかかる圧力を接触領域内に分布する複数の点について算出し、接触領域全体に展開する(S1)。
【0048】
速度分布展開部24は、食い込み量展開部20が展開した食い込み量を、第1ロール100及び第2ロール102の軸方向の1つの位置で搬送方向Aについて速度分布取得部16が関係付けた食い込み量と搬送速度との関係にあてはめて、第1ロール100、第2ロール102及び被搬送媒体104毎の搬送速度を接触領域内に分布する複数の点について算出し、接触領域全体に展開する(S2)。
【0049】
積分搬送力算出部26は、上記S1で算出された、接触領域において被搬送媒体104にかかる圧力と、被搬送媒体104の表面と第1ロール100または第2ロール102の表面とにおける摩擦係数との積を、被搬送媒体104に作用する搬送力として算出する(S3)。この搬送力は、第1ロール100と第2ロール102の軸方向の複数の位置で互いに平行な搬送方向Aについて算出する。積分搬送力算出部26は、上記算出した搬送力を、その方向も考慮しながら複数の各搬送方向Aで積分し、第1ロール100及び第2ロール102について積分搬送力を算出する(S4)。
【0050】
次に、2次曲線近似部28は、S4で算出された積分搬送力の第1ロール100と第2ロール102の軸方向における分布を求め、積分搬送力と軸方向位置との関係を2次曲線近似する(S5)。
【0051】
次に、予測部30は、上記S5で近似して求めた2次曲線の2次の係数aを抽出する。予測部30は、上記抽出した2次の係数aを評価指標として、被搬送媒体のしわ状変形の発生の有無を予測する(S6)。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の具体例を実施例として説明する。なお、以下の実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
実施例1
2ロール構成の定着器(実験用に専用に組み立てた定着器)を使用し、表1に示す条件で印刷用紙(A4サイズ)50枚に対してベタ画像の定着を行った。表1では、加熱ロール(H−Roll)の軸方向中央部の直径と、加熱ロール及び加圧ロール(P−Roll)の軸にかける荷重(たわみ量)、及び加圧ロールの弾性層の厚さを変えて、しわ状変形及び画像乱れの発生頻度を変えている。
【0054】
【表1】
【0055】
定着後の各画像を目視により用紙のしわ状変形(微細な溝の折れ)の有無及び画像乱れ(擦られた痕跡)の有無を観察し、それぞれの数を数えた。
【0056】
また、使用した定着器について、上記説明したしわ状変形予測装置により評価指標aを算出した。
【0057】
図10には、実施例にかかる評価指標aとしわ状変形及び画像乱れの発生頻度との関係が示される。
図10において、横軸が評価指標aであり、縦軸がしわ状変形及び画像乱れ(不具合)の発生頻度(%)である。なお、
図10では、黒三角でしわ状変形が、黒四角で画像乱れがそれぞれ示されている。
【0058】
図10に示されるように、本実施例では、評価指標が7≦a≦9.5の範囲の時に、しわ状変形及び画像乱れが発生していないことがわかる。このように、しわ状変形予測装置では、任意の定着器において、特定の運転条件で1回上記試験を行って評価指標aの最適範囲を決めておき、この評価指標aにより運転条件を変えた場合のしわ状変形及び画像乱れを予測する。
【0059】
比較例1
実施例1と同じ条件で画像の定着を行うとともに、従来から行われている短冊試験の結果を評価指標に使用した。ここで、短冊試験とは、1つの辺から一定の長さの切り込みを上記辺に直交するように入れた用紙を、切り込みの方向がロールの軸方向に直交するように、かつ切り込みを入れた辺に対向する辺から2つのロール間に挟み込み、ロールの回転により用紙が搬送される際に、上記切り込みの端部が開いた距離を評価指標とするものである。
【0060】
図11には、比較例にかかる短冊試験の結果を評価指標としわ状変形及び画像乱れの発生頻度との関係が示される。
図11において、横軸が評価指標であり、縦軸がしわ状変形及び画像乱れ(不具合)の発生頻度(%)である。なお、
図11では、黒三角でしわ状変形が、黒四角で画像乱れがそれぞれ示されている。
【0061】
図11に示されるように、短冊試験の結果の評価指標としわ状変形及び画像乱れの発生頻度との間に明確な関係が見いだせない。このため、本比較例の評価指標では、すべての運転条件でしわ状変形及び画像乱れの発生の頻度を実験で確認する必要がある。