特許第5970901号(P5970901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5970901反射型マスクおよび反射型マスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5970901
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】反射型マスクおよび反射型マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20160804BHJP
   G03F 1/38 20120101ALI20160804BHJP
【FI】
   G03F1/24
   G03F1/38
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-69181(P2012-69181)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-201315(P2013-201315A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】近藤 慎平
(72)【発明者】
【氏名】福上 典仁
【審査官】 今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/136564(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/130956(WO,A1)
【文献】 特開2010−206177(JP,A)
【文献】 特開2010−118520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 1/00−1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、少なくとも、EUV光を反射するための多層反射層と、前記多層反射層を保護するための保護層と、EUV光を吸収する吸収層とが、この順に形成された反射型マスクブランクを用いて作製された反射型マスクであって、
前記吸収層に形成されたパターン領域の外側の少なくとも一部に、前記吸収層および前記保護層および前記多層反射層が除去されたEUV光の反射率の低い領域である遮光枠を備えてなり、
前記遮光枠の側壁部には、多層反射層を構成する材料毎にエッジの位置が少なくとも28nm異なって形成された周期的段差構造を備えていることを特徴とする反射型マスク。
【請求項2】
請求項1に記載の反射型マスクの製造方法であって、少なくとも、吸収層に形成されたパターン領域の外周部の少なくとも一部に、前記吸収層と保護層と多層反射層とが除去された、EUV光の反射率が低い領域である遮光枠を形成する遮光枠形成工程と、
前記遮光枠形成工程で露出した前記多層反射層の側壁部をエッチング処理して、前記多層反射層を構成する層のいずれかをサイドエッチングすることにより、周期的段差構造を形成するサイドエッチング工程と、からなることを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項3】
遮光枠形成工程とサイドエッチング工程をこの順に実施することを特徴とする請求項2に記載の反射型マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型マスク及びその製造方法に関し、特に極端紫外線(Extreme Ultra Violet;以下「EUV」と表記する。)を光源とするEUVリソグラフィを用いた半導体製造装置などに利用される反射型マスクおよび反射型マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(EUVリソグラフィの説明)
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、波長が13.5nm近傍のEUVを光源に用いたEUVリソグラフィが提案されている。EUVリソグラフィは光源波長が短く光吸収性が非常に高いため、真空中で行われる必要がある。またEUVの波長領域においては、ほとんどの物質の屈折率は1よりもわずかに小さい値である。このため、EUVリソグラフィにおいては従来から用いられてきた透過型の屈折光学系を使用することができず、反射光学系となる。従って、原版となるフォトマスク(以下、マスクと呼ぶ)も、従来の透過型のマスクは使用できないため、反射型のマスクとする必要がある。
【0003】
(EUVマスクとブランク構造の説明)
このような反射型マスクの元となる反射型マスクブランクは、低熱膨張基板の上に、露光光源波長に対して高い反射率を示す多層反射層と、露光光源波長の吸収層とが順次形成されており、更に基板の裏面には露光機内における静電チャックのための裏面導電膜が形成されている。また、多層反射層と、吸収層の間に緩衝層を有する構造を持つEUVマスクもある。反射形マスクブランクから反射形マスクへ加工する際には、EB(電子線)リソグラフィとエッチング技術とにより吸収層を部分的に除去し、緩衝層を有する構造の場合はこれも同じく除去し、吸収部と反射部とからなる回路パターンを形成する。このように作製された反射型マスクによって反射された光像が反射光学系を経て半導体基板上に転写される。
【0004】
(EUVマスクの吸収層の膜厚と反射率の説明)
反射光学系を用いた露光方法では、マスク面に対して垂直方向から所定角度傾いた入射角(通常6°)で照射されるため、吸収層の膜厚が厚い場合、パターン自身の影が生じてしまい、この影となった部分における反射強度は、影になっていない部分よりも小さいため、コントラストが低下し、転写パターンには、エッジ部のぼやけや設計寸法からのずれが生じてしまう。これはシャドーイングと呼ばれ、反射マスクの原理的課題の一つである。
【0005】
このようなパターンエッジ部のぼやけや設計寸法からのずれを防ぐためには、吸収層の膜厚は小さくし、パターンの高さを低くすることが有効であるが、吸収層の膜厚が小さくなると、吸収層における遮光性が低下し、転写コントラストが低下し、転写パターンの精度低下となる。つまり吸収層を薄くし過ぎると転写パターンの精度を保つための必要なコントラストが得られなくなってしまう。つまり、吸収層の膜厚は厚すぎても薄すぎても問題になるので、現在は概ね50〜90nmの間になっており、EUV光(極端紫外光)の吸収層での反射率は0.5〜2%程度である。
【0006】
(隣接するチップの多重露光の説明)
一方、反射型マスクを用いて半導体基板上に転写回路パターンを形成する際、一枚の半導体基板上には複数の回路パターンのチップが形成される。隣接するチップ間において、チップ外周部が重なる領域が存在する場合がある。これはウェハ1枚あたりに取れるチップを出来るだけ増加したいという生産性向上のために、チップを高密度に配置するためである。この場合、この領域については複数回(最大で4回)に渡り露光(多重露光)されることになる。この転写パターンのチップ外周部はマスク上でも外周部であり、通常、吸収層の部分である。しかしながら、上述したように吸収層上でのEUV光の反射率は、0.5〜2%程度あるために、多重露光によりチップ外周部が感光してしまう問題があった。このため、マスク上のチップ外周部に通常の吸収層よりもEUV光の遮光性の高い領域(以下、遮光枠と呼ぶ)を設ける必要性が出てきた。
【0007】
このような問題を解決するために、反射型マスクの吸収層から多層反射層までを掘り込んだ溝を形成することで多層反射層の反射率を低下させることにより、露光光源波長に対する遮光性の高い遮光枠を設けた反射型マスクが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、吸収層と多層反射層を単に掘り込んだだけの遮光枠では、次のような問題が生じる。これについて図を用いて詳しく説明する。図6の遮光枠10の大部分はEUV反射率をほぼゼロにすることが出来るが、遮光枠のエッジ付近のEUV反射光303、304の反射率は、遮光枠を形成する前よりも逆に高くなってしまう問題が発生する。何故なら、多層反射層2を単に掘り込む方法では、EUV反射率の低減に貢献していた吸収層4も除去する必要があるため、遮光枠のエッジ付近では、EUV光の入射と反射の行程で、吸収層4を1回しか通らない場合が発生するためである。例えば、遮光枠領域側から斜め入射されたEUV入射光300は、吸収層を通らずに多層反射層の側壁部から入り、基板1で反射されたEUV光が1度だけ吸収層を通り、ウェハ側に漏れたり(図6の304)、また、斜め入射されたEUV入射光300が最初に吸収層を通っても、遮光枠のエッジ付近では、基板1で反射されたEUV入射光300の一部が多層反射層の側壁部を抜けてウェハ側に漏れる(図6の303)ためである。つまり、EUV反射率を低下させるための遮光枠10によって、遮光枠のエッジ部分では、逆にEUV反射光の漏れが生じ、EUV反射率を上げてしまう問題を発生させ、遮光性能の低下を招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−212220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、遮光枠に面する多層反射層側壁部のSi(シリコン)もしくはMo(モリブデン)のいずれかをエッチングにより掘り込むことで、側壁部に周期的段差構造を形成し、遮光性能の高い遮光枠を有する反射型マスクを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する手段として、請求項1に記載の発明は、
基板上に、少なくとも、EUV光を反射するための多層反射層と、前記多層反射層を保護するための保護層と、EUV光を吸収する吸収層とが、この順に形成された反射型マスクブランクを用いて作製された反射型マスクであって、
前記吸収層に形成されたパターン領域の外側の少なくとも一部に、前記吸収層および前記保護層および前記多層反射層が除去されたEUV光の反射率の低い領域である遮光枠を備えてなり、
前記遮光枠の側壁部には、多層反射層を構成する材料毎にエッジの位置が少なくとも28nm異なって形成された周期的段差構造を備えていることを特徴とする反射型マスクである。
【0013】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の反射型マスクの製造方法であって、少なくとも、
吸収層に形成されたパターン領域の外側の少なくとも一部に、前記吸収層と保護層と多層反射層とが除去された、EUV光の反射率が低い領域である遮光枠を形成する遮光枠形成工程と、
前記遮光枠形成工程で露出した前記多層反射層の側壁部をエッチング処理して、前記多層反射層を構成する層のいずれかをサイドエッチングすることにより、周期的段差構造を形成するサイドエッチング工程と、からなることを特徴とする反射型マスクの製造方法である。
【0014】
また請求項3に記載の発明は、遮光枠形成工程とサイドエッチング工程をこの順に実施することを特徴とする請求項2に記載の反射型マスクの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、多層反射層を除去し遮光枠を形成した反射型マスクにおいて、遮光枠エッジ付近でのEUV光の反射を低減できるため、高い遮光性能を有する反射型マスクが可能となり、高い精度の転写パターンを形成できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)本発明の反射型マスクの構造の一例を示す概略断面図と(b)本発明の反射型マスクの構造の一例を示す概略平面図
図2】本発明の実施例の反射型マスクの作製工程(パターン形成まで)の一例を示す概略断面図で、(a)は反射型マスクブランク、(b)はその表面にレジストを塗布した状態、(c)はレジストパターンを形成した状態、(d)は吸収層までをエッチング除去してパターンが形成された状態、(e)はレジストを剥離した状態、をそれぞれ示している。
図3】本発明の実施例の反射型マスク(パターン形成まで)の一例を示す概略平面図
図4】本発明の実施例の反射型マスクの作製工程(遮光枠形成)の一例を示す概略断面図で、(a)は反射型マスクブランクの吸収層をエッチング除去し、更にレジストを剥離してパターンが形成された状態、(b)はその表面にレジストを塗布した状態、(c)はレジストパターンを形成した状態、(d)は吸収層までをエッチング除去した状態、(e)は更に保護層と多層反射層をエッチング除去した状態、(f)は多層反射層の側壁部に周期的な段差構造を形成した状態、(g)はレジストを剥離して遮光枠形成が完了した状態、をそれぞれ示している。
図5】(a)は本発明の実施例の反射型マスクの一例を示す概略平面図、(b)は本発明の実施例の反射型マスクの一例を示す概略断面図。
図6】従来の反射型マスクの遮光枠構造の課題を示す概略断面図。
図7】反射型マスクに対するEUV光入射角が6°の時の状況を説明する概略断面図であり、(a)は従来の反射型マスクの場合、(b)は本発明の反射型マスクの場合、をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(本発明の反射型マスクの構造)
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
まず、本発明の反射型マスクの構造について説明する。図1(a)は、本発明の反射型マスクの構造の概略断面図で、図1(b)は、図1(a)を上から見た概略平面図である。
【0023】
図1(a)に示す反射型マスク101は、基板1の表面に、多層反射層2、保護層3、吸収層4が順次形成された反射型マスクブランクを加工することで作製される。基板1の裏面には裏面導電膜5が形成された構造となっている。保護層3と吸収層4の間には、緩衝層が形成されている場合もある。緩衝層は、吸収膜4のマスクパターン修正時に、下地の保護層3にダメージを与えないために設けられた層である。
【0024】
本発明の反射型マスク101は、吸収層4が加工されたパターン領域10と、その外周部に吸収層4と保護層3と多層反射層2と緩衝層がある場合は緩衝層も含め、全ての層が除去されて形成された遮光枠11を有する。
【0025】
本発明の反射型マスク101は、図1(a)に示すように多層反射層2の側壁部に、多層反射層2を構成する2種の薄膜層のうち、いずれか一方がサイドエッチングされることで形成された周期的な段差構造が存在するが、この段差は少なくとも28nmとする。多層反射層2を構成する2種類の薄膜層として好適に適用できる材料としては、Mo(モリブデン)とSi(シリコン)の組合せを挙げることができる。しかしEUV光に対して、反射型マスクに用いる多層反射層として、実用的な反射率が得られる材料の組合せであれば良く、本発明はこれらMoとSiに限定するものではないが、以後の説明はMoとSiを代表例として取上げて説明する。
【0026】
本発明の反射型マスク101においては、その周期的な段差構造によって、6°入射のEUV露光のおける遮光枠11のエッジ付近でのEUV反射光の漏れが生じることはない。その理由は、EUV光の反射はMoとSiの界面によって発生しており、どちらか一方がなくなれば、反射が起こらないためである。また、図7(b)に示すように、多層反射層2のエッジから漏れる光が通る行路は、6°入射の場合、多層反射層2の底でエッジから最大28nm(多層反射層の高さのtan6°に相当)の箇所である。その為、28nmの掘り込み(サイドエッチ)を行うとエッジ付近でのEUV反射光の漏れが生じる事はない。
【0027】
(本発明の反射型マスクの構成の詳細:多層反射層、保護層、緩衝層)
図1(a)の多層反射層2は、EUV光に対して60%程度の反射率を達成できるように設計されており、MoとSiが交互に40〜50ペア積層した積層膜で、さらに最上層
の保護層3は2〜3nm厚のRu(ルテニウム)あるいは厚さ10nm程度のSiで構成されている。Ru層の下に隣接する層はSi層である。MoやSiが使われている理由は、EUV光に対する吸収(消衰係数)が小さく、且つMoとSiのEUV光での屈折率差が大きいために、SiとMoの界面での反射率を高く出来るためである。保護層3がRuの場合は、吸収層4の加工におけるエッチングストッパーやマスク洗浄時の薬液に対する保護層としての役割を果たしている。保護層3がSiの場合は、吸収層4との間に、緩衝層が有る場合もある。緩衝層は、吸収層4のエッチングやパターン修正時に、緩衝層の下に隣接する多層反射層2の最上層であるSi層を保護するために設けられており、Cr(クロム)の窒素化合物で構成されている。
【0028】
(本発明の反射型マスクの構成の詳細:吸収層)
図1(a)の吸収層4は、EUVに対して吸収率の高いTa(タンタル)の窒素化合物で構成されている。他の材料として、タンタルホウ素窒化物、タンタルシリコン、Taや、それらの酸化物でも良い。
【0029】
図1(a)の吸収層4は、上層に波長190〜260nmの紫外光に対して反射防止機能を有する低反射層を設けた2層構造から成る吸収層であっても良い。低反射層は、マスクの欠陥検査機の検査波長に対して、コントラストを高くし、検査性を向上させるためのものである。
【0030】
(本発明の反射型マスクの構成の詳細:裏面導電膜)
図1(a)の裏面導電膜5は、一般にはクロムの窒化物で構成されているが、導電性が静電チャックが使用できる程度以上であれば良いので、絶縁性材料以外からなる材料であれば良い。
図1(a)では裏面導電膜5を有する構成で記載したが、裏面導電膜5を有さない反射型マスクブランク及び反射型マスクとしても良い。
【0031】
(本発明の反射型マスクの構成の詳細:多層反射層の掘り込み)
本発明の反射型マスクの遮光枠11の形成方法について説明する。まずフォトリソグラフィもしくは電子線リソグラフィによって、遮光枠部のみが開口したレジストパターンを形成する。次に、フッ素系もしくは塩素系ガス(あるいはその両方)を用いたドライエッチングによって、レジストパターンの開口部の吸収膜4と保護層3をエッチング除去する。次いで、多層反射層2を、フッ素系ガスまたは塩素系ガスまたはその両方を用いたドライエッチングか、アルカリ性溶液または酸性溶液を用いたウェットエッチングによって、多層反射層をエッチング除去する。
【0032】
ドライエッチングによって、多層反射層2をエッチング除去する際に、フッ素系ガスまたは塩素系ガスまたはその両方を用いるのは、多層反射層2の材料であるMoとSiの両方に対して、エッチング性を有するためである。この際に用いるフッ素系ガスは、CF、C、C、C、CHF、SF、ClF、Cl、HClなどが挙げられる。
【0033】
ウェットエッチングによって、多層反射層2をエッチング除去する際のエッチング液には、多層反射層2の材料であるMoとSiのエッチングに適している必要がある。例えば、アルカリ性溶液としては、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、KOH(水酸化カリウム)、EDP(エチレンジアミンピロカテコール)などが適している。酸性溶液としては、硝酸とリン酸の混合液が適しているが、これにフッ酸、硫酸、酢酸を加えても良い。
【0034】
上述の多層反射層2のエッチング除去の処理後に、別途、上述の多層反射層2の側壁部
に周期的な段差構造を与えるための、ドライエッチング処理、もしくはウェットエッチング処理を追加する。
【0035】
ドライエッチングによって、多層反射層の側壁部に周期的な段差構造を形成する際にSiのみを選択的にエッチングする場合は、その際使用するガスはCF、CF、CCl2などが挙げられる。
【0036】
ウェットエッチングによって、多層反射層の側壁部に周期的な段差構造を形成する際にSiのみを選択的にエッチングする場合は、エッチング液としてはHF−HNO−CHCOOH、KOH、N+CHCHOHCHなどの酸化ケイ素のエッチング液が挙げられ、Moのみを選択的にエッチングする場合は、エッチング液としてはHPO+HNOなどのモリブデンのウェットエッチング液が挙げられる。
【0037】
また、多層反射層の側壁部に周期的な段差構造を形成する工程が、多層反射層2のエッチング除去する処理と同時に実施してもよく、その場合は、上述したガスやエッチング液を、多層反射層2のエッチング除去の処理のドライエッチングに用いるガスやエッチング液に添加することで、側壁部の段差構造を形成しても良い。
【0038】
本発明の反射型マスク101は、パターン領域10のパターン形成は、遮光枠11の形成後であっても、遮光枠11の形成前であっても構わない。
【0039】
このようにして、多層反射層2を除去し遮光枠11を形成したEUVマスクにおいて、遮光枠11のエッジ付近でのEUV光の反射をほぼゼロにまで低減できるため、高い遮光性能を有する反射型マスクを得る。
【0040】
EUV露光機内では、EUV光がマスク面を円弧状にスキャンするため、場所によっては6°より大きい入射角になる場合があるが、その場合も遮光枠11のエッジ付近でのEUV光の漏れの大部分を低減できるため、本発明の効果は大きい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の反射型マスクの製造方法を、実施例を用いて詳細に説明する。
図2(a)に示した反射型マスクブランク201を使用した。これは、基板1の上に、波長13.5nmのEUV光に対して反射率が64%程度となるように設計されたMoとSiの40ペアの多層反射層2が、その上に2.5nm厚のRuの保護層3が、更にその上に70nm厚のタンタルシリサイドからなる吸収層4が、順次形成されている。
【0042】
上記の反射型マスクブランク201に対し、ポジ型化学増幅レジスト9(FEP171:富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を300nmの膜厚で塗布し(図2(b))、電子線描画機(JBX9000:日本電子社製)によって描画後、110℃、10分のPEB(Post Exposure Bake)およびスプレー現像機(SFG3000:シグマメルテック社製)により現像を行い、レジスト部分にレジストパターンを形成した(図2(c))。
【0043】
次いで、ドライエッチング装置(VLR700シリーズ:ユナクシス社製)を用いて、CFプラズマとClプラズマにより、吸収層4をエッチング除去し(図2(d))、その後レジスト剥離洗浄することで、図2(e)に示す評価パターンを有する反射型マスク211を作製した。評価パターンは、寸法200nmの1:1のライン&スペースパターンをマスク中心に配置した。パターン領域の大きさは、10cm×10cmとした。反射型マスク211の上面図を図3に示す。
【0044】
次いで、図4(a)〜(g)に示したように、上述の評価パターンを有する反射型マスク211のパターン領域10に対して、遮光枠11を形成する工程を行った。反射型マスク211(図4(a))にi線レジスト29を500nmの膜厚で塗布し(図4(b))、そこへi線描画機(ALTA3000:アプライドマテリアル社製)により描画、現像を行うことにより、後に遮光枠11となる領域を抜いたレジストパターンを形成した(図4(c))。このときレジストパターンの開口幅は5mmとし、マスク中心部の10cm×10cmのメインパターン領域の端部から外側に3mmの距離に配置した。
【0045】
次いで、ドライエッチング装置(VLR700シリーズ:ユナクシス社製)を用いてCHFプラズマ(ドライエッチング装置内の圧力50mTorr、ICP(誘導結合プラズマ)パワー500W、RIE(反応性イオンエッチング)パワー2000W、CHF:流量20sccm、処理時間6分、これらは、以下の表記で同じとする。)により、上記レジストの開口部の吸収層4と多層反射層2とを異方性ドライエッチングでエッチング除去し(図4(d)および(e))、ついで、KOH水溶液(30wt%、85℃)によるウェットエッチングで4分間処理することで多層反射層2のSi層のみをサイドエッチングし、図4(f)に示すような多層反射層2の側壁部に周期的段差構造を得た。
【0046】
最後に、硫酸系の剥離液とアンモニア過酸化水素水により、レジスト剥離・洗浄を実施し、エッチングマスクとして使用したレジストパターンを除去した(図4(g))。図5(a)と(b)に本実施例で作製した反射型マスク101を示す。
【0047】
このようにして作製した遮光枠11の一部を断裁して、電子顕微鏡にて断面観察したところ、約30nmのサイドエッチングが、多層反射層2のSi層にのみに形成されていることを確認した。図7(b)に示したように、EUV光の入射角が6°の場合は、多層反射層2のエッジから28nmより更に大きい30nm程度となっているため、遮光枠11のエッジ付近でのEUV反射光の漏れが生じることはなかった。
【0048】
このように、遮光性能の高い遮光枠を有する反射型マスクを作製することができた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、反射型マスク等に有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 基板
2 多層反射層
3 保護層
4 吸収層
5 裏面導電膜
9 レジスト
10 パターン領域
11 遮光枠
29 レジスト
101 本発明の反射型マスク
201 反射型マスクブランク
211 パターン領域に回路パターンが形成された反射型マスク
301 吸収層部でのEUV反射光
302 遮光枠内部でのEUV反射光
303 遮光枠エッジ部でのEUV反射光
304 遮光枠エッジ部でのEUV反射光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7