(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<発泡成形体の構造>
本発明の発泡成形体の発泡領域での断面(最大延伸方向に沿った垂直断面)を示す
図1を参照して、全体として10で示す成形体の発泡領域には、発泡セル1が多数分布している。
【0018】
本発明の発泡成形体10は、後述する熱可塑性樹脂に光吸収剤を分散せた熱可塑性樹脂組成物を用いての一体成形により得られるものであるが、その遮光性が極めて高く、例えば、配合されている光吸収剤に由来する350〜500nmの波長領域での極大吸収波長における全光線透過率が1%以下、好ましくは0.5%以下と極めて低い値となっている。即ち、このように高い遮光性を確保するために、この発泡成形体10は延伸成形されていることが好ましく、この延伸成形により、多数分布している発泡セル1は、何れも、最大延伸方向が最も長くなるように引き伸ばされた扁平形状を有している。
【0019】
従って、このような扁平状発泡セル1の平均厚みtは50μm以下、特に20μm以下であり、且つ平均アスペクト比(最大長さLと厚みtとの比L/t)が4以上、特に6乃至30の範囲にあることが好ましく、さらには、かかる発泡領域では、横断セル数が平均して20個以上であることが好ましい。ここでいう横断セル数とは、発泡領域で厚み方向に垂直な直線を引いたときに直線が横切る発泡セル1の数のことである。さらには、発泡領域の全容積中、発泡セル1の占有率が15%以上の範囲にあることが、発泡による遮光性を発泡領域の全体にわたって最大限に高める上で好適である。
即ち、扁平状の発泡セル1が上記の条件を満足するように多数分布していることにより、この発泡領域に入射した光の多重反射や散乱が多く発生し、この発泡領域を通過する光であっても、その光路長は極めて長くなり、従って、その透過率は大きく低下し、極めて高い遮光性を確保することができるのである。例えば、上記の条件を満足するように扁平状発泡セル1が多数分布している場合、光吸収剤を含有しなくても光(350〜500nmの波長光)の全光線透過率は15乃至8%程度である。
【0020】
尚、発泡成形体10が延伸成形されていない場合には、扁平状の発泡セル1の形状は球形若しくは球形に近い形状となり、従って、発泡領域の全体にわたって、前述した厚み方向でのセルの重なり度(20乃至100個)を確保することが極めて困難となる。即ち、厚み方向でのセルの重なり度を多くするために、発泡セルをかなり密に形成することが必要となってしまい、この結果、発泡による遮光性、軽量化等の利点よりも強度低下やガスバリア性の低下などのデメリットが顕著となってしまうからである。
【0021】
また、本発明の発泡成形体10においては、発泡領域での外表面に、発泡セル1が存在していない非発泡の薄い表皮層5が形成されていることが好ましい。即ち、このような表皮層5の形成により、発泡による粗面化を回避し、例えば、この面上にラベルを貼着したり、或いは印刷を施すことも容易となるからである。
【0022】
本発明の発泡成形体10は、薄肉容器として用いられることが好ましい。厚肉成形品では発泡セル1を成形品の厚み方向全体にわたって形成させることが困難となるが、薄肉容器(厚み50乃至500μm)においては容器の厚み方向に気泡を形成させ、気泡による散乱や光路長増大と光吸収剤の相乗効果を効果的に得ることができるからである。
【0023】
ところで、本発明の発泡成形体10は、熱可塑性樹脂に光吸収剤が配合された熱可塑性樹脂組成物を用いての一体成形により形成されるものであり、発泡と共に、成形体中に光吸収剤が配合されているため、先に述べたように、遮光性が著しく向上し、該光吸収剤に由来する350〜500nmの波長領域での吸収ピーク波長における全光線透過率は1%以下、好ましくは0.5%以下となっている。
【0024】
本発明において、上記の成形体10の形成に用いる熱可塑性樹脂としては、後述する不活性ガスを含浸させてのマイクロセルラーによる発泡が可能である限り特に制限されず、それ自体公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、環状オレフィン共重合体などのオレフィン系樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル系共重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びこれらの共重合ポリエステル等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリフエニレンオキサイド樹脂;ポリ乳酸など生分解性樹脂;などを用いることができ、勿論、これらの熱可塑性樹脂のブレンド物も使用することができる。
特に、成形体10を容器とする場合には、容器への成形性、透明性、耐熱性、強度等の観点から、PETに代表されるポリエステル樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂が好適に使用され、特にポリエステル樹脂が最適である。
【0025】
また、上記の熱可塑性樹脂に分散させるための光吸収剤としては、遮光を目的とする波長光に応じて、それ自体公知の着色剤や紫外線吸収剤(例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダートアミン系などの有機系紫外線吸収剤)を用いることができる。また、光吸収剤の配合量は、使用する吸収剤によっても変わるが、熱可塑性樹脂100重量部あたりに分散されている光吸収剤の量が1乃至0.001重量部が好ましい。
【0026】
例えば、成形体10が容器である場合には、内容物の吸収波長に応じて、黒色顔料乃至染料、黄色顔料乃至染料、橙色顔料乃至染料、赤色顔料乃至染料、紫色顔料乃至染料、青色顔料乃至染料、緑色顔料乃至染料等の着色剤、或いは紫外線吸収剤などを、それぞれ単独で或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
以下に、光により変質しやすい内容物(或いは内容物中の成分)の一例と、その主な吸収波長を示す。
内容物 主な吸収波長(nm)
ビタミンD 292
ビタミンE 292
シトラール 320
ビタミンA 325
葉酸 365
ビール 350〜550
牛乳 400〜550
βカロチン 450
油脂 〜550
葉緑素 430、660
【0027】
即ち、内容物の吸収波長帯の光を吸収し得るように、各種の着色剤や紫外線吸収剤を前述した熱可塑性樹脂に分散して使用すればよいわけである。
【0028】
本発明において、上記の光吸収剤は、前記極大吸収波長における吸光係数が100cm
−1以下、特に40cm
−1以下になるように前述した熱可塑性樹脂に分散させられ、使用される。即ち、発泡によらずに顔料などの着色剤を用いて隠ぺい力を持たせるためには、かなりの量の着色剤が使用され、吸光係数が大きくなるが(一般に200cm
−1以上)、本発明における光吸収剤の使用量は、その1/5〜1/10程度であり、極めて少ない。
【0029】
本発明では吸光係数αは次の式によって定義される。
Lambert-Beerの法則による下記式:
I=I
0exp(−αL)
式中、Iは透過光の強度
I
0は入射光の強度
αは吸光係数
Lは光路長である、
この式から理解されるように、上記のように吸光係数が小さいということは透光性が大であることを意味しているから、本発明においては、透明性が損なわれない程度の少量でしか光吸収剤が配合されていないわけである。
従って、本発明においては、光吸収剤が配合されているが、その量が熱可塑性樹脂の透明性を損なわない程度の少ない量であるため、かかる光吸収剤の配合による熱可塑性樹脂の物性等の変動が可及的に小さく抑制されており、リサイクル性は有効に確保されている。
本発明において、発泡体の吸光係数を測定する際には、かかる発泡体を樹脂組成物が変質しない程度の温度で溶融し、任意の厚みの非発泡フィルムまたはシートに加工した後に光透過率測定を行って式より求めればよい。
【0030】
しかも、本発明においては、上記のように透明性が損なわれない程度の少量の光吸収剤の使用でありながら、成形体10の遮光性は著しく増大している。即ち、この成形体10は発泡により遮光性が付与されているが、先にも述べたように、この発泡のみでは、例えば光吸収剤の吸収波長光に対する全光線透過率は8%程度に低下しているに過ぎないが、本発明においては、少量の光吸収剤の添加により、用いた光吸収剤の吸収波長光についての全光線透過率は、1%以下、特に0.5%以下に大きく低下し、極めて優れた遮光性を示すのである。
このような僅かな量の光吸収剤の使用による著しい遮光性の向上は、発泡セルによる光の多重反射や散乱による光路長の増大効果と光吸収剤による光の吸収とが相乗的に作用して達成されるものである。
本発明の発泡体を容器として使用した後にリサイクル材として利用する際には、樹脂を再溶融させる工程において発泡セルが消失し非発泡状態となる。すると、先に述べた発泡による光路長増大効果が起きない事から透明性が向上し(隠蔽性が低下し)、リサイクル材としての価値が高いものに変化する。
【0031】
このようにリサイクル性が損なわれることなく遮光性が著しく高められている本発明の発泡成形体10は、包装容器、特にプラスチックボトルとして使用されることが最適である。即ち、現在大量に製造販売されているPETボトルなどを容易に再利用することができ、また内容物の光による変質を有効に防止することもできるからである。
【0032】
図2には、このようなプラスチックボトルの形態の一例が示されている。
図2において、全体として60で示されているボトルは、底部65及び胴部63を備えており、胴部の上端には、螺子部61a及びサポートリング61bを備えた首部61が形成されている。即ち、このようなボトル60において、底部65及び胴部63が、前述した発泡セル1が存在している発泡領域となっており、優れた遮光性を示す。即ち、このボトルを形成している熱可塑性樹脂に配合されている光吸収剤の吸収波長に対する全光線透過率が1%以下、特に0.5%以下に抑制されている。
【0033】
一方、口部及びその近傍に相当する首部61は、非発泡領域となっており、この領域には、発泡セルは存在していない。従って、首部61は高強度であり、優れた寸法安定性を有しており、螺子部61aでのキャップとの螺子係合を確実に且つしっかりと行うことができ、また、サポートリング61bを把持しての搬送も確実に行うことができるようになっている。
このようなプラスチックボトル60は、オレフィン系樹脂やポリエステル樹脂により好適に成形され、特にPET等のポリエステル樹脂は、このようなボトル60の成形には最適である。
【0034】
<発泡成形体の製造>
上述したプラスチックボトル60に代表される本発明の発泡成形体10は、所謂マイクロセルラー技術による発泡を利用して製造される。
尚、マイクロセルラーによる発泡とは、不活性ガスを発泡剤として樹脂に含浸させ、このガスを気泡に成長させて発泡セルを形成するという技術であり、発泡セルが小さく、しかも全体に均一に分布するという利点があり、さらには、発泡セルによる強度などの物性低下が低いという利点もある。
【0035】
即ち、所定の熱可塑性樹脂に前述した少量の吸収剤に混練して成形を行うこと及び発泡セルの大きさが所定の範囲となるように、不活性ガスの含浸量、発泡条件、延伸条件などの成形条件を調整して、本出願人がこれまで提案してきた公知の方法(例えば、特許文献1〜3やWO2009/119549など)を利用して製造することができる。
【0036】
例えば、熱可塑性樹脂に前述した少量の光吸収剤が分散されている熱可塑性樹脂組成物を用いて成形され且つ不活性ガス(例えば窒素ガスや炭酸ガスなど)が溶解しているプリフォームを用意し(ガス含浸プリフォームの調製工程)、次いで、該プリフォームの表面から不活性ガスを一部放出させ(ガス放出工程)、この後、最終的に得られる成形体の発泡領域となる部分を選択的に加熱して発泡プリフォームを得(発泡工程)、このようにして得られた発泡プリフォームを最後に延伸成形に供することにより、ボトル等の形状に延伸された発泡成形体10を得ることができる。
【0037】
ガス含浸プリフォームの調製工程において、プリフォームは、前述した熱可塑性樹脂プラスチックと所定量の光吸収剤との溶融混練物(成形用樹脂組成物)を押出成形、射出成形、圧縮成形等の公知の成形手段によって成形することにより得られるが、不活性ガスの含浸(ガスの溶解)は、成形されたプリフォームを加熱もしくは非加熱下で高圧の不活性ガス雰囲気下に置くことにより行うことができる。この温度が高いほど、ガスの溶解量は少ないが含浸速度は速く、温度が低いほどガスの溶解量は多いが、含浸には時間がかかることとなる。
また、成形機中の溶融混練部に高圧で不活性ガスを供給し、不活性ガスが溶解した成形用樹脂組成物をそのまま射出成形等の成形に供することにより、不活性ガスが含浸したプリフォームを得ることもできる。この場合、射出成形機中での発泡等を防止し且つスワルマーク等の外観不良のないプリフォームを得るためには、例えばWO2009/119549などで本出願人が提案しているように、高圧に保持された金型キャビティ内に保圧をかけながら不活性ガスが溶解した成形用樹脂組成物を射出充填することにより成形を行うことが好ましい。
【0038】
上記のようにして得られたガス含浸プリフォームは、冷却固化した状態で金型内から取り出されるが、ガス放出工程においては、このガス含浸プリフォームを、所定時間、常圧下(大気圧)に開放することにより、その表面から不活性ガスを放出させる。これにより、このプリフォームの表層部には、不活性ガスが溶解していないかあるいは不活性ガス濃度が低くなった薄い表皮層が形成され、この表皮層が前述した成形体10における非発泡の表皮層5に対応するものであり、このときの大気圧下での開放時間(実質的には次の加熱発泡を行うまでの時間)によって表皮層5の厚みを調整することができる。即ち、開放時間が長ければ表皮層5の厚みは厚くなり、開放時間が短いほど、表皮層5の厚みは薄くなる。
尚、表皮層5は、発泡領域となる部分の外面にのみ形成されていればよく、プリフォームの全体にわたってわざわざ形成するものではないため、発泡領域となる部分のみを大気に露出させ、他の部分は大気に露出しないように覆っておくなどの手段を採用し、発泡領域となる部分の外面についてのみ、選択的にガスを放出させることもできる。
【0039】
上記のガス放出に引き続いて行われる発泡工程では、成形体10の発泡領域となる部分を選択的に加熱することにより、不活性ガスの膨張によってセルを発生、成長させ、これにより発泡が行われる。発泡のための加熱温度は、樹脂のガラス転移点(Tg)以上であるが、プリフォームの熱変形を防止するため、樹脂の融点未満であることが必要である。この加熱温度が高く且つ加熱時間が長いほど、大きなセルが数多く形成されることとなる。従って、これを利用してセル密度やセルの大きさの調整を行うことができる。
【0040】
このようにして発泡セルが分布した発泡領域を有する発泡プリフォームが得られる。この発泡プリフォームの発泡領域には、
図3に示すように、多数の発泡セル1aが形成されており、外面側には、最終的に得られる表皮層5に対応する非発泡層5aが形成されている。
この
図3から理解されるように、この発泡プリフォームは延伸成形されていないため、発泡セル1aはほぼ球形状であり、扁平していない。従って、この発泡プリフォームの発泡領域では、セルが小さく且つ扁平していないことから、反射や拡散が不十分となり、目的とする高い遮光性を得ることが困難となる。勿論、ガス含浸量や発泡条件を調整して発泡セル1aを多数生成させることにより、原理的には高い遮光性を得ることができる。しかしながら、この場合には、セル密度を極めて大きくしなければならず、成形体であるボトルの強度低下やガスバリア性の低下が著しくなってしまうため、実際には延伸が必要不可欠となってしまう。
【0041】
本発明においては、上記のような発泡プリフォームを延伸することにより、前述した平均厚みt及びアスペクト比の扁平状の発泡セル1を備えた成形体10を得るわけであり、例えば、前述したガス溶解量や発泡条件(加熱温度)を調整して、球状の発泡セル1aのセル密度が1×10
6乃至1×10
9cells/cm
3程度とし且つ平均径(円相当径)が5乃至50μm程度となるように設定しておくことが好ましい。
【0042】
尚、発泡のための加熱は、熱風の吹き付け、赤外線ヒータなどによる外部加熱、オイル浴への浸漬などによって、発泡領域となる部分について選択的に行われる。
例えば、
図4には、
図2の発泡ボトル60を得るためのプリフォームの形状が示されているが、このプリフォーム50は、全体として試験管形状を有しており、その上部に螺子51a及びサポートリング51bを備えた首部51が形成されており、首部51の下方に胴部53及び底部55が形成されている。即ち、
図2の発泡ボトル60では、螺子61a及びサポートリング61bを備えた首部61は非発泡領域であるため、このプリフォーム50の首部51も非発泡領域であり、その胴部53及び底部55が発泡領域となり、上記の選択的加熱により、上述した球形状の発泡セル1aが形成されることとなる。
勿論、成形体10の全体が発泡領域とする場合には、発泡プリフォームの全体を加熱すればよい。
【0043】
上記の発泡プリフォームについて行われる延伸成形は、それ自体公知の方法で行われ、例えば、樹脂のガラス転移温度以上、融点未満の温度にプリフォームを加熱してのブロー成形或いはプラグアシスト成形に代表される真空成形などによって延伸され、目的とする発泡成形体10が得られる。
即ち、
図2に示されている形態のボトルを製造する場合には、
図4に示されているような試験管形状の発泡プリフォームを作製し、これをブロー成形に供するが、カップ形状の容器を製造する場合には、板状形状或いはシート形状の発泡プリフォーム(底部及び胴部に対応する中央部分が発泡領域となる)をプラグアシスト成形等に付すればよい。
【0044】
延伸は、例えば最大延伸方向に沿った断面での発泡セル1の厚みtやアスペクト比が前述した範囲となるように、発泡プリフォーム中の発泡セル1aの径やセル密度などに応じて、適度な延伸倍率で行われる。例えば、軸方向(高さ方向)及び周方向の二軸方向に延伸されるブロー成形では、通常、軸方向が最大延伸方向となり、この方向での延伸倍率を調整して、前述した厚みt及びアスペクト比を有する扁平状の発泡セル1が形成され且つ適当な厚みの表皮層5が形成されるようにすればよい。また、軸方向のみについて一軸方向に延伸が行われるプラグアシスト成形などでは、この方向での延伸が最大延伸方向となり、上記と同様の扁平状の発泡セル1及び表皮層5が形成されるように延伸倍率が調整されて延伸が行われる。
【0045】
このようにして得られる本発明の発泡成形体(例えばボトル)は、発泡領域である胴部の遮光性が極めて高く、内容物の光による変質を有効に防止することができる。また、光吸収剤の配合量が樹脂の透明性を損なわない程度の量であるため、所謂発泡ボトルに特有のリサイクル性も損なわれていない。
また、上述の方法は発泡ガスが含浸した非発泡プリフォームを加熱発泡させる方法を説明したが、所謂発泡射出成形法により発泡プリフォームを成形した後に加熱して延伸成形して発泡ボトルを得る事ができる。この場合においても本発明の発泡構造を満足していれば高い遮光性能を得ることができる。ただし、この方法は口部を非発泡とする事が出来ない点や、発泡セルを微細にする事が困難な点で不利である。
【0046】
また、上述した添付図面では、ボトルを例にとって本発明を説明したが、勿論、本発明の発泡成形体はボトルなどの容器に限定されるものではなく、フィルム、シート、射出成形品等、種々の形態のプラスチック成形体に本発明を適用することができる。
さらに、本発明は、高い遮光性により内容物の光による変質を有効に防止できることから、光による変質を生じる内容物(例えば各種の飲料や薬液など)の収容のための容器に最も有効に適用され、さらには、このような容器は、発泡セルの形成により、軽量性や断熱性の点でも優れている。
【実施例】
【0047】
以下の例に従って本発明を説明する。
【0048】
<実施例1>
ボトル用PET樹脂(固有粘度:0.84dl/g)100重量部に有機系のPET樹脂用遮光性マスターバッチ(ampacet製;LJ−183263)を1重量部ドライブレンドし、射出成形機に供給し、さらに射出成形機の加熱筒の途中から窒素ガスを0.15重量%供給しPET樹脂と混練して溶解させ、発泡しないよう保圧の程度を調整(保圧力60MPa、射出保圧時間22秒)して射出成形して冷却固化し、ガスは含浸しているが実質非発泡状態の試験管形状の容器用プリフォームを得た。得られたプリフォームは、発泡ガスを添加しない場合と比べると軽量化率は0%であった。
【0049】
次いで、口部を除くプリフォーム胴部を赤外線ヒータにより加熱し発泡させた後、ただちにブロー成形し、内容量が約500mlの発泡ボトルを得た。得られたボトルは口部が非発泡状態を維持しており、ボトル胴部全体に気泡が分散していた。得られたボトルの胴部ボトル高さ中央を切り出し、分光光度計UVPC−3100(SHIMAZU)と積分球を用いて全光線透過率を測定したところ、波長350〜500nmの範囲においては波長438nmで極大吸光を示し、その値は検出下限以下(検出下限;0.1%)であり、透過率が1%以下で高い隠ぺい性を有していた。ボトル胴部の高さ中央を高さ方向に沿った断面でSEM観察を行うと、扁平状セルが多数存在する様子が確認でき、平均セル厚みは5.1μm、平均アスペクト比は10.4、平均横断セル数は33.2であった。発泡ボトルの一部を切り出し、ホットプレスで溶融させ、厚み200μmの非発泡シートに再成形し、分光光度計を用いて波長438nmでの吸光係数を測定したところ、72.9cm
−1であった。再溶融成形した非発泡シートの波長438nmでの光透過率は21%であり、発泡ボトルでの光透過率から大幅に透明性が向上し、リサイクルに供するに有利であった。
【0050】
<比較例1>
実施例1において、射出機の加熱筒内で窒素ガスを供給しない以外は実施例1と同様に
ボトル成形を行った。得られたボトルの胴部の波長438nmにおける全光線透過率を測定したところ、10.5%であり、隠蔽性は不十分であった。測定部厚みは309μmであり、波長438nmでの吸光係数は73.0cm
−1であった。
【0051】
<実施例2>
実施例1において、遮光性マスターバッチ量を0.33重量部に変えた以外は実施例1と同様にボトル成形を行った。得られたボトルの胴部の波長438nmにおける全光線透過率を測定したところ、0.51%であり、高い隠蔽性を有していた。ボトル胴部断面のSEM観察を行うと、扁平状セルが多数存在する様子が確認でき、平均セル厚みは4.9μm、平均アスペクト比は10.4、平均横断セル数は32.6であった。ボトルを再溶融させて測定した波長438nmでの吸光係数は24.3cm
−1であった。
図5に波長350〜500nmにおける光透過率を示す。発泡ボトルを再溶融し、厚さ200μmの非発泡シートに成形し、波長438nmでの光透過率を測定したところ56%であり、発泡ボトルでの光透過率から大幅に透明性が向上し、リサイクルに供するに有利であった。
【0052】
<比較例2>
実施例2において、射出機の加熱筒内で窒素ガスを供給しない以外は実施例1と同様に
ボトル成形を行った。得られたボトルの胴部の波長438nmにおける全光線透過率を測定したところ、46.8%であり、透明感が強く、隠蔽性はなかった。測定部厚みは311μmであり、波長438nmでの吸光係数は24.4cm
−1であった。
図5に波長350〜500nmにおける光透過率を示す。
【0053】
<実施例3>
実施例2において、射出機の加熱筒内で供給する窒素ガス量を0.20重量%に変えた以外は実施例1と同様にボトル成形を行った。得られたボトルの胴部の波長438nmにおける全光線透過率を測定したところ、0.1%以下であり、高い隠蔽性を有していた。波長438nmでの吸光係数は24.3cm
−1であった。ボトル胴部断面のSEM観察を行うと、扁平状セルが多数存在する様子が確認でき、平均セル厚みは5.8μm、平均アスペクト比は10.2、平均横断セル数は39.0であった。
【0054】
<比較例3>
実施例2において、射出機の加熱筒内で供給する窒素ガス量を0.12重量%に変えた以外は実施例1と同様にボトル成形を行った。得られたボトルの胴部の波長438nmにおける全光線透過率を測定したところ、9.4%であり、隠蔽性は不十分であった。波長438nmでの吸光係数は24.1cm
−1であった。ボトル胴部断面のSEM観察を行うと、扁平状セルが多数存在する様子が確認でき、平均セル厚みは3.3μm、平均アスペクト比は11.3、平均横断セル数は17.2であった。
【0055】
<比較例4>
ボトル用PET樹脂(固有粘度:0.84dl/g)100重量部を射出成形機に供給し、さらに射出成形機の加熱筒の途中から窒素ガスを0.20重量%供給しPET樹脂と混練して溶解させ、発泡しないよう保圧の程度を調整して射出成形して冷却固化し、試験管形状の容器用プリフォームを得た。次いで、赤外線ヒータにより口部を除くプリフォーム胴部をボトル形状に成形可能な限りにおいて高発泡となるよう調整して加熱し発泡させた後、ただちにブロー成形し、内容量が約500mlの発泡ボトルを得た。得られたボトルの波長438nmにおける全光線透過率は6.7%であり、光に敏感な内容物を保護する目的では十分ではなかった。発泡ボトルを再溶融させて10μmおよび200μmのフィルムを作製し、表面反射の影響を除外して測定した波長438nmでの吸光係数は1cm
−1以下であった。
【0056】
<比較例5>
比較例1において供給するマスターバッチ量を3重量部に変えたこと以外は同様に非発泡ボトルを成形した。得られたボトルの胴部の波長438nmにおける全光線透過率を測定したところ、0.2%であり、測定部厚みは285μm、波長438nmでの吸光係数は225cm
−1であった。得られたボトルは隠蔽性を有していたが、ボトルを再溶融し200μmのシートに再成形して波長438nmでの光透過率を測定を測定したところ0.9%であり、高い隠ぺい性を有したままでリサイクルに供するには不適であった。