(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部に試薬配置領域を有する空間として複数のウエルが形成され、該ウエルの開口部が自己修復性機能を有するシリコーンゲルにより気密に閉塞されたマイクロプレートへの試薬供給方法であって、
先端部が針状に形成され流体放出口となる開口を有する流体放出手段と、先端部が針状に形成され流体回収口となる開口を有する流体回収手段を、同一ウエルの開口部を閉塞する自己修復機能性を有するシリコーンゲルを貫通させて上記試薬配置領域を有する空間に進入させ、上記流体放出手段と流体回収手段の上記開口を上記試薬配置領域を有する空間に連通させる第1の工程と、
上記流体放出手段から試薬を注入するとともに、上記流体回収手段から試薬を排出させることにより、試薬を上記試薬配置領域の空間に供給する第2の工程と、
試薬の供給後、上記流体放出手段と流体回収手段を上記シリコーンゲルから離脱して退避させる第3の工程からなり、
上記第2の工程において、上記流体放出手段から、マイクロプレートの試薬配置領域を有するウエルに対して複数種類の試薬が順次注入され、
上記流体回収手段は、上記ウエル中に順次注入された試薬を順次排出し、
上記複数種類の試薬には上記試薬配置領域に固定される嫌気性抗体含有溶液が含まれ、
上記試薬は、該試薬の液面レベルが、上記試薬配置領域に固定される嫌気性抗体を完全に浸漬する高さとなるように注入される
ことを特徴とするマイクロプレートへの試薬供給方法。
内部に試薬配置領域を有する空間として複数のウエルが形成され、該ウエルの開口部が自己修復性機能を有するシリコーンゲルにより気密に閉塞されたマイクロプレートの上記ウエルに対して試薬を供給する試薬供給装置であって、
上記空間に対して試薬を放出する流体放出手段と、上記空間中の試薬を排出する流体回収手段とを備え、
上記流体放出手段および上記流体回収手段はいずれも中空筒状部材からなり、当該中空状部材の先端部は閉鎖され、該先端部は針状に形成され、上記中空筒状部材の内部空洞と連通する開口部が上記中空筒状部材の円筒部側面に設けられており、
上記流体放出手段および上記流体回収手段は、上記マイクプレートの同一ウエルの開口部を閉塞する自己修復性機能を有するシリコーンゲルを貫通し、上記流体回収手段の開口部の下端の位置が流体放出手段の開口部上端の位置より上側になり、かつ、上記流体放出手段および上記流体回収手段のそれぞれの開口が上記ウエル内の上記空間に連通するように該空間へ進入し、かつ、該空間から離脱されるように構成されている
ことを特徴とするマイクロプレートへの試薬供給装置。
上記同一のウエルの開口部を閉塞する自己修復性機能を有するシリコーンゲルを貫通して上記ウエルへの進入・離脱する一対の流体放出手段および流体回収手段は、マイクロプレートに構成されている複数のウエルに対応して複数組設けられている
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマイクロプレートへの試薬供給装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明のマイクロプレートの構成例を示す。
図1に本発明に係るマイクロプレート10の模式図を示す。ここで、
図1(a)は外観図、
図1(b)は
図1(a)のA−A断面図である。
同図に示すように、本発明のマイクロプレート10は例えば、貫通孔が複数設けられた第1のマイクロプレート基板11と平板状の第2のマイクロプレート基板12とが積層・接合された構造であり、第1のマイクロプレート基板11に設けられた各貫通孔と第2のマイクロプレート基板12の接合側表面とにより各ウエル13が構成される。ウエル13の数は、例えば96個であり、容量は数μリットル〜数mリットルである。
【0015】
第1のマイクロプレート基板11は、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン:Polydimethylsiloxane)などからなるシリコーン樹脂基板であり、第2のマイクロプレート基板12はガラス基板である。
第1のマイクロプレート基板11と第2のマイクロプレート基板12との接合は、例えば、特許文献2に示されているように、両マイクロプレート基板の接合面に波長220nm以下の紫外線(例えば、キセノンエキシマランプから放出される中心波長172nmの紫外線)を照射して、紫外線が照射された接合面同士を密着させることにより行われる。
【0016】
本発明のマイクロプレート10は、各ウエル13の開口13aが、板状の自己修復性封止材14により封止された構造を有する。具体的には、シリコーン樹脂からなる板状部材15上に自己修復性封止材14が設けられている板状体16を用いて、第1のマイクロプレート基板11上面を、上記した板状体16により封止した構造を有する。
なお、以下では、上記第1の基板11と第2の基板12と板状体16から構成される部材をマイクロプレート10ということとする。
【0017】
自己修復性封止材14としては、力が印加されると変形し、力の印加を解除すると力の印加前の形状に戻るものを用いる。例えば、粘着性ゲルであるシリコーンゲルが採用される。
【0018】
以下、
図2、
図3を用いて、本発明のマイクロプレートの製造例について説明する。
図2(a)に示すように、まずシリコーン樹脂(例えば、X−32)からなる板状部材15が第1の金型71および第2の金型72により成形される。板状部材15は円柱状の窪み15bが複数設けられた構成であり、この複数の窪み15bの数、位置はマイクロプレート10の複数のウエル13の数、位置に対応している。なお、窪み15bの底板部分が
図1(b)に示すマイクロプレートの薄板部15aとなる。
【0019】
次に、
図2(b)に示すように、シリコーン樹脂15が固化後、第2の金型72が取り外される。次いで
図2(c)に示すように、シリコーン樹脂15表面の上部に設けられた凹部(窪み15b)に粘着性ゲル14(シリコーンゲルX−40−3331−2)が流し込まれる。その後、熱成形により、粘着性ゲル14とシリコーン樹脂15(X−32)とが一体化される。
【0020】
上記したように、シリコーン樹脂からなる板状部材15は円柱状の窪み15bが複数設けられた構成であるので、上記板状部材15の上部に設けられた粘着性ゲルからなる自己修復性封止材14は、複数の円柱状の凸部を有する構造となる。この円柱状の凸部は上記した板状部材15の窪み15bに対応しているので、当該円柱状の凸部の数、位置はマイクロプレート10の複数のウエル13の数、位置に対応している。
【0021】
粘着性ゲル14は接着性が強く、金型を用いた場合、金型と粘着性ゲルとが接着されて当該金型を取り外すことができない。すなわち、金型を用いた射出成形を行うことが難しい。
よって、今回は金型の代わりに、シリコーン樹脂15を用いて粘着性ゲル14を成形した。なお、シリコーン樹脂からなる板状部材15と粘着性ゲルからなる自己修復性封止材14とは、分離させず一体化させる。
【0022】
次に、
図2(d)に示すように、熱成形により粘着性ゲル(シリコーンゲル)からなる自己修復性封止材14とシリコーン樹脂(X−32)15とが一体化後、第1の金型71が取り外され、シリコーン樹脂からなる板状部材15上部に自己修復性封止材14が設けられてなる板状体16が得られる。
そして、
図2(e)に示すように、一旦、板状体16の自己修復性封止材14の上部(平面部分)に、保護用シート73(例えば、PTFE:ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂シート)が貼られる。
【0023】
次に、自己修復性封止材14が設けられたシリコーン樹脂からなる板状体16と、第1の基板11と第2の基板12との接合を行う。
まず、
図3(f)に示すように、自己修復性封止材14の上部(平面部分)に貼られた保護用シート73を剥離する。自己修復性封止材14を構成する粘着性ゲルは保護用シート73を形成するフッ素樹脂に対しては比較的接着力が弱いので、自己修復性封止材14から保護用シート73は比較的容易に剥離することが可能である。
【0024】
次いで、
図3(g)に示すように、第1のマイクロプレート基板11に自己修復性封止材14の上部(平面部分)を密着させ、加圧して両者を接着することにより、
図3(h)(
図1(b))に示すように、本発明のマイクロプレートを得る。
以下では、上記第1の基板11と第2の基板12と板状体16から構成される部材をマイクロプレート10ということとする。
なお、
図1(b)に示す本発明のマイクロプレートにおいて、自己修復性封止材14とシリコーン樹脂性の板状部材15とにより板状体16を構成した理由は、自己修復性封止材14を構成する粘着性ゲルは接着性が強く、上記したように金型を用いた射出成形を行うことが難しいためである。すなわち、金型の代替部材としてシリコーン樹脂性の板状部材15を用いて粘着性ゲルからなる自己修復性封止材14を成形する。金型同様、自己修復性封止材14とシリコーン樹脂性の板状部材15とを分離することは難しいので、両者を分離せず、そのまま板状体16として使用する。
【0025】
後で示すように、試薬供給装置の注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段を自己修復性封止材を貫通させて試薬配置領域に進入させる場合、薄板部15aは厚みが100μm以下と薄いので、注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段は、容易に上記薄板部15aを貫通することができる。
【0026】
なお、板状体16の構造は、
図1(b)に示すものに限定されるわけではない。例えば、
図4(a)に示すように、板状部材15の窪みを円柱状ではなく、マイクロプレートの複数のウエル13の開口13aを全て覆うような大きさに構成してもよい。この場合、この窪みに対応する自己修復性封止材14の凸部は、マイクロプレートの複数のウエル13の開口13aを全て覆うことが可能となる。しかしながら、
図4(a)に示す構造の場合、板状部材15の薄板部15aの面積が大きくなるので、
図1(b)に示す構造の板状体16と比較すると破損しやすいという特徴もある。
【0027】
また、
図1に示すマイクロプレートは、貫通孔が複数設けられた第1のマイクロプレート基板11と平板状の第2のマイクロプレート基板12とが積層・接合された構造であるが、これに限定されるわけではない。例えば、
図4(b)に示すように、底板部13cに複数の円筒部13bが固定され、さらに全体が支持部17により支持されるような一体構造のものであってもよい。
【0028】
図1に示す本発明の実施例のマイクロプレート10において、嫌気性抗体等の嫌気性試薬を配置することが可能な試薬配置領域は各ウエル13と自己修復性封止材14により包囲された空間であり、より具体的には各ウエル13の底面領域である。
【0029】
上記したように、本実施例のマイクロプレート10は、各ウエル13の開口13aが自己修復性封止材14により封止されている構造である。
すなわち、本発明のマイクロプレートは、自己修復性封止材14により、試薬配置領域(ウエル13)が閉塞された構造である。よって、閉塞空間内への外部からの空気の流入を防止することが可能である。
【0030】
また、後に示す試薬供給装置の注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段が上記薄板部15aと自己修復性封止材14を貫通して試薬配置領域に進入した場合においても、自己修復性封止材14は力が印加されると変形し、力の印加を解除すると力の印加前の形状に戻る性質があるので、当該自己修復性封止材14と注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段との接触部における密着性が良好であり、この接触部から外部の空気は閉塞空間である試薬配置領域に殆ど進入しない。
【0031】
また、後に示す試薬供給装置の注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段が上記薄板部15aと自己修復性封止材14を貫通後、再び離脱しても、自己修復性封止材14は力が印加されると変形し、力の印加を解除すると力の印加前の形状に戻る性質があるので、前記自己修復性封止材14を貫通、離脱する注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段により前記自己修復性封止材14に生じる孔も速やかに閉塞される。よって、注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段が自己修復性封止材14を離脱後も閉塞空間である試薬配置領域への外部からの空気の流入を防止することが可能である。
【0032】
よって、後に示す試薬供給装置の注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段を用いて、嫌気性抗体等の嫌気性試薬を試薬配置領域に固定する際、上記注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段を用いて閉塞空間である試薬配置領域内部に残留する空気を試薬溶液等でパージすることにより、殆ど空気と接触させることなく嫌気性抗体等の嫌気性試薬を試薬配置領域に配置することが可能となる。
【0033】
次に、本発明のマイクロプレートの試薬配置領域(ウエル13)に対して、殆ど空気と接触させることなく嫌気性抗体等の嫌気性試薬を供給するための試薬供給装置について説明する。
図5、
図6、
図7に、
図1のマイクロプレート10のウエル13内に嫌気性試薬(ここでは、嫌気性抗体を例に取る)を供給する試薬供給装置の構成ブロック図の例を示す。
図5に示す試薬供給装置は、試薬供給機構40、分注排出機構25、試験体保持機構20、試薬回収機構50、制御部60からなる。
図6は流体放出手段21、流体回収手段22の拡大図、
図7は、分注排出機構25に含まれる分注排出部24の詳細図である。
【0034】
I.試薬供給機構
図5に示すように、試薬供給機構40には、試薬貯蔵部41、制御バルブ42、温度制御部31、ジョイント28aが含まれる。
試薬貯蔵部41は、マイクロプレート10のウエル13に供給するための試薬を貯蔵する。
図5に示す例では、試薬貯蔵部41は、PBS貯蔵部41a、1次抗体含有溶液貯蔵部41b、抗原含有溶液貯蔵部41c、2次抗体含有溶液貯蔵部41d、酵素反応溶液貯蔵部41e、反応停止液貯蔵部41f、温度制御部33、温度制御部34からなる。
ここで、1次抗体、2次抗体は一般に低温状態にて貯蔵しておくと安定であるので、1次抗体含有溶液貯蔵部41bは温度制御部33により温度制御される。また、2次抗体含有溶液貯蔵部41dは温度制御部34により温度制御される。1次抗体、2次抗体の保存温度は、例えば4°Cである。
【0035】
試薬貯蔵部41の各貯蔵部は、三方弁からなる制御バルブ42と接続される。
図5に示す例では、試薬貯蔵部41は6つの貯蔵部から構成されるので、試薬貯蔵部41と制御バルブ42からなる配管系統は6系統となる。制御バルブ42としては三方電磁弁等が採用される。
図5において、制御バルブ42である三方弁は、a,b,cの三つのポートを持ち、ここでは、a−c流路とb−c流路とを切り替えるものとする。各制御バルブ42は、それぞれのb−c流路が一本の流路となるようにマニホールド状に接続されている。一方、各制御バルブ42のaポートは、試薬貯蔵部41にそれぞれ接続されている。また、PBS貯蔵部41aと接続されている制御バルブ42のbポートには封止用の栓が接続されていて、抗原含有溶液貯蔵部41cと接続されている制御バルブ42のcポートには、温度制御部31によって温度制御される配管に接続されている。
【0036】
すなわち、
図5に示すように、試薬貯蔵部41の6つの配管系統は最終的には1つの配管系統に統合され、温度制御部31によって温度制御される配管に接続される。各制御バルブ42の流路の切替を制御することにより、温度制御部を経由して流体放出手段からマイクロプレート10のウエル13に放出する試薬を切り替えることが可能となる。
温度制御部31は、抗体等の試薬の温度を制御するためのものであり、具体的には上記した1つの配管系統に統合された試薬貯蔵部41からの配管と接続される配管の温度を制御する。温度制御部31により温度制御される配管の一方は、上記したように試薬貯蔵部41と接続され、他方はジョイント28aにより試薬溶液注入管26と接続される。
【0037】
II.分注排出機構
図5に示すように、分注排出機構25には、分注排出部24、流体放出手段21(注射針状流体放出手段)、流体回収手段22(注射針状流体回収手段)、分注排出部駆動機構23、試薬溶液注入管26、試薬溶液排出管27が含まれる。
【0038】
流体放出手段21および流体回収手段22は、マイクロプレート10のウエル13の開口13aに設けられた板状体16における板状部材15の薄板部15aと自己修復性封止材14を貫通し、試薬をマイクロプレート10のウエル13内に放出および回収するものである。
図6に示すように、注射針状流体放出手段21は、ステンレス製の中空筒状部材からなる。注射針状流体放出手段21の先端部21bは閉鎖されており、先端部形状は、針状(例えば注射針のようにベベル形状(斜め形状))になっている。中空筒状部材の内部空洞と連通し内部空洞より供給される試薬を流路内に放出する開口部21aは、中空筒状部材の円筒部21cの側面における先端部21bにできるだけ近い部位に設けられている。以降、注射針状流体放出手段21を単に流体放出手段21と称する。
【0039】
また、
図6に示すように注射針状流体回収手段22は、流体放出手段21と同様ステンレス製の中空筒状部材からなる。流体回収手段22の先端部22bは閉鎖されており、先端部形状は、針状(例えば注射針のようにベベル形状(斜め形状))になっている。中空筒状部材の内部空洞と連通し内部空洞より供給される試薬を流体内に放出する開口部22aは、中空筒状部材の円筒部22cの側面の先端部22bにできるだけ近い部位に設けられている。以降、注射針状流体回収手段22を単に流体回収手段22と称する。
【0040】
流体放出手段21および流体回収手段22は、先端部がベベル形状となっているので、容易に板状体16における板状部材15の薄板部15aと自己修復性封止材14を貫通可能となる。さらに、先端部が閉鎖されていて、開口部が中空筒状部材の円筒部側面に設けられているので、流体放出手段21および流体回収手段22が自己修復性封止材14を貫通する際に自己修復性封止材14の切屑はほとんど発生せず、また、開口部が自己修復性封止材14の切屑により詰まることもない。
【0041】
流体放出手段21および流体回収手段22は、マイクロプレート10の1つのウエル13に試薬を放出および回収するものである。すなわち、1つのウエル13に一組の流体放出手段21および流体回収手段22が対応する。そのため、複数のウエル13を有するマイクロプレート10に対して、ウエル13の数に対応した複数組の流体放出手段21および流体回収手段22が準備される。
なお、マイクロプレート10の各ウエル13においては、試薬が十分に拡散されることが好ましいので、流体放出手段21の開口部21aと流体回収手段22の開口部22aとは、互いに対向しないように設定される。例えば、
図5、
図6に示すように、流体放出手段21の開口部21aと流体回収手段22の開口部22aは、それぞれがウエル13の側面側壁部に面するように設定される。
【0042】
分注排出部24は、複数の流体放出手段21に一度に試薬を供給し、複数の流体回収手段22からの廃液を一度に回収するためのものである。
図7に分注排出部24の構成例を示す。同図に示すように、分注排出部24は、流体放出用マニホールド24a、流体回収用マニホールド24b、ジョイント28cから構成される。
【0043】
図7に示すように、各ウエル13に対応する複数組の流体放出手段21および流体回収手段22は、ジョイント28cによりそれぞれ流体放出用配管24cおよび流体回収用配管24dと連結される。流体放出手段21および流体回収手段22からなる各組のジョイント28cとの連結位置はマイクロプレート10の各ウエル13の位置に対応しており、ジョイント28cは複数組の流体放出手段21および流体回収手段22を一体に保持する。
【0044】
ジョイント28cに連結された複数組の流体放出手段21および流体回収手段22のうち、流体放出手段21は流体放出用配管24cを介して流体放出用マニホールド24aに連結され、流体回収手段22は流体回収用配管24dを介して流体回収用マニホールド24bに連結される。
【0045】
流体放出用マニホールド24aは内部が空洞になっており、上記したようにジョイント28cからの流体放出用配管24cと連結されるとともに試薬溶液注入管26と連結される。一方、流体回収用マニホールド24bは内部が空洞になっており、上記したようにジョイント28cと連結され流体放出用マニホールド24aを貫通した流体回収用配管24dと連結されるとともに試薬溶液排出管27と連結される。
【0046】
試薬溶液注入管26は、上記したように一方は流体放出用マニホールド24aに連結され、他方はジョイント28aを介して温度制御部31の配管と連結される。試薬溶液注入管26内を通過する試薬は、流体放出用マニホールド24aの空洞内に供給される。流体放出用マニホールド24aの空洞内に供給される試薬の流れは、当該流体放出用マニホールド24aの空洞に連結されている複数の流体放出用配管24cに分流され、ジョイント28cを介して各流体放出手段21を通過し、マイクロプレート10の各ウエル13に供給される。
なお、流体放出用マニホールド24aにおける流体放出用配管24cの貫通部分は溶接等で密閉されており、空洞内に供給される試薬が上記貫通部分から漏洩することはない。
【0047】
一方、試薬溶液排出管27は、上記したように一方は流体回収用マニホールド24bに連結され、他方はジョイント28bを介してポンプ51と連結される。試薬溶液注入管26内を通過する試薬は、流体放出用マニホールド24aの空洞内に供給される。各ウエル13から流体回収手段22により回収される試薬廃液は、ジョイント28cを介して流体回収用配管24dを流れ、流体回収用マニホールド24bの空洞内に供給される。各流体回収用配管から供給される試薬廃液は上記空洞内で合流し、試薬溶液排出管27からジョイント28bを介してポンプ51に吸引される。
【0048】
上記したように、ジョイント28cは複数組の流体放出手段21および流体回収手段22を一体に保持するが、上記ジョイント28cは流体放出用配管24cを介して流体放出用マニホールド24aと連結されるとともに流体回収用配管24dを介して流体回収用マニホールド24bと連結されているので、ジョイント28c、流体放出用マニホールド24a、流体回収用マニホールド24bは一体に構成される。
上記した構造から明らかなように、流体放出用マニホールド24a、流体回収用マニホールド24b、ジョイント28cからなる分注排出部24は、マイクロプレート10の複数の各ウエル13に対して一括して試薬を供給・回収可能な構造を有する。
【0049】
ここで、分注排出部24は分注排出部駆動機構23により、上下方向に駆動される。上記したように、流体放出用マニホールド24a、流体回収用マニホールド24bとともに一体に構成されるジョイント28cは、複数組の流体放出手段21および流体回収手段22を一体に保持しているので、分注排出部24を駆動することにより、複数組の流体放出手段21および流体回収手段22も一括して駆動される。
すなわち、分注排出部駆動機構23は、複数組の流体放出手段21および流体回収手段22がマイクロプレート10の各ウエル13の開口13aに設けられた板状体16における板状部材15の薄板部15aと自己修復性封止材14を一括して貫通して当該マイクロプレート10のウエル13内に進入するように分注排出部24を駆動したり、複数組の流体放出手段21および流体回収手段22が上記板状体16における板状部材15の薄板部15aと自己修復性封止材14を経由して完全にマイクロプレート10から離脱するように分注排出部24を駆動する。
【0050】
分注排出部駆動機構23は、例えば、複数組の流体放出手段21および流体回収手段22とそれぞれ流体放出用配管および流体回収用配管とを接続するジョイント28cに連結される。
このように、分注排出部24は分注排出部駆動機構23により上下方向に駆動されるので、分注排出部24の液体放出用マニホールド24aに接続される試薬溶液注入管26や分注排出部24の液体回収用マニホールド24bに接続される試薬溶液排出管27も、これらの動作に対応可能なようにそれぞれ可撓管から構成される。
【0051】
III.試験体保持機構
図5に示すように、試験体保持機構20は、温度制御部32を備える温調ステージ35からなる。温調ステージ35は試験体であるマイクロプレート10が載置されるとともに、マイクロプレート10の温度を調整する機能を有する。具体的には、温度制御部32により温調ステージ35の温度を制御して、温調ステージ35に載置されるマイクロプレート10の温度を調整する。
【0052】
IV.試薬回収機構
図5に示すように、試薬回収機構50には、ジョイント28b、ポンプ51、廃液槽52が含まれる。
上記したように、ジョイント28bを介して試薬溶液排出管27と連結されるポンプ51は、試薬貯蔵部41に貯蔵されている試薬を流体放出手段21を介してマイクロプレート10の各ウエル13内に供給させ、当該ウエル13内の試薬の少なくとも一部を廃液槽52に送出するためのものであり、ポンプ51から送出される試薬(廃液)は廃液槽52に貯蔵される。
【0053】
V.制御部
制御部60は、試薬供給機構40に属する制御バルブ42、温度制御部33、温度制御部34、温度制御部31と、分注排出機構25に属する分注排出部駆動機構23と、試験体保持機構20の温度制御部32と、試薬回収機構50に属するポンプ51の動作を制御する。
【0054】
VI.マイクロプレートのウエル13内への1次抗体Ig1の固定手順
図1(a)に示すマイクロプレート10の各ウエル13内への1次抗体Ig1の固定は、例えば、以下のように行われる。この固定手順については、
図5、
図6、
図7、
図8を参照しながら説明する。
【0055】
(1)注射針状流体放出手段21、注射針状流体回収手段22のマイクロプレート10へのセッティング
試験体であるマイクロプレート10が温調ステージ35に載置される。なお、温調ステージ35へのマイクロプレート10の載置は作業者が行っても良いし、図示を省略した公知の搬送機構を用いてもよい。なお、搬送機構を用いる場合、搬送機構の制御は上記した制御部60が行ってもよい。
【0056】
なお、マイクロプレート10が温調ステージ35に載置されるのに先立って、温調ステージ35の温度制御部32は、制御部60の指令に基づき、温調ステージ35の温度が所定の温度となるように制御する。この所定の温度とは、温調ステージ35に載置されるマイクロプレート10の温度が予め定められた温度に到達させるための温度である。予め定められた温度とは、例えば、25〜37°Cである。
同様に、制御部60の指令に基づき、
図5に示す温度制御部31は、予め温度制御部31の配管の温度が所定の温度となるように制御する。この所定の温度とは、温度制御部31の配管を通過したときの試薬の温度が予め定められた温度に到達させるための温度である。予め定められた温度とは、例えば、25〜37°Cである。
【0057】
制御部60の指令に基づき、分注排出部駆動機構23は、分注排出部24を所定の位置まで下側に駆動する。
図8(a)に示すように、この駆動により、複数組の流体放出手段21(注射針状流体放出手段)の開口部21aおよび流体回収手段22(注射針状流体回収手段22)の開口部22aはマイクロプレート10の各ウエル13の開口13aに設けられた板状体16における板状部材15の薄板部15aと自己修復性封止材14を一括して貫通して当該マイクロプレート10の各ウエル13内に進入する。なお、上記した所定の位置とは、複数組の流体放出手段21および流体回収手段22の先端部がマイクロプレート10の第2のマイクロプレート基板12に接触しない位置である。
なお、
図6、
図7に示すように、ジョイント28cは、複数組の流体放出手段21および流体回収手段22において、流体回収手段22の開口部22aの下端の位置が流体放出手段21の開口部21a上端の位置より上側になるように保持している。
【0058】
(2)PBSによるウエル13内洗浄
図5において、各制御バルブ42の流路は、b−c流路に設定されているものとする。
制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、PBS貯蔵部41aに繋がる配管系統(以下、PBS配管系統と称する)に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
【0059】
次いで、制御部60はポンプ51の駆動を開始する。これにより、まず流体回収手段22の開口部22aからマイクロプレート10の各ウエル13内の空気が吸引され、その後、PBS貯蔵部41aに貯蔵されているPBSがPBS配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、その他の制御バルブ42のb−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26、液体放出用マニホールド24a、流体放出用配管24cを経由して流体放出手段21の開口部21aからマイクロプレート10の各ウエル13内にPBSが流入する。
各ウエル13内に流入したPBSの液面が流体回収手段22の開口部22aに到達すると、PBSは流体回収手段22の開口部22aから吸引され、流体回収用配管24d、液体回収用マニホールド24b、試薬溶液排出管27を経由して廃液槽52に送出される。
以上の手順により、
図8(b)に示すように、各ウエル13内にて各ウエル13を洗浄するためのPBSの流れが発生する。
【0060】
(3)1次抗体Ig1固定
洗浄が一定時間行われたあと、制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、PBS配管系統に属する制御バルブ42の流路をb−c流路に切り替えるとともに、1次抗体含有溶液を貯蔵する1次抗体含有溶液貯蔵部41bに繋がる配管系統(以下、PAB配管系統と称する)に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
なお、PBSでの洗浄時間(上記した一定時間)、PBS配管系統およびPAB配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。
【0061】
このような流路切替により、分注排出部24の各流体回収手段22の開口部22aからマイクロプレート10の各ウエル13内に残留しているPBSが吸引されるとともに、1次抗体含有溶液がPAB配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、抗原含有貯蔵部に繋がる配管系統(以下、AC配管系統と称する)に属する制御バルブ42のb−c流路、2次抗体含有溶液貯蔵部41dに繋がる配管系統(以下、SAB配管系統と称する)に属する制御バルブ42のb−c流路、酵素反応溶液貯蔵部41eに繋がる配管系統(以下、ERS配管系統と称する)に属する制御バルブ42のb−c流路、反応停止駅貯蔵部に繋がる配管系統(以下、RS配管系統と称する)に属する制御バルブ42のb−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26を経由して分注排出部24の各流体放出手段21の開口部21aからマイクロプレート10の各ウエル13内に流入する。なお、PBS貯蔵部41aと接続されている制御バルブ42のbポートには封止用の栓が接続されているので、1次抗体含有溶液は、PBS配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側には流れない。
【0062】
なお、1次抗体含有溶液貯蔵部41bにおいて、例えば4°Cである低温状態にて貯蔵されていた1次抗体含有溶液は、
図5に示す温度制御部31によって温度制御されている、温度制御部31の配管を通過することにより、例えば25〜37°Cに加熱される。
上記したように、温調ステージ35に載置されるマイクロプレート10の温度は、温度制御部32に温度制御される温調ステージ35により例えば25〜37°Cに維持されているので、マイクロプレート10の各ウエル13内に流入した抗体含有溶液の温度が下がることはない。
【0063】
以上の手順により、
図8(c)に示すように、分注排出部24の流体放出手段21の開口部21aからマイクロプレート10の各ウエル13内に注入された1次抗体含有溶液は、当初は1次抗体含有溶液流入前に各ウエル13内に残存するPBSと混合されながら各ウエル13内を通過し、分注排出部24の流体回収手段22の開口部22aから各ウエル13外部へと排出され廃液槽52に送られる。やがて、徐々にPBSの濃度は減少し、最終的にはほぼ1次抗体含有溶液からなる流れが各ウエル13内にて発生する。上記したように、マイクロプレート10は、例えばポリスチレンからなる表面が疎水性である材料から構成されるので、1次抗体含有溶液中の1次抗体Ig1は、疎水結合によりウエル13底面(第2のマイクロプレート基板12表面)に吸着される。
【0064】
上記したように、ジョイント28cは、複数組の流体放出手段21および流体回収手段22において、流体回収手段22の開口部22aの下端の位置が流体放出手段21の開口部21a上端の位置より上側になるように保持しているので、各ウエル13内を流れる1次抗体含有溶液の液面レベルは、流体回収手段22の開口部22a下端の位置となる。
ここで上記液面レベルが少なくとも各ウエル13底面に固定される1次抗体Ig1が1次抗体含有溶液により完全に浸漬される高さとなるように流体回収手段22の開口部22aの下端の位置を設定しておくことにより、各ウエル13底面に固定される抗体Ig1は空気には接触しない。
【0065】
すなわち、手順(1)における流体放出手段21、流体回収手段22のセッティングは、流体回収手段22の開口部22aの下端の位置、流体放出手段21の開口部21aの位置が上記したような位置に設定されるように行われる。
【0066】
(4)PBSによるウエル13内洗浄
ある一定時間経過し、各ウエル13底面に1次抗体Ig1が固定されたあと、制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、PAB配管系統に属する制御バルブ42の流路をb−c流路に切り替えるとともに、PBS配管系統に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
なお、各ウエル13底面に1次抗体Ig1が固定されるまでの1次抗体含有溶液が各ウエル13内を流れる時間(上記したある一定時間)、AB配管系統およびPBS配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。
【0067】
このような流路切替により、分注排出部24の流体回収手段22の開口部22aから各ウエル13内の残留している1次抗体含有溶液が吸引されるとともに、PBSがPBS配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、その他の制御バルブ42のb−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26を経由して分注排出部24の流体放出手段21の開口部21aからマイクロプレート10の各ウエル13内に流入する。
【0068】
以上の手順により、
図8(d)に示すように、各ウエル13底面に固定された1次抗体Ig1表面に残留していた固定されていない1次抗体Ig1や、各ウエル13底面以外の領域に残留していた1次抗体Ig1は、PBSとともに試薬溶液排出管27により外部へ排出される。
【0069】
ジョイント28cは、複数組の流体放出手段21および流体回収手段22において、流体回収手段22の開口部22aの下端の位置が流体放出手段21の開口部21a上端の位置より上側になるように保持しているので、各ウエル13内を流れるPBSの液面レベルは、流体回収手段22の開口部22a下端の位置となる。この液面レベルは、各ウエル13底面に固定される1次抗体Ig1がPBSにより完全に浸漬される高さに設定してあるので、各ウエル13底面に固定される抗体は空気には接触しない。
【0070】
上記した(1)〜(4)の手順により、マイクロプレート10の各ウエル13底面に1次抗体Ig1が固定される。
上記した手順から明らかなように、手順(2)において、各ウエル13内がPBSに洗浄されて以降、各ウエル13底面は常にPBS、1次抗体含有溶液中に浸漬される。手順(3)における各ウエル13底面への1次抗体Ig1固定は、ウエル13底面およびその近傍に空気が残留していない条件下で1次抗体Ig1に空気が接触することなく行われる。また手順(4)における各ウエル13底面に固定されていない1次抗体Ig1の排出も、各ウエル13底面に固定されている抗体Ig1に空気が接触することなく行われる。
これは、上記したように、各ウエル13内を流れる試薬の液面レベルが、各ウエル13底面に固定される1次抗体Ig1が当該試薬により完全に浸漬される高さとなるように流体回収手段22の開口部22aの下端の位置を設定したためである。
【0071】
すなわち、本発明のマイクロプレート10を用いた試薬供給装置は、マイクロプレート10の試薬配置領域に、空気を接触させることなく嫌気性抗体等の嫌気性試薬を供給することが可能となる。すなわち、マイクロプレート10の試薬配置領域に嫌気性抗体を失活させることなく固定することが可能となる。
【0072】
また、マイクロプレート10の各ウエル13への試薬の供給は、制御部60、試薬供給機構40、試薬回収機構50により機械的に実施しているので、ばらつき無く安定にマイクロプレート10の各ウエル13への試薬の供給を行うことができる。すなわち、試薬の注入スピードも一定となり、当該注入スピードを適宜調整することにより、各ウエル13内での試薬の乱れを小さくして抗体Ig1の一部が傾いたり、倒れた状態でウエル13の底面に1次抗体Ig1が吸着されることを抑制することができる。よって、ウエル13底面に吸着される1次抗体Ig1の配向性も良好にすることができ、1次抗体Ig1固定後に行う抗体抗原反応の結果のばらつきを小さくすることが可能となる。
【0073】
なお、マイクロプレート10としては、本発明の各ウエル13の開口13aが、板状部材15とともに板状体16を構成する例えばシリコーンゲルからなる自己修復性封止材14により封止されている構造を有するものを用いたので、本発明の試薬供給装置の流体放出手段21、流体回収手段22が板状体16における板状部材15の薄板部15aと自己修復性封止材14を貫通して試薬配置領域に進入した場合においても、自己修復性封止材14は力が印加されると変形し、力の印加を解除すると力の印加前の形状に戻る性質があるので、当該自己修復性封止材14と流体放出手段21、流体回収手段22との接触部における密着性が良好であり、この接触部から外部の空気は閉塞空間である試薬配置領域に殆ど進入しない。
【0074】
VII.マイクロプレート10の各ウエル13内の抗原測定手順
上記したマイクロチップへの抗体固定に引き続き、固定された抗体に対して抗原を供給して抗体抗原反応を発生させ、抗原を測定する場合は、例えば、以下の手順を実施する。ここでは、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法のサンドイッチ法に準拠した測定について述べる。
【0075】
(5)1次抗体抗原反応
上記した手順(4)において、洗浄が一定時間行われたあと、制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、PBS配管系統に属する制御バルブ42の流路をb−c流路に切り替えるとともに、抗原含有溶液を貯蔵する抗原含有溶液貯蔵部41cに繋がる配管系統(AC配管系統)に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
なお、PBSでの洗浄時間(上記した一定時間)、PBS配管系統およびAC配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。
【0076】
このような流路切替により、分注排出部24の流体回収手段22の開口部22aからマイクロプレート10の各ウエル13内の残留しているPBSが吸引されるとともに、抗原含有溶液がAC配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、SAB配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路、ERS配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路、RS配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26を経由して分注排出部24の流体放出手段21の開口部21aからマイクロプレート10の各ウエル13内に流入する。なお、PBS貯蔵部41aと接続されている制御バルブ42のbポートには封止用の栓が接続されているので、抗原含有溶液は、PAB配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側、およびPBS配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側には流れない。
なお、抗原含有溶液は、
図5に示す温度制御部31によって温度制御されている温度制御部31の配管を通過することにより、例えば25〜37°Cに加熱される。
【0077】
以上の手順により、
図9(e)に示すように、分注排出部24の流体放出手段21の開口部21aからマイクロプレート10の各ウエル13内に注入された抗原含有溶液は、当初は抗原含有溶液流入前に各ウエル13内に残存するPBSと混合されながら各ウエル13を通過し、分注排出部24の流体回収手段22の開口部22aから各ウエル13外部へと排出され廃液槽52に送られる。やがて、徐々にPBSの濃度は減少し、最終的にはほぼ抗原含有溶液からなる流れが各ウエル13内にて発生する。抗原含有溶液中の抗原Agは、各ウエル13の底面に固定されている1次抗体Ig1と抗体抗原反応を行い化学的に結合する。
なお、上記したように、手順(1)における分注排出部24の流体放出手段21、流体回収手段22のセッティングにより、1次抗体抗原反応は、空気が存在しない抗原含有溶液中で行われる。
上記したように、温調ステージ35に載置されるマイクロプレート10の温度は、温度制御部32に温度制御される温調ステージ35により例えば25〜37°Cに維持されているので、マイクロプレート10の各ウエル13内にて行われる抗体抗原反応は、25〜37°Cの温度条件にて行われる。この温度条件は、ヒトの体温に準じたものである。
【0078】
(6)PBSによる各ウエル13内洗浄
ある一定時間経過し、抗体抗原反応が完了したあと、制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、AC配管系統に属する制御バルブ42の流路をb−c流路に切り替えるとともに、PBS配管系統に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
なお、抗体抗原反応が完了するまでの抗原含有溶液が各ウエル13内を流れる時間(上記したある一定時間)、AC配管系統およびPBS配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。
【0079】
このような流路切替により、分注排出部24の流体回収手段22の開口部22aからマイクロプレート10の各ウエル13内の残留している抗原含有溶液が吸引されるとともに、PBSがPBS配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、その他の制御バルブ42のb−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26を経由して分注排出部24の流体放出手段21の開口部21aからマイクロプレート10の各ウエル13内に流入する。
以上の手順により、
図9(f)に示すように、各ウエル13内に残留していた抗体抗原反応に寄与しなかった抗原Agは、PBSとともに試薬溶液排出管27により外部へ排出される。
【0080】
(7)2次抗体抗原反応
洗浄が一定時間行われたあと、制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、AC配管系統に属する制御バルブ42の流路をb−c流路に切り替えるとともに、2次抗体含有溶液を貯蔵する2次抗体含有溶液貯蔵部41dに繋がる配管系統(SAB配管系統)に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
なお、PBSでの洗浄時間(上記した一定時間)、PBS配管系統およびSAB配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。
【0081】
このような流路切替により、分注排出部24の各流体回収手段22の開口部22aからマイクロプレート10の各ウエル13内に残留しているPBSが吸引されるとともに、2次抗体含有溶液がSAB配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、酵素反応溶液貯蔵部41eに繋がる配管系統(ERS配管系統)に属する制御バルブ42のb−c流路、反応停止液貯蔵部41fに繋がる配管系統(RS配管系統)に属する制御バルブ42のb−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26を経由して分注排出部24の各流体放出手段21の開口部21aからマイクロプレート10の各ウエル13内に流入する。
なお、PBS貯蔵部41aと接続されている制御バルブ42のbポートには封止用の栓が接続されているので、2次抗体含有溶液は、AC配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側、PAB配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側、およびPBS配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側には流れない。
【0082】
なお、2次抗体含有溶液貯蔵部41dにおいて、例えば4°Cである低温状態にて貯蔵されていた抗体含有溶液は、
図5に示す温度制御部31によって温度制御されている温度制御部31の配管を通過することにより、例えば25〜37°Cに加熱される。
上記したように、温調ステージ35に載置されるマイクロプレート10の温度は、温度制御部32に温度制御される温調ステージ35により例えば25〜37°Cに維持されているので、マイクロプレート10の各ウエル13内に流入した抗体含有溶液の温度が下がることはない。
【0083】
以上の手順により、
図9(g)に示すように、分注排出部24の流体放出手段21の開口部21aからマイクロプレート10の各ウエル13内に注入された2次抗体含有溶液は、当初は2次抗体含有溶液流入前に各ウエル13内に残存するPBSと混合されながら各ウエル13内を通過し、分注排出部24の流体回収手段22の開口部22aから各ウエル13外部へと排出され廃液槽52に送られる。やがて、徐々にPBSの濃度は減少し、最終的にはほぼ2次抗体含有溶液からなる流れが各ウエル13内にて発生する。
【0084】
2次抗体含有溶液中の2次抗体Ig2は、1次抗体Ig1と結合している抗原Agと抗体抗原反応を行い化学的に結合する。すなわち、抗原Agは、1次抗体Ig1と2次抗体Ig2とによりサンドイッチ状に挟まれた状態で当該1次抗体Ig1および2次抗体Ig2と結合する。なお、2次抗体Ig2としては予め酵素標識されているものが使用され、2次抗体Ig2と抗原Agとが抗体抗原反応により結合した結果、上記酵素は1次抗体抗原Ag、2次抗体Ig2からなる複合体の上側(表面側)に位置する。
【0085】
なお、上記したように、マイクロプレート10は、例えばポリスチレンからなる表面が疎水性である材料から構成されるので、2次抗体含有溶液中の2次抗体Ig2の一部は抗原Agとは結合せず、疎水結合によりウエル13底面(第2のマイクロプレート基板12表面)に吸着されることになる。よって、実際にはマイクロプレート10の各ウエル13内に2次抗体含有溶液を注入する前に2次抗体Ig2がウエル13底面と結合しないようにブロッキング処理を施す必要がある。本実施例では、理解を容易にするためにブロッキング処理工程を省略している。すなわち、本実施例においては、仮想的に2次抗体Ig2は抗原Ag以外とは結合しないものとする。
【0086】
上記したように、ジョイント28cは、複数組の流体放出手段21および流体回収手段22において、流体回収手段22の開口部22aの下端の位置が流体放出手段21の開口部21a上端の位置より上側になるように保持しているので、各ウエル13内を流れる抗体含有溶液の液面レベルは、流体回収手段22の開口部22a下端の位置となる。
ここで上記液面レベルが各ウエル13底面に固定されている1次抗体Ig1と結合した抗原Agと結合した2次抗体Ig2が2次抗体含有溶液により完全に浸漬される高さとなるように流体回収手段22の開口部22aの下端の位置を設定しておくことにより、1次抗体Ig1と結合した抗原Agと抗体抗原反応をする2次抗体Ig2は、結合反応中空気には接触しない。
【0087】
すなわち、1次抗体Ig1と結合した抗原Agと2次抗体Ig2とを抗体抗原反応により結合させる場合、手順(1)における流体放出手段21、流体回収手段22のセッティングは、流体回収手段22の開口部22aの下端の位置、流体放出手段21の開口部21aの位置が上記したような位置に設定されるように行われる。
【0088】
(8)PBSによるウエル13内洗浄
ある一定時間経過し、1次抗体Ig1と結合した抗原Agと酵素標識された2次抗体Ig2との抗体抗原反応が完了したあと、制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、SAB配管系統に属する制御バルブ42の流路をb−c流路に切り替えるとともに、PBS配管系統に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
なお、上記した抗体抗原反応が完了するまでの抗原含有溶液が各ウエル13内を流れる時間(上記したある一定時間)、SAB配管系統およびPBS配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。
【0089】
このような流路切替により、分注排出部24の流体回収手段22の開口部22aからマイクロプレート10の各ウエル13内に残留している2次抗体含有溶液が吸引されるとともに、PBSがPBS配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、その他の制御バルブ42のb−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26を経由して分注排出部24の流体放出手段21の開口部21aからマイクロプレート10の各ウエル13内に流入する。
【0090】
以上の手順により、
図9(h)に示すように、各ウエル13内に残留していた抗体抗原反応に寄与しなかった2次抗体Ig2は、PBSとともに試薬溶液排出管27により外部へ排出される。
【0091】
ジョイント28cは、複数組の流体放出手段21および流体回収手段において、流体回収手段22の開口部22aの下端の位置が流体放出手段21の開口部21a上端の位置より上側になるように保持しているので、流路内を流れるPBSの液面レベルは、流体回収手段22の開口部22a下端の位置となる。この液面レベルは、1次抗体Ig1と結合した抗原と結合した2次抗体がPBSにより完全に浸漬される高さに設定してあるので、各ウエル13底面に固定される抗体は空気には接触しない。
【0092】
(9)酵素反応溶液の注入
洗浄が一定時間行われたあと、制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、PBS配管系統に属する制御バルブ42の流路をb−c流路に切り替えるとともに、酵素反応溶液を貯蔵する酵素反応溶液貯蔵部41eに繋がる配管系統(ERS配管系統)に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
なお、PBSでの洗浄時間(上記した一定時間)、PBS配管系統およびERS配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。
【0093】
このような流路切替により、分注排出部24の流体回収手段22の開口部22aからマイクロプレート10の各ウエル13内の残留しているPBSが吸引されるとともに、酵素反応溶液がERS配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、RS配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26を経由して分注排出部24の流体放出手段21の開口部21aからマイクロプレート10の各ウエル13内に流入する。
なお、PBS貯蔵部41aと接続されている制御バルブ42のbポートには封止用の栓が接続されているので、抗原含有溶液は、SAB配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側、AC配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側、PAB配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側、およびPBS配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側には流れない。
【0094】
以上の手順により、
図10(i)に示すように、分注排出部24の流体放出手段21の開口部21aからマイクロプレート10の各ウエル13内に注入された酵素反応溶液は、当初は酵素反応溶液流入前に各ウエル13内に残存するPBSと混合されながら各ウエル13を通過し、分注排出部24の流体回収手段22の開口部22aから各ウエル13外部へと排出され廃液槽52に送られる。やがて、徐々にPBSの濃度は減少し、最終的にはほぼ酵素反応溶液からなる流れが各ウエル13内にて発生する。
【0095】
酵素反応溶液は、酵素と酵素反応を発生して反応生成物となる。ここでは、酵素反応により蛍光を発生する酵素反応溶液を用いることにする。
すなわち、酵素と酵素反応を起こした酵素反応溶液は、蛍光を発生する反応生成物となり酵素近傍で蛍光を発生する。
なお、酵素反応溶液の液面レベルは、1次抗体Ig1と結合した抗原Agと結合した2次抗体Ig2がPBSにより完全に浸漬される高さとなるので、酵素反応溶液と酵素反応を起こす酵素は空気には接触しない。
【0096】
(10)反応停止液の注入
酵素と酵素反応液との酵素反応が一定時間行われたあと、制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、ERS配管系統に属する制御バルブ42の流路をb−c流路に切り替えるとともに、反応停止液を貯蔵する反応停止液貯蔵部41fに繋がる配管系統(RS配管系統)に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
なお、酵素反応時間(上記した一定時間)、ERS配管系統およびRS配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。上記した酵素反応時間は、例えば、30分〜数時間の値に設定される。
【0097】
このような流路切替により、分注排出部24の流体回収手段22の開口部22aからマイクロプレート10の各ウエル13内の残留している酵素反応溶液が吸引されるとともに、反応停止液がRS配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26を経由して分注排出部24の流体放出手段21の開口部21aからマイクロプレート10の各ウエル13内に流入する。なお、PBS貯蔵部41aと接続されている制御バルブ42のbポートには封止用の栓が接続されているので、抗原含有溶液は、ERS配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側、SAB配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側、AC配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側、PAB配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側、およびPBS配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側には流れない。
【0098】
以上の手順により、
図10(j)に示すように、分注排出部24の流体放出手段21の開口部21aからマイクロプレート10の各ウエル13内に注入された酵素反応溶液は、当初は反応停止液流入前に各ウエル13内に残存する酵素反応溶液と混合されながら各ウエル13を通過し、分注排出部24の流体回収手段22の開口部22aから各ウエル外部へと排出され廃液槽52に送られる。やがて、徐々に酵素反応溶液の濃度は減少し、最終的にはほぼ反応停止液からなる流れが各ウエル13内にて発生する。
【0099】
反応停止液は、酵素反応を停止させるものである。反応停止液を加えることにより、蛍光が安定する。
なお、反応停止液の液面レベルは、1次抗体Ig1と結合した抗原Agと結合した2次抗体Ig2がPBSにより完全に浸漬される高さとなるので、酵素反応の停止は、空気には接触せず行われる。
【0100】
上記した(5)〜(10)の手順により、マイクロプレート10の各ウエル13の底面に固定された抗原が供給され、抗体抗原反応を発生し、ELISA法のサンドイッチ法に基づき酵素反応による蛍光を発生させることができる。すなわち、抗原測定が可能な状態となる。
上記した手順から明らかなように、手順(5)における1次抗体抗原反応は、各ウエル13底面に固定されている1次抗体Ig1に空気が接触することなく行われる。また、手順(6)における流路内に残留していた抗体抗原反応に寄与しなかった抗原の排出も1次抗体Ig1に空気が接触することなく行われる。
同様に、手順(7)における次抗体抗原反応は、各ウエル13内の1次抗体抗原、2次抗体が空気に接触することなく行われる。また、手順(8)における各ウエル13内に残留していた2次抗体抗原反応に寄与しなかった2次抗体Ig2の排出、手順(9)における酵素反応、手順(10)における酵素反応停止も各ウエル13内の1次抗体Ig2、抗原Ag、2次抗体Ig2が空気に接触することなく行われる。
これは、上記したように、各ウエル13内を流れる試薬の液面レベルが、1次抗体Ig1と結合した抗原Agと結合した2次抗体Ig2が当該試薬により完全に浸漬される高さとなるように流体回収手段22の開口部22aの下端の位置を設定したためである。
【0101】
すなわち、本発明のマイクロプレート10を用いた試薬供給装置は、マイクプレートの試薬配置領域に、空気を接触させることなく抗原や2次抗体を供給することが可能となる。すなわち、マイクロプレート10の各ウエル13の底面に固定されている1次抗体を失活させることなく1次抗原抗体反応を発生させることや、2次抗体を失活させることなく2次抗原抗体反応を発生させることが可能となる。
【0102】
また、マイクロプレート10の各ウエル13への試薬の供給は、制御部60、試薬注入機構、試薬回収機構50により機械的に実施しているので、ばらつき無く安定にマイクロプレート10の各ウエル13への試薬の供給を行うことができる。
【0103】
(11)注射針状流体放出手段21、注射針状流体回収手段22のマイクロプレート10からの離脱
反応停止液注入が一定時間行われたあと、制御部60は、RS配管系統に属する制御バルブ42の流路をb−c流路に切り替える。なお、反応停止液の注入時間(上記した一定時間)、RS配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。
【0104】
次いで制御部60はポンプ51の駆動を停止する。これにより、マイクロプレート10の流路内におけるほぼ反応停止液からなる流れが停止する。上記したように、分注排出部24の流体回収手段22(注射針状流体回収手段)の開口部の下端の位置は、分注排出部24の流体放出手段21(注射針状流体放出手段)の開口部上端の位置より上側になるようにセットされているので、各ウエル13内の反応停止液の液面レベルは、流体回収手段22の開口部22a下端の位置となる。
ここで上記液面レベルが1次抗体と結合した抗原と結合した2次抗体が反応停止液により完全に浸漬される高さとなるように流体回収手段22の開口部22aの下端の位置が設定されているので、1次抗体抗原、2次抗体は空気には接触しない。
【0105】
制御部60の指令に基づき、分注排出部駆動機構23は、分注排出部24の複数組の流体放出手段21および流体回収手段22を所定の位置まで上側に駆動する。
図10(k)に示すように、この駆動により、複数組の流体放出手段21の開口部21aおよび流体回収手段22の開口部22aは、マイクロプレート10の各ウエル13を離脱する。なお、上記した所定の位置とは、分注排出部24の複数組の流体放出手段21および流体回収手段22がマイクロプレート10の各ウエル13の開口13aに設けられた板状体16における板状部材15の薄板部15aと自己修復性封止材14を経由して完全にマイクロプレート10から離脱するような位置である。
【0106】
なお、マイクロプレート10の板状体16における板状部材15の薄板部15aと自己修復性封止材14を貫通していた流体放出手段21、流体回収手段22が自己修復性封止材14を経由して離脱しても、自己修復性封止材14は力が印加されると変形し、力の印加を解除すると力の印加前の形状に戻る性質があるので、前記板状体16における板状部材15の薄板部15aと自己修復性封止材14を貫通、離脱する流体放出手段21、流体回収手段22により薄板部15aに生じる孔は維持されるものの、前記自己修復性封止材14に生じる孔は速やかに閉塞される。よって、流体放出手段21、流体回収手段22が自己修復性封止材14を離脱後も各ウエル13内への外部からの空気の流入は防止される。
【0107】
温調ステージ35に載置されていたマイクロプレート10が、抗原状態を測定するために各ウエル13内での蛍光の測定するためのマイクロプレートリーダーへ搬出される。なお、マイクロプレートリーダーへのマイクロプレート10の搬出は作業者が行っても良いし、図示を省略した公知の搬送機構を用いてもよい。なお、搬送機構を用いる場合、搬送機構の制御は上記した制御部60が行ってもよい。搬出されたマイクロプレート10は、自己修復性封止シート15が剥がされてマイクロプレートリーダーの測定領域に設置される。
【0108】
引き続き、次なるマイクロプレート10への抗体固定等を行わない場合、温調ステージ35の温度制御部32は、制御部60の指令に基づき、温調ステージ35の温度制御を停止する。同様に、制御部60の指令に基づき、
図5に示す温度制御部31は、温度制御部31の配管の温度制御を停止する。
【0109】
なお、上記説明では、マイクロプレート10への試薬の供給を制御部60の制御により、自動的に行う場合について説明したが、上記手順の操作の一部あるいは全部を人がマニュアルで行うようにしてもよい。