【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
最初に、肥料粒子を作成した。まず、塩化アンモニウム94質量%と水6質量%とを混合し、スラリー状とした肥料原料を複数の直径3mmの半球状の窪みを有する1対のプレスロールに該窪みの体積の2倍量を投入し、該プレスロールで押し固め板状の塩化アンモニウムを得た。次に、上記板状の塩化アンモニウムの両面から、1対の解しロールを用いて断続的に衝撃を与えながら解し、凹凸のある塩化アンモニウム粒子(A群)を得た。
【0040】
また、比較例として上記方法で得られた肥料粒子の水分を蒸発させた後、転動装置内で転動させ整粒し、粉化した塩化アンモニウムを篩い落とすことで球状の塩化アンモニウム粒子(B群)を得た。
【0041】
次に前記塩化アンモニウム粒子の形状を測定し、凹凸係数を算出した。測定は凹凸のある塩化アンモニウム粒子(A群)と球状の塩化アンモニウム粒子(B群)について行い、また、塩化アンモニウム粒子の比重を1.53g/cm
3として計算を行った。形状を測定した結果から凹凸係数(V1/V2)を求め、表1(A群)及び表2(B群)にそれぞれ肥料粒子1個を1サンプルとして20サンプルの結果を、また、
図3(A群)及び
図4(B群)にサンプル約2〜3gについて測定を行った際の凹凸係数の分布をそれぞれ示した。表1に示すA群の平均凹凸係数は0.28、表2に示すB群の平均凹凸係数は0.62であった。 また、
図3に示すようにA群の肥料粒子は100質量%が凹凸係数0.05〜6の範囲内であったが、B群の肥料粒子は凹凸係数0.05〜6の範囲内のものは、約47質量%であった。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
次に、上記の塩化アンモニウム粒子表面に被覆膜の形成を行った。被覆膜を形成するために用いた被覆材を以下に記載する。
【0045】
(使用した被覆材)
[被覆材A]
以下の成分1、成分2をイソシアネート基/水酸基=1.0となるように調製したウレタン樹脂液。
(成分1)
MDI変成ひまし油(ひまし油を過剰量のMDIと混合してイソシアネート基の質量を全質量の19質量%としたイソシアネート基末端プレポリマー)
(成分2)
aとbを水酸基のモル比=8:2で混合した混合液
a:ひまし油(水酸基価160mgKOH/g)
b:エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物(プロピレンオキサイド/窒素原子の比;2.2、水酸基価;760mgKOH/g)
【0046】
[被覆材B]
上記被覆材Aと同様の成分1、成分2をイソシアネート基/水酸基=0.8となるように調製したウレタン樹脂液。
【0047】
[実施例1]
上記A群の平均凹凸係数が0.28の塩化アンモニウムの粒子(粒径2.0〜10.0mm)1.2kgを直径300mmのドラム型転動被覆装置に仕込み、20rpmで転動させながら、熱風発生機により粒状塩化アンモニウムの温度を70℃に保持した。
【0048】
次に、第1層目の被覆層を形成させるために前記被覆材A(合計31.4g)を装置内に10秒かけて添加した。
【0049】
次に、第1層目の被覆層の添加から5分後に第2層目の被覆層として第1層目と同一成分、同一量の被覆材Aを装置内に10秒かけて添加し、第2層目の被覆層の添加から5分後に第3層目の被覆層として第2層目と同一成分、同一量の被覆材Aを装置内に10秒かけて添加した。
【0050】
さらに、第3層目の添加から5分後に、第4層目の被覆層として被覆材B(合計13.5g)を装置内に10秒かけて添加した。被覆材Bの添加から7分後には第4層目の被覆層は粘着性をほとんど失い、被覆された塩化アンモニウム粒子同士が粘着することはなくなった。
【0051】
次に、30分間転動させ、該塩化アンモニウム上の被覆膜を硬化させた。これを常温(約25℃)まで冷却し、目的の短期溶出性被覆粒状肥料を得た。なお、このとき塩化アンモニウム粒子群の平均膜厚は26μmで、短期溶出型の溶出パターンを示した。
【0052】
得られた短期溶出性被覆粒状肥料の膜厚を測定し表3にそれぞれ記載した。
【0053】
[膜厚の測定]
得られたサンプルの断面を、走査型電子顕微鏡により観察し、被覆膜の厚さを計測した。尚、この時、被覆膜が局所的に欠損するピンホール欠陥を有するものについては不良品として除外した。
【0054】
【表3】
【0055】
[実施例2]
第1層目、第2層目および第3層目の前記被覆材Aの添加量を合計23.9gとした以外は実施例1と同様の方法で短期溶出性被覆粒状肥料を得た。このとき塩化アンモニウム粒子群の平均膜厚は26μmで、初期溶出を抑制でき短期溶出型の溶出パターンは示した。
【0056】
[比較例1]
上記B群の平均凹凸係数が0.62の塩化アンモニウムの粒子(粒径2.8〜4.0mm)1.2kgを直径300mmのドラム型転動被覆装置に仕込み、20rpmで転動させながら、熱風発生機により塩化アンモニウム温度を70℃に保持した。
【0057】
次に、第1層目の被覆層を形成させるために前記被覆材A(合計13.7g)を装置内に10秒かけて添加した。
【0058】
次に、第1層目の被覆層の添加から5分後に第2層目の被覆層として第1層目と同一成分、同一量の被覆材Aを装置内に10秒かけて添加した。
【0059】
さらに、第2層目の添加から5分後に、第3層目の被覆層として被覆材B(合計6.9g)を装置内に10秒かけて添加した。被覆材Bの添加から7分後には第3層目の被覆層は粘着性をほとんど失い、被覆された塩化アンモニウム同士が粘着することはなくなった。
【0060】
次に、30分間転動させ、該塩化アンモニウム上の被覆膜を硬化させた。これを常温(約25℃)まで冷却し短期溶出性被覆粒状肥料を得た。なお、このとき塩化アンモニウム粒子群の平均膜厚は16μmで、短期溶出型の溶出パターンを示したが、被覆膜に欠陥が多く生じ、初期溶出を抑制することができなかった。
【0061】
[比較例2]
第1層目および第2層目の前記被覆材Aの添加量を合計18.0gとした以外は比較例1と同様の方法で短期溶出性被覆粒状肥料を得た。このとき塩化アンモニウム粒子群の平均膜厚は20μmで、初期溶出を抑制することはできたが、短期溶出型の溶出パターンは示さなかった。
【0062】
[比較例3]
第1層目および第2層目の前記被覆材Aの添加量を合計20.8gとした以外は比較例1と同様の方法で短期溶出性被覆粒状肥料を得た。このとき塩化アンモニウム粒子群の平均膜厚は24μmで、初期溶出を抑制することはできたが、短期溶出型の溶出パターンは示さなかった。
【0063】
[溶出試験]
得られた短期溶出性被覆粒状肥料を縮分して溶出試験を行い、その結果を表4に示した。溶出試験は縮分した短期溶出性被覆粒状肥料のうち12.5gを採取して250ccのイオン交換水に投入し、25℃の恒温槽内に保存して所定時間経過後に取り出し、水中に溶出した溶出成分を定量して求めた。なお、表2には、それぞれ1日、3日、7日、14日、21日、28日、35日経過した時の塩化アンモニウムの溶出率(質量%)を示した。
【0064】
【表4】
【0065】
実施例1および実施例2より、凹凸係数が0.05〜0.6の肥料粒子を用いることにより、該肥料粒子表面に所望の被覆膜を形成でき、短期溶出性被覆粒状肥料の初期溶出を抑制し、さらに短期溶出型の溶出パターンを達成することがわかった。
【0066】
また、比較例1〜比較例3は、楕円形状で表面に目立った凹凸がないもので凹凸係数は0.62であった。
【0067】
また、比較例1は実施例1および実施例2と同程度の短期溶出型パターンを目指したものであるが、実施例1および実施例2よりも平均膜厚が薄いにも関わらず、実施例1よりも長期間溶出する溶出パターンを示し、実施例2と同等の長期溶出パターンを示しているものの初期溶出が抑制できなかった。また、比較例1は膜厚の薄さに起因して被覆時に被覆膜の欠陥が多数生じ、初期溶出を抑制することが困難であった。
【0068】
また、比較例2は実施例1および実施例2と同程度の初期溶出の抑制を行ったものであるが、比較例1と同様に、実施例1および実施例2よりも平均膜厚が薄いにも関わらず、実施例1および実施例2よりも長期間溶出する溶出パターンを示した。また、被覆膜は実施例1および実施例2及び比較例1と比べると均一に被覆されていた。
【0069】
また、比較例3は実施例1および実施例2と同程度の平均膜厚を示すものであり、初期溶出の抑制には優れている一方で、比較例1、比較例2と同様、実施例1および実施例2よりも長期間溶出する溶出パターンを示した。また、比較例2と同様、被覆膜は均一に被覆されていた。
【0070】
以上より、凹凸係数が0.05〜0.6の肥料粒子を用いて被覆粒状肥料を形成することにより、被覆膜に平均膜厚より薄い部分を形成させることが可能となり、初期溶出を抑制しながら、短期溶出型の溶出パターンを達成することが可能となることが明らかとなった。