(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
眼鏡レンズを保持する一対のレンズチャック軸と、前記レンズチャック軸の片方を他方側であるチャック方向に移動させて眼鏡レンズをチャックするレンズチャックユニットと、を備える眼鏡レンズ加工装置において、
前記レンズチャックユニットは、
第1端部と第2端部とを有する板バネであって、チャック方向に移動される前記レンズチャック軸の後端側に前記第1端部が連結された板バネと、
前記板バネの第1端部と第2端部との間の中点部及び前記第2端部の一方を支点として、前記板バネのバネ力が働く方向であるチャック方向に前記板バネを回転可能に支える回転支持部と、
駆動源を持ち、前記回転支持部によって支持された前記板バネの回転で前記第1端部をチャック方向に移動させるように、前記中点部及び前記第2端部の他方を移動させる移動手段と、
前記板バネのバネ力が働く方向への変形を検出する検出器と、有し、
装置は、前記板バネのバネ力によって所定のチャック圧で眼鏡レンズがチャックされるように、前記検出器の検出結果に基づいて前記駆動源の駆動を制御する制御手段を備えることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図8は本実施形態に係る眼鏡レンズ加工装置の構成について説明する図である。
【0011】
<概要>
本発明の実施形態に係る眼鏡レンズ加工装置の概要について説明する。本実施形態に関わる眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡レンズを保持する一対のレンズチャック軸102R,102Lと、片方のレンズチャック軸を他方のレンズチャック軸側に移動させて眼鏡レンズをチャックするレンズチャックユニット400、制御手段(制御部)50、を備える。また、眼鏡レンズ加工装置は、チャック方向に移動されるレンズチャック軸102R,102Lをチャック方向に移動可能に、且つ回転可能に保持するチャック軸保持ユニット(レンズ保持部)100を備える。
【0012】
レンズ保持部100は、レンズチャック軸と共にチャック方向に移動されるようにレンズチャック軸の後端側に取り付けられた移動ベース430を有する。移動ベース430には、レンズチャック軸102Rを回転可能に支える軸受けが設けられている。
【0013】
また、レンズ保持部100は、レンズチャック軸を回転するためのレンズ回転ユニット100Aを有する。例えば、レンズ回転ユニット100A(第1回転ユニット100Aa,第2回転ユニット100Ab)は、モータ120,115とモータ120,115の回転をレンズチャック軸102R,102Lに伝達する回転伝達機構(例えば、第1回転ユニット100Aaの場合、ギア121、ギア123)とを有する。例えば、第1回転ユニット100Aaは、移動ベース430に搭載される。
【0014】
レンズチャックユニット400は、片方のレンズチャック軸102Rを他方のレンズチャック軸102L側に移動させて眼鏡レンズをチャックする。
【0015】
レンズチャックユニット400は板バネ420を備える。板バネ420は、第1端部420aと第2端部420bとを有し、チャック方向に移動されるレンズチャック軸102Rの後端側に第1端部420aが連結される。
【0016】
また、レンズチャックユニット400は、板バネ420の第1端部420aと第2端部420bとの間の中点部及び第2端部420bの一方を支点として、板バネ420のバネ力が働く方向であるチャック方向に板バネ420を回転可能に支える回転支持部を備える。例えば、回転支持部としては、突起部418aとシャフト418が挙げられる。
【0017】
例えば、中点部としては、第1端部420aと第2端部420bとの間に位置さればよく、板バネ420の中心部でなくてもよい。
【0018】
また、レンズチャックユニット400は、駆動源(例えば、モータ410)を持ち、シャフト418によって支持された板バネ420の回転で第1端部420aをチャック方向に移動させるように、中点部及び第2端部420bの他方を移動させる移動手段(移動機構)410Aを備える。
【0019】
また、レンズチャックユニット400は、板バネ420のバネ力が働く方向への変形を検出する検出器を有する。制御部50は、板バネ420のバネ力によって所定のチャック圧で眼鏡レンズがチャックされるように、検出器の検出結果に基づいて、モータ410の駆動を制御する。
【0020】
例えば、検出器は、板バネ420に取り付けれ、移動手段によって板バネと共に回転されるように配置される。例えば、検出器としては、マイクロスイッチ440や圧力検出素子(ロードセル、ピエゾ等)が挙げられる。
【0021】
レンズチャックユニット400は、第1端部420a、中点部、第2端部420bの1つが板バネ420の長手方向へのスライド移動を不能に連結され、他の2つが板バネ420の長手方向へのスライド移動を可能に連結されている。
【0022】
例えば、レンズチャックユニット400は、板バネ420の長手方向へのスライド移動を不能に連結するための第1連結部を備える。また、レンズチャックユニット400は、板バネ420のスライド移動を可能にするための第2連結部を備える。
【0023】
例えば、第1連結部としては、前記板バネのバネ力が働く方向に回転可能に支持する支持部材を有する。例えば、第1連結部としては、連結部416Aが挙げられる。また、例えば、支持部材としては、シャフト416が挙げられる。なお、第1連結部は、移動ベース430のレンズチャック軸回りの回転を規制する規制機構を兼ねている。
【0024】
また、例えば、第2連結部としては、板バネ420のバネ力が働く方向で板バネ420を両側から挟み込む第1突起部415a及び第2突起部415bであって、板バネをバネ力が働く方向に傾斜可能に挟み込む第1突起部415a及び第2突起部415bを有する。
【0025】
制御部50は、検出器の検出結果に基づいて所定の第1チャック圧で眼鏡レンズをチャックするように移動手段の移動を制御した後、第1チャック圧より大きな所定の第2チャック圧で眼鏡レンズがチャックするように移動手段の移動を制御する。
【0026】
例えば、第2チャック圧としては、検出器によって板バネ420の所定の変形状態が検出された後、第2端部420b側を所定量移動させることによって、板バネ420にバネ力を発生させ、そのバネ力によって生じるチャック圧が挙げられる。
【0027】
以上のようにして、弾性力によるレンズLEを挟持することによって、レンズチャック軸の先端の押圧ゴム等の変形によって、チャッキング力が変化した場合であっても、板バネの変形量に対して、押圧ゴム等の変形量が微小であるため、チャック力の低下を抑制することができる。
【0028】
制御部50は、眼鏡レンズを所定のチャック圧でチャックさせた後、モータ410への電流供給を停止し、モータ410の駆動を停止する。
【0029】
このような構成によって、本チャック時にモータ410に対して常時電流を流してチャック圧をコントロールする必要が無いため、制御が複雑にならず、また、モータ410の負荷が軽減され、装置の故障の発生の可能性が低減される。
【0030】
<実施例>
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は眼鏡レンズ加工装置の加工機構部の概略構成図である。
【0031】
加工装置本体1は、被加工レンズLEを保持する一対のレンズチャック軸を有するレンズ保持部100と、レンズの屈折面形状(レンズの前面及び後面)を測定するためにレンズ屈折面に接触する測定子260を備えるレンズ形状測定ユニット200と、レンズの周縁を加工するためのレンズ加工具168が取り付けられた加工具回転軸161aを回転する加工具回転ユニット300と、を備える。
【0032】
レンズ保持部100は、レンズ回転ユニット100A、レンズチャックユニット400、X方向移動ユニット(チャック軸移動ユニット)100b、Y方向移動ユニット(軸間距離変動ユニット)100cと、を備える。
【0033】
レンズ回転ユニット100A(第1回転ユニット100Aa,第2回転ユニット100Ab)は、一対のレンズチャック軸102L、102Rを回転させるために用いられる。レンズチャックユニット400は、レンズLEを挟持(チャッキング)するために用いられる。X方向移動ユニット100bは、一方のレンズチャック軸102Lに対してもう一方のレンズチャック軸102Rをレンズチャック軸102L側に移動させるために用いられる。レンズチャック軸102L、102Rの軸方向をX方向とする。Y方向移動ユニット100cは、レンズチャック軸102L、102Rと加工具回転軸161aとの軸間距離が変動する方向(これをX方向とする)に、レンズチャック軸102L、102Rを移動させるために用いられる。
【0034】
Y方向移動ユニット100cは、レンズチャック軸102L、102Rと測定子260との距離を変動する方向にレンズLEを相対的に移動するレンズ移動ユニットと兼用される。レンズチャック軸102L、102Rは、レンズLEの形状測定時及びレンズLEの周縁の加工時に前後左右方向(XY方向)に移動される。なお、Y方向移動ユニット100cとしては、相対的にレンズチャック軸102L、102Rに対して加工具回転軸161aを移動する機構であっても良い。また、X方向移動ユニット100bは、相タ的に加工具回転軸161a(レンズ加工具168)をX方向に移動する機構であっても良い。
【0035】
以下、加工装置本体1の具体例を詳細に説明する。加工装置本体1のベース170上にはレンズ保持部100が搭載されている。
【0036】
<レンズ保持部>
レンズ保持部100のキャリッジ101の左腕101Lにレンズチャック軸102Lが回転可能に保持されている。また、キャリッジ101の右腕(レンズチャック軸保持部)101Rにレンズチャック軸102Rが回転可能に、且つX方向に移動可能で、レンズチャック軸102Lと同軸の関係に保持されている。
【0037】
レンズチャック軸102Lの先端は、レンズLEに取り付けられた図示無きカップが取り付け可能な構成(カップホルダを有する構成)となっている。また、レンズチャック軸102Rの先端には、結合部材105を介して、レンズ押さえ部材(例えば、押圧ゴム)106が取り付けられた構成となっている。
【0038】
レンズチャック軸102Rは、レンズチャックユニット400によって、右腕101Rに取り付けられた駆動源であるモータ410によりレンズチャック軸102L側に移動され、レンズLEが2つのレンズチャック軸102Rにより保持(チャック)される。
【0039】
以下、レンズチャックユニット400の構成を説明する。
図2は、レンズチャックユニット400の斜視図を示している。
図3は、レンズチャックユニット400の側面図(
図2の矢印SAから見た図)を示している。
図4は、
図2の斜視図をC−C'で切断した際の断面図を示している。また、
図5(a)、(b)は、レンズチャックユニット400の動作を説明する図である。
図5(a)はレンズチャック軸102Rがその後端方向へ移動されている状態を示す図である。
図5(b)はレンズチャック軸102Rがその先端方向へ移動されている状態を示す図である。
【0040】
レンズチャック軸102Rの後端側(キャリッジ101の右腕101より後端側)に、移動ベース430が取り付けられている。移動ベース430に、レンズチャック軸102Rを回転させるための回転ユニット100Aa(モータ120)が搭載されている。移動ベース430内では、ベアリング(軸受け)431を介してレンズチャック軸102Rが回転可能にされている(
図4参照)。
【0041】
レンズチャック軸102Rは、シャフト418を支点として弾性力(バネ力)を持つ板バネ420を梃子の原理で回転移動させることによって、レンズチャック軸102L側に移動される。板バネ420は第1端部420aと第2端部420bを有する。第1端部420aは、移動ベース430の後部(すなわち、レンズチャック軸102Rの後端側)で、連結部416Aを構成するシャフト416によって連結されている。
図2〜
図5の実施例では、シャフト416は、レンズチャック軸102Rの軸方向に直交する方向であって、シャフト418と同じ方向に延び、第1端部420aに取り付けられている。シャフト416がその軸回りに回転可能に移動ベース430に保持されることによって、連結部416Aが構成されている。この連結部416Aは、シャフト416によって板バネ420の長手方向(第1端部420aと第2端部420bとを結ぶ方向)への板バネ420のスライド移動を不能に連結している。
【0042】
板バネ420の第1端部420aと第2端部420bとの間の中点部には、板バネ420が梃子の原理で回転されるときの支点となる支点部材としてのシャフト418が位置する。板バネ420は、シャフト418との接点を支点として、板バネ420のバネ力(付勢力)が働く方向(チャック方向)に回転可能に支えられている。この実施例では、右腕101Rから延びたブロック101RAであって、レンズチャック軸102の後方に延びたブロック101RAに、シャフト418が配置されている。また、板バネ420を挟んでシャフト418に対向する位置のブロック101RAに突起部418aが形成されている。板バネ420は、シャフト418と突起部418aとの間に挟み込まれるように配置されている。支点部材のシャフト418と突起部418aは、板バネ420のバネ力が働く方向であるチャック方向に板バネ420を回転可能に支える回転支持部として構成されている。また、支点部材のシャフト418と突起部418aは、板バネ420が回転されたときに、板バネ420がその長手方向にスライド移動可能にし、且つ板バネ420をバネ力が働く方向に傾斜可能に連結する連結部418Aとして構成されている。シャフト418は、突起部418aと同様に突起部として構成しても良い。
【0043】
板バネ420の第2端部420b側には、シャフト418を支点として板バネ420の第1端部420aをチャック方向(
図2のB方向)に移動するように、第2端部420b側を移動する移動機構410Aが配置されている。移動機構410Aは、右腕101Rの内部に設けられたモータ410と、モータ410の回転軸に連結された送りネジ412と、送りネジ412の回転によって送りネジ412の軸方向に移動されるナット414と、ナットに形成された連結部415Aであって、板バネ420の第2端部420bが連結される連結部415Aと、を備える。この実施例では、送りネジ412の軸はレンズチャック軸102Rと平行に配置されている。連結部415Aは、第2端部420bを板バネ420のバネ力が働く方向で両側から挟み込むと共に、板バネ420をその長手方向にスライド移動可能に、且つ傾斜可能に支える2つの突起部415a及び415bを備える。突起部415aと突起部415bは、第2端部420bを挟んで対向するようにナット414に形成されている。第2端部420bは突起部415aと突起部415bとの間に挿入される。突起部415a及び415bは、連結部418Aと同様に、シャフトで構成される場合も含む。
【0044】
なお、実施例では、第2端部420b側にナット414を挿入するための切り欠き421が形成されている。
図5(a)、(b)では、切り欠き421によって形成された一方の第2端部420bが図示されている。
図5(a)、(b)に図示された突起部415aと突起部415bは、送りネジ412を挟んで反対側にも同様な構造のものがナット414に形成されている。切り欠き421によって形成されもう一方の第2端部420bも、同様な構造の突起部415aと突起部415bとの間に挿入されている。
【0045】
図5は、レンズチャックユニット400の動作について説明する図である。モータ410が回転駆動(正転)されることにより、送りネジ412が回転する。ナット414は、送りネジ412の回転によって、送りネジ412の軸方向(
図2のA方向)に移動する。ナット414の移動によって、連結部415AもA方向に移動する。それに伴って、板バネ420は、シャフト418を支点として下方にスライドしながら回転(傾斜角度を変更)していく。これによって、板バネ420の第1端部420aがチャック方向(B方向)に移動する。すなわち、ナット414の連結部415Aを力点、シャフト418を支点(中心点)、シャフト416の連結部416Aを作用点として、梃子の原理で板バネ420が回転される。板バネ420の回転によって第1端部420aの連結部416Aがレンズチャック軸102Rの先端方向に直線移動されることによって、第1端部420aに連結されたベース430がB方向へ移動される。ベース430がB方向に移動されることによってレンズチャック軸102RがB方向に移動される。これによって、
図5(a),(b)に示すように、レンズチャック軸102L側にレンズチャック軸102Rが移動し、レンズLEをチャッキング(挟持)することが可能となる。
【0046】
なお、レンズチャックユニット400には、板バネ420の弾性変形(板バネ420のバネ力が働く方向への変形)を検出するための検出器(センサ)としてのマイクロスイッチ440が配置されている。この実施例では、マイクロスイッチ440は、仮チャック(レンズ周縁加工前に2つのレンズチャック軸102L、102RによってレンズLEが落下しないように保持するためのチャック圧)を検出するために用いられる(詳細は後述する)。マイクロスイッチ440は、取り付け部材445を介して、板バネ420に取り付けられ、シャフト418の位置を支点として板バネ420と一緒に回転される。板バネ420に対する取り付け部材445の取り付け位置は、板バネ420が梃子として作用する際に、シャフト418(支点)の位置より第1端部420a側の位置とされている。取り付け部材445は、板バネ420の長手方向に沿った形状で構成されており、マイクロスイッチ440はシャフト418(支点)の位置より第2端部420b側の部分の変形状態を検出できる位置に配置されている。これは、移動機構415Aによって移動される第2端部420b側の方が第1端部420a側よりも板バネの弾性変形の変化が大きく、その変形状態を検出しやすいためである。
【0047】
また、レンズチャック軸102Rが初期位置(レンズチャック軸102Rの後端側)に移動されたことを検出するための検出器(センサ)としてのマイクロスイッチ460が、右腕101Rに設けられている。例えば、モータ410が回転駆動(逆回転)され、レンズチャック軸102RがレンズLE挟持を開放するように、A方向に移動を行っていくと、マイクロスイッチ460の接点部461は、ナット414と接触した状態となる。これによって、後述する制御部50は、板バネ420が初期位置に位置すると判定し、モータ410の回転駆動を停止させる。これによって、板バネ410と連結されるレンズチャック軸102RがレンズLEを挟持前の初期位置に復帰させることが可能となる。
【0048】
<レンズチャック軸回転ユニット>
レンズチャック軸102Rを回転するレンズ回転ユニット100Aaは、モータ120、回転伝達機構としてのギア121、ギア123を備える。モータ120は、移動ベース430に取り付けられている。レンズチャック軸102Rと同軸にギア123が固定されている。モータ120が回転駆動することによって、モータ120の回転軸に取り付けられたギア120aが回転する。ギア120aの回転は、ギア120を介して、ギア123に伝達される。これによりレンズチャック軸102Rが回転される。また、レンズチャック軸102Lにおいても、レンズチャック軸102Lを回転駆動させるためのモータを備えるレンズ回転ユニット100Abが左腕101Lの内部に設けられている。レンズ回転ユニット100Aa及び100Abの各モータは、同期して駆動される。すなわち、レンズチャック軸102L及び102Rは、同期して回転駆動をする。これらにより、レンズチャック軸回転ユニットが構成される。
【0049】
なお、本実施例では、レンズチャック軸102Rの後端側に移動ベース430が回転するように設けられている。しかし、前述の板バネ420を持つレンズチャックユニット400の構成により、板バネ420及び連結部416Aが移動ベース430のレンズチャック軸回りの回転を規制する規制機構を兼ねるようになっている。これにより、レンズチャック軸回転ユニットの構成部材を簡略化し、その組み立て作業を容易にすることができる。
【0050】
<キャリッジX軸移動機構、Y軸移動機構>
キャリッジ101は、レンズチャック軸102R,102L及び砥石スピンドル161aと平行に延びるシャフト103,104に沿って移動可能なX軸移動支基140に搭載されている。支基140の後部には、シャフト103と平行に延びる図示なきボールネジが取り付けられており、ボールネジはX軸移動用モータ145の回転軸に取り付けられている。モータ145の回転により、支基140と共にキャリッジ101がX方向(レンズチャック軸の軸方向)に直線移動される。これによりX方向移動ユニット100bが構成される。モータ145の回転軸にはキャリッジ101のX方向の移動を検出する検出器であるエンコーダ146が設けられている。
【0051】
支基140には、レンズチャック軸102R,102Lと砥石回転軸161aとを結ぶ方向に延びるシャフト156が固定されている。シャフト103を中心にしてレンズチャック軸102R,102Lと砥石回転軸161aとの軸間距離が変動される方向(Y方向)へと移動されるY方向移動ユニット100cが構成されている(
図5参照)。本装置のY方向移動ユニットは、レンズチャック軸102R,102Lがシャフト103を中心に回旋される構成であるが、レンズチャック軸102R,102Lと砥石回転軸161aとの距離は直線的に変化される構成であっても良い。
【0052】
支基140にはY軸移動用モータ150が固定されている。モータ150の回転はY方向に延びるボールネジ155に伝達され、ボールネジ155の回転によりキャリッジ101はY方向に移動される。これにより、Y方向移動ユニット100cが構成される。モータ150の回転軸には、キャリッジ101のY方向の移動を検出する検出器であるエンコーダ158が備えられている。
【0053】
<レンズ形状測定ユニット>
図1において、キャリッジ101の上方であって、キャリッジ101を介してレンズ加工具168と反対方向の位置には、レンズ前後面の屈折面形状を測定する測定子260を備えるレンズ形状測定ユニット200が設けられている。レンズ形状測定ユニット200は、測定子260の先端がレンズチャック軸102R,102LのY方向の移動軌跡L上に位置されるように、レンズチャック軸102R、102Lに対する傾斜角度が決定されている(
図6参照)。測定子260がレンズチャック軸102R,102Lの移動軌跡L上に置かれることで、レンズ保持部100によるレンズLEの移動を利用してレンズ前後面の形状測定が行われるようになる。
【0054】
<レンズ加工具>
一方、ベース部170上において、キャリッジ101を挟んで対向する側(反対側)には、レンズ加工具168が設置されている。レンズ加工具168は、ガラス用粗砥石162、レンズにヤゲンを形成するV溝(ヤゲン溝)VG及び平坦加工面を持つ仕上げ用砥石164、平鏡面仕上げ用砥石165、プラスチック用粗砥石166などから構成されており、モータ160で回転される砥石スピンドル(砥石回転軸)161aに同軸に取り付けられている。キャリッジ101が持つレンズチャック軸(レンズ回転軸)102L、102Rに挟持された被加工レンズLEはレンズ加工具168に圧接されてその周縁加工がされる。
【0055】
図6に眼鏡レンズ加工装置の側面図を示す。以上のような構成の眼鏡レンズ加工装置1は、レンズ加工具168の回転軸161a、レンズ保持部100のレンズチャック軸102R,102L及びレンズ形状測定ユニット200の測定子260が、シャフト103を軸(中心)とした同一軌跡L上に配置されている。これによりレンズ保持部100のY方向移動ユニット100cの駆動によって、レンズ保持部100(レンズチャック軸102R,102L)が前後方向(Y方向)に移動されることで、測定子260によるレンズ形状測定とレンズ加工具168によるレンズ周縁加工の両方の位置合わせが行われる。
【0056】
<制御部>
図7は、眼鏡レンズ周縁加工装置の制御ブロック図である。制御部50には、スイッチ部7、メモリ51、レンズ回転ユニット100A、X軸移動用モータ145、Y軸移動用モータ150、モータ160、レンズ形状測定ユニット200、レンズチャックユニット400(モータ410、マイクロスイッチ440、マイクロスイッチ460)、タッチパネル式の表示手段及び入力手段としてのディスプレイ5等が接続される。制御部50はディスプレイ5が持つタッチパネル機能により入力信号を受け、ディスプレイ5の図形及び情報の表示を制御する。またここでは眼鏡レンズ周縁加工装置に眼鏡枠形状測定部2(特開平4−93164号公報等に記載したものを使用できる)が接続されており、眼鏡枠形状測定部2で取得された玉型データに基づきレンズ形状測定時の予測制御が行えるようにしている。
【0057】
<制御動作>
以上のような構成を持つ眼鏡レンズ加工装置において、レンズチャック軸102L、102Rによるレンズのチャック動作を中心に説明をする。まず、レンズの周縁加工に際して、眼鏡枠形状測定部2により得られた玉型データ(動径長rn、動径角θn)(n=1、2、…、N)が入力され、ディスプレイ5のキー操作で装用者の瞳孔間距離(PD値)、眼鏡枠の枠中心間距離(FPD値)、玉型の幾何中心に対する光学中心の高さ等のレイアウトデータが入力される。また、ディスプレイ5のキー操作でレンズの材質、フレームの種類、加工モード(ヤゲン加工、平加工、溝掘り加工)等の加工条件が設定される。
【0058】
加工に必要なデータ入力が完了したら、作業者は、加工準備として図示無きカップの取り付けられたレンズLEをレンズチャック軸102Lに取り付け、スイッチ部7のチャックスイッチを押してレンズLEをレンズチャック軸102L、102Rにより挟持させる。チャックスイッチの信号によりモータ410が駆動されるが、この段階のレンズLEのチャック圧は、仮止めのチャック圧(例えば、10kg)で脱落しない程度の弱いチャック圧とされる。加工条件等は、レンズLEを仮チャックした後でも変更できる。
【0059】
ここで、仮チャック完了を検出する制御について説明する。
図8はレンズチャックユニット400の仮チャック制御について説明する図である。
図8は、
図2のレンズチャックユニット400の斜視図をS方向から見た場合のレンズチャックユニット400の側面図を示している。
【0060】
制御部50は、仮チャックを検出するために、マイクロスイッチ440の検出結果に基づいて、板バネ420の変形(変形量)を検出する。マイクロスイッチ440が板バネ420に固定されることによって、板バネ420の回転移動に合わせて、マイクロスイッチ440が板バネと一緒に回転移動される。
【0061】
レンズチャック軸102Rの先端側がレンズLEに当接される前は、マイクロスイッチ440と板バネ420の関係は、マイクロスイッチ440のスイッチ部441が板バネ420と接触した状態となっている(
図8(a)参照)。これによって、マイクロスイッチ440のスイッチ441が、常に、板バネ420によって、押し込まれた状態(スイッチON状態)となっている。制御部50は、モータ410を回転駆動させ、レンズチャック軸102Rをレンズチャック軸102L側へ移動させる。レンズチャック軸102Rの移動中は、板バネ420の変形はされず、板バネ420とレンズチャック軸102Rとの関係は、一定に保たれている。すなわち、レンズチャック軸102Rの移動中は、板バネ420によって、マイクロスイッチ440のスイッチ441が押し込まれた状態となる。
【0062】
そして、モータ410の回転によって板バネ420が回転されると、レンズチャック軸102Rの先端の押圧ゴム106は、レンズチャック軸102Lで支持された状態のレンズLEの他方の片面を押圧する。そして、モータ410がさらに回転すると、第1端部420aは移動されず、板バネ420が変形され、板バネ420がマイクロスイッチ440のスイッチ441から外れた状態(スイッチOFF状態)となり、マイクロスイッチ440がこれを検出する(
図8(b)参照)。これにより、制御部50は、板バネ420の変形を検出することができる。制御部50は、板バネ420の変形を検出すると、仮チャックが完了したと判定し、モータ410の回転駆動を停止させる。以上のようにして、仮チャックが完了される。
【0063】
加工に必要なデータ入力及び仮チャックが完了したら、スイッチ部7の加工スタートスイッチを押して、加工を実行する。加工スタートスイッチが押されると、制御部50は、再度、モータ410を回転駆動させることによって、本チャックを行う(レンズLEの周縁加工に適するチャック圧でレンズLEをチャックする)。例えば、制御部50は、一定時間、モータ410を回転駆動させることによって、ナット414をA方向(
図2参照)に一定量移動させる。これによって、板バネ420が一定の変形量(例えば、3mm)で変形された状態(板バネ420にバネ力を発生させた状態)となり、板バネ420の弾性力がレンズチャック軸102Rを介して、レンズLEのチャッキング力として作用する。すなわち、板バネ420の変形によって生じる第2チャック圧であって、仮チャックの第1チャック圧より大きな所定の第2チャック圧でレンズLEがチャックされる。
【0064】
制御部50は、本チャックの第2チャック圧でレンズLEをチャックした後、モータ410への電流供給を停止し、モータ410の駆動を停止する。モータ410の駆動を停止すると、ナット414の移動位置が固定され、板バネ420による第2チャック圧が常時発生されることになる。このような本装置のチャックユニット400の構成では、本チャック時にモータ410に対して常時電流を流してチャック圧をコントロールする必要が無いため、制御が複雑にならず、また、モータ410の負荷が軽減され、装置の故障の発生の可能性が低減される。
【0065】
以上のようにして、弾性力によるレンズLEを挟持することによって、レンズチャック軸の先端の押圧ゴム等の変形によって、チャッキング力が変化した場合であっても、板バネの変形量に対して、押圧ゴム等の変形量が微小であるため、チャック力の低下を抑制することができる。これによって、簡易的な構成で、安定したチャック圧を実現することができる。
【0066】
本チャックが完了すると、制御部50は、は入力された玉型の動径データ及びレイアウトデータから算出された加工形状に基づき、測定子260とレンズチャック軸102R、102Lの軸間距離を変化させるようキャリッジ101を上下方向(Y方向)に移動させて、レンズLEの前面及び後面の形状測定を行う。
【0067】
測定されたレンズLE前面と後面の屈折面形状から、レンズLEのコバ厚が求められる。レンズLEの屈折面形状測定が完了すると、制御部50は、モータ145及びモータ150の駆動でキャリッジ101をXY方向へと移動させて、レンズLEをレンズ加工具168上に位置させる。モータ160による砥石スピンドル161aの回転で回転されたレンズ加工具168に対して、モータ120の駆動で回転されたレンズLEが押し当てられて、レンズLE周縁の粗加工が行われる。その後、制御部50は、レンズLEの屈折面形状の測定結果、玉型等によって算出して加工データに基づいてキャリッジ101をXY方向へ移動し、レンズ加工具168によってレンズ周縁のヤゲン加工等の仕上げ加工を行う。
【0068】
なお、上記構成においては、仮チャック後、一旦、モータ410の回転を停止させた後、本チャックを行う構成としたがこれに限定されない。例えば、仮チャックと本チャックを連続的に行う構成としてもよい。この場合、マイクロスイッチ440による仮チャック完了の検出後、そのまま一定の時間、モータ410が駆動される。
【0069】
なお、上記構成においては、本チャックを行う際に、仮チャック完了後から一定の時間だけモータ410を回転駆動する構成としたがこれに限定されない。例えば、モータ410の回転数をエンコーダ等によって検出し、回転数によって、本チャックを完了する構成としてもよい。また、送りネジ412のネジ山等の数をカウントして、本チャックを完了する構成としてもよい。
【0070】
なお、上記構成においては、マイクロスイッチ440は、シャフト418(支点)の位置より下方の位置に配置される構成としたがこれに限定されない。板バネ420の移動時には位置が変更され、板バネ420の変形時には位置が移動しないように配置する構成であればよい。例えば、支持部445の固定位置は、板バネ420のシャフト418位置より下方にし、マイクロスイッチ440は、シャフト418(支点)の位置より上方の位置に配置されるようにしてもよい。また、マイクロスイッチを複数配置するような構成としてもよい。
【0071】
なお、本実施例においては、板バネ420の第1端部420aと第2端部420bとの間の中点部を支点として、チャック方向に移動させるように、第2端部420bを移動させる構成について説明したがこれに限定されない。板バネ420の第2端部を支点として板バネ420を回転可能に支える回転支持部を構成し、第1端部をチャック方向に移動させるように、中点部を移動させる構成であってもよい。例えば、
図9に示すように、モータ410によって、送りネジ412が回転をし、板バネ420の第1端部420aと第2端部420bとの間の中点部に配置された連結部418Aが移動される。この場合、連結部416A、418Aが板バネ420のスライド移動を可能にし、連結部415Aが板バネ420の長手方向へのスライド移動を不能にしている。そして、
図9(a)、(b)示すように、モータ410が回転されることによって、レンズチャック軸102Rが軸方向に移動される。
【0072】
なお、上記構成においては板バネ420の第1端部420aの連結部416Aを、板バネ420の長手方向へのスライド移動を不能にし、他の2つの連結部418A、415Aが板バネ420のスライド移動を可能にする構成としたが、これに限定されない。連結部416A、418A、415Aの内の1つが板バネ420の長手方向へのスライド移動を不能にし、他の2つの連結部が板バネ420のスライド移動を可能にする構成であれば良い。例えば、第2端部420bの連結部415Aに
図2のシャフト416を設けることによって、板バネ420のスライド移動を不能にし、第1端部420aの連結部416Aを
図5のナット414に形成された2つの突起部415a、415bと同様な機構とすることによって、板バネ420のスライド移動を可能にしても良い。
【0073】
なお、上記構成においては、板バネ420の変形の検出にマイクロスイッチ440を用いる構成としたがこれに限定されない。圧力検出素子を用いて、板バネ420の変形を検出してもよい。例えば、圧力検出素子としては、ロードセル、ピエゾ等が挙げられる。圧力検出素子を用いる場合、板バネ420上における変形が検出される位置(変形が起こりうる位置)に配置する構成であればよい。圧力検出素子の配置は、圧力検出素子を板バネに直接接触させて配置される。このように、圧力検出素子を用いることによって、マイクロスイッチと比較して、圧力検出素子は高価であるものの、板バネの微小な変形量を検出することが可能となるため、より精密なチャック圧の調整を行うことができる。