(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マーカが上面または底面に設置された前記回転体に対し、前記ラインセンサは、前記回転体の回転軸と前記ラインセンサの光軸が平行且つ前記マーカと前記ラインセンサが向かい合う位置関係に配置されており、
前記マーカは、渦巻状のマーカ模様の境界線を有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の回転角度計測装置。
前記マーカが側面に設置された前記回転体に対し、前記ラインセンサは、前記回転体の回転軸と前記ラインセンサの光軸が垂直且つ前記回転体の回転軸と前記ラインセンサの撮影ラインが平行な位置関係に配置されており、
前記マーカは、螺旋状のマーカ模様の境界線を有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の回転角度計測装置。
前記マーカが上面または底面に設置された前記回転体に対し、前記ラインセンサを、前記回転体の回転軸と前記ラインセンサの光軸が平行且つ前記マーカと前記ラインセンサが向かい合う位置関係となるように配置し、
前記マーカは、渦巻状のマーカ模様の境界線を有することを特徴とする請求項7乃至9いずれか1項に記載の回転角度計測方法。
前記マーカが側面に設置された前記回転体に対し、前記ラインセンサを、前記回転体の回転軸と前記ラインセンサの光軸が垂直且つ前記回転体の回転軸と前記ラインセンサの撮影ラインが平行な位置関係となるように配置し、
前記マーカは、螺旋状のマーカ模様の境界線を有することを特徴とする請求項7乃至9いずれか1項に記載の回転角度計測方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のロータリエンコーダやポテンショメータのようなセンサを回転体の回転軸に設置する方法では、計測センサが非接触での回転角度の計測ができない。
【0008】
非特許文献1のような、回転体に貼り付けた反射テープの反射光を検出する方法では、回転数を計測することはできるが、回転角度を計測することはできない。
【0009】
特許文献1のような、登録した周面の画像と入力画像の照合により回転角度を算出する方法では、似通った模様の箇所が存在した場合は間違った回転角度を算出する可能性がある。また、入力画像と登録画像との相関を求める計算コストが大きい。
【0010】
特許文献2のような、2つのマーカの位置関係から回転角度を求める方法では、検出できる回転角度精度を向上させる場合は高解像度のCCDカメラを用いて大きな画像データを扱う必要があり、計算コストが増大してしまう。逆に通常のCCDカメラを用いて計算コストを抑えようとすると、高い検出角度精度が期待できない。
【0011】
本発明の目的は、上述の問題を解決するため、画像処理により、計億センサが非接触で、計算コストを抑え且つ高精度に回転体の回転角度を計測する回転角度計測装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する第1の発明に係る回転角度計測装置は、
計測対象の回転体に設置されたマーカと、
前記マーカのマーカ模様を撮影するラインセンサと、
前記マーカ模様を前記ラインセンサと同方向から高精細画像として撮影する高精細カメラと、
前記ラインセンサで撮影された画像を解析して前記回転体の回転角度を求める解析装置とを備え
、
前記解析装置は、前記高精細カメラで撮影した前記高精細画像より、前記マーカ模様の境界線の三次元的な位置である境界線三次元位置のデータを求め、当該データに基づき、前記ラインセンサによる撮影を行う場合の画像上の前記マーカ模様の境界線位置と前記回転角度の関係を予め導出しておいた上で、前記ラインセンサで撮影した画像から前記マーカ模様の境界線位置を求め、前記関係に基づき、前記マーカ模様の境界線位置を前記回転角度に換算することを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第2の発明に係る回転角度計測装置は、
上記第1の発明に係る回転角度計測装置において、
前記マーカのマーカ模様の境界線位置は、前記回転体の回転角度との関係が一意的に対応することを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第3の発明に係る回転角度計測装置は、
上記第1または2の発明に係る回転角度計測装置において、
前記マーカのマーカ模様の境界線位置は、前記回転体の回転角度との関係が正比例であることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第4の発明に係る回転角度計測装置は、
上記第1乃至3いずれか1つに係る回転角度計測装置において、
前記マーカが上面または底面に設置された前記回転体に対し、前記ラインセンサは、前記回転体の回転軸と前記ラインセンサの光軸が平行且つ前記マーカと前記ラインセンサが向かい合う位置関係に配置されており、
前記マーカは、渦巻状のマーカ模様の境界線を有することを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する第5の発明に係る回転角度計測装置は、
上記第1乃至3いずれか1つに係る回転角度計測装置において、
前記マーカが側面に設置された前記回転体に対し、前記ラインセンサは、前記回転体の回転軸と前記ラインセンサの光軸が垂直且つ前記回転体の回転軸と前記ラインセンサの撮影ラインが平行な位置関係に配置されており、
前記マーカは、螺旋状のマーカ模様の境界線を有することを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決する第
6の発明に係る回転角度計測装置は、
上記第1
乃至5いずれか1つの発明に係る回転角度計測装置において、
前記解析装置は、
前記マーカ模様の境界線位置の検出に用いる閾値と、前記高精細カメラのレンズ焦点距離と、画像素子サイズと、前記ラインセンサ及び前記高精細カメラの位置と、前記マーカの設置表面の形状データとを処理パラメータとして設定する処理設定部と、
前記ラインセンサまたは前記高精細カメラで撮影した輝度情報を入力する画像入力部と、
前記高精細カメラで撮影した画像上の前記マーカ模様の境界線位置を第1の境界線位置データとして検出する高精細カメラ画像用境界線位置検出部と、
前記第1の境界線位置データと前記処理パラメータを基に、前記高精細カメラで撮影した前記境界線三次元位置のデータを作成する境界線三次元位置計算部と、
前記処理パラメータと、前記回転体の回転角度を変えていき前記高精細カメラで撮影した複数の前記境界線三次元位置データとを基に、当該境界線三次元位置データを合成し、前記回転体の全周に渡る前記境界線三次元位置データを作成する境界線三次元位置合成部と、
前記処理パラメータと、前記回転体の全周に渡る前記境界線三次元位置データとを基に、前記関係を導出する画素‐角度グラフ作成部と、
前記ラインセンサで撮影した画像上の前記マーカ模様の境界線位置を第2の境界線位置データとして検出する境界位置検出部と、
前記第2の境界線位置データを基に、前記関係を参照し、前記ラインセンサの画像上の前記マーカ模様の境界線位置を回転角度に換算する回転角度換算部とを備えることを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決する第
7の発明に係る回転角度計測方法は、
計測対象の回転体にマーカを設置し、ラインセンサで前記マーカのマーカ模様を撮影した画像を、解析装置で解析することで、前記回転体の回転角度を求め
る回転角度計測方法であって、
高精細カメラによって、前記マーカ模様を前記ラインセンサと同方向から高精細画像として撮影し、前記解析装置にて、前記高精細画像より、前記マーカ模様の境界線の三次元的な位置である境界線三次元位置のデータを求め、当該データに基づき、前記ラインセンサによる撮影を行う場合の画像上の前記マーカ模様の境界線位置と前記回転角度の関係を予め導出しておいた上で、前記ラインセンサで撮影した画像から前記マーカ模様の境界線位置を求め、前記関係に基づき、前記マーカ模様の境界線位置を前記回転角度に換算することを特徴とする。
【0022】
上記課題を解決する第
8の発明に係る回転角度計測方法は、
上記第
7の発明に係る回転角度計測方法において、
前記マーカのマーカ模様の境界線位置と前記回転体の回転角度との関係を一意的に対応させることを特徴とする。
【0023】
上記課題を解決する第
9の発明に係る回転角度計測方法は、
上記第
7または
8の発明に係る回転角度計測方法において、
前記マーカのマーカ模様の境界線位置と前記回転体の回転角度との関係を正比例させることを特徴とする。
【0024】
上記課題を解決する第1
0の発明に係る回転角度計測方法は、
上記第
7乃至
9いずれか1つの発明に係る回転角度計測方法において、
前記マーカが上面または底面に設置された前記回転体に対し、前記ラインセンサは、前記回転体の回転軸と前記ラインセンサの光軸が平行且つ前記マーカと前記ラインセンサが向かい合う位置関係となるように配置し、
前記マーカは、渦巻状のマーカ模様の境界線を有することを特徴とする。
【0025】
上記課題を解決する第1
1の発明に係る回転角度計測方法は、
上記第
7乃至
9いずれか1つの発明に係る回転角度計測方法において、
前記マーカが側面に設置された前記回転体に対し、前記ラインセンサは、前記回転体の回転軸と前記ラインセンサの光軸が垂直且つ前記回転体の回転軸と前記ラインセンサの撮影ラインが平行な位置関係となるように配置し、
前記マーカは、螺旋状のマーカ模様の境界線を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
上記第1,
6,7の発明に係る回転角度計測装置または方法によれば、回転体に設置されたマーカのマーカ模様をラインセンサで撮影した画像を、解析装置により解析することで、回転体の回転角度を求めることができる。
さらに、高精細画像を基に、マーカ模様の境界線位置と前記回転角度の関係を予め導出しておくことにより、マーカの設置に高精度な加工を必要とせずに回転角度が計測でき、作業の簡略化を図ることができる。
【0029】
上記第2,
8の発明に係る回転角度計測装置または方法によれば、さらに、マーカ模様の境界線位置から回転体の回転角度を一意的に求めることができる。
【0030】
上記第3,4,5,
9,10,11の発明に係る回転角度計測装置または方法によれば、さらに、マーカ模様の境界線位置の検出が単純な方法であるため、計算コストを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る回転角度計測装置では、計測対象の回転体にマーカを設置し、当該マーカのマーカ模様をラインセンサで撮影した画像を解析装置によって解析することで、回転角度を求める。以下、本発明に係る回転角度計測装置を、実施例により図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0035】
本発明の実施例1に係る回転角度計測装置は、
図3のように、計測対象の回転体1に設置されたマーカ2と、ラインセンサ4と、解析装置5とを備える。ここで、マーカ2の設置してある計測対象の回転体1の回転軸とラインセンサ4の光軸が垂直且つ回転体1の回転軸とラインセンサ4の撮影ラインが平行な位置関係となっている。
【0036】
本装置の計測センサとして用いるラインセンサ4は、1ライン分を高解像度で撮影できるカメラである。1ライン分の画素数は通常のCCDカメラと比較して高解像度であるが、1ライン分しか撮影しないため画像全体のデータ量としてはCCDカメラよりも非常に小さい。
【0037】
マーカは
図1に示すように、マーカ模様の境界線が螺旋状に描かれている螺旋状マーカ2を用いる。このマーカ模様は、螺旋状マーカ2を設置した回転体1の回転角度θとマーカ模様の境界線位置Lの関係が次式になるように設計されている。
【0038】
L={(L2‐L1)/2π}θ+L1
【0039】
このような螺旋状マーカ2を回転体1に設置すると、回転体1の回転角度とマーカ模様の境界線は
図5に示すような正比例の関係となる。つまり、回転体1の回転角度とマーカ模様の境界線とが一意的に対応する。
【0040】
また、マーカの下地とマーカ模様の明暗差を大きく取れば、ラインセンサ4で撮影した画像上ではマーカ模様の境界線位置での輝度差が急激に変化する。
図6に示すように、画像上でのマーカ模様の境界線位置は、閾値以上の輝度差が存在する位置、もしくは二階微分画像がゼロ交差する位置として求めることができる。
【0041】
そこで、解析装置5は、ラインセンサ4で撮影した画像から輝度差が急激に変化する画像位置を検出し、その画像位置を回転体1の回転角度に換算することで回転角度を算出する。解析装置5は、
図9に示すように、画像入力部12、時系列画像作成部13、境界線位置検出部14、回転角度計算部17、処理設定部11、境界線位置移動範囲計測部15、回転角度計算式設定部16、データ出力部19、記憶部18を備える。
【0042】
上述の処理設定部11では、マーカ模様の境界線位置の検出に用いる輝度差の閾値を、処理パラメータとして設定する。
【0043】
上述の画像入力部12では、ラインセンサ4で撮影した1ライン分の画像データを入力する。
【0044】
上述の時系列画像作成部13では、画像入力部12から入力された画像データを時系列に並べて纏めた時系列画像データを作成する。
【0045】
上述の境界線位置検出部14では、処理設定部11で設定した閾値を基に、時系列画像データのマーカ模様の境界線位置を検出し、境界線位置データを作成する。
【0046】
上述の境界線位置移動範囲計測部15では、回転体1を数回転させた際の境界線位置データから、マーカ模様の境界線位置の移動範囲を求め、境界線位置移動範囲データを作成する。
【0047】
上述の回転角度計算式設定部16では、境界線位置移動範囲データから、回転体1の回転角度を計算する式(以下、回転角度計算式と記載)を決定する。
【0048】
上述の回転角度計算部17では、マーカ模様の境界線位置データから回転体1の回転角度を計算し、回転角度データを作成する。
【0049】
上述の記憶部18では、上述の各データ(境界線位置移動範囲データは除く)と各処理パラメータ(回転角度計算式を含む)を保管する。
【0050】
上述のデータ出力部19では、回転体1の回転角度データを出力する。
【0051】
以下、本発明の実施例1に係る回転角度計測装置の計測手順を
図8に従って説明する。
【0052】
ステップS1では、画像上でのマーカ模様の境界線位置の移動範囲を予め計測する。
【0053】
まず、処理設定部11において、マーカ模様の境界線位置の検出に用いる輝度差の閾値を設定する。その後、計測対象の回転体1をラインセンサ4で撮影しながら数回転させ、画像入力部12から画像データを取り込み、時系列画像作成部13にて時系列画像データを作成する。
【0054】
そして、処理設定部11で設定した閾値を基に、時系列画像データからマーカ模様の境界線位置を求めると、
図7に示すような鋸刃上の時間に対する画像上のマーカ模様の境界線位置データのグラフ(以下、境界線位置時系列グラフと記載)を得ることができる。このグラフでP1からP2までの範囲がマーカ模様の境界線位置の移動範囲(以下、境界線位置移動範囲と記載)である。
【0055】
そこで、境界線位置検出部14において境界線位置時系列グラフを作成し、境界線位置移動範囲計測部15において、境界線位置時系列グラフの、マーカ模様の境界線位置が0に最も近い点をP1とし、また、マーカ模様の境界線位置が0から最も遠い点をP2として求める。P1,P2を求める方法としては、鋸刃上のグラフの上下のピークをそれぞれ求め、下側のピークの平均をP1とし、上側のピークの平均をP2として求めても良い。こうして求めたP1,P2が、実際には螺旋状マーカ2のL1の位置,L2の位置となる。
【0056】
ステップS2では、回転角度計算式設定部16によって回転角度計算式を予め求める。
【0057】
まず、上述のステップ1においてマーカ模様の境界線位置の移動範囲が計算できれば、画像上でのマーカ模様の境界線位置Pと回転角度θは次式の関係となる。
【0058】
P={(P2‐P1)/2π}θ+P1
【0059】
よって、回転角度計算式は次式のように求まる。
【0060】
θ=aP‐b
a={2π/(P2‐P1)}
b={2π/(P2‐P1)}P1
【0061】
ステップ3から実際の回転角度の計測を開始する。まず、ステップS3では、計測対象の回転体1の撮影を行う。
【0062】
図6に示すように回転体1に設置されたマーカ2のマーカ模様をラインセンサ4で撮影し、画像入力部12から撮影した画像データを取り込み、時系列画像作成部13にて1ライン分の画像データを時系列に保存して時系列画像データを作成する。
【0063】
ステップS4では、境界線位置検出部14において、ステップ3で作成した時系列画像データからマーカ模様の境界線位置を求める。
【0064】
手順としては、上述のように、画像上でのマーカ模様の境界線位置は、閾値以上の輝度が存在する位置、もしくは二階微分画像がゼロ交差する位置として求められる。そこで、時系列画像から順次1ライン分の輝度情報を読み出し、上述の方法により画像上のマーカ模様の境界線位置を求める。
【0065】
ステップS5では、画像上のマーカ模様の境界線位置データから回転体1の回転角度を求める。
【0066】
回転角度計算部17において、画像上でのマーカ模様の境界線位置データを上述の式 θ=aP‐b に代入し、回転角度を求める。算出された結果は、回転角度データとしてデータ出力部19から出力される。
【0067】
ちなみに、上述のステップS1乃至S5において、各データ(境界線位置移動範囲データは除く)と各処理パラメータ(回転角度計算式を含む)は都度、記憶部18に保管される。
【0068】
本発明の実施例1に係る装置では、計測対象の回転体1に対し、ラインセンサ4が、回転体1の回転軸とラインセンサ4の光軸が垂直且つ回転体1の回転軸とラインセンサ4の撮影するラインが平行な位置関係に配置されており、計測センサが非接触での回転体1の回転角度の計測を行うことができる。また、計測センサにラインセンサ4を用いることにより、計算コストを抑えた上で高い検出角度精度を得ることができる。さらに、輝度差のはっきりしたマーカ模様の境界線位置を、解析装置5により回転角度に換算することで、複雑な処理を用いることなく高速な計算ができる。
【実施例2】
【0069】
本発明の実施例2に係る回転角度計測装置は、
図4のように、計測対象の回転体1に設置されたマーカ3と、ラインセンサ4と、解析装置5とを備える。ここで、マーカ3の設置してある計測対象の回転体1の回転軸とラインセンサ4の光軸が平行且つマーカ3とラインセンサ4が向かい合う位置関係となっている。
【0070】
ラインセンサ4は、実施例1と同一であるため説明は省略する。
【0071】
図2に示すようにマーカは、マーカ模様の境界線が渦巻状に描かれている渦巻状マーカ3を用いる。このマーカ模様は、渦巻状マーカ3を設置した回転体1の回転角度θとマーカ模様の境界線位置Rの関係が次式になるように設計されている。
【0072】
R={(R2‐R1)/2π}θ+R1
【0073】
このような渦巻状マーカ3を回転体1に設置すると、回転角度とマーカ模様の境界線は
図5に示すような正比例の関係となる。つまり、マーカ模様の境界線と回転角度が一意的に対応する。
【0074】
また、マーカの下地とマーカ模様の明暗差を大きく取れば、ラインセンサ4で撮影した画像上ではマーカ模様の境界線位置での輝度差が急激に変化する。画像上でのマーカ模様の境界線位置は、閾値以上の輝度差が存在する位置、もしくは二階微分画像がゼロ交差する位置として求めることができる。
【0075】
そこで、解析装置5は、ラインセンサ4で撮影した画像から輝度差が急激に変化する画像位置を検出し、その画像位置を回転体1の回転角度に換算することで回転角度を算出する。解析装置5は、
図9に示すように、画像入力部12、時系列画像作成部13、境界線位置検出部14、回転角度計算部17、処理設定部11、境界線位置移動範囲計測部15、回転角度計算式設定部16、データ出力部19、記憶部18を備える。
【0076】
上述の処理設定部11では、マーカ模様の境界線位置の検出に用いる輝度差の閾値を、処理パラメータとして設定する。
【0077】
上述の画像入力部12では、ラインセンサ4で撮影した1ライン分の画像データを入力する。
【0078】
上述の時系列画像作成部13では、画像入力部12から入力された画像データを時系列に並べて纏めた時系列画像データを作成する。
【0079】
上述の境界線位置検出部14では、処理設定部11で設定した閾値を基に、時系列画像データのマーカ模様の境界線位置を検出し、境界線位置データを作成する。
【0080】
上述の境界線位置移動範囲計測部15では、回転体1を数回転させた際の境界線位置データから、マーカ模様の境界線位置の移動範囲を求め、境界線位置移動範囲データを作成する。
【0081】
上述の回転角度計算式設定部16では、境界線位置移動範囲データから、回転体1の回転角度を計算する回転角度計算式を決定する。
【0082】
上述の回転角度計算部17では、マーカ模様の境界線位置データから回転体1の回転角度を計算し、回転角度データを作成する。
【0083】
上述の記憶部18では、上述の各データ(境界線位置移動範囲データは除く)と各処理パラメータ(回転角度計算式を含む)を保管する。
【0084】
上述のデータ出力部19では、回転体1の回転角度データを出力する。
【0085】
以下、本発明の実施例2に係る回転角度計測装置の計測手順を
図8に従って説明する。
【0086】
ステップS1では、画像上でのマーカ模様の境界線位置の移動範囲を予め計測する。
【0087】
まず、処理設定部11において、マーカ模様の境界線位置の検出に用いる輝度差の閾値を設定する。その後、計測対象の回転体1をラインセンサ4で撮影しながら数回転させ、画像入力部12から画像データを取り込み、時系列画像作成部13にて時系列画像データを作成、保管する。
【0088】
そして処理設定部11で設定した閾値を基に、時系列画像データからマーカ模様の境界線位置を求めると、
図7に示すような境界線位置時系列グラフを得ることができる。このグラフでP1からP2までの範囲がマーカ模様の境界線位置移動範囲である。
【0089】
そこで境界線位置検出部14において境界線位置時系列グラフを作成し、境界線位置移動範囲計測部15において、境界線位置時系列グラフの、マーカ模様の境界線位置が0に最も近い点をP1とし、また、マーカ模様の境界線位置が0から最も遠い点をP2として求める。P1,P2を求める方法としては、鋸刃上のグラフの上下のピークをそれぞれ求め、下側のピークの平均をP1とし、上側のピークの平均をP2として求めても良い。こうして求めたP1,P2が、実際には渦巻状マーカのR1の位置,R2の位置となる。
【0090】
ステップS2では、回転角度計算式設定部16によって回転角度計算式を予め求める。
【0091】
まず、上述のステップ1においてマーカ模様の境界線位置移動範囲が計算できれば、画像上でのマーカ模様の境界線位置Pと回転角度θは次式の関係となる。
【0092】
P={(P2‐P1)/2π}θ+P1
【0093】
よって、回転角度計算式は次式のように求まる。
【0094】
θ=aP‐b
a={2π/(P2‐P1)}
b={2π/(P2‐P1)}P1
【0095】
ステップ3から実際の回転角度の計測を開始する。まず、ステップS3では、計測対象の回転体1の撮影を行う。
【0096】
図6に示すように回転体1に設置されたマーカ2のマーカ模様をラインセンサ4で撮影し、画像入力部12から撮影した画像データを取り込み、時系列画像作成部13にて1ライン分の画像データを時系列に保存して時系列画像データを作成する。
【0097】
ステップS4では、境界線位置検出部14において、ステップ3で作成した時系列画像データからマーカ模様の境界線位置を求める。
【0098】
手順としては、上述のように、画像上でのマーカ模様の境界線位置は、閾値以上の輝度が存在する位置、もしくは二階微分画像がゼロ交差する位置として求められる。そこで、時系列画像から順次1ライン分の輝度情報を読み出し、上述の方法により画像上のマーカ模様の境界線位置を求める。
【0099】
ステップS5では、画像上のマーカ模様の境界線位置データから回転体1の回転角度を求める。
【0100】
回転角度計算部17において、画像上でのマーカ模様の境界線位置データを上述の式 θ=aP‐b に代入し、回転角度を求める。算出された結果は、回転角度データとしてデータ出力部19から出力される。
【0101】
ちなみに、上述のステップS1乃至S5において、各データ(境界線位置移動範囲データは除く)と各処理パラメータ(回転角度計算式を含む)は都度、記憶部18に保管される。
【0102】
本発明の実施例2に係る装置では、計測対象の回転体1に対し、ラインセンサ4が、回転体1の回転軸とラインセンサ4の光軸が平行且つ渦巻状マーカ3とラインセンサ4が向かい合う位置関係に設置されており、計測センサが非接触での回転体1の回転角度の計測を行うことができる。また、計測センサにラインセンサ4を用いることにより、計算コストを抑えた上で高い検出角度精度を得ることができる。さらに、輝度差のはっきりしたマーカ模様の境界線位置を、解析装置5により回転角度に換算することで、複雑な処理を用いることなく高速な計算ができる。
【実施例3】
【0103】
本発明の実施例1,2に係る回転角度計測装置では、マーカが精度よく回転体に設置されている必要がある。機械加工したマーカを回転体に設置する場合は良いが、既存の回転軸等に手作業でマーカを後付けするような場合はマーカの設置に高い精度は望めず、境界線位置の歪みに起因する回転角度の検出精度が低下する。
【0104】
そこで、本発明の実施例3に係る回転角度計測装置は、マーカの位置校正を行う機能を有する。
【0105】
即ち、実施例1,2に係る回転角度計測装置では、マーカが正確に設置されていることを前提として、段落[005
1],[008
5]の関係式によりマーカ模様の境界線位置から回転角度を換算しているが、マーカ設置に歪みがあるような場合は直線ではなく曲線のグラフとなってしまう。実施例3に係る回転角度計測装置では、マーカの設置に歪みがあることを考慮して、マーカ模様の境界線の三次元的な位置(以下、マーカ模様の境界線三次元位置と記載)の計測を予め行うことで、画像上のマーカ模様の境界線位置と回転角度の関係を表したグラフ(以下、画素‐角度グラフと記載)を作成し、当該グラフを参照することによりラインセンサで計測したマーカ模様の境界線位置から回転角度を求める。画素‐角度グラフの作成方法については後述する。
【0106】
本発明の実施例3に係る回転角度計測装置は、
図10のように、計測対象の回転体1に設置された螺旋状マーカ2と、ラインセンサ4と、解析装置20と、高精細カメラ31とを備える。
【0107】
上述の螺旋状マーカ2及びラインセンサ4については、実施例1と同一のため説明は省略する。
【0108】
高精細カメラ31は、マーカ模様をラインセンサ4と同方向から高精細画像として撮影するものである。ここでの高精細とは、ラインセンサ4に比べて高精細で、マーカ模様の境界線位置を求められる程度の精度を示している(例えば200万画素程度)。
【0109】
解析装置20は、
図11のように、処理設定部21と、画像入力部22と、高精細カメラ画像用境界線位置検出部23と、境界線三次元位置計算部24と、境界線三次元位置合成部25と、画素‐角度グラフ作成部26と、境界線位置検出部27と、回転角度換算部28と、記憶部29と、データ出力部30とを備える。
【0110】
上述の処理設定部21は、マーカ模様の境界線位置の検出に用いる閾値、高精細カメラ31のレンズ焦点距離、画像素子サイズ、ラインセンサ4及び高精細カメラ31の位置、螺旋状マーカ2の設置表面の形状(円柱側面)データ等を処理パラメータとして設定する。
【0111】
上述の画像入力部22は、ラインセンサ4または高精細カメラ31で撮影した輝度情報を画像データとして入力する。
【0112】
上述の高精細カメラ画像用境界線位置検出部23は、高精細カメラ31で撮影した画像上のマーカ模様の境界線位置を境界線位置データとして検出する。
【0113】
上述の境界線三次元位置計算部24は、境界線位置データと処理パラメータを基に、高精細カメラ31で撮影したマーカ模様の境界線三次元位置データを作成する。
【0114】
上述の境界線三次元位置合成部25は、処理パラメータと、回転体1の回転角度を変えていき高精細カメラ31で撮影した複数の画像上のマーカ模様の境界線三次元位置データとを基に、マーカ模様の境界線三次元位置データを合成し、回転体1の全周に渡るマーカ模様の境界線三次元位置データを作成する。
【0115】
上述の画素‐角度グラフ作成部26は、処理パラメータと、回転体1の全周に渡るマーカ模様の境界線三次元位置データとを基に画素‐角度グラフデータを作成する。
【0116】
上述の境界位置検出部27は、ラインセンサ4で撮影した画像上のマーカ模様の境界線位置を境界線位置データとして検出する。
【0117】
上述の回転角度換算部28は、境界線位置データを基に、画素‐角度グラフを参照し、ラインセンサ4の画像上のマーカ模様の境界線位置を回転角度に換算して回転角度データを作成する。
【0118】
上述の記憶部29は、上述の各データ及び各処理パラメータを保管する。
【0119】
上述のデータ出力部30は、回転角度データを出力する。
【0120】
換言すれば、解析装置20は、マーカ模様の境界線位置の検出に用いる閾値と、高精細カメラ31のレンズ焦点距離と、画像素子サイズと、ラインセンサ4及び高精細カメラ31の位置と、マーカの設置表面の形状データとを処理パラメータとして設定する処理設定部21と、ラインセンサ4または高精細カメラ31で撮影した輝度情報を入力する画像入力部22と、高精細カメラ31で撮影した画像上のマーカ模様の境界線位置を第1の境界線位置データとして検出する高精細カメラ画像用境界線位置検出部23と、第1の境界線位置データと処理パラメータを基に、高精細カメラ31で撮影した境界線三次元位置のデータを作成する境界線三次元位置計算部24と、処理パラメータと、回転体1の回転角度を変えていき高精細カメラ31で撮影した複数の境界線三次元位置データとを基に、当該境界線三次元位置データを合成し、回転体1の全周に渡る境界線三次元位置データを作成する境界線三次元位置合成部25と、処理パラメータと、回転体1の全周に渡る境界線三次元位置データとを基に、ラインセンサ4による撮影を行う場合の画像上のマーカ模様の境界線位置と回転体1の回転角度の関係を導出する画素‐角度グラフ作成部26と、ラインセンサ4で撮影した画像上のマーカ模様の境界線位置を第2の境界線位置データとして検出する境界位置検出部と、第2の境界線位置データを基に、上記関係を参照し、ラインセンサ4の画像上のマーカ模様の境界線位置を回転体1の回転角度に換算する回転角度換算部とを備えるというものである。
【0121】
以下、本発明の実施例3に係る回転角度計測装置の計測手順を
図13に従って説明する。
【0122】
ステップS11では、下記段落[01
16]〜[01
24]により、画素‐角度グラフを作成する。
【0123】
計測対象である回転体1の螺旋状マーカ2の設置部分の形状(円柱側面)、及びラインセンサ4から計測対象の回転体1までの距離は、予め分かっているものとする。この条件下で、マーカ模様の境界線三次元位置を求めることで、画素‐角度グラフを作成する。マーカ模様の境界線三次元位置計測は以下の手順で行う。
【0124】
まず第1の手順として、
図10に示すように、ラインセンサ4ではなく高精細カメラ31を解析装置20に接続する。
【0125】
第2の手順として、高精細カメラ31において、回転体1に設けられた螺旋状マーカ2の高精細画像を撮影し、高精細カメラ画像用境界線位置検出部23において、画像上でのマーカ模様の境界線位置を求める。画像上での境界線位置の求め方は、実施例1において説明したラインセンサ4で撮影した場合と同様の方法を用い
る。
【0126】
第3の手順として、境界線三次元位置計算部24において、高精細カメラ画像用境界線位置検出部23から境界線位置データを入力し、
図14に示すように、マーカ模様の境界線三次元位置を、高精細カメラ31のレンズ焦点cから撮像面bでの境界線位置を通って回転体1の螺旋状マーカ2の設置位置に交差する点aとして求める。これにより、
図15に示すように、回転体1に対して部分的なマーカ模様の境界線三次元位置(図中の曲線部分)が求められる(図中の直線は回転体1の回転軸dを示している)。
【0127】
第4の手順として、回転体1を回転軸d中心に回転させ、角度を変えて第3の手順を順次行い、マーカ模様の境界線三次元位置を回転体1の側面全周に渡り計測する。
【0128】
第5の手順として、境界線三次元位置合成部25により、第4の手順にて複数回に分割して得たマーカ模様の境界線三次元位置データを境界線三次元位置計算部24から入力して合成し、回転体1の側面全周に渡るマーカ模様の境界線三次元位置データを作成する。
【0129】
第6の手順として、高精細カメラ31をラインセンサ4に取り換える。
【0130】
次に、画素‐角度グラフ作成部26により、境界線三次元位置合成部25から入力した、回転体1の側面全周に渡るマーカ模様の境界線三次元位置データを用いて、画素‐角度グラフを作成する。
【0131】
即ち、ラインセンサ4で撮影すると仮定して、
図16のように、マーカ模様の境界線三次元位置とラインセンサ4のレンズ焦点c´を結ぶ直線がラインセンサ4の撮像ラインeと交差する点f,gを求める。これがラインセンサ4の画像上でのマーカ模様の境界線位置となる。これを側面全周に渡り行うことで、画素‐角度グラフを作成する。手作業で螺旋状マーカ2を回転体1に後付けしたような場合、作成した画素‐角度グラフは例えば
図12のようになる。以上がステップS11である。
【0132】
ステップS12では、ラインセンサ4で
図6に示すように計測対象の回転体1を撮影する。
【0133】
ステップS13では、ラインセンサ4で撮影した画像からマーカ模様の境界線位置を求める。即ち、境界線位置検出部27において、画像上での閾値以上の輝度差が存在する位置、もしくは、二階微分画像がゼロ交差する位置を、画像上のマーカ模様の境界線位置として求める。
【0134】
ステップS14では、画像上のマーカ模様の境界線位置から回転角度を求める。
【0135】
即ち、回転角度換算部28において、画像上での境界線位置を基に画素‐角度グラフを参照し、画像上のマーカ模様の境界線位置を回転角度に換算して回転角度を求める。
【0136】
このようにして実施例3に係る回転角度計測装置では、マーカの設置に歪みがあることを考慮して、マーカ模様の境界線三次元位置計測を予め行うことで、画素‐角度グラフを作成し、ラインセンサで計測したマーカ模様の境界線位置から画素‐角度グラフを参照することで回転角度を求めるものである。
【0137】
実施例3に係る回転角度計測装置では、実施例1,2に係る回転角度計測装置に比べて、高精細画像を基に、マーカ模様の境界線位置と回転角度の関係を予め導出しておくことにより、さらに、マーカの設置に高精度な加工を必要とせずに回転角度が計測でき、作業の簡略化を図ることができる。
【0138】
本実施例では、実施例1で用いた螺旋状マーカ2を例に挙げて説明したが、実施例2で用いた渦巻状マーカ3を適用することも可能である。但し、渦巻状マーカ3では、マーカ設置表面の形状を回転体1の上面または底面の平面としてマーカ模様の境界線三次元位置を求めることになる。さらに言えば、回転体1の回転角度との関係が一意的に対応するマーカ模様の境界線位置を有するマーカであれば形状を問わず適用可能である。