特許第5971054号(P5971054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5971054-車両用水温検出装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971054
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】車両用水温検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/14 20060101AFI20160804BHJP
   G01K 7/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   G01K1/14 L
   G01K7/00 301Z
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-206600(P2012-206600)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-62750(P2014-62750A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大屋 達幸
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−087833(JP,U)
【文献】 実開昭58−154821(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/14
G01K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水温センサに接続して所定温度範囲を表示する水温計を備えた車両用水温検出装置であって、
前記水温センサと前記水温計との間の配線に抵抗体を介在させるとともに、この抵抗体の両端の各電位を入力して、前記所定温度範囲外の水温値を検出する制御手段を備え、
前記制御手段は、車両の起動後の所定時間内に水温が低温であるか否かを検出する低温判定処理を行うことを特徴とする車両用水温検出装置。
【請求項2】
前記抵抗体を短絡可能にするスイッチ手段を備え、前記制御手段は、前記水温値の検出完了後に、前記スイッチ手段によって、前記抵抗体を短絡した状態にて、前記水温計を作動させることを特徴とする請求項1に記載の車両用水温検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用水温検出装置に関し、特に通常の水温表示とは別に低水温の検出を行う車両用水温検出装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用水温検出装置は、例えば、特許文献1に開示されるものがある。この車両用水温検出装置は、エンジン冷却水の水温変化を抵抗値変化(アナログ信号)として出力する水温センサと、前記アナログ信号に応じて前記水温を表示する水温計を備えている。
また、前記アナログ信号に基づいて前記水温を比較判定する手段と、この比較判定手段の判定結果を表示するインジケータとを備え、水温計の表示範囲以外の低水温について、発光ダイオードを点灯させて低温状態をインジケータで表示するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−326538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の水温計は、ムーブメントを可動させるための巻線で構成されており、その巻線の抵抗値は、温度変化の影響を受け、巻線材料(銅)の温度係数に従い変化してしまうため、温度変化の大きな環境下では、精度の高いアナログ信号を比較判定手段に入力できず、特に低水温の正確な温度検出ができないといった問題があった。
【0005】
そこで本発明は、前述の課題に着目して、水温計の温度変化に関わらず、精度の高い水温を検出することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用水温検出装置は、水温センサに接続して所定温度範囲を表示する水温計を備えた車両用水温検出装置であって、前記水温センサと前記水温計との間の配線に抵抗体を介在させるとともに、この抵抗体の両端の各電位を入力して、前記所定温度範囲外の水温値を検出する制御手段を備え、前記制御手段は、車両の起動後の所定時間内に水温が低温であるか否かを検出する低温判定処理を行うことを特徴とする。
【0007】
また、前記抵抗体を短絡可能にするスイッチ手段を備え、前記制御手段は、前記水温値の検出完了後に、前記スイッチ手段によって、前記抵抗体を短絡した状態にて、前記水温計を作動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、車両用水温検出装置に関し、水温計の温度変化にかかわらず、精度の高い水温を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態における回路構成を示す図。
図2】同上実施の形態の各種信号に基づく動作例について示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態として、車両用計器に適用したものを例に挙げて、図面を用いて説明する。
【0012】
車両用計器Aは、車載バッテリを駆動電源として、各種センサが検出する計測値(車両の状態)を車両利用者に報知するものであり、例えば、燃料計や水温計などを備えている。また、この場合、車両用計器Aは、図1に示すように、水温計1を作動するため水温センサBと接続している。
【0013】
なお、水温センサBは、温度によって抵抗値が変化するサーミスタを適用でき、抵抗体2を介して水温計1に接続し、アナログ信号を出力する。この場合、水温センサBは、車両エンジンの冷却水の温度を検出するためのもので、一端側を車両用計器Aに接続し、他端側を車体に接地している。
【0014】
車両用計器Aは、水温計1と、抵抗体2と、スイッチ手段3と、制御手段4と、インジケータ5とを備えている。
【0015】
水温計1は、巻線(銅線)を有するムーブメントを駆動源として水温センサBからのアナログ信号に従って指針が回動するように構成され、この指針の指示対象となる文字や目盛りからなる指標部とによって計測値となる水温を対比判読できるようにしている。この場合、水温計1は、車載バッテリに接続され、約12Vのバッテリ電圧(+V)が直接供給されて駆動(以下、直動と記す)しており、図示しない抵抗素子などによって、所定温度範囲(摂氏50度乃至100度の)の温度に対応して指針が指標部に沿って回動するように設定されている。
【0016】
抵抗体2は、水温計1と水温センサBとの間の配線において、直列に介在するとともに、両端間の電位を制御手段4が検出できるように配線されている。
【0017】
スイッチ手段3は、FETなどのトランジスタを適用でき、抵抗体2と制御手段4に接続し、制御手段4によって低水温を検出する場合には、制御手段4により抵抗体2の間を通電するようにオフ制御し、低水温検出処理後は、制御手段4により抵抗体2の間を短絡するようにオン制御する。
【0018】
制御手段4は、マイクロコンピュータ等の演算手段を適用でき、ROM等の記憶部に格納されたプログラムや、入出力インターフェースを介して入力される車両情報や検出する電位に基づいて、インジケータ5や電子制御ユニット(ECU)への信号を生成して発することができる。例えば、制御手段4は、燃料計などの情報を別途表示器に表示させるための制御部として兼用される。
【0019】
制御手段4は、スイッチ手段3をオン/オフ制御するとともに、スイッチ手段3をオフ制御している期間に、抵抗体2の両端電位を入力にてサンプリングし、その二つのサンプリングした値を比較演算することにより水温を検出する。この場合、制御手段4は、両端電位を入力する際にアナログデジタル変換用ポートに入力して各電位を検出することができる。
【0020】
また、制御手段4は、図示しない電源入力に応じて起動を判定することができ、この起動に基づいて初期動作として、低温検出処理を行う。この場合、イグニッションスイッチを介して入力されるバッテリ電圧(+V)に基づいて起動判定を行い、起動後、所定時間(例えば、1秒間)Tだけ抵抗体2に通電されるようにスイッチ手段3をオフ制御する。また、この所定時間T中に、制御手段4は、抵抗体2の両端の各電位をサンプリングし、この入力に基づく低温検出処理を行う。
【0021】
また、制御手段4は、所定時間T経過後、スイッチ手段3をオン制御することで、抵抗体2を短絡状態としてバッテリ電圧(+V)の入力がなくなるまで、水温センサBからのアナログ信号に基づく水温計1の直動制御がなされる。
【0022】
なお、制御手段4は、低温検出処理として、2つの電位値の割合に基づいて水温センサBの水温値を算出することによって、水温計1の温度変化による電圧降下の変動などを加味して正確な水温値を検出することができる。この場合、制御手段4は、起動直後の水温値が、所定しきい値(例えば、摂氏10度)以下であるか否かを判定し、所定しきい値以下であれば、車両が低温状態であるとして、インジケータ5を作動させるとともに、車両側の電子制御ユニット(ECU)に低温状態である旨を知らせるための信号を出力する。電子制御ユニットは、この信号に基づいて自動的に所定の時間(例えば、3分間)だけ暖機運転を行うことができる。なお、温度に応じて暖機運転時間を可変することも考えられる。
【0023】
インジケータ5は、制御手段4からの制御信号に基づいて車両状態を表示するものであり、この場合、冷却水が低温であることを示す警告灯(テルテール)を適用でき、発光ダイオード等の光源を点灯させることで、対応するシンボルマークの意匠を透過照明して知らせる。インジケータ5として、暖機状態を示すグローインジケータを適用することもできる。
【0024】
斯かる車両用計器Aは、水温センサBに接続して所定温度範囲を表示する水温計1を備えた車両用水温検出装置であって、水温センサBと水温計1との間の配線に抵抗体2を介在させるとともに、この抵抗体2の両端の各電位を入力して、前記所定温度範囲外の水温値を検出する制御手段4を備えてなる。
【0025】
従って、水温計1の温度変化に関わらず、精度の高い水温を検出することができる。また、車両用計器Aの制御手段4は、抵抗体2の両端における電位の割合から算出することによって、バッテリ電圧が変動したとしても、正確な水温を検出することができるため、直動で水温計1を作動させる構成において有利である。
【0026】
また、抵抗体2を短絡可能にするスイッチ手段3を備え、制御手段4は、前記水温値の検出完了後に、スイッチ手段3によって、抵抗体2を短絡した状態にて、水温計1を作動させることによって、直動式の水温計1の構成であっても、水温計1で用いる水温センサBを兼用して低水温を検出することができる。起動後所定時間T前後という時間的な使い分けを行うことで実現できるため、車両用計器Aから水温センサBまでの配線など構成を簡潔にできる。
【0027】
また、制御手段4は、車両の起動後の所定時間T内に水温が低温であるか否かを検出する低温判定処理を行うことによって、直動式の水温計1の構成であっても、自動的な暖機運転を促すことができる。なお、制御手段4は、車両用計器A外の電子制御ユニットと各種車両情報をやりとりするための所定の通信プロトコル(多重通信信号)に変換する信号通信用回路を設けており、これを用いることで低温状態を知らせるための専用ケーブルなど不要であり簡単な構成で実現できる。
【0028】
なお、本発明の車両用水温検出装置を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに表示の変更が可能なことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、車両用水温検出装置に関して、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載される水温計を備えた車両用複合計器に適用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 水温計
2 抵抗体
3 スイッチ手段
4 制御手段
5 インジケータ
A 車両用計器(車両用水温検出装置)
B 水温センサ
図1
図2