(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜4のいずれか記載の造粒方法によって前記窒素肥料を造粒した後、造粒窒素肥料の解砕、整粒および分級を行うことを特徴とする粒状品の窒素肥料の製造方法。
前記粒状品の窒素肥料は、圧壊強度が2.5kgf以上、平均粒径が2.0〜4.0mm、平均バリ数が1.0個未満であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一つに記載の粒状品の窒素肥料の製造方法。
【背景技術】
【0002】
肥料の3要素の一つであり、タンパク質の構成元素である窒素は、植物の生育を促進する役割を担っており、窒素肥料として土壌に散布された後、微生物により硝酸イオンに変化した後、植物に吸収される。窒素肥料は、硫酸アンモニウム(以下、「硫安」という)、塩化アンモニウム(以下、「塩安」という)、尿素などの単肥や、肥料の3要素を2成分以上含む複合肥料の形で肥料として土壌に散布される。
【0003】
窒素肥料の一つである硫安は、工業的には余剰硫酸/アンモニアや、コークス炉排ガス等から副生され、粒径別に粉状品の硫安(平均粒径0.1mm程度)・細粒品の硫安(平均粒径が0.5〜1.0mm程度)・粒状品の硫安(平均粒径2mm以上)などがあり、その多くが窒素肥料として使用される。
【0004】
肥料に適した硫安の物理的性質としては、くみあい肥料の品質と考え方(全国農業協同組合連合会)の2,3,(2)水稲側条施肥粒状複合肥料において、「1.機械施肥に支障がないこと」「2.粒度:粒径2mm〜4mmに大部分が収まること」「3.硬度:粒径2.0mm〜2.8mmのものについての圧壊強度の平均が2kfg以上」「4.水分:1.0%以下」「5.安息角:40°以下」「6.吸湿性:製品の固結等理化学的品質に悪影響をおよぼさないこと」との記載がある(非特許文献1参照)。
【0005】
粒状品は、機械散布において、到達飛距離が長く安定しており、散布時の発塵が少なく、機械内でのブリッジが生じづらく、流路の詰まりも生じづらいため、機械施肥に適している。また、粒状品は、粒径が2mm以上であり、粒径が大きいため圧壊強度が高く、比表面積が低いため、水分が低く固結が発生しづらく、さらに流動性が良好であるため安息角が低い。このように粒状品は、肥料として好ましい物理的性質を備えているため、高値で取引されている。
【0006】
一方、粉状品・細粒品は、飛距離・発塵・流路詰まりなどの問題が生じるため、機械施肥には適していない。さらに、粉状品・細粒品は、粒径が細かいため、圧壊強度が低く、比表面積も高いので、水分が高く固結が発生しやすく、さらに、流動性も悪いため、安息角が高い。このように粉状品・細粒品は、肥料として好ましい物理的性質を備えておらず、安価に取引されている。
【0007】
即ち、粉状品・細粒品の窒素肥料を造粒し、これらに肥料に適した物理的性質を付帯させることができれば、窒素肥料の付加価値を大幅に高めることが可能となる。
【0008】
窒素肥料の造粒・整粒方法としては、硫安粉末をロール型成型機でシート状に加圧成形し、次いでこれを所定の大きさに粉砕して硫安を造粒する際に0.1〜0.2%の水分を添加する硫安の造粒方法(特許文献1参照)が提案されている。
【0009】
また、肥料原料を押し出し造粒機で成型し、得られた成型品に水、有機溶媒又はこれらの混合物のいずれかを加え、次いで球形整粒機で成型することを特徴とする粒状肥料の製造方法(特許文献2参照)が提案されている。
【0010】
また、原料硫安をコンパクタで圧縮固形硫安とし、砕粒・分級後により造粒硫安を得ることを特徴とする硫安の造粒方法(特許文献3参照)が提案されている。
【0011】
また、窒素肥料の固結を防止する手法としては、パラフィンおよびリン酸エステルからなる添加剤を窒素肥料の表面にコーティングする窒素肥料の製造方法(特許文献4参照)が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に開示された方法にて造粒された硫安の硬度(圧壊強度)は、7〜9メッシュのものが1.0〜1.9(kg/粒)、9〜12メッシュのものが0.7〜1.1(kg/粒)と弱く、また水分を添加しているためアンモニア性窒素濃度が20.97%と低い。
【0015】
また、特許文献2に開示された方法では、水分や有機成分を添加しているため、添加・混合・乾燥の各工程が必要となり、コスト面で大いに不利となる。さらに、特許文献2に開示された方法では、整粒後にも俵状の粒子が含まれており、粒径も4.5〜7.0mmと大きいことから、機械による均一な散布が困難である問題もある。
【0016】
また、特許文献3に開示された方法では、整粒処理を実施しておらず、得られる造粒硫安が角の多い多面体となるため、角の切削に由来する粉塵の発生や、均一な散布が困難という問題もある。
【0017】
また、特許文献4に開示された方法では、固結防止剤の調整設備および添加設備が必要となり、さらに添加物自体の費用も考慮するとコスト面で大いに不利となる。
【0018】
このように、窒素肥料の造粒においては、原料に水分を添加して造粒装置で成形し、解砕・分級などの工程を経て造粒窒素肥料を製造する造粒方法が一般的であるが、圧壊強度・造粒品収量・篩収量等、生産・品質面で必要な条件と造粒条件の検討が著しく不十分であり、肥料に適した物理的性質を有する造粒窒素肥料を高収量で得ることができていなかった。
【0019】
また、造粒時に水分を添加しているケースにおいては、窒素濃度の低下を防ぐために乾燥工程が必要となる、装置接粉部分(窒素肥料が直接触れる部分)が腐食しやすい、乾燥により生じた空洞が製品の硬度を低下させる、などの問題があった。
【0020】
窒素肥料の固結を防止する方法においては、固結防止剤を添加する方式が一般的であるが、添加設備および添加剤が必要となり、さらに窒素肥料以外の成分を含むため単独の肥料として使用できないという問題があった。
【0021】
したがって、本発明では造粒時に添加物を加えることなく、圧壊強度および窒素濃度が高く、固結が起こりづらく、球形でバリ(造粒品の突起物)が少ない粒径2〜4mmの窒素肥料の造粒方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題につき鋭意検討を実施し、各種造粒条件をパラメータとして、造粒窒素肥料の圧壊強度(2.5kgf以上)、粒径2.0〜4.0mmの造粒窒素肥料収率(80%以上)、単位時間・単位長さあたりの造粒機が処理可能な原料窒素肥料量(3.0kg/mm・h以上)を達成するために、窒素肥料を圧縮造粒する際の、ポケットサイズS(mm)、造粒圧力P(kN/cm)、バリ厚みT(mm)を制御することで達成できることが判明した。
【0023】
さらに、圧縮造粒の後、解砕・整粒・分級を行うことで、平均バリ数が少なく肥料として好適な造粒窒素肥料を得ることができることを見いだした。より好ましくは、整粒機として球形整粒機を用い、処理時間および処理回転数を制御することにより、平均バリ数を大幅に減少させることが可能であることが判明した。
【0024】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)窒素肥料を圧縮造粒機へ供給・圧縮する方法において、圧縮造粒機のポケットサイズS(mm)、造粒圧力P(kN/cm)、バリ厚みT(mm)を、下式(A)、(B)および(C)を満たす範囲内にて制御することを特徴とする窒素肥料の造粒方法。
P≧0.586+0.482S+3.653T ・・・(A)
S≦5.55−0.0788P ・・・(B)
T≧0.589+0.152P−0.192S ・・・(C)
(2)圧縮造粒機は、ブリケット方式であることを特徴とする(1)に記載の窒素肥料の造粒方法。
(3)圧縮造粒機による造粒は、窒素肥料のみで行うことを特徴とする(1)または(2)に記載の窒素肥料の造粒方法。
(4)窒素肥料は、硫安であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一つに記載の窒素肥料の造粒方法。
(5)(1)〜(4)のいずれか記載の造粒方法によって窒素肥料を造粒した後、造粒窒素肥料の解砕、整粒および分級を行うことを特徴とする粒状品の窒素肥料の製造方法。
(6)整粒は、球形整粒機で行われることを特徴とする(5)に記載の粒状品の窒素肥料の製造方法。
(7)球形整粒機の処理時間は、0.5〜3分であることを特徴とする(6)に記載の粒状品の窒素肥料の製造方法。
(8)粒状品の窒素肥料は、圧壊強度が2.5kgf以上、平均粒径が2.0〜4.0mm、平均バリ数が1.0個未満である(5)〜(7)のいずれかに記載の粒状品の窒素肥料の製造方法。
(9)窒素濃度が21.0%以上、圧壊強度が2.5kgf以上、平均粒径が2.0〜4.0mm、平均バリ数が1.0個未満である粒状品の窒素肥料。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、造粒時に水分・固結防止剤のなどの添加無しで、バリが少なく、圧壊強度が高く、窒素濃度が高く、固結量が少なく、粉塵の発生も少ない造粒窒素肥料を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、原料窒素肥料を圧縮造粒機に供給・圧縮した後、窒素肥料を解砕・整粒し、分級機で造粒窒素肥料を得る方法において、圧縮造粒機のポケットサイズS、造粒圧力P、バリ厚みTを特定の相関式で制御することで、バリが少なく、圧壊強度が高く、窒素濃度が高く、固結量が少なく、粉塵の発生も少ない造粒窒素肥料を製造する造粒方法である。
【0028】
原料窒素肥料の種類については特に制限はないが、例えば硫安、塩安、硝安、石灰窒素、CDU窒素、IB窒素などを好ましく用いることができる。原料窒素肥料の製造方法に特に制限はないが、例えば原料硫安については、コークス・カプロラクタム・青酸・メタクリル酸エステル・チタン製造工程における副生硫安を用いることができる。また、造粒硫安を分級した際に、篩下品として回収される硫安を再度原料硫安として用いることも可能である。原料窒素肥料の粒径に特に制限はないが、平均粒径(「JIS K 0069化学製品のふるい分け試験方法」に基づいて測定)2.0mm以上の窒素肥料は、造粒不要であるため、平均粒径2.0mm未満の窒素肥料を用いることが好ましい。原料窒素肥料には、固結防止剤等の添加物が含まれていないことが好ましく、水分も少ないことが好ましい。
【0029】
圧縮造粒装置は、タブレット方式、板状方式、ブリケット方式の何れを用いても問題ないが、タブレット方式では生産効率が低く造粒窒素肥料の大量生産が困難であり、また板状方式では球形でバリの少ない造粒窒素肥料を生産することが困難であるため、ブリケット方式を用いることが好ましい。ブリケット方式の圧縮造粒装置としては、例えばブリケッタ(登録商標)BSS型(新東工業製)を好ましく用いることができる。
【0030】
原料窒素肥料を圧縮造粒装置に供給する方法は、特に制限はされないが、例えば原料窒素肥料をホッパーに貯蔵し、ホッパーに付帯した搬送コンベアより造粒装置に直接供給、またはホッパー搬送コンベアからベルトコンベアやパケットコンベア等を経由して造粒装置へ供給することができる。
【0031】
圧縮造粒機のポケットとは、圧縮表面にある凹部分のことを示し、ポケットサイズとは、ポケットの最大長辺のまたは最大径何れかの長い方のことを示す。例えば、ポケット形状が半球であれば、ポケットサイズは、半球2つからなる球の直径をしめす。圧縮造粒機のポケットサイズは、2.0〜5.0mmであることが好ましい。圧縮造粒機のポケットサイズが2.0mm未満および5.0mmを超えて大きい場合、分級時に最終製品として得られる造粒窒素肥料の収量が低下するため、生産性の低下につながる。圧縮造粒機のポケット形状に特に制限はないが、造粒窒素肥料が球形となる点より半球形であることが好ましい。
【0032】
造粒圧力とは、原料窒素肥料に加わる総荷重を有効幅で割った値(線圧)を示し、有効幅とは、原料窒素肥料に荷重が加わる部分における、圧縮機側の長径を示す。例えはタブレット方式であれば有効幅はタブレット部分の長径であり、ローラーを用いたブリケット方式であれば、有効幅はローラーにて原料窒素肥料が圧縮されている部分の長さである。造粒圧力は、0.6〜30.0kN/cmの範囲内にあることが好ましい。造粒圧力が上記を超えて低くなると、圧力不足のため、窒素肥料の造粒自体が起こらない。造粒圧力が上記を超えて高くなると、圧縮造粒機に必要以上の荷重がかかるため、装置寿命が著しく低下する。
【0033】
圧縮造粒機のバリ厚みとは、原料窒素肥料に荷重が加わる部分における原料窒素肥料側の短径を示す。例えばタブレット方式であれば、バリ厚みはタブレット部分の短径であり、ローラーを用いたブリケット方式であれば、バリ厚みはロール間距離(クリアランス)の最も短い長さのことである。バリ厚みは、1.00〜2.50mmの範囲内にあることが好ましく、1.20〜2.00mmの範囲内にあることがより好ましい。バリ厚みが上記を超えて低くなると、造粒窒素肥料の圧壊強度・収量ともに低下する傾向にある。バリ厚みが上記を超えて高くなると、造粒窒素肥料の形状が肥料散布に不適となるため好ましくない。
【0034】
一般的な造粒プロセスにおいて、造粒品の圧壊強度は、「造粒圧力の増加」「原料粒子が広い粒度分布をもつこと」「水分の添加」などで向上可能と考えられている。これら造粒パラメータに加え、圧縮造粒機のポケットサイズS(mm)、バリ厚みT(mm)の影響を定量的に評価し、重回帰分析を行ったところ、下記式(A)、(B)および(C)を満たす条件で造粒することで、肥料として用いるのに好適な窒素肥料を得ることができることを見いだした。
P≧0.586+0.482S+3.653T ・・・(A)
S≦5.55−0.0788P ・・・(B)
T≧0.589+0.152P−0.192S ・・・(C)
【0035】
(A)式を満たす造粒圧力Pで圧縮造粒を行うことで、圧壊強度2.5kgf以上の造粒窒素肥料を得ることができる。また、(B)式を満たすポケットサイズとすることで、分級収率80%以上を達成することができる。さらに、(C)式を満たすバリ厚みとすることで、高い供給量で圧縮造粒を行うことができるため、効率よく造粒窒素肥料を得ることができる。ここで、単位時間・単位長さあたりの造粒機が処理可能な原料窒素肥料量を供給量と称する。
【0036】
上記の(A)〜(C)式より、肥料として望ましい物性および生産効率の高い造粒窒素肥料を得るためには、単純に「造粒圧力」「ポケットサイズ」「バリ厚み」を変動させるのみでは達成不可能であり、適切な範囲内に制御する必要があることが確認できる。ポケットサイズS、造粒圧力P、バリ厚みTがP≧0.586+0.482S+3.653Tの範囲外にあると、造粒窒素肥料の強度が十分に得られない。ポケットサイズSおよび造粒圧力PがS≦5.55−0.0788Pの範囲外にあると、粒径2〜4mmの造粒窒素肥料の収量が低下する。ポケットサイズS、造粒圧力P、バリ厚みTがT≧0.589+0.152P−0.192Sの範囲外にあると、供給量が低下するため、造粒窒素肥料の生産効率が低下する。
【0037】
単位時間・単位長さあたりの造粒機が処理可能な原料窒素肥料量(以下造粒効率と称する)とは、造粒機に供給した原料窒素肥料量を1時間あたりの供給量に換算し、さらに有効幅にて除算した、単位時間・単位長さあたりの造粒能力を示す。
【0038】
圧縮造粒機で造粒した窒素肥料は、解砕、整粒、分級を行うことで、肥料として好ましい粒状品の窒素肥料を得ることができる。
【0039】
粒径の揃った造粒窒素肥料を得るために、解砕機を用いて圧縮造粒後の窒素肥料を解砕することが好ましい。解砕機の種類に特に制限は無く、例えばジョークラッシャー・ロールクラッシャーなどの各種クラッシャーや、ローラーミル・カッティングミルなどの各種ミル、解砕メディアを添加した振動篩などが好ましく用いられる。また、これらの解砕機を組み合わせ用いることも可能である。
【0040】
球形でバリの少ない造粒窒素肥料を得るために、整粒機を用いて整粒することが好ましい。整粒機の種類に特に制限はなく、例えば高速転動方式、オシレータ式、架砕方式、遠心回転方式などが好ましく用いられ、高速転動方式の球形整粒機であるマルメライザー(登録商標:ダルトン製)を用いて造粒窒素肥料を整粒することがより好ましい。
【0041】
整粒機の処理時間は、0.3〜5.0分の範囲内にあることが好ましく、0.5〜3.0分の範囲内であることがより好ましい。整粒機の処理時間が上記を超えて低くなると、造粒窒素肥料のバリ除去が不十分となる。整粒機の処理時間が上記を超えて高くなると、バリ以外の部分が切削される量が増加し、造粒窒素肥料の収量が低下する。さらに整粒処理に必要な時間が多くなるため、単位時間あたりの造粒窒素肥料収量も低下する。
【0042】
整粒機の回転速度は、800〜2000回転/分の範囲内にあることが好ましく、1000〜1500回転/分の範囲内にあることがより好ましい。整粒機の回転速度が上記の範囲より低くなると、造粒窒素肥料のバリ除去が不十分となり、さらに整粒処理に必要な時間が多くなるため、単位時間あたりの造粒窒素肥料収量も低下する。整粒機の回転速度が上記の範囲を超えて高くなると、騒音増加および機器寿命の低下といった問題が生ずる。
【0043】
所定の粒径以上の造粒窒素肥料を得るために、分級機を用いて造粒窒素肥料を分級することが好ましい。乾式分級が可能なものであれば、分級機の種類に特に制限はないが、振動篩を用いることが好ましい。篩の目開きは、所定の粒径を得られる大きさであれば特に制限はないが、1.8〜2.2mm、および3.8〜4.2mmの目開きであることが好ましく、これら目開きを有する篩を組み合わせて粒径2.0〜4.0mmの造粒窒素肥料を得る分級方法が好ましい。
【0044】
バリが少なく、圧壊強度が高く、窒素濃度が高く、粉塵の発生も少なく、固結が起こりづらい粒状品の窒素肥料を得るために、圧縮造粒機を用いて原料窒素肥料を造粒し、解砕機を用いて圧縮造粒後の窒素肥料を解砕した後、球形整粒機を用いて解砕後の窒素肥料を整粒し、分級機を用いて整粒の窒素肥料を分級することが好ましい。各工程における窒素肥料の輸送方法に制限はないが、自然落下・コンベア輸送・風送などを用いることが可能であり、コンベア輸送で原料窒素肥料を造粒機に輸送した後、自然落下で解砕機・球形整粒機・分級機へ輸送する方法が好ましい。これら輸送機器も含めた機器の接粉部分については、窒素肥料に耐食性を持つ材質を用いることが好ましく、SUS316Lまたは樹脂を用いることがより好ましい。
【0045】
窒素肥料として硫安を原料に用いる際には、原料硫安中の窒素濃度は21.0%以上であることが好ましい。原料硫安中の窒素濃度の上限は通常21.2%である。
【0046】
なお、硫安(原料硫安料、粒状品硫安)中の窒素濃度は以下に記載する方法(以下ホルモル法と称する)にて測定した値を用いた。
【0047】
硫安1g(W)を、200mlメスフラスコに入れ、イオン交換水にて200mlにメスアップした硫安溶液を20ml採取し、100mlビーカーに入れた後、0.1N塩酸1ml、ホルムアルデヒド溶液10mlを加え検液とする。検液を0.1NNaOHで滴定し、滴定点1(PH5.75付近)までのNaOH消費量Ep1(ml)、および滴定点2(PH7付近)までのNaOH消費量Ep2(ml)を求め、1.40067×(Ep2−Ep1)/Wを窒素濃度(%)として算出する。
【0048】
以下、添付図面にもとづき、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本発明の造粒窒素肥料を造粒する造粒装置の一例を示す概略図である。
【0049】
図1に示す窒素肥料造粒装置100は、原料窒素肥料を一時的に貯蔵するホッパー1と、ホッパー1から供給される原料窒素肥料を搬送するスクリューコンベア2と、スクリューコンベア2から搬送された原料窒素肥料を搬送するベルトコンベア3と、原料窒素肥料を所定範囲内のポケットサイズ・圧力・バリ厚みに造粒する造粒機4と、造粒後の窒素肥料を破砕する粗解砕機5と、破砕後の造粒の窒素肥料を解砕する解砕篩機6と、解砕篩下品を充填するフレコン7と、解砕篩上品を搬送するコンベア8と、解砕篩上品の整粒を行う球形整粒機9と、整粒の窒素肥料を篩上品と篩下品に分級する分級篩機10と、篩下品を充填するフレコン11と、篩上品を充填するフレコン12と、を備える。
【0050】
このように構成された窒素肥料造粒装置100は、ホッパー1より、スクリューコンベア2およびベルトコンベア3を通じて造粒機4へ原料窒素肥料を供給し、所定範囲内のポケットサイズ・圧力・バリ厚みにて窒素肥料を造粒した後、粗解砕機5にて造粒窒素肥料を解砕する。
【0051】
続いて、窒素肥料造粒装置100は、解砕後の造粒窒素肥料を、所定範囲内の目開きを有する解砕篩6を用い、所定の振動数・滞留時間にて解砕篩上品と解砕篩下品に分級し、コンベア8を用いて解砕篩上品を球形整粒機9へ供給する。その後、球形整粒機9にて、所定の滞留時間・回転数にて整粒を行った整粒の窒素肥料を、所定範囲内の目開きを有する分級篩10を用い、所定の振動数・滞留時間にて篩上品と篩下品に分級し、篩上品を製品造粒窒素肥料としてフレコン12に充填する。続いて、解砕篩下品および篩下品をフレコン7およびフレコン11に充填し、原料窒素肥料としてホッパー1に再度投入する。
【0052】
本発明の造粒方法で得られる粒状品の窒素肥料は、圧壊強度が2.5kgf以上、平均粒径が2.0〜4.0mm、平均バリ数が1.0個未満であるという特徴を有し、肥料として用いるのに適している。造粒する際に、添加物などを添加しないために、ホルモル法にて測定した窒素濃度が低下せず、肥料としての効率が高い。また、本発明の造粒方法で得られる粒状品の窒素肥料は、圧壊強度が2.5kgf以上と高いため、肥料輸送や機械散布の際に粒子が破壊されづらく、粉塵の発生を抑制しつつ肥料の均一な散布が可能であるため、作業効率が向上する。ここで、圧壊強度は、造粒品の窒素肥料を大気中に常温で14日放置した後、無作為に22粒を選択し、木屋式硬度計を用いて圧壊強度を測定した後、最大値・最小値を除く20点の平均値を「圧壊強度」とした。また、本発明の造粒方法で得られる粒状品の窒素肥料は、平均粒径が2.0〜4.0mmと機械散布に適した粒径であり、他の肥料との混合使用にも好適である。さらに、本発明の造粒方法で得られる粒状品の窒素肥料は、平均バリ数が1.0個未満であるために、肥料輸送や機械散布の際のバリ破壊に伴う粉塵発生が少なく、作業環境が向上する。平均バリ数は、0.8個以下が好ましく、さらに好ましくは0.5個以下である。ここで、平均バリ数は、造粒品の窒素肥料を大気中に常温で14日放置したあと無作為に選択した造粒品の窒素肥料100粒の突起物を目視で勘定し、突起物が複数個あるものはバリ2個、突起物が1つのものはバリ1個として、造粒品の窒素肥料1粒あたりのバリ個数を求め「平均バリ数」とした。
【実施例】
【0053】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0054】
特に記載のない限りは、原料窒素肥料としては、カプロラクタム硫酸塩にアンモニアを添加し、カプロラクタム水溶液と硫酸アンモニウム水溶液を分離した後、マグマ型晶析装置にて晶析し乾燥した硫安(以下「結晶硫安」と称する)を用いた。
【0055】
(実施例1)
結晶硫安を造粒機としてのブリケッタ(登録商標)BSS−IH型(新東工業製)に供給し、ロール有効幅を150mm、ロール圧力を9.20kN/cm、バリ厚みを1.40mm、ポケットサイズを3.5mm、ロール回転速度を60rpmの条件にて造粒し、粗砕機にて破砕した後、目開き2mmの篩を有する解砕篩機(興和工業所製)に投入し、5分間解砕した。続いて、解砕メディア(直径2cmの正四面体)10kgが投入された遠心回転式整粒機(新東工業製)に篩上解砕品を送り、回転速度を30rpmで5分間整粒処理を行った後に、目開き2mmおよび4mmの篩を有する円形振動篩機(興和工業所製)に送り、5分間分級を行った後、目開き2mmの篩上品を造粒窒素として回収した。
【0056】
1時間あたりの原料硫安処理量を「原料供給量」、原料供給量をロール有効幅で除した値を「造粒効率」、解砕篩にて篩上品として回収した造粒硫安の割合を「解砕収率」、分級用の円形振動篩にて回収した造粒硫安の割合を「分級収率」、回収した製品造粒硫安の1時間あたりの収量を「全収量」、全収量をロール有効幅で除した値を「生産効率」とした。「圧壊強度」「平均バリ数」「窒素濃度」は前述の手法にて測定した。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例2)
結晶硫安を60wt%、実施例1にて篩下品として回収した硫安を40wt%混合させたものを原料硫安として用い、ロール圧力を8.73kN/cm、バリ厚みを1.41mmとした他は、実施例1と同一の条件にて造粒硫安の造粒・解砕・分級を実施し、原料供給量、造粒効率、解砕収率、分級収率、全収量、生産効率、圧壊強度、平均バリ数、窒素濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例3)
実施例2で得られた造粒硫安11.5kgを、マルメライザー(登録商標:ダルトン製)に供給し、回転数1350回転/分にて2分間球形整粒を実施した後、圧壊強度・平均バリ数を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
また、球形整粒後の造粒硫安の回収量は、11.1kgであり、整粒収率は、96.4%であったことから、実施例2の結果に球形整粒処理を組み合わせた全収量は、334kg/hと計算された。
【0060】
さらに、分級操作後の造粒硫安の表面を着色した後、球形整粒処理を実施したところ、バリ部分は、球形整粒処理により削られていたが、その他部位の着色に変化はなかったことから、球形整粒処理では、バリ以外の部分は殆ど削れていないと推定される。
【0061】
(実施例4)
結晶硫安を60wt%、実施例1にて篩下品として回収した硫安を40wt%混合させたものを原料硫安として用い、ロール圧力を8.27kN/cm、バリ厚みを1.38mm、ポケットサイズを3.90mmとした他は、実施例1と同一の条件にて造粒硫安の造粒・解砕・分級を実施し、原料供給量、造粒効率、解砕収率、分級収率、全収量、生産効率、圧壊強度を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例5)
ロール圧力を8.00kN/cm、バリ厚みを1.20mmとした他は、実施例1と同一の条件にて造粒硫安の造粒・解砕・分級を実施し、原料供給量、造粒効率、解砕収率、分級収率、全収量、生産効率、圧壊強度、平均バリ数を測定した。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例6)
結晶硫安を60wt%、実施例1にて篩下品として回収した硫安を40wt%混合させたものを原料硫安として用い、ロール圧力を6.47kN/cm、バリ厚みを1.39mmとした他は、実施例1と同一の条件にて造粒硫安の造粒・解砕・分級を実施し、原料供給量、造粒効率、解砕収率、分級収率、全収量、生産効率、圧壊強度を測定した。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例1)
ロール圧力を10.00kN/cm、バリ厚みを0.95mm、ポケットサイズを4.80mmとする他は実施例1と同一の条件にて硫安の造粒・解砕・分級を実施し、原料供給量、造粒効率、解砕収率、分級収率、全収量、生産効率、圧壊強度、平均バリ数を測定した。本条件では(B)式および(C)式を満たしていないため、表1に示す通り、対応する「原料供給量」および「分級収率」が実施例1〜6と比較して低下している。
【0065】
(比較例2)
結晶硫安を60wt%、実施例1にて篩下品として回収した硫安を40wt%混合させたものを原料硫安として用い、ロール圧力を9.60kN/cm、バリ厚みを1.25mm、ポケットサイズを4.80mmとする他は実施例1と同一の条件にて硫安の造粒・解砕・分級を実施し、原料供給量、造粒効率、解砕収率、分級収率、全収量、生産効率、圧壊強度を測定した。本条件では(B)式を満たしていないため、表1に示す通り、対応する「分級収率」が実施例1〜6と比較して低下している。
【0066】
(比較例3)
ロール圧力を10.00kN/cm、バリ厚みを0.75mm、ポケットサイズを2.90mmとする他は実施例1と同一の条件にて硫安の造粒・解砕・分級を実施し、原料供給量、造粒効率、解砕収率、分級収率、全収量、生産効率を測定した。本条件では(C)式を満たしていないため、表1に示す通り、対応する「原料供給量」が実施例1〜6と比較して低下している。
【0067】
(比較例4)
結晶硫安に予め1wt%に相当する水を噴霧し、ロール圧力を9.93kN/cm、バリ厚みを1.00mm、ポケットサイズを3.90mmとする他は、実施例1と同一の条件にて硫安の造粒・解砕・分級を実施し、原料供給量、造粒効率、解砕収率、分級収率、全収量、生産効率、圧壊強度、平均バリ数、窒素濃度を測定した。本条件では(C)式を満たしていないため、表1に示す通り、対応する「原料供給量」が実施例1〜6と比較して低下している。また、水を添加しているので、窒素濃度が実施例1〜3よりも低く、肥料としての効率が劣る。
【0068】
【表1】
【0069】
(実施例7)
結晶硫安および後述の目開き2mm篩下品を混合した原料硫安を、ブリケッタ(登録商標)BSS−IV型(新東工業製)に供給し、ロール有効幅を230mm、ロール圧力を10.50kN/cm、バリ厚みを1.60mm、ポケットサイズを3.90mm、ロール回転速度を60rpmの条件にて造粒し、粗砕機にて破砕した後、解砕メディア(直径2cmの正四面体)300個が投入された目開き6.7mm・4mm・2mmの篩を有する円形振動篩機(興和工業所製)に送り、連続的に分級・解砕を行った後、目開き2mmの篩上品を製品造粒硫安として回収した。
【0070】
1時間あたりの原料硫安処理量を「原料供給量」、原料供給量をロール有効幅で除した値を「造粒効率」、円形振動篩にて目開き2mmの篩上品として回収した造粒硫安の割合を「解砕収率」、回収した製品造粒硫安の1時間あたりの収量を「全収量」、全収量をロール有効幅で除した値を「生産効率」とした。「圧壊強度」「窒素濃度」は前述の手法にて測定した。結果を表2に示す。
【0071】
(実施例8)
実施例7で得られた造粒硫安をマルメライザー(登録商標)Q−1000T型(ダルトン製)へ連続的に供給し、回転数1350回転/分にて2分間球形整粒を実施した後、目開き2mmの篩を有する円形振動篩機(興和工業所製)に送り、目開き2mmの篩上品を回収し圧壊強度・平均バリ数を測定した。結果を表2に示す。
【0072】
(比較例5)
ロール圧力を12.00kN/cm、バリ厚みを1.20mmとする他は、実施例7と同一の条件にて硫安の造粒・解砕・分級を実施し、原料供給量、造粒効率、解砕収率、分級収率、全収量、生産効率を測定した。本条件では(C)式を満たしていないため、表2に示す通り、対応する「原料供給量」が実施例7と比較して低下している。
【0073】
【表2】
【0074】
次に、造粒品硫安と結晶硫安の保管時の固結を評価する。固結割合が少ないほど、輸送時や保管時に固まりとなることが少なく、機械散布に適した肥料とすることができる。
【0075】
(実施例9)
混合肥料の硫安として、実施例1で得られた粒状品造粒硫安を、縦140mm×横200mmの袋に750g充填して密封した固結評価サンプルを3つ作成し、三段に重ねた後に堆積荷重60kgを加え、恒温室内にて「35℃で12時間保持」「15℃で12時間保持」を2週間繰り返した後に、硫安の固結重量および固結硬度(固結物を持ち上げ、崩壊するまでの荷重)を測定した結果、固結重量から求められる平均固結割合は、32.8wt%であり、固結硬度の最大値は、0.0(固結物を持ち上げると、荷重を加えなくても崩壊する)である。このため、実質的な固結割合は、0wt%と考えられる。結果を表3に示す。
【0076】
(比較例6)
混合肥料(結晶硫安54.4wt%、焼リン3.5%、リン酸第二アンモニウム16.0wt%、塩化カリウム13.0wt%、硫化カリウム13.1wt%)750gを、実施例9と同様の手法にて固結テストを実施した結果、固結重量から求められる平均固結割合は、47.4wt%であり、固結硬度の最大値は、0.4kgであった。結果を表3に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
次に、結晶硫安と比較して溶解性を評価する。溶解時間が長いほど、肥料としたときの効果が長続きするので好ましい。
【0079】
(実施例10)
200mlのビーカーに、イオン交換水100ml、実施例1にて得られた造粒硫安5gおよび攪拌子を投入し、撹拌を開始してから固体硫安が視認できなくなるまでの時間(溶解時間)を測定した結果、硫安の溶解時間は105秒であった。結果を表4に示す。
【0080】
(比較例7)
溶解試験に結晶硫安を用いる以外は、実施例10と同様の手法にて測定した結果、硫安の溶解時間は38秒であった。結果を表4に示す。
【0081】
(比較例8)
溶解試験に結晶硫安を目開き2mmの篩にて処理し、篩上の硫安のみを用いる以外は、実施例10と同様の手法にて測定した結果、硫安の溶解時間は60秒であった。結果を表4に示す。
【0082】
【表4】