(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において参照する図面における各部の大きさや厚さ等は、実際の半導体発光素子等の寸法とは異なっている場合がある。
【0012】
図1は、実施の形態1における半導体発光素子1の上面図の一例である。また、
図2は
図1におけるII−II断面図であり、
図3は
図1におけるIII−III断面図であり、
図4は
図1におけるIV−IV断面図である。ここで、本実施の形態の半導体発光素子1は、例えば
図1に示したように上方からみたときに長方形状を呈しており、図中における縦方向が短辺側となっており、図中における横方向が長辺側となっている。なお、以下の説明においては、必要に応じて、
図1における縦方向を短手方向と称することがあり、
図1における横方向を長手方向と称することがある。
【0013】
(半導体発光素子)
本実施の形態の半導体発光素子1は、基板110と、基板110の上に積層されるn型半導体層120と、n型半導体層120の上に積層される発光層130と、発光層130の上に積層されるp型半導体層140とを備える。なお、以下の説明においては、必要に応じて、これらn型半導体層120、発光層130およびp型半導体層140を、まとめて積層半導体層100と呼ぶことがある。また、基板110とn型半導体層120との間には、必要に応じて、中間層(図示せず)や下地層(図示せず)を設けてもよい。
【0014】
ここで、n型半導体層120は、基板110上に積層されるnコンタクト層121と、nコンタクト層121上に積層され且つ発光層130の積層対象となるnクラッド層122とを備えている。なお、ここでは詳細について説明しないが、p型半導体層140についても、発光層130上に積層されるpクラッド層(図示せず)と、pクラッド層上に積層されるpコンタクト層(図示せず)とを含む構成とすることができる。
【0015】
また、半導体発光素子1は、p型半導体層140と電気的に接続されるp側給電部150と、n型半導体層120と電気的に接続されるn側給電部160とを備えている。さらに、半導体発光素子1は、p側給電部150とn側給電部160との間において、これらp側給電部150およびn側給電部160を電気的に絶縁する給電絶縁層170と、外部から半導体発光素子1の内部に進入しようとする水分から発光層130等を保護するとともに、p側給電部150とn側給電部160とを電気的に絶縁する保護絶縁層180とを備えている。
【0016】
ここで、p側給電部150は、p型半導体層140上に積層されるとともに給電絶縁層170の積層対象となるp側透明導電層151と、給電絶縁層170上に形成されるp側給電電極152およびp側補助電極153と、給電絶縁層170を貫く孔を介して、p側透明導電層151とp側給電電極152またはp側補助電極153とを電気的に接続する複数(この例では7個)のp側接続電極154とを備えている。
【0017】
本実施の形態のp側給電部150において、p側透明導電層151は、p型半導体層140の上面のうち、周縁部を除くほぼ全面を覆うように形成されている。
【0018】
また、本実施の形態のp側給電部150において、第2給電電極の一例としてのp側給電電極152は、半導体発光素子1の上面のうち、長手方向における一端側(
図1において右側)且つ短手方向における中央部に配置されており、上面側からみたときに円形状を呈するようになっている。p側給電電極152の上面には、保護絶縁層180が積層されておらず(例えば
図3参照)、p側給電電極152が外部に露出するようになっている。そして、p側給電電極152は、図示しないボンディングワイヤ等を用いた、外部との電気的な接続に用いられる。
【0019】
さらに、本実施の形態のp側給電部150において、第2補助電極の一例としてのp側補助電極153は、一端側がp側給電電極152と一体化するとともに他端側が半導体発光素子1の長手方向に沿って延びるL字状のp側第1補助電極153aと、一端側がp側給電電極152と一体化するとともに他端側が半導体発光素子1の長手方向に沿って延びるL字状のp側第2補助電極153bとを有している。ここで、本実施の形態では、p側第1補助電極153aが半導体発光素子1の短手方向一端側(
図1における上部側)に偏在し、且つ、p側第2補助電極153bが半導体発光素子1の短手方向他端側(
図1における下部側)に偏在して配置されることで、p側第1補助電極153aとp側第2補助電極153bとが直接接触しないようになっている。そして、これらp側第1補助電極153aおよびp側第2補助電極153bの上面には、保護絶縁層180が積層されている(例えば
図2、
図4参照)。また、本実施の形態では、第2接続電極の一例としてのp側接続電極154が、p側給電電極152の下方に1つ、p側第1補助電極153aの下方に3つ、p側第2補助電極153bの下方に3つ、それぞれ設けられている。
【0020】
一方、n側給電部160は、給電絶縁層170上に形成されるn側給電電極162およびn側補助電極163と、給電絶縁層170、p側給電部150におけるp側透明導電層151、p型半導体層140、発光層130およびn型半導体層120におけるnクラッド層122を貫く孔を介して、n型半導体層120におけるnコンタクト層121とn側給電電極162またはn側補助電極163とを電気的に接続する複数(この例では3個)のn側接続電極164とを備えている。
【0021】
本実施の形態のn側給電部160において、第1給電電極の一例としてのn側給電電極162は、半導体発光素子1の上面のうち、長手方向における他端側(
図1において左側)且つ短手方向における中央部に配置されており、上面側からみたときに半円形状を呈するようになっている。また、n側給電電極162の上面には、保護絶縁層180が積層されておらず(例えば
図3参照)、n側給電電極162が外部に露出するようになっている。そして、n側給電電極162は、図示しないボンディングワイヤ等を介した、外部との電気的な接続に用いられる。
【0022】
また、本実施の形態のn側給電部160において、第1補助電極の一例としてのn側補助電極163は、一端側がn側給電電極162と一体化するとともに他端側が半導体発光素子1の長手方向に沿い且つp側給電電極152に向かって延びるものが1つだけ設けられている。これにより、n側補助電極163は、p側給電部150におけるp側第1補助電極153aとp側第2補助電極153bとによって挟まれた領域に配置されている。そして、n側補助電極163の上面には、保護絶縁層180が積層されている(例えば
図3参照)。また、本実施の形態では、第1接続電極の一例としてのn側接続電極164が、n側給電電極162の下方に1つ、n側補助電極163の下方に2つ、それぞれ設けられている。
【0023】
ここで、各n側接続電極164に対応して設けられる複数の孔のそれぞれの側壁には、上述した給電絶縁層170が設けられている。これにより、各n側接続電極164が、少なくともp側透明導電層151、p型半導体層140および発光層130と直接接触しないようになっている。一方、これら複数の孔におけるそれぞれの下端部には、給電絶縁層170が設けられておらず、各n側接続電極164とnコンタクト層121とが直接接触するようになっている。
【0024】
そして、本実施の形態では、例えば
図1に示すように上面側から見たときに、2つのp側接続電極154と1つのn側接続電極164とが三角形状を呈するように配置されており、あるいは、1つのp側接続電極154と2つのn側接続電極164とが三角形状を呈するように配置されている。なお、半導体発光素子1において、p側給電部150(p側透明導電層151、p側給電電極152、p側補助電極153およびp側接続電極154)およびn側給電部160(n側給電電極162、n側補助電極163およびn側接続電極164)は、両者が直接接触することがないように、その配置が定められている。
【0025】
また、給電絶縁層170は、p側接続電極154の形成部位(7箇所)を除いた、p側透明導電層151の上面を覆っている。そして、給電絶縁層170は、上述したように、各n側接続電極164に対応して設けられる複数の孔のそれぞれの側壁も覆っている。
【0026】
さらに、保護絶縁層180は、p側給電部150におけるp側給電電極152およびn側給電部160におけるn側給電電極162を除く半導体発光素子1の上面を覆っている。
【0027】
なお、本実施の形態の半導体発光素子1においては、例えば
図2〜
図4にも示したように、給電絶縁層170および保護絶縁層180が、さらに、発光層130およびp型半導体層140の側面も覆うようになっている。
【0028】
ここで、本実施の形態においては、p側給電部150を構成するp側給電電極152およびp側補助電極153(ただし、p側接続電極154の形成部位を除く)、そして、n側給電部160を構成するn側給電電極162およびn側補助電極163(ただし、n側接続電極164の形成部位を除く)の下方(発光層130へと向かう側)に、給電絶縁層170が位置するようになっている。
【0029】
一方、本実施の形態では、これらp側給電電極152、p側補助電極153、n側給電電極162およびn側補助電極163が存在しない部位に、給電絶縁層170および保護絶縁層180が連続して一体化した状態で位置するようになっている。
【0030】
この半導体発光素子1においては、p側給電部150におけるp側給電電極152を正極とするとともに、n側給電部160におけるn側給電電極162を負極とし、p側給電電極152からn側給電電極162に向かう電流を流すことで、発光層130を発光させるようになっている。
【0031】
本実施の形態の半導体発光素子1は、発光層130から出力される光を、p側給電部150およびn側給電部160が形成される側から取り出す、フェイスアップ型の発光ダイオードである。ここで、本実施の形態の半導体発光素子1では、p側給電部150を構成するp側透明導電層151、p側給電電極152、p側補助電極153およびp側接続電極154と、n側給電部160を構成するn側給電電極162およびn側補助電極163とが、発光層130からみたときにp型半導体層140よりも奥側に配置されている。また、別の観点からみれば、本実施の形態の半導体発光素子1では、p側給電部150を構成するp側透明導電層151、p側給電電極152、p側補助電極153およびp側接続電極154の下方、および、n側給電部160を構成するn側給電電極162およびn側補助電極163の下方(ただし、n側接続電極164の形成部位の下方を除く)にも、発光層130が存在していることになる。
【0032】
次に、
図1〜
図4を参照しつつ、半導体発光素子1の各構成要素について、より詳細に説明を行う。
なお、以下の説明においては、化合物半導体およびIII族窒化物半導体の一例としてのAlGaN、GaN、GaInNに関し、各元素の組成比を省略した形で記述する場合がある。
【0033】
<基板>
基板110としては、III族窒化物半導体結晶が表面にエピタキシャル成長されるものであれば、特に限定されず、各種の基板材料を選択して用いることができる。例えば、サファイア、SiC、GaN、シリコン等からなる基板材料を用いることができる。
また、上記基板材料の中でも、透明基板が望ましく、特に、C面を主面とするサファイアを基板110に用いることが、品質、コストの面で好ましい。サファイアを基板110として用いる場合は、サファイアのC面上に、表面に凹凸加工を施し、中間層(バッファ層)を形成するとよい。
【0034】
<中間層>
中間層は、多結晶のAl
xGa
1-xN(0≦x≦1)からなるものが好ましく、単結晶のAl
xGa
1-xN(0≦x≦1)のものがより好ましく、例えば、多結晶のAl
xGa
1-xN(0≦x≦1)からなる厚さ10〜500nmのものとすることができる。なお、中間層は、基板110と後述する下地層との格子定数の違いを緩和し、基板110の(0001)面(C面)上にc軸配向した単結晶層の形成を容易にする働きがある。したがって、中間層の上に単結晶の下地層を積層すると、より一層結晶性の良い積層半導体層100を形成することができる。
【0035】
<下地層>
下地層としては、Al
xGa
yIn
zN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)を用いることができるが、Al
xGa
1-xN(0≦x<1)を用いると、結晶性の良い下地層を形成しやすくなる。
下地層の膜厚は0.1μm以上が好ましく、この膜厚以上にした方が結晶性の良好なAl
xGa
1-xN層が得られやすい。凹凸加工基板の凹凸を埋め平坦化する厚さが望ましい。また、下地層の膜厚は10μm以下が好ましい。
【0036】
<積層半導体層>
III族窒化物半導体を含んで構成される積層半導体層100は、例えば
図2〜
図4に示すように、基板110上に、n型半導体層120、発光層130およびp型半導体層140の各層が、この順で積層されて構成されている。また、n型半導体層120、発光層130およびp型半導体層140の各層は、それぞれ、複数の半導体層から構成してもよい。
ここで、第1半導体層の一例としてのn型半導体層120は、電子をキャリアとして電気伝導を行うものであり、第2半導体層の一例としてのp型半導体層140は、正孔をキャリアとして電気伝導を行うものである。この例においては、電子をキャリアとするn型が第1導電型に対応しており、正孔をキャリアとするp型が第2導電型に対応している。
【0037】
<n型半導体層>
n型半導体層120は、基板110側(この例では下地層)に積層されるnコンタクト層121と、nコンタクト層121に積層されるnクラッド層122とで構成されている。ただし、nコンタクト層121がnクラッド層122を兼ねることも可能である。また、前述の下地層をn型半導体層120に含めてもよい。
【0038】
nコンタクト層121は、n側給電部160(より具体的にはn側接続電極164)を設けるための層である。nコンタクト層121としては、Al
xGa
1-xN層(0≦x<1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)を用いるとよい。
【0039】
nクラッド層122は、発光層130へのキャリア(ここでは電子)の注入とキャリアの閉じ込めとを行なう層である。nクラッド層122はAlGaN、GaN、GaInNなどで形成することが可能である。また、これらの構造のヘテロ接合や複数回積層した超格子構造としてもよい。nクラッド層122をGaInNで形成する場合には、後述する発光層130のGaInNのバンドギャップよりも大きくすることが望ましい。
【0040】
なお、nクラッド層122を、超格子構造を含む層とする場合には、10nm以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第1クラッド層と、n側第1クラッド層と組成が異なるとともに10nm以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第2クラッド層とが積層された構造を含むものとしてもよい。
また、nクラッド層122は、n側第1クラッド層とn側第2クラッド層とが交互に繰返し積層された構造を含んだものであってもよく、この場合には、GaInNとGaNとの交互構造又は組成の異なるGaInN同士の交互構造とすることが好ましい。
【0041】
<発光層>
発光層130としては、単一量子井戸構造あるいは多重量子井戸構造などを採用することができる。
量子井戸構造の井戸層としては、通常、Ga
1-yIn
yN(0<y<0.4)からなるIII族窒化物半導体層が用いられる。井戸層の膜厚としては、量子効果の得られる程度の膜厚、例えば1〜10nmとすることができ、好ましくは2〜6nmとすると発光出力の点で好ましい。
また、多重量子井戸構造の発光層130の場合は、上記Ga
1-yIn
yNを井戸層とし、井戸層よりバンドギャップエネルギーが大きいAl
zGa
1-zN(0≦z<0.3)を障壁層とする。井戸層および障壁層には、不純物をドープしてもよいし、しなくてもよい。
【0042】
<p型半導体層>
p型半導体層140は、発光層130に積層されるpクラッド層と、pクラッド層に積層されるpコンタクト層とで構成することが好ましい。ただし、pコンタクト層がpクラッド層を兼ねることも可能である。
【0043】
pクラッド層は、発光層130へのキャリア(ここでは正孔)の閉じ込めとキャリアの注入とを行なう層である。pクラッド層としては、発光層130のバンドギャップエネルギーより大きくなる組成であり、発光層130へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、例えばAl
xGa
1-xN(0<x≦0.4)を用いることができる。
pクラッド層が、このようなAlGaNからなると、発光層130へのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。pクラッド層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜400nmであり、より好ましくは5〜100nmである。
また、pクラッド層は、上述したnクラッド層122と同様に、複数回積層した超格子構造としてもよく、この場合には、AlGaNおよび組成が異なるAlGaNの交互構造又はAlGaNおよびGaNの交互構造とすることが好ましい。
【0044】
pコンタクト層は、p側給電部150(より具体的にはp側透明導電層151)を設けるための層である。pコンタクト層は、Al
xGa
1-xN(0≦x≦0.4)とすることが好ましい。pコンタクト層におけるAl組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持およびp側透明導電層151との良好なオーミック接触の維持が可能となる点で好ましい。
pコンタクト層の膜厚は、特に限定されないが、10〜500nmが好ましく、より好ましくは50〜200nmである。pコンタクト層の膜厚をこの範囲とすると、順方向電圧Vfを低減できる点で好ましい。
【0045】
<p側給電部>
図5は、実施の形態1におけるp側給電部150の構成の一例を示す図である。ここで、
図5は、
図3に示す領域Vすなわちp側給電電極152とp側接続電極154との境界部における拡大断面図を示している。ただし、p側給電電極152およびp側接続電極154とともにp側給電部150を構成するp側補助電極153(p側第1補助電極153aおよびp側第2補助電極153b)、そして、p側補助電極153側に設けられるp側接続電極154(
図2参照)も、これらと共通の構成を有している。
【0046】
[p側透明導電層]
p側透明導電層151は、p型半導体層140の上面のうち、周縁部を除くほぼ全面を覆うように形成されている。
p側透明導電層151は、p型半導体層140とオーミックコンタクトがとれ、しかもp型半導体層140との接触抵抗が小さいものを用いることが好ましい。また、この半導体発光素子1では、発光層130からの光を、p側透明導電層151を介して保護絶縁層180側から取り出すことから、p側透明導電層151は光透過性に優れたものを用いることが好ましい。さらに、p型半導体層140の全面に渡って均一に電流を拡散させるために、p側透明導電層151は優れた導電性を有し、且つ、抵抗分布が少ないものを用いることが好ましい。
【0047】
なお、p側透明導電層151の厚さは2nm〜500nmの範囲より選択することができる。ここで、p側透明導電層151の厚さが2nmよりも薄いと、p型半導体層140とオーミックコンタクトが取れにくい場合があり、また、p側透明導電層151の厚さが500nmよりも厚いと、発光層130から出力される光に対する光透過性の点で好ましくない場合がある。
【0048】
p側透明導電層151としては、例えば酸化物の導電性材料であって、発光層130から出射される波長の光に対する光透過性のよいものを用いることができる。発光層130から出力される波長の光に対する透過率は、90%以上であるとよく、望ましくは95%以上である。特に、Inを含む酸化物の一部は、他の透明導電膜と比較して光透過性および導電性の両者がともに優れている点で好ましい。Inを含む導電性の酸化物としては、例えばIZO(酸化インジウム亜鉛(In
2O
3−ZnO))、ITO(酸化インジウム錫(In
2O
3−SnO
2))、IGO(酸化インジウムガリウム(In
2O
3−Ga
2O
3))、ICO(酸化インジウムセリウム(In
2O
3−CeO
2))等が挙げられる。なお、これらの中に、例えばフッ素などのドーパントが添加されていてもかまわない。また、例えばInを含まない酸化物、例えばキャリアをドープしたSnO
2、ZnO
2、TiO
2等の導電性材料を用いてもよい。
【0049】
これらの材料を、この技術分野でよく知られた慣用の手段によって設けることで、p側透明導電層151を形成することができる。そして、p側透明導電層151を形成した後に、熱処理を施して結晶化を促進させることにより、p側透明導電層151の光透過率が上がるとともに、シート抵抗が下がることでオーミックコンタクトが取りやすくなる。
【0050】
本実施の形態において、p側透明導電層151は、結晶化された構造のものを使用してよく、特に六方晶構造又はビックスバイト構造を有するIn
2O
3結晶を含む透光性材料(例えば、IZOやITO等)を好ましく使用することができる。
また、p側透明導電層151に用いる膜としては、比抵抗が低くなる組成を使用することが好ましい。例えば、IZO中のZnO濃度は1〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%の範囲であることが更に好ましく、10質量%であると特に好ましい。
さらに、p側透明導電層151は、得られた膜の密着性を高めるという観点からすれば、例えばスパッタ法で形成することが望ましい。
【0051】
[p側給電電極、p側補助電極およびp側接続電極]
p側給電部150におけるp側給電電極152、p側補助電極153およびp側接続電極154は、接続対象となるp側透明導電層151に近い側から順に、p側第1給電層1501と、p側第2給電層1502と、p側第3給電層1503とを積層することで構成されている。本実施の形態において、p側第1給電層1501はTaNで構成され、p側第2給電層1502はPtで構成され、p側第3給電層1503はAuで構成されている。また、p側第1給電層1501の膜厚は1nm程度であり、p側第2給電層1502の膜厚は100nm程度であり、p側第3給電層1503の膜厚は1000nm程度である。
【0052】
これらのうち、p側第1給電層1501は、電気伝導性を有するとともに、給電絶縁層170との密着性を高めるための密着層として機能している。また、p側第2給電層1502は、電気伝導性を有し、p側第1給電層1501を構成するTaNがp側第3給電層1503側に拡散するのを防止するとともに、p側第3給電層1503を構成するAuがp側第1給電層1501側に拡散するのを防止する拡散防止層として機能している。さらに、p側第3給電層1503は、電気伝導性を有し、化学的な安定性を有するとともに、例えばp側給電電極152において外部との電気的な接続に用いられる表面層として機能している。
【0053】
また、本実施の形態において、p側接続電極154は上方からみたときに円形状を呈しており(
図1参照)、その直径は約10μmであって、p側透明導電層151に近づくにつれて直径が小さくなるテーパ状の断面形状を有している。そして、p側接続電極154における側壁の傾斜角度は、約80°となっている。
【0054】
<n側給電部>
図6は、実施の形態1におけるn側給電部160の構成の一例を示す図である。なお、
図6は、
図3に示す領域VIすなわちn側給電電極162とn側接続電極164との境界部における拡大断面図を示している。ただし、n側給電電極162およびn側接続電極164とともにn側給電部160を構成するn側補助電極163、そして、n側補助電極163側に設けられるn側接続電極164(
図3参照)も、これらと共通の構成を有している。
【0055】
[n側給電電極、n側補助電極およびn側接続電極]
n側給電部160におけるn側給電電極162、n側補助電極163およびn側接続電極164は、接続対象となるn型半導体層120におけるnコンタクト層121に近い側から順に、n側第1給電層1601と、n側第2給電層1602と、n側第3給電層1603とを積層することで構成されている。本実施の形態において、n側第1給電層1601はTaNで構成され、n側第2給電層1602はPtで構成され、n側第3給電層1603はAuで構成されている。また、n側第1給電層1601の膜厚は1nm程度であり、n側第2給電層1602の厚さは100nm程度であり、n側第3給電層1603の厚さは1000nm程度である。
【0056】
これらのうち、n側第1給電層1601は、電気伝導性を有するとともに、給電絶縁層170との密着性を高めるための密着層として機能している。また、n側第2給電層1602は、電気伝導性を有し、n側第1給電層1601を構成するTaNがn側第3給電層1603側に拡散するのを防止するとともに、n側第3給電層1603を構成するAuがn側第1給電層1601側に拡散するのを防止する拡散防止層として機能している。さらに、n側第3給電層1603は、電気伝導性を有し、化学的な安定性を有するとともに、例えばn側給電電極162において外部との電気的な接続に用いられる表面層として機能している。
【0057】
このように、本実施の形態では、p側給電部150におけるp側給電電極152、p側補助電極153およびp側接続電極154と、n側給電部160におけるn側給電電極162、n側補助電極163およびn側接続電極164とが、共通の構成を有している。
【0058】
また、本実施の形態において、n側接続電極164は上方からみたときに略半円形状を呈しており(
図1参照)、その半円部の直径は約10μmであって、nコンタクト層121に近づくにつれて直径が小さくなるテーパ状の断面形状を有している。そして、n側接続電極164の側壁の傾斜角度は約80°となっている。
【0059】
<給電絶縁層>
本実施の形態において、第1透明絶縁層の一例としての給電絶縁層170は、発光層130から出力される光に対する透過性、および、p側給電部150とn側給電部160とを電気的に絶縁する絶縁性を有している。給電絶縁層170を構成する材料としては、例えばSiO
2(酸化珪素)やMgF
2(フッ化マグネシウム)、CaF
2(フッ化カルシウム)、Si
3N
4(窒化珪素)、Al
2O
3(酸化アルミニウム)を使用することができる。なお、この例では、給電絶縁層170として、絶縁性が高く、屈折率が小さく(1.4〜1.5)、しかも耐湿性に優れるSiO
2(二酸化珪素)を用いた。
【0060】
また、本実施の形態の給電絶縁層170は、p側給電部150とn側給電部160とを電気的に絶縁するだけでなく、p型半導体層140および発光層130とn側給電部160とを電気的に絶縁する機能も有している。そして、給電絶縁層170は、p側給電部150からp型半導体層140に対する給電位置を分散させるための機能も備えている。
【0061】
<保護絶縁層>
本実施の形態において、第2透明絶縁層の一例としての保護絶縁層180は、給電絶縁層170と同様に、発光層130から出力される光に対する透過性、および、p側給電部150とn側給電部160とを電気的に絶縁する絶縁性を有している。保護絶縁層180を構成する材料としては、例えばSiO
2(酸化珪素)やMgF
2(フッ化マグネシウム)、CaF
2(フッ化カルシウム)、Si
3N
4(窒化珪素)、Al
2O
3(酸化アルミニウム)を使用することができる。なお、この例では、保護絶縁層180として、給電絶縁層170と同じSiO
2(二酸化珪素)を用いた。
【0062】
図7は、給電絶縁層170および保護絶縁層180の構成の一例を示す図である。
ここで、
図7(a)は、
図3における領域VIIaの拡大断面図であり、p側透明導電層151の上且つn側補助電極163の下に積層される給電絶縁層170を示している。なお、
図7(a)は、n側補助電極163の下側となる位置を例示しているが、p側透明導電層151とp側給電電極152あるいはp側補助電極153との間、および、p側透明導電層151とn側給電電極162との間も、
図7(a)と同じ構造となっている。
一方、
図7(b)は、
図3における領域VIIbの拡大断面図であり、p側透明導電層151の上であってp側給電電極152、p側補助電極153、n側給電電極162およびn側補助電極163が形成されていない部位に連続して積層される給電絶縁層170および保護絶縁層180を示している。なお、
図7(b)において、保護絶縁層180の上は、半導体発光素子1の外部(例えば大気や後述する発光装置30の封止部34など)となっている。
【0063】
ここで、給電絶縁層170の厚さを第1厚さt1とし、保護絶縁層180の厚さを第2厚さt2とし、第1厚さt1と第2厚さt2との和を第3厚さt3(=t1+t2)とする。本実施の形態において、第1厚さt1は、発光層130から出力される光の波長において全反射が生じやすい値から選択される。これに対し、第3厚さt3は、発光層130から出力される光の波長において全反射が生じにくい値から選択され、選択された第3厚さt3と第1厚さt1との差に基づいて、第2厚さt2の値が設定される。したがって、本実施の形態では、第1厚さt1と第3厚さt3とが、必ずt1<t3の関係を有する。なお、本実施の形態では、発光層130から出力される光の波長が450nmであること、および、給電絶縁層170および保護絶縁層180が上述した屈折率を有することにより、第1厚さt1が390nmに、第3厚さt3が468nmに、それぞれ設定されている。したがって、第2厚さt2は78nmとなっている。
【0064】
(発光装置)
図8は、
図1等に示す半導体発光素子1を搭載した発光装置30の構成の一例を示す図である。ここで、
図8(a)は発光装置30の上面図を示しており、
図8(b)は
図8(a)のVIIIB−VIIIB断面図である。なお、
図8に示す発光装置30は、「発光チップ」あるいは「ランプ」と呼ばれることもある。
【0065】
この発光装置30は、一方の側に凹部31aが形成された筐体31と、筐体31に形成されたリードフレームからなるpリード部32およびnリード部33と、凹部31aの底面に取り付けられた半導体発光素子1と、凹部31aを覆うように設けられた封止部34とを備えている。なお、
図8(a)においては、封止部34の記載を省略している。
【0066】
基部の一例としての筐体31は、第2配線の一例としてのpリード部32および第1配線の一例としてのnリード部33を含む金属リード部に、白色の熱可塑性樹脂を射出成型することによって形成されている。
【0067】
pリード部32およびnリード部33は、0.1〜0.5mm程度の厚みをもつ金属板であり、加工性、熱伝導性に優れた金属として例えば鉄/銅合金をベースとし、その上にめっき層としてニッケル、チタン、金、銀などを数μm積層して構成されている。そして、本実施の形態では、pリード部32およびnリード部33の一部が、凹部31aの底面に露出するようになっている。また、pリード部32およびnリード部33の一端部側は筐体31の外側に露出し、且つ、筐体31の外壁面から裏面側に折り曲げられている。
【0068】
また、半導体発光素子1は、基板110(
図2参照)を介して、凹部31aにおける底部の中央部に、接着等によって取り付けられている。さらに、pリード部32と半導体発光素子1におけるp側給電電極152(
図1参照)とが、図示しないボンディングワイヤによって電気的に接続されており、nリード部33と半導体発光素子1におけるn側給電電極162(
図1参照)とが、図示しないボンディングワイヤによって電気的に接続されている。
【0069】
そして、封止部34は、可視領域の波長において光透過率が高い透明樹脂にて構成される。封止部34を構成する耐熱性、耐候性、及び機械的強度が高い特性を満たす樹脂としては、例えばエポキシ樹脂やシリコン樹脂を用いることができる。そして、本実施の形態では、封止部34を構成する透明樹脂に、半導体発光素子1から出射される光の一部を、緑色光および赤色光に変換する蛍光体を含有させている。なお、このような蛍光体に代えて、青色光の一部を黄色光に変換する蛍光体、あるいは、青色光の一部を黄色光および赤色光に変換する蛍光体を含有させるようにしてもよい。また、封止部34として、蛍光体を含有しない透明樹脂を用いてもかまわない。
【0070】
なお、本実施の形態の発光装置30を組み込んだバックライト、携帯電話機、ディスプレイ、各種パネル類、コンピュータ、ゲーム機、照明などの電子機器や、それらの電子機器を組み込んだ自動車などの機械装置は、優れた発光特性を有する半導体発光素子1を備えたものとなる。特に、バックライト、携帯電話機、ディスプレイ、ゲーム機、照明などのバッテリ駆動させる電子機器において、優れた発光特性を有する半導体発光素子1を具備した優れた製品を提供することができ、好ましい。また、半導体発光素子1を備えた発光装置30の構成は、
図8に示すものに限られるわけではなく、例えば砲弾型と呼ばれるパッケージ構成を採用したものであってもよい。
【0071】
では、
図8に示す発光装置30、および、発光装置30に組み込まれた本実施の形態の半導体発光素子1の発光動作について説明する。
【0072】
発光装置30において、半導体発光素子1に対し、pリード部32からnリード部33に向かう電流を流すと、半導体発光素子1では、p側給電部150からp型半導体層140、発光層130およびn型半導体層120(nクラッド層122からnコンタクト層121)を介して、n側給電部160に向かう電流が流れる。このとき、p側給電部150では、p側給電電極152から直接あるいはp側補助電極153(p側第1補助電極153aおよびp側第2補助電極153b)を介して、7つのp側接続電極154に電流が供給され、各p側接続電極154からp側透明導電層151を介してp型半導体層140に電流が流れる。一方、n側給電部160では、n型半導体層120におけるnコンタクト層121から3つのn側接続電極164に電流が流れ、これらのうちの2つのn側接続電極164からはn側補助電極163を介して、および、残りの1つのn側接続電極164からは直接に、n側給電電極162に電流が流れる。これに伴い、発光層130は、その組成に応じた光(例えば青色光)を出力する。
【0073】
そして、発光層130から出力された光は、半導体発光素子1の外部に出力され、その一部が、封止部34に含まれる蛍光体によって他色(赤色および緑色)に変換される。その後、青色光、緑色光および赤色光を含む光は、直接あるいは筐体31の凹部31aに設けられた内壁面にて反射した後、封止部34の上面から発光装置30の外部に出力される。
【0074】
次に、
図1等に示す半導体発光素子1において、発光層130から出力される光の挙動について説明を行う。
半導体発光素子1において、発光層130からは、p型半導体層140側に向かう光と、n型半導体層120側に向かう光とが、主として出力される。
【0075】
これらのうち、発光層130からn型半導体層120側に向かう光は、例えばnコンタクト層121(実際には下地層)と基板110との境界部において、両者の屈折率の違いにより反射される。また、基板110内まで進入した光は、基板110とpリード部32やnリード部33との境界部において反射される。そして、これら反射した光は、発光層130を介してp型半導体層140側へと向かう。
【0076】
また、発光層130からp型半導体層140側に向かう光は、p型半導体層140およびp側透明導電層151を介して給電絶縁層170に到達する。ここで、p側給電電極152およびp側補助電極153の下方となる部位以外に到達した光は、同じ材料で構成された給電絶縁層170および保護絶縁層180を通過して外部に出射される。これに対し、p側給電電極152およびp側補助電極153の下方となる部位に到達した光は、給電絶縁層170で反射され、p側透明導電層151およびp型半導体層140を介して発光層130側へと向かう。そして、給電絶縁層170にて反射されることで発光層130に到達した光は、発光層130からn型半導体層120に向かう光とともに基板110側に向かって進行し、その後、上述したようなプロセスにて反射され、再び発光層130を介してp型半導体層140側へと向かって進行し、p側透明導電層151、給電絶縁層170および保護絶縁層180を介して外部に出射される。
【0077】
ここで、本実施の形態では、n側給電部160において、n側給電電極162とnコンタクト層121とが、発光層130を貫通して設けられる複数のn側接続電極164を介して接続されることで導通する。このとき、複数のn側接続電極164を電気的に接続するn側補助電極163およびn側給電電極162は、発光層130からみてp型半導体層140の背面側に設けられているので、n側補助電極163の下方およびn側給電電極162の下方の全体にわたって、発光層130を削り取る必要がなくなる。したがって、同じ面積の半導体発光素子1における発光層130の面積の減少を抑制することが可能になり、結果として、出力される光量の低下を抑制することができるようになる。
【0078】
しかも、本実施の形態では、p型半導体層140の上方において、p側給電部150におけるp側給電電極152およびp側補助電極153(p側第1補助電極153aおよびp側第2補助電極153b)の下方(ただし、p側接続電極154の形成部位を除く)と、n側給電部160におけるn側給電電極162およびn側補助電極163の下方(ただし、n側接続電極164の形成部位を除く)とに、第1厚さt1に設定された給電絶縁層170を設けることで、発光層130から上記各部に向かう光を、給電絶縁層170で反射させるようにした。これにより、発光層130から出力される光が、上記各部で吸収されにくくなり、出力される光量の低下をさらに抑制することができる。特に、本実施の形態では、p側給電部150およびn側給電部160における密着層(p側第1給電層1501およびn側第1給電層1601)として茶褐色あるいは黒色を呈するTaNを用いており、発光層130から出力される光を吸収しやすくなっているため、このような構成の適用が有効である。
【0079】
そして、本実施の形態では、p型半導体層140の上方において、p側給電電極152、p側補助電極153、n側給電電極162およびn側補助電極163の下方とならない部位には、給電絶縁層170および保護絶縁層180を連続して積層して第3厚さt3とすることで、発光層130からこれらの部位に向かう光を、これら給電絶縁層170および保護絶縁層180にて透過させるようにした。これにより、発光層130から出力される光が、外部に出力されやすくなり、出力される光量の低下をさらに抑制することができる。
【0080】
なお、本実施の形態では、化合物半導体としてIII族窒化物半導体を含む半導体発光素子1を例として説明を行ったが、これに限られるものではなく、III−V族半導体やII−VI族半導体を含むものであってもよい。
【0081】
また、本実施の形態では、給電絶縁層170および保護絶縁層180を、同じ材料(SiO
2(二酸化珪素))を用いていたが、それぞれに異なる材料を用いてもよい。この場合には、給電絶縁層170と保護絶縁層180とが直接重なる領域(
図7(b)参照)において、給電絶縁層170の第1厚さt1と保護絶縁層180の第2厚さt2とを、それぞれ全反射が生じにくい大きさから選択すればよい。