(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記先端帯状部の幅寸法が、この先端帯状部の長さ方向中央部から長さ方向両端部に向かう程大きくなっている、請求項1に記載したステアリングホイールの位置調節装置。
前記ステアリングコラムが、インナコラムの後端部にアウタコラムの前端部を、軸方向に関する相対変位を可能に嵌合して成るものであり、前記変位ブラケットが前記アウタコラムに固設されており、前記コラム側貫通孔がこのアウタコラムの軸方向に長いテレスコ調節用長孔であり、
前記各間部分のうちの少なくとも1つの間部分に挟持した揺動摩擦板に関して、前記揺動支持軸が前記アウタコラムに設けられており、前記調節ロッドが前記テレスコ調節用長孔内で変位できる範囲で、前記ガイド長孔のうち前記調節ロッドが係合している部分の長さ方向若しくは接線方向と、前記テレスコ調節用長孔の長さ方向とが互いに一致しない事に基づき、前記調節ロッドをこのテレスコ調節用長孔に沿って変位させた場合に、この調節ロッドが前記ガイド長孔に沿って変位する事に伴い、前記揺動摩擦板が前記揺動支持軸を中心として揺動変位する、
請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したステアリングホイールの位置調節装置。
前記ステアリングコラムの前端部が車体に対し、前記調節ロッドと平行な枢軸を中心とする揺動変位を可能に支持されており、前記車体側貫通孔が、上下方向に長いチルト調節用長孔であり、
前記各間部分のうちの少なくとも1つの間部分に挟持した揺動摩擦板に関して、前記揺動支持軸が、前記両支持板部のうちの何れか一方の支持板部に設けられており、前記調節ロッドが前記チルト調節用長孔内で変位できる範囲で、前記ガイド長孔のうち前記調節ロッドが係合している部分の長さ方向若しくは接線方向と、前記チルト調節用長孔のうち前記調節ロッドが係合している部分の長さ方向若しくは接線方向とが互いに一致しない事に基づき、前記調節ロッドを前記チルト調節用長孔に沿って変位させた場合に、この調節ロッドが前記ガイド長孔に沿って変位する事に伴い、前記揺動摩擦板が前記揺動支持軸を中心として揺動変位する、
請求項1〜3のうちの何れか1項に記載したステアリングホイールの位置調節装置。
【背景技術】
【0002】
自動車用のステアリング装置は、
図4に示す様に構成して、ステアリングホイール1の回転をステアリングギヤユニット2の入力軸3に伝達し、この入力軸3の回転に伴って左右1対のタイロッド4、4を押し引きして、前車輪に舵角を付与する様にしている。前記ステアリングホイール1は、ステアリングシャフト5の後端部に支持固定しており、このステアリングシャフト5は、円筒状のステアリングコラム6を軸方向に挿通した状態で、このステアリングコラム6に回転自在に支持している。又、前記ステアリングシャフト5の前端部は、自在継手7を介して中間シャフト8の後端部に接続し、この中間シャフト8の前端部を、別の自在継手9を介して、前記入力軸3に接続している。尚、本明細書及び特許請求の範囲全体で、前後方向、左右方向(幅方向)、及び上下方向は、特に断らない限り、車両の前後方向、左右方向(幅方向)、及び上下方向を言う。
【0003】
上述の様なステアリング装置に対し、運転者の体格や運転姿勢に応じて、前記ステアリングホイール1の上下位置を調節する為のチルト機構や、前後位置を調節する為のテレスコピック機構を組み込む事が、従来から広く行われている。これらチルト機構やテレスコピック機構で、電動式のものを除く手動式の構造の場合には、調節レバーの操作に基づいて、前記ステアリングホイール1の位置を調節可能な状態と、調節後の位置に保持する状態とを切り換える。
【0004】
この様なチルト機構やテレスコピック機構を備えたステアリング装置の場合、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力が弱いと、二次衝突の発生時に、このステアリングホイール1が、何れかの調節方向に不用意に移動する可能性がある。そして、移動した場合には、運転者の保護を図る為の衝撃緩和性能を最良な状態で発揮させる事が難しくなる可能性がある。
【0005】
例えば、前記ステアリングホイール1の前後位置を調節可能としたテレスコピック式ステアリング装置で、このステアリングホイール1の前後位置が中間乃至後端である状態で二次衝突が発生すると、このステアリングホイール1が調節可能範囲の前端位置まで、勢い良く移動する可能性がある。この様な状況下では、前記ステアリング装置に組み込まれた衝撃吸収機構の作動するタイミングが、運転者保護の面から最良でなくなる可能性がある。
【0006】
又、前記ステアリングホイール1の上下位置を調節可能としたチルト式ステアリング装置で、このステアリングホイール1の上下位置が中間乃至下端である状態で二次衝突が発生すると、このステアリングホイール1が調節可能範囲の上端位置まで、勢い良く移動する(舞い上がる)可能性がある。この様な状況下では、前記ステアリングホイール1の後方で膨らんだエアバッグと運転者の身体との位置関係が、運転者保護の面から最良でなくなる可能性がある。
【0007】
一方、前記調節レバーの操作量や操作力を大きくする事なく、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力を大きくする為には、この保持力を確保する為の摩擦面の数を増やす事が好ましい。この様な事情に鑑みて、特許文献1には、ステアリングコラムに支持した摩擦板と、車体に取り付けた支持ブラケットに支持した摩擦板とを、左右方向に関して交互に重ね合わせる事により、前記摩擦面の数を増やす構造が記載されている。ところが、この特許文献1に記載された構造の場合には、前記各摩擦板を、前記ステアリングコラム又は前記支持ブラケットに対し、左右方向の変位のみを可能に支持している為、構造が複雑になる事に加えて、前記摩擦面の数を増やす為に必要となる摩擦板の枚数が多くなる。従って、前記摩擦面を増やす事に伴って生じる、左右方向寸法、部品点数及び重量の増大量が、それぞれ大きくなる。
【0008】
[未公開の先発明に関する説明]
この様な事情に鑑みて、特願2012−035139には、少ない摩擦板で比較的簡単に構成でき、ステアリングホイールを調節後の位置に保持するのに寄与する摩擦面の数を増やせる構造が開示されている。
図5〜7は、特願2012−035139に開示された構造そのものではないが、この構造と同様の摩擦板の作動原理を採用している、未公開の先発明に係る構造の第1例を示している。本例のステアリングホイールの位置調節装置は、ステアリングコラム6aと、変位ブラケット10と、コラム側貫通孔であるテレスコ調節用長孔11と、ステアリングシャフト5aと、支持ブラケット12と、車体側貫通孔であるチルト調節用長孔13、13と、調節ロッド14と、1対の押圧部15a、15bと、調節レバー16と、1対の揺動摩擦板17、17と、1対の揺動支持軸18とを備える。
【0009】
このうちのステアリングコラム6aは、前側に配置されたインナコラム19の後端部に、後側に配置されたアウタコラム20の前端部を、軸方向の変位を可能に外嵌して成るもので、全体を円筒状としている。又、前記アウタコラム20は、アルミニウム合金等の軽合金のダイキャスト成形品とし、このアウタコラム20の前半部の下部に前記変位ブラケット10を、一体に形成している。この変位ブラケット10は、幅方向中央部に形成したスリット21により、全幅を弾性的に拡縮可能としている。前記テレスコ調節用長孔11は、前記変位ブラケット10の一部で、前記スリット21を挟んで互いに整合する位置に、この変位ブラケット10を幅方向に貫通する状態で設けている。
【0010】
又、前記ステアリングシャフト5aは、後側に配置したアウタシャフト22の前端部と前側に配置したインナシャフト23の後端部とを、スプライン係合等により、トルクの伝達を可能に、且つ、伸縮可能に組み合わせて成る。この様なステアリングシャフト5aは、前記アウタシャフト22の後端寄り部分を前記アウタコラム20の後端部に、前記インナシャフト23の前端寄り部分を前記インナコラム19の前端部に、それぞれ単列深溝型の玉軸受の如く、ラジアル荷重及びスラスト荷重を支障可能な転がり軸受により、回転自在に支持している。従って、前記ステアリングシャフト5aは、前記ステアリングコラム6aの伸縮に合わせて伸縮する。尚、前記アウタシャフト22の後端部で前記アウタコラム20の後端開口よりも後方に突出した部分には、ステアリングホイール1(
図4参照)を支持固定する。
【0011】
又、前記支持ブラケット12は、鋼板等、必要とする強度及び剛性を確保できる金属板を曲げ形成して成るもので、車体に支持する為の取付板部24と、この取付板部24の下面から垂下された、互いに平行な1対の支持板部25、25とを備える。又、前記両チルト調節用長孔13、13は、前記両支持板部25、25の互いに整合する部分に形成しており、前記ステアリングコラム6aの前端部に設けた枢軸26を中心とする部分円弧状である。この様な支持ブラケット12は、車体に対して、二次衝突時に加わる衝撃荷重により前方への脱落を可能に、但し、通常時には前記ステアリングコラム6aを十分な剛性を確保できる状態で支持する。
【0012】
又、前記調節ロッド14は、前記テレスコ調節用長孔11及び前記チルト調節用長孔13を幅方向に挿通する状態で設けている。そして、この様な調節ロッド14の両端部で、前記両支持板部25、25の外側面から突出した部分に、前記両押圧部15a、15bを設け、前記調節レバー16により、これら両押圧部15a、15b同士の間隔を拡縮可能としている。この調節レバー16によりこれら両押圧部15a、15b同士の間隔を拡縮する為の拡縮装置は、駆動側カムと被駆動側カムとから成るカム装置、ボルトとナットとから成るねじ装置等、従来から広く知られている各種構造を採用できる。何れの構造を採用した場合でも、前記調節レバー16は前記調節ロッド14の一端部に設け、この調節ロッド14を中心として回転する事により、前記両押圧部15a、15b同士の間隔を拡縮する。
【0013】
又、前記両揺動摩擦板17、17は、それぞれ鋼板等の金属板により造られた平板部材であり、先端部に円弧状のガイド長孔27を設けている。本例の場合には、これら両揺動摩擦板17、17を、前記両支持板部25、25の内側面と前記変位ブラケット10の両側面との間部分に、1枚ずつ挟持している。又、前記アウタコラム20の前端部両側面に、前記両揺動支持軸18を、それぞれ前記調節ロッド14と平行に設けている。そして、前記両揺動摩擦板17、17の基端部を前記両揺動支持軸18に枢支すると共に、これら両揺動摩擦板17、17のガイド長孔27に前記調節ロッド14を、これら両ガイド長孔27に沿った変位のみを可能に係合させている。
【0014】
本例の場合、前記ステアリングホイール1の前後位置又は上下位置を調節する際には、前記調節レバー16を所定方向(一般的には下方)に揺動させる事により、前記両押圧部15a、15b同士の間隔を拡げる。これにより、前記変位ブラケット10のスリット21の幅を弾性的に拡げる事に伴い、前記アウタコラム20の前端部と前記インナコラム19の後端部との嵌合部の面圧を、低下乃至は喪失させる。同時に、前記両揺動摩擦板17、17の両側面と、前記両支持板部25、25の内側面及び前記変位ブラケット10の両側面との当接部の面圧、並びに、前記両支持板部25、25の外側面と前記両押圧部15a、15bの内側面との当接部の面圧を、それぞれ低下乃至は喪失させる。そして、この状態で、前記調節ロッド14が、前記テレスコ調節用長孔11及び前記両チルト調節用長孔13、13内で変位できる範囲で、前記ステアリングホイール1の位置を調節する。
【0015】
特に、本例の場合、前記ステアリングホイール1の前後位置を調節すべく、前記調節ロッド14が前記テレスコ調節用長孔11内で変位できる範囲で、前記アウタコラム20を前後方向に変位させると、前記両揺動摩擦板17、17が前記両揺動支持軸18を中心として揺動変位する。この点に就いて、
図7を参照しつつ、具体的に説明する。
図7の(A)は、前記ステアリングホイール1を調節可能な後端位置まで移動させた状態を、同図の(B)は、同じく中間位置に移動させた状態を、同図の(C)は、同じく前端位置まで移動させた状態を、それぞれ示している。本例の場合には、これら各状態を含む、前記調節ロッド14が前記テレスコ調節用長孔11内で変位できる全範囲で、前記両揺動摩擦板17、17のガイド長孔27のうち、前記調節ロッド14が係合している部分の接線方向と、前記テレスコ調節用長孔11の長さ方向とが、互いに一致しない。この為、前記調節ロッド14を前記テレスコ調節用長孔11に沿って変位させると、この調節ロッド14が前記両ガイド長孔27に沿って変位する事に伴い、前記両揺動摩擦板17、17が前記両揺動支持軸18を中心として揺動変位する。
【0016】
上述の様にしてステアリングホイール1の位置を調節した後は、前記調節レバー16を前記所定方向とは逆方向(一般的には上方)に揺動させる事により、前記両押圧部15a、15b同士の間隔を縮める。これにより、前記嵌合部及び前記各当接部の面圧を上昇させて、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する。
【0017】
以上の様に、上述した先発明に係る構造の第1例の場合には、前記ステアリングホイール1を前後方向に変位させる事に伴い、前記両揺動摩擦板17、17が前記両揺動支持軸26を中心として揺動変位する。一方、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持すべく、前記両押圧部15a、15b同士の間隔を縮めた状態では、前記両揺動摩擦板17、17は、前記変位ブラケット10の両側面と、前記両支持板部25、25の内側面との間で強く挟持された状態となる。この状態から前記ステアリングホイール1を前後方向に動かす場合には、前記両揺動摩擦板17、17毎に2面ずつの摩擦面を滑らせつつ、これら両揺動摩擦板17、17を、前記各揺動支持軸18を中心に揺動させる必要がある。この為、少ない揺動摩擦板17、17でも、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力を大きくできて、二次衝突時の運転者保護の充実を図り易くできる。
【0018】
図8〜9は、未公開の先発明に係る構造の第2例を示している。本例の場合には、1対の押圧部15a、15bの内側面と、1対の支持板部25、25の外側面との間に、それぞれ揺動摩擦板28を1枚ずつ挟持している。又、前記両支持板部25、25の外側面の前部上端寄り部分に、1対の揺動支持軸29を、それぞれ調節ロッド14と平行に設けている。そして、前記両揺動摩擦板28、28の基端部を前記両揺動支持軸29に枢支すると共に、これら両揺動摩擦板28、28の前端部に設けた円弧状のガイド長孔30に前記調節ロッド14を、これら両ガイド長孔30に沿った変位のみを可能に係合させている。
【0019】
本例の場合、ステアリングホイール1(
図4参照)の上下位置を調節すべく、前記調節ロッド14がチルト調節用長孔13、13内で変位できる範囲で、アウタコラム20を前後方向に変位させると、前記両揺動摩擦板28、28が前記両揺動支持軸29を中心として揺動変位する。この点に就いて、
図9を参照しつつ、具体的に説明する。
図9の(A)は、前記ステアリングホイール1を調節可能な下端位置まで移動させた状態を、同図の(B)は、同じく中間位置に移動させた状態を、同図の(C)は、同じく上端位置まで移動させた状態を、それぞれ示している。本例の場合には、これら各状態を含む、前記調節ロッド14が前記チルト調節用長孔13内で変位できる全範囲で、前記両揺動摩擦板28、28のガイド長孔30のうち前記調節ロッド14が係合している部分の接線方向と、前記チルト調節用長孔13のうち前記調節ロッド14が係合している部分の接線方向とが、互いに一致しない。この為、前記調節ロッド14を前記チルト調節用長孔13に沿って変位させると、この調節ロッド14が前記両ガイド長孔30に沿って変位する事に伴い、前記両揺動摩擦板28、28が、前記両揺動支持軸29、29を中心として揺動変位する。
【0020】
以上の様に、上述した先発明に係る構造の第2例の場合には、前記ステアリングホイール1を上下方向に変位させる事に伴い、前記両揺動摩擦板28、28が前記両揺動支持軸29を中心として揺動変位する。一方、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持すべく、前記両押圧部15a、15b同士の間隔を縮めた状態では、前記両揺動摩擦板28、28は、これら両押圧部15a、15bの内側面と、前記両支持板部25、25の外側面との間で強く挟持された状態となる。この状態から前記ステアリングホイール1を上下方向に動かす場合には、前記両揺動摩擦板28、28毎に2面ずつの摩擦面を滑らせつつ、これら両揺動摩擦板28、28を、前記両揺動支持軸29を中心に揺動させる必要がある。この為、少ない揺動摩擦板28、28でも、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力を大きくできて、二次衝突時の運転者保護の充実を図り易くできる。
その他の構成及び作用は、上述した先発明に係る構造の第1例の場合と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する図示並びに説明は省略する。
【0021】
上述した様な先発明に係る構造の第1〜2例には、未だ改良の余地がある。以下、この点に就いて、
図7、9を参照しつつ説明する。
尚、説明の便宜上、前記各揺動摩擦板17、28の先端部に設けたガイド長孔27、30の幅方向両側縁のうち、前記各揺動支持軸18、29から遠い側の側縁を、遠側縁31、32とする。又、前記各揺動摩擦板17、28の外周縁と、これら各遠側縁31、32との間に挟まれた帯状の部分を、先端帯状部33、34とする。
【0022】
上述した先発明に係る構造の第1例の場合、前記ステアリングホイール1が前方に移動する際、即ち、前記揺動摩擦板17が、
図7の(A)→(B)→(C)の順に示す方向に揺動する際には、代表して(B)に示す様に、前記ガイド長孔27の遠側縁31に、前記調節ロッド14から押圧力Fが加わる。
これに対し、上述した先発明に係る構造の第2例の場合、前記ステアリングホイール1が下方に移動する際、即ち、前記揺動摩擦板28が、
図9の(C)→(B)→(A)の順に示す方向に揺動する際には、代表して(B)に示す様に、前記ガイド長孔30の遠側縁32に、前記調節ロッド14から押圧力Fが加わる。
【0023】
上述の様に各ガイド長孔27、30の遠側縁31、32に押圧力Fが加わる場合、前記各揺動摩擦板17、28の先端帯状部33、34には、前記各ガイド長孔27、30の長さ方向両端部に近い部分程、大きな曲げ応力(モーメント)が加わる。これに対して、前記各先端帯状部33、34の幅寸法Wは、これら各先端帯状部33、34の全長に亙り均一になっている。この為、前記各揺動摩擦板17、28に関しては、前記各先端帯状部33、34の長さ方向両端部が、最も塑性変形し易い部分となっている。そして、これら各部分で実際に塑性変形が生じると、それ以降、前記各揺動摩擦板17、28の揺動変位が円滑に行なわれ難くなる為、この様な事態を回避する必要がある。
【0024】
一方、前記各先端帯状部33、34の幅寸法Wを、これら各先端帯状部33、34の全長に亙って一律に大きくすれば、これら各先端帯状部33、34の長さ方向両端部(を含む全体)の強度を十分に確保できる為、上述の様な事態を回避できる。但し、この場合には、強度的に有利な、前記各先端帯状部33、34の長さ方向中間部の幅寸法Wまで大きくなる為、前記各揺動摩擦板17、28の質量が徒に大きくなる。この結果、自動車の軽量化の要求に反するだけでなく、前記各揺動摩擦板17、28を揺動させる事に対する慣性抵抗が大きくなる分、前記ステアリングホイール1の位置調節の作業性が悪化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、揺動摩擦板の質量を徒に増大させる事なく、この揺動摩擦板の先端帯状部の長さ方向両端部の強度を十分に確保できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明のステアリングホイールの位置調節装置は、ステアリングコラムと、変位ブラケットと、コラム側貫通孔と、ステアリングシャフトと、支持ブラケットと、車体側貫通孔と、調節ロッドと、1対の押圧部と、調節レバーとを備える。
このうちのステアリングコラムは、筒状である。
又、前記変位ブラケットは、このステアリングコラムの一部に固設されている。
又、前記コラム側貫通孔は、前記変位ブラケットに、この変位ブラケットを幅方向に貫通する状態で設けられている。
又、前記ステアリングシャフトは、前記ステアリングコラムの内側に回転自在に支持されており、このステアリングコラムの後端開口から突出した後端部にステアリングホイールを支持固定する。
又、前記支持ブラケットは、前記変位ブラケットを左右両側から挟む左右1対の支持板部を備え、車体に支持される。
又、前記車体側貫通孔は、前記両支持板部の互いに整合する部分に設けられている。
又、前記調節ロッドは、前記両車体側貫通孔及び前記コラム側貫通孔を幅方向に挿通する状態で設けられている。
又、前記両押圧部は、前記調節ロッドの両端部で、前記両支持板部の外側面から突出した部分に設けられている。
又、前記調節レバーは、前記調節ロッドの一端部に設けられ、この調節ロッドを中心として回転する(この調節ロッドが回転せずに、前記調節レバーのみが回転する構造に限らず、この調節レバーがこの調節ロッドと共に回転する構造も含む)事により、前記両押圧部同士の間隔を拡縮する。
そして、前記両車体側貫通孔と前記コラム側貫通孔とのうちの少なくとも一方の貫通孔を、前記ステアリングホイールの位置を調節可能とすべき方向に長い調節用長孔としている。
【0028】
特に、本発明のステアリングホイールの位置調節装置の場合には、それぞれが互いに対向する1対の面同士の間部分である、前記両支持板部の内側面と前記変位ブラケットの両側面との間部分と、前記両支持板部の外側面と前記両押圧部の内側面との間部分とのうちの、少なくとも1つの間部分に、揺動摩擦板を挟持している。
この揺動摩擦板は、その基端部を、前記調節ロッドを前記調節用長孔に沿って変位させる(前記ステアリングホイールの位置を調節する)際にこの調節ロッドと相対変位する部分に設けられた、この調節ロッドと平行な揺動支持軸に枢支すると共に、その先端部に設けたガイド長孔に前記調節ロッドを、このガイド長孔に沿った変位のみを可能に係合させている。そして、前記揺動摩擦板は、前記両押圧部同士の間隔を拡げる事により、前記1対の面同士の間で前記揺動摩擦板を挟持する力を低下乃至喪失させた状態で、前記調節ロッドを前記調節用長孔に沿って変位させた場合に、この調節ロッドが前記ガイド長孔に沿って変位する事に伴い、前記揺動支持軸を中心として揺動変位する。
更に、前記揺動摩擦板の一部で、前記ガイド長孔の幅方向両側縁のうち、前記揺動支持軸から遠い側の側縁と前記揺動摩擦板の外周縁との間に挟まれた部分である、先端帯状部の幅寸法が、この先端帯状部の長さ方向両端部で長さ方向中間部よりも大きくなっている。
【0029】
上述の様な本発明のステアリングホイールの位置調節装置を実施する場合に、好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記先端帯状部の幅寸法を、この先端帯状部の長さ方向中央部から長さ方向両端部に向かう程大きくする。
【0030】
又、上述の様な本発明のステアリングホイールの位置調節装置を実施する場合には、例えば請求項3に記載した発明の様に、前記ステアリングコラムを、インナコラムの後端部にアウタコラムの前端部を、軸方向に関する相対変位を可能に嵌合して成るものとする。又、前記変位ブラケットを、前記アウタコラムに固設する。又、前記コラム側貫通孔を、このアウタコラムの軸方向に長いテレスコ調節用長孔とする。
又、前記各間部分のうちの少なくとも1つの間部分に挟持した揺動摩擦板に関して、前記揺動支持軸を、前記アウタコラムに設ける。そして、前記調節ロッドが前記テレスコ調節用長孔内で変位できる範囲(前記ステアリングホイールの前後位置を調節できる範囲)で、前記ガイド長孔のうち前記調節ロッドが係合している部分の長さ方向若しくは接線方向と、前記テレスコ調節用長孔の長さ方向とを、互いに一致させない。そして、この構成に基づき、前記調節ロッドをこのテレスコ調節用長孔に沿って変位させた場合に、この調節ロッドが前記ガイド長孔に沿って変位する事に伴い、前記揺動摩擦板が前記揺動支持軸を中心として揺動変位する様にする。
【0031】
又、上述の様な本発明のステアリングホイールの位置調節装置を実施する場合には、例えば請求項4に記載した発明の様に、前記ステアリングコラムの前端部を車体に対し、前記調節ロッドと平行な枢軸を中心とする揺動変位を可能に支持する。又、前記車体側貫通孔を、上下方向に長いチルト調節用長孔とする。
又、前記各間部分のうちの少なくとも1つの間部分に挟持した揺動摩擦板に関して、前記揺動支持軸を、前記両支持板部のうちの何れか一方の支持板部に設ける。そして、前記調節ロッドが前記チルト調節用長孔内で変位できる範囲(前記ステアリングホイールの上下位置を調節できる範囲)で、前記ガイド長孔のうち前記調節ロッドが係合している部分の長さ方向若しくは接線方向と、前記チルト調節用長孔のうち前記調節ロッドが係合している部分の長さ方向若しくは接線方向とを、互いに一致させない。そして、この構成に基づき、前記調節ロッドを前記チルト調節用長孔に沿って変位させた場合に、この調節ロッドが前記ガイド長孔に沿って変位する事に伴い、前記揺動摩擦板が前記揺動支持軸を中心として揺動変位する様にする。
【発明の効果】
【0032】
上述の様に構成する本発明のステアリングホイールの位置調節装置によれば、揺動摩擦板の質量を徒に増大させる事なく、この揺動摩擦板の先端帯状部の長さ方向両端部の強度を十分に確保できる。
即ち、本発明の場合も、前述した先発明の場合と同様、前記揺動摩擦板のガイド長孔の幅方向両側縁のうち、揺動支持軸から遠い側の側縁に調節ロッドから押圧力が加わる際には、前記揺動摩擦板の先端帯状部に曲げ応力(モーメント)が加わる。そして、この際にこの先端帯状部に加わる曲げ応力は、前記ガイド長孔のうちでの前記調節ロッドの存在位置に拘らず、この先端帯状部の長さ方向両端部に近い部分程、大きくなる。これに対して、本発明の場合には、前記先端帯状部の幅寸法を、この先端帯状部の長さ方向両端部で長さ方向中間部よりも大きくする構成を採用している。この為、この先端帯状部の長さ方向中間部の幅寸法を徒に大きくする事なく、即ち、前記揺動摩擦板の質量を徒に増大させる事なく、前記先端帯状部の長さ方向両端部の強度を十分に確保する事が可能となる。
又、請求項2に記載した発明の構成を採用すれば、揺動摩擦板の質量を徒に増大させる事なく、この揺動摩擦板の先端帯状部の長さ方向両端部の強度を十分に確保できると言った効果を、より高いレベルで奏する事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[実施の形態の第1例]
図1は、請求項1〜3に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、1対の揺動摩擦板17aの形状にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の
図5〜7に示した先発明に係る構造の第1例の場合と同様である。この為、同等部分には同一符号を付して、重複する図示並びに説明は省略し、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。又、本例の場合、前記両揺動摩擦板17aは、互いに等しい構成を有する為、以下の説明は、代表して、一方の揺動摩擦板17aに就いて行う。
【0035】
本例の場合には、前記揺動摩擦板17aを構成する先端帯状部33aの幅寸法Wを、この先端帯状部33aの長さ方向中央部から長さ方向両端部に向かう程大きくしている。この為に、本例の場合には、前記先端帯状部33aの幅方向片側縁である、前記揺動摩擦板17aのガイド長孔27の遠側縁31を、揺動支持軸18から遠い側が凸となる円弧状としているのに対し、前記先端帯状部33aの幅方向他側縁である、前記揺動摩擦板17aの先端縁35を、前記遠側縁31の長さ方向中央部で、この遠側縁31に対し最も近付いた直線状としている。従って、本例の場合、前記幅寸法Wは、前記先端帯状部33aの長さ方向中央部で最小値W
minとなっており、同じく長さ方向両端部で最大値W
maxとなっている。
【0036】
上述の様に構成する本例のステアリングホイールの位置調節装置によれば、前記揺動摩擦板17aの質量を徒に増大させる事なく、この揺動摩擦板17aの先端帯状部33aの長さ方向両端部の強度を十分に確保できる。
即ち、本例の場合も、前述の
図5〜7に示した先発明に係る構造の第1例の場合と同様、前記遠側縁31に調節ロッド14から押圧力Fが加わる際には、前記先端帯状部33aに曲げ応力が加わる。そして、この際にこの先端帯状部33aに加わる曲げ応力は、この先端帯状部33aの長さ方向両端部に近い部分程、大きくなる。これに対して、本例の場合には、当該曲げ応力の分布に合わせて、前記先端帯状部33aの幅寸法Wを、この先端帯状部33aの長さ方向中央部(W=W
min)から長さ方向両端部(W=W
max)に向かう程、大きくする構成を採用している。この為、この先端帯状部33aの長さ方向中間部の幅寸法を徒に大きくする事なく、即ち、前記揺動摩擦板17aの質量を徒に増大させる事なく、前記先端帯状部33aの長さ方向両端部の強度を十分に確保する事が可能となる。
【0037】
[実施の形態の第2例]
図2は、請求項1、2、4に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。尚、本例の特徴は、1対の揺動摩擦板28aの形状にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の
図8〜9に示した先発明に係る構造の第2例の場合と同様である。この為、同等部分には同一符号を付して、重複する図示並びに説明は省略し、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。又、本例の場合、前記両揺動摩擦板28aは、互いに等しい構成を有する為、以下の説明は、代表して、一方の揺動摩擦板28aに就いて行う。
【0038】
本例の場合も、上述した第1例の場合と同様、前記揺動摩擦板28aの先端縁36を、揺動支持軸29から遠い側が凸となる円弧状の遠側縁32の長さ方向中央部で、この遠側縁32に対し最も近付いた、直線状としている。これにより、前記先端縁36と前記遠側縁32との間に挟まれた部分である先端帯状部34aの幅寸法Wを、この先端帯状部34aの長さ方向中央部から長さ方向両端部に向かう程大きくしている。従って、本例の場合も、前記幅寸法Wは、前記先端帯状部34aの長さ方向中央部で最小値W
minとなっており、同じく長さ方向両端部で最大値W
maxとなっている。
【0039】
上述の様に構成する本例のステアリングホイールの位置調節装置によれば、前記揺動摩擦板28aの質量を徒に増大させる事なく、この揺動摩擦板28aの先端帯状部34aの長さ方向両端部の強度を十分に確保できる。
即ち、本例の場合も、前述の
図8〜9に示した先発明に係る構造の第2例の場合と同様、前記遠側縁32に調節ロッド14から押圧力Fが加わる際には、前記先端帯状部34aに曲げ応力が加わる。そして、この際にこの先端帯状部34aに加わる曲げ応力は、この先端帯状部34aの長さ方向両端部に近い部分程、大きくなる。これに対して、本例の場合には、当該曲げ応力の分布に合わせて、前記先端帯状部34aの幅寸法Wを、この先端帯状部34aの長さ方向中央部(W=W
min)から長さ方向両端部(W=W
max)に向かう程、大きくする構成を採用している。この為、この先端帯状部34aの長さ方向中間部の幅寸法を徒に大きくする事なく、即ち、前記揺動摩擦板28aの質量を徒に増大させる事なく、前記先端帯状部34aの長さ方向両端部の強度を十分に確保する事が可能となる。
【0040】
[実施の形態の第3例]
図3は、請求項1〜4に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、1対の支持板部25、25の内側面と変位ブラケット10の両側面との間部分に、テレスコ用の揺動摩擦板17a、17aを1枚ずつ挟持している。これと共に、1対の押圧部15a、15bの内側面と、前記両支持板部25、25の外側面との間に、チルト用の揺動摩擦板28a、28aを1枚ずつ挟持している。そして、この様な構成を採用する事により、ステアリングホイール1(
図4参照)の調節後の位置を、前後方向に関しても、上下方向に関しても、それぞれ強固に保持できる様にしている。
その他の構成及び作用は、上述した第1〜2例の場合と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。