(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ベース基板上にエピタキシャル成長膜を形成する際、窒素に代えてより熱分解が容易なアンモニアをドーパントガスとして採用した場合には、基板面内における不純物濃度をより均一化することができる。また、非特許文献1に開示されているように、塩化水素を含む反応ガスを用いてエピタキシャル成長膜を形成した場合には成長速度を向上させることができるため、炭化珪素基板をより効率的に製造することができる。しかし、アンモニアをドーパントガスとして採用し、かつ塩化水素を含む反応ガスを用いてエピタキシャル成長を行った場合には、不純物濃度が均一化された炭化珪素基板を効率的に製造することができる一方、炭化珪素基板の結晶性が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、不純物濃度の均一性および結晶性に優れる炭化珪素基板を効率的に製造することが可能な炭化珪素基板の製造方法および製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従った炭化珪素基板の製造方法は、炭化珪素からなるベース基板を準備する工程と、ベース基板上にエピタキシャル成長膜を形成する工程とを備えている。エピタキシャル成長膜を形成する工程では、アンモニアを含む第1ガスと、塩化水素を含み、アンモニアを含まない第2ガスとを混合した反応ガスをベース基板に向けて供給した状態でベース基板が加熱される。第1ガスは、アンモニアの熱分解温度にまで加熱された後に第2ガスと混合される。
【0009】
本発明者は、アンモニアをドーパントガスとして採用し、かつ塩化水素を含む反応ガスを用いてエピタキシャル成長を行った場合に炭化珪素基板の結晶性が低下する原因について詳細な検討を行った。その結果、アンモニアと塩化水素とを熱分解前に混合した場合にこれらが反応して固体状の副生成物を生成し、当該副生成物が成長中のエピタキシャル膜に異物として付着することにより結晶性の低下を招くことを見出し、本発明に想到した。
【0010】
本発明に従った炭化珪素基板の製造方法では、熱分解が容易なアンモニアを含む反応ガスが用いられるため、不純物(窒素原子)濃度がより均一化された炭化珪素基板を製造することができる。また、上記炭化珪素基板の製造方法では、塩化水素を含む反応ガスが用いられるため、エピタキシャル成長の速度を向上させることができる。さらに、上記炭化珪素基板の製造方法では、アンモニアを含む第1ガスがアンモニアの熱分解温度にまで加熱された後に塩化水素を含む第2ガスと混合されることにより反応ガスが形成される。そのため、第1ガス中のアンモニアと第2ガス中の塩化水素とが熱分解前に反応し、固体状の副生成物(塩化アンモニウム)を生成することを抑制することができる。これにより、当該副生成物が成長中のエピタキシャル膜に付着し、炭化珪素基板の結晶性が低下することを抑制することができる。したがって、本発明に従った炭化珪素基板の製造方法によれば、不純物濃度の均一性および結晶性に優れる炭化珪素基板を効率的に製造することができる。
【0011】
上記炭化珪素基板の製造方法において、エピタキシャル成長膜を形成する工程では、ベース基板は、反応管の内部に配置された状態で加熱されてもよい。そして、第1ガスは、反応管の外部において第2ガスと混合されてもよい。より具体的には、第1ガスは、反応管の外部に配置された予備加熱部により上記熱分解温度にまで加熱された後に第2ガスと混合されてもよい。
【0012】
これにより、第1ガスと第2ガスとがより均一に混合された反応ガスをベース基板に向けて供給することができる。その結果、より高品質な炭化珪素基板を製造することができる。
【0013】
上記炭化珪素基板の製造方法において、エピタキシャル成長膜を形成する工程では、ベース基板は、反応管の内部に配置された状態で加熱されてもよい。そして、第1ガスは、反応管の内部において第2ガスと混合されてもよい。より具体的には、第1ガスは、ベース基板を加熱するための加熱部により上記熱分解温度にまで加熱された後に第2ガスと混合されてもよい。
【0014】
これにより、ベース基板を加熱するための機構とは別の、第1ガスを上記熱分解温度にまで加熱するための機構を省略することができる。その結果、炭化珪素基板の製造に用いられる装置の構成をより簡略化することができる。
【0015】
本発明に従った炭化珪素基板の製造装置は、炭化珪素からなるベース基板を内部に配置するための反応管と、ベース基板を加熱するための加熱部と、ベース基板上にエピタキシャル成長膜を形成するための反応ガスを、反応管の内部に供給するためのガス供給部とを備えている。ガス供給部は、アンモニアを含む第1ガスと、塩化水素を含み、アンモニアを含まない第2ガスとを混合した反応ガスを反応管の内部に供給することが可能に構成されている。また、ガス供給部は、第1ガスをアンモニアの熱分解温度にまで加熱した後に第2ガスと混合することが可能に構成されている。
【0016】
本発明に従った炭化珪素基板の製造装置は、熱分解が容易なアンモニアを含む反応ガスを反応管の内部に供給可能となっているため、不純物(窒素原子)濃度がより均一化された炭化珪素基板を製造することができる。また、上記炭化珪素基板の製造装置は、塩化水素を含む反応ガスを反応管の内部に供給可能となっているため、エピタキシャル成長の速度を向上させることができる。さらに、上記炭化珪素基板の製造装置は、アンモニアを含む第1ガスをアンモニアの熱分解温度にまで加熱した後に塩化水素を含む第2ガスと混合させて混合ガスを形成することが可能となっている。そのため、第1ガス中のアンモニアと第2ガス中の塩化水素とが熱分解前に反応し、固体状の副生成物(塩化アンモニウム)を生成することを抑制することができる。これにより、当該副生成物が成長中のエピタキシャル膜に付着し、炭化珪素基板の結晶性が低下することを抑制することができる。したがって、本発明に従った炭化珪素基板の製造装置によれば、不純物濃度の均一性および結晶性に優れる炭化珪素基板を効率的に製造することができる。
【0017】
上記炭化珪素基板の製造装置では、ガス供給部は、反応管の外部に配置され、第1ガスを上記熱分解温度にまで加熱するための予備加熱部を含んでいてもよい。
【0018】
これにより、第1ガスと第2ガスとがより均一に混合された反応ガスを、反応管の内部に配置されるベース基板に向けて供給することができる。その結果、より高品質な炭化珪素基板を製造することができる。
【0019】
上記炭化珪素基板の製造装置では、ガス供給部は、反応管の内部に位置する部分を有し、第1ガスを反応管の内部に供給するための第1ガス配管と、第2ガスを反応管の内部に供給するための第2ガス配管とを含んでいてもよい。
【0020】
これにより、反応管の内部において第1ガスを上記熱分解温度にまで加熱し、かつ加熱後に第2ガスと混合させることができる。その結果、ベース基板を加熱するための加熱部とは別に第1ガスを上記熱分解温度にまで加熱するための機構を別途設ける必要がなく、装置構成をより簡略化することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上の説明から明らかなように、本発明に従った炭化珪素基板の製造方法および製造装置によれば、不純物濃度の均一性および結晶性に優れる炭化珪素基板を効率的に製造することが可能な炭化珪素基板の製造方法および製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0024】
(実施の形態1)
まず、本発明の一実施の形態である実施の形態1に係る炭化珪素基板の製造装置の構成について説明する。
図1を参照して、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造装置であるCVD(Chemical Vapor Deposition)装置1は、炭化珪素からなるベース基板10上にエピタキシャル成長膜を形成して炭化珪素基板を製造するための装置である。CVD装置1は、石英管8(反応管)と、RF(Radio Frequency)コイル9(加熱部)と、断熱材4と、発熱体5と、サセプタ6と、ガス供給部7とを主に備えている。
【0025】
石英管8は、たとえば円筒形状からなり、ベース基板10を配置するための反応室8aを内部に有している。石英管8は、一方の開口部(図中左側)からエピタキシャル成長のための反応ガスが反応室8a内に供給され、他方の開口部(図中右側)から当該反応ガスが排出されるように構成されている。
【0026】
RFコイル9は、ベース基板10および反応室8a内に供給された反応ガスを加熱するための部材である。RFコイル9は、石英管8の外周面8cに沿って巻き付けられるように配置されており、高周波誘導加熱により石英管8の内部に配置された発熱体5を加熱する。より具体的には、電源(図示しない)からRFコイル9に高周波電流を供給することによりRFコイル9の周囲に変化する磁力線が発生し、当該磁力線の変化により発熱体5に渦電流が流れる。そして、渦電流が流れることにより抵抗熱が発生し、発熱体5が加熱される。これにより、サセプタ6上に配置されたベース基板10および石英管8の内部に供給された反応ガスを加熱することができる。
【0027】
断熱材4は、反応室8aと石英管8の外部とを断熱するための部材であって、石英管8の内周面8bに沿うように配置されている。断熱材4は、たとえばカーボン製である。
【0028】
発熱体5は、RFコイル9を用いた誘導加熱により加熱することが可能な導電性材料からなっており、たとえばカーボンからなっている。発熱体5は、断熱材4の内周面4aに沿うように配置されている。このため、石英管8、断熱材4および発熱体5は、石英管8の径方向(中心部から外周部に向かう方向)において、発熱体5、断熱材4、石英管8の順に配置された状態となっている。また、発熱体5の内周面5aを含む部分には、サセプタ6を配置するための凹部5bが形成されている。
【0029】
サセプタ6は、ベース基板10を接触して配置するための部材である。サセプタ6は、たとえばカーボンからなり、その表面は炭化珪素(SiC)やタンタルカーバイド(TaC)によりコーティングされている。サセプタ6は、発熱体5の一部に形成された凹部5b内に配置されている。
【0030】
ガス供給部7は、ベース基板10上にエピタキシャル成長膜を形成するための反応ガスを石英管8の内部に供給するための部材である。ガス供給部7は、ガスボンベ71a〜71eと、ガス配管72a〜72cと、予備加熱部73とを主に有している。
【0031】
ガスボンベ71aには、キャリアガスである水素(H
2)ガスが充填されている。ガスボンベ71b,71cには、炭化珪素のエピタキシャル成長の原料となるシラン(SiH
4)ガスおよびプロパン(C
3H
8)ガスが各々充填されている。ガスボンベ71dには、塩化水素(HCl)ガスが充填されている。ガスボンベ71eには、ドーパントガスであるアンモニア(NH
3)ガスが充填されている。
【0032】
ガスボンベ71a〜71dの各々は、ガス配管72bと接続されている。ガスボンベ71a〜71dに充填されたガスの各々は、各ガスボンベに設けられたバルブ(図示しない)の開閉により、ガス配管72b内に供給されるようになっている。ガスボンベ71eは、ガス配管72aと接続されている。ガスボンベ71eに充填されたNH
3ガスは、ガス配管72aを通じて予備加熱部73に供給されるようになっている。
【0033】
予備加熱部73は、石英管8の外部に配置されている。予備加熱部73には、たとえば誘導加熱コイルおよび発熱体(図示しない)が設けられており、ガス配管72aを通じて供給されたNH
3ガス(第1ガスG1)を、NH
3の熱分解温度(800℃以上1000℃以下)にまで加熱する。
【0034】
ガス配管72cは、一方の端部(図中左側)が予備加熱部73に接続され、かつ他方の端部(図中右側)が石英管8の端部に接続されている。また、ガス配管72cは、ガス配管72bと接続されている。これにより、H
2、SiH
4、C
3H
8およびHClを含み、NH
3を含まないガス(第2ガスG2)を、ガス配管72bとガス配管72cとの接続部において第1ガスG1と混合することが可能となっている。そして、第1ガスG1と第2ガスG2とが混合された反応ガスG3を、ガス配管72cを通じて石英管8の内部に供給することが可能となっている。
【0035】
以上のように、本実施の形態に係るCVD装置1は、炭化珪素からなるベース基板10を内部に配置するための石英管8と、ベース基板10を加熱するためのRFコイル9と、ベース基板10上にエピタキシャル成長膜を形成するための反応ガスG3を石英管8の内部に供給するガス供給部7とを備えている。そして、ガス供給部7は、NH
3を含む第1ガスG1と、HClを含み、NH
3を含まない第2ガスG2とを混合した反応ガスG3を石英管8の内部に供給することが可能に構成されている。また、ガス供給部7は、第1ガスG1を予備加熱部73によりNH
3の熱分解温度にまで加熱した後に第2ガスG2と混合することが可能に構成されている。
【0036】
次に、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法について説明する。本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法は、上記本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造装置であるCVD装置1を用いて実施される。
図2を参照して、まず、工程(S10)として、ベース基板準備工程が実施される。この工程(S10)では、
図3を参照して、たとえば4H型の六方晶炭化珪素からなるインゴット(図示しない)をスライスすることにより、炭化珪素からなり、表(おもて)面10aおよび裏面10bを有するベース基板10が準備される。
【0037】
次に、工程(S20)として、ベース基板配置工程が実施される。この工程(S20)では、
図1を参照して、上記工程(S10)において準備されたベース基板10が、CVD装置1のサセプタ6上に配置される。
【0038】
次に、工程(S30)として、エピタキシャル成長膜形成工程が実施される。この工程(S30)では、以下に説明するようにしてベース基板10の表面10a上にエピタキシャル成長膜11が形成される(
図4参照)。
【0039】
図1を参照して、まず、ガスボンベ71a〜71eの各々に設けられたバルブ(図示しない)が開状態とされる。これにより、H
2、SiH
4、C
3H
8およびHClを含み、NH
3を含まない第2ガスG2がガス配管72b内に供給され、またNH
3を含む第1ガスG1がガス配管72a内に供給される。
【0040】
次に、第1ガスG1が、ガス配管72aを通じて予備加熱部73に供給される。そして、予備加熱部73により第1ガスG1がNH
3の熱分解温度(800℃以上1000℃以下)にまで加熱される。これにより、第1ガスG1に含まれるNH
3の少なくとも一部が、より好ましくは全てのNH
3が熱分解される。次に、熱分解後の第1ガスG1と第2ガスG2とがガス配管72cにおいて混合されて反応ガスG3が形成される。
【0041】
次に、反応ガスG3が、ガス配管72cを通じて石英管8の内部に供給される。このとき、石英管8の反応室8aおよび当該反応室8a内に配置されたベース基板10は、RFコイル9により加熱された発熱体5により予め所定の温度にまで加熱された状態となっている。そして、反応ガスG3が発熱体5により加熱されることにより、反応ガスG3中のSiH
4およびC
3H
8が熱分解される。この結果、
図4に示すようにベース基板10の表面10a上に窒素(N)原子がドープされた炭化珪素からなるエピタキシャル成長膜11が形成される。このようにして、上記工程(S10)〜(S30)が実施されることにより、ベース基板10とエピタキシャル成長膜11とを有する炭化珪素基板20が製造され、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法が完了する。
【0042】
以上のように、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法は、炭化珪素からなるベース基板10を準備する工程(S10)と、準備されたベース基板10を配置する工程(S20)と、ベース基板10上にエピタキシャル成長膜11を形成する工程(S30)とを備えている。そして、工程(S30)では、NH
3を含む第1ガスG1と、HClを含み、NH
3を含まない第2ガスG2とを混合した反応ガスG3をベース基板10に向けて供給した状態でベース基板10が加熱される。また、第1ガスG1は、予備加熱部73によりNH
3の熱分解温度にまで加熱された後に、ガス配管72cにおいて第2ガスG2と混合される。
【0043】
このように、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法では、熱分解が容易なNH
3を含む反応ガスG3が用いられるため、窒素原子濃度がより均一化された炭化珪素基板20を製造することができる。また、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法では、HClを含む反応ガスG3が用いられるため、エピタキシャル成長の速度を向上させることができる。さらに、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法では、NH
3を含む第1ガスG1がNH
3の熱分解温度にまで加熱された後にHClを含む第2ガスG2と混合されることにより反応ガスG3が形成される。そのため、第1ガスG1中のNH
3と第2ガスG2中のHClとが熱分解前に反応し、固体状の副生成物であるNH
4Clを生成することを抑制することができる。これにより、当該副生成物が成長中のエピタキシャル膜に付着し、炭化珪素基板の結晶性が低下することを抑制することができる。したがって、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法によれば、不純物濃度の均一性および結晶性に優れる炭化珪素基板20を効率的に製造することができる。
【0044】
また、上記工程(S30)において、ベース基板10は、石英管8の内部に配置された状態で加熱されてもよい。そして、第1ガスG1は、石英管8の外部において第2ガスG2と混合されてもよい。より具体的には、第1ガスG1は、石英管8の外部に配置された予備加熱部73によりNH
3の熱分解温度にまで加熱された後、
図1に示すようにガス配管72bとガス配管72cとの接続部において第2ガスG2と混合されてもよい。
【0045】
これにより、第1ガスG1と第2ガスG2とを石英管8の内部において混合する場合に比べて、第1ガスG1と第2ガスG2とがより均一に混合された反応ガスG3をベース基板10に向けて供給することができる。その結果、より高品質な炭化珪素基板20を製造することができる。
【0046】
(実施の形態2)
次に、本発明の他の実施の形態である実施の形態2に係る炭化珪素基板の製造装置であるCVD装置2の構成について説明する。本実施の形態に係るCVD装置2は、基本的には上記実施の形態1に係るCVD装置1と同様の構成を備え、かつ同様の効果を奏する。しかし、本実施の形態に係るCVD装置2は、ガス供給部7の構成において上記実施の形態1に係るCVD装置1とは異なっている。
【0047】
図5を参照して、CVD装置2では、ガス供給部7は、ガスボンベ71a〜71eと、第1ガス配管74と、第2ガス配管75とを主に有している。ガスボンベ71a〜71eには、上記実施の形態1と同様にH
2ガス、SiH
4ガス、C
3H
8ガス、HClガスおよびNH
3ガスが各々充填されている。ガスボンベ71a〜71dの各々は、第2ガス配管75と接続され、かつガスボンベ71eは、第1ガス配管74と接続されている。これにより、第2ガス配管75内にH
2、SiH
4、C
3H
8およびHClを含み、NH
3を含まない第2ガスG2を供給し、かつ第1ガス配管74内にNH
3を含む第1ガスG1を供給することが可能となっている。
【0048】
第1ガス配管74は、第1ガスG1を石英管8の内部に供給するための部材であって、一方の端部(図中右側)において石英管8の端部に接続されている。また、第1ガス配管74は、石英管8(石英管8のうち発熱体5と対向する部分)の内部に位置する部分である挿入部74aを有している。すなわち、第1ガス配管74は、
図5に示すように一方の端部(図中右側)が石英管8の内部に挿入された状態となっている。これにより、挿入部74aを流れる第1ガスG1を、RFコイル9および発熱体5によりNH
3の熱分解温度にまで加熱することが可能となっている。第2ガス配管75は、第2ガスG2を石英管8の内部に供給するための部材であって、一方の端部(図中右側)が石英管8の端部に接続されている。
【0049】
図5および
図6を参照して、第1ガス配管74は、上記一方の端部がサセプタ6の上方に位置しないように石英管8の内部に挿入されている。つまり、第1ガス配管74は、反応ガスG3が流れる方向において、上記一方の端部がサセプタ6より上流側に位置するように配置されている。これにより、第1ガスG1の供給口を含む第1ガス配管74の上記一方の端部と、ベース基板10との間において所定の間隔を保持することができる。この結果、第1ガスG1をより均一に拡散させた状態でベース基板10側へ供給することができる(
図6中矢印)。
【0050】
また、
図7を参照して、挿入部74aは、第1ガスの流路を構成するガス流路74bと、先端部に向かうに従い徐々に広がる形状を有するガス供給口74cとを有していてもよい。そして、ガス供給口74cにおける挿入部74aの断面積は、ガス流路74bにおける挿入部74aの断面積よりも大きくなっていてもよい。これにより、石英管の内部において第1ガスを均一に拡散させることがより容易になる。なお、ガス供給口74cにおける挿入部74aの断面形状は、
図7に示すような長方形状に限定されるものではなく、他の任意の形状(たとえば、円形状、正方形状その他多角形状など)とすることができる。
【0051】
また、
図8を参照して、挿入部74aは、第1ガスの流路を構成するガス流路74bと、複数の分岐部74eを含むガス供給口74dとを有していてもよい。これにより、
図7を参照して説明した場合と同様に、石英管8の内部において第1ガスを均一に拡散させることがより容易になる。なお、分岐部74eの数は、
図8に示すように3つであってもよいがこれに限定されるものではなく、適宜選択することが可能である。また、各分岐部74eにおける挿入部74aの断面形状は、
図8に示すような円形状に限定されるものではなく、たとえば長方形状など他の任意の形状とすることができる。また、各分岐部74eは、
図8に示すように互いに沿うように形成されていてもよいが、第1ガスをより均一に拡散させるように分岐部74eの各々の向きを適宜選択することも可能である。
【0052】
次に、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法について説明する。
図2を参照して、まず、上記実施の形態1と同様にベース基板準備工程(S10)およびベース基板配置工程(S20)が実施される。これにより、炭化珪素からなるベース基板10がCVD装置2のサセプタ6上に配置される(
図5参照)。
【0053】
次に、工程(S30)として、エピタキシャル成長膜形成工程が実施される。この工程(S30)では、以下に説明するようにして上記実施の形態1と同様にベース基板10上にエピタキシャル成長膜11が形成される(
図4参照)。
【0054】
図5を参照して、まず、ガスボンベ71a〜71eの各々に設けられたバルブ(図示しない)が開状態とされる。これにより、H
2、SiH
4、C
3H
8およびHClを含み、NH
3を含まない第2ガスG2が第2ガス配管75内に供給され、かつNH
3を含む第1ガスG1が第1ガス配管74内に供給される。
【0055】
次に、第1ガス配管74の挿入部74aに供給された第1ガスG1は、RFコイル9および発熱体5によりNH
3の熱分解温度以上にまで加熱される。これにより、第1ガスG1に含まれるNH
3の少なくとも一部、より好ましくは全部のNH
3が熱分解される。また、第2ガス配管75を通じて反応室8a内に供給された第2ガスG2は、同様にRFコイル9および発熱体5により加熱される。これにより、第2ガスG2中のSiH
4、C
3H
8が熱分解される。次に、熱分解後の第1ガスG1および第2ガスG2が反応室8aにおいて混合されることにより反応ガスG3が形成され、当該反応ガスG3がベース基板10に向けて供給される。そして、加熱されたベース基板10の表面10a上に窒素原子がドープされたエピタキシャル成長膜11が形成される(
図4参照)。このようにして、上記工程(S10)〜(S30)が実施されることにより、上記実施の形態1と同様にベース基板10とエピタキシャル成長膜11とを有する炭化珪素基板20が製造され、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法が完了する。
【0056】
以上のように、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法では、上記実施の形態1と同様に、第1ガスG1がNH
3の熱分解温度にまで加熱された後に第2ガスG2と混合される。そのため、第1ガスG1に含まれるNH
3と第2ガスG2に含まれるHClとの反応による副生成物(NH
4Cl)の生成が抑制され、これに起因した炭化珪素基板の結晶性の低下を抑制することができる。
【0057】
また、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法では、上記実施の形態1とは異なり、ベース基板10が石英管8の内部に配置された状態で加熱され、かつ第1ガスG1が石英管8の内部において加熱された後に第2ガスG2と混合される。より具体的には、第1ガスG1が、ベース基板10を加熱するためのRFコイル9および発熱体5によりNH
3の熱分解温度にまで加熱された後に第2ガスG2と混合される。そのため、上記実施の形態1のような第1ガスG1を加熱するための機構(予備加熱部73)を別途設ける必要がなく、装置構成をより簡略化することができる。
【0058】
(実施の形態3)
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態3に係る炭化珪素基板の製造装置であるCVD装置3の構成について説明する。本実施の形態に係るCVD装置3は、基本的には上記実施の形態1および2に係るCVD装置1,2と同様の構成を備え、かつ同様の効果を奏する。しかし、本実施の形態に係るCVD装置3は、発熱体5およびガス供給部7の構成において上記実施の形態1および2に係るCVD装置1,2とは異なっている。
【0059】
図9を参照して、CVD装置3において、ガス供給部7は基本的に上記実施の形態2の場合と同様の構成を有している。すなわち、ガス配管77内にH
2、SiH
4、C
3H
8およびHClを含み、NH
3を含まない第2ガスG2を供給し、ガス配管76内にNH
3を含む第1ガスG1を供給することが可能となっている。そして、ガス配管76,77は、一方の端部(図中右側)において石英管8の端部に接続されている。ここで、本実施の形態では、ガス配管76は、石英管8(石英管8のうち発熱体本体5cと対向する部分)の内部に挿入されることなく石英管8に接続されている。
【0060】
発熱体5は、発熱体本体5cと、当該発熱体本体5cの一方の端部(ガス配管76,77側の端部)において軸方向に突出するように形成された円環状の突出部(ガイド部)5dとを含んでいる。ガイド部5dの内周側には予備加熱領域5eが形成されており、当該予備加熱領域5eにガス配管76,77が配置されている。そのため、RFコイル9を用いてガイド部5dの内周側に位置する予備加熱領域5eを加熱することにより、当該予備加熱領域5eに位置するガス配管76,77を加熱することができる。これにより、ガス配管76に供給された第1ガスG1を予備加熱領域5eにおいてNH
3の熱分解温度にまで加熱することができる。つまり、上記実施の形態2の場合と異なり、石英管8のうち発熱体本体5cと対向する部分の内部ではなく当該部分の外部(予備加熱領域5e)において第1ガスG1を予備加熱することができる。
【0061】
次に、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法について説明する。
図2を参照して、まず、上記実施の形態1および2と同様にベース基板準備工程(S10)およびベース基板配置工程(S20)が実施される。これにより、炭化珪素からなるベース基板10がCVD装置3のサセプタ6上に配置される(
図9参照)。
【0062】
次に、工程(S30)として、エピタキシャル成長膜形成工程が実施される。この工程(S30)では、以下に説明するようにして上記実施の形態1および2と同様にベース基板10上にエピタキシャル成長膜11が形成される(
図4参照)。
【0063】
図9を参照して、まず、ガスボンベ71a〜71eの各々に設けられたバルブ(図示しない)が開状態とされる。これにより、H
2、SiH
4、C
3H
8およびHClを含み、NH
3を含まない第2ガスG2がガス配管77内に供給され、かつNH
3を含む第1ガスG1がガス配管76内に供給される。
【0064】
次に、ガス配管76内に供給された第1ガスG1は、予備加熱領域5eを通過する際にRFコイル9および発熱体5のガイド部5dによりNH
3の熱分解温度以上にまで加熱される。これにより、予備加熱領域5eにおいて第1ガスG1に含まれるNH
3の少なくとも一部、より好ましくは全部のNH
3が熱分解される。また、ガス配管77内に供給された第2ガスG2も同様に予備加熱領域5eにおいて加熱されることにより、第2ガスG2中のSiH
4、C
3H
8などの少なくとも一部が熱分解される。次に、第1ガスG1および第2ガスG2が反応室8aにおいて混合されることにより反応ガスG3が形成され、当該反応ガスG3がベース基板10に向けて供給される。そして、加熱されたベース基板10の表面10a上に窒素原子がドープされたエピタキシャル成長膜11が形成される(
図4参照)。このようにして、上記工程(S10)〜(S30)が実施されることにより、上記実施の形態1および2と同様にベース基板10とエピタキシャル成長膜11とを有する炭化珪素基板20が製造され、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法が完了する。
【0065】
以上のように、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法では、上記実施の形態1および2と同様に、第1ガスG1がNH
3の熱分解温度にまで加熱された後に第2ガスG2と混合される。そのため、第1ガスG1に含まれるNH
3と第2ガスG2に含まれるHClとの反応による副生成物(NH
4Cl)の生成が抑制され、これに起因した炭化珪素基板の結晶性の低下を抑制することができる。
【0066】
また、本実施の形態に係る炭化珪素基板の製造方法では、第1ガスG1が予備加熱領域5eにおいて発熱体5に形成されたガイド部5dによりNH
3の熱分解温度にまで加熱され、その後石英管8の内部において第2ガスG2と混合される。そのため、上記実施の形態1のように予備加熱部73を別途設ける必要がなく、また、上記実施の形態2のようにガス配管を石英管8の内部に挿入することなく第1ガスG1を第2ガスG2との混合前に予熱加熱することができる。これにより、ガス配管を石英管8の内部に挿入することにより当該ガス配管が石英管8内の熱で溶けることを防止することができる。
【0067】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。