(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らが鋭意検討したところ、反応場を酸性にすることで架橋剤と樹脂の架橋速度を早めることができることを見出した。すなわち、インク中に有機酸または無機酸と、アミンを共存させた時に、アミンの揮発によってインク中で解離していた酸成分のみが残り、pHを酸性まで下げることができ、その結果、架橋反応が進行する。また、酸を共存させることで、アミンの揮発によって水溶液中の平衡関係からpKaの大きな樹脂のカウンターアニオンが優先的に水素イオンと結合されるので、水が残存する状態でも非解離のカルボキシル基と架橋基を反応させることができ、架橋反応時間短縮が可能になる。
【0021】
一般に例えば、水溶液中にカルボキシル基を有する樹脂と、オキサゾリン基を有する化合物が共存する場合、水溶液中では該樹脂と化合物は均一に溶解し、該樹脂は塩基で中和されているため、塩基性雰囲気下ではほとんど反応しない。しかし、水分がなくなった際にカルボキシル基とオキサゾリン基が結合し、架橋構造が形成されて不揮発成分が造膜されることにより擦過性が改善されることが知られている。
【0022】
揮発性のアミンで中和したカルボキシル基を有する樹脂が記録媒体に吐出されると、水分の蒸発と共にアミンが揮発する。インクのpH変化に注目し蒸発過程でのインクのpHを測定すると、経時的にインクのpHは減少するがある程度のpHまでしか低下せず、オキサゾリン基との架橋反応が促進される酸性pHまでは低下していないことが分かった。
【0023】
そこで、本発明に記載の有機酸または無機酸と、アミンを添加することによりpHの低下を促進させ、酸性雰囲気下にすることで、架橋反応を促進し、樹脂と架橋剤の硬化時間を短縮する。また、pHの低下によって樹脂の溶解性や顔料の分散性を低下させることにより、析出・凝集を起こさせ、樹脂同士、顔料同士、または樹脂と顔料間の相互作用を増大させ、さらには樹脂、顔料、架橋剤との架橋反応を促進することにより増粘することで、ブリーディングを低減する技術思想に至った。
【0024】
また本発明は、アミンの揮発を架橋反応、増粘のトリガーにしているので、密閉系で保存することでpHが低下せずに長時間保存することが可能となり、保存安定性に優れる。また、ブリーディングを低減するためにインクを凝集させる機能を有する処理液を付与し、インクジェットインクを吐出する画像形成方法と比較して、インクジェットインクのみを用いた簡便な画像形成方法で高画質が得られる。
【0026】
《インクジェット用水性インク》(以後、単にインクジェットインクまたはインクともいう)
本発明に係るインクジェット用水性インクについて説明する。
【0027】
本発明に係るインクジェット用水性インクは、水と、顔料と、有機酸または無機酸と、アミンと、該有機酸または無機酸よりもpKaが高い樹脂と、架橋剤を含有するインクである。さらに、インクジェット記録時に記録媒体の画像形成面を加温することによって、架橋反応を促進することができ、その結果、乾燥条件が短くても優れた擦過性を有し、さらにはブリーディングを低減することができる。
【0028】
また、上記課題を解決するには、水と、顔料と、有機酸または無機酸と、アミンと、該有機酸または無機酸よりもpKaが高い樹脂と、架橋剤とを含有し、解離して形成される酸成分のpKaが5以下の場合であることが好ましい。
【0029】
ここで、本発明に係るインクジェット用水性インクにより、本発明の効果が発現する理論を説明する。まず、着弾後にインク中のアミンが、揮発性が高いために空気中に放出されるので、その結果、インク中のH
+が増加し、pHが低下する。つまり、アミンの揮発により、インク中で解離していた酸成分のみが残り、インクジェット用水性インクは酸性を示す。さらに、水溶液中の平衡関係からpKaの大きな水溶性樹脂のカウンターアニオンが優先的に水素イオンと結合されるので、非解離状態の樹脂中のカルボキシル基と、架橋剤の架橋基の反応が水溶液中でも起きる。よって、インクの乾燥時間が短縮されたのは、反応雰囲気が酸性であること、水溶液中でも架橋反応が進行するためであると推測している。
【0030】
さらに、ブリーディングが低減したのは、顔料分散樹脂が非解離状態になるpHまで低下したことによって顔料表面の電荷反発が低下し、電荷を失った顔料同士が凝集したためであり、さらに顔料表面のカルボキシル基と架橋剤の架橋基が反応し、顔料を介して三次元ネットワークを形成することによって粘度が急激に上昇したためであると推測している。
【0031】
また、水溶性の塩が存在するので、水の蒸発によりインクが濃縮され固形分濃度が増加すると塩析によって、より樹脂の析出、顔料の凝集が促進される。
【0032】
上述した効果は、有機酸または無機酸と、アミンが、アミン塩から形成された場合、さらには、樹脂が水溶性樹脂である場合には特に効果が大きい。
【0033】
(有機酸または無機酸)
本発明に係る有機酸とは、有機化合物のうち酸性をもつものをいう。但し、下述する本発明に係る樹脂は含まない。
【0034】
また、本発明に係る無機酸とは、非金属を含む酸基が水素と結合してできた酸をいう。本発明に係る有機酸または無機酸は、インク中に存在する樹脂と比べて、pKaが低ければ、いかなるものも使用できる。これらの酸は、インク中で水素イオンと解離したイオンの状態、水素イオンと結合した状態もしくは双方の状態で存在し、本発明では、インク中にいずれかの状態にあっても酸と呼ぶ。有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、トリカルバリル酸、グリコール酸、チオグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、グルコン酸、ピルビン酸、オキサル酢酸、ジグリコール酸、安息香酸、フタル酸、マンデル酸、サリチル酸などが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0035】
無機酸としては、酢酸、塩酸、硫酸、亜塩素酸、硝酸、亜硝酸、亜硫酸、亜燐酸、燐酸、塩素酸、次亜リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、アミド硫酸、ホウ酸などが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明で利用する有機酸または無機酸は、pKaが5以下であることが好ましい。酸を複数添加した場合は、酸成分全体としてpKaが5以下であることが好ましい。なお、ここで言うpKaとは、酸解離定数Kaの逆数の対数値を表すものであり、数値が小さいほど強い酸を意味し、数値が大きいほど弱い酸を意味する。また、本発明においてpKaとは、pKaが複数存在する有機酸又は無機酸に関しては、最も数値の小さいpKaの値を表す。有機酸または無機酸のpKaの測定は、例えば、従来からよく用いられる滴定方法に従って求めることができる。
【0037】
本発明に係る有機酸又は無機酸は、インクを調整する際に、有機酸又は無機酸を直接加えてもよいし、アミン塩を添加することで該アミン塩の酸成分を有機酸又は無機酸としてもよい。
【0038】
(アミン)
本発明に係るアミンとは、アンモニア又はアンモニアの水素原子を炭化水素残基で置換した化合物である。
【0039】
本発明に係るアミンは、樹脂と架橋剤の硬化を促進するためのトリガーとして存在する。このようにアミンがトリガーとしての効果を有するのは、アミンが揮発性を有するという特徴があるからである。
【0040】
アミンとしては、アンモニアの他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルモノエタノールアミン、n−ブチルモノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、n−ブチルジエタノールアミン、ジ−n−ブチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。この中でも特に、アンモニアが好ましい。
【0041】
これらのアミンのインク中の濃度は0.01mol/L以上3.00mol/L以下であることが好ましい。
【0042】
(アミン塩)
本発明に係るアミン塩とは、酸成分をアミンで中和したものを指す。その中でも特に酸成分のpKaが5以下であることが好ましい。また、pKaを複数有する酸成分は、酸成分全体としてpKaが5以下であることが好ましい。
【0043】
本発明では、pH低下作用を得るために有機酸または無機酸とアミンは、インク中にアミン塩を添加し、アミン塩から解離したものであることが好ましい。
【0044】
本発明の効果をより向上するためには、沸点の低いアンモニアで中和された塩であることが好ましく、酸成分をアンモニアで中和したアンモニウム塩としては、例えば、燐酸三アンモニウム、硫化アンモニウム、酢酸アンモニウム、クエン酸二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、フタル酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、コハク酸アンモニウム、サリチル酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、酒石酸水素アンモニウム、アミド硫酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、シュウ酸水素アンモニウム、蟻酸アンモニウム、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0045】
アンモニア以外のアミンを用いてもよく、アミンの例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルモノエタノールアミン、n−ブチルモノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、n−ブチルジエタノールアミン、ジ−n−ブチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0046】
前記有機酸または無機酸のインク中の含有率はインクに対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0047】
上記アミン塩の添加量は、インク全量に対して質量百分率で0.1%以上10%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2%以上5.0%以下である。0.1%以上とすることによりインクのpHを十分に低下させることができ、10%以下とすることにより、揮発により放出されるアンモニア量の増加による作業環境の悪化が低減できる。
【0048】
<樹脂>
本発明に係る樹脂とは、上記の有機酸または無機酸のpKaよりも樹脂の酸成分のpKaが高い樹脂であることを特徴とする。
【0049】
該樹脂とは顔料に吸着していても、定着性や光沢の向上のために溶解状態で存在していてもよいが、好ましくは顔料に吸着している状態である。ブリーディング低減の目的で粘度を上昇させるには、顔料に吸着している樹脂に加え、インクを調整する際に当該樹脂をさらに添加するほうが、pHが低下したときに樹脂、顔料、架橋剤間の相互作用を増大させるので好ましい。
【0050】
尚、顔料に吸着している樹脂とさらにインク化の際に添加する樹脂は同じでも異なっていても良い。前記樹脂が複数添加されている場合には、少なくとも1種が有機酸または無機酸のpKaよりも樹脂の酸成分のpKaが高い樹脂であればよい。好ましくは、複数添加されている樹脂の全てが有機酸または無機酸のpKaよりも樹脂の酸成分のpKaが高い樹脂であることがよい。
【0051】
本発明の有機酸または無機酸よりもpKaが高い樹脂は、水溶性であることが好ましい。
【0052】
また、本発明の樹脂は、樹脂の酸成分がアミン等により中和されている。中和に関しては、樹脂をインク中に添加する前に、あらかじめ樹脂の酸成分を中和していてもよく、他にも、インク中に添加した後、本発明に係るアミンによって樹脂の酸成分を中和してもよい。樹脂の酸成分の中和は特に制限されず、中和の例としてアミン、金属(例えば、ナトリウム、リチウムなど)が挙げられる。乾燥後にカウンターのアミンが揮発するので、耐水性の観点からアミンによって中和された酸を有する樹脂であることが好ましい。
【0053】
本発明に係る樹脂は、樹脂中にカルボキシル基やスルホ基等の酸の官能基を有し、該樹脂中の酸の官能基がアミンによって中和されている樹脂であることが好ましい。具体的な例としては、アクリル系、スチレンアクリル系、アクリロニトリル−アクリル系、酢酸ビニルアクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系などの樹脂の一部をカルボキシル基やスルホ基等の酸で修飾し、その樹脂をアミンによって中和することで得ることが出来る。中和に用いるアミンの例としては、アンモニア、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン等が好ましく、本発明の効果がより現れる沸点の低いアンモニアが特に望ましい。
【0054】
酸を有する樹脂は、モノマーを重合することによって得ることができる。このようなモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、スチレンの酸誘導体をラジカル共重合したものなどが挙げられる。また、必要に応じて他のモノマーと共重合しても良い。
【0055】
酸を有する樹脂の重量平均分子量は、本発明の係る画質改善効果の観点から、3000以上、射出性と粘度の観点から、30000以下であることが好ましく、10000以上、20000以下がより好ましい。また、酸価は、60mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0056】
本発明に係る樹脂の含有量は、インク全質量に対して0.5%〜15%が好ましく、より好ましくは2.0%〜10%である。アミンによって中和された酸を有する樹脂の含有量は、インク全質量に対して0.5%〜15%が好ましく、より好ましくは2.0%〜10%である。0.5%以上とすることにより、粘度上昇の効果が十分に得られ、15%以下とすることにより、効果の向上が期待され、射出性が良好に維持される。
【0057】
(架橋剤)
本発明に係る架橋剤とは、架橋基を有する化合物をいい、従来から公知のものが使用できる。例えば、カルボジイミド基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、アルデヒド基を有する化合物、N−メチロール基を有する化合物、アクリロイル基を有する化合物、ビニルスルホン基を有する化合物、活性ハロゲン基を有する化合物、エチレンイミノ基を有する化合物、グリオキザール基を有する化合物、メラミンを有する化合物等を挙げることができるが、本発明においては、カルボジイミド基及びオキサゾリン基からなる群から選ばれる2つ以上の基(同群又は異群どちらでも構わない)を有する化合物は、混合後の保存安定性に優れ、安全性が高いので好ましい。
【0058】
本発明に用いることのできるカルボジイミド基を有する化合物の具体例としては、カルボジイミド、N,N′−ジメチルカルボジイミド、N−エチル,N′−イソプロピルカルボジイミド、N,N′−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N′−ジフェニルカルボジイミド,N,N′−ジアセチルカルボジイミド、N,N′−ビス(2−プロペン)−カルボジイミド、N,N′−ジピロリジルカルボジイミド、N,N′−ジエトキシカルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメソ−パラ−トルエンスルホン酸塩、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、カルシウムシアナミド等が挙げられ、また、日清紡績ケミカル株式会社製のカルボジライトV−02、V−02、V−02−L2、V−04、V−06、E−01、E−02なども好ましく用いることができる。
【0059】
本発明に用いることのできるオキサゾリン化合物としては、例えば、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−(n−プロピル)−2−オキサゾリン、2−(イソプロピル)−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−ピロリジル−2−オキサゾリン、2−アセチル−2−オキサゾリン、2−(2−プロペン)−2−オキサゾリン、4,5−ジメチル−2−オキサゾリン、2,4,4−トリメチル−2−オキサゾリン、5−フェニル−2−(2−プロピニルアミノ)−2−オキサゾリン−4−オン、4−エトキシメチレン−2−フェニル−2−オキサゾリン−5−オン等が挙げられ、また、株式会社日本触媒社製のエポクロスシリーズK−1010E、K−2010E、K−1020E、K−2020E、K−1030E、K−2030E、WS−500、WS−700、RPS−1005なども好ましく用いることができる。
【0060】
これらは市販品或いは合成品のいずれのものも使用できる。
【0061】
本発明に係る架橋剤の含有量は、インク全質量に対して固形分として0.5%〜15%が好ましく、より好ましくは2.0%〜10%である。0.5%以上で十分に効果を発揮することができ、15%以下にすることで射出性と両立できる。
【0062】
<その他の樹脂>
また、本発明に係るインクには、上記アミン等によって中和された樹脂とは異なる樹脂を様々の目的に応じて含有させてもよい。これらの樹脂は、複数種添加しても、共重合体として添加しても良く、エマルジョン状態で分散されていても構わない。エマルジョン状態で分散させる場合、インクジェット方式による射出性を損なわないという観点から、樹脂微粒子の平均粒径は、300nm以下であることが好ましい。水溶性ポリマーの場合、組成や分子量は特に限定は無いが、重量平均分子量50000以下であることが好ましい。
【0063】
本発明においては、有機酸または無機酸と樹脂とのpKaの差が0.5以上あることが好ましく、更に好ましくは1以上である。
【0064】
<水>
本発明に係るインクは、水を含有する。水のインク中での含有量は、少なくとも20質量%以上90質量%以下であることが望ましい。
【0065】
<水溶性有機溶媒>
本発明に係るインクは、水溶性有機溶媒を含んでも良い。インク中に樹脂を溶解する場合、インク溶媒としては、20質量%以上、90質量%以下の水の他に、吐出性向上やインク物性の調整などの目的で、水溶性有機溶媒を含んでいることが好ましい。本発明の効果を損なわない限り、水溶性有機溶媒の種類には特に制限はなく、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、デカグリセリル、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、2−ピロリジノン、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ブタンジオール、等を挙げることができる。
【0066】
<顔料>
本発明に係るインクに使用できる顔料としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、水分散性顔料、溶媒分散性顔料等何れも使用可能であり、例えば、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料及び、カーボンブラック等の無機顔料等を好ましく用いることができる。
【0067】
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
【0068】
好ましく用いることのできる具体的顔料としては、以下の顔料が挙げられる。
【0069】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0070】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0071】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0072】
以上の他にレッド、グリーン、ブルー、中間色が必要とされる場合には、以下の顔料を単独あるいは併用して用いることが好ましく、例えばC.I.Pigment Red;209、224、177、194、 C.I.Pigment Orange;43、 C.I.Vat Violet;3、 C.I.Pigment Violet;19、23、37、 C.I.Pigment Green;36、7、 C.I.Pigment Blue;15:6、等が用いられる。
【0073】
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
【0074】
本発明で用いられる顔料は、分散剤及びその他所望する諸目的に応じて必要な添加物と共に分散機により分散して用いることが好ましい。分散機としては、従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等が使用できる。
【0075】
本発明に係るインクに使用する顔料分散体の平均粒径は、10nm以上、200nm以下であることが好ましく、10nm以上、100nm以下であることがより好ましく、10nm以上、50nm以下であることが更に好ましい。
【0076】
顔料分散体の粒径測定は、例えば、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。また、透過型電子顕微鏡による顔料粒子像撮影を少なくとも100粒子以上に対して行い、この像をImage−Pro(メディアサイバネティクス製)等の画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。
【0077】
<界面活性剤>
本発明に係るインクには、吐出性向上や濡れ性向上のため、界面活性剤を含んでいることが好ましい。使用される界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれの界面活性剤を用いることができる。本発明に適用可能な界面活性剤の具体例としては、特に限定するものではないが、以下のものを好ましく用いることができる。
【0078】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0079】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0080】
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等、非イオン活性剤としては、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。
【0081】
さらに、インクの低表面張力化の観点から、これらの界面活性剤の一部がフッ素原子あるいは珪素原子に置換されていることが好ましい。
【0082】
これらの界面活性剤や溶剤を単独で用いても良いし複数を併用しても良い。
【0083】
<その他の添加剤>
本発明に係るインクには、さらに種々の目的で添加物を含んでも良い。出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報及び特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤等を挙げることができる。
【0084】
《インクジェット画像形成方法》
本発明のインクジェット画像形成方法(以後、単に画像形成方法ともいう)においては、本発明に係るインクジェットインクを装填したプリンター等により、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドよりインクジェットインクを液滴として吐出させることで、記録媒体に画像形成を行う。
【0085】
本発明に係るインクを吐出して画像形成を行う際に使用するインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等など何れの吐出方式を用いても構わない。その中でも、本発明の画像形成方法においては、30μm以下のノズル径を有するピエゾ型インクジェット記録ヘッドを使用することが好ましい。
【0086】
本発明の画像形成方法において、画像形成方式としては特に制限はなく、シングルパス型、スキャン型のどちらでも良いが、高速印刷に効果的であるという点からシングルパス型が好ましい。シングルパス型のインクジェット画像形成方法とは、記録媒体が一つのインクジェットヘッドユニットの下を通過した際に、一度の通過で、画素を形成するための全てのドットが吐出されるインクジェット画像形成方法である。
【0087】
シングルパス型の画像形成方法を達成する手段として、ラインヘッド型のインクジェットヘッドを使用することが好ましい。
【0088】
ラインヘッド型のインクジェットヘッドとは、印刷範囲の幅以上の長さを持つインクジェットヘッドのことを指す。ラインヘッド型のインクジェットヘッドとしては、一つのヘッドで印刷範囲の幅以上であっても良いし、特開2007−320278号公報に開示のように複数のヘッドを組み合わせて印刷範囲の幅を超えるよう構成してもよい。
【0089】
本発明の画像形成方法に用いることのできるインクジェット記録装置の一例を図を参照しながら説明する。
【0090】
図1は、本発明の画像形成方法に適用可能なシングルパス方式(ラインヘッド方式)のインクジェット記録装置の一例を示す模式図である。
【0091】
図1において、11がラインヘッド型のヘッドユニットであり、それぞれ色相の異なるインクを吐出するヘッド111〜114で構成され、各ヘッドのノズルピッチは360dpi程度であることが好ましい。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0092】
記録媒体である印刷用塗工紙Pは、ロール状に積層された状態で、搬送機構12より矢印方向に繰り出される。この時、印刷用塗工紙Pは、画像形成前に赤外線ヒーター等の加熱部13で予め所定の温度に加熱されてもよい。画像形成面は下部の温度制御プレート14を用いて、本発明で規定する40℃以上、90℃以下の温度になる様に適宜制御が行われる。30℃以上とすることにより、インクの粘度上昇の効果が十分となり、90℃以下とすることにより粘度上昇の効果を適宜維持するだけでなく、記録媒体の傷みも低減できる。
【0093】
図2は、各ヘッド底部におけるノズルの配置を示す底面図である。
【0094】
図2に示すように、それぞれヘッド111とヘッド112、ヘッド113とヘッド114のノズルNは、半ピッチずつずらした千鳥配列となっている。この様なヘッド構成とすることにより、より緻密な画像を形成することができる。
【0095】
図3は、ヘッドユニット構成の一例を示す模式図である。
【0096】
画像幅の広い印刷用塗工紙Pを用いる場合は、印刷用塗工紙Pの全巾をカバーするように複数個のヘッドHを千鳥配列に配置したヘッドユニットHUを用いることも好ましい。
【0097】
本発明の記録媒体は特に制限がなく、インク吸収性記録媒体でも、インク非吸収性記録媒体でもよい。本発明では、特にインク非吸収性媒体を使用して高速で印刷した際に、ブリードの発生を十分に防止できる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0099】
《顔料分散体の調製》
(マゼンタ顔料分散体の調製)
顔料分散剤としてジョンクリル690、3部、ジメチルアミノエタノール1.3部、イオン交換水80.7部を混合した後、加熱攪拌した。この混合液に、C.I.ピグメントレッド122を15部添加し、プレミックスした後、0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料固形分が15%のマゼンタ顔料分散体を得た。
【0100】
ジョンクリル690は、アミンにより中和された水溶性アクリル樹脂で、酸価240mgKOH/g、重量平均分子量16500で、pKaは6.7である。pKaは固形分濃度0.5%の水溶液を100ml作製し、0.02Nの塩酸水溶液によって、1滴/3分の速度で撹拌を行いながら滴定し、求めた。
【0101】
(シアン顔料分散体の調製)
顔料分散剤としてジョンクリル690 3部、ジメチルアミノエタノール1.3部、イオン交換水80.7部を混合した後、加温攪拌した。この混合液にC.I.ピグメントブルー15:3を15部添加し、プレミックスした後、0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料固形分が15%のシアン顔料分散体を得た。
【0102】
《インクの調製》
(インク1−Mの調製)
下記に記載した各添加剤のうち、マゼンタ顔料分散体を除いたものを、下記の添加量で混合し、十分に攪拌した後、マゼンタ顔料分散体33部を攪拌しながら添加した。十分に攪拌を行った後、この混合液を#3500メッシュの金属フィルターで濾過し、中空糸膜による脱気を行って、インク1−Mを調製した。なお、ジョンクリル70Jは、アミンにより中和された水溶性アクリル樹脂であり、pKaは6.3である。pKaは固形分濃度0.5%の水溶液を100ml作製し、0.02Nの塩酸水溶液によって、1滴/3分の速度で撹拌を行いながら滴定し、求めた。
【0103】
(インク1−M)
酢酸アンモニウム(酢酸:pKa 4.76) 2部
カルボジライトSV−02(日清紡ケミカル社製)(固形分40%)
13部
ジョンクリル70J(BASF社製)(固形分30%) 10部
マゼンタ顔料分散体 33部
オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業社製) 0.5部
KF351(シリコーン系界面活性剤、信越化学工業社製) 0.5部
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 7部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 10部
2−ピロリジノン 5部
水 19部
1−Mの酸・アミン、架橋剤を下記表1のように変更し、インク全体で100部になるように水を加えた以外は同様に2−M〜8−M、10−M〜12−Mを調整した。
【0104】
また、9−Mに関しては、1−Mの酸・アミン、架橋剤を下記表1のように変更した他に、ジメチルアミノエタノールを水酸化ナトリウム水溶液に変えて調整したマゼンタ顔料分散体に変更して、さらにインク全体で100部になるように水を加えて調整した。
【0105】
【表1】
【0106】
なお、表1の架橋剤において使用した化合物は以下の通りである。
カルボジライトSV−02(日清紡ケミカル社製)(固形分40%)
エポクロスWS−500(日本触媒社製)(固形分40%)
ケミタイトPZ−33(日本触媒社製)(固形分99%以上)
また、インク1−C〜12−Cの調製について、マゼンタ顔料分散体を同量のシアン分散体に変更した以外は同様にして、インク1−C〜12−Cを調製した。但し、9−Cのシアン分散体については、ジメチルアミノエタノールを水酸化ナトリウム水溶液に変えて調整したシアン顔料分散体を用いた。
【0107】
(インクセットA〜Lの作製)
インク1−Mと1−Cの組み合わせをインクセットAとし、以下同様にM、Cを組み合わせたインクセットA〜Lを用意した。
【0108】
《画像の形成》
〔画像1の形成〕
インクセットAを用いて、下記の画像形成方法により、印刷塗工紙上、塩化ビニル上に画像1を形成した。
【0109】
インクジェット記録装置として、
図1に記載のシングルパス方式(ラインヘッド方式)のインクジェット記録装置を用いた。印刷用塗工紙としてSA金藤(アート紙、王子製紙社製)を用い、搬送速度280mm/sで搬送しながら、記録媒体Pを加熱ユニット13により画像形成面を40℃に加熱し、ヘッドユニット11よりインクセットAを吐出した。なお、印刷用塗工紙の画像形成面の温度は、非接触型の赤外温度計により測定を行った。
【0110】
また、裏面より画像形成面が50℃になるように加熱した塩化ビニル(メタマーク社製)にワイヤーバー(安田精機製作所社製)でインクセットAを11ml/m
2となるように塗布し、所定時間乾燥した。
【0111】
ヘッドユニット11を構成する各ヘッド(111〜114)は、それぞれ360dpiの2つのヘッドが、
図2に示す様なノズルが互い違いの配置になるよう配置し、
図3に示す様に、印刷用塗工紙全幅をカバーする様に複数個配置したラインヘッド方式とした。ヘッド112よりインクセット1を構成するインク1−Mを、ヘッド111よりインクセット1を構成するインク1−Cを、それぞれ720dpi×720dpiの解像度で、インク液滴量として16plで吐出し、画像形成率が100%のマゼンタベタ画像上の一部に、画像形成率が100%のシアンベタ画像を形成し、画像1を得た。
【0112】
〔画像2〜7、9〜13の形成〕
インクセットB〜Lを用いて、画像形成1と同様に画像を形成した。
【0113】
〔画像8の形成〕
インクセットAを用いて、画像形成1と同様に画像を塩化ビニル上に形成し、画像形成面を30℃になるように加熱した印刷塗工紙に同様の方法で画像を形成した。
【0114】
《形成画像の評価》
〔擦過性の評価〕
乾燥条件として、記録媒体の画像形成面を熱プレートなどで表2に記載の温度に保ちながら、5分及び10分間放置した後、綿布(カナキン3号)に9Nの荷重をかけて各記録画像表面を10〜30回こすり、インク剥がれ、綿布へのインク移りを目視観察し、下記基準に従って擦過性を評価した。
◎:30回こすってもインク剥がれ、綿布へのインク移りが認められなかった
○:30回こすった後インク剥がれ、または綿布へのインク移りがわずかに認められた
△:30回こすった後インク剥がれ、または綿布へのインク移りが認められた
×:30回こすり終わる前にインク剥がれ、または綿布へのインク移りが認められた
〔ブリーディング耐性の評価〕
画像形成率が100%のマゼンタベタ上の一部に、画像形成率が100%のシアンが画像形成されたベタ画像を形成し、ブリーディング(画像滲み)の発生の有無を目視観察し、下記の基準に従ってブリーディング耐性を評価した。
【0115】
◎ :ブリーディングの発生が認められない
○ :ブリーディングの発生がほぼ認められない
△ :シアン画像の0.5mm以上、1.0mm未満の滲みが認められる
× :シアン画像の1.0mm以上の滲みが認められる。
【0116】
【表2】
【0117】
表2に記載の結果より明らかな様に、本発明の画像形成方法に従って形成した画像は、比較例に対し、乾燥時間が短くても優れた擦過性を有し、さらにブリーディング耐性、保存安定性が高いことが分かる。