(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記施設接近判定手段が、前記車両から所定範囲内に前記高速道路施設が位置すると判定した後に、前記車両から所定範囲内に前記高速道路施設が位置しないと判定した場合、前記マッチング手段は、前記上り下り情報に基づく前記対象車線の特定を行わない、
請求項1に記載のナビゲーションシステム。
前記施設接近判定手段が、前記車両から所定範囲内に前記高速道路施設が位置すると判定した場合、前記マッチング手段は、前記地図データ上の前記複数の車線の方向が前記上り下り情報が示す方向と異なる回数が所定回数以上となった場合、前記上り下り情報に基づく前記対象車線の特定を行わない、
請求項1又は2に記載のナビゲーションシステム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るナビゲーションシステム、ナビゲーション方法、及びナビゲーションプログラムの実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(構成)
本実施の形態では、スマートフォンにナビゲーションプログラムをインストールすることにより、スマートフォンがナビゲーションシステムとして機能する場合について説明するが、この他にも、車載用ナビゲーション装置や携帯用ナビゲーション装置を含む任意の装置によってナビゲーションシステムを構成してもよい。また、ナビゲーションシステムにおけるスマートフォンとしての機能については、公知のスマートフォンと同様の構成により得ることができるので、その説明は省略することとし、特に経路案内機能を達成するための構成について説明する。なお、このナビゲーションシステムを搭載した車両(スマートフォンを操作する者が搭乗する車両)を以下では「自車両」と称して説明する。
【0018】
まず、本実施の形態に係るスマートフォンとしてのナビゲーションシステム1の構成を説明する。
図1は、本実施の形態に係るナビゲーションシステムを例示するブロック図である。
図1に示すように、ナビゲーションシステム1は、現在位置検出部2、タッチパネル3、ディスプレイ4、及び経路案内部5を備えている。
【0019】
(構成−現在位置検出部)
現在位置検出部2は、自車両の現在位置を検出する現在位置検出手段である。例えば、現在位置検出部2は、GPS、地磁気センサ、距離センサ、又はジャイロセンサ(いずれも図示省略)の少なくとも一つを有し、現在のナビゲーションシステムの位置(座標)及び方位等を公知の方法にて検出する。なお、本実施の形態では、現在位置検出部2はGPSであるものとして説明する。また、当該GPSにより検出した自車両の現在位置を「GPS検出位置」と称して説明する。
【0020】
(構成−タッチパネル)
タッチパネル3は、ユーザの指等で押圧されることにより、当該ユーザから各種手動入力を受け付けるものである。このタッチパネル3は、透明又は半透明状に形成され、ディスプレイ4の前面において当該ディスプレイ4の表示面と重畳するように設けられている。このタッチパネル3としては、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等による操作位置検出手段を備えた公知のタッチパネルを使用することができる。
【0021】
(構成−ディスプレイ)
ディスプレイ4は、ナビゲーションシステムによって案内された画像を表示する表示手段であり、特に、後述する地
図DB7aにて格納された地図情報に基づいて地図を表示する表示手段である。このディスプレイ4の具体的な構成は任意であり、公知の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの如きフラットパネルディスプレイを使用することができる。
【0022】
(構成−経路案内部)
経路案内部5は、経路案内を行う経路案内手段であり、制御部6及びデータ記録部7を備えている。
【0023】
(構成−経路案内部−制御部)
制御部6は、ナビゲーションシステム1を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、本実施の形態に係るナビゲーションプログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介してナビゲーションシステム1にインストールされることで、制御部6の各部を実質的に構成する。
【0024】
この制御部6は、機能概念的に、高速走行判定部6a、上り下り情報取得部6b、施設接近判定部6c、及びマッチング部6dを備える。高速走行判定部6aは、自車両が高速道路を走行しているか否かを判定する高速走行判定手段である。上り下り情報取得部6bは、自車両が走行している高速道路において、当該自車両が走行している車線の方向が上り又は下りのいずれの方向であるかを示す上り下り情報を取得する上り下り情報取得手段である。施設接近判定部6cは、自車両から所定範囲内に、高速道路の高速道路施設が位置するか否かを判定する施設接近判定手段である。マッチング部6dは、現在位置検出部2にて検出された検出位置を、地図データ上の複数の車線の中から特定した一つの対象車線にマップマッチングさせるマッチング手段である。これら制御部6の各部により行われる具体的な処理については後述する。
【0025】
(構成−経路案内部−データ記録部)
データ記録部7は、ナビゲーションシステムの動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記録装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0026】
このデータ記録部7は、地図データベース(以下、データベースを「DB」と称する)7aを備えている。
【0027】
地
図DB7aは、地図情報を格納する地図情報格納手段である。「地図情報」は、例えば道路リンクデータ(道路リンク番号、接続ノード番号、道路座標、道路種別(道路が一般道路であるか高速道路を特定するための情報を含む)、車線数、走行規制、及び各道路リンクが上り車線と下り車線のいずれに属するのかを特定するための情報等)、ノードデータ(ノード番号、座標)、地物データ(信号機、道路標識、ガードレール、建物等)、対象地物データ(交差点、一時停止線、踏切、カーブ、ETC料金所、高速出口等)、施設データ(各施設の位置、各施設の種別等)、地形データ、地図をディスプレイ4に表示するための地図表示データ等を含んで構成されている。
【0028】
また、このデータ記録部7には、後述する起動時初期化処理や施設接近判定処理において、施設の接近状態、高速道路移動距離、及び上り下り情報が設定される。ここで、「施設の接近状態」とは、自車両が高速道路の高速道路施設に接近又は進入しているか否かを特定するための状態であり、本実施の形態においては、「施設未接近状態」と「施設接近状態」のいずれかが設定される。このうち、「施設未接近状態」とは、自車両が高速道路の高速道路施設に接近又は進入していない状態であり、本実施の形態においては、自車両から所定範囲内(例えば自車両を中心とする半径50m以内)に高速道路の高速道路施設が位置していない状態である。また、「施設接近状態」とは、自車両が高速道路の高速道路施設に接近又は進入している状態であり、本実施の形態においては、自車両から所定範囲内に高速道路の高速道路施設が位置している状態(自車両が高速道路施設の内部に存在している状態も含む)である。また、「高速道路移動距離」とは、自車両が高速道路を走行しているか否かを判定するための基準になる距離であって、本実施の形態においては、自車両が高速道路を連続して移動した距離(例えば1000m)である。ここで、「高速道路施設」とは、高速道路に直結した施設であって、本実施の形態では、高速道路施設はサービスエリアやパーキングエリア(以下、必要に応じてSAPAと称する)であるものとする。また、「上り下り情報」とは、自車両が走行している車線が上り車線と下り車線のいずれの車線であるかを示す情報である。ただし、「上り車線」と「下り車線」は、東京のような特定地域を基準として決定される方向に限定されず、「上り車線」と「下り車線」のうち、いずれか一方の車線が「特定の一つの車線」である場合において、いずれか他方の車線が「当該一つの車線とは逆方向に走行するものとして法規で走行方向が規定されている他の車線」であればよい。なお、「自車両が走行している車線」とは、自車両が動いているか停止しているかに関らず、自車両が存在している高速道路の車線を指し、例えば、高速道路の上り車線において自車両が渋滞により一時的に停止している場合であっても、当該上り車線は「自車両が走行している車線」に該当するものとする。
【0029】
また、このデータ記録部7には、後述するマッチング制御処理において、走行可能リンク、マッチングリンク候補、最有力リンク距離、及び不一致回数が設定される。ここで、「走行可能リンク」とは、GPS検出位置をマッチングさせるものとして特定された車線(以下、対象車線)の候補となる道路リンクであって、GPS検出位置から所定範囲内に位置する全ての道路リンクのうち、道路種別が高速道路である全ての道路リンクである。また、「マッチングリンク候補」とは、データ記録部7に設定された走行可能リンクの中から特定された一つの走行可能リンクであって、GPS検出位置をマッチングさせる特定の対象車線を示す走行可能リンクである。また、「最有力リンク距離」とは、GPS検出位置からマッチングリンク候補までの距離である。すなわち、本実施の形態では、「車線」に関する制御を、実際には地図データに設定された「道路リンク」を用いて行うものとしており、このために、上記走行可能リンク等を設定する。例えば、上述した「対象車線」の特定は、実際には、当該対象車線の「道路リンク」を特定することにより行う。また、「不一致回数」とは、候補道路リンクの車線の方向が、上り下り情報が示す方向と異なる回数である。ここで、「候補道路リンク」とは、複数の走行可能リンクの各々を順次対象として、対象車線の道路リンクを特定するための処理(後述する
図5のマッチング制御処理におけるSD4〜SD10のループ処理)を行う際に、当該処理を実行する対象となる一つの走行可能リンクである。このような制御の詳細については後述する。
【0030】
(処理)
次に、このように構成されるナビゲーションシステム1によって実行されるマッチング処理について説明する。
図2は、マッチング処理のフローチャートである。この
図2に示すように、まず、制御部6は、ナビゲーションシステムが起動時であるか否かを判定し(SA1)、起動時である場合には(SA1、Yes)、起動時初期化処理を行い(SA2)、次に施設接近判定処理を行う(SA3)。なお、ナビゲーションシステムが起動時でないと判定した場合(SA1、No)、制御部6は、起動時初期化処理を行わずに施設接近判定処理を行う(SA3)。最後に、制御部6は、マッチング制御処理を行う(SA4)。
【0031】
なお、制御部6は、このマッチング処理を所定の周期(例えば1秒毎)で繰り返し行う。以下では、これらの起動時初期化処理、施設接近判定処理、及びマッチング制御処理について詳細に説明する。なお、以下の各処理の説明において、制御主体を特記しない処理については、ナビゲーションシステム1の制御部6にて実行されるものとし、情報の取得元や取得経路を特記しない場合については、公知のタイミング及び公知の方法にて、ナビゲーションシステム1のデータ記録部7に予め格納されており、あるいは、ナビゲーションシステム1のタッチパネル3を介してユーザ等によって入力されるものとする。また、ステップを「S」と略記する。
【0032】
(処理−起動時初期化処理)
最初に、
図2の起動時初期化処理(SA1)について説明する。
図3は、起動時初期化処理のフローチャートである。この
図3に示すように、この処理において、制御部6は、データ記録部7に対して、施設の接近状態を施設未接近状態に設定し(SB1)、高速道路移動距離を0に設定し(SB2)、上り下り情報を初期化する(SB3)。なお、「上り下り情報を初期化する」とは、後述するSC6においてデータ記録部7に記録された上り下り情報を消去し、データ記録部7に上り下り情報が記録されていない状態とすることである。
【0033】
(処理−マッチング処理−施設接近判定処理)
次に、
図2の施設接近判定処理(SA3)について説明する。
図4は、施設接近判定処理のフローチャートである。この処理においては、概略的に、自車両が高速道路を走行しているか否かの判定と、自車両が高速道路の高速道路施設に接近又は進入したか否かの判定とを行う。なお、これらの判定は任意の方法により行うことが可能であり、以下ではその一例について具体的に説明する。
【0034】
まず、施設接近判定部6cは、施設接近状態であるか否かを判定する(SC1)。この判定は、例えば、データ記録部7における施設の接近状態が施設接近状態に設定されたか否かを判定することによって行う。ただし、上述した
図3のSB1において、施設の接近状態を施設未接近状態に設定していることから、最初に施設接近判定処理を行う際には、施設接近状態ではない(すなわち、施設未接近状態である)と判定され、2回目以降に施設接近判定処理を行う際には、後述するSC7における設定結果に応じて、施設接近状態又は施設未接近状態と判定される。
【0035】
そして、施設接近状態ではない(すなわち、施設未接近状態である)と判定された場合(SC1、No)、高速走行判定部6aは、自車両が高速道路を走行しているか否かを判定する(SC2)。この判定を行う方法は任意であり、例えば、現在位置検出部2によって検出されたGPS検出位置と、地
図DB7aに格納されている道路種別とに基づいて、自車両が走行している道路(より具体的には、自車両が走行している道路リンク)が一般道路であるか高速道路であるかを判定する。
【0036】
そして、自車両が高速道路を走行していると判定された場合(SC2、Yes)、制御部6は、自車両が高速道路を連続して移動した距離(以下、高速道路移動距離)を更新する(SC4)。具体的には、自車両が高速道路を連続して移動した距離をデータ記録部7等に随時記録する。この距離は、例えば、自車両が高速道路を走行していると判定された後に、所定時間間隔で、自車両の走行速度をGPS速度計(図示省略)等によって計測し、計測された走行速度と前記所定時間間隔とに基づいて自車両の高速道路移動距離を算出して随時記録する。一方、自車両が高速道路を走行していないと判定された場合(SC2、No)、制御部6は、自車両が高速道路を連続して移動していないため、高速道路移動距離を0に設定し(SC3)、施設接近判定処理を終了する。
【0037】
そしてSC4において高速道路移動距離が更新された場合、高速走行判定部6aは、データ記録部7等に記録された高速道路移動距離が所定の閾値(例えば1000m)を超えたか否かを判定する(SC5)。そして、高速道路移動距離が所定の閾値を超えていないと判定された場合(SC5、No)、制御部6は、自車両が高速道路を走行していることを確定できないものとし、施設接近判定処理を終了する。
【0038】
一方、高速道路移動距離が所定の閾値を超えたと判定された場合(SC5、Yes)、上り下り情報取得部6bは、上り下り情報を取得する(SC6)。この上り下り情報を取得する方法は任意の方法を採用することが可能であり、例えば、現在位置検出部2によって検出されたGPS検出位置と、地
図DB7aに格納されている道路種別とに基づいて、自車両が走行している道路(より具体的には、自車両が走行している道路リンク)が上り車線と下り車線のいずれであるのかを示す情報を取得する。あるいは、現在位置検出部2によって検出されたGPS検出位置をセンター装置(図示省略)に送信し、このセンター装置において上り下り情報を特定して自車両に送信するようにしてもよい。このように、自車両が高速道路を走行していると判定して直ちに上り下り情報を取得するのではなく、自車両が一定距離以上(高速道路移動距離が閾値に達するまで)高速道路を移動した後に上り下り情報を取得することによって、自車両が確実に高速道路を走行していることを判定した上で上り下り情報の取得を行うことが可能となる。例えば、GPSの位置検出の誤作動等によって、自車両が未だに高速道路を走行していないにも関らず一瞬だけ高速道路を走行していると判定した場合に、不要な上り下り情報を取得することを回避することが可能となる。
【0039】
次に、施設接近判定部6cは、GPS検出位置から所定範囲内に高速道路施設が有るかどうかを判定する(SC7)。具体的には、現在位置検出部2によって検出されたGPS検出位置と、地
図DB7aに格納されている道路種別とに基づいて、GPS検出位置から所定範囲内に高速道路施設のリンクが存在するか否かを判定する。そして、施設接近判定部6cは、所定範囲内に高速道路施設が有ると判定した場合(SC7、Yes)、データ記録部7における施設の接近状態を施設接近状態に設定し(SC8)、施設接近判定処理を終了し、所定範囲内に高速道路施設が無いと判定した場合には(SC7、No)、施設の接近状態を施設接近状態に設定することなく、施設接近判定処理を終了する。
【0040】
また、SC1において、自車両が施設接近状態に設定されていると判定した場合(SC1、Yes)、施設接近判定部6cは、GPS検出位置から所定範囲内に高速道路施設が有るかどうかを判定する(SC9)。この判定については、例えば上述したSC7と同様に行うことができる。そして、所定範囲内に高速道路施設が有ると判定した場合(SC9、Yes)、施設接近判定部6cは、自車両が継続して高速道路施設に接近しているものと判定し、データ記録部7における施設接近状態の設定を維持したまま、施設接近判定処理を終了する。また、施設接近判定部6cは、所定範囲内に高速道路施設が無いと判定した場合(SC9、No)、高速道路施設に接近していた自車両が高速道路施設の遠方に移動したものと判定し、データ記録部7における施設の接近状態を施設未接近状態に設定し(SC10)、施設接近判定処理を終了する。
【0041】
(処理−マッチング処理−マッチング制御処理)
続いて、
図2のマッチング制御処理(SA4)について説明する。このマッチング制御処理は、自車両の現在位置を検出する現在位置検出部2から出力されたGPS検出位置をマッチングさせる対象車線を特定する処理である。
【0042】
図5は、マッチング制御処理のフローチャートである。この
図5に示すように、まず、マッチング部6dは、最有力リンク距離を初期化する(SD1)。具体的には、後述するSD8においてデータ記録部7に最有力リンク距離が設定されている場合には、この最有力リンク距離を消去する。
【0043】
次に、マッチング部6dは、走行可能リンクを取得する(SD2)。具体的には、マッチング部6dは、現在位置検出部2によって検出されたGPS検出位置と、地
図DB7aに格納されている道路リンク及び道路種別とに基づいて、車両のGPS検出位置から所定範囲内(例えば200m)に位置する道路リンクであって、道路種別が高速道路である道路リンクを全て特定し、当該特定した全ての道路リンクを走行可能リンクとして取得する。
図6は、車両のGPS検出位置から所定範囲内に位置する道路リンクを模式的に表した図である。この
図6に示すように、車両のGPS検出位置から所定範囲内に一般道路の道路リンク、高速道路の上り車線(以下、上り高速道路)の道路リンク、及び高速道路の下り車線(以下、下り高速道路)の道路リンクが存在する場合には、道路種別が高速道路である道路リンクとして、上り高速道路の道路リンク及び下り高速道路の道路リンクを走行可能リンクとして取得する。
【0044】
次に、
図5において、施設接近判定部6cは、自車両が施設接近状態に設定されているか否かの判定を行う(SD3)。この判定は、例えば、
図4のSC1と同様の方法で行うことが可能である。そして、
図5において、施設接近状態に設定されていると判定した場合(SD3、Yes)、SD2において取得した複数の走行可能リンクの全てについて、順番に以下のSD4〜SD9が行われる。ここで、
図7及び
図8は、候補道路リンクの設定状況を模式的に表した図である。これら
図7及び
図8は、上り高速道路に連結された高速道路施設(図示上のSAPA)に進入した状態を示しており、SD2で取得された複数の走行可能リンクのうち、
図7は下り高速道路が候補道路リンクとして設定された状態を示し、
図8は上り高速道路が候補道路リンクとして設定された状態を示す。なお、どの走行可能リンクから順番に候補道路リンクとするかは任意に決定して構わないが、本実施の形態では、
図7のように下り高速道路を候補道路リンクとした後に、
図8のように上り高速道路を候補道路リンクとするものとして説明する。また、ここでは、自車両が、上り高速道路を高速道路移動距離の閾値以上の距離だけ連続して走行した後に、高速道路施設に進入した状態を示していることから、自車両が走行している車線の上り下り情報としては、「上り」が記録されているものとする。また、上り高速道路や下り高速道路は、実際には片側数車線の道路として形成されており、この場合には車線の数に対応する数の道路リンクが地図データに記録されていることが考えられるが、本実施形態では特記しない限り、説明の簡略化のために、それぞれの高速道路はそれぞれ一つの道路リンクのみ有するものとして説明する。
【0045】
まず、マッチング部6dは、候補道路リンクの車線の方向が、自車両が走行している車線の方向と一致するか否かの判定を行う(SD4)。具体的には、
図7及び
図8に示すように、地
図DB7aに記録されている候補道路リンクの車線の方向(上り又は下り)と、データ記録部7等に記録されている上り下り情報が示す車線の方向とを比較する。そして、これらの車線の方向が同一でない場合には、候補道路リンクの車線の方向が自車両が走行している車線の方向と一致しないと判定し(SD4、No)、これらの車線の方向が同一である場合には、候補道路リンクの車線の方向が自車両が走行している車線の方向と一致すると判定する(SD4、Yes)。
【0046】
例えば、
図7に示すように下り高速道路を候補道路リンクとした場合に、当該下り高速道路の車線の方向と自車両が走行している車線の方向とを比較すると、両者は不一致である。したがって、制御部6は、当該下り高速道路の車線の方向は自車両が走行している車線の方向と一致しないと判定する(SD4、No)。一方、
図8に示すように上り高速道路を候補道路リンクとした場合に、当該上り高速道路の車線の方向と自車両が走行する車線の方向とを比較すると、両者は一致する。したがって、制御部6は、当該上り高速道路の車線の方向は自車両が走行している車線の方向と一致すると判定する(SD4、Yes)。
【0047】
ここで、候補道路リンクの車線の方向が、自車両が走行している車線の方向と一致すると判定した場合(SD4、Yes)、マッチング部6dは、候補道路リンクにマッチングを行う可能性があるものと判定し、GPS検出位置から候補道路リンクまでの距離を算出する(SD6)。例えば、GPS検出位置から候補道路リンクまでの垂線のうち最も短い垂線の長さを、地
図DB7aに記録されている地図データを参照して求めることにより、当該距離を算出することが可能である。
【0048】
次に、マッチング部6dは、GPS検出位置からこのようにして算出した候補道路リンクまでの距離が、データ記録部7に記録されている最有力リンク距離よりも小さいか否かを判定する(SD7)。そして、最有力リンク距離よりも小さいと判定した場合(SD7、Yes)、制御部6は、GPS検出位置から当該候補道路リンクまでの距離を最有力リンク距離として更新する(SD8)。具体的には、既にデータ記録部7に記録されている最有力リンク距離を削除し、GPS検出位置から当該候補道路リンクまでの距離を最有力リンク距離としてデータ記録部7に記録する。なお、データ記録部7に最有力リンク距離が未だ記録されていない場合、マッチング部6dは、GPS検出位置から当該候補道路リンクまでの距離を最有力リンク距離としてデータ記録部7に記録する。
【0049】
このように最有力リンク距離を更新した場合(SD8)、マッチング部6dは、当該候補道路リンクをマッチングリンク候補として設定する(SD9)。
【0050】
そして、上述したSD4からSD9の処理を、SD2において取得した複数の走行可能リンクの全てに対して行う。このことによって、最有力リンク距離及びマッチングリンク候補が適宜更新される。そして、全ての走行可能リンクに対して上述した処理を行うことによって、最終的にデータ記録部7に記録されているマッチングリンク候補が、GPS検出位置をマッチングさせる対象車線の道路リンクであるとして特定される。そして、マッチング部6dは、当該マッチングリンク候補にマッチングする(SD10)。
図9は、マッチングの結果をディスプレイ4に表示した例を示す図である。この
図9に示すように、自車両が走行している車線である上り高速道路の道路リンクにGPS検出位置がマッチングされた結果、この上り高速道路に、自車両の現在位置を表す位置アイコンが表示される。これにてマッチング制御処理を終了する。
【0051】
また、候補道路リンクの車線の方向が、自車両が走行している車線の方向と一致しないと判定した場合には(SD4、No)、不一致回数が所定回数(閾値。例えば2回)以上となったか否かを判定する(SD5)。例えば、SD2において取得した複数の走行可能リンクのうち、一つ目の走行可能リンクの車線の方向が、上り下り情報が示す方向と一致しない場合には不一致回数を「1回」とカウントしてデータ記録部7に記録する。次に他の走行可能リンクについてSD4からSD9のループを行い、この二つ目の走行可能リンクの車線の方向が、上り下り情報が示す方向と一致しない場合には不一致回数を一つ増分させて「2回」とカウントしてデータ記録部7に記録する。以降同様に不一致回数をカウントしてデータ記録部7に記録していき、この不一致回数の値が所定回数以上となるか否かを判定する。
【0052】
このような判定を行うことにより、走行可能リンクとして自車両が走行している車線の方向と一致する方向の道路リンクを検出できなかった場合に対処することが可能である。すなわち、走行可能リンクは、GPS検出位置の所定範囲に含まれる道路リンクに基づいて取得するが、このGPS検出位置の所定範囲に、自車両が走行している車線が含まれない可能性がある。例えば、高速道路施設が上り高速道路と下り高速道路で共用されるような場合において、高速道路施設が下り高速道路を挟んで上り高速道路の反対側に位置しており、上り高速道路から高速道路施設に行くためには、下り高速道路に懸架された立体交差を通って行く必要がある場合を想定する。このような場合には、自車両が走行している車線である上り高速道路よりも、反対車線である下り高速道路の方が自車両のGPS検出位置に近い可能性が高い。そのため、GPS検出位置の所定範囲に、下り高速道路の道路リンクが検出されるものの、上り高速道路の道路リンクが検出されない可能性がある。このような場合には、上り下り情報に基づいてマッチングの対象車線を特定すると、下り高速道路は自車両が走行している道路と車線の方向と一致しないためマッチングリンク候補に設定され得ず、また、上り高速道路は走行可能リンクとして取得されていないためマッチングリンク候補に設定され得ない。したがって、GPS検出位置をいずれの車線にもマッチングする事ができない事態が生じてしまう。このような事態を回避するために、本実施の形態においては、不一致回数が閾値を超えた場合には、上り下り情報に基づく対象車線の特定を行わないこととする。
【0053】
すなわち、不一致回数が閾値を超えた場合には、以降の候補道路リンクに対してSD4からSD9のループを行う際に、上り下り情報が不一致である候補道路リンクに対してもSD6からSD9が行われる。そして、上り下り情報が不一致である候補道路リンクであっても、GPS検出位置と候補道路リンクとの距離が最有力リンク距離より小さいのであれば、GPS検出位置から当該候補道路リンクまでの距離を最有力リンク距離として更新し(SD8)、当該候補道路リンクをマッチングリンク候補として設定する(SD9)。
【0054】
また、SD3において施設接近判定部6cが、自車両が施設未接近状態に設定されていると判定した場合(SD3、No)、この場合には、GPS検出位置に誤差が発生する可能性が低いため、上り下り情報に基づいて対象車線にマッチングを行う必要はなく、通常通りGPSの検出結果に基づくマッチングを行えば足りる。したがって、SD4からSD9のステップではなく、SD11からSD14のステップを行う。なお、これらのSD11からSD14のステップについては、公知のマッチング方法と同様に実行することが可能であり、また、上述したSD6からSD9のステップと同様に実行することが可能であるため、その詳細な説明を省略する。そして、マッチング部6dは、GPS検出位置を、マッチングリンク候補に設定された候補道路リンクに対してマッチングする(SD10)
【0055】
(本実施の形態の効果)
このように本実施の形態によれば、GPSにより検出した車両の位置や方位に基づくことなく、車両が走行している車線の方向に基づいてGPSから出力されたGPS検出位置を一つの対象車線にマッチングさせることによって、GPSの検出精度が低下する可能性が高く誤マッチングが発生しやすい高速道路施設の所定範囲内に車両が位置する場合においても、車両が走行してきた方向の車線に適切にマッチングさせることが可能となる。
【0056】
また、車両の所定範囲内に高速道路施設が位置しなくなった場合には、上り下り情報に基づく対象車線の特定を行わないため、誤マッチングが発生しにくい位置に車両がある場合にまで上り下り情報に基づく車線の特定を行うことを防止することが可能であり、マップマッチング処理における処理負荷の軽減を図ることが可能となる。
【0057】
また、特定した候補となる車線の方向が上り下り情報が示す方向と異なる回数が所定回数以上となった場合、上り下り情報に基づく対象車線の特定を行わないため、対象車線の候補とした車線に車両が走行している車線が含まれないことに起因して、いずれの車線に対してもマップマッチングさせることができなくなるといった事態を、防止することが可能となる。例えば、上り車線を走行している車両が、上り車線と下り車線とで共用されている高速道路施設に進入した場合において、対象車線の候補とした車線に上り車線が含まれないことに起因して、いずれの車線に対してもマップマッチングさせることができなくなるといった事態を、防止することが可能となる。
【0058】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0059】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。例えば、マッチングを完全に正確に行うことができない場合であっても、従来より僅かにマッチングの正確性を向上できている場合や、従来と同程度のマッチングの正確性を従来とは異なる技術により達成できている場合には、本願発明の課題が解決されている。
【0060】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散や統合して構成できる。例えば、ナビゲーションシステムの各構成要素を、分散配置した上でネットワークを介して相互に接続してもよい。
【0061】
(高速道路移動距離について)
本実施の形態における施設接近判定処理においては、高速道路移動距離が閾値を超えたと判定した場合にのみ上り下り情報を取得するものとして説明したが、例えば、現在位置検出部2によって検出されたGPS検出位置と、地
図DB7aに格納されている道路種別とに基づいて、自車両が高速道路を走行していることを確定できるような場合には、高速道路移動距離に基づく判定処理を省略しても構わない。
【0062】
(上り下り情報に基づく対象車線の特定の解除について)
本実施の形態における施設接近判定処理においては、自車両から所定範囲内に高速道路施設が位置すると判定した後に、自車両から所定範囲内に高速道路施設が位置しないと判定した場合、上り下り情報に基づく対象車線の特定を行わないこととしているが、自車両から所定範囲内に高速道路施設が位置しないと判定した場合においても、上り下り情報に基づく対象車線の特定を継続して行ってもよい。
【0063】
(不一致回数が閾値を超えた場合について)
本実施の形態におけるマッチング制御処理において、上り下り情報の不一致回数が閾値を超えた場合には(SD5、Yes)、上り下り情報が不一致である走行可能リンクについて検出位置と走行可能リンクの距離を算出し、マッチングリンク候補に設定する可能性を残すものとしたが、このような構成に限られない。例えば、上り下り情報の不一致回数が閾値を超えた場合には、GPS検出位置を自車両の位置として地図上に表示してもよい。あるいは、不一致回数が閾値を超えた場合には、走行可能リンクとして上り下り情報が一致する道路リンクが検出されるまで、走行可能リンクを取得するための基準になる所定範囲を拡大しても良い。