【実施例1】
【0023】
図1〜7は、本発明に係る自動車のトランク構造の実施例1を示している。
本実施に係る車両Vは、
図1に示すように、車体後部の後方への突出量が短く、開閉可能に構成されたルーフ部材がシート後方に格納されるルーフ格納部1をトランクルームTの前方に有するオープンカータイプの車両である。そのため、特に、トランクルームTは前後方向に狭く、またトランクの高さが低く設けられているため、トランクルームTは高さ方向にも狭く設けられている。
【0024】
車体の後方底部を形成するリヤフロアパネル6には、
図2に示すように、車室内空間とトランクルームTとを隔壁するリヤバルクヘッド
2が立設固定されており、該リヤバルクヘッド2の上部と接合固定して、ルーフ格納部1の後方において車幅方向に延びる閉断面を形成するリヤデッキメンバ3が配設されている。
【0025】
そして、この閉断面の直後には、前端部に備えられたヒンジ部材(不図示)を支点にして、トランクルームTの上方に設けられた開口部を開閉自在に覆うトランクリッド30が設けられている。
【0026】
トランクリッド30は、
図2、
図4に示すように、外観意匠面を形成して、トランクルームTの開口部の上方を覆う上面部とその後端で下方に折れて垂下する後面部とを有するアウタパネル31と、パネル中央部が上方に凹設されて、アウタパネル31の周縁端部とその所定距離内側部位で合致する形状を有し、アウタパネル31とともに、トランクルームTの開口部の全周縁を囲う略閉断面を形成するインナパネル32とが設けられている。
【0027】
インナパネル32には、トランクリッド30を閉止させた状態において、トランクルームTの車体側の開口部周縁に嵌装されるシール部材4に当接してトランクルームTを水密に保つ、シール当たり面32aが略閉断面の下部に設けられている。
【0028】
なお、インナパネル32の後部には、略閉断面の前方と後部とでインナパネル32に接合固定されて、アウタパネル31に追従して略閉断面内を車幅方向に延びるリッド補強部材33が設けられている。
【0029】
また、インナパネル32の後部には、シール当たり面32aの前方において、ラッチユニット5に係合させてトランクリッド30を車体に閉止させた状態で保持するストライカ34が、下方に向けて立設されている。さらに、インナパネル32には、ストライカ34の反対側の面にストライカ取付け補強部材35が設けられている。
【0030】
ラッチユニット5(詳細構造は不図示)は、ハーネスの一端が接続されて電気的に駆動し、ボタン等の操作によってモータが回転駆動してフックを回動させることでストライカ34との
係合状態の解除を行う。
【0031】
なお、トランクリッド30の各部材はアルミ
ニウム合金のプレス成型によって形成されており、インナパネル32のように面中央部を凹設させる際の曲げ角の加工限界は44.5°である。そのため、シール当たり面32aからアウタパネル31に向かってインナパネル32を大きく傾斜させることは困難であり、パネル中央部はシール当たり面32aから所定距離かけて上方に凹設されている。
【0032】
ところで、上記リヤフロアパネル6は、
図2、
図5、
図6に示すように、トランクルームTの底部を形成しており、リヤフロアパネル6の両側部の下面には、車両前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム8
(図6参照)が接合固定され、これら左右のリヤサイドフレーム8と、リヤフロアパネル6との間には、車両の前後方向に延びる閉断面を形成している。
【0033】
なお、上記一対のリヤサイドフレーム8の後端部には、後述するリヤエンドパネル16を挟んでリヤバンパレイン10
(図5参照)が架設される取付けプレート9が配設されている。このリヤバンパレイン10は、左右のリヤサイドフレーム8の後方にそれぞれ位置する衝撃吸収用のクラッシュカン11と、クラッシュカン11の各後端部に接続されて車幅方向に延びており、平面視で略円弧状に車両後方に膨出しているリヤバンパビーム12とで構成される。また、リヤバンパレイン10の上部後方には衝撃吸収用の発泡部材13が設けられ、リヤバンパレイン10と発泡部材13の後方にはリヤバンパ14が設けられている。
【0034】
リヤフロアパネル6のトランクルームT前部の下面には、左右のリヤサイドフレーム8の間を車幅方向に亘って、リヤクロスメンバ15が接合固定されている。リヤクロスメンバ15と、リヤフロアパネル6との間にも、車幅方向に延びる閉断面を形成している。
【0035】
また、リヤフロアパネル6には、リヤクロスメンバ15の後方からリヤエンドパネル16の下部16bの前面に亘って、リヤクロスメンバ15の左右間に、車幅方向が長手の略直方体状の掘り込み凹部7が形成されている。なお、掘り込み凹部7の底面部7aは、トランクルームTの一般底面よりも下方に段下げ形成されて、取付けプレート9の下端より上方、
かつ
、リヤサイドフレーム8の下端部より下方に位置しており、掘り込み凹部7の前壁部7bは上方に前傾している。
【0036】
リヤフロアパネル6の後端が接合固定されて車体の後部壁面を形成するリヤエンドパネル16は、トランクリッド30に設けられたストライカ34と係合するラッチユニット5を前面上部に具備しており、車幅方向および上下方向に延びて形成される。
【0037】
このリヤエンドパネル16は、上記取付けプレート9を介して左右のリヤサイドフレーム8の後端部に接続されており、前記掘り込み凹部7の後端部が合致するリヤエンドパネル16の下部16bは、掘り込み凹部7の後方において、リヤサイドフレーム8の後端部よりも後方に凹設する後方凹部を形成している。
【0038】
なお、このリヤエンドパネル16は、
図7に示すように、リヤサイドフレーム8の後端部およびリヤフロアパネル6の後端部が接続されるリヤエンドパネル16本体と、ラッチユニット5が締結固定されるラッチ取付け部材17と、車幅方向に延びて後方が開放されたコ字状断面を有しており、リヤエンドパネル16本体の上部と接合して閉断面を形成するリヤエンドメンバ18とから構成される。
【0039】
トランクルームTは、
図2に示すようにトリム部材によって装飾されており、リヤクロスメンバ15よりも車両前方に前端立設部が設けられてトランクルームT前方を仕切る前壁トリム19と、リヤサイドフレーム8より車幅方向外側に側壁部がそれぞれ設けられてトランクルームT両側方を仕切る側壁トリム20
(図6参照)と、トランクルームT底部に合致して車体部材を隠蔽するマット部材21と、トランクルームT後方を仕切る後壁トリム22とが配設されている。
【0040】
リヤエンドパネル16の前方を覆ってトランクルームTの後端面を形成する後壁トリム22には、リヤエンドパネル16の下部16bと合致する後壁下面部23と、車幅方向中央部において、下方の後壁下面部23を含む周囲部分よりもトランクルームT前方に膨出してラッチユニット5を後方に収容するラッチ収容部24とが設けられて、後壁トリム22の前端部を構成している。
【0041】
また、ラッチ収容部24には、
図2、
図3に示すように、後壁下面部23に向かって下方に後傾する下面部
24aが設けられており、トランクルームTは、掘り込み凹部7の底面部7aの幅および前後長と、該底面部7aからラッチ収容部24の下面部24aの下端までの高さとに合致した第1直方体状収容空間
S1と、第1直方体状収容空間
S1と同一形状であって、ラッチ収容部24に合致して第1直方体状収容空間
S1よりも前方に積み重ねられる第2直方体状収容空間
S2が設けられている。
【0042】
下面部
24aは、掘り込み凹部7の前壁部7bと互いに対向する傾斜面をなしており、また、該下面部
24aの下端は、前壁部7bの上端よりも上方に設けられている。
【0043】
また、より詳細には、ラッチ収容部24の下面部24aは、掘り込み凹部7の前壁部7bの下端と合致する第1直方体状収容空間
S1の前下方の角部を中心とする、該第1直方体状収容空間
S1の回動軌跡よりも外側に位置するように配設されている。
【0044】
また、ラッチ収容部24は、第1直方体状収容空間
S1の前面を掘り込み凹部7の前壁部7bと平行に傾けた状態における該第1直方体状収容空間
S1の前壁部7bに沿ったスライド軌跡よりも後方側に位置しており、
かつ
、前壁部7bの上端に第1直方体収容空間
S1の前面略中央高さ部を合致させて、前面略中央高さ部を中心とする、該第1直方体状収容空間
S1の回動軌跡よりも外側に位置するように配設されている。
【実施例2】
【0045】
次に、
図8,図9,図10を参照して、実施例2のトランク構造について図に基づいて説明する。
【0046】
既に説明した実施例1と比較すると、トランクリッド30の形状を変更することで、トランクルームTの後上方の角部を更に拡大させた形態である。なお、以下の説明にあたって、実施例1と同様の主要な構成要素には同じ参照符号を付けて図示し、それらについての説明は省略し、異なる構成要素についてのみ説明する
【0047】
トランクリッド30のインナパネル32は、
図8、9に示すように、トランクルームTの後部側の略閉断面部において、シール当たり面32aからアウタパネル31に向かう前傾部位に、略閉断面の内側へトランクルームTを拡大する孔部32bが車幅方向に延在して開穿されている。
【0048】
なお、孔部32bの両側縁部32dはそれぞれ掘り込み凹部7の底面部7aよりも車幅方向で外側に設けられており、孔部32bの後縁部32cはその車幅方向に亘って、車両前後方向で後壁トリム22の前端部より後方に位置するように設けられている。なお、孔部の両側縁部32dはシール当たり面32aから所定距離かけて上方に折り曲げられている。
【0049】
インナパネル32の後部に設けられるストライカ取付け補強部材35は、上記孔部32bと合致するように車幅方向に延設されており、ストライカ34が取り付けられる取付け面部35aと、当該取付け面部35aの前端から、インナパネル32の曲げ角の加工限界は44.5°を超えて上方に前傾する立設部35aと、立設面の上端部から車両前方向に延設されて孔部32bの前縁部に接合固定される上面部35cとを有し、アウタパネル31とインナパネル32とともに、トランクルームTの開口部の全周縁を囲う略閉断面を形成する。
【0050】
次に、本実施例の作用について説明する。
【0051】
まず、リヤクロスメンバ15の後方からリヤエンドパネル16の下部16bの前面に亘って、リヤフロアパネル6に掘り込み凹部7を形成して、リヤエンドトリムには、リヤエンドパネル16下部と合致する後壁下面部23と、後壁下面部23からトランクルームT前方に膨出してラッチユニット5を後方に収容するラッチ収容部24とを形成することで、ラッチユニット5の下方空間を有効に活用して、掘り込み凹部7に大きな荷物を収容することができる。
【0052】
このため、特に、スポーツカーのように車両後部の突出量が短く、トランクルームTの前後長が短い車両においても、掘り込み凹部7に前後長の長い収容空間を形成できる。
【0053】
そして、ラッチ収容部24の下面部24aと掘り込み凹部7の前壁部7bとを互いに対向する傾斜面にして、下面部の下端を前壁部7bの上端よりも上方に設ける
ことで、前壁部7bを支点とする掘り込み凹部7に収容した荷物の回動軌跡と、ラッチ収容部24の下面部24
aとが干渉することがなく、トランクルームT上方の開口部から荷物を出し入れすることができる。
【0054】
このため、掘り込み凹部7に最大限収容させた荷物を容易に出し入れすることができ、また作業者は掘り込み凹部7に収容した荷物の自身に近い位置を持って回動させることができ、腕に掛かる重量負担を軽減でき、容易に荷物を出し入れできる。
【0055】
リヤサイドフレーム8の左右間に掘り込み凹部7が略直方体状に形成され、掘り込み凹部7の後端部、およびリヤエンドトリムの後壁下面部23の下部が合致するリヤエンドパネル16の下部16bが、掘り込み凹部7の後方において、リヤサイドフレーム8の後端部よりも後方に凹設されることで、掘り込み凹部7を前後方向に長く形成することができ、その結果、掘り込み凹部7に載置可能な収容空間の前後長を更に拡大させて、より大きな荷物を掘り込み凹部7に収容できる。
【0056】
掘り込み凹部7の底面部7aをリヤサイドフレーム8の下端部より下方に位置するように設ける
ことで、ラッチユニット5によって高さが制限される掘り込み凹部7に載置可能な収容空間を高さ方向で拡大させることができる。
【0057】
このため、特に、スポーツカーのように車高が低い車においても、トランクルームTの高さが低い車両においても、掘り込み凹部7に高さ方向の長い収容空間を形成できる。
【0058】
そして、掘り込み凹部7の底面部7aを取付けプレート9の下端よりも上方に位置するように設ける
ことで、上記の掘り込み凹部7の収容空間を高さ方向で拡大させつつも、掘り込み凹部7の底部はリヤエンドパネル16を介して掘り込み凹部7の側方に位置する取付けプレート9にも支持されて、下方に拡大した掘り込み凹部7の剛性を確保できる。
【0059】
前記トランクルームTには、前記掘り込み凹部7の底面部7aの幅および前後長と、前記底面部7aから前記ラッチ収容部24の下端までの高さとに合致した第1直方体状収容空間
S1と、前記第1直方体状収容空間
S1と同一形状であって、前記ラッチ収容部24に合致して前記第1直方体状収容空間
S1よりも前方に積み重ねられる第2直方体状空間
S2を形成することで、一般に収容空間が制限されやすい掘り込み凹部7の最大収容空間を拡大させ、
かつ
、同様の大きさの収容空間を更に確保させて、複数個の大きな荷物を収容することができる。
【0060】
このため、特に、スポーツカーのようにトランクルームTがコンパクトな車両においても、複数の乗員の大きな荷物を収容することができる。
【0061】
更に、実施例2記載の構成を適用すれば、上述した効果に加え、トランクリッド30の後部側の略閉断面部において、インナパネル32のシール当たり面32aからアウタパネル31に向かう前傾部位に、略閉断面の内側へトランクルームT容積を拡大する孔部32bを設けることで、トランクリッド30の剛性を担保する略閉断面内までを、当該孔部32bを通じて拡大したトランクルームTとして利用することができる。
【0062】
このとき、荷物としてのスーツケースの一辺部が孔部32bに一致して略閉断面内に入っている場合に、インナパネル32の孔部32bの後縁部32cより前に後壁トリム22の前端部を位置させたために、例えば
、自動車の加速に伴ってスーツケースが後退しても
、当該スーツケースの側面部が後壁トリム22前端部に当たってそれ以上は後退せず、スーツケース一辺部が孔部32bの後縁部32cに当たってこれを変形させてしまうことを防止できる。
【0063】
なお、上述のトランクリッド30は、スチールに比して軽量であるが、機械的強度が劣っており、プレス成型時の曲げ角が比較的制限されやすいアルミニウム合金でインナパネル32
およびアウタパネル31を形成するときに好適である。
【0064】
また、
予め、所定規格の寸法のスーツケースを
、その一辺部をインナパネル32孔部
の32bに合致させて収容するよう、トランクルームTの深さを設計しておけば、オーナーはスーツケースをトリム前端部に当接させることでそのトランクルームT容量を最大限利用できる。
【0065】
また、上述した実施形態では、トランクルームTのコンパクトなオープンカーに本発明を適用した場合について説明したが、必ずしも
、これに限定されるものではなく、他の車種に本発明を適用してもよい。また、上述した実施形態では、トランクリッド30の材料としてアルミニウム合金を適用した場合について説明したが、必ずしも
、これに限定されるものではなく、他の材料のトランクリッド30を用いて本発明を適用してもよい。