特許第5971172号(P5971172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971172
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】蛍光光源装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20160804BHJP
   F21V 29/70 20150101ALI20160804BHJP
   F21V 9/16 20060101ALI20160804BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20160804BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20160804BHJP
【FI】
   F21S2/00 311
   F21S2/00 373
   F21V29/70
   F21V9/16 100
   F21Y115:30
   F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-71183(P2013-71183)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-194895(P2014-194895A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 正樹
(72)【発明者】
【氏名】北村 政治
(72)【発明者】
【氏名】蕪木 清幸
【審査官】 柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−104267(JP,A)
【文献】 特開2013−30720(JP,A)
【文献】 特開平5−47312(JP,A)
【文献】 特開2007−200782(JP,A)
【文献】 特開2012−98438(JP,A)
【文献】 特開2009−218274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光により励起される蛍光体よりなる蛍光体プレートを備えてなる蛍光光源装置において、
基板表面に接合用金属層を介して前記蛍光体プレートが接合されてなり、
前記接合用金属層は、前記蛍光体プレートに覆われていない非被覆部分を有し、
シリコーン樹脂中に反射性粒子が分散されてなる反射層が、前記接合用金属層の非被覆部分上に、前記蛍光体プレートの周側面を覆うように形成され、
前記反射層は、当該反射層を形成する材料の前記接合用金属層を形成する材料に対する親和性が、前記基板表面を形成する材料に対する親和性より高いものであることを特徴とする蛍光光源装置。
【請求項2】
前記反射層の層厚が、100μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光光源装置。
【請求項3】
前記基板は、凹部が形成されてなるものであり、
前記凹部内に前記蛍光体プレートが配置され、
前記凹部の内周面と前記蛍光体プレートの周側面との間に、反射層を形成する材料が充填された状態によって反射層が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光光源装置に関し、更に詳しくは、例えば、単結晶または多結晶の蛍光体をレーザ光等で励起し、蛍光を外部に放射する蛍光光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクター装置に用いられる緑色光源として、レーザ光を蛍光体に照射し、緑色光を放射する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、車両用の光源として、レーザ光を蛍光体に照射し、所望の蛍光を放射する技術が知られている。
例えば特許文献2には、レーザ光により励起されて発光する蛍光体よりなる蛍光体部材と、当該蛍光体部材から発生する熱を排熱するヒートシンクと、当該ヒートシンクに熱を伝える基板と、蛍光体部材と基板との間にこれらの熱膨張係数差を緩和し、蛍光体からの蛍光を拡散反射する硫酸バリウム層とを備えた蛍光光源装置が記載されている。
【0004】
このような蛍光光源装置においては、蛍光体から放射される蛍光は全方向に拡散して放射されるため、蛍光体の側面方向から放射される蛍光については、効率よく利用することができていないという問題がある。
また、硫酸バリウムが熱伝導性の低いものであることから、拡散反射部材として硫酸バリウムを用いると、効率的に排熱することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−13316号公報
【特許文献2】特開2011−198560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、高い発光効率が得られ、かつ、排熱性の高い蛍光光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蛍光光源装置は、励起光により励起される蛍光体よりなる蛍光体プレートを備えてなる蛍光光源装置において、
基板表面に接合用金属層を介して前記蛍光体プレートが接合されてなり、
前記接合用金属層は、前記蛍光体プレートに覆われていない非被覆部分を有し、
シリコーン樹脂中に反射性粒子が分散されてなる反射層が、前記接合用金属層の非被覆部分上に、前記蛍光体プレートの周側面を覆うように形成され、
前記反射層は、当該反射層を形成する材料の前記接合用金属層を形成する材料に対する親和性が、前記基板表面を形成する材料に対する親和性より高いものであることを特徴とする。
【0008】
本発明の蛍光光源装置においては、前記反射層の層厚が、100μm以上であることが好ましい。
【0009】
本発明の蛍光光源装置においては、前記基板は、凹部が形成されてなるものであり、
前記凹部内に前記蛍光体プレートが配置され、
前記凹部の内周面と前記蛍光体プレートの周側面との間に、反射層を形成する材料が充填された状態によって反射層が形成されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蛍光光源装置によれば、蛍光体プレートの周側面を覆うように反射層が形成されていることにより、蛍光体プレート内で発生した蛍光を高効率で取り出すことができ、その結果、高い発光効率が得られる。また、基板表面に接合用金属層を介して蛍光体プレートが接合されていることにより、高い排熱性が得られる。
さらに、反射層を形成する材料としてシリコーン樹脂を用いる場合に、当該シリコーン樹脂が一般に基板表面を形成する材料と親和性が低いため、反射層の剥離が懸念されるが、本発明の蛍光光源装置においては、反射層が接合用金属層の非被覆部分上に形成されると共に、反射層を形成する材料の接合用金属層を形成する材料に対する親和性が、基板表面を形成する材料に対する親和性より高いことにより、反射層が接合用金属層の非被覆部分上に確実に固定され、反射層の剥離を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の蛍光光源装置によれば、反射層の層厚が100μm以上であることにより、より一層の高い発光効率が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の蛍光光源装置の構成の一例を示す概略図である。
図2図1に示す蛍光光源装置における蛍光発光部材の構成の一例を示す斜視図である。
図3図2に示す蛍光発光部材の説明用断面図である。
図4】本発明の蛍光光源装置における蛍光発光部材の構成の他の一例を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の蛍光光源装置の実施の形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の蛍光光源装置の構成の一例を示す概略図であり、図2は、図1に示す蛍光光源装置における蛍光発光部材の構成の一例を示す斜視図であり、図3は、図2に示す蛍光発光部材の説明用断面図である。
この蛍光光源装置は、図1に示すように、青色領域の光を放射するレーザダイオード10と、このレーザダイオード10に対向して配置された、当該レーザダイオード10から放射されるレーザ光である励起光Lによって励起されて緑色領域の蛍光L1を放射する蛍光体を有する蛍光発光部材20とを備えてなる。
レーザダイオード10と蛍光発光部材20との間における当該レーザダイオード10に接近した位置には、レーザダイオード10から入射された励起光Lを平行光線として出射するコリメータレンズ15が配置されている。また、コリメータレンズ15と蛍光発光部材20との間には、レーザダイオード10からの励起光Lを透過すると共に蛍光発光部材20からの蛍光L1を反射するダイクロイックミラー16が、コリメータレンズ15の光軸に対して例えば45°の角度で傾斜した姿勢で配置されている。
【0015】
図1では、1つのレーザダイオード10の光を用いているが、レーザダイオード10が複数あり、蛍光発光部材20の前に集光レンズを配置させ、集光光を蛍光発光部材20に照射する形態であってもよい。また、励起光はレーザダイオード10による光に限るものではなく、蛍光発光部材20における蛍光体を励起することができるものであれば、LEDによる光を集光したものでもよく、更には、水銀、キセノン等が封入されたランプからの光であってもよい。尚、ランプやLEDのように放射波長に幅を持つ光源を利用した場合には、励起光の波長は主たる放射波長の領域である。ただし、本発明においては、これに限定されるものではない。
【0016】
蛍光発光部材20は、図2に示すように、矩形平板状の基板21表面上に、矩形平板状の蛍光体プレート22が、矩形の接合用金属層29を介して接合されてなるものであり、蛍光体プレート22の周側面を覆うように反射層28が形成されている。
この蛍光発光部材20は、蛍光体プレート22の表面(図3における上面)が、励起光受光面とされている。また、蛍光体プレート22の表面は、励起光受光面として機能すると共に、光出射面としても機能する。
【0017】
蛍光体プレート22は、単結晶材料または多結晶材料よりなる蛍光体によって構成されている。
【0018】
単結晶材料としては、例えば、坩堝の中で溶融状態とされた原材料に、種子結晶を接触させて鉛直方向に保持しつつ回転させながら引き上げることによって結晶(単結晶)を成長させるチョクラルスキー法(CZ法)によって得られたものを用いることができる。
原材料および種子結晶としては、種々のものを用いることができる。
【0019】
多結晶材料としては、例えば、ボールミルなどの粉砕機を用いて原材料(母材、焼成助剤および必要に応じて賦活剤)を粉砕して粒径をサブミクロン以下とし、得られた原料の微粉末からスリップキャスト法によって焼結体を形成した後、得られた焼成体に熱間等方圧加圧加工を施したものを用いることができる。
原材料としては、焼結可能なものであれば、種々のものを用いることができる。
多結晶材料としては、気孔率が0.5%以下のものを用いること好ましい。その理由は、単結晶材料は気孔がなく、また多結晶材料は気孔が殆どないため、気孔に熱伝導率の低い空気が存在することに起因して熱伝導性が大幅に低下することがないためである。
【0020】
単結晶材料および多結晶材料としては、希土類化合物が賦活剤としてドープ(賦活)されたものであることが好ましい。
希土類化合物としては、例えば、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)およびサマリウム(Sm)などが挙げられる。
希土類化合物のドープ量は、例えばドープされる希土類化合物の種類などに応じて適宜に定められるが、例えば0.5mol%程度である。
【0021】
蛍光体の具体例としては、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Y3 Al5 12)にセリウムがドープされた結晶材料(YAG:Ce)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Y3 Al5 12)にプラセオジムがドープされた結晶材料(YAG:Pr)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Y3 Al5 12)にサマリウムがドープされた結晶材料(YAG:Sm)、およびルテチウム・アルミニウム・ガーネット(Lu3 Al5 12)にセリウムがドープされた結晶材料(LuAG:Ce)などが挙げられる。
【0022】
蛍光プレートの励起光受光面、すなわち当該蛍光プレート22の表面に、凸部が周期的に配列されてなる表面側周期構造が形成されている。この表面側周期構造の周期は蛍光体内で生じる蛍光の回折が発生する範囲の大きさとされており、これにより、蛍光体プレートの表面から蛍光を高い効率で外部に出射することができる。
周期構造の形成方法としては、ナノインプリント法を利用する場合には、モールド(テンプレート)の作製やインプリント作業を容易に行うことができる。また、蛍光プレートの上に成膜を行なうか、直接蛍光プレートをドライエッチングすることによって周期構造を形成させることができる。
ナノインプリントのゾルゲル材料、および、成膜を形成させる材料としては、励起光密度が約5W/mm2 以上となるため、YAG、LuAG、ZrO2 、Y2 3 、In2 3 、HfO2 、Nb2 2 、SnO2 ,Al2 3 /La2 3 、ITO、ZnO,Ta2 5 、TiO2 等の無機材料であることが望ましい。
【0023】
蛍光体プレート22の厚みは、30〜200μmであることが好ましく、より好ましくは50〜150μmである。
蛍光体プレート22の厚みが過小である場合には、励起光が透過してしまうために、蛍光体プレート22において励起光を十分に吸収することができず、蛍光の変換量が小さくなるおそれがある。一方、蛍光体プレート22の厚みが過大である場合には、蛍光体プレート22の熱抵抗により、励起光が照射されることによって発生する熱が蛍光体プレート22に蓄積されて高温となるおそれがある。
【0024】
蛍光体プレート22の裏面(図3における下面)全面には、光取り出し効率の観点から、誘電体多層膜よりなる光反射膜24が形成されていることが好ましい。
誘電体多層膜としては、具体的には、Ag+増反射保護膜(SiO2 又はAl2 3 )の2層構造のものや、シリカ(SiO2 )層およびチタニア(TiO2 )層が交互に積層されてなるもの、窒化アルミニウム(AlN)層および酸化アルミニウム(Al2 3 )層が交互に積層されてなるものなどが挙げられ、誘電体多層膜を構成する層の材料としては、AlN、SiO2 、SiN、ZrO2 、SiO、TiO2 、Ta2 3 、Nb2 5 等から選択することができる。
例えば、SiO2 /Ta2 3 、SiO2 /Nb2 5 、SiO2 /TiO2 の組み合わせの誘電体多層膜の中では、TiO2 、Nb2 5 およびTa2 3 の屈折率が、TiO2 >Nb2 5 >Ta2 3 の順であり、SiO2 の総膜厚はSiO2 /TiO2 の組み合わせの誘電体多層膜のときに薄くなる。このため、誘電体多層膜の熱抵抗が低くなり、熱伝導が良好なものとなる。
このため、窒化アルミニウム(AlN)層および酸化アルミニウム(Al2 3 )層が交互に積層されてなるものを用いることが好ましい。窒化アルミニウム(AlN)層および酸化アルミニウム(Al2 3 )層が交互に積層されてなる誘電体多層膜を用いた場合には、当該誘電体多層膜の熱伝導率が更に良好なものであるために、蛍光体プレート22の温度上昇を抑制することができ、従って、温度消光による光量低下を抑止することができる。
【0025】
蛍光体プレート22の裏面に誘電体多層膜よりなる光反射膜24が形成されていることにより、誘電体多層膜は銀の単層膜に比して反射率が高いので、蛍光体プレート22の裏面に銀の単層膜からなる場合と比較して、当該蛍光体プレート22の内部において発生された蛍光を高効率で取り出すことができる。
また、誘電体多層膜は、銀の単層膜に比べて硫化、酸化の影響がないため、SiO2 等からなる保護膜を必要としない。このため、簡便な構造をとることが可能となり、また、高い耐候性が得られる。従って、蛍光体プレート22の内部において発生された蛍光の取り出し効率が低下することを抑止することができる。
【0026】
光反射膜24の厚みおよび反射率は、例えば当該光反射膜24がSiO2 /TiO2 の組み合わせの誘電体多層膜からなるものである場合、総数は69層となり、SiO2 による層の総厚が3.3μm、TiO2 による層の総厚が1.8μm、誘電体多層膜の厚さが5μmであり、420nmから600nmの波長範囲において、反射率が98%以上とすることが可能となる。
【0027】
また、蛍光体プレート22の裏面(本実施形態においては光反射膜24の裏面)全面には、接合用金属層29との接合性の観点から、例えば蒸着によって形成された、ニッケル/白金/金(Ni/Pt/Au)膜、ニッケル/金(Ni/Au)膜よりなる金属膜25が形成されていることが好ましい。
金属膜25の厚みは、例えばNi/Pt/Au=30nm/500nm/500nmとされる。
【0028】
基板21は、高い熱伝導性を有する材料により形成されることが好ましい。
基板21を形成する材料としては、例えば、アルミニウム、グラファイトプレート、アルミナ、グラファイトとアルミニウムとの複合材料(以下、「グラファイト複合材」ともいう。)などが挙げられる。
【0029】
グラファイト複合材は、溶湯鍛造法によって得られるものである。
具体的には、グラファイト複合材は、グラファイトブロックを、溶融したアルミニウム金属に浸漬し、その溶融アルミニウム金属に高い圧力をかけることによって当該グラファイトブロックに存在する気孔に強制的に溶融アルミニウム金属を圧入・含浸し、その後冷却することによって製造することができる。このような製造方法によれば、得られる特定グラファイト複合材を、緻密で鋳巣(空洞)の少ない鋳造物とすることができる。
【0030】
基板21は、その表面(図3における上面)が、接合用金属層29との接合性の観点から、例えばめっき法によって形成されたニッケル/金(Ni/Au)膜よりなる金属膜(図示せず)によって構成されている。すなわち、基板21の最表面は金(Au)膜とされる。
この金属膜の厚みは、例えばNi/Au=5000〜1000nm/1000〜100nmとされる。
【0031】
基板21の裏面(図3における下面)には、例えば放熱用フィン(図示せず)が配置されている。
【0032】
基板21の厚さは、例えば1〜3mmとされる。
また、基板21は、表面(図3のにおける上面)の面積が、排熱性などの観点から、蛍光体プレート22の裏面(図3における下面)の面積よりも大きいことが好ましい。
【0033】
基板21と蛍光体プレート22とは接合用金属層29を介して接合されており、本実施形態では、基板21表面を形成する金(Au)膜と蛍光体プレート22の裏面側に形成された金属膜25とが、接合用金属層29により接合されている。
【0034】
接合用金属層29は、高い熱伝導率を有し、後述する反射層28を形成する材料に対して親和性の高い材料により形成される。
接合用金属層29を形成する材料(以下、「接合用金属層形成材料」ともいう。)としては、例えば、熱伝導率が40W/mK以上で、反射層28を形成する材料、特にシリコーン樹脂に対して親和性(濡れ性)の高いものが好ましい。具体的には、フラックスフリー半田(Sn−Ag−Cu)、銀(Ag)焼結材、銀(Ag)ペースト等が挙げられる。接合用金属層形成材料としての半田(Sn−Ag−Cu)の融点は250〜270℃、銀(Ag)焼結材の融点は180〜220℃、銀(Ag)ペーストの融点は150〜200℃である。
【0035】
また、接合用金属層形成材料として銀(Ag)焼結材を用いる場合においては、例えば銀(Ag)のナノ粒子を塗布して加熱(180〜200℃)することにより、固相反応で結着されて接合用金属層29を形成することができる。
さらに、接合用金属層形成材料として銀(Ag)ペーストを用いる場合においては、銀(Ag)ペーストを塗布して加熱(120〜210℃)することにより、接合用金属層29を形成することができる。
【0036】
接合用金属層29は、蛍光体プレート22に覆われていない非被覆部分29Aを有する。具体的には、接合用金属層29は、表面(図3における上面)の面積が、蛍光体プレート22の裏面(本実施形態では金属膜25の裏面)の面積より大きいものである。
本実施形態では、非被覆部分29Aは、接合用金属層29表面(図3における上面)領域から蛍光体プレート22の裏面(本実施形態では金属膜25裏面)によって占有された領域を除いた矩形枠状の領域とされる。
非被覆部分29Aの大きさおよび形状は、蛍光プレート22の端部から少なくとも約1mm以上の幅を有し、矩形枠状の形状が好ましい。
【0037】
接合用金属層29の層厚は、例えば20〜200μmとされる。
接合用金属層29は、裏面(図3における下面)の面積が、基板21の表面の面積よりも小さい。
【0038】
反射層28は、接合用金属層29の非被覆部分29A上で、蛍光体プレート22の周側面全面を覆うように形成されている。
具体的には、反射層28は、蛍光体プレート22の周側面全周に接触した状態で、当該周側面に接着され、反射層28の一方の側面(図3における下面)28aが接合用金属層29の非被覆部分29Aに接触した状態で当該非被覆部分29Aに接着されて形成されている。
反射層28の一方の側面28aは、接合用金属層29の非被覆部分29Aに接触し、この接触面を足場として反射層28を固定している。
【0039】
反射層28は、シリコーン樹脂中に反射性粒子が分散されてなる材料(以下、「反射層形成材料」ともいう。)により形成されている。
反射性粒子としては、酸化アルミニウム(Al2 3 )、チタニア(TiO2 )、シリカ(SiO2 )、硫酸バリウム(BaSO4 )、酸化亜鉛(ZnO)などが挙げられ、一種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。反射性粒子としては、拡散反射性付与の観点から、チタニア(TiO2 )を用いることが好ましく、チキソ性付与の観点から、シリカ(SiO2 )を用いることが好ましい。
反射性粒子の粒径は、例えば300nm〜50μmとされる。
反射性粒子の含有割合は、反射性粒子の種類によっても異なるが、反射層28と蛍光体プレート22および接合用金属層29との密着性の観点から、シリコーン樹脂に対して10質量%以下とされる。
また、反射層28の反射率は、波長450nmにおいて、95%以上とされる。
【0040】
反射層形成材料の接合用金属層形成材料に対する親和性は、基板21表面を形成する材料に対する親和性より高い。すなわち、反射層形成材料は、基板21表面を形成する材料である金(Au)に対する親和性よりも、上述した接合用金属層形成材料である半田(Sn−Ag−Cu)、銀(Ag)焼結材、銀(Ag)ペースト等に対する親和性の方が高いものである。これにより、反射層28は、接合用金属層29の非被覆部分29Aを足場として確実に固定される。
【0041】
反射層28は、クリーム状またはジェル状の反射層形成材料を非被覆部分29A上で、蛍光体プレート22の周側面に接触する状態に、ディスペンサーを用いて吐出定量塗布した後、硬化または焼成することにより形成することができる。この場合、硬化温度は、接合用金属層形成材料の融点より低い温度とされ、硬化温度は例えば150℃とされ、硬化時間は例えば30分間とされる。
【0042】
反射層28と蛍光体プレート22の周側面との接着は、物理的接着であっても、化学的接着であってもよい。具体的には、反射層28は、蛍光体プレート22に対し、蛍光体プレート22を形成する蛍光体の表面凹凸による接着性(物理的接着)、または、OH基による接着性(化学的接着)が発現される。
【0043】
反射層28の層厚tは、例えば100μm以上であることが好ましく、より好ましくは100μm〜1mmである。
尚、反射層28の層厚tは、蛍光体プレート22の周側面に垂直な方向(図3における左右方向)の長さの最小幅をいう。なお、この最小幅は、蛍光体プレート22の厚みの範囲内(蛍光体プレート22の周側面上)における最小幅をいう。
【0044】
また、反射層28の高さhは、少なくとも蛍光体プレート22の高さ(厚さ)と同等の高さであることが好ましい。
尚、反射層28の高さhは、蛍光体プレート22の周側面に平行な方向(図3における上下方向)の長さの最大幅をいう。
【0045】
以上のような蛍光発光部材20の仕様の一例を以下に示す。
基板21の寸法は、25mm(縦)×25mm(横)×1.6mm(厚み)、蛍光体プレート22の寸法は、1.7mm(縦)×3.0mm(横)×0.13mm(厚み)、接合用金属層29の寸法は、寸法:3.7mm(縦)×5.0mm(横)×40μm(層厚)、反射層28の層厚tは1.0mm、高さhは0.14mmである。接合用金属層29の非被覆部分29Aは、1mm幅の矩形の枠状である。
【0046】
上記の蛍光光源装置10においては、レーザダイオード10から出射された青色領域のレーザ光である励起光Lは、コリメータレンズ15によって平行光線とされる。その後、この励起光Lは、ダイクロイックミラー16を透過して蛍光体プレート22の励起光受光面(表面)に対して略垂直に照射される。そして、蛍光体プレート22においては、当該蛍光体プレート22を構成する蛍光体が励起され、蛍光L1が放射される。この蛍光L1は、蛍光プレート22の光出射面(表面)から出射され、ダイクロイックミラー16によって垂直方向に反射された後、蛍光光源装置の外部に出射される。
【0047】
このような蛍光光源装置10においては、蛍光体プレート22の周側面を覆うように反射層28が形成されていることにより、蛍光体プレート22の周側面から出射された蛍光を反射層28で反射して、蛍光体プレート22の内部に戻すことができるので、当該蛍光体プレート内で発生された蛍光を高効率で取り出すことができ、その結果、高い発光効率が得られる。
また、基板21表面に接合用金属層29を介して蛍光体プレート22が接合されていることにより、高い排熱性が得られる。
さらに、反射層28を形成するシリコーン樹脂中に反射性粒子が分散されてなる材料は、一般に金(Au)に対して親和性が低いが、当該反射層28が接合用金属層29の非被覆部分29A上に形成され、反射層形成材料の接合用金属層形成材料に対する親和性が、基板21表面を形成する材料に対する親和性より高いことにより、反射層28が接合用金属層29の非被覆部分29A上に確実に固定され、反射層28の剥離を抑制することができる。
さらにまた、反射層28の層厚tが100μm以上であることにより、より一層の高い発光効率が得られる。
【0048】
本発明においては、上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、図4に示すように、蛍光発光部材20における基板21は、凹部21aが形成されてなるものであり、この凹部21a内に蛍光体プレート22が配置され、凹部21aの内周面と蛍光体プレート22の周側面との間に、反射層形成材料が充填された状態によって反射層28が形成されている構成とすることができる。このような構成により、反射層28を形成する際に反射層形成材料が流れることなく均一な層厚を確保した状態で反射層28を形成することができ、より一層の高い発光効率が得られる。
また例えば、接合用金属層の非被覆部分は、矩形枠状のものに限定されない。
【0049】
また、蛍光光源装置全体の構成は、図1に示すものに限定されず、種々の構成を採用することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
〔実施例1〕
図2および図3に示す構成に従い、下記の仕様の蛍光発光部材〔A1〕を作製した。
[基板(21)]
材質:アルミ基板,寸法:25mm(縦)×25mm(横)×1.6mm(厚み)
アルミ基板上には、ニッケル/金(Ni/Au=2.5μm/300nm)膜が形成されている。
[蛍光体プレート(22)]
材質:LuAG 屈折率=1.83,励起波長=445nm、蛍光波長=535nm,寸法:1.7mm(縦)×3.0mm(横)×0.13mm(厚み)
表面の周期構造体 成膜材料:Ta2 5 周期:460nm、高さ:460nm、形状:略円錐形状。
LuAGの下面に光反射膜(24)および金属膜(25)が形成されている。
[光反射膜(24)]
材質:SiO2 /TiO2 の組み合わせの誘電体多層膜、総数69層(SiO2 による層の総厚3.3μm、TiO2 による層の総厚1.8μm)425nmから600nmの波長範囲における反射率98%以上。
[金属膜(25)]
材質:ニッケル/白金/金(Ni/Pt/Au=30nm/500nm/500nm)
[接合用金属層(29)]
材質:半田(Sn−Ag−Cu) 融点=260℃
寸法:3.7mm(縦)×5.0mm(横)×40μm(層厚)
非被覆部分(29A)寸法(形状):1mm幅の矩形の枠状
[反射層(28)]
材質:シリコーン樹脂中にTiO2 が分散されてなるもの(反射性粒子の粒径=500〜5000nm、含有割合が2〜4質量%)
層厚(t):100μm
高さ(h):0.14mm
【0052】
〔実施例2〕
実施例1において、反射層(28)の層厚(t)を20μmに変更して形成したこと以外は、蛍光発光部材〔A1〕と同様の構成および仕様の蛍光発光部材〔A2〕を作製した。
【0053】
〔比較例1〕
実施例1において、反射層(28)を設けずに形成したこと以外は、蛍光発光部材〔A1〕と同様の構成および仕様の蛍光発光部材〔B1〕を作製した。
【0054】
蛍光発光部材〔A1〕,〔A2〕および〔B1〕の励起光受光面(蛍光体プレートの表面)の各々に、ピーク波長が445nmの励起光を照射し、当該蛍光体プレートからの蛍光の取り出し効率を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
〔比較例2〕
実施例1において、接合用金属層(29)の代わりに硫酸バリウム層を用いて形成したこと以外は、蛍光発光部材〔A1〕と同様の構成および仕様の蛍光発光部材〔B2〕を作製した。
【0057】
蛍光発光部材〔A1〕および〔B2〕の励起光受光面(蛍光体プレートの表面)の各々に、ピーク波長が445nmの励起光を照射した。そして、基板(21)表面の温度を熱電対によって測定し、得られた測定値と、各蛍光体プレートの熱抵抗とに基づいて蛍光体プレート(22)の温度を算出した。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
〔比較例3〕
実施例1において、接合用金属層(29)の非被覆部分(29A)を形成せず、反射層(28)を基板(21)上に直接形成したこと以外は、蛍光発光部材〔A1〕と同様の構成および仕様の蛍光発光部材〔B3〕を作製した。
【0060】
蛍光発光部材〔A1〕,〔A2〕および〔B3〕について、反射層(28)の剥離の有無を確認した。
その結果、蛍光発光部材〔A1〕および〔A2〕については、剥離は確認されなかったが、蛍光発光部材〔B3〕については、基板(21)からの剥離が確認された。
【0061】
以上の結果より、反射層が蛍光体プレートの周側面を覆うように形成されている場合には、蛍光体プレート内で発生した蛍光を高効率で取り出すことができることが確認された。また、反射層の層厚が大きくなるに従って、蛍光の取り出し効率が高くなることが確認された。
また、硫酸バリウム層を介する場合に比して接合用金属層を介して蛍光体プレートが接合されている場合には、高い排熱性が得られることが確認された。
さらに、反射層が接合用金属層の非被覆部分上に形成されると共に、反射層を形成する材料の接合用金属層を形成する材料に対する親和性が、基板表面を形成する材料に対する親和性より高い場合に、反射層が接合用金属層の非被覆部分上に確実に固定され、反射層の剥離を抑制することができることが確認された。
【符号の説明】
【0062】
10 レーザダイオード
15 コリメータレンズ
16 ダイクロイックミラー
20 蛍光発光部材
21 基板
21a 凹部
22 蛍光体プレート
24 光反射膜
25 金属膜
28 反射層
28a 一方の側面
29 接合用金属層
29A 非被覆部分
L 励起光
L1 蛍光
図1
図2
図3
図4