(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被印刷部材の先端部分に前回の印刷で前記粘着剤が転写されていて、かつ、当該被印刷部材の先端部分に今回の印刷で前記粘着剤を転写しないと、前記制御部が判別した場合、
今回の印刷に先立って、
前記制御部は、前記裁断部に当該先端部分の前記上流側端部を裁断させる、
ことを特徴とする請求項1記載の粘着剤付加機能付き印刷装置。
前記被印刷部材の先端部分に前回の印刷で前記粘着剤が転写されておらず、かつ、当該被印刷部材の先端部分に今回の印刷で前記粘着剤を転写すると、前記制御部が判別した場合、
今回の印刷に先立って、
前記制御部は、前記裁断部に当該先端部分の前記上流側端部を裁断させるとともに、
前記転写制御部は、前記転写機構に前記被印刷部材の当該先端部分の前記上流側端部よりも下流側に前記粘着剤を転写させる、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の粘着剤付加機能付き印刷装置。
前記被印刷部材の先端部分に前回の印刷で前記粘着剤が転写されておらず、かつ、当該被印刷部材の先端部分に今回の印刷で前記粘着剤を転写しないと、前記制御部が判別した場合、及び、前記被印刷部材の先端部分に前回の印刷で前記粘着剤が転写されていて、かつ、当該被印刷部材の先端部分に今回の印刷で前記粘着剤を転写すると、前記制御部が判別した場合、のいずれかの場合、
前記制御部は、前記裁断部に当該先端部分の前記上流側端部を裁断させることを含む準備処理を行わない、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の粘着剤付加機能付き印刷装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明おいて、上記の搬送機構は例えばプラテンローラ15、サーマルヘッド18等から成り、上記の印刷機構は例えばプラテンローラ15、サーマルヘッド18等から成る。
【0016】
また、上記の転写部材は例えば粘着剤テープ21からなり、上記の転写機構は例えば粘着剤テープ21、転写ローラ17、押圧転写ローラ19等からなり、上記の転写制御部は例えば制御装置25等からなり、上記の裁断部は例えばテープカッタ6等からなる。また、以下の説明において、印字と印刷は同義に用いている。
[実施例1]
【0017】
図1(a)は、本発明の実施例1に係る粘着剤付加機能付き印刷装置の外観斜視図であり、同図(b)はこの粘着剤付加機能付き印刷装置に装着されるロール状の感熱テープ紙を示す図である。
【0018】
図1(a)に示すように粘着剤付加機能付き印刷装置(以下、装置本体ともいう)1は、ほぼ直方体の形状をなし、その外周面の下部近傍に飾り溝2を形成された本体筐体3と、本体筐体3の上部の開口部に配設された開閉自在な上蓋4を備えている。
【0019】
本体筐体3の前面上部と上蓋4の前部はそれぞれ一部が切り欠かれた形状で、これら2つの切り欠き部を合わせて印刷済みテープの排出口5が形成されている。排出口5より内部近傍には、上に印刷済みテープを裁断するテープカッタ6が配置され、下方の下流側に裁断されたテープを排出口5から排出する排出ローラ7が配置されている。
【0020】
また、本体筐体3の側面には、飾り溝2の下方に電源プラグ用のプラグジャック8が形成され、本体筐体3の前面には飾り溝2と同一位置に外部のホスト機器の信号線USB(universal serial bus)端子と接続するUSBジャック9が形成されている。
【0021】
図1(b)に示す長尺の印刷媒体10は、長尺のテープ状に裁断されロール状に巻回された感熱テープ紙(以下、単にテープ紙という)11と、このテープ紙11のロール状の中心部に挿入されてテープ紙11を直接保持するリール12とリール12を回転自在に支持するリール支持軸13からなるロール保持部14とで構成されている。
【0022】
図2は、粘着剤付加機能付き印刷装置1の上蓋4を上後方に回動させて開いた状態を示す斜視図である。なお、
図2には
図1(a),(b)に示した構成と同一の構成部分には
図1(a),(b)と同一の番号を付与して示している。
【0023】
図2に示すように、粘着剤付加機能付き印刷装置1の本体筐体3の内部には、
図1(a),(b)に示した排出ローラ7と被印刷部材10のロール状のテープ紙11の他に、プラテンローラ15が配設されている。そして、プラテンローラ15と被印刷部材10との間に、詳しくは後述する転写部材を内蔵したカートリッジ16が配置されている。
図2には、カートリッジ16の転写ローラ17が僅かに見えている。
【0024】
また、
図2に示すように、粘着剤付加機能付き印刷装置1の上蓋4の裏面には、
図1に示したテープカッタ6の他に、サーマルヘッド18と、カートリッジ16の転写ローラ17と協働してテープ紙11に粘着剤を転写する押圧転写ローラ19が配置されている。
【0025】
図3は、粘着剤付加機能付き印刷装置1の側断面図であり、プラテンローラ15と被印刷部材10との間に着脱自在に装着されるカートリッジ16の内部構成も示している。なお、
図3には、
図1(a),(b)及び
図2と同一の構成部分には
図1(a),(b)及び
図2と同一の番号を付与して示している。
【0026】
図3において、サーマルヘッド18は、先端部に発熱素子アレイからなる印刷部を備えており、支持軸を支点にして上下に回動し、印刷時には
図3に示すように、プラテンローラ15にテープ紙11を介して圧接してテープ紙11に印刷を実行し、非印刷時にはプラテンローラ15から上方に離隔する。
【0027】
上記の印刷時において、プラテンローラ15は、搬送ローラの一つを構成している。また、プラテンローラ15と被印刷部材10との間において、被印刷部材10からプラテンローラ15まで延び出すテープ紙11の下方にカートリッジ16が装着されている。
【0028】
カートリッジ16には、
図2に示した転写ローラ17の他に、転写部材としての粘着テープ21と、粘着テープ21を送り出す送りローラ22と、粘着テープ21を巻き取る巻取りローラ23が収容されている。粘着テープ21は、テープ状の台紙の一面に粘着剤を塗布されている。
【0029】
粘着剤付加機能付き印刷装置1の上蓋4の内面には、転写ローラ17と対向する位置に、転写ローラ17と対をなす装置本体側の押圧転写ローラ19が配設され、これら一対の転写ローラによって粘着剤転写機構の転写部が構成されている。
【0030】
上記の粘着テープ21は、一対の転写ローラの一方のローラである転写ローラ17に粘着剤を塗布されない面を接するようにして、送りローラ22と巻取りローラ23間に巻回されている。
【0031】
装置本体側の押圧転写ローラ19は、不図示のギア列によって上下方向に回動し、カートリッジ16側の転写ローラ17にテープ紙11及び粘着テープ21を介して接離する。
【0032】
押圧転写ローラ19が転写ローラ17に接する方向に移動したときは、押圧転写ローラ19と転写ローラ17が一対となって協働してテープ紙11及び粘着テープ21を挟持し、続いてテープ紙11の非印刷面つまり裏面に粘着剤の転写が開始される。
【0033】
このとき、粘着テープ21は矢印aで示すように送りローラ22から送り出されて押圧転写ローラ19と転写ローラ17によりテープ紙11と粘着テープ21を介して挟持される。テープ紙11の裏面に接する粘着テープ21の面には粘着剤が塗布されており、この粘着剤がテープ紙11の裏面に転写される。
【0034】
粘着剤をテープ紙11の裏面に転写されて使用済みとなった粘着テープ21は、矢印bで示すように巻取りローラ23に巻き取られる。以下、押圧転写ローラ19が、転写ローラ17に接する方向に移動することを「押圧転写ローラダウン」といい、転写ローラ17から離隔する方向に移動することを「押圧転写ローラアップ」ということにする。
【0035】
図4は、上記のカートリッジ16のみを外部に取り出して示す斜視図である。なお、
図4には、
図3に示した構成と同一の構成部分には
図3と同一の番号を付与して示している。
図4に示すように、転写ローラ17の前後には、粘着テープ21を案内するガイドローラ24が配置されている。なお、カートリッジ16は、塗布された粘着剤の粘着力が異なる複数の粘着テープ21に対応して複数備えられている。
【0036】
図5は、実施例1に係る上記の粘着剤付加機能付き印刷装置1の制御装置を含む回路ブロック図である。
図5に示すように、制御装置25は、CPU(central processing unit)26と、このCPU26に接続されたROM(read only memory)27、RAM(Random Access Memory)28、キー入力部29、表示制御部31、貼付方法指定部32、印刷指示部33、プリンタ制御部34を備えている。
【0037】
ROM27は、CPU26が各部を制御するためのプログラムを格納している他に、文字、記号、絵文字等のデータや各種のサイズ情報などのテーブルを格納している。RAM28は、CPU26の演算途中のデータ、表示部35に出力するデータ、プリンタ制御部34に出力するデータ等を一時的に記憶する。
【0038】
CPU26は、ROM27に格納されている制御プログラムに基づいて各演算処理を行いながら上記の各部を制御する。キー入力部29は、USBジャック9に接続されたデータ入力ポートであり、外部のホスト機器から入力される文字をRAM28に一時的に格納し、その一時的に格納した文字を編集する。
【0039】
表示制御部31は、LCD(liquid crystal display)から成る表示部35を備えている。表示部35は、表示制御部31の制御のもとに、入力された文字や、編集したデータを表示したり、絵文字や記号などの選択マークの表示を行う。
【0040】
貼付方法指定部32は、添付方法の指定において、全面、左のみ、右のみ、無し、の4種類の粘着剤の転写方法のいずれか1つを指定する。印刷指示部33は、印刷開始と印刷終了をプリンタ制御部34に指示する。プリンタ制御部34には、サーマルヘッド18やプラテンローラ15から成るプリンタ部36が接続されている。
【0041】
プリンタ制御部34は、貼付方法指定部32で指定された指示に従って押圧転写ローラ19の上下動を制御すると共に、RAM28の印刷バッファ領域に格納されている印刷データをプリンタ部36へ出力する。
【0042】
図6(a)〜(d)は、貼付方法指定部32により指定される貼付(粘着剤の転写)方法の指定の、全面、左のみ、右のみ、無し、に応じて、テープ紙11から作成されるラベル37(37a、37b、37c、37d)の粘着剤の転写態様を示す図である。なお、
図6(a)〜(d)には、裏面に塗布される粘着剤の転写状態を分かりやすくラベル37の表側にハッチングで示している。
【0043】
図6(a)は「全面」指定の場合のラベル37aの粘着剤の転写状態、
図6(b)は「左のみ」指定の場合のラベル37bの粘着剤の転写状態、
図6(c)は「右のみ」指定の場合のラベル37c粘着剤の転写状態をそれぞれ示し、
図6(d)は「無し」の指定の場合のラベル37dの粘着剤の転写なしの状態を示している。
【0044】
なお、
図6(a)〜(d)に示すラベル37は、いずれも同じ「EFG」の文字を印字領域に印刷されており、印字領域の前後に、それぞれ前余白と後ろ余白が設けられている。これにより、印刷の前後の釣り合いを取っている。
【0045】
なお、これら前余白と後ろ余白は、
図3に示したサーマルヘッド18とテープカッタ6間の距離と同じになるように設定されている。また、印字領域は、
図3に示した押圧転写ローラ19とテープカッタ6間の距離と同じになるように設定されている。以下、制御装置25のCPU26により行われる処理動作について説明する。
【0046】
図7は、粘着剤の転写「全面」指定の場合のラベル37aへの粘着剤の転写処理と印字の手順を示す図である。
図7は、中央上に、押圧転写ローラ19からサーマルヘッド18までの距離Bと、サーマルヘッド18からテープカッタ6までの距離Aを示している。
【0047】
そして、その下方に、テープ紙11の搬送状態を、同図右方に示すフローチャートの処理手順に対応する搬送状態で示している。ステップS1は、印字実行を開始する直前のテープ紙11の状態を示している。
【0048】
すなわち、印字実行を開始する直前であるので、テープ紙11の先端はテープカッタ6で切断されたところで停止している。そして、距離A+距離Bの先端部分11aは、粘着剤が既に転写されている。
【0049】
次の、ステップS2では、「EFG」の文字の印刷が指示されると共に、押圧転写ローラダウンが行われる。これにより、ステップS3では、文字「EF」の途中まで印字が進行すると共に、既に粘着剤が転写されている先端部分11aに続いて粘着剤の転写が継続して行われる。
【0050】
そして、ステップS4で、印刷内容「EFG」の印刷が完了し、続くステップS5において、印字は停止(サーマルヘッド18がプラテンローラ15から離隔 )したまま、押圧転写ローラダウンの状態で、後ろ余白と、次回印刷文の前余白分だけテープ紙11が搬送される。
【0051】
ここで、印刷処理が終了し、押圧転写ローラアップが行われる。その後は、テープカッタ6による裁断が行われ、粘着剤を裏面全面に転写されたラベル37aが、排出口5から機外に排出される。
【0052】
図8は、粘着剤の転写「左のみ」指定の場合のラベル37bへの粘着剤の転写処理と印字の手順を示す図である。
図8も、中央上に、押圧転写ローラ19からサーマルヘッド18までの距離Bと、サーマルヘッド18からテープカッタ6までの距離Aを示している。
【0053】
そして、その下方に、テープ紙11の搬送状態を、同図右方に示すフローチャートの処理手順に対応する搬送状態で示している。ステップS11は、印字実行を開始する直前のテープ紙11の状態を示している。
【0054】
この場合も、テープ紙11の先端はテープカッタ6で切断されたところで停止している。そして、距離A+距離Bの先端部分11aは、粘着剤が既に転写されている。
【0055】
次の、ステップS12では、「EFG」の文字の印刷が指示されると共に、押圧転写ローラアップが行われる。これにより、ステップS13で、文字「EF」の途中まで印字が進行すると共に、既に粘着剤が転写されていた先端部分11aに続く部分には粘着剤の転写が行われないまま印刷処理が継続して行われる。
【0056】
そして、ステップS14では、印刷開始から「X−(B−A)」の距離を印刷したところで印刷を一時停止し、押圧転写ローラダウンが行われる。これにより、ステップS15で、後ろ余白の末尾位置から粘着剤の転写が再開されると共に、印刷内容「EFG」の印刷が完了する。
【0057】
上記に続いて、テープ紙11に対し、ステップS16で、後ろ余白分の距離を搬送し、更にステップS17で次回印刷分の前余白分を搬送して、印刷処理が終了する。その後は、テープカッタ6による裁断が行われ、粘着剤を裏面左半面(表面から見て)に転写されたラベル37bが、排出口5から機外に排出される。
【0058】
図9は、粘着剤の転写「右のみ」指定の場合のラベル37cへの粘着剤の転写処理と印字の手順を示す図である。
図9も、中央上に、押圧転写ローラ19からサーマルヘッド18までの距離Bと、サーマルヘッド18からテープカッタ6までの距離Aを示している。
【0059】
そして、その下方に、テープ紙11の搬送状態を、同図右方に示すフローチャートの処理手順に対応する搬送状態で示している。ステップS21は、印字実行を開始する直前のテープ紙11の状態を示している。
【0060】
この場合も、テープ紙11の先端はテープカッタ6で切断されたところで停止している。そして、この例の場合は、距離A+距離Bの先端部分11aには、粘着剤が転写されていない。
【0061】
次の、ステップS22では、「EFG」の文字の印刷が指示されると共に、押圧転写ローラダウンが行われる。これにより、ステップS23で、文字「EF」の途中まで印字が進行すると共に、粘着剤が転写されていなかった先端部分11aに続く部分には粘着剤の転写が行われている状態で印刷処理が続行され、ステップS24でも、その状態で印刷処理が続行される。
【0062】
そして、ステップS25において、印刷開始から「A+B」の距離を印刷したところで印刷が完了し、押圧転写ローラアップが行われる。続いて、ステップS26で、テープ紙11に対し、印刷処理も粘着剤転写処理も無い状態で、後ろ余白分の搬送が行われる。
【0063】
更に、その状態のまま、ステップS27で、次回印刷分の前余白分を搬送して、印刷処理が終了する。その後は、テープカッタ6による裁断が行われ、粘着剤を裏面右半面(表面から見て)に転写されたラベル37cが、排出口5から機外に排出される。
【0064】
図10は、粘着剤の転写「無し」指定の場合におけるラベル37dへの粘着剤の転写が無い状態での印字の手順を示す図である。
図10も、中央上に、押圧転写ローラ19からサーマルヘッド18までの距離Bと、サーマルヘッド18からテープカッタ6までの距離Aを示している。
【0065】
そして、その下方に、テープ紙11の搬送状態を、同図右方に示すフローチャートの処理手順に対応する搬送状態で示している。ステップS31は、印字実行を開始する直前のテープ紙11の状態を示している。
【0066】
この場合も、テープ紙11の先端はテープカッタ6で切断されたところで停止している。そして、距離A+距離Bの先端部分11aには、この例の場合も粘着剤が転写されていない。つまり、押圧転写ローラアップが行われている。
【0067】
次の、ステップS32では、「EFG」の文字の印刷が指示され、ステップS33では、文字「EF」の途中まで印字が進行し、更に、ステップS34で、全文字「EFG」の印刷が完了する。
【0068】
そして、ステップS35において、後ろ余白分と、次回印刷分の前余白分とを、サーマルヘッド18の位置まで搬送して、印刷処理と搬送処理が終了する、その後は、テープカッタ6による裁断が行われ、粘着剤が裏面に全く転写されていないラベル37dが、排出口5から機外に排出される。
【0069】
ところで、上記の
図7〜
図10に示した印刷手順では、ステップS1、S11、S21、S31の印刷開始直前の状態において、いずれも、距離A+距離Bの先端部分11aは、続く印刷実行に支障のない粘着剤の転写状態になっている。
【0070】
ここで、例えば、
図7に示す粘着剤「全面」、又は
図8に示す粘着剤「左のみ」の転写指定の印刷で、ステップS5又はS17の印刷処理終了状態となった後、次回の印刷が、例えば
図9に示す粘着剤「右のみ」又は
図10に示す粘着剤「無し」の指定の印刷である場合を考える。
【0071】
粘着剤「全面」又は粘着剤「左のみ」の転写指定印刷での印刷終了時には、次回分の距離A+距離Bの先端部分11aには、粘着剤が転写されている。したがって、そのまま粘着剤「右のみ」又は粘着剤「無し」の指定の印刷を行ったのでは、ステップS27で最初に得られるラベル37cには粘着剤が全面に転写されている。
【0072】
また、ステップS35の場合では、最初に得られるラベル37dには粘着剤が左半面に転写されている。いずれの場合も、そのような粘着剤の転写状態はユーザが所望する用途に適さないので廃棄され、再度印刷を行わねばならないという不具合が生じる。
【0073】
これとは逆に、例えば、
図9に示す粘着剤「右のみ」、又は
図10に示す粘着剤「無し」の指定での印刷で、ステップS27又はS35の印刷処理終了状態となった後、次回の印刷が、例えば
図7に示す粘着剤「全面」又は
図8に示す粘着剤「左のみ」の指定の印刷である場合を考える。
【0074】
粘着剤「右のみ」又は粘着剤「無し」の指定の印刷での印刷終了時には、次回分の距離A+距離Bの先端部分11aには、粘着剤が転写されていない。したがって、そのまま粘着剤「全面」の指定の印刷を行ったのでは、ステップS5で最初に得られるラベル37aには粘着剤は右半面にのみ転写されているものとなる。
【0075】
また、粘着剤「左のみ」の指定の印刷を行ったのでは、ステップS17で最初に得られるラベル37bには粘着剤が全く転写されていない。いずれの場合も、そのような粘着剤の転写状態はユーザが所望する用途に適さないので廃棄され、再度印刷を行わねばならないという不具合が生じる。
【0076】
この不具合を回避するためには、ユーザが手動で「距離A+距離B」のテープ送りをしたり、粘着剤転写指定で「距離A+距離B」のテープ送りをするなどの操作を行わなければならない。しかし、これでは操作性が悪く、テープ送りの操作を忘れたりすると、上述した誤印刷の不具合が発生する。
【0077】
そこで、本例では、印刷実行に入る前に、その前段の準備処理として、前回の印刷終了時のテープ紙11の先端部分11aに、粘着剤が転写されているか否かの判断をし、その先端部分11aの粘着剤転写状態(又は転写無し状態)が、今回実行しようとする印刷に適したものか否かを判断する。
【0078】
そして、先端部分11aの粘着剤転写状態(又は転写無し状態)が、今回実行しようとする印刷に適していれば、そのまま準備処理を終了する。また、適していなければ、先端部分11aを適する状態にしながらテープ紙11を搬送し、不要部分をテープカッタ6で裁断して準備処理を終了する。
【0079】
図11は、そのような
図7〜
図10に示す粘着剤転写指定が、全面、左のみ、右のみ、無し、の印刷指定に対応する印字実行処理に移行する前段の準備処理を示すフローチャートである。
【0080】
図11において、ユーザから印刷指示部33を介して印刷指示が入力されると、制御装置25のCPU26により、準備処理が開始される。先ず、ステップM01において、CPU26は、前回の印刷処理終了で設定されている粘着剤転写方法のフラグを、RAM28の予め設定されている第1のフラグ領域にセットする。
【0081】
次に、ステップM02において、CPU26は、貼付方法指定分32により、表示制御部31を介して、表示部35に、今回印刷するラベル37への粘着剤の転写形態「全面、左のみ、右のみ、無し」を選択可能な状態で表示させる。
【0082】
そして、ユーザから、「全面、左のみ、右のみ、無し」のいずれかが選択されて指定入力されると、その選択された粘着剤の転写形態を、RAM28の予め設定されている第2のフラグ領域にセットする。
【0083】
次に、ステップM03において、CPU26は、RAM28の第1のフラグ領域のフラグを参照し、前回印刷の終了時において、印刷開始前のテープ紙11の先端部分11aに、粘着剤が転写されている、つまり先端部分11aに粘着部が有る、か否かを判別する。
【0084】
そして、粘着部があるなら(ステップM03の判別がY)、前回の印刷は、
図7のステップS5、又は
図8のステップS17の終了状態、つまり、テープ紙11の先端部分11aの状態は、
図7又は
図8のステップS1又はS11の粘着剤が転写されている状態(以下、先頭粘着部あり、という)である。なお、これと逆の場合を、先頭粘着部なし、ということにする。
【0085】
先頭粘着部ありの場合、続いて、CPU26は、ステップM04において、RAM23の第2のフラグ領域のフラグを参照し、今回指定された印刷方法は、先頭粘着部あり、の印刷方法であるか否かを判別する。
【0086】
この判別で、先頭粘着部あり、の印刷方法であるときは(ステップM04の判別がY)、
図7の「全面」又は
図8の「左のみ」の印刷方法であるので、前回印刷終了時の状態が先頭粘着部ありでも支障は無く、直ちに印字処理を実行できるので、この準備処理を終了する。
【0087】
上記ステップM04の判別で、第2のフラグ領域のフラグが、先頭粘着部なし、の印刷方法が指定されていることを示しているときは(ステップM04の判別がN)、
図9の「右のみ」又は
図10の「無し」の印刷方法であるので、前回印刷終了時の状態が先頭粘着部ありの状態では支障がある。
【0088】
この場合、CPU26は、ステップM05の処理に進んで、テープ紙11の搬送を行い、ステップM06において、先頭粘着部ありの部分の終端がテープカッタ6の位置に来たところで搬送を止め、テープカッタ6の位置より前に出た先頭粘着部ありの部分を切断して除去し、テープカッタ6の後方を先頭粘着部なしの状態にして準備処理を終了する。
【0089】
また、上記ステップM03の判別で、先頭粘着部なしなら(ステップM03の判別がN)、続いて、CPU26は、ステップM07の処理に進んで、RAM23の第2のフラグ領域のフラグを参照し、今回指定された印刷方法は、先頭粘着部あり、の印刷方法であるか否かを判別する。
【0090】
この判別で、先頭粘着部あり、の印刷方法であるときは(ステップM07の判別がY)、
図7の「全面」又は
図8の「左のみ」の印刷方法であるので、前回印刷終了時の状態が先頭粘着部なしでは支障がある。
【0091】
この場合、CPU26は、ステップM08の処理に進んで、押圧転写ローラダウンを行い、続くステップM09でテープ紙11の搬送を開始し、ステップM10において先頭粘着部なしの部分の終端がテープカッタ6の位置に来たところで搬送を止め、テープカッタ6の位置より前に出た先頭粘着部なしの部分を切断して除去し、テープカッタ6の後方を先頭粘着部ありの状態にして準備処理を終了する。
【0092】
上記ステップM07の判別で、第2のフラグ領域のフラグが、先頭粘着部なし、の印刷方法が指定されていることを示しているときは(ステップM07の判別がN)、
図9の「右のみ」又は
図10の「無し」の印刷方法であるので、前回印刷終了時の状態が先頭粘着分なしでも支障は無く、直ちに印字処理を実行できるので、この準備処理を終了する。
【0093】
このように、本例の粘着剤付加機能付き印刷装置1においては、全面、左のみ、右のみ、無し、の4種類の粘着剤の転写方法のいずれか1つを指定でき、前回の印刷方法が4種類のいずれの粘着剤の転写方法を用いたものであっても、次の印刷方法で前回と異なる印刷方法を採用した場合でも、ユーザが手作業で前処理を行う必要がなく、適切な前処理が自動的に行われる。
【0094】
これにより、ユーザは前回印刷時の印刷方法の設定を覚えておく必要がなく、手作業でテープ紙の初期設定をする必要がないので、取扱いに面倒がなく便利である。
【0095】
また、初期設定におけるテープ紙の搬送と先端部カットが必要か否かを自動で判断し、必要なときのみ先端部を裁断して除去するので、テープ紙の消耗を最小限に抑えることができる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
【0097】
長尺状の被印刷部材を搬送する搬送機構と、
前記被印刷部材に印刷を行う印刷機構と、
粘着剤を有する転写部材を搬送しつつ前記搬送される前記被印刷部材と選択的に接触して前記被印刷部材の非印刷面に前記粘着剤を転写する転写機構と、
前記転写機構による前記非印刷面への前記粘着剤の転写と非転写を制御する転写制御部と、
を備えることを特徴とする粘着剤付加機能付き印刷装置。
[付記2]
【0098】
前記転写機構の被印刷部材搬送方向下流に被印刷部材を裁断する裁断部を備え、
前記裁断部と前記印刷機構の間の距離を、前記印刷機構による前記被印刷部材に対する余白部とする、
ことを特徴とする付記1記載の粘着剤付加機能付き印刷装置。
[付記3]
【0099】
前記転写機構は、前記被印刷部材と前記転写部材とを挟持可能で且つ前記被印刷部材と前記転写部材とを介して接離する一対の転写ローラを有する、
ことを特徴とする付記1又は2記載の粘着剤付加機能付き印刷装置。
[付記4]
【0100】
前記転写部材は、テープ状の台紙の一面に粘着剤を塗布され、前記一対の転写ローラの一方のローラに前記粘着剤を塗布されない面を接するよう送りローラと巻取りローラ間に巻回されている、
ことを特徴とする付記3記載の印刷装置。
[付記5]
【0101】
前記転写部材は、前記一対の転写ローラの前記一方のローラ、前記送りローラ、前記巻取りローラと共に印刷装置本体に着脱自在なカートリッジに収容されている、
ことを特徴とする付記3記載の印刷装置。
[付記6]
【0102】
前記カートリッジは、塗布された前記粘着剤の粘着力が異なる複数の前記転写部材に対応して複数備えられている、
ことを特徴とする付記5記載の印刷装置。
[付記7]
【0103】
前記印刷機構は、プラテンローラとサーマルヘッドであり、前記プラテンローラは前記搬送ローラの一つを構成する、
ことを特徴とする付記1乃至6のいずれかに記載の印刷装置。
[付記8]
【0104】
前記被印刷部材は感熱テープである、ことを特徴とする付記1乃至7のいずれかに記載の印刷装置。