(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
既設トラスの内部空間に設置すべき新設トラスが、その長手方向に複数のトラスセグメントに分割された状態で、これらのトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していく乗客コンベアのリニューアル工法において、
既設トラスの少なくとも上階側水平部に門型揚重装置を配備する準備工程と、
前記複数のトラスセグメントを順次、既設トラスに沿って搬送する工程であって、搬送の対象とするトラスセグメントに、既設トラスの長手方向に延在する上面に配置することが可能な複数の搬送具を取り付け、前記門型揚重装置を用いて、前記複数の搬送具を前記上面に沿って移動させながら、該トラスセグメントを搬送する搬送工程
とを有し、
前記準備工程では、既設トラスに、前記搬送具が移動することとなる既設トラスの傾斜部の上面を同一の傾きで斜め上方へ延長する延長レール部材を取り付け、
前記搬送工程では、前記複数の搬送具が取り付けられたトラスセグメントを、既設トラスの傾斜部の上面と延長レール部材の上面に亘って移動させることを特徴とする、乗客コンベアのリニューアル工法。
前記搬送工程では、既設トラスの上階側水平部に設置すべきトラスセグメントを上方へ搬送する過程で、該トラスセグメントを既設トラスの傾斜部の上面に沿って移動させ、更に延長レール部材の上面に沿って移動させることにより、該トラスセグメントを前記門型揚重装置の下方位置まで搬送し、その後、前記門型揚重装置を用いて、該トラスセグメントを延長レール部材から離脱させ、既設トラスの上階側水平部に設置する、請求項1に記載の乗客コンベアのリニューアル工法。
前記搬送工程では、既設トラスの下階側水平部又は傾斜部に設置すべきトラスセグメントを下方へ搬送する過程で、前記門型揚重装置を用いて、該トラスセグメントを前記門型揚重装置の下方位置にて吊り上げ、延長レール部材の上に設置した後、該トラスセグメントを延長レール部材の上面に沿って移動させ、更に既設トラスの上面に沿って移動させる、請求項1に記載の乗客コンベアのリニューアル工法。
既設トラスの上階側水平部にトラスセグメントを設置する際に、若しくは上階側水平部にトラスセグメントを設置した後、前記延長レール部材を既設トラスから取り外す、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の乗客コンベアのリニューアル工法。
前記門型揚重装置の下方位置では、該門型揚重装置を用いてトラスセグメントに対して前進方向の吊り力と後退方向の吊り力を作用させることが可能である、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の乗客コンベアのリニューアル工法。
前記延長レール部材は、前記門型揚重装置の最も後方寄りのチェーンブロック取付部よりも前方の位置まで突出している、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の乗客コンベアのリニューアル工法。
前記準備工程では、既設トラスの上階側水平部に門型揚重装置を配備すると共に、既設トラスの下階側水平部に門型揚重装置を配備し、2つの門型揚重装置を用いて、全てのトラスセグメントの搬送及び設置を実施する、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の乗客コンベアのリニューアル工法。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータにおいて、既設トラスを撤去することなく、既設トラスの内部空間に新設トラスを設置し、既設トラスに新設トラスを合体させるリニューアル工法が知られている(特許文献1)。
係るリニューアル工法によれば、リニューアルの工期を短縮することが可能である。
【0003】
又、この様なリニューアル工法において、新設トラスをその長手方向に複数のトラスセグメントに分割し、これらのトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していくリニューアル工法が知られている(特許文献2)。
係るリニューアル工法によれば、既設トラスの内部空間を既設トラスに沿って移動させながら、全てのトラスセグメントを既設トラスの内部空間に設置して、これらのトラスセグメントを互いに連結することにより、既設トラスの内部空間に新設トラスを完成することが出来る。
【0004】
又、この様なリニューアル工法において、既設トラスに沿ってトラスセグメントを移動させる工程で、既設トラスの上階側水平部、傾斜部及び下階側水平部のそれぞれに1或いは複数の門型揚重装置を配備し、これらの門型揚重装置に設けられたチェーンブロックを用いて、トラスセグメントを吊り上げつつ、既設トラスの下階側水平部から傾斜部を経て上階側水平部まで移動させる工法が提案されている(特許文献3)。
【0005】
更に又、既設トラスに沿ってトラスセグメントを移動させるリニューアル工法において、トラスセグメントの前後左右に、既設トラスの上面にて転動可能な車輪を具えた4つの搬送具を取り付け、該搬送具によってトラスセグメントを搬送することが提案されている(特許文献4)。
係るリニューアル工法によれば、新設トラスを構成すべき複数のトラスセグメントを既設トラスに沿って容易に搬送することが出来る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、トラスセグメントに4つの搬送具を取り付けて、該トラスセグメントを既設トラスに沿って搬送するリニューアル工法において、既設トラスの上階側水平部にトラスセグメントを設置する工程では、既設トラスの上階側水平部に配備した上階側の門型揚重装置による引き上げによって、該トラスセグメントを既設トラスの傾斜部から上階側水平部へ移行させる作業が行なわれる。
【0008】
この場合、トラスセグメントが既設トラスの傾斜部から上階側水平部へ移行すると同時に、該トラスセグメントは、傾斜部を移動するときの傾斜姿勢から、上階側水平部を移動するときの水平姿勢まで、急激に姿勢が変化するので、該トラスセグメントを吊り上げているチェーンブロックを操作することにより、トラスセグメントの前進方向への吊り力と後退方向への吊り力とをバランスさせて、トラスセグメントの姿勢を制御しつつ、該トラスセグメントを徐々に既設トラスの傾斜部から上階側水平部へ移行させる必要がある。
【0009】
しかしながら、トラスセグメントが既設トラスの傾斜部から上階側水平部へ移行する際、該トラスセグメントを吊り上げているチェーンブロックのワイヤーは、前方の上階側門型揚重装置から該トラスセグメントまで斜め方向に張設されることになるため、トラスセグメントの後退方向への吊り力を作用させることが出来ず、トラスセグメントを既設トラスの傾斜部から上階側水平部へ安定的に移行させることが出来ない問題があった。
【0010】
そこで本発明の目的は、新設トラスがその長手方向に複数のトラスセグメントに分割された状態で、これらのトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していく乗客コンベアのリニューアル工法において、既設トラスの上階側水平部に設置すべきトラスセグメントを既設トラスの傾斜部から上階側水平部へ、若しくは、既設トラスの傾斜部又は下階側水平部に設置すべきトラスセグメントを既設トラスの上階側水平部から傾斜部へ、安定的に移行させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る乗客コンベアのリニューアル工法は、既設トラスの内部空間に設置すべき新設トラスが、その長手方向に複数のトラスセグメントに分割された状態で、これらのトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していくものであって、
既設トラスの少なくとも上階側水平部に門型揚重装置を配備する準備工程と、
前記複数のトラスセグメントを順次、既設トラスの内部空間に設置していく過程で、搬送の対象とするトラスセグメントに、既設トラスの長手方向に延在する上面に配置することが可能な複数の搬送具を取り付け、前記門型揚重装置を用いて、前記複数の搬送具を前記上面に沿って移動させながら、該トラスセグメントを搬送する搬送工程
とを有している。
【0012】
前記準備工程では、既設トラスに、前記搬送具が移動することとなる既設トラスの傾斜部の上面を同一の傾きで斜め上方へ延長する延長レール部材を取り付ける。
そして、前記搬送工程では、前記複数の搬送具が取り付けられたトラスセグメントを、既設トラスの傾斜部の上面と延長レール部材の上面に亘って移動させる。
【0013】
具体的態様において、前記搬送工程では、既設トラスの上階側水平部に設置すべきトラスセグメントを上方へ搬送する過程で、該トラスセグメントを既設トラスの傾斜部の上面に沿って移動させ、更に延長レール部材の上面に沿って移動させることにより、該トラスセグメントを前記門型揚重装置の下方位置まで搬送し、その後、前記門型揚重装置を用いて、該トラスセグメントを延長レール部材から離脱させ、既設トラスの上階側水平部に設置する。
【0014】
或いは、前記搬送工程では、既設トラスの下階側水平部又は傾斜部に設置すべきトラスセグメントを下方へ搬送する過程で、前記門型揚重装置を用いて、該トラスセグメントを前記門型揚重装置の下方位置にて吊り上げ、延長レール部材の上に設置した後、該トラスセグメントを延長レール部材の上面に沿って移動させ、更に既設トラスの上面に沿って移動させる。
【0015】
他の具体的な態様においては、既設トラスの上階側水平部にトラスセグメントを設置する際に、若しくは上階側水平部にトラスセグメントを設置した後、前記延長レール部材を既設トラスから取り外す。
【0016】
他の具体的な態様においては、前記門型揚重装置の下方位置では、該門型揚重装置を用いてトラスセグメントに対して前進方向の吊り力と後退方向の吊り力を作用させることが可能である。
【0017】
又、前記延長レール部材は、前記門型揚重装置の最も後方寄りのチェーンブロック取付部よりも前方の位置まで突出している。
【0018】
更に又、前記準備工程では、既設トラスの上階側水平部に門型揚重装置を配備すると共に、既設トラスの下階側水平部に門型揚重装置を配備し、2つの門型揚重装置を用いて、全てのトラスセグメントの搬送及び設置を実施する。
【0019】
上記本発明のリニューアル工法においては、例えば既設トラスに沿って新設トラスの各トラスセグメントを順次、下から上へ引き上げていく場合、既設トラスの上階側水平部に設置すべきトラスセグメントを上方へ搬送する過程で、門型揚重装置を用いた引き上げによって、該トラスセグメントを既設トラスの上面に沿って移動させ、更に延長レール部材の上面に沿って移動させる。これによって、該トラスセグメントは門型揚重装置の下方位置まで搬送され、該下方位置では、該門型揚重装置によって、該トラスセグメントに対して前進方向の吊り力と後退方向の吊り力を同時に作用させることができる。
【0020】
従って、該トラスセグメントが延長レール部材から離脱するとき、門型揚重装置によって前進方向の吊り力と後退方向の吊り力とをバランスさせることにより、該トラスセグメントの姿勢を制御し、該トラスセグメントを安定した姿勢に保つことが出来る。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る乗客コンベアのリニューアル工法によれば、既設トラスの上階側水平部に設置すべきトラスセグメントを既設トラスの傾斜部から上階側水平部へ、若しくは既設トラスの傾斜部又は下階側水平部に設置すべきトラスセグメントを既設トラスの上階側水平部から傾斜部へ、安定的に移行させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明のリニューアル工法における第1工程を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、該リニューアル工法における第2工程を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、該リニューアル工法における第3工程を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、該リニューアル工法における第4工程を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、該リニューアル工法における第5工程を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の搬送具を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、該搬送具による調整を説明する図である。
【
図10】
図10は、本発明のリニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第1の過程を示す一連の側面図である。
【
図11】
図11は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第2の過程を示す一連の側面図である。
【
図12】
図12は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第3の過程を示す一連の側面図である。
【
図13】
図13は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第4の過程を示す一連の側面図である。
【
図14】
図14は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第5の過程を示す一連の側面図である。
【
図15】
図15は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第6の過程を示す一連の側面図である。
【
図16】
図16は、該リニューアル工法において、トラスセグメントが順次、既設トラスに沿って搬送される第7の過程を示す一連の側面図である。
【
図17】
図17は、既設トラスの下階側水平部にステージ部材が設置されている状態を示す斜視図である。
【
図18】
図18は、トラスセグメントがステージ部材から既設トラスへ移行する過程の前半を示す側面図である。
【
図19】
図19は、トラスセグメントがステージ部材から既設トラスへ移行する過程の後半を示す側面図である。
【
図20】
図20は、既設トラスに延長レール部材が取り付けられている状態を示す側面図である。
【
図21】
図21は、上階側水平トラスセグメントが延長レール部材から既設トラスの上階側水平部へ移行する過程の第1の状態を示す側面図である。
【
図22】
図22は、上階側水平トラスセグメントが延長レール部材から既設トラスの上階側水平部へ移行する過程の第2の状態を示す側面図である。
【
図23】
図23は、上階側水平トラスセグメントが延長レール部材から既設トラスの上階側水平部へ移行する過程の第3の状態を示す側面図である。
【
図25】
図25は、新設トラスを構成する複数のトラスセグメントを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をエスカレータのリニューアル工法に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。尚、以下の説明では、トラスの長手方向に沿って下階から上階へ向かう方向を「前方」、その逆方向を「後方」と称する。
【0024】
本発明の一実施形態であるエスカレータのリニューアル工法は、既設トラスを撤去することなく既設トラスの内部空間に新設トラスを設置するものであって、先ず、第1工程では、
図1及び
図24に示す如くエスカレータから既設トラス(1)以外の部品や機器(駆動装置、ステップ、手摺り駆動機構、制御機器等)を撤去し、既設トラス(1)のみを残す。
既設トラス(1)は、上階側水平部(11)、傾斜部(12)及び下階側水平部(13)から構成されており、上階側水平部(11)から傾斜部(12)を経て下階側水平部(13)まで延在する上面(1a)を有している。
【0025】
又、
図25に示す如く、新設トラス(3)をその長手方向に、上階側水平トラスセグメント(31)と、上階側屈曲トラスセグメント(32)と、複数の中間トラスセグメント(33)(33)と、下階側屈曲トラスセグメント(34)と、下階側水平トラスセグメント(35)に分割する。
【0026】
尚、これらのトラスセグメント(31)〜(35)には、エスカレータを構成すべき複数の部品や機器の内、予め搭載可能な複数の部品や機器(駆動装置、駆動輪、ガイドレール等)が搭載されている。
又、
図25は、新設トラス(3)の1つの分割例を示すものであって、新設トラス(3)の全長等に応じて適切な分割形態が採用される。
以下の説明においては、新設トラス(3)を構成するトラスセグメント(31)〜(35)を適宜、トラスセグメント(30)と総称する。
【0027】
次に、第2工程では、
図2に示す如く既設トラス(1)の下階側水平部(13)に門型揚重装置(2a)を設置すると共に、既設トラス(1)の上階側水平部(11)に門型揚重装置(2b)を設置する。
【0028】
続いて、第3工程では、
図3に示す如く下階側の門型揚重装置(2a)と上階側の門型揚重装置(2b)に設けられているチェーンブロック(20)を用いて、トラスセグメント(30)を既設トラス(1)の上面に沿って引き上げる。
ここで、トラスセグメント(30)には、前後左右の4箇所にそれぞれ、搬送具(4)が取り付けられており、該4つの搬送具(4)を既設トラス(1)の全長に亘って延在する上面に配置し、該上面に沿って移動させることにより、トラスセグメント(30)を搬送する。
【0029】
搬送具(4)は、
図6に示す如く、トラスセグメント(30)の上面に締結固定されるべき平板状のベース部材(41)と、既設トラス(1)の上面(1a)に沿って滑動可能なそり部材(43)と、ベース部材(41)とそり部材(43)の間に介在する伸縮機構(42)とを具えている。
【0030】
図8に示す如く、ベース部材(41)の裏面には、トラスセグメント(30)の上面に接触可能な取付け面(41a)が形成されている。
又、そり部材(43)は、
図7及び
図8に示す如く、伸縮機構(42)の下端部にアングル部材(46)を介して固定されている。
【0031】
そり部材(43)は、既設トラス(1)の上面に対向して、
図7に示す3つの滑動面(43a)(43b)(43b)を有し、中央の主滑動面(43a)の前後に2つの補助滑動面(43b)(43b)が形成されており、両補助滑動面(43b)(43b)はそれぞれ主滑動面(43a)に対して一定の後退角をもって傾斜している。
【0032】
搬送具(4)が既設トラス(1)の上面の平坦な領域を移動する過程では、そり部材(43)の主滑動面(43a)が既設トラス(1)の上面に摺接するが、搬送具(4)が既設トラス(1)の上面の凸部を乗り越える過程では、先ず、そり部材(43)の前方の補助滑動面(43b)が既設トラス(1)の凸部に摺接して、該凸部を乗り越え、その後、主滑動面(43a)が既設トラス(1)の凸部に摺接して、該凸部を乗り越え、最後に後方の補助滑動面(43b)が既設トラス(1)の凸部に摺接して、該凸部を乗り越えることになる。
【0033】
図7及び
図8に示す如く、伸縮機構(42)は、ベース部材(41)の裏面に連結された外筒(421)と、アングル部材(46)の上面に連結された内筒(422)とから構成され、外筒(421)と内筒(422)が筒軸方向に沿って互いに摺動可能に嵌合している。
又、外筒(421)には筒軸方向に長い長孔(48)が開設される一方、内筒(422)にはボルト(47)がねじ込まれ、該ボルト(47)の頭部が長孔(48)に嵌合して、外筒(421)に対する内筒(422)の摺動が案内され、且つ内筒(422)の脱落が防止されている。
【0034】
そして、ベース部材(41)には、第1調整ボルト(44)がねじ込まれ、該第1調整ボルト(44)の先端面が内筒(422)の端面に当接している。
従って、第1調整ボルト(44)をベース部材(41)に対してねじ込むことにより、該第1調整ボルト(44)の先端面が内筒(422)の端面を押圧し、これによって外筒(421)と内筒(422)とが互いに離間方向に相対移動して、伸縮機構(42)が伸長し、その長さAが大きくなる。
【0035】
逆に、第1調整ボルト(44)をねじ戻すことによって、外筒(421)と内筒(422)とが互いに接近方向に相対移動可能となり、トラスセグメント(30)の重量によって伸縮機構(42)が収縮し、その長さAが小さくなる。
【0036】
又、ベース部材(41)には第2調整ボルト(45)がねじ込まれ、ベース部材(41)を貫通した第2調整ボルト(45)の先端部にはナット(49)(49)が螺合している。
第2調整ボルト(45)は、
図9(a)に示す如くベース部材(41)がトラスセグメント(30)の上面に設置された状態で該トラスセグメント(30)を貫通し、その先端部のナット(49)(49)の締め付けによって、ベース部材(41)をトラスセグメント(30)に固定することが出来る。
【0037】
4つの搬送具(4)のベース部材(41)をそれぞれトラスセグメント(30)の前後左右に締結固定した状態で、4つの搬送具(4)のそり部材(43)を既設トラス(1)の上面に沿って滑動させる際には、第1調整ボルト(44)の操作によって
図9(a)に示す伸縮機構(42)の長さAを変化させることにより、既設トラス(1)の上面(1a)とトラスセグメント(30)の上面との間隔Bを調整する。
これによって、トラスセグメント(30)を既設トラス(1)と干渉させることなく、既設トラス(1)の内部空間にてトラスセグメント(30)を搬送することが出来る。
【0038】
トラスセグメント(30)を既設トラス(1)の上面(1a)に沿って所定の位置まで搬送した後、ベース部材(41)に対するトラスセグメント(30)の締結を緩めると共に、
図9(b)に示す第2調整ボルト(45)を操作して、ベース部材(41)に対するねじ込み量を増減させることによって、既設トラス(1)の内部空間にてトラスセグメント(30)を昇降させ、既設トラス(1)の上面(1a)とトラスセグメント(30)の上面との間隔B′を調整する。この際、第1調整ボルト(44)を操作して、既設トラス(1)の上面(1a)とトラスセグメント(30)の上面との間隔B′を調整することも可能である。
【0039】
これによって、トラスセグメント(30)を既設トラス(1)の内部空間にて所定の高さ位置に設定することが出来る。
この結果、トラスセグメント(30)を前方の設置済みのトラスセグメント(30)と連結することが可能となる。
【0040】
上述の如く、搬送対象となるトラスセグメント(30)に4つの搬送具(4)を取り付け、これら4つの搬送具(4)を既設トラス(1)の上面に沿って移動させながら、各トラスセグメント(30)を搬送し、前後のトラスセグメント(30)(30)どうしを互いに連結することにより、
図4に示す如く、既設トラス(1)の内部空間に新設トラス(3)を完成する。
【0041】
最後に、第4工程では、
図5の如く既設トラス(1)から下階側門型揚重装置(2a)及び上階側門型揚重装置(2b)を撤去した後、新設トラス(3)に対して必要な部品や機器(ステップ、手摺り、制御機器等)を取り付けることにより、エスカレータのリニューアルを完了する。
【0042】
図10〜
図16は、下階側門型揚重装置(2a)及び上階側門型揚重装置(2b)を用いて、複数のトラスセグメント(30)を順次、既設トラス(1)の上面に沿って移動させて、新設トラス(3)を完成するまでの一連の搬送及び設置作業を示している。
【0043】
即ち、
図10(a)〜
図11(c)は、上階側水平トラスセグメント(31)の搬送及び設置作業を示し、
図11(c)〜
図12(c)は、上階側屈曲トラスセグメント(32)の搬送及び設置作業を示し、
図13(a)〜(d)は、1つ目の中間トラスセグメント(33)の搬送及び設置作業を示し、
図14(a)〜(c)は、2つ目の中間トラスセグメント(33)の搬送及び設置作業を示し、
図15(a)〜(d)は、下階側屈曲トラスセグメント(34)の設置作業を示し、
図16(a)〜(c)は、下階側水平トラスセグメント(35)の設置作業を示している。
【0044】
ここで、上階側水平トラスセグメント(31)、上階側屈曲トラスセグメント(32)、及び中間トラスセグメント(33)(33)を搬送する場合には、
図17に示す如く、既設トラス(1)に、下階側門型揚重装置(2a)の内側を水平に延びる左右一対のステージ部材(5)(5)を設置する。
【0045】
図18(a)に示す如くステージ部材(5)は、エスカレータのリニューアルを行なう際に敷設される工事用の床面(10)と略同一の高さにて、該床面(10)と既設トラス(1)との間に架設され、該床面(10)から既設トラス(1)の下階側水平部(13)の上を通過して傾斜部(12)に達し、傾斜部(12)と交叉している。
【0046】
搬送の対象となるトラスセグメント(30)は、前後左右4つの台車(50)に載せてステージ部材(5)の上に配置し、前方の搬送具(4)が既設トラス(1)の傾斜部(12)の上面に当接するまで、ステージ部材(5)上を移動させる。
この際、下階側門型揚重装置(2a)を用いる必要はなく、上階側門型揚重装置のチェーンブロック(20)によってトラスセグメント(30)を牽引するだけでよい。
【0047】
次に、
図18(b)に示す如く、下階側門型揚重装置(2a)のチェーンブロック(20)をトラスセグメント(30)の後部に連結した状態で、上階側門型揚重装置(2b)のチェーンブロック(20)によってトラスセグメント(30)を牽引して、前方の搬送具(4)を既設トラス(1)の傾斜部(12)に沿って移動させる。
この結果、トラスセグメント(30)の前部がステージ部材(5)から浮上するので、前方の台車(50)を取り外す。
【0048】
そして、
図19(a)に示す如く、上階側門型揚重装置(2b)のチェーンブロック(20)によってトラスセグメント(30)を更に引き上げ、後方の台車(50)がステージ部材(5)の終端部に達した時点で、
図19(b)に示す如く下階側門型揚重装置(2a)のチェーンブロック(20)を用いて、トラスセグメント(30)を後方の台車(50)から降ろすと共に、後方の搬送具(4)を既設トラス(1)の傾斜部(12)の上面に配置する。その後、後方の台車(50)を撤去する。
【0049】
この結果、前方及び後方の搬送具(4)が既設トラス(1)の傾斜部(12)の上面に配置され、トラスセグメント(30)は、これらの搬送具(4)によって既設トラス(1)の傾斜部(12)上に支持されることになる。
この様にして、
図10(a)〜
図14(c)に示す如く、上階側水平トラスセグメント(31)、上階側屈曲トラスセグメント(32)、及び中間トラスセグメント(33)(33)を次々と搬送し、既設トラス(1)の内部空間に設置していく。
【0050】
その後、ステージ部材(5)(5)を撤去し、
図15(a)〜
図16(c)に示す様に、下階側門型揚重装置(2a)と上階側門型揚重装置(2b)を用いて、下階側屈曲トラスセグメント(34)及び下階側水平トラスセグメント(35)を既設トラス(1)の内部空間に設置する。
【0051】
又、
図10(a)〜
図11(b)に示す様に、上階側水平トラスセグメント(31)の搬送を行なう際には、
図20に示す如く、既設トラス(1)に、既設トラス(1)の傾斜部(12)の上面(1a)(1a)を同一の傾きで斜め上方へ延長する左右一対の延長レール部材(6)(6)を取り付ける。
【0052】
延長レール部材(6)は、基端部が既設トラス(1)の傾斜部(12)に連結された状態で、先端部が既設トラス(1)の上階側水平部(11)上に支持片(60)によって支持されている。
ここで、上階側門型揚重装置(2b)には、前後方向に間隔をおいて4つのチェーンブロック取付部(201)(202)(203)(204)が設けられおり、延長レール部材(6)の先端は、最も後方のチェーンブロック取付部(204)よりも前方へ所定距離Sだけ突出している。
【0053】
図10(d)に示す如く、上階側門型揚重装置(2b)を用いて上階側水平トラスセグメント(31)を既設トラス(1)の上面に沿って移動させた後、
図21に示す如く、上階側水平トラスセグメント(31)を更に延長レール部材(6)の上面(6a)に沿って移動させる。
【0054】
ここで、上階側門型揚重装置(2b)の4つのチェーンブロック取付部(201)(202)(203)(204)にはそれぞれチェーンブロック(20a)(20b)(20c)(20d)が取り付けられている。
そして、最も前方のチェーンブロック(20a)と前方から3つ目のチェーンブロック(20c)にはV字状にワイヤー(205)が掛けられており、該ワイヤー(205)が上階側水平トラスセグメント(31)の前方端部に連結されている。
【0055】
上階側門型揚重装置(2b)のチェーンブロック(20a)(20c)による引き上げによって、上階側水平トラスセグメント(31)は、4つの搬送具(4)が左右一対の延長レール部材(6)の上面(6a)を滑動し、上面(6a)に沿ってスムーズに搬送される。
【0056】
この様にして、
図21の如く、前方の搬送具(4)が延長レール部材(6)の終端部に達すると、上階側水平トラスセグメント(31)の前方端部が、上階側門型揚重装置(2b)の下方位置に侵入することになる。
【0057】
その後、
図22の如く、チェーンブロック(20a)(20c)によって上階側水平トラスセグメント(31)を更に引き上げ、後方の搬送具(4)を延長レール部材(6)上に残した状態で前方の搬送具(4)を延長レール部材(6)から離脱させる。これによって、上階側水平トラスセグメント(31)の大部分が、上階側門型揚重装置(2b)の下方位置まで移動することになる。
【0058】
この状態で、
図23の如く、上階側門型揚重装置(2b)の最も後方のチェーンブロック(20d)のワイヤー(206)を上階側水平トラスセグメント(31)の後方端部に連結し、該チェーンブロック(20d)により上階側水平トラスセグメント(31)を吊り上げて、後方の搬送具(4)を延長レール部材(6)から離脱させる。
そして、上階側水平トラスセグメント(31)を水平姿勢まで回動させ、この状態に保持する。
【0059】
このとき、チェーンブロック(20d)のワイヤー(206)は、チェーンブロック取付部(204)から前方へ向かって上階側水平トラスセグメント(31)まで傾斜して延びているので、上階側水平トラスセグメント(31)に対して後退方向の吊り力を作用させることが出来、これによって、該吊り力とチェーンブロック(20a)(20c)のワイヤー(205)による前進方向の吊り力とをバランスさせることが出来る。
【0060】
従って、上階側水平トラスセグメント(31)が延長レール部材(6)から離脱するとき、チェーンブロック(20a)(20c)のワイヤー(205)とチェーンブロック(20d)のワイヤー(206)の長さを調節することにより、上階側水平トラスセグメント(31)の姿勢を傾斜姿勢から水平姿勢まで徐々に変化させながら、上階側水平トラスセグメント(31)を既設トラス(1)の傾斜部(12)から上階側水平部(11)の上方位置まで安定的に移行させることが出来る。
【0061】
その後、既設トラス(1)から延長レール部材(6)を取り外し、この状態で、上階側門型揚重装置(2b)を用いて上階側水平トラスセグメント(31)を水平姿勢のまま降下させて、既設トラス(1)の上階側水平部(11)の内部に設置する。
尚、上階側水平トラスセグメント(31)を降下させる過程で、搬送具(4)が延長レール部材(6)と干渉しない場合は、延長レール部材(6)の取り外しは、上階側水平トラスセグメント(31)を既設トラス(1)に設置した後に実施することも可能である。
【0062】
新設トラス(3)を構成する各トラスセグメント(30)の設置時には、トラスセグメント(30)の高さ調整を行なった後、該トラスセグメント(30)を前方の設置済みのトラスセグメント(30)と連結すると共に、必要に応じて該トラスセグメント(30)を既設トラス(1)と連結する。
【0063】
そして、トラスセグメント(30)の引き上げ及び設置が終了する度に、又は、トラスセグメント(30)の引き上げ及び搬送が全て終了した後、該トラスセグメント(30)に取り付けられている4つの搬送具(4)を取り外す。
この際、搬送具(4)の伸縮機構(42)を収縮させれば、搬送具(4)は容易に取り外すことが出来る。
【0064】
この様にして、全てのトラスセグメント(30)が互いに連結されることにより、既設トラス(1)の内部空間に新設トラス(3)が完成する。
尚、
図18(a)に示す床面(10)は、エスカレータのリニューアル工事が完了した時点で撤去し、該床面(10)と略同一の高さ位置に、新たな床面を形成する。
【0065】
上記エスカレータのリニューアル工法によれば、トラスセグメント(30)に4つの搬送具(4)を取り付けて、該搬送具(4)のそり部材(43)を既設トラス(1)の上面に沿って滑動させることにより、トラスセグメント(30)を移動させることが出来るので、トラスセグメント(30)の搬送は容易なものとなる。
又、搬送具(4)において、そり部材(43)はベース部材(41)に対して一体的に設けられているので、トラスセグメント(30)の搬送時に大きな負荷が作用したとしても、搬送具(4)が破損する虞は殆どなく、メンテナンスも容易である。
【0066】
更に又、トラスセグメント(30)に搬送具(4)を取り付けたままで、該搬送具(4)によって、トラスセグメント(30)の搬送作業と、搬送後のトラスセグメント(30)の高さ調整を含む設置作業とを実施することが出来るので、搬送作業から設置作業への段取り替えが不要である。
【0067】
然も、新設トラス(3)を構成する上階側水平トラスセグメント(31)、上階側屈曲トラスセグメント(32)、及び中間トラスセグメント(33)(33)を、ステージ部材(5)を用いて床面(10)から既設トラス(1)上へ移行させるので、下階側門型揚重装置(2a)による吊り上げ作業を省略し、若しくは大幅に削減することが出来る。
従って、従来よりも少ない作業工数でリニューアルを完了することが出来る。
【0068】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、搬送具(4)の履体として、そり部材(43)を用いているが、これに限らず、車輪を用いることも可能である。
【0069】
又、上記実施形態では、既設トラス(1)に沿って新設トラス(3)の各トラスセグメント(30)を順次、下から上へ引き上げているが、各トラスセグメント(30)を順次、上から下へ降ろしていく工法を採用することも可能である。
【0070】
この場合、既設トラス(1)の下階側水平部(13)又は傾斜部(12)に設置すべきトラスセグメント(30)を下方へ搬送する過程で、上階側門型揚重装置(2b)を用いて、該トラスセグメント(30)を上階側門型揚重装置(2b)の下方位置にて吊り上げ、延長レール部材(6)の上に設置した後、該トラスセグメント(30)を延長レール部材(6)の上面に沿って移動させ、更に既設トラス(1)の上面に沿って下方へ移動させる。
この場合も同様に、トラスセグメント(30)を既設トラス(1)の上階側水平部(11)から傾斜部(12)へ安定的に移行させることが出来る。
【0071】
更に又、上記実施形態では、工場にて新設トラス(3)を完成させた後、該新設トラス(3)を複数のトラスセグメント(30)に分割し、これらのトラスセグメント(30)をリニューアル工事の現場に搬入することとしているが、新設トラス(3)を構成すべき複数のトラスセグメント(30)を工場にて別々に製造した後、工場ではこれらのトラスセグメント(30)を組み立てることなく、リニューアル工事の現場に搬入することも可能である。