特許第5971244号(P5971244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971244
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ダイレクトブローボトル
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20160804BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20160804BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20160804BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20160804BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20160804BHJP
   B65D 81/26 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   C08L77/06
   C08L101/00
   C08G69/26
   B32B27/34
   B65D1/00 110
   B65D81/26 J
【請求項の数】9
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2013-522778(P2013-522778)
(86)(22)【出願日】2012年6月19日
(86)【国際出願番号】JP2012065649
(87)【国際公開番号】WO2013002075
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年4月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-142177(P2011-142177)
(32)【優先日】2011年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】小田 尚史
(72)【発明者】
【氏名】大滝 良二
(72)【発明者】
【氏名】石井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】荒川 翔太
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−101415(JP,A)
【文献】 特開2005−112990(JP,A)
【文献】 特開平08−319417(JP,A)
【文献】 1.I.Arvanitoyannis et al.,Polymer,1995年,Vol.36,No.15,2957−2967
【文献】 I.Arvanitoyannis,Studies in PolymerScience 12(Biodegradable Plastics andPolymers),1994年,562−569
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L77、C08G69、B29C49/04、B32B27/34、B65D1/00、81/26、C08J5
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド化合物(A)及び樹脂(B)を含有する樹脂組成物から形成される層を含むダイレクトブローボトルであって、
前記ポリアミド化合物(A)が、
下記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位及び下記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位からなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミン単位を合計で50モル%以上含むジアミン単位25〜50モル%と、
下記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び/又は下記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を合計で50モル%以上含むジカルボン酸単位25〜50モル%と、
下記一般式(III)で表される構成単位0.1〜50モル%と
を含有する、ダイレクトブローボトル。
【化1】

[前記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表す。前記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。前記一般式(III)中、Rは、水酸基で置換されたアルキル基、アルコキシ基で置換されたアルキル基、アリール基で置換されたアルキル基、メルカプトメチル基、メチルスルファニルエチル基もしくは無置換のアルキル基又はアルキル基で置換されたアリール基もしくは無置換のアリール基を表す。]
【請求項2】
前記一般式(III)におけるRが、水酸基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、アリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、メルカプトメチル基、メチルスルファニルエチル基もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基又はアルキル基で置換された炭素数6〜10のアリール基もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基である、請求項1に記載のダイレクトブローボトル。
【請求項3】
前記ジアミン単位が、メタキシリレンジアミン単位を50モル%以上含む、請求項1又は2に記載のダイレクトブローボトル。
【請求項4】
前記直鎖脂肪族ジカルボン酸単位が、アジピン酸単位、セバシン酸単位、及び1,12−ドデカンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で50モル%以上含む、請求項1〜3のいずれかに記載のダイレクトブローボトル。
【請求項5】
前記芳香族ジカルボン酸単位が、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1つを合計で50モル%以上含む、請求項1〜4のいずれかに記載のダイレクトブローボトル。
【請求項6】
前記ポリアミド化合物(A)が更に、下記一般式(X)で表されるω−アミノカルボン酸単位を、ポリアミド化合物(A)の全構成単位中0.1〜49.9モル%含有する、請求項1〜5のいずれかに記載のダイレクトブローボトル。
【化2】

[前記一般式(X)中、pは2〜18の整数を表す。]
【請求項7】
前記ω−アミノカルボン酸単位が、6−アミノヘキサン酸単位及び/又は12−アミノドデカン酸単位を合計で50モル%以上含む、請求項6に記載のダイレクトブローボトル。
【請求項8】
前記ポリアミド化合物(A)の相対粘度が1.8以上4.2以下であり、かつ
前記ポリアミド化合物(A)/前記樹脂(B)の質量比が、5/95〜95/5である、請求項1〜7のいずれかに記載のダイレクトブローボトル。
【請求項9】
前記ポリアミド化合物(A)の相対粘度が1.01以上1.8未満であり、かつ
前記ポリアミド化合物(A)/前記樹脂(B)の質量比が、5/95〜50/50である、請求項1〜7のいずれかに記載のダイレクトブローボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素バリア性能及び酸素吸収性能を有するダイレクトブローボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
キシリレンジアミンと脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応から得られるポリアミド、例えばメタキシリレンジアミンとアジピン酸とから得られるポリアミド(以下ナイロンMXD6という)は、高強度、高弾性率、並びに酸素、炭酸ガス、臭気及びフレーバー等のガス状物質に対する低い透過性を示すことから、包装材料分野におけるガスバリア材料として広く利用されている。ナイロンMXD6は、その他のガスバリア性樹脂と比べて溶融時の熱安定性が良好であることから、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと省略する)、ナイロン6及びポリプロピレン等の熱可塑性樹脂との共押出や共射出成形等が可能である。そのため、ナイロンMXD6は、多層構造物を構成するガスバリア層として積極的に利用されている。
【0003】
近年、ナイロンMXD6に少量の遷移金属化合物を添加、混合して、ナイロンMXD6に酸素吸収機能を付与し、これを容器や包装材料を構成する酸素バリア材料として利用することで、容器外部から透過してくる酸素をナイロンMXD6が吸収すると共に容器内部に残存する酸素をもナイロンMXD6が吸収することにより、従来の酸素バリア性熱可塑性樹脂を利用した容器以上に内容物の保存性を高める方法が実用化されつつある(例えば特許文献1及び2を参照)。
【0004】
一方、容器内の酸素を除去するため、酸素吸収剤の使用は古くから行われている。例えば、特許文献3及び4には、鉄粉等の酸素吸収剤を樹脂中に分散させた酸素吸収多層体および酸素吸収フィルムが記載されている。特許文献5には、ポリブタジエン等のエチレン性不飽和化合物及びコバルト等の遷移金属触媒を含む酸素掃除去層と、ポリアミド等の酸素遮断層とを有する製品が記載されている。
また、特許文献6には、酸素バリア材料として、ポリエステル樹脂層とポリグリコール酸層を積層した、ダイレクトブロー成形した多層ボトルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−341747号公報
【特許文献2】特許第2991437号公報
【特許文献3】特開平2−72851号公報
【特許文献4】特開平4−90848号公報
【特許文献5】特開平5−115776号公報
【特許文献6】特開2003−266527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鉄粉等の酸素吸収剤を樹脂中に分散させた酸素吸収多層体および容器は、鉄粉等の酸素吸収剤により樹脂が着色して不透明であるため、透明性が要求される包装の分野には使用できないという用途上の制約がある。
一方、コバルト等の遷移金属を含有する樹脂組成物は、透明性が必要な包装容器にも適用可能である利点を有するが、遷移金属触媒によって樹脂組成物が着色されるため好ましくない。また、これらの樹脂組成物では、遷移金属触媒によって、酸素を吸収することで樹脂が酸化される。具体的には、ナイロンMXD6では、遷移金属原子によるポリアミド樹脂のアリーレン基に隣接するメチレン鎖から水素原子の引き抜きに起因するラジカルの発生、前記ラジカルに酸素分子が付加することによるパーオキシラジカルの発生、パーオキシラジカルによる水素原子の引き抜き等の各反応により起こるものと考えられている。このような機構による酸素吸収により樹脂が酸化されるため、分解物が発生して容器内容物に好ましくない臭気が発生したり、樹脂の酸化劣化により容器の色調や強度等が損なわれるという問題がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、酸素バリア性能を発現するとともに、遷移金属を含有せずに酸素吸収性能を発現することができ、内容物の酸化劣化を抑制できるボトルであって、内容物の風味を損なわず、長期の保存においても酸素吸収バリア層の強度低下がないボトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のダイレクトブローボトルを提供する。
ポリアミド化合物(A)及び樹脂(B)を含有する樹脂組成物から形成される層を含むダイレクトブローボトルであって、
前記ポリアミド化合物(A)が、
下記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位、下記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位、及び下記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位からなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミン単位を合計で50モル%以上含むジアミン単位25〜50モル%と、
下記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び/又は下記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を合計で50モル%以上含むジカルボン酸単位25〜50モル%と、
下記一般式(III)で表される構成単位0.1〜50モル%と
を含有する、ダイレクトブローボトル。
【化1】
[前記一般式(I−3)中、mは2〜18の整数を表す。前記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表す。前記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。前記一般式(III)中、Rは置換もしくは無置換のアルキル基又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。]
【発明の効果】
【0009】
本発明のダイレクトブローボトルは、酸素バリア性能を発現するとともに、遷移金属を含有せずに酸素吸収性能を発現することができ、かつ、酸素吸収が進行するにつれての強度低下が極めて小さい。したがって、本発明のダイレクトブローボトルは、内容物の酸化劣化の抑制に優れるとともに、異臭や風味変化の原因となるような物質の発生がほとんど無く、風味保持性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<<ダイレクトブローボトル>>
本発明のダイレクトブローボトルは、ポリアミド化合物(A)及び樹脂(B)を含有する樹脂組成物から形成される層(以後、「酸素吸収バリア層」と称することもある)を少なくとも含むボトルである。本発明のボトルは、単層ボトルでもよく、必要に応じて、更に任意の層を含む多層ボトルでもよい。
本発明のダイレクトブローボトルが多層ボトルの場合、その層構成は特に限定されず、層の数や種類は特に限定されない。例えば、前記酸素吸収バリア層を層(X)、他の樹脂層を層(Y)とした場合、1層の層(X)及び1層の層(Y)からなるX/Y構成、Y/X構成であってもよく、1層の層(X)及び2層の層(Y)からなるY/X/Yの3層構成であってもよい。また、1層の層(X)並びに層(Y1)及び層(Y2)の2種4層の層(Y)からなるY1/Y2/X/Y2/Y1の5層構成であってもよい。さらに、本発明のダイレクトブローボトルは、必要に応じて接着層(AD)等の任意の層を含んでもよく、例えば、Y1/AD/Y2/X/Y2/AD/Y1の7層構成であってもよい。
また、多層構成の場合、酸素吸収バリア層の位置は、内層に近い方が、トリガーとなる内容物の水分により、酸素吸収速度が高まり、早期に酸素吸収を開始する。さらに、酸素吸収バリア層の外側に、高バリアの樹脂層を設けることで、容器外側からの酸素を遮断するとともに、容器内に残存する酸素を酸素吸収バリア層が効率良く、吸収することができる。
【0011】
1.ポリアミド化合物(A)及び樹脂(B)を含有する樹脂組成物から形成される層(酸素吸収バリア層)
本発明において、酸素吸収バリア層は樹脂組成物から形成されるものであり、当該樹脂組成物が、従来公知の樹脂(以後「樹脂(B)」と呼ぶこともある)に加えて、後述する特定のポリアミド化合物(以後「ポリアミド化合物(A)」と呼ぶこともある)を含有することで酸素吸収性能及び酸素バリア性能を発揮することができる。
本発明において、樹脂組成物に含有されるポリアミド化合物(A)は1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。また、樹脂組成物に含有される樹脂(B)は、1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0012】
本発明に用いられる樹脂組成物中におけるポリアミド化合物(A)と樹脂(B)の質量比の好適な範囲は、ポリアミド化合物(A)の相対粘度に応じて異なる。
ポリアミド化合物(A)の相対粘度が1.8以上4.2以下である場合、ポリアミド化合物(A)/樹脂(B)の質量比は、5/95〜95/5の範囲から選択することが好ましい。酸素吸収性能及び酸素バリア性能の観点からは、ポリアミド化合物(A)と樹脂(B)の合計100質量部に対して、ポリアミド化合物(A)の含有量が10質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。
ポリアミド化合物(A)の相対粘度が1.01以上1.8未満である場合、成形加工性の観点から樹脂(B)を比較的多量に含有しておくことが望ましく、ポリアミド化合物(A)/樹脂(B)の質量比は、5/95〜50/50の範囲から選択することが好ましい。酸素吸収性能及び酸素バリア性能の観点からは、ポリアミド化合物(A)と樹脂(B)の合計100質量部に対して、ポリアミド化合物(A)の含有量が10質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。
【0013】
本発明に用いられる樹脂組成物は、ポリアミド化合物(A)及び樹脂(B)に加えて、所望する性能等に応じて、後述する添加剤(以後“添加剤(C)”と呼ぶこともある)を含んでいてもよいが、樹脂組成物中のポリアミド化合物(A)及び樹脂(B)の合計の含有量は、成形加工性や酸素吸収性能、酸素バリア性能の観点から90質量%〜100質量%であることが好ましく、95質量%〜100質量%であることがより好ましい。
酸素吸収バリア層の厚みは、酸素吸収性能及び酸素バリア性能を高めつつ、ダイレクトブローボトルの加工性を確保するという観点から、2〜100μmとすることが好ましく、より好ましくは5〜90μmであり、更に好ましくは10〜80μmである。
【0014】
1−1.ポリアミド化合物(A)
<ポリアミド化合物(A)の構成>
本発明において、ポリアミド化合物(A)は、下記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位、下記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位、及び下記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位からなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミン単位を合計で50モル%以上含むジアミン単位25〜50モル%と、下記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び/又は下記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を合計で50モル%以上含むジカルボン酸単位25〜50モル%と、3級水素含有カルボン酸単位(好ましくは下記一般式(III)で表される構成単位)0.1〜50モル%とを含有する。
【0015】
【化2】
【0016】
[前記一般式(I−3)中、mは2〜18の整数を表す。前記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表す。前記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。前記一般式(III)中、Rは置換もしくは無置換のアルキル基又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。]
ただし、前記ジアミン単位、前記ジカルボン酸単位、前記3級水素含有カルボン酸単位の合計は100モル%を超えないものとする。ポリアミド化合物(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記以外の構成単位を更に含んでいてもよい。
【0017】
ポリアミド化合物(A)において、3級水素含有カルボン酸単位の含有量は0.1〜50モル%である。3級水素含有カルボン酸単位の含有量が0.1モル%未満では十分な酸素吸収性能を発現しない。一方、3級水素含有カルボン酸単位の含有量が50モル%を超えると、3級水素含有量が多すぎるため、ポリアミド化合物(A)のガスバリア性や機械物性等の物性が低下し、特に3級水素含有カルボン酸がアミノ酸である場合は、ペプチド結合が連続するため耐熱性が十分でなくなるだけでなく、アミノ酸の2量体からなる環状物ができ、重合を阻害する。3級水素含有カルボン酸単位の含有量は、酸素吸収性能やポリアミド化合物(A)の性状の観点から、好ましくは0.2モル%以上、より好ましくは1モル%以上であり、また、好ましくは40モル%以下であり、より好ましくは30モル%以下である。
【0018】
ポリアミド化合物(A)において、ジアミン単位の含有量は25〜50モル%であり、酸素吸収性能やポリマー性状の観点から、好ましくは30〜50モル%である。同様に、ポリアミド化合物(A)において、ジカルボン酸単位の含有量は25〜50モル%であり、好ましくは30〜50モル%である。
ジアミン単位とジカルボン酸単位との含有量の割合は、重合反応の観点から、ほぼ同量であることが好ましく、ジカルボン酸単位の含有量がジアミン単位の含有量の±2モル%であることがより好ましい。ジカルボン酸単位の含有量がジアミン単位の含有量の±2モル%の範囲を超えると、ポリアミド化合物(A)の重合度が上がりにくくなるため重合度を上げるのに多くの時間を要し、熱劣化が生じやすくなる。
【0019】
[ジアミン単位]
ポリアミド化合物(A)中のジアミン単位は、前記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位、前記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位、及び前記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位からなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミン単位を、ジアミン単位中に合計で50モル%以上含み、当該含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0020】
前記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位を構成しうる化合物としては、オルトキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、及びパラキシリレンジアミンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
前記式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位を構成しうる化合物としては、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等のビス(アミノメチル)シクロヘキサン類が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ビス(アミノメチル)シクロヘキサン類は、構造異性体を持つが、cis体比率を高くすることで、結晶性が高く、良好な成形性を得られる。一方、cis体比率を低くすれば、結晶性が低い、透明なものが得られる。したがって、結晶性を高くしたい場合は、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン類におけるcis体含有比率を70モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上とする。一方、結晶性を低くしたい場合は、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン類におけるcis体含有比率を50モル%以下とすることが好ましく、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下とする。
【0022】
前記一般式(I−3)中、mは2〜18の整数を表し、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜14、更に好ましくは6〜12である。
前記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位を構成しうる化合物としては、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンを例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンが好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
ポリアミド化合物(A)中のジアミン単位としては、ポリアミド化合物(A)に優れたガスバリア性を付与することに加え、透明性や色調の向上や、汎用的な熱可塑性樹脂の成形性を容易にする観点からは、前記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位及び/又は前記一般式(I−2)で表される脂環族ジアミン単位を含むことが好ましく、ポリアミド化合物(A)に適度な結晶性を付与する観点からは、前記一般式(I−3)で表される直鎖脂肪族ジアミン単位を含むことが好ましい。特に、酸素吸収性能やポリアミド化合物(A)の性状の観点からは、前記一般式(I−1)で表される芳香族ジアミン単位を含むことが好ましい。
【0024】
ポリアミド化合物(A)中のジアミン単位は、ポリアミド化合物(A)に優れたガスバリア性を発現させることに加え、汎用的な熱可塑性樹脂の成形性を容易にする観点から、メタキシリレンジアミン単位を50モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0025】
前記一般式(I−1)〜(I−3)のいずれかで表されるジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる化合物としては、パラフェニレンジアミン等の芳香族ジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン等の脂環族ジアミン、N−メチルエチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等の脂肪族ジアミン、ハンツマン社製のジェファーミンやエラスタミン(いずれも商品名)に代表されるエーテル結合を有するポリエーテル系ジアミン等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
[ジカルボン酸単位]
ポリアミド化合物(A)中のジカルボン酸単位は、重合時の反応性、並びにポリアミド化合物(A)の結晶性及び成形性の観点から、前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位及び/又は前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を、ジカルボン酸単位に合計で50モル%以上含み、当該含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0027】
前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、ポリアミド化合物(A)に適度なガラス転移温度や結晶性を付与することに加え、包装材料や包装容器として必要な柔軟性を付与できる点で好ましい。
前記一般式(II−1)中、nは2〜18の整数を表し、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜8である。
前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
前記一般式(II−1)で表される直鎖脂肪族ジカルボン酸単位の種類は用途に応じて適宜決定される。ポリアミド化合物(A)中の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、ポリアミド化合物(A)に優れたガスバリア性を付与することに加え、包装材料や包装容器の加熱殺菌後の耐熱性を保持する観点から、アジピン酸単位、セバシン酸単位、及び1,12−ドデカンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1つを、直鎖脂肪族ジカルボン酸単位中に合計で50モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0029】
ポリアミド化合物(A)中の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、ポリアミド化合物(A)のガスバリア性及び適切なガラス転移温度や融点等の熱的性質の観点からは、アジピン酸単位を直鎖脂肪族ジカルボン酸単位中に50モル%以上含むことが好ましい。また、ポリアミド化合物(A)中の直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、ポリアミド化合物(A)に適度なガスバリア性及び成形加工適性を付与する観点からは、セバシン酸単位を直鎖脂肪族ジカルボン酸単位中に50モル%以上含むことが好ましく、ポリアミド化合物(A)が低吸水性、耐候性、耐熱性を要求される用途に用いられる場合は、1,12−ドデカンジカルボン酸単位を直鎖脂肪族ジカルボン酸単位中に50モル%以上含むことが好ましい。
【0030】
前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位は、ポリアミド化合物(A)に更なるガスバリア性を付与することに加え、包装材料や包装容器の成形加工性を容易にすることができる点で好ましい。
前記一般式(II−2)中、Arはアリーレン基を表す。前記アリーレン基は、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基であり、例えば、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
前記一般式(II−2)で表される芳香族ジカルボン酸単位の種類は用途に応じて適宜決定される。ポリアミド化合物(A)中の芳香族ジカルボン酸単位は、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも1つを、芳香族ジカルボン酸単位中に合計で50モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。また、これらの中でもイソフタル酸及び/又はテレフタル酸を芳香族ジカルボン酸単位中に含むことが好ましい。イソフタル酸単位とテレフタル酸単位との含有比(イソフタル酸単位/テレフタル酸単位)は、特に制限はなく、用途に応じて適宜決定される。例えば、適度なガラス転移温度や結晶性を下げる観点からは、両単位の合計を100としたとき、モル比で好ましくは0/100〜100/0、より好ましくは0/100〜60/40、更に好ましくは0/100〜40/60、更に好ましくは0/100〜30/70である。
【0032】
ポリアミド化合物(A)中のジカルボン酸単位において、前記直鎖脂肪族ジカルボン酸単位と前記芳香族ジカルボン酸単位との含有比(直鎖脂肪族ジカルボン酸単位/芳香族ジカルボン酸単位)は、特に制限はなく、用途に応じて適宜決定される。例えば、ポリアミド化合物(A)のガラス転移温度を上げて、ポリアミド化合物(A)の結晶性を低下させることを目的とした場合、直鎖脂肪族ジカルボン酸単位/芳香族ジカルボン酸単位は、両単位の合計を100としたとき、モル比で好ましくは0/100〜60/40、より好ましくは0/100〜40/60、更に好ましくは0/100〜30/70である。また、ポリアミド化合物(A)のガラス転移温度を下げてポリアミド化合物(A)に柔軟性を付与することを目的とした場合、直鎖脂肪族ジカルボン酸単位/芳香族ジカルボン酸単位は、両単位の合計を100としたとき、モル比で好ましくは40/60〜100/0、より好ましくは60/40〜100/0、更に好ましくは70/30〜100/0である。
【0033】
前記一般式(II−1)又は(II−2)で表されるジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、1,3−ベンゼン二酢酸、1,4−ベンゼン二酢酸等のジカルボン酸を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
[3級水素含有カルボン酸単位]
本発明において、ポリアミド化合物(A)における3級水素含有カルボン酸単位は、ポリアミド化合物(A)の重合の観点から、アミノ基及びカルボキシル基を少なくとも1つずつ有するか、又はカルボキシル基を2つ以上有する。具体例としては、下記一般式(III)、(IV)又は(V)のいずれかで表される構成単位が挙げられる。
【0035】
【化3】
【0036】
[前記一般式(III)〜(V)中、R、R1及びR2はそれぞれ置換基を表し、A1〜A3はそれぞれ単結合又は2価の連結基を表す。ただし、前記一般式(IV)においてA1及びA2がともに単結合である場合を除く。]
【0037】
本発明において、ポリアミド化合物(A)は、3級水素含有カルボン酸単位を含む。このような3級水素含有カルボン酸単位を共重合成分として含有することで、ポリアミド化合物(A)は、遷移金属を含有せずとも優れた酸素吸収性能を発揮することができる。
【0038】
本発明において、3級水素含有カルボン酸単位を有するポリアミド化合物(A)が良好な酸素吸収性能を示す機構についてはまだ明らかにされていないが以下のように推定される。3級水素含有カルボン酸単位を構成しうる化合物は、同一炭素原子上に電子求引性基と電子供与性基とが結合しているため、その炭素原子上に存在する不対電子がエネルギー的に安定化されるキャプトデーティブ(Captodative)効果と呼ばれる現象によって非常に安定なラジカルが生成すると考えられる。すなわち、カルボキシル基は電子求引性基であり、それに隣接する3級水素が結合している炭素が電子不足(δ+)になるため、当該3級水素も電子不足(δ+)となり、プロトンとして解離してラジカルを形成する。ここに酸素及び水が存在したときに、酸素がこのラジカルと反応することで、酸素吸収性能を示すと考えられる。また、高湿度かつ高温の環境であるほど、反応性は高いことが判明している。
【0039】
前記一般式(III)〜(V)中、R、R1及びR2はそれぞれ置換基を表す。本発明におけるR、R1及びR2で表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(1〜15個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、アルキニル基(2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(6〜16個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、複素環基(5員環又は6員環の芳香族又は非芳香族の複素環化合物から1個の水素原子を取り除くことによって得られる、1〜12個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する一価の基、例えば1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、2−フリル基)、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルコキシ基(1〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状アルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基)、アリールオキシ基(6〜12個、好ましくは6〜8個の炭素原子を有するアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基)、アシル基(ホルミル基、2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するアルキルカルボニル基、或いは7〜12個、好ましくは7〜9個の炭素原子を有するアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アミノ基(アミノ基、1〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルキルアミノ基、6〜12個、好ましくは6〜8個の炭素原子を有するアニリノ基、或いは1〜12個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する複素環アミノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、アニリノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(1〜10個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基)、アリールチオ基(6〜12個、好ましくは6〜8個の炭素原子を有するアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基)、複素環チオ基(2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する複素環チオ基、例えば2−ベンゾチアゾリルチオ基)、イミド基(2〜10個、好ましくは4〜8個の炭素原子を有するイミド基、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)等が挙げられる。
【0040】
これらの官能基の中で水素原子を有するものは更に上記の基で置換されていてもよく、例えば、水酸基で置換されたアルキル基(例えば、ヒドロキシエチル基)、アルコキシ基で置換されたアルキル基(例えば、メトキシエチル基)、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、ベンジル基)、アルキル基で置換されたアリール基(例えば、p−トリル基)、アルキル基で置換されたアリールオキシ基(例えば、2−メチルフェノキシ基)等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、官能基が更に置換されている場合、上述した炭素数には、更なる置換基の炭素数は含まれないものとする。例えば、ベンジル基は、フェニル基で置換された炭素数1のアルキル基と見なし、フェニル基で置換された炭素数7のアルキル基とは見なさない。以降の炭素数に記載についても、特に断りが無い限り、同様に解するものとする。
【0041】
前記一般式(IV)及び(V)中、A1〜A3はそれぞれ単結合又は2価の連結基を表す。ただし、前記一般式(IV)においてA1及びA2がともに単結合である場合を除く。2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐もしくは環状のアルキレン基(炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基)、アラルキレン基(炭素数7〜30、好ましくは炭素数7〜13のアラルキレン基、例えばベンジリデン基)、アリーレン基(炭素数6〜30、好ましくは炭素数6〜15のアリーレン基、例えば、フェニレン基)等が挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよく、当該置換基としては、R、R1及びR2で表される置換基として上記に例示した官能基が挙げられる。例えば、アルキル基で置換されたアリーレン基(例えば、キシリレン基)等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本発明において、ポリアミド化合物(A)は、前記一般式(III)、(IV)又は(V)のいずれかで表される構成単位の少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの中でも、原料の入手性や酸素吸収性向上の観点から、α炭素(カルボキシル基に隣接する炭素原子)に3級水素を有するカルボン酸単位がより好ましく、前記一般式(III)で表される構成単位が特に好ましい。
【0043】
前記一般式(III)中におけるRについては上述した通りであるが、その中でも置換もしくは無置換のアルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基がより好ましく、置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基及び置換もしくは無置換の炭素数6〜10のアリール基が更に好ましく、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基及び置換もしくは無置換のフェニル基が特に好ましい。
好ましいRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、メルカプトメチル基、メチルスルファニルエチル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、4−ヒドロキシベンジル基等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、メチル基、エチル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、及びベンジル基がより好ましい。
【0044】
前記一般式(III)で表される構成単位を構成しうる化合物としては、アラニン、2−アミノ酪酸、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシン、tert−ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、2−フェニルグリシン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン等のα−アミノ酸を例示できるが、これらに限定されるものではない。
また、前記一般式(IV)で表される構成単位を構成しうる化合物としては、3−アミノ酪酸等のβ−アミノ酸を例示でき、前記一般式(V)で表される構成単位を構成しうる化合物としては、メチルマロン酸、メチルコハク酸、リンゴ酸、酒石酸等のジカルボン酸を例示できるが、これらに限定されるものではない。
これらはD体、L体、ラセミ体のいずれであってもよく、アロ体であってもよい。また、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
これらの中でも、原料の入手性や酸素吸収性向上等の観点から、α炭素に3級水素を有するα−アミノ酸が特に好ましい。また、α−アミノ酸の中でも、供給しやすさ、安価な価格、重合しやすさ、ポリマーの黄色度(YI)の低さといった点から、アラニンが最も好ましい。アラニンは、分子量が比較的低く、ポリアミド化合物(A)1g当たりの共重合率が高いため、ポリアミド化合物(A)1g当たりの酸素吸収性能は良好である。
【0046】
また、前記3級水素含有カルボン酸単位を構成しうる化合物の純度は、重合速度の遅延等の重合に及ぼす影響やポリマーの黄色度等の品質面への影響の観点から、95%以上であることが好ましく、より好ましくは98.5%以上、更に好ましくは99%以上である。また、不純物として含まれる硫酸イオンやアンモニウムイオンは、500ppm以下が好ましく、より好ましくは200ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。
【0047】
[ω−アミノカルボン酸単位]
本発明において、ポリアミド化合物(A)は、ポリアミド化合物(A)に柔軟性等が必要な場合には、前記ジアミン単位、前記ジカルボン酸単位及び前記3級水素含有カルボン酸単位に加えて、下記一般式(X)で表されるω−アミノカルボン酸単位を更に含有してもよい。
【0048】
【化4】
[前記一般式(X)中、pは2〜18の整数を表す。]
前記ω−アミノカルボン酸単位の含有量は、ポリアミド化合物(A)の全構成単位中、好ましくは0.1〜49.9モル%、より好ましくは3〜40モル%、更に好ましくは5〜35モル%である。ただし、前記のジアミン単位、ジカルボン酸単位、3級水素含有カルボン酸単位、及びω−アミノカルボン酸単位の合計は100モル%を超えないものとする。
前記一般式(X)中、pは2〜18の整数を表し、好ましくは3〜16、より好ましくは4〜14、更に好ましくは5〜12である。
【0049】
前記一般式(X)で表されるω−アミノカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、炭素数5〜19のω−アミノカルボン酸や炭素数5〜19のラクタムが挙げられる。炭素数5〜19のω−アミノカルボン酸としては、6−アミノヘキサン酸及び12−アミノドデカン酸等が挙げられ、炭素数5〜19のラクタムとしては、ε−カプロラクタム及びラウロラクタムを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
前記ω−アミノカルボン酸単位は、6−アミノヘキサン酸単位及び/又は12−アミノドデカン酸単位を、ω−アミノカルボン酸単位中に合計で50モル%以上含むことが好ましく、当該含有量は、より好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
【0051】
[ポリアミド化合物(A)の重合度]
ポリアミド化合物(A)の重合度については、相対粘度が使われる。ポリアミド化合物(A)の相対粘度は、成形品の強度や外観、成形加工性の観点から、特に限定されるわけではないが、好ましくは1.01〜4.2である。
上述したように、ポリアミド化合物(A)/樹脂(B)の質量比の好適な範囲は、ポリアミド化合物(A)の相対粘度に応じて異なり、ポリアミド化合物(A)の相対粘度が1.8以上4.2以下である場合、ポリアミド化合物(A)/樹脂(B)の質量比は、5/95〜95/5の範囲から選択することが好ましく、ポリアミド化合物(A)の相対粘度が1.01以上1.8未満である場合、ポリアミド化合物(A)/樹脂(B)の質量比は、5/95〜50/50の範囲から選択することが好ましい。
なお、ここでいう相対粘度は、ポリアミド化合物(A)1gを96%硫酸100mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t0)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t0
【0052】
[末端アミノ基濃度]
ポリアミド化合物(A)の酸素吸収速度、及び酸素吸収によるポリアミド化合物(A)の酸化劣化は、ポリアミド化合物(A)の末端アミノ基濃度を変えることで制御することが可能である。本発明では、酸素吸収速度と酸化劣化のバランスの観点から、ポリアミド化合物(A)の末端アミノ基濃度は5〜150μeq/gの範囲が好ましく、より好ましくは10〜100μeq/g、更に好ましくは15〜80μeq/gである。
【0053】
<ポリアミド化合物(A)の製造方法>
ポリアミド化合物(A)は、前記ジアミン単位を構成しうるジアミン成分と、前記ジカルボン酸単位を構成しうるジカルボン酸成分と、前記3級水素含有カルボン酸単位を構成しうる3級水素含有カルボン酸成分と、必要により前記ω−アミノカルボン酸単位を構成しうるω−アミノカルボン酸成分とを重縮合させることで製造することができ、重縮合条件等を調整することで重合度を制御することができる。重縮合時に分子量調整剤として少量のモノアミンやモノカルボン酸を加えてもよい。また、重縮合反応を抑制して所望の重合度とするために、ポリアミド化合物(A)を構成するジアミン成分とカルボン酸成分との比率(モル比)を1からずらして調整してもよい。
【0054】
ポリアミド化合物(A)の重縮合方法としては、反応押出法、加圧塩法、常圧滴下法、加圧滴下法等が挙げられるが、これらに限定されない。また、反応温度は出来る限り低い方が、ポリアミド化合物(A)の黄色化やゲル化を抑制でき、安定した性状のポリアミド化合物(A)が得られる。
【0055】
[反応押出法]
反応押出法では、ジアミン成分及びジカルボン酸成分からなるポリアミド(ポリアミド化合物(A)の前駆体に相当するポリアミド)又はジアミン成分、ジカルボン酸成分及びω−アミノカルボン酸成分からなるポリアミド(ポリアミド化合物(A)の前駆体に相当するポリアミド)と、3級水素含有カルボン酸成分とを押出機で溶融混練して反応させる方法である。3級水素含有カルボン酸成分をアミド交換反応により、ポリアミドの骨格中に組み込む方法であり、十分に反応させるためには、反応押出に適したスクリューを用い、L/Dの大きい2軸押出機を用いるのが好ましい。少量の3級水素含有カルボン酸単位を含むポリアミド化合物(A)を製造する場合に、簡便な方法であり好適である。
【0056】
[加圧塩法]
加圧塩法では、ナイロン塩を原料として加圧下にて溶融重縮合を行う方法である。具体的には、ジアミン成分と、ジカルボン酸成分と、3級水素含有カルボン酸成分と、必要に応じてω−アミノカルボン酸成分とからなるナイロン塩水溶液を調製した後、該水溶液を濃縮し、次いで加圧下にて昇温し、縮合水を除去しながら重縮合させる。缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド化合物(A)の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、−0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド化合物(A)を回収する。
加圧塩法は、揮発性成分をモノマーとして使用する場合に有用であり、3級水素含有カルボン酸成分の共重合率が高い場合には好ましい重縮合方法である、特に、3級水素含有カルボン酸単位をポリアミド化合物(A)の全構成単位中に15モル%以上含むポリアミド化合物(A)を製造する場合に、好適である。加圧塩法を用いることで、3級水素含有カルボン酸成分の蒸散を防ぎ、更には、3級水素含有カルボン酸成分同士の重縮合を抑制でき、重縮合反応をスムーズに進めることが可能であるため、性状に優れたポリアミド化合物(A)が得られる。
【0057】
[常圧滴下法]
常圧滴下法では、常圧下にて、ジカルボン酸成分と、3級水素含有カルボン酸成分と、必要に応じてω−アミノカルボン酸成分とを加熱溶融した混合物に、ジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。なお、生成するポリアミド化合物(A)の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。
常圧滴下法は、前記加圧塩法と比較すると、塩を溶解するための水を使用しないため、バッチ当たりの収量が大きく、また、原料成分の気化・凝縮を必要としないため、反応速度の低下が少なく、工程時間を短縮できる。
【0058】
[加圧滴下法]
加圧滴下法では、まず、重縮合缶にジカルボン酸成分と、3級水素含有カルボン酸成分と、必要に応じてω−アミノカルボン酸成分とを仕込み、各成分を撹拌して溶融混合し混合物を調製する。次いで、缶内を好ましくは0.3〜0.4MPaG程度に加圧しながら混合物にジアミン成分を連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。この際、生成するポリアミド化合物(A)の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。設定モル比に達したらジアミン成分の滴下を終了し、缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド化合物(A)の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、−0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド化合物(A)を回収する。
加圧滴下法は、加圧塩法と同様に、揮発性成分をモノマーとして使用する場合に有用であり、3級水素含有カルボン酸成分の共重合率が高い場合には好ましい重縮合方法である。特に、3級水素含有カルボン酸単位をポリアミド化合物(A)の全構成単位中に15モル%以上含むポリアミド化合物(A)を製造する場合に、好適である。加圧滴下法を用いることで3級水素含有カルボン酸成分の蒸散を防ぎ、更には、3級水素含有カルボン酸成分同士の重縮合を抑制でき、重縮合反応をスムーズに進めることが可能であるため、性状に優れたポリアミド化合物(A)が得られる。更に、加圧滴下法は、加圧塩法に比べて、塩を溶解するための水を使用しないため、バッチ当たりの収量が大きく、常圧滴下法と同様に反応時間を短くできることから、ゲル化等を抑制し、黄色度が低いポリアミド化合物(A)を得ることができる。
【0059】
[重合度を高める工程]
上記重縮合方法で製造されたポリアミド化合物(A)は、そのまま使用することもできるが、更に重合度を高めるための工程を経てもよい。更に重合度を高める工程としては、押出機内での反応押出や固相重合等が挙げられる。固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置およびナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。特にポリアミド化合物(A)の固相重合を行う場合は、上述の装置の中で回転ドラム式の加熱装置が、系内を密閉化でき、着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
【0060】
[リン原子含有化合物、アルカリ金属化合物]
ポリアミド化合物(A)の重縮合においては、アミド化反応を促進する観点から、リン原子含有化合物を添加することが好ましい。
リン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸等のホスフィン酸化合物;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸エチル等のジ亜リン酸化合物;ホスホン酸、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸リチウム、ホスホン酸マグネシウム、ホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム等のホスホン酸化合物;亜ホスホン酸、亜ホスホン酸ナトリウム、亜ホスホン酸リチウム、亜ホスホン酸カリウム、亜ホスホン酸マグネシウム、亜ホスホン酸カルシウム、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル等の亜ホスホン酸化合物;亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等の亜リン酸化合物等が挙げられる。
これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩が、アミド化反応を促進する効果が高くかつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好ましい。なお、本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
リン原子含有化合物の添加量は、ポリアミド化合物(A)中のリン原子濃度換算で0.1〜1000ppmであることが好ましく、より好ましくは1〜600ppmであり、更に好ましくは5〜400ppmである。0.1ppm以上であれば、重合中にポリアミド化合物(A)が着色しにくく透明性が高くなる。1000ppm以下であれば、ポリアミド化合物(A)がゲル化しにくく、また、リン原子含有化合物に起因すると考えられるフィッシュアイの成形品中への混入も低減でき、成形品の外観が良好となる。
【0061】
また、ポリアミド化合物(A)の重縮合系内には、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物を添加することが好ましい。重縮合中のポリアミド化合物(A)の着色を防止するためには十分な量のリン原子含有化合物を存在させる必要があるが、場合によってはポリアミド化合物(A)のゲル化を招くおそれがあるため、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物を共存させることが好ましい。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキシド等が好ましい。本発明で用いることのできるアルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、炭酸ナトリウム等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。なお、リン原子含有化合物とアルカリ金属化合物の比率(モル比)は、重合速度制御の観点や、黄色度を低減する観点から、リン原子含有化合物/アルカリ金属化合物=1.0/0.05〜1.0/1.5の範囲が好ましく、より好ましくは、1.0/0.1〜1.0/1.2、更に好ましくは、1.0/0.2〜1.0/1.1である。
【0062】
1−2.樹脂(B)
本発明において、樹脂(B)としては任意の樹脂を使用することができ、特に限定されない。樹脂(B)としては、例えば熱可塑性樹脂を用いることができ、具体的にはポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体及び植物由来樹脂を挙げることができる。本発明において樹脂(B)としては、これら樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
これらの中でも、酸素吸収効果を効果的に発揮するためには、ポリエステル、ポリアミド及びエチレン−ビニルアルコール共重合体のような酸素バリア性の高い樹脂がより好ましい。
ポリアミド化合物(A)と樹脂(B)との混合は、従来公知の方法を用いることができ、乾式混合や溶融混合が例示される。ポリアミド化合物(A)と樹脂(B)とを溶融混合し、所望のペレット、成形体を製造する場合、押出機等を用いて溶融ブレンドすることができる。押出機は単軸押出機、2軸押出機などの公知の押出機を用いることができるが、これらに限定されない。
【0063】
[ポリオレフィン]
ポリオレフィンの具体例としては、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等のオレフィン単独重合体;エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ポリブテン−1共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体;エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等のエチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のその他のエチレン共重合体;これらのポリオレフィンを無水マレイン酸等の酸無水物等でグラフト変性したグラフト変性ポリオレフィン等を挙げることができる。
【0064】
[ポリエステル]
本発明において、ポリエステルとは、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種又は二種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種又は二種以上とからなるもの、又はヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体からなるもの、又は環状エステルからなるものをいう。
【0065】
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸等に例示される飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等に例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等に例示される芳香族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、2−リチウムスルホテレフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸等に例示される金属スルホネート基含有芳香族ジカルボン酸又はそれらの低級アルキルエステル誘導体などが挙げられる。
【0066】
上記のジカルボン酸のなかでも、特に、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の使用が、得られるポリエステルの物理特性等の点で好ましく、必要に応じて他のジカルボン酸を共重合してもよい。
【0067】
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0068】
グリコールとしてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等に例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノ−ル、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加されたグリコール等に例示される芳香族グリコールが挙げられる。
【0069】
上記のグリコールのなかでも、特に、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールを主成分として使用することが好適である。これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロ−ル、ヘキサントリオール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、又はこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0070】
環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチド等が挙げられる。
【0071】
多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物等が例示される。
【0072】
本発明で用いられるポリエステルとしては、主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルが好ましい。
【0073】
主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルとは、全酸成分に対してテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。主たる酸成分がナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルも同様に、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。
【0074】
本発明で用いられるナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、上述のジカルボン酸類に例示した1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
【0075】
主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルとは、全グリコール成分に対してアルキレングリコールを合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。ここで言うアルキレングリコールは、分子鎖中に置換基や脂環構造を含んでいてもよい。
【0076】
上記テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分は、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることが、透明性と成形性を両立する上で好ましく、特にイソフタル酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることがより好ましい。
【0077】
本発明に用いられるポリエステルの好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、より好ましくはエチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのはエチレンテレフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0078】
また本発明に用いられるポリエステルの好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2,6−ナフタレートから構成されるポリエステルであり、より好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2,6−ナフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0079】
また本発明に用いられるポリエステルの好ましいその他の例としては、プロピレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、プロピレンナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、ブチレンナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、またはブチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0080】
特にポリエステル全体の組成として、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコールの組合せ、テレフタル酸//エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノールの組合せ、テレフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコールの組合せは透明性と成形性とを両立する上で好ましい。なお、当然ではあるが、エステル化(エステル交換)反応、重縮合反応中に、エチレングリコールの二量化により生じるジエチレングリコールを少量(5モル%以下)含んでもよいことは言うまでもない。
【0081】
また本発明に用いられるポリエステルの好ましいその他の例としては、グリコール酸やグリコール酸メチルの重縮合もしくは、グリコリドの開環重縮合にて得られるポリグリコール酸が挙げられる。このポリグリコール酸には、ラクチド等の他成分を共重合しても構わない。
【0082】
[ポリアミド]
本発明で使用するポリアミド(ここで言う“ポリアミド”は、本発明の“ポリアミド化合物(A)”と混合されるポリアミド樹脂を指すものであり、本発明の“ポリアミド化合物(A)”自体を指すものではない)は、ラクタムもしくはアミノカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とするポリアミドや、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから誘導される単位を主構成単位とする脂肪族ポリアミド、脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とから誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミド、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミド等が挙げられ、必要に応じて、主構成単位以外のモノマー単位を共重合してもよい。
【0083】
前記ラクタムもしくはアミノカルボン酸としては、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等が使用できる。
【0084】
前記脂肪族ジアミンとしては、炭素数2〜12の脂肪族ジアミンあるいはその機能的誘導体が使用できる。さらに、脂環族のジアミンであってもよい。脂肪族ジアミンは直鎖状の脂肪族ジアミンであっても分岐を有する鎖状の脂肪族ジアミンであってもよい。このような直鎖状の脂肪族ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。また、脂環族ジアミンの具体例としては、シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0085】
また、前記脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖状の脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸が好ましく、さらに炭素数4〜12のアルキレン基を有する直鎖状脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。このような直鎖状脂肪族ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸およびこれらの機能的誘導体等を挙げることができる。脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【0086】
また、前記芳香族ジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラ−ビス(2−アミノエチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0087】
また、前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸およびその機能的誘導体等が挙げられる。
【0088】
具体的なポリアミドとしては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド6IT、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、イソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6I)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカナミド(ポリアミドMXD12)、ポリ1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンアジパミド(ポリアミドBAC6)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)等がある。より好ましいポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD6Iが挙げられる。
【0089】
また、前記ポリアミドの共重合成分として、少なくとも一つの末端アミノ基、もしくは末端カルボキシル基を有する数平均分子量が2000〜20000のポリエーテル、又は前記末端アミノ基を有するポリエーテルの有機カルボン酸塩、又は前記末端カルボキシル基を有するポリエーテルのアミノ塩を用いることもできる。具体的な例としては、ビス(アミノプロピル)ポリ(エチレンオキシド)(数平均分子量が2000〜20000のポリエチレングリコール)が挙げられる。
【0090】
また、前記部分芳香族ポリアミドは、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3塩基以上の多価カルボン酸から誘導される構成単位を実質的に線状である範囲内で含有していてもよい。
【0091】
前記ポリアミドは、基本的には従来公知の、水共存下での溶融重縮合法あるいは水不存在下の溶融重縮合法や、これらの溶融重縮合法で得られたポリアミドを更に固相重合する方法等によって製造することができる。溶融重縮合反応は1段階で行ってもよいし、また多段階に分けて行ってもよい。これらは回分式反応装置から構成されていてもよいし、また連続式反応装置から構成されていてもよい。また溶融重縮合工程と固相重合工程は連続的に運転してもよいし、分割して運転してもよい。
【0092】
[エチレン−ビニルアルコール共重合体]
本発明で使用されるエチレンビニルアルコール共重合体としては、特に限定されないが、好ましくはエチレン含量15〜60モル%、更に好ましくは20〜55モル%、より好ましくは29〜44モル%であり、酢酸ビニル成分のケン化度が好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上のものである。
またエチレンビニルアルコール共重合体には、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、更に少量のプロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン、不飽和カルボン酸又はその塩・部分アルキルエステル・完全アルキルエステル・ニトリル・アミド・無水物、不飽和スルホン酸又はその塩等のコモノマーを含んでいてもよい。
【0093】
[植物由来樹脂]
植物由来樹脂の具体例としては、上記樹脂と重複する部分もあるが、特に限定されることなく公知の種々の石油以外を原料とする脂肪族ポリエステル系生分解性樹脂が挙げられる。脂肪族ポリエステル系生分解性樹脂としては、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)等のポリ(α−ヒドロキシ酸);ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート(PES)等のポリアルキレンアルカノエート等が挙げられる。
【0094】
[その他の樹脂]
本発明の目的を阻害しない範囲で、酸素吸収バリア層に付与したい性能等に応じて、従来公知の種々の樹脂を樹脂(B)として添加してもよい。例えば、耐衝撃性、耐ピンホール性、柔軟性、接着性を付与する観点からは、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンやそれらの各種変性物、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、スチレン−ブタジエン共重合樹脂やその水素添加処理物、ポリエステル系エラストマー等に代表される各種熱可塑性エラストマー、ナイロン6,66,12、ナイロン12等の各種ポリアミド等が挙げられ、酸素吸収性能をさらに付与する観点からは、ポリブタジエンや変性ポリブタジエン等の炭素−炭素不飽和二重結合含有樹脂、を挙げることができる。
【0095】
1−3.添加剤(C)
本発明において、酸素吸収バリア層を形成するための樹脂組成物には、前述したポリアミド化合物(A)及び樹脂(B)以外に、必要に応じて更に添加剤(C)を含有してもよい。添加剤(C)は1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。樹脂組成物中における添加剤(C)の含有量は、添加剤の種類にもよるが、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0096】
[白化防止剤]
本発明においては、熱水処理後や長時間の経時後の白化抑制として、ジアミド化合物及び/又はジエステル化合物を樹脂組成物に添加することが好ましい。ジアミド化合物及び/又はジエステル化合物は、オリゴマーの析出による白化の抑制に効果がある。ジアミド化合物とジエステル化合物を単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0097】
本発明に用いられるジアミド化合物としては、炭素数8〜30の脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10のジアミンから得られるジアミド化合物が好ましい。脂肪族ジカルボン酸の炭素数が8以上、ジアミンの炭素数が2以上であると白化防止効果が期待できる。また、脂肪族ジカルボン酸の炭素数が30以下、ジアミンの炭素数が10以下で酸素吸収バリア層中への均一分散が良好となる。脂肪族ジカルボン酸は側鎖や二重結合があってもよいが、直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましい。ジアミド化合物は1種類でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、ステアリン酸(C18)、エイコサン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、モンタン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等が例示できる。前記ジアミンとしては、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサンジアミン、キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が例示できる。これらを組み合わせて得られるジアミド化合物が好ましい。
炭素数8〜30の脂肪族ジカルボン酸と主としてエチレンジアミンからなるジアミンから得られるジアミド化合物、または主としてモンタン酸からなる脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10のジアミンから得られるジアミド化合物が好ましく、特に好ましくは主としてステアリン酸からなる脂肪族ジカルボン酸と主としてエチレンジアミンからなるジアミンから得られるジアミド化合物である。
【0099】
本発明に用いられるジエステル化合物としては、炭素数8〜30の脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10のジオールから得られるジエステル化合物が好ましい。脂肪族ジカルボン酸の炭素数が8以上、ジオールの炭素数が2以上であると白化防止効果が期待できる。また、脂肪族ジカルボン酸の炭素数が30以下、ジオールの炭素数が10以下で酸素吸収バリア層中への均一分散が良好となる。脂肪族ジカルボン酸は側鎖や二重結合があってもよいが、直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましい。ジエステル化合物は1種類でもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、ステアリン酸(C18)、エイコサン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、モンタン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等が例示できる。前記ジオールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、キシリレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が例示できる。これらを組み合わせて得られるジエステル化合物が好ましい。
特に好ましくは主としてモンタン酸からなる脂肪族ジカルボン酸と主としてエチレングリコール及び/又は1,3−ブタンジオールからなるジオールから得られるジエステル化合物である。
【0100】
本発明において、ジアミド化合物及び/又はジエステル化合物の添加量は、樹脂組成物中に好ましくは0.005〜0.5質量%、より好ましくは0.05〜0.5質量%、さらに好ましくは0.12〜0.5質量%である。樹脂組成物中に0.005質量%以上添加し、かつ結晶化核剤と併用することにより白化防止の相乗効果が期待できる。また、添加量が樹脂組成物中に0.5質量%以下であると、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の曇値を低く保つことが可能となる。
【0101】
[層状珪酸塩]
本発明において、酸素吸収バリア層は層状珪酸塩を含有してもよい。層状珪酸塩を添加することで、酸素ガスバリア性だけでなく、炭酸ガス等のガスに対するバリア性を付与することができる。
【0102】
層状珪酸塩は、0.25〜0.6の電荷密度を有する2−八面体型や3−八面体型の層状珪酸塩であり、2−八面体型としては、モンモリロナイト、バイデライト等、3−八面体型としてはヘクトライト、サボナイト等が挙げられる。これらの中でも、モンモリロナイトが好ましい。
【0103】
層状珪酸塩は、高分子化合物や有機系化合物等の有機膨潤化剤を予め層状珪酸塩に接触させて、層状珪酸塩の層間を拡げたものとすることが好ましい。有機膨潤化剤として、第4級アンモニウム塩が好ましく使用できるが、好ましくは、炭素数12以上のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも一つ以上有する第4級アンモニウム塩が用いられる。
【0104】
有機膨潤化剤の具体例として、トリメチルドデシルアンモニウム塩、トリメチルテトラデシルアンモニウム塩、トリメチルヘキサデシルアンモニウム塩、トリメチルオクタデシルアンモニウム塩、トリメチルエイコシルアンモニウム塩等のトリメチルアルキルアンモニウム塩;トリメチルオクタデセニルアンモニウム塩、トリメチルオクタデカジエニルアンモニウム塩等のトリメチルアルケニルアンモニウム塩;トリエチルドデシルアンモニウム塩、トリエチルテトラデシルアンモニウム塩、トリエチルヘキサデシルアンモニウム塩、トリエチルオクタデシルアンモニウム等のトリエチルアルキルアンモニウム塩;トリブチルドデシルアンモニウム塩、トリブチルテトラデシルアンモニウム塩、トリブチルヘキサデシルアンモニウム塩、トリブチルオクタデシルアンモニウム塩等のトリブチルアルキルアンモニウム塩;ジメチルジドデシルアンモニウム塩、ジメチルジテトラデシルアンモニウム塩、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデシルアンモニウム塩、ジメチルジタロウアンモニウム塩等のジメチルジアルキルアンモニウム塩;ジメチルジオクタデセニルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデカジエニルアンモニウム塩等のジメチルジアルケニルアンモニウム塩;ジエチルジドデジルアンモニウム塩、ジエチルジテトラデシルアンモニウム塩、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム塩、ジエチルジオクタデシルアンモニウム等のジエチルジアルキルアンモニウム塩;ジブチルジドデシルアンモニウム塩、ジブチルジテトラデシルアンモニウム塩、ジブチルジヘキサデシルアンモニウム塩、ジブチルジオクタデシルアンモニウム塩等のジブチルジアルキルアンモニウム塩;メチルベンジルジヘキサデシルアンモニウム塩等のメチルベンジルジアルキルアンモニウム塩;ジベンジルジヘキサデシルアンモニウム塩等のジベンジルジアルキルアンモニウム塩;トリドデシルメチルアンモニウム塩、トリテトラデシルメチルアンモニウム塩、トリオクタデシルメチルアンモニウム塩等のトリアルキルメチルアンモニウム塩;トリドデシルエチルアンモニウム塩等のトリアルキルエチルアンモニウム塩;トリドデシルブチルアンモニウム塩等のトリアルキルブチルアンモニウム塩;4−アミノ−n−酪酸、6−アミノ−n−カプロン酸、8−アミノカプリル酸、10−アミノデカン酸、12−アミノドデカン酸、14−アミノテトラデカン酸、16−アミノヘキサデカン酸、18−アミノオクタデカン酸等のω−アミノ酸等が挙げられる。また、水酸基及び/又はエーテル基含有のアンモニウム塩、中でも、メチルジアルキル(PAG)アンモニウム塩、エチルジアルキル(PAG)アンモニウム塩、ブチルジアルキル(PAG)アンモニウム塩、ジメチルビス(PAG)アンモニウム塩、ジエチルビス(PAG)アンモニウム塩、ジブチルビス(PAG)アンモニウム塩、メチルアルキルビス(PAG)アンモニウム塩、エチルアルキルビス(PAG)アンモニウム塩、ブチルアルキルビス(PAG)アンモニウム塩、メチルトリ(PAG)アンモニウム塩、エチルトリ(PAG)アンモニウム塩、ブチルトリ(PAG)アンモニウム塩、テトラ(PAG)アンモニウム塩(ただし、アルキルはドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル等の炭素数12以上のアルキル基を表し、PAGはポリアルキレングリコール残基、好ましくは、炭素数20以下のポリエチレングリコール残基またはポリプロピレングリコール残基を表す)等の少なくとも一のアルキレングリコール残基を含有する4級アンモニウム塩も有機膨潤化剤として使用することができる。中でもトリメチルドデシルアンモニウム塩、トリメチルテトラデシルアンモニウム塩、トリメチルヘキサデシルアンモニウム塩、トリメチルオクタデシルアンモニウム塩、ジメチルジドデシルアンモニウム塩、ジメチルジテトラデシルアンモニウム塩、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデシルアンモニウム塩、ジメチルジタロウアンモニウム塩が好ましい。なお、これらの有機膨潤化剤は、単独でも複数種類の混合物としても使用できる。
【0105】
本発明では、有機膨潤化剤で処理した層状珪酸塩を樹脂組成物中に0.5〜8質量%添加したものが好ましく用いられ、より好ましくは1〜6質量%、更に好ましくは2〜5質量%である。層状珪酸塩の添加量が0.5質量%以上であればガスバリア性の改善効果が十分に得られ、8質量%以下であれば酸素吸収バリア層の柔軟性が悪化することによるピンホールの発生等の問題が生じにくい。
【0106】
酸素吸収バリア層において、層状珪酸塩は局所的に凝集することなく均一に分散していることが好ましい。ここでいう均一分散とは、酸素吸収バリア層中において層状珪酸塩が平板状に分離し、それらの50%以上が5nm以上の層間距離を有することをいう。ここで層間距離とは平板状物の重心間距離のことをいう。この距離が大きい程分散状態が良好となり、透明性等の外観が良好で、かつ酸素、炭酸ガス等のガスバリア性を向上させることができる。
【0107】
[酸化反応促進剤]
酸素吸収バリア層の酸素吸収性能を更に高めるために、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の酸化反応促進剤を添加してもよい。酸化反応促進剤はポリアミド化合物(A)が有する酸素吸収性能を促進することで、酸素吸収バリア層の酸素吸収性能を高めることができる。酸化反応促進剤としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属、銅や銀等の第I族金属、スズ、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウムの第V族、クロム等の第VI族、マンガン等の第VII族の金属の低価数の無機酸塩もしくは有機酸塩、又は上記遷移金属の錯塩を例示することができる。これらの中でも、酸素反応促進効果に優れるコバルト塩やコバルト塩とマンガン塩との組合せが好ましい。
本発明において、酸素反応促進剤の添加量は、樹脂組成物中に好ましくは金属原子濃度として10〜800ppm、より好ましくは50〜600ppm、さらに好ましくは100〜400ppmである。
【0108】
[酸素吸収剤]
酸素吸収バリア層の酸素吸収性能を更に高めるために、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の酸素吸収剤を添加してもよい。酸素吸収剤はポリアミド化合物(A)が有する酸素吸収性能と別に酸素吸収バリア層に酸素吸収性能を付与することで、酸素吸収バリア層の酸素吸収性能を高めることができる。酸素吸収剤としては、ビタミンCやビタミンE、ブタジエンやイソプレンのように分子内に炭素−炭素二重結合をもつ化合物に代表される酸化性有機化合物を例示することできる。
本発明において、酸素吸収剤の添加量は、樹脂組成物中に好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜4質量%、さらに好ましくは0.5〜3質量%である。
【0109】
[ゲル化防止・フィッシュアイ低減剤]
本発明においては、酸素吸収バリア層に、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体から選択される1種以上のカルボン酸塩類を添加することが好ましい。ここで該誘導体としては、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム等の12−ヒドロキシステアリン酸金属塩等が挙げられる。前記カルボン酸塩類を添加することで、成形加工中に起こるポリアミド化合物(A)のゲル化防止や成形体中のフィッシュアイを低減することができ、成形加工の適性が向上する。
【0110】
前記カルボン酸塩類の添加量としては、樹脂組成物中の濃度として、好ましくは400〜10000ppm、より好ましくは800〜5000ppm、更に好ましくは1000〜3000ppmである。400ppm以上であれば、ポリアミド化合物(A)の熱劣化を抑制でき、ゲル化を防止できる。また、10000ppm以下であれば、ポリアミド化合物(A)が成形不良を起こさず、着色や白化することもない。溶融したポリアミド化合物(A)中に塩基性物質であるカルボン酸塩類が存在すると、ポリアミド化合物(A)の熱による変性が遅延し、最終的な変性物と考えられるゲルの生成を抑制すると推測される。
なお、前述のカルボン酸塩類はハンドリング性に優れ、この中でもステアリン酸金属塩は安価である上、滑剤としての効果を有しており、成形加工をより安定化することができるため好ましい。更に、カルボン酸塩類の形状に特に制限はないが、粉体でかつその粒径が小さい方が乾式混合する場合、樹脂組成物中に均一に分散させることが容易であるため、その粒径は0.2mm以下が好ましい。
さらに、より効果的なゲル化防止、フィッシュアイ低減、更にはコゲ防止処方として、1g当たりの金属塩濃度が高い酢酸ナトリウムを用いることが好ましい。酢酸ナトリウムを用いる場合、ポリアミド化合物(A)及び樹脂(B)と乾式混合して成形加工してもよいが、ハンドリング性や酢酸臭の低減等の観点から、ポリアミド化合物(A)と樹脂(B)と酢酸ナトリウムとからなるマスターバッチを、ポリアミド化合物(A)及び樹脂(B)と乾式混合して成形加工することが好ましい。マスターバッチに用いる酢酸ナトリウムは、樹脂組成物中に均一に分散させることが容易であるため、その粒径は、0.2mm以下が好ましく、0.1mm以下がより好ましい。
【0111】
[酸化防止剤]
本発明においては、酸素吸収性能を制御する観点や機械物性低下を抑える観点から酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤としては、銅系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオ系酸化防止剤等を例示することができ、中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が好ましい。
【0112】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2−チオビス(4−メチル−6−1−ブチルフェノール)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸エチルカルシウム、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクチル化ジフェニルアミン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−O−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−T−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、d−α−トコフェロール等が挙げられる。これらは単独であるいはこれらの混合物で用いることができる。ヒンダードフェノール化合物の市販品の具体例としては、BASF社製のIrganox1010やIrganox1098が挙げられる(いずれも商品名)。
【0113】
リン系酸化防止剤の具体例としては、トリフェニルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の有機リン化合物が挙げられる。これらは単独であるいはこれらの混合物で用いることができる。
【0114】
酸化防止剤の含有量は、組成物の各種性能を損なわない範囲であれば特に制限無く使用できるが、酸素吸収性能を制御する観点や機械物性低下を抑える観点から、樹脂組成物中に好ましくは0.001〜3質量%、より好ましくは0.01〜1質量%である。
【0115】
[その他の添加剤]
酸素吸収バリア層を形成するための樹脂組成物には、要求される用途や性能に応じて、滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、結晶化核剤等の添加剤を添加させてもよい。これらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加することができる。
【0116】
2.任意の層
2−1.融着層
本発明において、ダイレクトブローボトルは酸素吸収バリア層に加えて、融着層をダイレクトブローボトルの表面(片側表面又は両側表面)に更に含んでいてもよい。
前記融着性を有する熱可塑性樹脂としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種ポリオレフィン系樹脂や、その他熱可塑性樹脂等を使用することができ、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、それらは単独で使用してもよく、2種類以上の材料を混合したものとしてもよい。これらの中でも成形加工性や衛生性、臭気等の観点から低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体が好ましく使用される。
また融着層はその効果を損なわない範囲で滑剤、結晶化核剤、白化防止剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、酸化防止剤、耐衝撃性改良材等の添加剤を含んでもよい。
なお、ダイレクトブローボトルの両面に融着層が設けられる場合、両融着層の構成は互いに異なっていてもよいが、主成分となる熱可塑性樹脂を同一のものとすることが安定した融着性を発揮することができるので好ましい。
また、外側の融着層には、種類の異なる樹脂をブレンドすることで、フロスト状の外観を出すことも可能である。
【0117】
本発明における融着層の厚みは、実用的な融着強度を発揮しつつ、ダイレクトブローボトルの加工性を確保するという観点から、5〜200μmとすることが好ましく、より好ましくは10〜150μmであり、更に好ましくは15〜100μmである。
【0118】
2−2.接着層
本発明において、ダイレクトブローボトルは酸素吸収バリア層に加えて、接着層を更に含んでもよい。ダイレクトブローボトルにおいて、隣接する2つの層(例えば、酸素吸収バリア層と融着層)の間で実用的な層間接着強度が得られない場合に、当該2つの層の間に接着剤層を設けることが好ましい。
接着層は接着性を有する熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。接着性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。融着性を有する熱可塑性樹脂と同種の樹脂を変性したものを、接着性を有する熱可塑性樹脂として選択することが好ましい。
【0119】
接着層の厚みは、実用的な接着強度を発揮しつつ、ダイレクトブローボトルの加工性を確保するという観点から、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜90μm、更に好ましくは10〜80μmである。
【0120】
2−3.リサイクル層
内層または外層と中間層の間にリサイクル性の観点から再生樹脂からなる層を追加することができる。成形時に発生するスクラップ樹脂を粉砕し、再生樹脂として利用することは、製造コストの低減のみでなく、資源の有効利用の観点からも重要である。再生樹脂を用いる場合、強度面から酸素吸収バリア層より外側層に配置することが好適である。
【0121】
2−4.その他の任意の層
本発明において、ダイレクトブローボトルは所望する性能等に応じて上述以外の任意の層を更に含んでもよい。これ以外にも各種性能を持たせるための任意の層を構成する材料としては、上述の各種ポリオレフィン類、ナイロン6やナイロンMXD6等の各種ポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリグリコール酸等の各種ポリエステル類、エチレンビニルアルコール共重合体等の熱可塑性樹脂を単独で又は混合したものが挙げられる。
【0122】
3.ダイレクトブローボトルの製造方法
本発明のダイレクトブローボトルの製造方法については特に限定されず、任意の方法で製造することができる。例えば、複数の押出機と円筒ダイとからなるダイレクトブロー装置を用いてポリアミド化合物(A)とポリオレフィン等のその他の樹脂(B)との材料からなる円筒状パリソンを形成し、該パリソンをチューブ状に押出し、該パリソンを10℃〜80℃程度に温調した金型で挟み、パリソン下部をピンチオフするとともに融着させ、冷却しないうちに高圧の空気等によってブローして、該パリソンを膨らませてボトル状、チューブ状、タンク状等の容器の形状に成形される。
ここで、用いるダイレクトブロー装置は、特に限定されず単一の円筒ダイと単一の金型とからなる装置、複数の円筒ダイと複数の金型とを持ち合わせた装置、又は、ロータリー式のダイレクトブロー装置であってもよい。
また、あらかじめ、金型内にインモールドラベルを挿入し、容器表面に、ラベルを貼付するインモールドラベル法を用いてもよい。また、インモールドラベル法に関わらず、ラベルを貼付ける場合、ラベル貼付け前に、フレーム処理やコロナ処理をすることが好ましい。さらに、金型内にサンドブラスト加工を施しフロスト状の外観にすることも可能である。
【0123】
本発明のダイレクトブローボトルには、無機物又は無機酸化物の蒸着膜や、アモルファスカーボン膜をコーティングしてもよい。
無機物又は無機酸化物としては、アルミニウムやアルミナ、酸化珪素等が挙げられる。無機物又は無機酸化物の蒸着膜は、本発明のダイレクトブローボトルから、アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等の溶出物を遮蔽できる。蒸着膜の形成方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法や、PECVD等の化学蒸着法等が挙げられる。蒸着膜の厚みは、ガスバリア性、遮光性及び耐屈曲性等の観点から、好ましくは5〜500nm、より好ましくは5〜200nmである。
アモルファスカーボン膜はダイヤモンド状炭素膜で、iカーボン膜または水素化アモルファスカーボン膜とも呼ばれる硬質炭素膜である。膜の形成法としては、排気により中空成形体の内部を真空にし、そこへ炭素源ガスを供給し、プラズマ発生用エネルギーを供給することにより、その炭素源ガスをプラズマ化させる方法が例示され、これにより、容器内面にアモルファスカーボン膜を形成させることができる。アモルファスカーボン膜は酸素や二酸化炭素のような低分子無機ガスの透過度を著しく減少させることができるだけでなく、臭いを有する各種の低分子有機化合物の収着を抑制することができる。アモルファスカーボン膜の厚みは、低分子有機化合物の収着抑制効果、ガスバリア性の向上効果、プラスチックとの密着性、耐久性および透明性等の観点から、50〜5000nmが好ましい。
【0124】
本発明のダイレクトブローボトルは、酸素吸収性能及び酸素バリア性能に優れ、かつ内容物の風味保持性に優れるため、種々の物品の包装に適している。
被保存物としては、牛乳、乳製品、ジュース、コーヒー、茶類、アルコール飲料等の飲料;ソース、醤油、ドレッシング等の液体調味料、スープ、シチュー、カレー、乳幼児用調理食品、介護調理食品等の調理食品;ジャム、マヨネーズ等のペースト状食品;ツナ、魚貝等の水産製品;チーズ、バター等の乳加工品;肉、サラミ、ソーセージ、ハム等の畜肉加工品;にんじん、じゃがいも等の野菜類;卵;麺類;調理前の米類、調理された炊飯米、米粥等の加工米製品;粉末調味料、粉末コーヒー、乳幼児用粉末ミルク、粉末ダイエット食品、乾燥野菜、せんべい等の乾燥食品;農薬、殺虫剤等の化学品;医薬品;化粧品;ペットフード;シャンプー、リンス、洗剤等の雑貨品;種々の物品を挙げることができる。
【0125】
また、これらの被保存物の充填前後に、被保存物に適した形で、ダイレクトブローボトルや被保存物の殺菌を施すことができる。殺菌方法としては、100℃以下での熱水処理、100℃以上の加圧熱水処理、130℃以上の超高温加熱処理等の加熱殺菌、紫外線、マイクロ波、ガンマ線等の電磁波殺菌、エチレンオキサイド等のガス処理、過酸化水素や次亜塩素酸等の薬剤殺菌等が挙げられる。
【実施例】
【0126】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、共重合体を構成する単位に関して、
メタキシリレンジアミンに由来する単位を「MXDA」、
1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンに由来する単位を「1,3BAC」、
ヘキサメチレンジアミンに由来する単位を「HMDA」、
アジピン酸に由来する単位を「AA」、
イソフタル酸に由来する単位を「IPA」、
DL−アラニンに由来する単位を「DL−Ala」、
DL−ロイシンに由来する単位を「DL−Leu」、
ε−カプロラクタムに由来する単位を「ε−CL」という。
また、ポリメタキシリレンアジパミドを「N−MXD6」、
ポリプロピレンを「PP」、
ポリエチレンテレフタレートを「PET」、
接着層を「AD」、
エチレン−ビニルアルコール共重合体を「EVOH」という。
【0127】
製造例で得られたポリアミド化合物のα−アミノ酸含有率、相対粘度、末端アミノ基濃度、ガラス転移温度及び融点は以下の方法で測定した。また、製造例で得られたポリアミド化合物からフィルムを作製し、その酸素吸収量を以下の方法で測定した。
【0128】
(1)α−アミノ酸含有率
1H−NMR(400MHz,日本電子(株)製、商品名:JNM−AL400、測定モード:NON(1H))を用いて、ポリアミド化合物のα−アミノ酸含有率の定量を実施した。具体的には、溶媒としてギ酸−dを用いてポリアミド化合物の5質量%の溶液を調製し、1H−NMR測定を実施した。
【0129】
(2)相対粘度
ポリアミド化合物1gを精秤し、96%硫酸100mlに20〜30℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。t及びt0から次式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0
【0130】
(3)末端アミノ基濃度〔NH2
ポリアミド化合物を精秤し、フェノール/エタノール=4/1容量溶液に20〜30℃で撹拌溶解させ、完全に溶解した後、撹拌しつつ、メタノール5mlで容器内壁を洗い流し、0.01mol/L塩酸水溶液で中和滴定して末端アミノ基濃度〔NH2〕を求めた。
【0131】
(4)ガラス転移温度及び融点
示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC−60)を用い、昇温速度10℃/分で窒素気流下にDSC測定(示差走査熱量測定)を行い、ガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)を求めた。
【0132】
(5)酸素吸収量
Tダイを設置した30mmφ二軸押出機((株)プラスチック工学研究所製)を用い、(ポリアミド化合物の融点+20℃)のシリンダー・Tダイ温度にて、ポリアミド化合物から厚さ約100μmの無延伸単層フィルムを成形した。
製造した無延伸単層フィルムから切り出した10cm×10cmの試験片2枚を、アルミ箔積層フィルムからなる25cm×18cmの3方シール袋に、水10mlを含ませた綿と共に仕込み、袋内空気量が400mlとなるようにして密封した。袋内の湿度は100%RH(相対湿度)とした。40℃下で7日保存後、14日保存後、28日保存後のそれぞれに袋内の酸素濃度を酸素濃度計(東レエンジニアリング(株)製、商品名:LC−700F)で測定し、この酸素濃度から酸素吸収量を計算した。
なお、製造例11〜14で得られたポリアミド化合物については、上記フィルムサンプルに代えて、ポリアミド化合物のペレットまたは粉砕物を粉砕機で細かくした粉状サンプル2gを薬包紙に包んだものを用いて、上記と同様に酸素吸収量を計算した。
【0133】
製造例1(ポリアミド化合物1の製造)
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽及びポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精秤したアジピン酸(旭化成ケミカルズ(株)製)13000g(88.96mol)、DL−アラニン((株)武蔵野化学研究所製)880.56g(9.88mol)、次亜リン酸ナトリウム11.7g(0.11mol)、酢酸ナトリウム6.06g(0.074mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaに保ちながら撹拌下170℃まで昇温した。170℃に到達した後、反応容器内の溶融した原料へ滴下槽に貯めたメタキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)12082.2g(88.71mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を連続的に240℃まで昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化した後、冷却してペレタイザーによりペレット化した。次にこのペレットをステンレス製の回転ドラム式の加熱装置に仕込み、5rpmで回転させた。十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下にて反応系内を室温から140℃まで昇温した。反応系内温度が140℃に達した時点で1torr以下まで減圧を行い、更に系内温度を110分間で180℃まで昇温した。系内温度が180℃に達した時点から、同温度にて180分間、固相重合反応を継続した。反応終了後、減圧を終了し窒素気流下にて系内温度を下げ、60℃に達した時点でペレットを取り出すことにより、MXDA/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド化合物1)を得た。
なお、各モノマーの仕込み組成比は、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−アラニン=47.3:47.4:5.3(mol%)であった。
【0134】
製造例2(ポリアミド化合物2の製造)
各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−アラニン=44.4:44.5:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド化合物2)を得た。
【0135】
製造例3(ポリアミド化合物3の製造)
各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−アラニン=41.1:41.3:17.6(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド化合物3)を得た。
【0136】
製造例4(ポリアミド化合物4の製造)
各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−アラニン=33.3:33.4:33.3(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド化合物4)を得た。
【0137】
製造例5(ポリアミド化合物5の製造)
α−アミノ酸をDL−ロイシン(Ningbo Haishuo Bio−technology製)に変更し、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−ロイシン=44.3:44.6:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/DL−Leu共重合体(ポリアミド化合物5)を得た。
【0138】
製造例6(ポリアミド化合物6の製造)
ジカルボン酸成分をイソフタル酸(エイ・ジイ・インタナショナル・ケミカル(株)製)とアジピン酸の混合物に変更し、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:イソフタル酸:DL−アラニン=44.3:39.0:5.6:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/IPA/DL−Ala共重合体(ポリアミド化合物6)を得た。
【0139】
製造例7(ポリアミド化合物7の製造)
コモノマーとしてε−カプロラクタム(宇部興産(株)製)を使用し、アミノ酸をDL−ロイシンに変更し、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−ロイシン:ε−カプロラクタム=41.0:41.3:11.8:5.9(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/AA/DL−Leu/ε−CL共重合体(ポリアミド化合物7)を得た。
【0140】
製造例8(ポリアミド化合物8の製造)
ジアミン成分を1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学(株)製)とメタキシリレンジアミンの混合物に変更し、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン:アジピン酸:DL−アラニン=33.2:11.1:44.6:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/1,3BAC/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド化合物8)を得た。
【0141】
製造例9(ポリアミド化合物9の製造)
ジアミン成分をヘキサメチレンジアミン(昭和化学(株)製)とメタキシリレンジアミンの混合物に変更し、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:ヘキサメチレンジアミン:アジピン酸:DL−アラニン=33.3:11.1:44.5:11.1(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてMXDA/HMDA/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド化合物9)を得た。
【0142】
製造例10(ポリアミド化合物10の製造)
DL−アラニンを添加せず、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸=49.8:50.2(mol%)としたこと以外は製造例1と同様にしてN−MXD6(ポリアミド化合物10)を得た。
【0143】
製造例11(ポリアミド化合物11の製造)
固相重合を実施しなかったこと以外は製造例1と同様にして、MXDA/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド化合物11)を得た。
なお、各モノマーの仕込み組成比は、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−アラニン=47.2:47.4:5.3(mol%)であった。
【0144】
製造例12(ポリアミド化合物12の製造)
固相重合を実施しなかったこと以外は製造例2と同様にして、MXDA/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド化合物12)を得た。
なお、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−アラニン=44.4:44.5:11.1(mol%)であった。
【0145】
製造例13(ポリアミド化合物13の製造)
固相重合を実施しなかったこと以外は製造例4と同様にして、MXDA/AA/DL−Ala共重合体(ポリアミド化合物13)を得た。
なお、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:DL−アラニン=33.3:33.4:33.3(mol%)であった。
【0146】
製造例14(ポリアミド化合物14の製造)
固相重合を実施しなかったこと以外は製造例6と同様にして、MXDA/AA/IPA/DL−Ala共重合体(ポリアミド化合物14)を得た。
なお、各モノマーの仕込み組成比を、メタキシリレンジアミン:アジピン酸:イソフタル酸:DL−アラニン=44.3:38.9:5.6:11.1(mol%)であった。
【0147】
表1に、ポリアミド化合物1〜14の仕込みモノマー組成、並びに得られたポリアミド化合物のα−アミノ酸含有率、相対粘度、末端アミノ基濃度、ガラス転移温度、融点及び酸素吸収量の測定結果を示す。
【0148】
【表1-1】
【0149】
【表1-2】
【0150】
【表1-3】
【0151】
次に、実施例1〜27及び比較例1〜14において、上記ポリアミド化合物1〜14を用いてダイレクトブローボトルを作製した。
【0152】
実施例1
3台の押出機、円筒ダイ、金型を備えた多層ダイレクトブロー装置を用い、1台目の押出機からポリアミド化合物1とN−MXD6(三菱ガス化学(株)製、商品名:MXナイロン、グレード:K7007C)を30:70(質量比)の割合で乾式混合したブレンドペレットを260℃で、2台目の押出機からポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、商品名:ノバテック、グレード:FY6)を230℃で、3台目の押出機から接着性樹脂(三井化学(株)製、商品名:アドマー、グレード:QB515)を220℃で、それぞれ押し出し、金型でブロー成形し、外層からポリプロピレン層/接着性樹脂層/ポリアミド化合物1×N−MXD6ブレンド層/接着性樹脂層/ポリプロピレン層の順に3種5層構造の容量200ccのボトルを製造した。なお、各層の厚みは、300/10/60/10/300(μm)とした。
【0153】
実施例2〜10
表2に記載のポリアミド化合物及びポリアミド化合物×樹脂(B)ブレンド層の混合比に代えた以外は、実施例1と同様にしてボトルを作製した。
【0154】
実施例11〜27
表2に記載のポリアミド化合物、樹脂(B)及びポリアミド化合物×樹脂(B)ブレンド層の混合比及び層構成に代えた以外は、実施例1と同様にしてボトルを作製した。
なお、実施例14、18、19、26は、PETとして、東洋紡(株)製、商品名:IP560を、接着性樹脂としては、三菱化学(株)製、商品名:MODIC-AP、F534Aを用いた。
【0155】
比較例1〜14
表2に記載のポリアミド化合物、樹脂(B)及びポリアミド化合物×樹脂(B)ブレンド層の混合比及び層構成に代えた以外は、実施例1と同様にしてダイレクトブローボトルを作製した。
なお、比較例2、5、8においては、ステアリン酸コバルト(II)をポリアミド化合物10に対して、コバルト含有量が400ppmとなるように添加した。
また、比較例3、6、9においては、ステアリン酸コバルト(II)をポリアミド化合物10に対して、コバルト含有量が100ppmとなるように添加し、さらに、マレイン酸変性ポリブタジエン(日本石油化学(株)製、商品名:M−2000−20)をポリアミド化合物10の100質量部に対して3質量部添加した。
なお、比較例13〜14は、PETとして、東洋紡(株)製、商品名:IP560を、接着性樹脂としては、三菱化学(株)製、商品名:MODIC-AP、F534Aを用いた。
【0156】
実施例1〜27及び比較例1〜14で作製したダイレクトブローボトルについて、L−アスコルビン酸残存率、開封後の臭気・味覚を以下のようにして評価した。
(1)L−アスコルビン酸残存率
ダイレクトブローボトルの開口部からL−アスコルビン酸10%水溶液を100ml充填し、アルミ箔積層フィルムでヒートシールして開口部を密封した。実施例1〜13、15〜17、20〜25及び27、比較例1〜12では、オートクレーブ(SR−240、商品名、(株)トミー精工製)を用いて121℃30分間、レトルト処理を行なった後、この容器を23℃、50%RHの環境下に1ヶ月間保存した。また、実施例14、18、19、26及び比較例13〜14は、熱処理なしで23℃、50%RHの環境下に3ヶ月間保存したのち、内容液を取り出し、100ml容量のトールビーカーに内容液10mlを入れ、次いでメタリン酸と酢酸の混合水溶液5mlと蒸留水40mlを加えた。次いで、0.05mol/lのヨウ素溶液を滴定液とし、電位差滴定装置を用いて変曲点検出法により滴定を行い、その結果からL−アスコルビン酸残存率を求めた。なお、L−アスコルビン酸の残存率が高ければ、内容物の酸化劣化を抑制する効果に優れていることを意味する。
(2)開封時の臭気及び味覚
得られたダイレクトブローボトルに、ミネラルウォーターを満注充填し、封をした後、40℃50%RHの恒温槽に、1ヶ月間保管した。保管後、5人のパネラーにより、開封直後の容器内の匂いを嗅ぎ、異臭の有無を評価した。
また、開封後、5人のパネラーにより、ミネラルウォーターを口に含み、ミネラルウォーターの味の変化の有無を評価した。
○:異臭が全くなく、かつ、ミネラルウォーターの味の変化がない。
×:少しでも異臭がある、又はミネラルウォーターの味の変化が少しでもある。
表2に評価結果を示す。
【0157】
【表2】
【0158】
実施例1〜27のダイレクトブローボトルは、いずれも、L−アスコルビン酸残存率、開封時の臭気・味覚のすべてに優れていた。比較例1、4、7、10〜14は、L−アスコルビン酸の残存率が低かった。また、ステアリン酸コバルト(II)を用い酸素吸収性能を付与した比較例2、5、8は、ボイル処理後もしくは、熱水充填後に、層間剥離を生じ、バリア性が悪化したため、L−アスコルビン酸残存率の評価ができなかった。さらに、ステアリン酸コバルト(II)及びマレイン酸変性ポリブタジエンを酸素吸収バリア層に添加した比較例3、6、9は、L−アスコルビン酸残存率は良好であるものの、開封時の臭気・味覚が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明のダイレクトブローボトルは、酸素バリア性能及び酸素吸収性能を有するボトル容器として好適に用いることができる。