(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記押さえ凹部は、位置合わせ角度が冊子の折り目の中折り角度と同等程度に設定され、押さえ角度が位置合わせ角度より大きく、冊子の折り目の位置を保持し、かつ、冊子の折り目が押し潰される角度に開くように設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の用紙綴じ装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、ステープルと称される綴じ針で用紙の束を綴じる技術が知られている。
図7は、綴じ針の貫通原理を示す動作説明図である。用紙10Pに綴じ針501が貫通するには、
図7(a)に示すように、綴じ針501で用紙10Pが押圧される力で用紙10Pがせん断されるか、
図7(b)に示すように、綴じ針501で用紙10Pが押圧される力で用紙10Pが伸びで破断される必要がある。
【0003】
いずれの場合も、綴じ針501によって用紙10Pがひずまされ、許容ひずみ量を超えた場合に用紙10Pに穴が開いて綴じ針501が貫通する。用紙10Pの枚数が増えると綴じ針501が貫通しにくくなるのは、用紙10Pがひずむことで見かけ上の紙厚が増加するためである。
【0004】
図8は、綴じ針による綴じ例を示す動作説明図で、綴じ針を湾曲させた形態で曲げるめがねクリンチと称される形態を例に説明する。複数枚の用紙が束ねられた冊子10は、クリンチャと称す曲げ台50に載置される。曲げ台50は、綴じ針501を曲げる溝部51が形成される。
【0005】
綴じ針501は、ドライバ52に押圧されて、
図8(a)に示すように冊子10を貫通する。冊子10を貫通した綴じ針501は、
図8(b)に示すように、曲げ台50の溝部51に誘導され、
図8(c)に示すように内側に曲げられる。
【0006】
さて、用紙を綴じる等の処理を行う用紙処理装置として、中折りされた冊子を綴じ針で綴じる用紙綴じ装置が従来から提案されている(例えば、特許文献1参照)。用紙綴じ装置によって綴じ針で綴じられた冊子を作成する際、冊子品位を高めるため、以下のようなことが求められる。
【0007】
(1)作成された冊子の開きを抑える。
(2)折り目と綴じ針による綴じ位置を合わせる。
(3)ユーザが綴じ針の先端に触れないよう綴じ針をクリンチする。
【0008】
これらの要求を達成するため、中折りされた冊子を積載した後、綴じ処理を施す技術が知られている。
図9は、冊子形態の比較例を示す説明図である。
図9(a)に示すように、中折された冊子10の折り目10aに綴じ針501を通させるには、
図9(b)に示すように冊子10の平らな部分に綴じ針501を貫通させる場合に比べ、冊子10の許容ひずみ量を超えるために綴じ針501が行う仕事量が多い。このため、綴じ針501が貫通しにくく、針座屈が発生しやすい。通常、
図9(c)に示すように、冊子10をひずませることができれば、綴じ針501が貫通し易くなり、針座屈の発生は抑制される。
【0009】
図10は、従来の用紙綴じ装置の一例を示す構成図である。従来、綴じ針の貫通しにくさを解消するため、綴じ針を打つ箇所の折り目が平らになるように、冊子10を押さえ部材600で支持部材601に押圧した後、ステープル処理を行っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図11、
図12及び
図13は、従来の課題を示す説明図である。中折りされた冊子の折り目に綴じ針を貫通させて綴じる動作では、綴じ針が冊子を押し潰しながら貫通するため、仕事量が多くなる。
【0012】
綴じ針を冊子10に貫通させる際の仕事量を低減させるためには、
図11(a)に示すように、冊子10の折り目10aを押圧する部位が平面状の押さえ部材600で冊子10を押圧して、折り目10aが平面状になるように押し潰すことが好ましい。しかし、
図11(b)に示すように、折り目10aが平面状になると、押さえ部材600で冊子10を保持する力が弱くなり、冊子10が折り目10aに対して直交する方向に移動する可能性がある。冊子10がこの方向に移動すると、綴じ針を貫通させる位置から折り目10aがずれて、冊子品位が低下する。
【0013】
これに対し、
図12(a)に示すように、冊子10の折り目10aと同等程度の角度の三角形状を有した押さえ部材602で冊子10を押圧すれば、
図12(b)に示すように、押さえ部材602で折り目10aを保持するために十分な力を冊子10に掛けられ、冊子10が折り目10aに対して直交する方向に移動することを抑制できる。しかし、冊子10の折り目10aを押し潰す能力が低く、綴じ針を冊子10に貫通させる際の仕事量を低減させることができない。
【0014】
また、
図13(a)に示すように、押さえ部材603の三角形状の角度を大きくすれば冊子10の折り目10aを押し潰す能力が向上し、綴じ針を冊子10に貫通させる際の仕事量を低減させることができる。しかし、冊子10を保持する力が弱くなり、
図13(b)に示すように、押さえ部材603で冊子10の押圧を開始する際に、冊子10が移動する可能性がある。
【0015】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、冊子品位の確保と綴じ針の貫通性を両立可能な用紙綴じ装置、及び、この用紙綴じ装置を備えた画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、中折りされた状態で載置された冊子を、折り目の位置に合わせて綴じ針で綴じる用紙綴じ装置において、綴じ針を冊子に貫通させるステープラと、冊子を貫通した綴じ針を曲げるクリンチャと、中折りされた状態で載置された冊子を、ステープラで綴じ針を冊子に貫通させる前から押圧する冊子押さえ手段とを備え、冊子押さえ手段は、冊子の折り目の位置に合わせて頂点部を有した2つ以上の押圧面で凹状の三角形状が構成される押さえ凹部を備え、押さえ凹部は、冊子押さえ手段で冊子を押圧する動作で、頂点部の角度が、位置合わせ角度から押さえ角度に開
き、冊子の折り目の角度を押さえ角度に合わせて広げるよう構成され、ステープラは、冊子押さえ手段により折り目の角度が押さえ凹部の押さえ角度に合わせて広げられた冊子に綴じ針を貫通させるよう構成される用紙綴じ装置である。
【0017】
請求項2に記載の発明は、押さえ凹部は、位置合わせ角度が冊子の折り目の中折り角度と同等程度に設定され、押さえ角度が位置合わせ角度より大きく、冊子の折り目の位置を保持し、かつ、冊子の折り目が押し潰される角度に開くように設定される請求項1に記載の用紙綴じ装置である。
【0018】
請求項3に記載の発明は、冊子押さえ手段は、押圧面を有した第1の押圧部材と第2の押圧部材が軸を支点に回転して押さえ凹部の角度が切り替えられ、軸は、冊子押さえ手段で冊子を押圧するときに軸と冊子の折り目とが対向するように配置される請求項1または2に記載の用紙綴じ装置である。
【0019】
請求項4に記載の発明は、冊子押さえ手段は、押さえ凹部で押圧される冊子を支持する支持部材を備え、支持部材は、平面をなす支持面を備えた請求項1、請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の用紙綴じ装置である。
【0020】
請求項5に記載の発明は、支持部材は、冊子押さえ手段が冊子を押圧する方向に沿って移動可能な支持凸部を備えた請求項4に記載の用紙綴じ装置である。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の用紙綴じ装置を備えた画像形成システムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、冊子の押圧を開始するタイミングでは、押さえ凹部で冊子の折り目の角度を所定の位置合わせ角度で保持することで、冊子の折り目を保持するために十分な力が冊子に掛けられ、冊子が折り目に対して直交する方向に移動することを抑制できる。これにより、綴じ針を貫通させる位置から折り目がずれることを抑制することができる。
【0023】
また、本発明では、冊子が押し潰されるタイミングでは、押さえ凹部で冊子の折り目が押さえ角度に合わせて広げられて保持されることで、冊子の折り目を残しながら、冊子を押し潰すことができ、綴じ針が冊子を貫通する際に必要な貫通力を低減することができる。また、押さえ凹部で冊子の折り目を押さえ角度で保持するので、折り目と直交する方向への冊子の位置ずれを抑制することができ、綴じ針を貫通させる綴じ位置と折り目の位置ずれを抑制することができる。これにより、針座屈を抑制した針の貫通性能と綴じ位置性能を両立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の用紙綴じ装置、用紙綴じ装置が組み込まれた画像形成システムの実施の形態について説明する。
【0026】
<本実施の形態の用紙綴じ装置及び画像形成システムの構成例>
図1は、本実施の形態の用紙綴じ装置の一例を示す要部斜視図、
図2は、本実施の形態の用紙綴じ装置の一例を示す要部側面図、
図3及び
図4は、本実施の形態の用紙綴じ装置の動作例を示す要部側面図、
図5は、本実施の形態の用紙綴じ装置が組み込まれた画像形成システムの一例を示す構成図である。
【0027】
本実施の形態の用紙綴じ装置1Aは、
図5に示すように、用紙に画像を形成して排紙する画像形成装置100と組み合わせられて画像形成システム101を構成する。画像形成システム101は、本例では、画像形成装置100と、中間搬送装置200と、中綴じ処理装置300と、平綴じ処理装置400を備える。
【0028】
画像形成装置100は、用紙に画像を形成する。画像形成装置100は、例えば、記録媒体として備蓄された用紙を用紙トレイから引き出して搬送する搬送部、ビットマップデータに応じたトナー像を転写ローラ等の一次転写部材に現像する現像部、一次転写部材に現像されたトナー像を転写ドラム150等の二次転写部材に転写する一次転写部、二次転写部材に転写されたトナー像を搬送部により搬送される用紙に転写する二次転写部、転写されたトナー像を用紙に定着させる定着部、及び定着部による定着処理後の用紙を排出する排出部等を備える。画像形成装置100は、画像が形成された用紙を中間搬送装置200に搬送する。
【0029】
中間搬送装置200は、用紙を一時的に待機させると共に、用紙に対して筋付け及び断裁を施すことの可能な装置である。中間搬送装置200は、例えば、画像形成装置100から搬送された用紙を下降させるように搬送して用紙の紙面を上下方向にほぼ沿わせた状態で一旦停止させて待機させるスタッカと称される待機部、待機中の用紙の位置を整合する整合部、整合された用紙に筋付けを行うクリーサと称される筋付け部、及び筋付けが施された用紙を搬送しながら当該用紙の余白部分を断裁するスリッタと称される断裁部等を備える。
【0030】
中間搬送装置200は、画像形成装置100から搬送された用紙を待機部において一旦停止させた状態で整合部により整合を行い、次いで筋付け部により筋付け処理を行った後、筋付けが施された用紙を搬送しながら当該用紙の余白部分を断裁部により断裁する。その後、中間搬送装置200は、断裁部により余白部分の断裁された用紙を中綴じ処理装置300に搬送する。
【0031】
中綴じ処理装置300は、用紙処理装置として、用紙を中折り(二つ折り)にする中折り処理、中折りされた用紙を所定枚数重ね合わせて綴じることにより中綴じされる冊子を作成する中綴じ処理、冊子の小口断裁を行う断裁処理等を行う装置である。
【0032】
中綴じ処理装置300は、例えば、中間搬送装置200から搬送された用紙中折りする中折り部310と、中折り部310により中折りされた用紙を、用紙の折り目に沿った方向に搬送する搬送機構320と、搬送機構320により搬送された用紙を重ね合わせた後、冊子10に対して打針して中綴じする用紙綴じ装置1Aと、中綴じされた冊子10の小口端部の断裁処理を行う断裁部370等を備える。
【0033】
次に、
図1〜
図4を参照して、本実施の形態の用紙綴じ装置1Aの詳細について説明する。用紙綴じ装置1Aは、中折りされた冊子10が、折り目10aが凸状となる向きである本例では上に凸となる向きで積載される支持部材2と、冊子10を支持部材2に押圧する押さえ部材3を備える。また、用紙綴じ装置1Aは、綴じ針を冊子10に貫通させるステープラ4と、綴じ針を曲げて冊子10を綴じるクリンチャ5を備える。クリンチャ5は、
図8に示すように、めがねクリンチができるように、湾曲した溝部51が形成される。
【0034】
用紙綴じ装置1Aは、支持部材2に載置される冊子10の折り目10aの方向に沿って、クリンチャ5の両側に支持部材2が配置される。また、クリンチャ5に対向してステープラ4が配置され、ステープラ4の両側に、支持部材2と対向して押さえ部材3が配置される。
【0035】
用紙綴じ装置1Aは、ステープラ4をクリンチャ5に対して離接する方向に移動させると共に、ステープラ4に連動して、押さえ部材3を支持部材2に対して離接する方向に移動させる駆動機構6を備える。
【0036】
支持部材2は冊子押さえ手段の一例で、支持部材2の押さえ部材3と対向する側、本例では支持部材2の上面に、押さえ部材3で冊子10が押圧される支持面20を備える。また、支持部材2は、冊子10の折り目10aを支持する支持凸部21を備える。
【0037】
支持面20は、冊子10の折り目10aに対して直交する方向に所定の長さを有した平面を設けて構成される。支持凸部21は、冊子10の折り目10aの方向に沿ってクリンチャ5の両側に設けられ、押さえ部材3が冊子10を押圧する方向である上下方向に沿って移動可能に構成される。支持凸部21は、ばね22で上方向に付勢されて、支持面20から突出する。
【0038】
支持凸部21は、冊子10の折り目10aに沿った形状で、上側に凸形状の冊子10の折り目10aを下側から支持することで、つまり、冊子10の折り目10aを凹側から支持することで、ステープラ4に対する折り目10aの位置合わせを行う。
【0039】
押さえ部材3は冊子押さえ手段の一例で、冊子10の折り目10aを押圧する押さえ凹部30を備える。押さえ部材3は、支持凸部21に支持された冊子10の折り目10aの位置に合わせて三角形状となる凹部を設けて押さえ凹部30が構成される。
【0040】
そして、押さえ部材3が冊子10を押圧する動作と、綴じ針が冊子10を貫通する動作のそれぞれで、冊子10の折り目10aを各動作に適した角度で保持できるようにするため、押さえ部材3は、第1の押圧部材31aと第2の押圧部材31bを備えて、押さえ凹部30の角度を可変とする。
【0041】
押さえ部材3は、支持部材2と対向する側である第1の押圧部材31aの下面に第1の押圧面32aが形成される。また、押さえ部材3は、支持部材2と対向する側である第2の押圧部材31bの下面に第2の押圧面32bが形成される。
【0042】
押さえ部材3は、駆動機構6を構成するアーム部60に、第1の押圧部材31aと第2の押圧部材31bが軸33を支点に回転可能に支持され、第1の押圧面32aと第2の押圧面32bの組み合わせで、頂点部Pが凹状の三角形状となる押さえ凹部30が構成される。
【0043】
軸33は、支持凸部21に支持された冊子10の折り目10aと平行な向きで、押さえ部材3で冊子10を押圧するときに軸33と冊子10の折り目10aとが対向するように、折り目10aの直上の位置に配置される。第1の押圧部材31aと第2の押圧部材31bが軸33を支点に回転する動作では、押さえ凹部30の頂点部Pは、折り目10aの位置からずれない。
【0044】
押さえ部材3は、第1の押圧面32aと第2の押圧面32bのなす角である押さえ凹部30の角度を制御するばね34を備える。ばね34は付勢手段の一例で、例えば、ねじりコイルばねで構成される。
【0045】
押さえ部材3は、第1の押圧部材30aと第2の押圧部材30bを、押さえ凹部30の角度が小さくなる方向に軸33を支点として回転させる力がばね34で加えられる。
【0046】
押さえ部材3は、押さえ凹部30の角度を規制するストッパ35及びストッパ36を備える。ストッパ35及びストッパ36は角度規制手段の一例で、軸33を支点に回転する第1の押圧部材31a及び第2の押圧部材31bが突き当てられる凸部を設けて構成される。
【0047】
押さえ部材3は、押さえ凹部32の角度が小さくなる方向に回転する第1の押圧部材30aが突き当てられる位置と、第2の押圧部材30bが突き当てられる位置にストッパ35が設けられる。また、押さえ部材3は、押さえ凹部32の角度が大きくなる方向に回転する第1の押圧部材30aが突き当てられる位置と、第2の押圧部材30bが突き当てられる位置にストッパ36が設けられる。
【0048】
押さえ部材3で冊子10を押圧する動作で、押圧を開始するタイミングでは、押さえ部材3は、第1の押圧部材31aと第2の押圧部材31bがストッパ35に突き当てられる位置まで、ばね34の力で軸33を支点に回転している。
【0049】
押さえ部材3は、第1の押圧部材31aと第2の押圧部材31bがストッパ35に突き当てられる状態では、押さえ凹部30の角度が、支持部材2に積載された冊子10の折り目10aのなす角度である中折り角度α1と同等程度の位置合わせ角度α2に規制される。
【0050】
これにより、押さえ部材3で冊子10の押圧を開始するタイミングでは、折り目10aの角度が押さえ凹部30によって位置合わせ角度α2に保持される。
【0051】
押さえ部材3で冊子10を押圧する動作で、押さえ凹部30の角度が大きくなる方向に第1の押圧部材31aと第2の押圧部材31bは回転する。そして、押さえ部材3で冊子10が押し潰されるタイミングでは、押さえ部材3は、第1の押圧部材31aと第2の押圧部材31bがストッパ36に突き当てられる位置まで軸33を支点に回転する。
【0052】
押さえ部材3は、第1の押圧部材31aと第2の押圧部材31bがストッパ36に突き当てられる位置まで軸33を支点に回転すると、押さえ凹部30の角度が、位置合わせ角度α2より大きい押さえ角度α3に規定される。
【0053】
これにより、押さえ部材3で冊子10が押し潰されるタイミングでは、折り目10aの角度が押さえ凹部30によって押さえ角度α3に保持される。
【0054】
位置合わせ角度α2は、押さえ部材3が冊子10の押圧を開始する動作で、冊子10が折り目10aに対して直交する方向に移動することが抑制できるような角度で折り目10aの形状を保つ値に設定される。
【0055】
押さえ部材3が冊子10を押圧する動作で、押さえ凹部30の角度が位置合わせ角度α2から押さえ角度α3に開くように変化しても、冊子10の折り目10aの位置を保持して冊子10が移動することが抑制できるような角度で折り目10aの形状が保たれる。
【0056】
そして、押さえ角度α3は、綴じ針が冊子10を貫通する動作で、綴じ針に掛かる負荷が低減されるような角度に折り目10aの形状を保つ値に設定される。
【0057】
本例では、支持部材2に積載された冊子10の折り目10aのなす中折り角度α1が90°程度であるのに対し、位置合わせ角度α2が90°〜100°程度に設定され、押さえ角度α3が140°〜160°程度に設定される。
【0058】
<本実施の形態の用紙綴じ装置及び画像形成システムの動作例>
図6は、本実施の形態の用紙綴じ装置の動作例を示す説明図で、次に、各図を参照して、用紙綴じ装置1Aで冊子10を綴じる動作について説明する。
【0059】
画像形成システム101では、中綴じ処理装置300で中折り処理及び積載処理が行われた冊子10が、用紙綴じ装置1Aに搬送され、冊子10が支持部材2に積載される。支持部材2に積載された冊子10は、
図2に示すように、折り目10aが支持凸部21で支持される。
【0060】
用紙綴じ装置1Aは、駆動機構6で押さえ部材3を支持部材2に近づく方向に移動させることで、支持部材2に載置された冊子10が押さえ部材3で押圧され、押さえ部材3と支持部材2との間に冊子10が挟持される。
【0061】
押さえ部材3で冊子10を押圧する動作で、
図3に示すように、押圧を開始するタイミングでは、押さえ部材3は、第1の押圧部材31aと第2の押圧部材31bがストッパ35に突き当てられる位置まで回転しており、折り目10aの角度が押さえ凹部30によって位置合わせ角度α2に保持される。
【0062】
冊子10の折り目10aを押圧する部位が平面状の押さえ部材で冊子10を押圧すると、折り目10aが平面状になるように押し潰される。折り目10aが平面状になると、押さえ部材で折り目10aを保持する力が弱くなり、冊子10が折り目10aに対して直交する方向に移動する可能性がある。冊子10がこの方向に移動すると、綴じ針を貫通させる位置から折り目10aがずれる。
【0063】
これに対し、押さえ部材3は、冊子10の押圧を開始するタイミングでは、折り目10aの角度を所定の位置合わせ角度α2で保持する。折り目10aが位置合わせ角度α2に折り曲げられていれば、第1の押圧面32a及び第2の押圧面32bを介してばね34により冊子10に掛けられる力の位置が、折り目10aの近傍となる。よって、押さえ部材3で折り目10aを保持するために十分な力を冊子10に掛けられ、冊子10が折り目10aに対して直交する方向に移動することを抑制できる。これにより、綴じ針を貫通させる位置から折り目10aがずれることが抑制される。
【0064】
支持部材2は、冊子10の折り目10aに直交する方向に沿って、支持凸部21の両側に平面をなす支持面20が設けられ、押さえ部材3が冊子10を押圧する動作で、支持凸部21が、ばね22に抗して押し下げられる。
【0065】
これにより、押さえ部材3で冊子10を押圧する動作で、押さえ部材3が支持部材2に近づく方向に移動すると、第1の押圧部材31aと第2の押圧部材31bが、ばね34に抗して軸33を支点に回転して、押さえ凹部30の角度が位置合わせ角度α2から徐々に大きくなる。
【0066】
軸33は、支持凸部21に支持された冊子10の折り目10aと平行な向きで直上に配置されているので、第1の押圧部材31aと第2の押圧部材31bが回転する動作で、押さえ凹部30の頂点部Pは、折り目10aの位置からずれない。
【0067】
また、押さえ部材3が冊子10を押圧する動作で、押さえ凹部30の角度が位置合わせ角度α2から徐々に大きくなっても、冊子10が移動することが抑制できるような角度で折り目10aの形状が保たれる。
【0068】
これにより、押さえ部材3で冊子10を押圧する動作で、押さえ凹部30の角度が位置合わせ角度α2から徐々に大きくなっても、綴じ針を貫通させる位置から折り目10aがずれることが抑制される。
【0069】
そして、押さえ部材3で冊子10が押し潰されるタイミングでは、押さえ部材3は、第1の押圧部材31aと第2の押圧部材31bがストッパ35に突き当てられる位置まで回転して、押さえ凹部30の角度が押さえ角度α3となる。
【0070】
押さえ部材3で冊子10が押し潰されて、押さえ部材3と支持部材2との間に冊子10が挟持されると、冊子10の折り目10aが押さえ凹部30の押さえ角度α3に合わせて広げられる。また、
図4に示すように、支持部材2の支持凸部21は支持面20より突出した状態となる。
【0071】
これにより、冊子10の折り目10aが形成された部位は平らにならず、かつ、折り目10aの中折り角度α1が、押さえ凹部30の押さえ角度α3に合わせて広げられて保持される。また、
図6に示すように、冊子10の折り目10aに沿ったクリンチャ5の両側では、折り目10aが支持凸部21で支持されることで、折り目10aとクリンチャ5の間には、押さえ部材3の押さえ凹部30の凹形状に合わせて、所定の隙間Nが形成される。
【0072】
図4に示すような冊子10の保持状態で、押さえ部材3に連動させてステープラ4をクリンチャ5に近づく方向に移動させることで、ステープラ4とクリンチャ5との間に冊子10を挟持させる。そして、綴じ針をステープラ4で打ち出して冊子10を貫通させ、冊子10を貫通させた綴じ針の脚部をクリンチャ5で曲げることで、冊子10が綴じ針で綴じられる。押さえ部材3を支持部材2から離れる方向に移動させると共に、ステープラ4をクリンチャ5から離れる方向に移動させることで、綴じ処理が終了する。
【0073】
ステープラ4で冊子10を綴じる動作で、折り目10aとクリンチャ5の間に隙間Nが形成されていることで、綴じ針が冊子10を貫通する際に、
図9(c)のように冊子10がひずみ易くなり、綴じ針が貫通し易くなる。よって、針座屈の発生を抑制することができる。また、押さえ部材3による押圧を解放した後、押圧されていた冊子10が元の形状に戻ろうとするが、見かけ上の厚みが増加せず、針浮きの発生を抑制することができる。
【0074】
このように、冊子10の折り目10aを平面状とはせずに、押さえ凹部30の押さえ角度α3に合わせて保持されることで、冊子10の折り目10aを残しながら、冊子10を押し潰すことができ、綴じ針が冊子10を貫通する際に必要な貫通力を低減することができる。また、冊子10の折り目10aを押さえ角度α3で保持するので、折り目10aと直交する方向への冊子10の位置ずれを抑制することができ、綴じ針を貫通させる綴じ位置と折り目10aの位置ずれを抑制することができる。これにより、針座屈を抑制した針の貫通性能と綴じ位置性能を両立させることができる。
【0075】
ステープラ4で冊子10を綴じる動作が終了し、駆動機構6で押さえ部材3を支持部材2から離れる方向に移動させることで、押さえ部材3は、ばね34の力で押さえ凹部30の角度が小さくなる方向に軸33を支点に回転し、第1の押圧部材31aと第2の押圧部材31bがストッパ35に突き当てられる位置まで戻る。
【0076】
用紙綴じ装置1Aでは、ばね34、ストッパ35及びストッパ36を備えて、押さえ部材3が支持部材2に近づく方向に移動して冊子10を押圧する動作では、冊子10を押圧する力で、押さえ凹部30が位置合わせ角度α2から押さえ角度α3まで開くようにすることができる。そして、ストッパ36で第1の押圧部材31a及び第2の押圧部材31bの角度を規制することで、押さえ凹部30が押さえ角度α3以上に開くことを防止できる。
【0077】
また、押さえ部材3が支持部材2から離れる方向に移動する動作では、ばね34の力で押さえ凹部30が押さえ角度α3から位置合わせ角度α2まで閉じるようにすることができる。そして、ストッパ35で第1の押圧部材31a及び第2の押圧部材31bの角度を規制することで、押さえ凹部30が位置合わせ角度α2以上に閉じることを防止できる。よって、簡単な構成で、押さえ凹部30の角度を制御することができる。
【0078】
なお、冊子10を構成する用紙の紙種、坪量、枚数、サイズによらず、押圧を開始するタイミングでは押さえ凹部30が位置合わせ角度α2で保持されて、冊子10に位置ずれを起こさないための十分な荷重がかけられ、かつ、冊子10を押し潰すタイミングでは、押さえ凹部30が押さえ角度α3まで開ききるように、ばね34に掛かる荷重が設定される。
【0079】
また、冊子10を押し潰すタイミングでは、押さえ凹部30が押さえ角度α3まで開ききった後に押さえ部材3の移動を停止できるようにするため、押さえ部材3等に掛かる負荷を検知して、押さえ部材3の移動量を制御してもよい。