(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、化学プラントなどのプロセス制御では、圧力伝送器、温度伝送器、流量計およびバルブポジショナなどのフィールド機器に対する設定、調整などの制御を行う機器制御装置(以下、「ホスト機器」という)が用いられる。
【0003】
ホスト機器には、DCS(Distributed Control System)、PC(Personal Computer)および携帯端末などがあり、例えば、フィールドバスを介してフィールド機器に接続され、デジタル通信を行う。機器制御を実行するにあたり、設定機能、調整機能などの複数の制御機能があり、ホスト機器は、各種制御機能を実行することによってフィールド機器を制御する。
【0004】
図9にフィールド機器管理システム100の一例が示されている。プラント400内には複数のフィールド機器310が設置されている。フィールド機器310は、フィールトバス330等によるフィールド通信により、中継装置300に接続され、更に、LAN(Local Area Network)等のネットワーク220経由で計器室200に設置されたホスト機器210に接続される。
【0005】
ところで、現場作業員が、フィールド機器310に対し、データのモニタ、設定変更、各種保守等の作業を実施する場合、フィールド機器310の作業に精通している必要がある。工場によっては認定制度等があり、一定のスキルを有した作業員のみにその作業が許される。また、新しいフィールド機器310を導入した場合、パラメータが異なる等、すぐに精通することが難しいのが現状である。そのため、大量の技術資料や現場記録用のカメラ311を持参し、あるいは特定のエリアから携帯電話313やトランシーバー等を利用して計器室200にいる作業員の指示を受けて作業を行なったりすることもある。
【0006】
フィールド機器310が新しくなって作業員が精通していないフィールド機器310に対して、HHT312(Hand Held Terminal)等の端末装置から設定変更を行う場合、不慣れな作業になるため、誤った設定を行ってしまう場合がある。設定の仕方や設定パラメータが不明確な場合、計器室200にいる作業員に、持参した携帯電話313やトランシーバーなどで作業内容を確認し、あるいは危険な現場での作業は、進捗状況を逐次報告する場合もある。
【0007】
現場作業員は、慣れないフィールド機器310を扱う場合、不安や心配といった緊張を抱くため多大な疲労を感じる。仮に、設定ミスが発生した場合、プロセス全体に影響がでる。システムには膨大なパラメータが搭載されているため、直ちに不具合を発見することが困難であり、特定の動作時だけで発生する不具合などの場合、運転が開始されてから初めて把握できる場合もある。いずれにせよ、設定変更を記したメモや写真、変更内容ログなどを解析して、初めてパラメータの設定ミスを発見することになり、膨大な分析作業を有することがある。
【0008】
例えば、特許文献1に、設定処理のための作業負担を軽減可能なフィールド機器の設定方法、およびフィールド機器の設定システムに関する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、HHT312として高性能な端末装置を利用する場合が多く、膨大な情報を記録しているため、逆に不具合箇所を検出するのに時間がかかる場合もある。従来、現場作業員がフィールド機器に対して設定変更を行った場合、一般的にホスト機器210は変更の事実を把握できず、ホスト機器210との間で設定値に対して互換がとれなくなる場合がある。また、通信プロトコルによって変更されたことがわかるステータス情報を有している場合もあるが、どのパラメータが変更されたかは不明である。この場合、ホスト機器210は、対象となるフィールド機器の情報を再読込みしてデータを同期させる必要があり、わずかなパラメータ変更であるにも関わらず、工業用低速通信(フィールド通信330)の負荷増大を招き、時間と労力を費やしている。
【0011】
また、現場で不具合があった場合、写真を撮ることがある。しかし膨大なフィールド機器310の写真を撮る場合、後にデータ整理するとき、どの写真がどのフィールド機器310に対応するのか判断がつきにくい場合が多い。この場合、銘板を確認し、あるいはファイル名に紐付けしたりしているが、入力ミスが発生しやすいという問題があった。
【0012】
本発明は上記した諸々の課題を解決するためになされたものであり、フィールド機器に対する設定変更の際の現場作業員の負荷を減らし、かつ、ホスト機器との間の連携によるデータ保全が可能な、フィールド機器管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した課題を解決するために本発明のフィールド機器管理システムは、プラントに設置される複数のフィールド機器と、前記プラントとは離れた場所に設置され、前記フィールド機器とは第1のネットワーク経由で接続される1以上のホスト機器と、前記フィールド機器とは第2のネットワーク経由で接続され、前記ホスト機器と第3のネットワーク経由で接続される端末装置とを備え、前記端末装置は、前記フィールド機器と前記第2のネットワーク経由でフィールド通信を行う第1の通信インタフェース部と、前記ホスト機器と前記第3のネットワーク経由で近距離無線通信を行う第2の通信インタフェース部と、前記フィールド機器のいずれかのデータ更新を行う場合、前記第2の通信インタフェース部を介して前記ホスト機器と通信を行い、前記ホスト機器から前記第2の通信インタフェース部を介して更新承認情報を受信し、前記第1の通信インタフェース部を介して前記フィールド機器のデータ更新を行う制御部と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記制御部は、前記データ更新の際にエラーが発生した場合、前記
第2の通信インタフェース部を介して前記ホスト機器にエラーメッセージを送信することを特徴とする。
【0015】
本発明において、前記端末装置は、表示部を更に備え、前記制御部は、前記ホスト機器から前記
第2の通信インタフェース部を介してメッセージを受信すると、前記メッセージを
前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0016】
本発明において、前記制御部は、前記データ更新を行った場合、前記第2の通信インタフェース部を介して前記ホスト機器に前記データ更新の履歴情報を送信し、前記第3のネットワーク経由で前記履歴情報を受信したホスト機器は、前記履歴情報に基づき自身のデータ更新を行ない内部データの同期をとることを特徴とする。
【0017】
本発明において、前記制御部は、前記第1の通信インタフェース部を介して前記フィールド機器にアクセス可能な状態になると、前記第2の通信インタフェース部を介し、前記ホスト機器に対して特定のループに接続したことを通知することを特徴とする。
【0018】
本発明において、前記端末装置は、記憶部を更に備え、前記制御部は、前記ホスト機器が
前記フィールド機器のデータ更新を行った場合、前記ホスト機器から前記第3のネットワーク経由で前記データ更新の履歴情報を受信し、前記受信した履歴情報に基づき前記記憶部のデータ更新を行ない、内部データの同期をとることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フィールド機器に対する設定変更の際の現場作業員の負荷を減らし、かつ、ホスト機器との間の連携によるデータ保全が可能なフィールド機器管理システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態の構成)
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0022】
図1によれば、本実施形態に係るフィールド機器管理システム1は、プラント10に設置されるバルブポジショナ等の複数のフィールド機器11と、プラント10とは離れた場所に設置され、フィールド機器11とは、中継装置30およびLAN等のネットワーク22(第1のネットワーク)経由で接続される1以上のPC等のホスト機器21と、により構成される。
【0023】
HHT12(端末装置)は、フィールド機器11のループに対して工業計器専用の通信(Brain,HART,Fieldbus,Profibus等があり、以下、これらを総称してフィールド通信13(第2のネットワーク)という)が結合される。HHT12は、更に、Wi−Fi(登録商標)ネットワーク14(第3のネットワーク)によりWi−Fi親機15(アクセスポイント)、およびネットワーク22経由でホスト機器21に接続される。HHT12は、複数のフィールド機器11のいずれかの設定変更に伴うデータ更新を行う場合、Wi−Fi親機15、及びLAN等のネットワーク22経由でホスト機器21と通信を行い、ホスト機器21からネットワーク22およびWi−Fi親機15経由で更新承認情報を受信してデータ更新を行う。
【0024】
HHT12の内部構成が
図2に示されている。HHT12は、制御部120と、記憶部121と、入力部122と、表示部123と、フィールド通信部124(第1の通信インタフェース部)と、近距離無線通信部125(第2の通信インタフェース部)と、電池126とを含み、構成される。
【0025】
記憶部121には、ROM,RAM,あるいはEEPROMが実装されており、ROMには、制御部120が実行するプログラムが、RAM,あるいはEEPROMには、プログラム実行過程でのデータが格納される。なお、ROM,RAMは、制御部120に実装されてもよい。
【0026】
制御部120はマイクロプロセッサを内蔵し、入力部122からの電源ON操作に基づき、電池126から電力の給電をうけて起動する。制御部120は、生成された表示情報を表示部123に転送し、これを視認した現場作業員が期待する動作を選択する。表示部123は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)を表示デバイスとして有し、ホスト機器21から送信されるメッセージ等も表示する。
【0027】
フィールド通信部124は、フィールドバス通信モジュールを内蔵し、HHT12がフィールド通信13に結合され、フィールド機器11との間でデータ交換を行う際の通信インタフェースを司る。近距離無線通信部125は、Wi−Fi親機15との間で、例えばWi−Fi(登録商標)に準拠した無線通信を行う。近距離無線通信部125は、Wi−Fi通信モジュールを内蔵し、プラント10内の任意の場所に設置されたWi−Fi親機15との間で構築されるWi−Fiネットワーク14により、計器室20に設置されたホスト機器21とLAN等のネットワーク22で結合され、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等のプロトコルにしたがい通信を行う。
【0028】
制御部120は、複数のフィールド機器11のいずれかのデータ更新を行う場合、近距離無線通信部125とWi−Fi親機15からなるWi−Fi通信ネットワーク14、およびLAN等のネットワーク22を介してホスト機器21と通信を行い、ホスト機器21から更新承認情報を受信し、フィールド通信部124、およびフィールド通信13を介してデータ更新を行う。制御部120は、データ更新の際にエラーが発生した場合、Wi−Fiネットワーク14経由でホスト機器21にエラーメッセージを送信してもよい。また、制御部120は、ホスト機器21からWi−Fiネットワーク14経由でメッセージを受信すると、そのメッセージを表示部123に表示してもよい。
【0029】
また、制御部120は、フィールド機器11のデータ更新を行った場合、Wi−Fiネットワーク14経由でホスト機器21にデータ更新の履歴情報を送信し、その履歴情報を受信したホスト機器21は、履歴情報に基づき自身のデータ更新を行ない内部データの同期をとる。また、制御部120は、ホスト機器21がデータ更新を行った場合、ホスト機器21からWi−Fiネットワーク14経由でデータ更新の履歴情報を受信し、受信した履歴情報に基づき記憶部121のデータ更新を行ない、内部データの同期をとる。
【0030】
また、制御部120は、フィールド通信部124を介してフィールド機器11にアクセス可能な状態になると、Wi−Fiネットワーク14を介し、ホスト機器21に対して特定のループに接続したことを通知してもよい。
【0031】
(実施形態の動作)
以下、本実施形態に係るフィールド機器管理システム1の動作について
図3以降のシーケンス図を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
まず、
図3のシーケンス図を参照してデータ変更の承認処理から説明する。すなわち、プラント10内の現場作業員がフィールド機器11に対して設定データの書き込みを行う場合、計器室20にいる作業員に承認を得て実際の設定データの書き込みを行う場合の動作について説明する。
【0033】
現場作業員がフィールド通信13を使用して特定のパラメータの書き換えを行う場合(ステップS101)、HHT12は、Wi−Fiネットワーク14を使って計器室20にあるホスト機器21に確認メッセージ(書き込み承認依頼)を送信する。ホスト機器21が、その確認メッセージを受信すると、例えば、
図4にその画面構成の一例を示す承認要求画面を表示してする(ステップS102)。承認要求画面には、一部領域に、承認ボタンや否決ボタン等が割り付けられ表示されている。なお、承認要求画面の詳細は後述する。
【0034】
計器室20の作業員は、内容を確認し、精査して承認する場合は承認ボタンを押下する(ステップS103)。承認結果は、Wi−Fiネットワーク14経由で現場作業員が持つHHT12で受信される。承認を得たHHT12は、表示部123に承認完了メッセージを表示すると共に(ステップS104)、フィールド機器11に対して承認された新設定値を、フィールド通信13を使用して書き込む(ステップS105)。なお、否決ボタンが押下されて承認が拒絶された場合、HHT12はフィールド機器11に対して新設定値を書き込むことができない。
【0035】
HHT12は、新設定値の書き込みが終了すると、Wi−Fiネットワーク14経由でホスト機器21に書き込みが正常終了したことを通知する(ステップS106)。
【0036】
ホスト機器21は、正常終了を受信すると(ステップS107)、対象のフィールド機器11に対して設定変更が正しく実行されたか否かを確認するために、ネットワーク22、中継装置30およびフィールド通信13を使用してフィールド機器11から直接データを取得する(ステップS108)。フィールド機器11がデータを返信すると(ステップS109)、ホスト機器21は、読み出した設定値が、予め承認された設定値になっているか否かを比較判定して、ホスト機器21の端末に設定変更完了等のメッセージを表示する(ステップS110)。
【0037】
なお、フィールド機器11への書き込みが失敗した場合、HHT12の表示部123にエラーメッセージが表示されるとともに、Wi−Fiネットワーク14経由でホスト機器21の端末に対してもエラーメッセージが表示される。また、ホスト機器21からHHT12に対し、メモ、写真、ドキュメント等をWi−Fiネットワーク14経由で転送することが出来るため、上記の様に書き込みエラーとなった場合の解決策を画面に表示し、あるいは指示することができる。
【0038】
ここで、承認要求画面について補足する。ホスト機器21は、承認要求画面の左上領域に表示される、HHT12からWi−Fiネットワーク14経由で送信される情報をもとに、端末名、対象機器名、パラメータ名、データ名、設定値等を生成して表示する。図中、承認(OK)、否決(NG)ボタンは、HHT12から要求がある場合に限り有効化され、普段は、グレーアウトされている。「コメント入力or送信されるファイル名」は、コメントや関連資料をHHT12に送付する場合に利用する。画面右上領域には、ホスト機器21からフィールド通信を経由してフィールド機器11と通信を行う場合に用いる領域であり、機器名、パラメータ名、データ等を生成し、表示する(図示省略)。ここでは、リクエストしたい機器名、パラメータ名を設定し、送信ボタンをクリックすることで通信を開始することができる。なお、画面下領域のボックスには、通信ログが表示される。表示は、番号(No)、日付、時間、端末名、対象機器名(アクセスされるフィールド機器名)、パラメータ名、処置(講じる処置内容)、データ/設定値、旧値(書き込みに利用)、ステータス等が表示される。処置には、Read(フィールド機器のパラメータの読み出し),Write(フィールド機器のパラメータの書き込み),Send(端末、ホスト機器との情報交換),Judge(端末からの承認依頼)等の通信目的が示される。
【0039】
なお、パラメータにおいて、基本的にはブロック(所属する中分類)>名称と記述するが、ホスト機器21とHHT12間における通信においては、>記号を使わない。内容は、CONFIRM(承認要求に対する裁定結果をHHT12に行う),Join(フィールド機器との通信開始),REPORT(ホスト機器21がフィールド機器11に対して書き込みを実行したことをHHT12に転送),ACK(HHT12がホスト機器21からのREPORTを受信、更新したことを通知)等である。また。ステータスについて、基本的に動作を簡素化して記載する。(自動)と記載されているところは、ホスト機器21、もしくは端末同士が自動的に通信を開始した場合に記述される。
【0040】
上記したように本実施形態に係るフィールド機器管理システム1は、現場作業員がHHT12を操作してフィールド機器11に対してデータの書き込みを行う場合、Wi−Fiネットワーク14を用いてホスト機器21の管理者等に設定変更の承認を打診する機能を持つ。したがって、現場作業員がパラメータの書き換え等を実行する場合、操作ミスは勿論のこと、勘違い等で間違ったパラメータを書き込む可能性があったが、書き込む前にWi−Fiネットワーク14を利用して変更内容をホスト機器21に送信し、別の作業員の判断(承認作業)を仰ぐことができる。その結果、複数人で確認作業を行うことができ、したがって、誤ったデータの書き込みを未然に防ぐ効果がある。
【0041】
また、本実施形態に係るフィールド機器管理システム1によれば、ホスト機器は、データの書き込みが正常に実行されたか否かの情報も受信できるため、現場作業員が正常に書き込めたと勘違いした場合でも、計器室20にいる作業員と情報を共有できることからケアレスミスを未然に防ぐ効果もある。さらに、対象となるフィールド機器11の変更により制御ループに変化が発生し、その結果、別の作業員が対応しているフィールド機器11に影響が出ることも考えられるが、計器室20で承認できる仕組みを構築することにより、複数のフィールド機器11からの変承認が整うまで書き込みを待機させ、あるいは、各フィールド機器11への書き込み順(承認順)等をコントロール出来るといった効果も得られる。
【0042】
また、フィールド機器11への書き込みエラーが発生した場合、現場作業員は何が原因で書き込みができないかを把握することが難しい。本実施形態に係るフィールド機器管理システム1によれば、書き込みエラーが発生した場合に、Wi−Fiネットワーク14を用いてホスト機器21にもエラーメッセージを送信する機能を提供することで、計器室20内では各種リファレンスを参照し、あるいは、メーカーのサポートセンターと会話し(現場作業員が現場から直接連絡を取ることは難しい)、有識者と相談する等、多くの解決策を打診することができ、エラーに対する対処方法を即座に発見することが可能になる。
【0043】
また、本実施形態に係るフィールド機器管理システム1によれば、解決策が見出された場合、ホスト機器21から、Wi−Fiネットワーク14を使ってHHT12にメッセージを送信することができ、情報をHHT12に表示させることが出来るため、例えば、解決策の手順や関連資料、写真等を転送することができ、現場作業員は、HHT13に表示された指示を明確に確認できるといった効果も期待できる。
【0044】
次に、
図5のシーケンス図を参照して、現場作業員がフィールド機器11に対して行った作業内容を計器室20にいる作業員もリアルタイムに共有する場合の動作を説明する。ここでは、プラント10内の現場作業員がフィールド機器11に対し、シミュレータを用いて出力値の確認やフィールド機器11のアラームがどの様に変化するかを確認する作業について例示する。
【0045】
現場作業員は、まず、フィールド機器11にシミュレータを接続して入力値を可変に出来るように設定する。例えば、0%出力となる入力値を設定し、HHT12を用いて出力値を確認する(ステップS201)。フィールド機器11は、リクエストされたパラメータを読み出して返信すると(ステップS202)、HHT12は、受信したパラメータを表示部123に表示する。そして、受信した画面、あるいは実際に通信したデータを、Wi−Fi通信により計器室20のホスト機器21に転送する(ステップS203)。
【0046】
ホスト機器21は、HHT12の画面と端末で操作した結果得られた通信パラメータのデータを画面に表示し、また、内蔵するメモリにログとして記録する(ステップS204〜S206)。次に、ホスト機器21は、フィールド機器11に対してアラームが発生していないか、同様の手順で確認する(ステップS207)。ここでは複数のパラメータを読む必要がある場合、順次、HHT12から取得したデータを確認する(ステップS208〜S212)。HHT12で操作した手順も含めて、ホスト機器21の端末(図示省略)に表示され、メモリにデータと共にログとして記録する。ログの更新タイミングは、定時更新データや、アラーム発生のイベント等、HHT12が通信を自動受信したときであり、このとき、現場作業員が行った操作時にログ化し、ホスト機器21とリアルタイムに情報を共有する。
【0047】
このことにより、計器室20の作業員は、現場のHHT12の内容を視覚的に確認することが出来、またホスト機器21は、直接現場のフィールド機器11をネットワーク22、フィールド通信13経由でアクセス出来るため、一方ではHHT12の操作ログを確認でき、他方では別経路から直接フィールド機器11のパラメータの状態を確認することができる。ホスト機器21、HHT12は、これらの情報をすべて同期させることで、現場作業員と計器室作業員が連携を取り、間違いない作業を確認し、すべての活動をメモリに保存することができる。
【0048】
図6に、ホスト機器21により生成される承認要求画面の一例が示されている。この承認要求画面によれば、現場作業員が、Simulate Valueにデータ設定し、計器室20のオペレータは、Primary Valueの値を読み込むことで、フィールド機器11の出力が徐々に低下しているのがわかる。現場作業員は、バルブ等、フィールド機器11の実物を確認し、最後に、Alarm1,Alarm2の関連パラメータを追加で読み込み、動作が正常であることを確認している。
【0049】
上記した本実施形態に係るフィールド機器管理システム1によれば、HHT12で操作した内容やフィールド機器11に対してアクセスしたパラメータ等の操作履歴をWi−Fiネットワーク14を使ってホスト機器21に送信し、同期させる機能を提供することができる。一般的に、HHT12はコンパクトな設計であり、大容量のメモリを搭載することが難しい。したがって、一定の操作履歴を残すことが出来ても、古い操作履歴は自動的に消去されることが多い。これに対し、本実施形態のフィールド機器管理システム1では、Wi−Fiネットワーク14に接続しているため、操作履歴をホスト機器21とリアルタイムで同期させることが出来る。
【0050】
このため、計器室20の作業員は、プラント10内の現場作業員が、今何を行っているのか、どのような作業状況になっているのかを容易に把握することができる。例えば、フィールド機器11の入出力確認などを行う場合、フィールド機器11にシミュレータ疑似入力を行い、HHT12で読み出された出力値は、Wi−Fiネットワーク14を経由して、ホスト機器21に表示させることが出来る。したがって、単に出力値が正しいといった結果だけではなく、実際に入力を変化させるところから時系列的に把握でき、プラント10内における現場作業員の行動が計器室20でも確認できる効果がある。なお、画面イメージや通信情報は、時刻や作業員名などと共にデータベース形式にしてまとめることができる。
【0051】
また、ホスト機器21は、ネットワーク22を用いて直接フィールド機器11と通信することが出来るため、プラント10内における現場作業員のHHT12の情報と、ホスト機器21自らがフィールド機器11から取得したデータとを比較し、閲覧することが出来るため、HHT12では操作が難しい広範囲なパラメータを取得し、間違えがないか作業を監視し、総合的なバックアップが可能になる。メンテナンス側から見れば、このような操作履歴、データログは一定期間保存しておく必要があり、これらをデータベース化することで実現され、リアルタイム性とログとしての充実を同時に兼ね備えることができる。
【0052】
次に、
図7を参照してホスト機器21がデータを更新した場合にHHT12と同期をとる場合の動作について説明する。ここでは、現場作業員が特定のループ内にHHT12を接続した場合、いわゆるマルチマスター状態になった場合のフィールド機器11のパラメータのデータの同期の方法について説明する。
【0053】
特定のループ内にHHT12が結合された場合、HHT12(制御部120)は、Wi−Fiネットワーク14を経由してホスト機器21に対し特定のループに参加(バス接続)したことを通知する(ステップS301)。この通知を受けたホスト機器21は(ステップS302)、その特定のループ内のフィールド機器11に対して書き込みを行う(ステップS303)。ここで、正常に書き込めた場合は、Wi−Fiネットワーク14経由でHHT12にフィールド機器11のパラメータを変更した旨を伝達する(ステップS304〜S306)。
【0054】
HHT12は、その情報を元に、内部で保有しているパラメータを更新し、フィールド機器11の状態を改めてフィールド通信13を用いることなく最新の状態に更新する(ステップS307)。変更現場作業員に対しても、HHT12の表示部123の画面にメッセージを表示し、ホスト機器21から書き換えがあり、どのパラメータにどのような変更があったかを示す(ステップS308)。最後に、計器室作業員は、図示省略した端末で、現場でのパラメータの更新完了を確認し(ステップS309)、終了する。
【0055】
HHT12をフィールド機器11のあるループに接続する場合、通常、専用のホスト機器21(マスター機器)と同時に接続されている場合が多い。プロトコルによってはHHT12をセカンダリマスタとして接続できる仕様を有しているため、複数のホスト機器21が接続される場合、フィールド機器11はいずれのホスト機器21からもアクセスでき、特定のパラメータを変更させることができる。
【0056】
図8に、ホスト機器21により生成される承認要求画面の一例が示されている。HHT端末12が特定の機器と接続したことをホスト機器21に対してWi−Fiネットワーク14経由で伝達すると、ホスト機器は、モニタ画面とログ機能が利用できるようになる。ここでは、ホスト機器21からフィールド機器11に対して書き込みを実行したため、現場端末に対してレポートを送信し、端末側のデータベースが更新できたことが返送されている。
【0057】
本実施形態に係るフィールド機器管理システム1では、HHT12が現場のフィールド機器11にアクセス出来る状態になると、Wi−Fiネットワーク14経由で特定のループに接続したことをホスト機器21に通知できる機能を備えている。その結果、ホスト機器21からフィールド機器11の設定を変更した場合、セカンダリマスタに対して設定変更したことを通知することが出来る。
【0058】
従来、設定変更があったか否かわからないため、またプロトコルによって変更発生のステータス情報が包含され認識出来たとしてもどのパラメータが変更されたかわからず、したがって、フィールド機器11から全てのパラメータを再読込もみする必要があった。特に、HHT12において編集途中で発生すると、編集内容を強制的に破棄して、HHT12は、データの同期をとってから再度編集することもあった。これに対し、本実施形態によれば、特定のパラメータの変更情報をWi−Fiネットワーク14経由で受信できることから、HHT12内の情報更新を速やかに行うことが出来、内部データの同期をとることで、古い情報を書き込んでしまうことを未然に防ぐことができる。逆に、HHT12からの書き込みに対してもWi−Fiネットワーク14経由でその旨を送信できるため、ホスト機器21からみても特定のパラメータ変更を認識することが出来、ホスト機器21が保持しているデータベースを速やかに更新することができる。
【0059】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係るフィールド機器管理システム1によれば、HHT12がフィールド機器11に対してデータ書き込みを行う場合、Wi−Fiネットワーク14経由でホスト機器21の管理者等に設定変更の承認伺いを行う仕組みを構築することにより、複数人で確認作業を行うことができ、したがって、誤ったデータの書き込みを未然に防ぐことができ、システムの信頼性が向上する。
【0060】
また、HHT12で操作した内容やフィールド機器11に対してアクセスしたパラメータ(Read/Writeなど)の内容をWi−Fiネットワーク14を使ってホスト機器に送信することで、あるいは、ホスト機器21が更新したデータをWi−Fiネットワーク14を使ってHHT12に送信することで、HHT12とホスト機器21とが有するデータの同期化が可能であり、したがって、HHT12、ホスト機器21共に常に最新のデータを保持することができる。したがって、両者が保持するデータの差異による誤動作が無くなり、データの保全性が保証されるとともに信頼性の向上がはかれる。
【0061】
また、本実施形態に係るフィールド機器管理システム1によれば、HHT12が現場のフィールド機器11にアクセス出来る状態になると、Wi−Fiネットワーク14経由で特定のループに接続したことをホスト機器21に通知できるため、ホスト機器21からフィールド機器11の設定が変更された場合、セカンダリマスタに対してもその旨を通知することが出来る。また、特定のパラメータの変更情報をWi−Fiネットワーク14経由で受信できるため、HHT12内の情報更新を速やかに行うことが出来、内部データの同期をとることで、古い情報を書き込んでしまうータのことを未然に回避することが出来、データの保全性が保証されるとともにシステムとしての信頼性が向上する。
【0062】
なお、本実施形態に係るフィールド機器管理システム1によれば、Wi−Fiネットワーク14が搭載されているため、複数のHHT12は、それぞれ他のHHTと情報交換させることが出来る。また、ホスト機器21をクラウド化し蓄積されたデータベースをアクセスすることで別の作業員の進行状況を操作ログから確認することも可能である。なお、ホスト機器21との近距離無線通信のためにWi−Fiネットワーク14を使用するものとして説明したが、Wi−Fiネットワーク14に限らず、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)等により代替してもよい。
【0063】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。