特許第5971304号(P5971304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971304
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ホーンアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/02 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   H01Q13/02
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-219349(P2014-219349)
(22)【出願日】2014年10月28日
(65)【公開番号】特開2015-133690(P2015-133690A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2015年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2013-256236(P2013-256236)
(32)【優先日】2013年12月11日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502135679
【氏名又は名称】株式会社デンソーEMCエンジニアリングサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 一郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 考志
【審査官】 岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−308546(JP,A)
【文献】 特開昭52−133743(JP,A)
【文献】 特開昭63−067003(JP,A)
【文献】 特開2008−072538(JP,A)
【文献】 特開2009−293990(JP,A)
【文献】 特開2006−343191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/00−13/28
G01R 31/00
G01R 31/24−31/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器(300)のイミュニティ試験に用いられ、前記電子機器に向けて、周波数が1.2GHz以上1.4GHz以下、または、2.7GHz以上3.1GHz以下の電磁波を放射するホーンアンテナであって、
前記電磁波の放射方向に両端が開口した筒状を成して、一端の開口部である第1小開口部(11)と、他端の開口部である第1大開口部(12)と、を有し、内壁面(13)が前記第1小開口部から前記第1大開口部に向かって、前記電磁波の磁場ベクトルおよび電場ベクトルのそれぞれの向きに一定の割合で拡幅した第1テーパ部(10)と、
前記電磁波の放射方向に両端が開口した筒状を成して、一端の開口部である第2小開口部(21)と、他端の開口部である第2大開口部(22)と、を有し、内壁面(23)が前記第2小開口部から前記第2大開口部に向かって、前記電磁波の磁場ベクトルおよび電場ベクトルのそれぞれの向きに一定の割合で拡幅した第2テーパ部(20)と、を備え、
前記第1テーパ部および前記第2テーパ部における前記放射方向に直交する断面は、前記電磁波の磁場ベクトルに平行な辺と、電場ベクトルに平行な辺と、によって矩形に形成され、
前記第1テーパ部と前記第2テーパ部は、前記第1大開口部と前記第2小開口部とが一致するように一体的に形成され、
前記第2テーパ部における内壁面の前記放射方向に対する傾斜が、前記第1テーパ部における内壁面の前記放射方向に対する傾斜よりも緩やかにされ
前記第1小開口部の磁場ベクトルに沿う辺の長さをAi、電場ベクトルに沿う辺の長さをBiとし、
前記第1大開口部の磁場ベクトルに沿う辺の長さをAm、電場ベクトルに沿う辺の長さをBmとし、
前記第2大開口部の磁場ベクトルに沿う辺の長さをAo、電場ベクトルに沿う辺の長さをBoとし、
前記第1小開口部と前記第1大開口部の間の面間距離をL1とし、前記第1小開口部と第2大開口部の間の面間距離をLとしたとき、
Lを1200mmで一定とし、
L1を175mmで一定とし、
Aiを180mmで一定とし、
Biを90mmで一定とし、
Aoが670mmから785mmまで線形的に増加し、
Boが525mmから668mmまで線形的に増加し、
Amが251mmから670mmまで線形的に増加し、
Bmが153mmから383mmまで線形的に増加する形状の変化を、0から1までの線形的変化として定義し、さらに、
Lを1200mmで一定とし、
L1が175mmから414mmまで線形的に増加し、
Aiを180mmで一定とし、
Biを90mmで一定とし、
Aoが785mmから670mmまで線形的に減少し、
Boが668mmから533mmまで線形的に減少し、
Amを670mmで一定とし、
Bmが383mmから533mmまで線形的に増加する形状の変化を、1から2までの線形的変化として定義してなる形状パラメータkが、
前記第1テーパ部における前記第1小開口部に、周波数が1.2GHz以上1.4Gz以下とされた前記電磁波が入力された場合において、0.75≦k≦1.85を満たすように、前記第1テーパ部および前記第2テーパ部が形成されていることを特徴とするホーンアンテナ。
【請求項2】
電子機器(300)のイミュニティ試験に用いられ、前記電子機器に向けて、周波数が1.2GHz以上1.4GHz以下、または、2.7GHz以上3.1GHz以下の電磁波を放射するホーンアンテナであって、
前記電磁波の放射方向に両端が開口した筒状を成して、一端の開口部である第1小開口部(11)と、他端の開口部である第1大開口部(12)と、を有し、内壁面(13)が前記第1小開口部から前記第1大開口部に向かって、前記電磁波の磁場ベクトルおよび電場ベクトルのそれぞれの向きに一定の割合で拡幅した第1テーパ部(10)と、
前記電磁波の放射方向に両端が開口した筒状を成して、一端の開口部である第2小開口部(21)と、他端の開口部である第2大開口部(22)と、を有し、内壁面(23)が前記第2小開口部から前記第2大開口部に向かって、前記電磁波の磁場ベクトルおよび電場ベクトルのそれぞれの向きに一定の割合で拡幅した第2テーパ部(20)と、を備え、
前記第1テーパ部および前記第2テーパ部における前記放射方向に直交する断面は、前記電磁波の磁場ベクトルに平行な辺と、電場ベクトルに平行な辺と、によって矩形に形成され、
前記第1テーパ部と前記第2テーパ部は、前記第1大開口部と前記第2小開口部とが一致するように一体的に形成され、
前記第2テーパ部における内壁面の前記放射方向に対する傾斜が、前記第1テーパ部における内壁面の前記放射方向に対する傾斜よりも緩やかにされ
前記第1小開口部の磁場ベクトルに沿う辺の長さをAi、電場ベクトルに沿う辺の長さをBiとし、
前記第1大開口部の磁場ベクトルに沿う辺の長さをAm、電場ベクトルに沿う辺の長さをBmとし、
前記第2大開口部の磁場ベクトルに沿う辺の長さをAo、電場ベクトルに沿う辺の長さをBoとし、
前記第1小開口部と前記第1大開口部の間の面間距離をL1とし、前記第1小開口部と第2大開口部の間の面間距離をLとしたとき、
Lを1200mmで一定とし、
L1を204mmで一定とし、
Aiを90mmで一定とし、
Biを45mmで一定とし、
Aoが487mmから552mmまで線形的に増加し、
Boが344mmから457mmまで線形的に増加し、
Amが157mmから388mmまで線形的に増加し、
Bmが96mmから276mmまで線形的に増加する形状の変化を、0から1までの線形的変化として定義し、さらに、
Lを1200mmで一定とし、
L1が204mmから547mmまで線形的に増加し、
Aiを90mmで一定とし、
Biを45mmで一定とし、
Aoが552mmから464mmまで線形的に減少し、
Boが457mmから324mmまで線形的に減少し、
Amが388mmから464mmまで線形的に増加し、
Bmが276mmから324mmまで線形的に増加する形状の変化を、1から2までの線形的変化として定義してなる形状パラメータkが、
前記第1テーパ部における前記第1小開口部に、周波数が2.7GHz以上3.1Gz以下とされた前記電磁波が入力された場合において、0.70≦k≦1.90を満たすように、前記第1テーパ部および前記第2テーパ部が形成されていることを特徴とするホーンアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミュニティ試験に用いられるホーンアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば車両制御の高度化に伴って、車両に装備される電子機器は増加の傾向にある。これら電子機器には、電磁的な不干渉性や耐性、いわゆるEMC(Electro-Magnetic Compatibility)が要求される。EMCのうち、電磁的な耐性、すなわち、付近にある他の電子機器等から発生する電磁波によって自身の動作が阻害されない電磁感受性について実験室内で試験する、イミュニティ試験がある。
【0003】
イミュニティ試験の一つとして、ホーンアンテナによって意図的に生じさせた電場中に電子機器を配置し、電子機器の電磁的な耐性を試験するものがある。この試験における電場の強度(以下、単に電場という)は規格として規定されている。最近、航空機用レーダによる電波干渉を考慮して、この電場の規格値が変更されつつある。例えば、アメリカ合衆国においては、電場の規格値が、旧来の200V/mから600V/mに引き上げられた。
【0004】
規格値の引き上げに伴って、イミュニティ試験に用いられるホーンアンテナには、より大きな電場を発生させることが要求されている。電場の強度を高めるためには、より高出力のアンプを用いればよいが、これには大きなコストを要する。
【0005】
これを解決するため、特許文献1には、電磁ホーンと、該電磁ホーンから放射した電磁波を電子機器に導く導波板と、を備えた放射アンテナが提案されている。とくに、導波板が導波管から成るように構成することによって、電磁波の損失をより良好に低減できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−308546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、電磁ホーンと導波管が別体で設けられ、これらの間の距離によって、電子機器に印加できる電場の強度が変化することが記載され、この距離について言及されている。
【0008】
なお、導波管として、この文献には電磁波の放射方向に一定の矩形断面形状をもつものについて検証した結果が記載されている。また、他の例として、導波管が電磁ホーンから離間した状態で、電磁波の放射方向に拡幅あるいは縮幅したものも記載されている。
【0009】
しかしながら、電磁ホーンと導波管が別体で設けられていると、電磁波の放射方向に沿って両者の位置を正確に調整しなければならない。また、そのために、導波管をスライドさせるためのスライドレール等を設けなければならない。さらに、電場の強度を増加させるためには、電磁ホーンと導波管とを所定の距離だけ離間させなければならず、全体として体格が大きくなる。このため、試験室への搬入等に関してコスト増となるといった問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、低コストのアンプが使用できるホーンアンテナにおいて、体格を大きくすることなく、より良好な出力を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここに開示される発明は、上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。なお、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、電子機器(300)のイミュニティ試験に用いられ、電子機器に向けて、周波数が1.2GHz以上1.4GHz以下、または、2.7GHz以上3.1GHz以下の電磁波を放射するホーンアンテナであって、電磁波の放射方向に両端が開口した筒状を成して、一端の開口部である第1小開口部(11)と、他端の開口部である第1大開口部(12)と、を有し、内壁面(13)が第1小開口部から第1大開口部に向かって、電磁波の磁場ベクトルおよび電場ベクトルのそれぞれの向きに一定の割合で拡幅した第1テーパ部(10)と、電磁波の放射方向に両端が開口した筒状を成して、一端の開口部である第2小開口部(21)と、他端の開口部である第2大開口部(22)と、を有し、内壁面(23)が第2小開口部から第2大開口部に向かって、電磁波の磁場ベクトルおよび電場ベクトルのそれぞれの向きに一定の割合で拡幅した第2テーパ部(20)と、を備え、第1テーパ部および第2テーパ部における放射方向に直交する断面は、電磁波の磁場ベクトルに平行な辺と、電場ベクトルに平行な辺と、によって矩形に形成され、第1テーパ部と第2テーパ部は、第1大開口部と第2小開口部とが一致するように一体的に形成され、第2テーパ部における内壁面の放射方向に対する傾斜が、第1テーパ部における内壁面の放射方向に対する傾斜よりも緩やかにされていることを特徴としている。
【0013】
発明者による電磁界シミュレーションによれば、ホーンアンテナをこのような構成とすることによって、第2テーパ部(特許文献1における導波管に相当)として、従来の構成に較べて、より良好な電場の強度を実現し得る。すなわち、第1テーパ部と第2テーパ部とが一体的に形成された簡素な構成において、より良好な出力を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係るホーンアンテナのイミュニティ試験における配置図である。
図2】ホーンアンテナの概略構成を示す斜視図である。
図3】ホーンアンテナのxz平面に沿う側面図である。
図4】ホーンアンテナのxy平面に沿う上面図である。
図5】形状パラメータkとホーンアンテナの寸法の相互関係を示す図である。
図6】形状パラメータkに対する電場の強度を示す図である。
図7】第2実施形態に係る形状パラメータkとホーンアンテナの寸法の相互関係を示す図である。
図8】形状パラメータkに対する電場の強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分に、同一符号を付与する。なお、方向について、x方向と、x方向に直交するy方向と、x方向とy方向とにより規定されるxy平面に直交するz方向と、を定義する。
【0016】
(第1実施形態)
最初に、図1を参照して、本実施形態に係るホーンアンテナを用いたイミュニティ試験を実施するための構成について説明する。
【0017】
本実施形態に係るホーンアンテナは、イミュニティ試験に用いられるアンテナである。イミュニティ試験では、規格により定められた電場が電子機器に印加された状態で評価が行われる。
【0018】
図1に示すように、ホーンアンテナ100は、1.2GHz〜1.4GHzおよび2.7GHz〜3.1GHzの周波数帯の電磁波が進入しないようにされた暗室200内に配置されている。暗室200内には、ホーンアンテナ100と電子機器300とが配置されている。
【0019】
ホーンアンテナ100は、電磁波の発生源である発生部400と、発生部400で発生させた電磁波を電子機器300に効率良く導くためのホーン部500とを備えている。ホーン部500は、第1テーパ部10と第2テーパ部20とを備えている。ホーンアンテナ100はアンテナ架台600に固定され、電磁波の放射方向が、ホーンアンテナ100の設置面600aに対して平行になるように設置されている。以降、電磁波の放射方向をx方向と規定し、設置面600aはxy平面に沿う面であるとする。また、本実施形態におけるホーンアンテナ100は、xy平面に平行な所定な面に対して面対称な形状とされ、さらに、xz平面に平行な所定の面に対して面対称な形状とされている。以降、これら面が互いに交わる直線を放射軸Aと規定する。すなわち、ホーンアンテナ100は、yz平面において、放射軸Aを中心に2回対称の形状となっている。ホーンアンテナ100、とくにホーン部500の詳しい構成は追って詳述する。
【0020】
暗室200は、1.2GHz〜1.4GHzおよび2.7GHz〜3.1GHzの周波数帯の電磁波が進入しないようにされている。また、暗室200の内側の壁面200aには図示しない電波吸収体が形成され、ホーンアンテナ100から放射された電磁波が壁面200aで反射しないようになっている。これにより、反射波が電子機器300に影響しないようになっている。
【0021】
発生部400は、電子機器300に照射する電磁波を発生させる。発生部400は、一端が開口した導波筐体410の内部に、電磁波を生じさせるためのプローブ420が配置されている。プローブ420は、図示しない発振器、アンプおよびサーキュレータに接続されている。発振器は発生させる電磁波の周波数をスイープすることができるようになっており、所望の周波数とされた電磁波がプローブ420から発生することができるようになっている。また、発生部400に入力する入力電力が可変とされており、本実施形態では、例えば200ワットの電力を入力する。発振器に電力が供給されると、発振器で発生した信号がアンプによって増幅される。増幅された信号はサーキュレータを介してプローブ420に供給される。そしてプローブ420から所定周波数の電磁波が放射される。本実施形態における電磁波は、z方向に電場ベクトルが向き、y方向に磁場ベクトルが向くような直線偏波である。
【0022】
電子機器300は電子制御装置などの機器である。電子機器300は試験台700上に載置されている。図1に示すように、電子機器300は、電磁波の放射軸A上に置かれ、電子機器300の中心とホーンアンテナ100との距離が1メートルとされている。試験者は、電子機器300に電磁波を照射した状態で電子機器300の挙動を確認し、電磁的な耐性の評価を行う。
【0023】
次に、図2図4を参照して、本実施形態に係るホーンアンテナ100、とくにホーン部500について詳しく説明する。
【0024】
図1に示すように、ホーンアンテナ100は、発生部400とホーン部500とを備えている。ホーン部500は一定肉厚のアルミニウムにより形成され、図2に示すように、第1テーパ部10と第2テーパ部20とを備えている。また、発生部400はホーン部500と接続されている。発生部400における導波筐体410はアルミニウムにより形成され、ホーン部500と一体的に形成されている。なお、図2図4に示すホーン部500の形状は、電磁波が通過する空間部分の形状を示すものであって、この空間部分を形成するためのホーン部500の外形などは限定されない。
【0025】
第1テーパ部10は両端が開口した筒状を成しており、その両端の開口はそれぞれyz平面に平行である。第1テーパ部10は、両端の開口をそれぞれ上底および下底とした角錐台状を成している。両端の開口のうち、開口面積の小さい側を第1小開口部11と称し、開口面積の大きい側を第1大開口部12と称する。第1テーパ部10は角錐台状であるから、第1小開口部11および第1大開口部12は矩形である。そして、第1小開口部11および第1大開口部12は、矩形を構成する辺がy方向に沿う辺とz方向に沿う辺から成る。換言すれば、第1テーパ部10における放射方向に直交する断面は、電磁波の磁場ベクトルHに平行な辺と、電場ベクトルEに平行な辺と、によって矩形に形成されている。なお、第1小開口部11は、発生部400の導波筐体410の開口に接続されており、発生部400から放射された電磁波が第1小開口部11に入力される。
【0026】
第1小開口部11において、y方向(磁場ベクトルに沿う方向)の辺の長さをAiと定義し、z方向(電場ベクトルに沿う方向)の辺の長さをBiと定義する。また、第1大開口部12において、y方向の辺の長さをAmと定義し、z方向の辺の長さをBmと定義する。また、第1小開口部11と第1大開口部12との間の面間距離をL1と定義する。
【0027】
第2テーパ部20は両端が開口した筒状を成しており、その両端の開口はそれぞれyz平面に平行である。第2テーパ部20は、両端の開口をそれぞれ上底および下底とした角錐台状を成している。両端の開口のうち、開口面積の小さい側を第2小開口部21と称し、開口面積の大きい側を第2大開口部22と称する。第2テーパ部20は角錐台状であるから、第2小開口部21および第2大開口部22は矩形である。そして、第2小開口部21および第2大開口部22は、矩形を構成する辺がy方向に沿う辺とz方向に沿う辺から成る。換言すれば、第2テーパ部20における放射方向に直交する断面は、電磁波の磁場ベクトルHに平行な辺と、電場ベクトルEに平行な辺と、によって矩形に形成されている。
【0028】
このホーン部500は、第1テーパ部10における第1大開口部12と、第2テーパ部20における第2小開口部21とが一体的に形成されている。ゆえに、第1大開口部12と第2小開口部21は互いにその寸法が等しい。すなわち、第2小開口部21において、y方向の辺の長さはAmであり、z方向の辺の長さはBmである。なお、第2大開口部22において、y方向の辺の長さをAoと定義し、z方向の辺の長さをBoと定義する。また、第1小開口部11と第2大開口部22との間の面間距離、すなわちホーン部500の全長、をLと定義する。
【0029】
さらに、図3に示すように、ホーン部500のy軸に直交する断面において、第1テーパ部10の内壁面13と放射方向との成す角をθ1vと定義する。また、第2テーパ部20の内壁面23と放射方向との成す角をθ2vと定義する。一方、図4に示すように、ホーン部500のz軸に直交する断面において、第1テーパ部10の内壁面13と放射方向との成す角をθ1hと定義する。また、第2テーパ部20の内壁面23と放射方向との成す角をθ2hと定義する。このホーン部500は、第2テーパ部20における内壁面23の放射方向に対する傾斜が、第1テーパ部10における内壁面13の放射方向に対する傾斜よりも緩やかにされている。換言すれば、θ1v>θ2v、且つ、θ1h>θ2hとされている。
【0030】
上記したように、このホーンアンテナ100は、ホーン部500として第1テーパ部10と第2テーパ部20とを備えた二段テーパホーンアンテナである。発生部400で発生させた電磁波を第1小開口部11から入力し、第2大開口部22から出力するようになっている。イミュニティ試験を実施する際は、第2大開口部22から電子機器300までの距離を1メートルとする。
【0031】
なお、本実施形態におけるホーン部500の具体的な寸法は、Ai≒180mm、Bi≒90mm、Am≒670mm、Bm≒383mm、Ao≒785mm、Bo≒668mm、L≒1200mm、L1≒175mmである。この場合、θ1v≒39.9度、θ2v≒7.9度、θ1h≒54.5度、θ2h≒3.2度となる。
【0032】
次に、本実施形態に係るホーンアンテナ100の作用効果について説明する。
【0033】
発明者は、コンピュータシミュレーションにより、ホーン部500の寸法と、電子機器300が配置される位置での電場の強度の関係について精査した。ここに示す電場とは、入力される電磁波の周波数が1.2GHz〜1.4GHzの場合において、第2大開口部22から1メートルの距離における電場の最小値である。シミュレータには、入力する電力として、1ワットを指定している。
【0034】
ホーン部500の形状を一意に決めるためのパラメータは複数存在するが、発明者は、形状パラメータkを以下のように定義した。
【0035】
従来技術である、一段テーパホーンアンテナの態様における形状パラメータをk=0とする。具体的には、Ai=180mm、Bi=90mm、Am=251mm、Bm=153mm、Ao=670mm、Bo=525mm、L=1200mm、L1=175mmのとき、k=0とする。なお、k=0においては、θ1v=θ2v≒10.27度、θ1h=θ2h≒11.54度となる。
【0036】
また、上記した本実施形態であるホーン部500の態様における形状パラメータをk=1とする。そして、kが0から1まで線形的に変化するとき、各パラメータAi、Bi、Am、Bm、Ao、Bo、L、および、L1が線形的に変化するようにkを定める。具体的には、図5に示すように、Lを1200mmで一定とし、L1を175mmで一定とし、Aiを180mmで一定とし、Biを90mmで一定とする条件において、kが0から1まで線形的に増加していくのに伴って、Amが251mmから670mmまで線形的に増加し、Bmが153mmから383mmまで線形的に増加し、Aoが670mmから785mmまで線形的に増加し、Boが525mmから668mmまで線形的に増加するようにする。
【0037】
また、特許文献1に記載の従来技術である、導波管を備えたホーンアンテナの態様における形状パラメータをk=2とする。具体的には、Ai=180mm、Bi=90mm、Am=670mm、Bm=533mm、Ao=670mm、Bo=533mm、L=1200mm、L1=414mmのとき、k=2とする。なお、k=2においては、θ2v=0度、θ2h=0度となる。つまり、本実施形態における第2テーパ部20に相当する部分がテーパを有さない。
【0038】
そして、kが1から2まで線形的に変化するとき、各パラメータAi、Bi、Am、Bm、Ao、Bo、L、および、L1が線形的に変化するようにkを定める。具体的には、図5に示すように、Lを1200mmで一定とし、Aiを180mmで一定とし、Amを670mmで一定とし、Biを90mmで一定とする条件において、kが1から2まで線形的に増加していくのに伴って、L1が175mmから414mmまで線形的に増加し、Bmが383mmから533mmまで線形的に増加し、Aoが785mmから670mmまで線形的に減少し、Boが668mmから533mmまで線形的に減少するようにする。
【0039】
上記のように定義した形状パラメータkに対して、第2大開口部22から1メートルの距離における電場をシミュレータにより計算すると図6に示すようになる。
【0040】
従来技術であるk=0では、電場はE≒33.6V/mであり、k=2ではE≒38.3V/mである。図6によれば、第2テーパ部20として、テーパを有しつつも(θ2v≠0度、且つ、θ2h≠0度)、第1テーパ部10よりも緩やかなテーパを有する構成とすることによって、従来構成における電場38.3V/mよりも大きな電場を実現することができることがわかる。すなわち、第1テーパ部と第2テーパ部とが一体的に形成された簡素な構成において、従来の態様よりも良好な出力を実現し得る。
【0041】
より具体的には、図6に示すように、1.2GHz〜1.4GHzの周波数をもつ電磁波を用いて試験する場合において、形状パラメータkとして、0.75≦k≦1.85を満たすようにホーンアンテナ100の形状を定めれば、確実に38.3V/mよりも大きな電場を実現することができる。とくに、本実施形態に記載したように、k=1となるようにホーンアンテナ100の形状を定めれば、電場はE≒48.1V/mであり、0≦k≦2の範囲において、極大となる。k=1に対応する形状のホーンアンテナ100は、一般的な一段テーパホーンアンテナ(k=0)の場合に較べて、48.1/33.6≒1.43倍の電場を得ることができる。換言すれば、同一の電場を得るために必要な電力を、1/(1.43)≒0.49倍に抑制することができる。
【0042】
(第2実施形態)
第1実施形態では、入力する電磁波の主な周波数が1.2GHz〜1.4GHzのホーンアンテナ100について説明した。これに対して、本実施形態では、入力する電磁波の主な周波数が2.7GHz〜3.1GHzの場合について例示する。なお、ホーン部500の具体的な寸法を除く各要素の構成、および、各角度の大小関係(θ1v>θ2v、且つ、θ1h>θ2h)は第1実施形態と同様であるから、説明を省略する。
【0043】
なお、本実施形態におけるホーン部500の具体的な寸法は、Ai≒90mm、Bi≒45mm、Am≒388mm、Bm≒276mm、Ao≒552mm、Bo≒457mm、L≒1200mm、L1≒204mmである。この場合、θ1v≒29.5度、θ2v≒5.2度、θ1h≒36.1度、θ2h≒4.7度となる。
【0044】
発明者は、第1実施形態と同様に、コンピュータシミュレーションにより、ホーン部500の寸法と、電子機器300が配置される位置での電場の強度の関係について精査した。ここに示す電場とは、電磁波の周波数が2.7GHz〜3.1GHzの場合において、第2大開口部22から1メートルの距離における電場の最小値である。シミュレータには、入力する電力として、1ワットを指定している。
【0045】
従来技術である、一段テーパホーンアンテナの態様における形状パラメータをk=0とする。具体的には、Ai=90mm、Bi=45mm、Am=157mm、Bm=96mm、Ao=487mm、Bo=344mm、L=1200mm、L1=204mmのとき、k=0とする。なお、k=0においては、θ1v=θ2v≒7.1度、θ1h=θ2h≒9.4度となる。
【0046】
また、上記した本実施形態であるホーン部500の態様における形状パラメータをk=1とする。そして、kが0から1まで線形的に変化するとき、各パラメータAi、Bi、Am、Bm、Ao、Bo、L、および、L1が線形的に変化するようにkを定める。具体的には、図7に示すように、Lを1200mmで一定とし、L1を204mmで一定とし、Aiを90mmで一定とし、Biを45mmで一定とする条件において、kが0から1まで線形的に増加していくのに伴って、Amが157mmから388mmまで線形的に増加し、Bmが96mmから276mmまで線形的に増加し、Aoが487mmから552mmまで線形的に増加し、Boが344mmから457mmまで線形的に増加するようにする。
【0047】
また、特許文献1に記載の従来技術である、導波管を備えたホーンアンテナの態様における形状パラメータをk=2とする。具体的には、Ai=90mm、Bi=45mm、Am=464mm、Bm=324mm、Ao=464mm、Bo=324mm、L=1200mm、L1=547mmのとき、k=2とする。なお、k=2においては、θ2v=0度、θ2h=0度となる。つまり、本実施形態における第2テーパ部20に相当する部分がテーパを有さない。
【0048】
そして、kが1から2まで線形的に変化するとき、各パラメータAi、Bi、Am、Bm、Ao、Bo、L、および、L1が線形的に変化するようにkを定める。具体的には、図7に示すように、Lを1200mmで一定とし、Aiを90mmで一定とし、Biを45mmで一定とする条件において、kが1から2まで線形的に増加していくのに伴って、L1が204mmから547mmまで線形的に増加し、Amが388mmから464mmまで線形的に増加し、Bmが276mmから324mmまで線形的に増加し、Aoが552mmから464mmまで線形的に減少し、Boが457mmから324mmまで線形的に減少するようにする。
【0049】
上記のように定義した形状パラメータkに対して、第2大開口部22から1メートルの距離における電場をシミュレータにより計算すると図8に示すようになる。
【0050】
従来技術であるk=0では、電場はE≒49.3V/mであり、k=2ではE≒57.0V/mである。図8によれば、第2テーパ部20として、テーパを有しつつも(θ2v≠0度、且つ、θ2h≠0度)、第1テーパ部10よりも緩やかなテーパを有する構成とすることによって、従来構成における電場57.0V/mよりも大きな電場を実現することができることがわかる。すなわち、第1テーパ部と第2テーパ部とが一体的に形成された簡素な構成において、従来の態様よりも良好な出力を実現し得る。
【0051】
より具体的には、図8に示すように、2.7GHz〜3.1GHzの周波数をもつ電磁波を用いて試験する場合において、形状パラメータkとして、0.70≦k≦1.90を満たすようにホーンアンテナ100の形状を定めれば、確実に57.0V/mよりも大きな電場を実現することができる。とくに、本実施形態に記載したように、k=1となるようにホーンアンテナ100の形状を定めれば、電場はE≒72.3V/mであり、0≦k≦2の範囲において、極大となる。k=1に対応する形状のホーンアンテナ100は、一般的な一段テーパホーンアンテナ(k=0)の場合に較べて、72.3/49.3≒1.47倍の電場を得ることができる。換言すれば、同一の電場を得るために必要な電力を、1/(1.47)≒0.47倍に抑制することができる。
【0052】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0053】
上記した実施形態におけるシミュレーションでは、形状パラメータkを0.05刻みで離散的に計算を実行したが、形状パラメータkの変化は連続的である。したがって、電磁波の周波数が1.2GHz〜1.4GHzであれば、図5に示す寸法に限定されることなく、0.75≦k≦1.85を満たすようにホーン部500の形状を定めれば、確実に38.3V/mよりも大きな電場を実現することができる。
【0054】
また、電磁波の周波数が2.7GHz〜3.1GHzであれば、図7に示す寸法に限定されることなく、0.70≦k≦1.90を満たすようにホーン部500の形状を定めれば、確実に57.0V/mよりも大きな電場を実現することができる。
【0055】
また、上記した実施形態に示した各寸法は、電磁波が通過する部分の形状を示すものであって、電磁波が通過する部分を除く部分、例えば外形などは限定されない。例えば、直方体状のアルミニウムを、内部の形状が上記した実施形態における寸法になるようにくり抜き、直方体の対向する2つの面に第1小開口部11と第2大開口部22とが露出するようにホーン部500を形成してもよい。
【0056】
また、上記した実施形態では、発生部400の導波筐体410およびホーン部500にアルミニウムを使用する例を示したが、アルミニウムに限定されない。これらを構成する材料は、導体であればよい。ただし、ホーンアンテナ100自体の重量を軽量化するために、アルミニウムを用いることが好ましい。
【0057】
上記した実施形態では、電場ベクトルの向きがz方向を向く態様について説明したが、発生部400およびホーン部500は、放射軸A周りに回転できるようになっており、偏波面の向きは変更可能である。具体的には、本実施形態のように電場ベクトルをz方向に向ける垂直偏波や、電場ベクトルをy方向に向ける水平偏波、あるいはそれ以外の方向に変更することができるようになっている。
【符号の説明】
【0058】
10・・・第1テーパ部,11・・・第1小開口部,12・・・第1大開口部
20・・・第2テーパ部,21・・・第2小開口部,22・・・第2大開口部
100・・・ホーンアンテナ
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8