【実施例1】
【0043】
図1は、この発明の第1実施例の半導体装置の構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のX−X線で切断した要部断面図である。この半導体装置100は、パワー半導体モジュールを例に挙げた。ここではインバータ回路の1相分を示した。
【0044】
図2は、
図1で示す各部品の要部平面図であり,同図(a)は半導体チップ、位置決め用外部端子および回転防止用外部端子を固着した導電パターンの平面図、同図(b)はポストピン付プリント基板の平面図である。
【0045】
図3は、
図1で示す第1凹部に半導体チップを配置した要部平面図である。点線の丸は参考までにポストピン16を示す。
図1〜
図3において、半導体装置100は、セラミック板などの絶縁板3の裏側に冷却ベース2が固着し表側に金属箔で形成された導電パターン4が固着した導電パターン付絶縁基板1と、表側の導電パターン4に形成された半導体チップ9,10(9が例えばIGBTチップ、10がダイオードチップ)を位置決めする第1凹部5と、この第1凹部5に半田8を介して裏面が固着される半導体チップ9,10からなる。
【0046】
また、半導体チップ9のゲートパッド9bおよびエミッタ電極パッド9a(主電極パッド)に半田15を介して固着されるポストピン16と、導電パターン14が形成された絶縁板11aにポストピン16が固着したポストピン付プリント基板11と、導電パターン4の第2凹部6に嵌合して固着される位置決め兼用の第1外部端子17と、導電パターン4の第3凹部7に嵌合して固着される第1外部端子17以外の第2外部端子18と、第1外部端子17が貫通するポストピン付プリント基板11に形成された位置決め用の第1貫通孔12と、第2外部端子18が貫通するポストピン付プリント基板に形成された第1貫通孔以外の第2貫通孔13とから構成される。
【0047】
尚、前記のポストピン16とは半導体チップ9のゲートパッド9bやエミッタ電極パッド9aおよび半導体チップ10のアノード電極にその先端が半田付けされる接続導体柱のことであり、このポストピン16は導電パターン14が形成された絶縁板11a(プリント基板)にその根元が嵌合・固着され一体化されている。以下の説明で半導体チップとしてはIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)チップを例として上げる場合があり、その場合には符号は9のみとする。
【0048】
前記の第2凹部6、第3凹部7と第1外部端子17,第2外部端子18を図示しない半田を介して固着することで、嵌合と半田固着により、凹部と第1外部端子17,第2外部端子18の固着強度が大きくなる。また、凹部6,7の開口部を大きくして半田のみで第1外部端子17,第2外部端子18を固着しても構わない。
【0049】
また、前記の貫通孔12,13の周りの絶縁板11aに図示しない導電パターン14を配置し、この導電パターン14と第1外部端子17、第2外部端子18を半田を介して固着すると、一層、外部端子の固着強度が大きくなる。
【0050】
また、前記の第1外部端子17と第2外部端子18は長さと直径(0.6mm〜1mm程度)が同一の円柱、ポストピン16の直径は0.1mm〜0.3mm程度である。第1凹部5の深さは0.2mm程度である。
【0051】
前記の導電パターン4に形成される第1凹部5の四角形の開口部は半導体チップ9、10の外周部の寸法に対して50μm程度大きくし、第1凹部5の開口部形状を半導体チップ9、10の外形と相似形にする。
【0052】
この第1凹部5の深さは半田8の厚さより深くし、半田8と半導体チップ9、10を合わせた厚さより浅くする。前記の第1外部端子17の直径に対してポストピン付プリント基板11の第1貫通孔12の直径を50μm程度大きくする。この位置決め兼用の第1外部端子17が貫通する第1貫通孔12の開口部の大きさを第2貫通孔13の開口部の大きさより小さくする。
【0053】
また、2本の位置決め兼用の第1外部端子17を設けるのは、ポストピン付プリント基板11が半導体チップ9に対して回転移動するのを抑えるためである。この2本の位置決め兼用の第1外部端子17の間隔を半導体チップ9より大きくすることで、回転移動を小さくできて位置決め精度を向上できる。
【0054】
また、位置決めの要求精度によっては、2本の第1外部端子17を貫通させる貫通孔12のうち、回転防止に用いる方の大きさを位置決めに用いる方より多少大きめに形成しても構わない。
【0055】
また、第1凹部5から半導体チップ9、10を取り出す必要がないので、半導体チップ9、10と第1凹部5の隙間21を75μm程度以下とすることができる。
また、位置決め兼用の第1外部端子17とポストピン付プリント基板11に形成した第1貫通孔12の間隔22は25μm程度にする。
【0056】
後述の
図5に示すように、第1凹部5と半導体チップ9、10の位置ズレの最大値は70μmである。この位置ズレに第1外部端子17とポストピン付プリント基板11の位置決め用の第1貫通孔12との位置ズレの最大値を加えると、ポストピン16とゲートパッド9bの位置ズレの最大値となる。つまり、ポストピン16とゲートパッド9bの位置ズレの最大値は70μm程度+25μm程度=95μm程度となる。
【0057】
これは従来のポストピン57とゲートパッド55bの位置ズレの最大値である0.7mmに対して本実施例のポストピン16とゲートパッド9bの位置ズレの最大値は1/7程度となり、本実施例を用いることで大幅に位置合わせ精度を向上させることができる。このポストピン16とゲートパッド9bの位置決め精度は、そのままポストピン16とエミッタ電極パッドの位置決め精度ともなる。このように、位置合わせ精度が向上することにより、半導体チップ9,10の高密度実装が可能となる。
【0058】
また、第1凹部5に入る半田8の厚さを第1凹部5の深さより薄くすることで、半田8が溶融した場合でも、半導体チップ9、10は第1凹部5の側壁を乗り越えることがなく、第1凹部5内に留まるので、従来に比べると位置合わせ精度を大幅に向上できる。
【0059】
また、位置合わせ精度が向上することで、半導体チップ9、10の間隔を狭めることができる。例えば、機械加工などによる加工限界を考慮した場合でもその間隔を、0.7mm程度(従来は2mm程度)に小さくできて、半導体チップ9、10を高密度実装することができる。
【0060】
また、前記の半導体チップ9,10としては、Siチップは勿論のこと、SiC−IGBTチップ,SiC−MOSFETチップ,SiC−SBD(ショットキーバリアダイオード)チップなどのSiCチップなどである。特にSiCチップは小型化に適しており本発明が効果を発揮することができる。
【0061】
図4は、
図1の半導体装置100の製造方法であり、同図(a)〜同図(d)は工程順に示した要部製造工程断面図である。
同図(a)において、導電パターン付絶縁基板1の導電パターン4に第1凹部5、第2凹部6、第3凹部7(図示せず)を形成し、この第1凹部5に半田8と半導体チップ9,10(10は図示せず)を載置し、第2凹部6、第3凹部7に第1外部端子17,第2外部端子18(図示せず)をそれぞれ嵌合する。第1凹部5の深さは半田8の厚さより深く、半田8と半導体チップ9,10を合わせた厚さより浅くする。第1、第2、第3凹部5,6,7(7は図示せず)は機械加工、薬液によるエッチング、レーザー加工による切削加工などで形成する。半田8、15として、WBG(ワイドバンドギャップ)素子(SiCチップなど)に対応するために、高温鉛フリー半田を用いると良い。
【0062】
さらに具体的に高温鉛フリー半田について説明する。高温鉛フリー半田は、例えば、SnAgCuNiGe系半田、SnAg系半田、SnSb系半田、SnAgCu系半田、SnAgBi系半田、SnCuBi系半田、SnCu系半田、SnAu系半田、AuSi系半田、AgSi系半田、AgGe系半田などがある。また、半田の代わりにろう材やナノAgなどの金属粒子を含む接合材でもよい。
【0063】
ろう材としては、銀ろう、銅ろう、黄銅ろう、アルミろう、金ろう、りん銅ろう等が挙げられるが、チップ接合を考慮すると融点が300℃付近の低温ろう材がよく、具体的にはAu−Sn系ろうがよい。
【0064】
また、前記の金属粒子を含む接合材とは、100μm程度以下のAgの粒子を、周りを有機物で結合・被覆し、溶剤を混入してペースト状にした接合材である。これを加熱、及び条件によっては加圧を行うことにより、溶媒・有機物が分解・揮発し、金属が焼結することで接合材として機能する。金属粒子としては、前記のAg粒子(ナノAg)のほかに、Zn粒子、Au粒子、Al粒子、Ni粒子、Sb粒子、Bi粒子、Sn粒子、Pd粒子、及びCu粒子などがある。
【0065】
尚、半田8の平面形状を四角形にすると、第1凹部に入れ込む場合に位置合わせが必要となる。しかし、半田8を円形にすると第1凹部5との位置合わせが不要となるので好ましい。但し、溶融した円形の半田8が第1凹部5で均一に所定の厚みが確保されるように半田量を管理する必要がある。
【0066】
つぎに、同図(b)において、半導体チップ9,10上に半田15を載置し、半田15上にポストピン16の先端が接するように、ポストピン付プリント基板11を載置する。このときプリント基板11の位置決め用の第1貫通孔12に位置決め兼用の第1外部端子17を通すことでポストピン16の先端と半導体チップ9のエミッタ電極パッド9aおよびゲートパッド9bが位置決めされる。同時に第2外部端子18を第2貫通孔13に通す。ゲートパッド9bと接続するプリント基板11の導電パターン14(
図2(b)のaで示す導電パターン)と第2外部端子18(
図2(b)のbで示す第2外部端子)に接するように半田20(
図2(b)に示す)を載置する。
【0067】
尚、ゲートパッド9bと第2外部端子18の接続において、ポストピン付プリント基板11の導電パターン14に2本のポストピン16を設け、その一つをゲートパッド9bに接続し、他方を第2外部端子18が固着する導電パターン4に接続すると、第2外部端子18と第2貫通孔13が形成された導電パターン14を半田13を介して接続する必要がなくなる。
【0068】
また、
図1のcのポストピン16はプリント基板11の導電パターン14と導電パターン付絶縁基板1の導電パターン4を電気的に接続している。
つぎに、
図4(c)においては、部材を搭載するための箱型のカーボン治具(図示せず)を使用し、さらに、ポストピン付プリント基板11を上から押さえるカーボン治具(図示せず)を用い、リフロー炉を通して半田8,15,20を溶融させ、固化させることで、半導体チップ9,10と第1凹部5、半導体チップ9,10とポストピン16および導電パターン14と第1外部端子17、第2外部端子18を半田付けする。このカーボン治具は、各部材の位置決めではなく、リフロー炉に入れるときの搬入箱、およびポストピン付プリント基板11を上から押さえる錘として使用する。
【0069】
尚、第1外部端子17と第2外部端子18を貫通するプリント基板11の貫通孔12,13の周りに導電パターン14を形成して半田で固着すると、凹部6,7と貫通孔12,13の2箇所で固定されるため、第1外部端子17,第2外部端子18の固定強度が増して好ましい。また、凹部6,7の嵌合箇所を半田で補強すると固定強度が増して好ましい。
【0070】
つぎに、同図(d)において、リフロー炉から取り出し、樹脂19を用いて導電パターン付絶縁基板1、半導体チップ9,10およびポストピン付プリント基板11を封止して半導体装置100は完成する。
【0071】
半導体チップ9,10とポストピン16の位置合わせは、導電パターン4の第2凹部6と位置決め兼用の第1外部端子17で行なわれる。この第1外部端子17は通常の他の第2外部端子18と同様の働きをして外部配線と導電パターン4の間の配線になる。従来のカーボン治具を用いて位置合わせする方法に比べて、本発明のように位置合わせにカーボン治具を用いない方法は、位置ズレを生ずる工程が少なく、また、第1凹部5に載置された半導体チップ9,10はこの第1凹部5から取り出す必要がないため、第1凹部5に必要以上の遊びを設ける必要がない。そのため、半導体チップ9のゲートパッド9bおよびエミッタ電極パッド9a(主電極パッド)とポストピン16の位置合わせの精度を高めることができる。
【0072】
前記したように、位置決め兼用の第1外部端子17の外径とポストピン付プリント基板11の貫通孔12の直径の差を50μm程度以下(隙間22は25μm程度以下)とすることで、位置決め兼用の第1外部端子17とポストピン付プリント基板11に形成した第1貫通孔12の位置ズレを25μm程度以下に小さくできる。このように半導体チップ9,10と第1凹部5および位置決め兼用の第1外部端子17とポストピン付プリント基板11の第1貫通孔12の位置ズレを小さくすることで、ゲートパッド9bとポストピン16の位置ズレを95μm程度以下に出来る。その結果、従来のカーボン治具での半導体チップの各パッドとポストピンの位置ズレである0.5mm程度に比べて大幅に位置ズレを小さくできる。
【0073】
図5は、半導体チップと第1凹部との位置ズレを示す図である。比較のために従来例も示した。位置ズレの測定は、20個のサンプルで第1凹部5の中心から半導体チップ9の中心がX方向とY方向のズレを測定し大きい値を位置ズレとして採用した。サンプルの諸元は第1凹部5の深さは0.2mm、半導体チップ9の大きさは□2.5mm(□は正方形の一辺の長さの意)、厚さは0.35mm、半田8はΦ2.5mm、厚さは0.1mmである。
【0074】
図5から、位置ズレは0.05mmを中心に0.03mm〜0.07mmである。この位置ズレに位置決め兼用の第1外部端子17とポストピン付プリント基板11に形成した位置決め用の第1貫通孔12との位置ズレの25μmを加えるとポストピン16とゲートパッド9bとの位置ズレは最大で95μmとなる。この位置ズレは、従来のパワー半導体モジュール500の場合に対して、大幅に小さくなっており、ポストピン16とゲートパッド9bの位置合わせ精度が大幅に向上する。
【0075】
導電パターン4の第1凹部5上に半田8を載置し、その上に半導体チップ9,10を載置し、半導体チップ9,10上にポストピン16の先端を接触させたポストピン付プリント基板11を載置した場合、半導体チップ9,10の下面と上面の半田8,15が溶融すると、半田8,15の表面張力によって半導体チップ9,10が第1凹部5内で移動し、さらに半導体チップ9,10の表面が傾く場合がある。
【0076】
図6は、半導体チップが大幅に位置ズレした様子を示す図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のX−X線で切断した要部断面図である。この図は、第1凹部5を拡大して示した。半導体チップ9、10(10は図示せず)に位置ズレが生じると、同図(b)のように、半導体チップ9が傾く場合があり、半導体チップ9が傾くと、半導体チップ9とポストピン16との固着が良好に行なわれなくなる。また、位置ズレが大きくなると、ゲートパッド9bにポストピン16が固着できなくなる。また、半導体チップ9,10を第1凹部5に挿入する場合、第1凹部5の隅に半導体チップ9,10が接触して欠けを生じることがある。
【0077】
このような位置ズレを防止し半導体チップ9,10の欠けを防止できる方法について、つぎの実施例で説明する。
【実施例4】
【0087】
図10は、この発明の第4実施例の半導体装置の要部断面図である。
図1と半導体装置100とこの半導体装置400との違いは、位置決め兼用の第1外部端子17の代わりに、位置決め用支柱として専用の位置決め用ピン26をポストピン付プリント基板11に設けた点である。この専用の位置決め用ピン26は導電パターン4に形成した位置決め用の第4凹部25に挿入して固定する。図示しないが、この専用の位置決め用ピン26を導電パターン4に固定し、ポストピン付プリント基板11に形成した位置決め用の貫通孔にこの専用の位置決め用ピン26を貫通させて位置決めしても構わない。
【0088】
こうすると、第2外部端子18の断面の大きさや断面形状を貫通孔13の大きさや平面形状に依存しないで四角形や多角形など任意に決めることができる。
図11は、
図10の半導体装置400の製造方法であり、同図(a)〜同図(d)は工程順に示した要部製造工程断面図である。
【0089】
同図(a)において、導電パターン付絶縁基板1の導電パターン4に第1凹部5を形成し、この第1凹部5に半田8と半導体チップ9,10(10は図示せず)を載置し、第4凹部25に半田8を搭載する。
【0090】
同図(b)において、半導体チップ9,10上に半田15を載置し、半田15上にポストピン16の先端が接するように、ポストピン付プリント基板11を載置する。また、第2外部端子18をポストピン付プリント基板11の貫通孔13を通し、導電パターン4の第2凹部6に配置した半田8上に載置する。位置決めはポストピン付プリント板11に固着している2本の専用の位置決め用ピン26を導電パターン4の第4凹部25に差し込むことで行なわれる。
【0091】
つぎに、同図(c)において、部材を搭載するための箱型のカーボン治具(図示せず)を使用し、さらに、ポストピン付プリント基板11を上から押さえるカーボン治具(図示せず)を用い、リフロー炉を通して半田8,15を溶融させ、固化させることで、半導体チップ9,10および第2外部端子18と第2凹部6、半導体チップ9,10とポストピン16の先端を半田付けする。このカーボン治具は、各部材の位置決めではなく、リフロー炉に入れるときの搬入箱、およびポストピン付プリント基板11を上から押さえる錘として使用する。
【0092】
つぎに、同図(d)において、リフロー炉から取り出し、樹脂19で封止して半導体装置400は完成する。
しかし、この専用の位置決め用ピン26とプリント基板11の導電パターン14の間の電気的絶縁が確保できない場合がある。それを防止する方策について、つぎの実施例で説明する。