(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
パワー半導体素子などからなる電力変換器は、家庭用エアコン、冷蔵庫などの民生機器から、インバータ、サーボコントローラなどの産業機器まで、広範囲に渡る分野で用いられている。
【0003】
パワー半導体素子は、消費電力の点から、金属ベース基板やセラミックス基板などの配線板に搭載される。この配線板にパワー半導体素子などの1つまたは複数の回路素子を搭載し、プラスチックケース枠を接着し、シリコーンゲルやエポキシ樹脂などで封止することによってパワー半導体モジュールを構成する。
【0004】
一方、製造コストを低減するために、トランスファー成形方式によるフルモードパワー半導体モジュールもある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
通常、電力変換器は、上記のパワー半導体モジュールを主回路に用い、この主回路とその他の電源回路や制御用の回路から構成されている。電源回路や制御用の回路は、IC、LSI、抵抗、コンデンサ、リアクトルなどの各種部品から構成されているが、通常、プリント配線板に実装される。
【0006】
図10に従来の電力変換器の構造の一例を示す。パワー半導体モジュール10は、ヒートシンク7の上に放熱性を高めるために放熱グリスを介し搭載される。そして、電子回路部品が搭載されたプリント配線板9a、プリント配線板9bを上部に配置し、ピン等で接合される。そして、ケース8で覆われて、電力変換器200が構成されている。
【0007】
図10において、パワー半導体モジュール10は、絶縁基板11、接続リード端子18,18A、絶縁樹脂19、パワー半導体素子4、アルミワイヤ12、ケース本体20および蓋21を備えている。絶縁基板11は、金属ベース15の表面に絶縁層16が形成され、絶縁層16の表面に回路パターン17が形成されたものである。金属ベース15は、例えばアルミニウム板、アルミニウム合金による板、銅板、銅合金による板などである。絶縁層16は、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどの無機フィラーを含有したエポキシ樹脂を固化して形成した絶縁層である。回路パターン17は、例えば銅の薄膜を形成したパターンである。
【0008】
絶縁基板11上には樹脂(エポキシ、PPS、PBTなど)製のケース本体20が固着されて収容空間が形成される。絶縁基板11の回路パターン17にはパワー半導体素子4の裏面電極や接続リード端子18,18Aがはんだ付けにより接合(接続・固定)され、パワー半導体素子4の表面電極と回路パターン17とはアルミワイヤ12により接続される。そして、ケース本体20で形成される収容空間内に、熱伝導性が高いシリコーンゲルやエポキシ樹脂などの絶縁樹脂19が充填されてパワー回路を封止し、ケース本体20の開口部をケース本体20と同じ樹脂製の蓋21で覆っており、蓋21を接続リード端子18,18Aが貫通している。
【0009】
プリント配線板9a,9bは、例えばガラスエポキシ(ガラスファイバで強化されたエポキシ樹脂)で構成される電気絶縁性の基板本体23a,23bにそれぞれ例えば銅箔からなる回路パターン24b,24cが形成されたものである。プリント配線板9aには表面実装型の電子回路部品6c,6d,6eがはんだ付けで実装されており、プリント配線板9bには穴挿入実装型の電子回路部品6f,6gがはんだ付けで実装されている。プリント配線板9a,9bは支柱25,25Aを介してヒートシンク7に支持固定される。
【0010】
パワー半導体モジュール10は、パワー半導体モジュール10の上部に配置されるプリント配線板9a,9bと接続リード端子18,18Aを介して接続される。
図10では、接続リード端子18がプリント配線板9bの回路パターン24cと配線26で接続されるとともに、接続リード端子18Aがプリント配線板9aの回路パターン24bに直接接続される構成が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、パワー半導体モジュールは、絶縁基板にパワー半導体素子を実装しており、ヒートシンクまでに、多数の材料が介在するため、一定の熱抵抗があり、必ずしも冷却特性が十分ではなく、パワー半導体から発生する熱を十分に逃がすことができなかった。
【0013】
ここで熱抵抗が低減できるほど、運転時のパワー半導体素子の温度は低くすることが可能であり、その結果、パワー半導体素子のチップサイズが小さくでき、コストの低減に繋げられる。
【0014】
また、パワー半導体モジュールは、ひとつの製品となっており、電力変換器の内部に配置するためには一定の容積が必要なため、小形化の妨げとなるとともに、電力変換器のコストの低減の妨げとなっていた。
【0015】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、放熱性に優れ、小形化が可能であって、低コスト化の要求に応える優れた電力変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、このような目的を達成するために、上面および下面を有する金属ブロックの上面にパワー半導体素子からなる第1の回路素子が
はんだにより実装されてなるパワー半導体ユニットと、前記金属ブロックを収めることが可能な孔が明けられたプリント配線板に第2の回路素子が実装されてなるプリント配線板ユニットと、冷却用ヒートシンクとを備え、前記金属ブロックが前記孔にはめ込まれるようにして前記パワー半導体ユニットと前記プリント配線板ユニットとが一体とされた電力変換回路組立体が構成されているとともに、前記冷却用ヒートシンクの上面に直接セラミックス材料が放熱用絶縁層として形成されてなり、
前記金属ブロックの下面が前記放熱用絶縁層を介して前記冷却用ヒートシンクの上面に当接するようにして前記電力変換回路組立体が前記冷却用ヒートシンクに取付けられ
、
前記パワー半導体ユニットは、前記金属ブロックの上面の一部分に直接セラミックス材料を積層して形成された中継電極用絶縁層と、前記中継電極用絶縁層の上面に金属材料を積層して形成された中継電極とを備え、前記第1の回路素子と前記中継電極とをボンディングワイヤまたはリードフレームにより接続した構成とする(請求項1の発明)。
さらに、前記中継電極と前記プリント配線板の上面側の回路パターン部とを、さらにボンディングワイヤまたはリードフレームを介して接続した構成とする(請求項2の発明)。
【0017】
上記の発明によれば、熱容量が高く放熱性に優れた金属ブロックがセラミックス材料からなる放熱用絶縁層を介して冷却用ヒートシンクと直接接することから、パワー半導体素子からなる第1の回路素子の下部の熱抵抗を小さくすることができるので、放熱性を向上させることができる。したがって、よりコストが低く、パワー半導体素子として、より面積の小さいパワー半導体チップを採用することが可能となる。
【0018】
また、金属ブロックの上面にパワー半導体素子からなる第1の回路素子が実装されてなるパワー半導体ユニットと、プリント配線板に第2の回路素子が実装されてなるプリント配線板ユニットとが、金属ブロックがプリント配線板の孔にはめ込まれるようにして一体とされ、電力変換回路組立体が構成されていることにより、従来のパワー半導体モジュールのようにパワー半導体素子からなる主回路部だけを独立したケースに収納する必要がないため、上記ケースに設けた接続リード端子を介して他の電子回路部品が搭載されたプリント配線板と接続する必要がなく、電力変換器の容積を低減することが可能となる。
【0019】
さらに、専用のパワー半導体モジュールを用いる必要がないので、電力変換器のコスト低減に繋がる。
また、この構成によれば、前記第1の回路素子と前記中継電極をボンディングワイヤまたはリードフレームにより接続するとともに、中継電極とプリント配線板の上面側の回路パターン部とを接続していることにより、第1の回路素子とプリント配線板の上面側の回路パターン部とは上記中継電極を介して接続されている。このため、パワー半導体素子からなる第1の回路素子が動作時に発生し、第1の回路素子からのボンディングワイヤまたはリードフレームに沿って伝達される熱は、主に中継電極およびセラミックス材料からなる中継電極用絶縁層を介して熱容量が高く放熱性に優れた金属ブロックの方に伝わり、プリント配線板の上面側の回路パターン部の方に伝わる熱量が十分に小さく抑制されるので、電力変換器における放熱性をより向上させることができる。
【0020】
そして、上記の電力変換器において、前記孔は、導体層からなるスルーホール部の開口部であって、前記金属ブロックは、前記スルーホール部にはんだ付で固定されてなり、前記冷却用ヒートシンクの上面における前記放熱用絶縁層は、前記金属ブロックの下面に当接する領域と前記スルーホール部のランド面に当接する領域とを含むように形成されている構成とすることができる(請求項
3の発明)。
【0021】
そして、前記プリント配線板の下面側に導体パターン部が形成されてなり、前記冷却用ヒートシンクの上面における前記放熱用絶縁層は、前記金属ブロックの下面に当接する領域と前記スルーホール部のランド面に当接する領域と前記導体パターン部のパターン面に当接する領域とを含むように形成されている構成とすることができる(請求項
4の発明)。
【0022】
この発明によれば、金属ブロックの下面およびプリント配線板の下面側におけるスルーホール部のランド面に加えて、プリント配線板の下面側における導体パターン部のパターン面も放熱用絶縁層を介して冷却用ヒートシンクの上面に当接させることができるので、冷却用ヒートシンク上における電力変換回路組立体の機械的支持構造をより安定なものとすることができる。
【0026】
また、前記中継電極は、金属材料として銅粒子を溶射して形成した構成とすることができる(請求項5の発明)。
【0028】
また、前記放熱用絶縁層および/または前記中継電極用絶縁層は、熱伝導率が1〜200W/m・Kであり、かつ厚さが10〜500μmである構成とすることができる(請求項
6の発明)。
【0029】
また、前記放熱用絶縁層および/または前記中継電極用絶縁層は、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素からなるフィラー群の少なくとも1種類からなる構成とすることができ(請求項
7の発明)、さらには、前記放熱用絶縁層および/または前記中継電極用絶縁層は、前記フィラー群の少なくとも1種によるセラミックス微粒子をプラズマ溶射法にて堆積させることにより形成した構成とすること(請求項
8の発明)や、前記放熱用絶縁層および/または前記中継電極用絶縁層は、前記フィラー群の少なくとも1種によるセラミックス微粒子をエアロゾルデポジション法にて堆積させることにより形成した構成とすることもできる(請求項
9の発明)。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、放熱性に優れ、小形化が可能であって、低コスト化の要求に応える優れた電力変換器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。また、以下の説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分または要素には、共通する参照符号が付されている。
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態にかかる電力変換器の構成を示す断面図である。
図1において、上面1bおよび下面1aを有する金属ブロック1の上面1bに例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワー半導体素子4が実装されてなるパワー半導体ユニット51と、金属ブロック1を収めることが可能な孔27dを有するスルーホール部27が形成されたプリント配線板5に電子回路部品6aが実装されてなるプリント配線板ユニット52とが、金属ブロック1が孔27dにはめ込まれるようにして一体とされ、電力変換回路ユニット53が構成されている。なお、以下では、金属ブロック1の上面1bおよび下面1aをそれぞれ「表面1b」および「裏面1a」とも称する。
【0033】
プリント配線板5は、例えばガラスエポキシ(ガラスファイバで強化されたエポキシ樹脂)で構成される電気絶縁性の基板本体23の上面501および下面502にそれぞれ例えば銅箔からなる回路パターン24および24aが形成されたものである。また、基板本体23には貫通孔が設けられているとともに、この貫通孔の内周面と、基板本体23の上面501および下面502における上記貫通孔の周縁部とに例えば銅箔からなる導体層が一体的に設けられ、これによりスルーホール部27の導体部が形成されている。ここで、上記貫通孔の内周面に設けられる導体層部分を貫通導体部27aとし、基板本体23の上面501および下面502における上記貫通孔の周縁部に設けられる各導体層部分をそれぞれ上面ランド導体部27bおよび下面ランド導体部27cとする。貫通導体部27aは、金属ブロック1の例えば正方形、長方形などの形状に合わせた孔27dを有している。なお、以下では、基板本体23の上面501および下面502をそれぞれ「表面501」及び「裏面502」とも称する。また、基板本体23の上面501が部品実装面となっている。
【0034】
冷却用ヒートシンク7の上面7aには直接セラミックス材料が放熱用絶縁層2として形成されている。
【0035】
電力変換回路ユニット53は、金属ブロック1の下面1aが放熱用絶縁層2を介して冷却用ヒートシンク7の上面7aに当接するようにして冷却用ヒートシンク7に取付けられている。さらに、電力変換回路ユニット53を上方側から覆うケース8が冷却用ヒートシンク7に取付けられ、電力変換器100が構成されている。
【0036】
電力変換器100では、金属ブロック1の上面1bに実装されたパワー半導体素子4により主回路が構成されるとともに、プリント配線板5に実装された電子回路部品6aにより、その他の電源回路や制御用の回路から構成されている。そして、電子回路部品6aとしては例えばIC、LSI、抵抗、コンデンサ、リアクトルなどの各種部品が用いられる。
【0037】
電力変換器100では、
図1に示されるように、パワー半導体素子4とプリント配線板5の回路パターン24とで回路を形成するために、アルミワイヤ12によりお互いを接続している。
【0038】
このように、電力変換器100では、金属ブロック1の上面1bにパワー半導体素子4が実装されたパワー半導体ユニット51と、プリント配線板5に電子回路部品6aが実装されたプリント配線板ユニット52とが、金属ブロック1がプリント配線板5の孔27dにはめ込まれるようにして一体とされているので、従来のパワー半導体モジュールのようにパワー半導体素子からなる主回路部だけを独立したケースに収納する必要がなく、パワー半導体素子4とプリント配線板5の回路パターン24とをアルミワイヤ12などにより直接的に接続することができ、これにより、電力変換器としての容積を従来よりも低減することが可能となっている。
【0039】
また、電力変換器100では、金属ブロック1を、導電性および熱伝導性のよい金属材料の銅で構成するとともに、その厚さを1.0〜5.0mm程度として、熱容量が高く放熱性に優れたものとしている。
【0040】
そして、電力変換器100では、後述のように、冷却用ヒートシンク7の上面7aにおける放熱用絶縁層2を例えば酸化アルミニウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素など熱伝導性に優れたセラミックス材により形成している。なお、放熱用絶縁層2では、熱伝導率は1〜200W/m・Kであることが好ましく、また、厚さは10〜500μmであることが好ましい。
【0041】
このように、電力変換器100では、パワー半導体素子4が実装された、熱容量が高く放熱性に優れた金属ブロック1の下面1aが、熱伝導性に優れたセラミックス材よりなる放熱用絶縁層2を介して、冷却用ヒートシンク7に直接接するように構成しているので、パワー半導体素子4下部の熱抵抗を十分に小さくすることができ、優れた放熱性を備えている。
【0042】
なお、
図1では、2個の金属ブロック1がそれぞれプリント配線板5における2箇所のスルーホール部27の孔27dにはめ込まれるようにしてプリント配線板5と一体とされている構成例を示しているが、プリント配線板5と一体とされる金属ブロック1の個数は、1個でもよく、また、3個以上であってもよい。また、
図1では、金属ブロック1にパワー半導体素子4が2個実装された構成例を示しているが、金属ブロック1に実装されるパワー半導体素子4の個数は、1個でもよく、また、3個以上であってもよい。
【0043】
また、金属ブロック1を形成する金属材料は銅に限るものではなく、例えば銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金なども適用可能である。
【0044】
また、冷却用ヒートシンク7を形成する金属材料としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などが適用可能である。
【0045】
続いて、この電力変換器100の製造方法について
図2および
図3を参照して説明する。
図2および
図3は、本発明の第1の実施形態にかかる電力変換器の製造方法を示す断面図である。
【0046】
まず、最初に、1.0〜5.0mm程度の銅板を、プレス加工により、正方形または長方形に打ち抜いて、金属ブロック1を製作する(
図2(a))。
【0047】
次に、例えばガラスエポキシで構成される電気絶縁性の基板本体23の上面501および下面502にそれぞれ例えば銅箔からなる回路パターン24および24aを形成するとともに、それぞれ例えば銅箔からなる貫通導体部27a、上面ランド導体部27bおよび下面ランド導体部27cを備えたスルーホール部27を形成することにより、プリント配線板5を構成する(
図2(b))。スルーホール部27の孔27dは、金属ブロック1を収めることが可能な形状としておく。
【0048】
次に、プリント配線板5のスルーホール部27の孔27dに金属ブロック1を挿入し、はんだ28bでの接合により固定する(
図2(c))。この時、プリント配線板5と金属ブロック1との接合力を高めるため、接着剤なども併用して固定しても良い。
【0049】
また、この時、金属ブロック1のプリント配線板5に対する厚さ方向の相対的位置は、金属ブロック1の下面1aが、プリント配線板5のスルーホール部27における下面ランド導体部27cのランド面、および、プリント配線板5の下面502側における回路パターン24aのパターン面と同一平面となるように調整しておくと良い。このためには、プリント配線板5における下面ランド導体部27cと回路パターン24aとを同じ厚さ寸法d1(
図2(c)参照)となるように形成しておくとともに、プリント配線板5の基板本体23の下面502に対する金属ブロック1の下面1aの突出寸法もd1となるようにしておく。このような構成としておくことにより、後述の
図3(b)に示す後工程で、パワー半導体ユニット51とプリント配線板ユニット52とが一体化された電力変換回路ユニット53を冷却用ヒートシンク7に搭載する際に、金属ブロック1の下面1aと、下面ランド導体部27cのランド面と、回路パターン24aのパターン面とを、冷却用ヒートシンク7の放熱用絶縁層2に一様に当接させることができるので、電力変換回路ユニット53の機械的支持構造を安定なものとすることができる。また、上記構成としておけば、下面ランド導体部27cのランド面および回路パターン24aのパターン面が金属ブロック1の下面1aよりも冷却用ヒートシンク7側に突出することはないので、金属ブロック1の下面1aと冷却用ヒートシンク7の放熱用絶縁層2とを十分に密接した状態で当接させることができ、これにより金属ブロック1の下面1aと冷却用ヒートシンク7の放熱用絶縁層2との間の良好な熱伝導性を確保することができる。
【0050】
次に、金属ブロック1にパワー半導体素子4をはんだ28aでの接合により実装するとともに、プリント配線板5には各種の電子回路部品6aをはんだ28aでの接合により実装する(
図2(d))。これらの実装は、通常、クリームはんだを用い、リフロー炉で行う。はんだ材料には例えばSnPbAgからなる高温はんだ、SnAgCu系からなる鉛フリーはんだなどを用いる。はんだ付けの温度は、はんだの融点に応じて設定される。パワー半導体素子4と金属ブロック1とを接合するはんだ層28aにボイドが残留すると、熱抵抗が高くなり、パワー半導体素子4から生じる熱を効率よく放熱することができない。そこで、ボイドを発生しないように、はんだが溶融している状態で、1.3kPa(10Torr)以下の真空引きを行なう。
【0051】
また、パワー半導体素子4とプリント配線板5の回路パターン24とで回路を形成するために、アルミワイヤ12によりお互いを接続する。アルミワイヤ12は、線径が125〜500μmのAlワイヤで、接合は超音波接合にて行う。なお、お互いの接合にはリードフレームやリボン状のアルミを用いても良い。
【0052】
次に、溶射法もしくはエアロゾルデポジション法によりセラミックス粉末31を積層することにより、冷却用ヒートシンク7の上面7aに放熱用絶縁層2を形成する(
図2(e)〜
図3(a))。
【0053】
溶射法のうち、例えばプラズマ溶射法で冷却用ヒートシンク7の上面7aに放熱用絶縁層2を形成する場合は、セラミックス粉末には酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素からなる1種類以上を用いる。雰囲気としては大気圧もしくは減圧下で冷却用ヒートシンク7の上面7aに溶射を行い、放熱用絶縁層2を堆積させる。放熱用絶縁層2の厚みは溶射時間をコントロールすることにより調整できる。放熱用絶縁層2の厚みは10〜500μmが好ましい。
【0054】
放熱用絶縁層2は、その形成範囲として、冷却用ヒートシンク7の上面7a側の露出面全体が被覆されるように形成する。なお、冷却用ヒートシンク7の上面7aにおける放熱用絶縁層2の形成範囲は部分的でもよく、後工程で取り付けられる金属ブロック1およびプリント配線板5が冷却用ヒートシンク7から電気的に絶縁されるように放熱用絶縁層2が形成されていればよい。プリント配線板5の下面502側に回路パターン24aが形成されている場合には、冷却用ヒートシンク7の上面7aにおける放熱用絶縁層2は、金属ブロック1の下面1aに当接する領域と下面ランド導体部27cのランド面に当接する領域と回路パターン24aのパターン面に当接する領域とを含むように形成する。
【0055】
上記のようにして形成された放熱用絶縁層2は、絶縁特性として、例えば厚み200μmで交流破壊電圧5kV以上を有しており、耐電圧定格が1200Vのパワー素子にも用いることができる。
【0056】
次に、エアロゾルデポジション法で冷却用ヒートシンク7の上面7aに放熱用絶縁層2を堆積させる場合について説明する。エアロゾルデポジション法とは、微粒子あるいは超微粒子原料をガスと混合してエアロゾル化し、ノズルを通して基板に皮膜を形成する技術である。ガスにはヘリウムもしくは空気が用いられる。装置は、図示しないエアロゾル化チャンバーと成膜チャンバーから構成することができる。成膜チャンバーは、真空ポンプで50Pa〜1kPa前後に減圧する。原料である微粒子または超微粒子材料は乾燥された状態でエアロゾル化チャンバー内でガスと攪拌・混合してエアロゾル化され、両チャンバーの圧力差により生じるガスの流れにより成膜チャンバーに搬送され、スリット状のノズルを通過することで加速され、成膜対象である冷却用ヒートシンク7の上面7aに噴射される。原料微粒子には、機械的に粒径0.1〜2μmに粉砕したセラミックス粉末を用いる。ガス搬送された超微粒子は、減圧されたチャンバー内の微小開口のノズルを通すことで数百m/secまで加速される。成膜速度や成膜体の密度は使用されるセラミックス微粒子の粒径や凝集状態、乾燥状態などに大きく依存するため、エアロゾル化チャンバーと成膜チャンバーとの間に凝集粒子の解砕器や分級装置を用いている。
【0057】
そして、放熱用絶縁層2を膜として形成するためには、粒径0.1〜2μmの微粒子のセラミックスを高速で基板上に吹き付け、その時の衝突エネルギーにて10〜30nm前後の微結晶粒子に破砕され、新生面が形成されて表面が活性化され、粒子同士が結合されることで、ち密なナノ結晶組織のセラミックス膜が形成される。また、特に温度をかけることなく常温で形成可能である。
【0058】
エアロゾルデポジションの微粒子には、粒子径が0.1〜2μm程度の酸化アルミニウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素のいずれかを用いることが好ましい。必要な膜厚を得るため、所定の時間、微粒子を吹き付け、
図2(e)〜
図3(a)に示すように放熱用絶縁層2を形成する。
【0059】
ここで、微粒子には窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素いずれかのフィラーに酸化アルミニウムの皮膜を形成したもの、もしくは、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素いずれかのフィラーに酸化珪素の皮膜を形成したものも適用可能である。これらの微粒子を用いれば、2種類以上のセラミックスを複合した放熱用絶縁層2が形成できる。
【0060】
放熱用絶縁層2の厚みは、溶射法と同様の10〜500μmが好ましい。上記のようにして形成された放熱用絶縁層2は、絶縁特性として、例えば厚み200μmで交流破壊電圧5kV以上を有しており、耐電圧定格が1200Vのパワー素子にも用いることができる。
【0061】
最後に、パワー半導体ユニット51とプリント配線板ユニット52とが一体化された電力変換回路ユニット53を、放熱用絶縁層2が形成された冷却用ヒートシンク7に放熱グリスを介して搭載し、ケース8を被せ、電力変換器100を構成する(
図3(b))。
【0062】
上述のように、本実施形態の電力変換器における冷却用ヒートシンク7の上面7aに形成される放熱用絶縁層2には、エアロゾルデポジション法またはプラズマ溶射法によるセラミックス材の絶縁層を採用したため、以下のような利点がある。
(1)絶縁耐圧の向上
エアロゾルデポジション法では、室温(常温)で成膜が可能であり、かつ音速レベルのスピードでサブミクロンオーダーのセラミックス微粒子を基板に衝突させるため、活性な新生面が露出したセラミックス微粒子が結合する。また、プラズマ溶射法によっても同様である。いずれの方法においても、非常にち密な電気絶縁膜であるセラミックス微粒子層を形成することが可能となり、膜内に空孔(ボイド)が含まれないため、従来の焼結法により形成されたセラミックス板よりも単位長さ当たりの破壊電圧が10倍程度向上する。
(2)熱抵抗の低下
熱伝導率はバルクと同等であり、熱伝導率は例えば酸化アルミニウム(Al
2O
3)で約20W/m・K、窒化アルミニウム(AlN)で約160〜180W/m・K、窒化珪素(Si
3N
4)で約80W/m・K程度確保できる。これに加えて単位長さ当たりの破壊電圧が向上するため、絶縁層2を薄く形成することができ、このため全体の熱抵抗が低くなる。
【0063】
上述の点により、高絶縁と低熱抵抗とを共に確保することが可能となる。
【0064】
このように、本実施形態の電力変換器は、上面1b(表面)にパワー半導体素子4が実装される金属ブロック1の下面1a(裏面)が、熱伝導性に優れたセラミックス材よりなる放熱用絶縁層2を介して、冷却用ヒートシンク7に直接接するように構成しているので、パワー半導体素子4下部の熱抵抗を十分に小さくすることができ、優れた放熱性を備えたものとなっている。
【0065】
なお、上述の実施形態では、
図1のようにプリント配線板5の下面502(裏面)側に回路パターン24aが形成されている構成を対象として説明したが、本発明の対象は上記構成に限定されるものではなく、プリント配線板5の下面502(裏面)側に回路パターン24aが形成されていない構成にも適用することができる。この場合、冷却用ヒートシンク7の上面7aにおける放熱用絶縁層2は、金属ブロック1の下面1a(裏面)に当接する領域と下面ランド導体部27cのランド面に当接する領域とを含むように形成すればよい。
<第2の実施形態>
図4は本発明の第2の実施形態にかかる電力変換器の構成を示す断面図である。
第2の実施形態にかかる電力変換器は、上述の第1の実施形態にかかる電力変換器において、特に、上面および下面を有する金属ブロックの上面の一部分に直接セラミックス材料を積層して形成された中継電極用絶縁層と、この中継電極用絶縁層の上面に金属材料を積層して形成された中継電極とを備え、上記金属ブロックの上面に実装されたパワー半導体素子からのボンディングワイヤなどを上記中継電極に接合するとともに、上記中継電極とプリント配線板の回路パターンとをボンディングワイヤなどを介して接続するようにしたものであり、それ以外の点では第1の実施形態にかかる電力変換器と同様である。
【0066】
図4に示す電力変換器100Aにおいて、パワー半導体ユニット51Aは、上面1Abおよび下面1Aaを有する金属ブロック1Aと、金属ブロック1Aの上面1Abの一部分に形成された中継電極用絶縁層42と、中継電極用絶縁層42の上面に形成された中継電極41と、金属ブロック1Aの上面1Abにはんだ28aにより接合されたパワー半導体素子4とを備え、パワー半導体素子4からのボンディングワイヤ43aを中継電極41に接合している。そして、パワー半導体ユニット51Aの中継電極41とプリント配線板5Aの上面501側の回路パターン24とをボンディングワイヤ43bで接続している。なお、
図4では、説明の便宜上、パワー半導体素子4と中継電極41とを接続するボンディングワイヤを43aとし、中継電極41とプリント配線板5Aの上面501側の回路パターン24とを接続するボンディングワイヤを43bとしている。なお、以下では、金属ブロック1Aの上面1Abおよび下面1Aaをそれぞれ「表面1Ab」および「裏面1Aa」とも称する。
【0067】
電力変換器100Aにおいても、パワー半導体ユニット51Aとプリント配線板ユニット52Aとを一体として、電力変換回路ユニット53Aを構成しているが、プリント配線板5Aに電子回路部品6aが実装されたプリント配線板ユニット52Aの構成は上述の電力変換器100におけるプリント配線板ユニット52と同様である。
【0068】
パワー半導体ユニット51Aでは、金属ブロック1Aを、導電性および熱伝導性のよい金属材料の銅で構成するとともに、その厚さを1.0〜5.0mm程度として、熱容量が高く放熱性に優れたものとしている。
【0069】
そして、電力変換器100Aでは、上述の電力変換器100と同様に、冷却用ヒートシンク7の上面7aに直接セラミックス材料が放熱用絶縁層2Aとして形成されており、上記セラミックス材料として例えば酸化アルミニウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素など熱伝導性に優れたセラミックス材を用いている。なお、絶縁層2Aでは、熱伝導率は1〜200W/m・Kであることが好ましく、また、厚さは10〜500μmであることが好ましい。
【0070】
電力変換器100Aでは、上述の電力変換器100と同様に、パワー半導体素子4が実装された、熱容量が高く放熱性に優れた金属ブロック1Aの下面1Aaが、熱伝導性に優れたセラミックス材よりなる放熱用絶縁層2Aを介して、冷却用ヒートシンク7に直接接するように構成しているので、パワー半導体素子4下部の熱抵抗を十分に小さくすることができ、優れた放熱性を備えたものとすることができる。
【0071】
なお、
図4では金属ブロック1Aにパワー半導体素子4が1個実装された構成例を示しているが、金属ブロック1Aに実装されるパワー半導体素子4の個数は、2個でもよく、また、3個以上であってもよい。また、金属ブロック1Aを形成する金属材料は銅に限るものではなく、例えば銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金なども適用可能である。
【0072】
また、パワー半導体ユニット51Aでは、金属ブロック1Aの上面1Ab側に形成される中継電極用絶縁層42も例えば酸化アルミニウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素など熱伝導性に優れたセラミックス材により形成するようにしている。なお、中継電極用絶縁層42では、熱伝導率は1〜200W/m・Kであることが好ましく、また、厚さは10〜500μmであることが好ましい。
【0073】
そして、中継電極用絶縁層42の上面に形成される中継電極41は例えば銅などの熱伝導性に優れた金属材料により形成するようにしている。なお、中継電極41を形成する金属材料は銅に限るものではなく、例えば銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金なども適用可能である。
【0074】
図5は、本発明の第2の実施形態にかかる電力変換器における熱の流れを模式的に示す図であって、上述の
図4に示した電力変換器100Aの一部分の断面構造を示すものである。
図5において、パワー半導体ユニット51Aは金属ブロック1Aの下面1Aaが放熱用絶縁層2Aを介して冷却用ヒートシンク7の上面7aに当接するようにして搭載されるとともに、中継電極41がボンディングワイヤ43bを介してプリント配線板5Aの上面501側の回路パターン24と接続されている。また、パワー半導体ユニット51Aにおけるパワー半導体素子4として例えばIGBTを実装した構成では、IGBTの裏面のコレクタ電極が金属ブロック1Aの上面1Abにはんだ28aにより接合され、IGBTの表面に形成されているエミッタ電極とゲート電極とがそれぞれボンディングワイヤ43aにより中継電極41に接続される。
【0075】
図5において、パワー半導体ユニット51Aにおけるパワー半導体素子4が動作時に発熱した場合の熱の流れを白抜き矢印h1〜h4により模式的に示している。白抜き矢印h1〜h4の幅は流れる熱量の大小を定性的に示している。なお、
図5では、パワー半導体素子4から左側のボンディングワイヤ43aに沿って流れる熱の流れのみを示している。
【0076】
図5において、パワー半導体ユニット51Aにおけるパワー半導体素子4が動作時に発生する熱は、パワー半導体素子4からはんだ層28a、金属ブロック1Aおよび放熱用絶縁層2Aを介して冷却用ヒートシンク7に伝達されるとともに、パワー半導体素子4からボンディングワイヤ43aを介してプリント配線板5Aの上面501側の回路パターン24側にも伝達される。しかしながら、電力変換器100Aでは、金属ブロック1A上に中継電極用絶縁層42を介して形成された中継電極41を備え、パワー半導体素子4からのボンディングワイヤ43aを中継電極41に接合した上で、中継電極41から別のボンディングワイヤ43bを介してプリント配線板5Aの上面501側の回路パターン24に接続している。このため、電力変換器100Aでは、パワー半導体素子4からボンディングワイヤ43aを経由して流れてくる熱は大部分が中継電極41、熱伝導性に優れたセラミックス材料からなる中継電極用絶縁層42および金属ブロック1Aを介して冷却用ヒートシンク7に伝達され、中継電極41からボンディングワイヤ43bを介してプリント配線板5Aの回路パターン24側に伝達される熱量は十分に小さく抑制されたものとなる。これにより、プリント配線板ユニット52A側に伝わる熱量を抑制することができ、プリント配線板ユニット52Aを形成するプリント配線板5A、電子回路部品6aなどに対する加熱を効果的に抑制することができる。
【0077】
また、上述のような電力変換器100Aは、
図5に示されるように、パワー半導体素子4が動作時に発生する熱を、パワー半導体素子4→はんだ層28a→金属ブロック1Aという第1の伝熱経路と、パワー半導体素子4→ボンディングワイヤ43a→中継電極41→中継電極用絶縁層42→金属ブロック1Aという第2伝熱経路との2つの伝熱経路で効率良く金属ブロック1Aに伝達できるので、熱容量が高く放熱性に優れた金属ブロック1Aの機能をより有効に生かしたものとなっている。
【0078】
このように、本発明の第2の実施形態にかかる電力変換器では、パワー半導体ユニットのパワー半導体素子が動作時に発生する熱のうち、パワー半導体ユニットに接続されたプリント配線板ユニット側に伝わる熱量を抑制し、プリント配線板などに対する加熱を効果的に抑制することができるとともに、電力変換器における放熱性をより向上させることができる。
【0079】
続いて、本発明の第2の実施形態にかかる電力変換器の製造方法について
図6ないし
図8を参照して説明する。
図6ないし
図8は、本発明の第2の実施形態にかかる電力変換器の製造方法を示す断面図である。
【0080】
最初に、1.0〜5.0mm程度の銅板を、プレス加工により、正方形または長方形に打ち抜いて、金属ブロック1Aを製作する(
図6(a))。
【0081】
次に、金属ブロック1Aの上面1Abにマスク30をあてて、溶射法もしくはエアロゾルデポジション法により例えば酸化アルミニウム粉などのセラミックス粉末31を積層することにより、金属ブロック1Aの上面1Ab側に中継電極用絶縁層42を形成する(
図6(b)〜
図6(c))。中継電極用絶縁層42は金属ブロック1Aの上面1Abにおける全面ではなく一部分に形成する。中継電極用絶縁層42の形成方法は、絶縁層の形成対象が金属ブロック1Aの上面1Abであること、およびマスク30を用いること以外は、溶射法、エアロゾルデポジション法とも上述の
図2(e)〜
図3(a)で説明した放熱用絶縁層2の形成方法と同様である。また、中継電極用絶縁層42の形成に用いるセラミックス微粒子の材料も、溶射法、エアロゾルデポジション法とも上述の
図2(e)〜
図3(a)で説明した放熱用絶縁層2と同様である。なお、中継電極用絶縁層42の形成に溶射法を適用する場合、プラズマ溶射法が好適であるが、これに限定されるものではない。
【0082】
中継電極用絶縁層42の厚みは、溶射法またはエアロゾルデポジション法のいずれで形成したものでも、上述のように10〜500μmが好ましい。
【0083】
次に、中継電極用絶縁層42の上に銅製の中継電極41を積層する。銅を堆積させる方法は、放熱用絶縁層と同様にプラズマ溶射法を用いる。すなわち、金属ブロック1Aの上面1Abに形成されている中継電極用絶縁層42にマスク30Aをあてて、銅粒子32を溶射し、中継電極41を形成する(
図6(d)〜
図6(e))。
【0084】
これにより、金属ブロック1Aの上面1Abの一部に中継電極41が中継電極用絶縁層42を介して形成された中継電極付き金属ブロック3Aが完成する(
図6(f))。
【0085】
次に、上述の
図2(b)〜
図2(c)と同様に、プリント配線板5Aのスルーホール部27の穴27dに金属ブロック1Aを挿入し、はんだ28bでの接合により固定する(
図7(a)〜
図7(b))。この時、プリント配線板5Aと金属ブロック1Aとの接合力を高めるため、接着剤なども併用して固定しても良い。なお、上述の
図2(c)と同様に、金属ブロック1Aのプリント配線板5Aに対する厚さ方向の相対的位置は、金属ブロック1Aの下面1Aaが、プリント配線板5Aのスルーホール部27における下面ランド導体部27cのランド面、および、プリント配線板5Aの下面502側における回路パターン24aのパターン面と同一平面となるように調整しておくと良い。このためには、プリント配線板5Aにおける下面ランド導体部27cと回路パターン24aとを同じ厚さ寸法d1となるように形成しておくとともに、プリント配線板5Aの基板本体23Aの下面502に対する金属ブロック1Aの下面1Aaの突出寸法もd1となるようにしておく。
【0086】
次に、金属ブロック1Aにパワー半導体素子4をはんだ28aでの接合により実装するとともに、プリント配線板5Aに各種の電子回路部品6aをはんだ28aでの接合により実装する(
図7(c))。これらのはんだ28aによる実装は、上述の
図2(d)で説明した実装方法と同様にして行なう。
【0087】
また、ボンディングワイヤ43aによりパワー半導体素子4と中継電極41との接続を行なう(
図7(c))。ボンディングワイヤ43aは、線径が125〜500μmのAlワイヤを使用して超音波接合する。なお、パワー半導体素子4と中継電極41との接続には、ボンディングワイヤ43aの代わりに例えばリードフレームを使用しても良い。
【0088】
さらに、ボンディングワイヤ43bにより中継電極41とプリント配線板5Aの上面501側の回路パターン24との接続を行なう(
図7(c))。ボンディングワイヤ43bは、上述のボンディングワイヤ43aと同様に線径が125〜500μmのAlワイヤを使用して超音波接合する。なお、中継電極41とプリント配線板5Aの回路パターン24との接続には、ボンディングワイヤ43bの代わりにリードフレームやリボン状のアルミを用いても良い。
【0089】
次に、溶射法もしくはエアロゾルデポジション法によりセラミックス粉末31を積層することにより、冷却用ヒートシンク7の上面7aに放熱用絶縁層2Aを形成する(
図7(d)〜
図8(a))。この放熱用絶縁層2Aの形成に用いるセラミックス微粒子の材料、および絶縁層の形成方法は、溶射法、エアロゾルデポジション法とも上述の
図2(e)〜
図3(a)で説明した放熱用絶縁層2と同様である。
【0090】
放熱用絶縁層2Aの厚みは、溶射法またはエアロゾルデポジション法のいずれで形成したものでも、上述のように10〜500μmが好ましい。上記のようにして形成された放熱用絶縁層2Aは、絶縁特性として、例えば厚み200μmで交流破壊電圧5kV以上を有しており、耐電圧定格が1200Vのパワー素子にも用いることができる。
【0091】
最後に、パワー半導体ユニット51Aとプリント配線板ユニット52Aとが一体化された電力変換回路ユニット53Aを、放熱用絶縁層2Aが形成された冷却用ヒートシンク7に放熱グリスを介して搭載し、ケース8を被せ、電力変換器100Aを構成する(
図8(b))。
【0092】
上述のように、第2の実施形態にかかる電力変換器では、特に、金属ブロックの上面(表面)に接合されたパワー半導体素子からのボンディングワイヤまたはリードフレームを中継電極に接合した上で、この中継電極とプリント配線板の回路パターンとを接続していることにより、パワー半導体素子が動作時に発生し、パワー半導体素子からのボンディングワイヤまたはリードフレームに沿って伝達される熱は、主に中継電極および熱伝導性に優れたセラミックス材料からなる中継電極用絶縁層を介して熱容量が高く放熱性に優れた金属ブロックの方に伝わるので、プリント配線板の回路パターンの方に伝わる熱量は十分に小さく抑制することができる。
【0093】
これにより、本発明の第2の実施形態にかかる電力変換器では、パワー半導体ユニットからプリント配線板ユニットに流れ出す熱量を効果的に抑制することができるため、プリント配線板ユニットにおけるプリント配線板などに対する加熱を効果的に抑制することができるとともに、電力変換器における放熱性をより向上させることができる。
【0094】
次に、
図9は本発明の第2の実施形態にかかる電力変換器の異なる構成を示す断面図である。
図9に示す電力変換器100Bは、上述の
図4に示した電力変換器100Aに対して、パワー半導体素子4と中継電極41とをリードフレーム44aで接続するとともに、中継電極41とプリント配線板5Bの表面側の回路パターン24とをリードフレーム44bで接続するようにした点が異なるものであり、それ以外の点は同様である。