【文献】
Austin CARR,MIT's Freaky Non-Stick Coating Keeps Ketchup Flowing,Fast Company,2012年 5月24日,URL,http://www.fastcoexist.com/1679878/mits-freaky-non-stick-coating-keeps-ketchup-flowing
【文献】
Sushant ANAND, et al.,Droplet condensation and growth on nanotextured surfaces impregnated with an immiscible liquid,Bulletin of the American Physical Society,the American Physical Society,2012年 3月 1日,APS March Meeting 2012, Volume 57, Numbe,URL,http://meetings.aps.org/Meeting/MAR12/Event/167314
【文献】
Nancy W. STAUFFER,Novel slippery surfaces: Improving steam turbines and ketchup bottles,MIT Energy Initiative,2013年 6月20日,URL,http://mitei.mit.edu/news/novel-slippery-surfaces-improving-steam-turbines-and-ketchup-bottles
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器は、成形が容易であり、安価に製造できることなどから、各種の用途に広く使用されている。特に、容器壁の内面が低密度ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂で形成され且つダイレクトブロー成形で成形されたボトル形状のオレフィン系樹脂容器は、内容物を絞り出し易いという観点から、ケチャップなどの粘稠なスラリー状或いはペースト状の内容物を収容するための容器として好適に使用されている。
【0003】
また、粘稠な内容物を収容するボトルでは、該内容物を速やかに排出するため、或いはボトル内に残存させることなくきれいに最後まで使いきるために、ボトルを倒立状態で保存しておかれる場合が多い。従って、ボトルを倒立させたときには、粘稠な内容物がボトル内壁面に付着残存せずに、速やかに落下するという特性が望まれている。
【0004】
このような要求を満足するボトルとして、例えば、特許文献1には、最内層が、MFR(メルトフローレート)が10g/10min以上のオレフィン系樹脂からなる多層構造のボトルが提案されている。
この多層構造ボトルは、最内層が油性内容物に対する濡れ性に優れており、この結果、ボトルを倒立させたり、或いは傾斜させたりすると、マヨネーズ等の油性内容物は、最内層表面に沿って広がりながら落下していき、ボトル内壁面(最内層表面)に付着残存することなく、綺麗に排出することができるというものである。
【0005】
また、ケチャップのような植物繊維が水に分散されている粘稠な非油性内容物用のボトルについては、特許文献2或いは特許文献3に、最内層に滑剤として飽和或いは不飽和の脂肪族アミドが配合されたポリオレフィン系樹脂ボトルが提案されている。
【0006】
上述した特許文献1〜3は、何れもプラスチック容器について、容器内面を形成する熱可塑性樹脂組成物の化学組成によって内容物に対する滑り性を向上させたものであり、ある程度の滑り性向上は達成されているが、用いる熱可塑性樹脂の種類や添加剤が限定される為、滑り性向上には限界があり、飛躍的な向上は達成されていないのが実情である。
【0007】
このような観点から、最近では物理的な観点からも滑り性向上の検討がなされている。
例えば、特許文献4には、一次粒子平均径が3〜100nmの疎水性酸化物微粒子が内面に付着している容器が提案されている。
また、特許文献5には、平均粒径が1μm〜20μmの樹脂粒子により形成された樹脂膜の表面に平均粒径が5nm〜100nmの酸化物微粒子が分散付着している構造の撥水性膜が表面に形成されている蓋体が提案されている。
【0008】
特許文献5及び6で提案されている技術は、何れも内容物が接触する面に微細な凹凸を形成し、微細な凹凸面により撥水性(疎水性)を発現させている。即ち、この凹凸面を形成する材料の疎水性に加え、凹凸面に存在する空隙中に空気層が形成され、この空気層は容器を形成する材料よりも撥水性が高く、この結果、水性の内容物に対する非付着性が高められるというものである。
しかるに、このような微細な凹凸面を形成した場合では、水性の内容物に対する非付着性が高められるものの、内容物と微細な凹凸面が常時接触する場合、微細な凹凸面の凹部では水分の凝縮が非常におこりやすく、水分凝縮により凹部が埋まるためにその滑り性が悪化していく問題があり、さらなる滑り性の向上が求められている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<容器の材質及び形態>
本発明の包装容器は、後述する液浸透性面となる微細な凹凸面を容器内面に形成し得る限り、その材質や形態は限定されない。
例えば、容器材質が、熱可塑性プラスチック(例えばポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルやオレフィン系樹脂など)であってもよいし、金属、ガラス、各種セラミックスにより容器が形成されていてもよいし、さらに、その形態も、カップ状、ボトル状、袋状(パウチ)、シリンジ状、ツボ状、トレイ状等、容器材質に応じた形態を有していてよく、プラスチック製の容器においては、延伸成形されていてもよい。
【0021】
ただ、本発明の包装容器は、内容物の倒立落下性や内容物の付着残存防止などの内容物の排出性が極めて優れていることから、ケチャップやマヨネーズ等の粘稠な内容物が充填された包装容器や、固形分が分散された液状内容物(例えばドレッシング)が充填された包装容器、特に袋状(パウチ)、ボトル状の形態であることがよい。
【0022】
本発明の包装容器の材料としては、公知のオレフィン系樹脂、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中或いは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンなどにより形成される。勿論、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等であってもよい。また、前述した特許文献1(特開2007−284066号)に開示されている環状オレフィン共重合体であってもよい。
【0023】
袋状(パウチ)容器は、キャスト法、Tダイ法、カレンダー法又はインフレーション法などの通常の方法により成形したフィルム同士を貼り合わせ、周縁をヒートシールすることにより得られる。
さらに、最内層及び最外層が形成され、両層の間に中間層が形成されている多層構造を有していてもよい。多層構造は、ドライラミネーション、コーティング、溶融共押し出しなどの通常の方法により成形することができる。
【0024】
上記のような中間層としては、一般的には、アルミニウム箔等の金属箔や、エチレンビニルアルコール共重合体(エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物)や芳香族ポリアミドなどのガスバリア性樹脂を用いて形成されるガスバリア層であることが好ましく、特にエチレンビニルアルコール共重合体を用いて形成されていることが最も好適である。即ち、中間層形成用の樹脂としてガスバリア性樹脂を用いることにより、中間層に酸素バリア性を付与することができ、特にエチレンビニルアルコール共重合体は、特に優れた酸素バリア性を示すため、酸素透過による内容物の酸化劣化をも有効に抑制することができ、優れた滑落性を維持せしめると同時に、優れた内容物保存性を確保することができる。
このようなガスバリア中間層の好適な厚みは、一般に1乃至50μm、特に9乃至40μmの範囲である。
【0025】
また、上記のようなガスバリア性樹脂を中間層として用いる場合には、内外層との接着性を高め、デラミネーションを防止するために、接着剤樹脂層を介して中間層を設けることが好ましい。これにより、中間層をしっかりと内外層に接着固定することができる。このような接着樹脂層の形成に用いる接着剤樹脂はそれ自体公知であり、例えば、カルボニル基(>C=O)を主鎖若しくは側鎖に1乃至100meq/100g樹脂、特に10乃至100meq/100g樹脂の量で含有する樹脂、具体的には、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどでグラフト変性されたオレフィン樹脂;エチレン−アクリル酸共重合体;イオン架橋オレフィン系共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;などが接着性樹脂として使用される。このような接着剤樹脂層の厚みは、適宜の接着力が得られる程度でよく、一般的には0.5乃至20μm、好適には1乃至8μm程度である。
【0026】
さらに、熱可塑性プラスチックで形成されたプラスチック容器の場合には、容器を形成する樹脂に、それ自体公知の各種添加剤が配合されていてもよい。
【0027】
また、内容物の絞り出しに好適な容器形態としては、ダイレクトブローボトルである。ダイレクトブローボトルは、
図2において全体として10で示されており、螺条を備えた首部11、肩部13を介して首部11に連なる胴部壁15及び胴部壁15の下端を閉じている底壁17を有しており、このようなボトル10に粘稠な内容物を充填した後、首部11の上端開口部にアルミ箔等の金属箔19をヒートシールにより施し、所定のキャップ20を装着することにより、包装ボトルとして使用に供される。かかる包装ボトルでは、キャップ20を開封し、シール材が塗布された金属箔19を引き剥がし、ボトル10を傾倒乃至倒立させることにより、必要により胴部壁15をスクイズすることにより容器内容物の取り出しが行われる。
【0028】
また、上記ボトルは多層構造としてもよい。この場合、最外層あるいは最内層に隣接して、この容器を成形する時に発生するスクラップ樹脂をバージンの樹脂と混合してリグラインド層を形成することもできる。この場合、成形性を維持しつつ、資源の再利用化を図るという観点から、スクラップ樹脂の量は、バージンの最外層樹脂100重量部当り10乃至60重量部程度の量とするのがよい。このような最外層隣接層の厚みは、包装容器の大きさや内容物の種類等によっても異なるが、容器壁の全体厚みが必要以上の厚みとならず且つスクラップ樹脂の有効利用が図れるような厚みとすればよく、一般に、20乃至200μm程度の厚みに設定される。このような多層構造において、最内層及び最外層は、スクイズ性が確保される程度の厚みを有していればよい。
【0029】
<液浸透性面及びその形成> 本発明の包装容器では、水分含有内容物が接触する包装容器の内面に、液浸透性面が形成されている。この液浸透性面は、既に述べたように、毛管現象が重力よりも支配的となる微細な凹凸面(即ち、微細突起が分布した面)であり、内容物に対して非親和性の
食用油脂等の潤滑液が容器内に充填された水分含有内容物と混ざり合って脱落しないように保持し得る面である。 即ち、液体が表面に浸透する条件は、接触角θが90度未満であるが、毛管現象が支配的でなければ浸透した液を表面に保持することができない。重力により脱落してしまうからである。
【0030】
毛管現象が支配的ある範囲は毛管長(τ
−1)と呼ばれ、下記式で表される。
τ
−1=(γa/ρg)
1/2
式中、γaは、液体と気体(空気)との間の界面張力であり、
ρは液体の密度であり、
gは重力加速度である。
即ち、液滴、気体及び固体(容器内面)が同時に接触する接触線から毛管長(τ
−1)の範囲内において毛管現象が支配的となる(液滴の高さが増大していく)。この毛管長は、上記式から理解されるように、容器内面の材質にかかわらず、液によって一定であり、例えば、水では約2.7mmである。
【0031】
従って、例えば
図1を参照して、液浸透性面とするためには、凹部の内径を毛管長(τ
−1)以下に設定すればよい。この毛管長は、液体(潤滑液)の種類によって異なるが、多くの液体で1mmを超える範囲にあるので、1mm以下の内径を有する凹部を容器の内面の全体にわたって分布しておけばよい。この場合、凹部の深さdやピッチp及び凹部の密度(単位面積当りの凹部の数)は、保持される潤滑液の量が0.5乃至50g/m
2、特に1.0至50g/m
2の範囲となるように設定しておくことが好ましい。この量が少ないと、凹部の深さやピッチおよび凹部の密度にも依存するが、内容物が液体を介さずに、凹部間の容器表面に直接接触してしまう領域が増大し、該液体の潤滑効果が十分に発揮されず、内容物の倒立落下性の向上効果や内容物の付着残存防止効果が低下してしまう。また、必要以上に多量に液体を保持させることは、内容物のフレーバ−性の低下を生じさせるおそれがあり、さらには、容器壁の強度等を低下させるおそれもある。
【0032】
液浸透面を形成する材質としては、後述の潤滑液及び内容物にも依るが、例えば水性の内容物に対しては、潤滑液は非水性(親油性)の液体を用いるのが良く、親油性の材質で形成することが好ましい。このことは、液浸透面を形成する材質と潤滑液の化学的性質が近い場合、前述の毛管現象の効果に加え、液浸透面を形成する材質と潤滑液の親和力が働き、潤滑液がさらに安定化すると考えられるからである。逆に、親水性の材質で液浸透面を形成し、潤滑液に油性の液体を用いて、水性の内容物を接触させた場合、液浸透面の親水性材質は水性液体で浸透された方が安定なため、あらかじめ浸漬しておいた油性潤滑液が水性液体で置換されてしまい、性能が悪化するおそれがある。従って、液浸透性面を形成する材質は、内容物および潤滑液の化学的性質により適宜選択することが望ましい。
【0033】
ところで、上記のような液浸透性面(微細な凹部)は、容器の材質や形態に応じた適宜の手段によって形成される。
即ち、上述した微細な凹部を形成する手段としては、金型、ロール転写、エンボス加工、噴霧等の機械的手段、フォトリソグラフィーやレーザー光を用いてのエッチング等の光学的手段、微粒子(金属酸化物微粒子やポリマー微粒子)や多孔質体を塗布乃至混合(練り込み)又は溶液に配合させての塗布乃至浸漬、結晶性添加剤を塗布乃至混合(練り込み)又は溶液に配合させて塗布乃至浸漬、多孔質シート(例えば不織布)のラミネート、樹脂の結晶化を用いた微細構造形成などが知られており、容器の材質や形態に応じて、これらの中から適宜の手段を選択して液浸透性面となる凹部を形成すればよい。
【0034】
例えば、金属容器では、容器に成形する前の金属板に、ロール転写、エンボス加工等の機械的手段によって容器の内面となる部分に凹部を形成し、この後に、打ち抜き、絞りしごき加工等を行って容器の形態に成形される。
ガラス容器では、容器に成形する前のガラス材に高融点の金属酸化物粉末などを練り込むか、成形後の容器に溶融した結晶性添加剤を直接塗布するか、結晶性添加剤を溶剤で溶液化しスプレーコートもしくは浸漬して凹部を形成すればよい。
セラミックス製容器では、焼成に供するグリーンシート等に、上記の機械的手段によって微細な凹部を形成しておけばよい。
【0035】
さらに、プラスチック容器において、フィルムの貼り合わせからなる袋状容器や、シート状の前成形体をプラグアシスト成形等の真空成形することによって得られるカップ状或いはトレイ状の容器では、上記の何れの手段も採用することができるが、ボトル形状の容器では、口部から塗料を注入して内面に接触させる、或いは、口部から治具を挿入して容器内面に対して塗料をスプレーし、乾燥することで微細な凹部を形成することができる。
また、これらの形状の容器において、内面材に結晶性樹脂を使用する場合、上述の樹脂の結晶化を用いた微細構造形成を利用することができる。樹脂種や結晶化温度をコントロールすることにより、微細な凹部を形成することが可能である。
【0036】
また、ボトルの場合には、一般的に、ボトルの内面を形成する樹脂に、凹部形成用の微粒子、結晶性添加剤を配合する方法、樹脂の結晶化を用いた微細構造形成も適用できる。
即ち、ボトルは、押出成形や射出成形によってパイプ状或いは試験管状のプリフォームを成形し、このプリフォームをブロー成形することにより成形されるが、内面を形成する樹脂に金属酸化物微粒子やポリマー微粒子などの微粒子をある程度の量で配合(内添)しておけば、その粉末の粒径に応じた内径を有する凹部若しくは突起(突起の間が凹部となる)が、容器の内面に形成される。また、結晶性の添加剤を内面形成用樹脂に配合しておけば、金型冷却時に、該添加剤が結晶化して成形された容器の内面に析出し、これにより、前述した微細な凹部を容器内面に形成することができる。
【0037】
上記の酸化物微粒子としては、例えば酸化チタン、アルミナ、シリカなどが使用され、また、ポリマー微粒子としては、ポリメチル(メタ)アクリレート硬化物などが代表的であり、これらは、通常、容器内面を形成する樹脂(例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂或いはPET等のポリエステル樹脂)100重量部当り0.2乃至5重量部程度の量で配合される。
また、結晶性添加剤としては、各種ワックス類、例えばキャンデリラワックス、カルナウバワックス、蜜蝋、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスを例示することができる。このような結晶性添加剤は、容器内面を形成する樹脂100重量部当り0.2乃至10重量部程度の量で配合される。
また、樹脂の結晶化を用いた微細構造形成としては、容器内面を形成する樹脂に各種の結晶性樹脂が使用可能であり、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂を用いて、押出温度や金型温度をコントロールすることで内面に形成される微細構造のサイズを制御することができる。この微細構造は使用する樹脂の結晶化により凹部が形成されるため、結晶サイズが大きくなる条件にすれば(例えば、金型温度を高くする)、凹部のサイズを大きくすることができる。また、樹脂の結晶化は、使用する樹脂の分子量、分岐構造等も強く影響するため、目的の微細な凹部を得るためにこれらのパラメータを変更することも可能である。
【0038】
上記のようにして容器の内面に液浸透性面が形成される。尚、このような液浸透性面は、包装容器の本体の内面に限定されるものではなく、例えば蓋材の内容物と接触する部分に形成してもよい。このような部分に液浸透性面を形成しておくことにより、蓋材に内容物が付着するなどの不都合を回避することができる。
蓋材の内面への液浸透性面の形成は、その材質に応じて、前述した凹部形成手段の何れかを選択して行うことができる。
【0039】
上述の液浸透性面を目的とする基材の上に形成させる手法のうち、微粒子や多孔質体を溶剤に分散させ、塗布・浸漬・スプレーコート等により表面へ外添する方法を用いる場合、溶剤中に、基材と化学的親和性が高く密着性を示す材料(バインダ)を分散乃至溶解せしめておくことが好ましい。例えば、基材がポリプロピレン(PP)の場合、バインダとして、PP微粒子、エマルジョン状態に分散したPP、PPワックス等が挙げられる。基材がポリエチレンの場合では、PE微粒子、エマルジョン状態に分散したPE、PEワックス等が挙げられる。
【0040】
特に本発明において、前述した各種の微粒子(酸化物微粒子やポリマー微粒子)を用いて液浸透性面を形成することが好適である。即ち、このような微粒子を用いて液浸透性面を形成する場合には、例えば樹脂に対する微粒子の配合量或いは微粒子のコーティング量などの調整により、後述する潤滑液をしっかりと保持し得る液浸透性面の形成が容易となる。
【0041】
例えば、平均一次粒径が200nm以下、特に1nm〜200nmの微粒子を、表面を形成する樹脂に内添し或いは該表面に外添することにより液浸透性面を形成する場合には、微細突起が表面に多数分布する程度に内添量や外添量を調節しておくことが好適である。即ち、微細突起が多数分布する場合、かかる微細突起の間の空間が前述した潤滑液を保持し得る凹部となる。
尚、微粒子の平均一次粒径は、微粒子の種類や大きさによっても異なるが、一般的には、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡など電子顕微鏡観察による方法や、レーザー回折式粒度分布測定装置などのレーザ回折・散乱法による方法等によって測定することができる。微粒子の平均一次粒径は、電子顕微鏡観察による測定においては測定した一次粒子の平均径として定義され、また、レーザー回折・散乱法による測定においては得られた粒度分布における積算値50%での粒径として定義される。
【0042】
このような微細突起は、上記の微細粒子に由来しているため、突起先端は多くの場合丸みを帯びたものとなり、例えばカッティングやレーザー加工の後加工により液浸透性面を形成した場合と比較すると、突起(或いは突起間の凹部)の形態をかなり異にしている。
添付の
図3は、原子間力顕微鏡により測定した液浸透性面の3次元像(
図3(a))及び断面形状のプロファイル(
図3(b))であり、この測定結果から、微細粒子を用いて形成された液浸透性面はかなり特異的なプロファイルを有しており、潤滑液を安定に保持し得ることが理解される。
【0043】
上記のように微細粒子を用いて液浸透性面を形成する場合、原子間力顕微鏡により10μmx10μmの範囲を走査して得られる表面形状プロファイルにおいて、下記式(1):
【数2】
式中、nはデータポイント数であり、
Z(i)は各データポイントのZの値であり、
Z
aveは全Z値の平均値である、
で表される二乗平均面粗さRMSが60nm乃至300nmの範囲に
あることが、潤滑液を安定に保持する上で好適である。
【0044】
<潤滑液及び内容物>
本発明においては、上記の液浸透性面に潤滑液が浸透し保持される。潤滑液の浸透保持は、包装容器の内部に潤滑液を浸漬し或いはスプレーし、次いで、潤滑液を排出するという単純な操作で至って簡単に行われる。即ち、液浸透性面では、毛管現象が重力よりも支配的となっているため、単純な浸漬処理により、所定量の潤滑液を液浸透性面に脱落せずに保持せしめることが可能となるわけである。
【0045】
ところで、本発明の包装容器では、内容物が充填された状態で潤滑液が液浸透性面に保持されていなければならない。このため、潤滑液は、内容物に対して非親和性の液体であることが必要である。内容物に対して親和性であると、潤滑液が内容物と混ざり合って液浸透性面から脱落してしまうこととなるからである。
【0046】
本発明では、内容物として水分含有のものが使用されるため、潤滑液として、水分含有内容物と混和しない油性液体が使用されるが、一般的には、包装容器内に内容物を充填した後、内容物を排出し且つ内容物を選択的に抽出除去した後、容器内面(液浸透性面)に残存する液量が前述した保持量(0.5乃至50g/m
2、特に1乃至50g/m
2)の範囲内となるような潤滑液
、例えば、シリコーンオイル、グリセリン脂肪酸エステル、流動パラフィン、食用油脂の群から選ばれる少なくとも1種を使用すればよい。特に、潤滑液の表面張力が、内容物と大きく異なるものほど、潤滑効果が高く、本発明には好適である。
例えば、表面張力が16乃至40mN/m、さらに好ましくは16乃至35mN/mの範囲にある
食用油脂等を潤滑液として用いるのが良い。 また、かかる油性液体は、当然、揮発性が
低く、包装容器を開封した状態においても、揮散しないような蒸気圧を
有している。
【0047】
本発明の包装容器において、充填される
水分含有内容物は、特に制限されるものではないが、一般的には、粘稠なペースト乃至スラリー状の流動性物質(例えば25℃での粘度が100mPa・s以上のもの)、具体的には、ケチャップ、水性糊、蜂蜜、各種ソース類、マヨネーズ、マスタード、ジャム、チョコレートシロップ、乳液等の化粧液、液体洗剤、シャンプー、リンスなどが内容物として好適である。即ち、本発明では、このような粘稠な流動物質であっても、容器を傾倒或いは倒立させることにより、容器の内面に付着残存させることなく、速やかに排出することができるからである。
【0048】
また、本発明の内容物は、潤滑液の選択の幅が大きいことから、特に水分を多く含むもの、例えばケチャップ、各種ソース類、蜂蜜、マヨネーズ、マスタード、ジャム、チョコレートシロップ、乳液などが
好ましい。
【0049】
本発明において、上記のような水分含有の内容物に対して最も好適に使用される潤滑液は、表面張力が前述した範囲にあるものであり、特にシリコーンオイル、グリセリン脂肪酸エステル、流動パラフィン、食用油脂である。これらの物質は、揮散し難く、しかも、食品添加物として認可されており、さらには、無臭であり、内容物のフレーバ−を損なわないという利点もある。さらに、付け加えると、これらの潤滑液は、表面張力が高く、表面に保持し難いという性質を有しているが、例えば、原子間力顕微鏡により測定される二乗平均面粗さRMSが前述した範囲(60〜300nm)にある液浸透性面では、これらの潤滑液をもしっかりと安定に保持することができる。
【0050】
尚、上記の水分含有内容物の中では、非エマルジョン系のものが最も好適である。マヨネーズや乳液のようなエマルジョン系のものは、容器を傾倒或いは倒立させての内容物の排出作業を繰り返し行っていくと、徐々にではあるが、液浸透面に保持されている潤滑液を抱き込んで取り除いていく傾向があるが、非エマルジョン系のものは、このような傾向を示さないからである。
【0051】
このように本発明の包装容器では、容器材質によらず、物理的な手段により微細な凹部からなる液浸透性面を形成し、この液浸透性面に内容物の充填によって脱落しないように潤滑液が保持されているため、内容物に対する滑り性が著しく向上しており、粘稠な内容物が充填されている場合にも、内容物に対する滑り性が容器を傾倒或いは倒立させることにより、容器の内面に付着残存させることなく、速やかに排出することができる。
また、本発明の包装容器では、内容物が充填されていない空容器の場合、透明性を示し、内容物が認識できるという利点がある。即ち、微細な凹部による液浸透性面が形成されているだけであれば、光の散乱により透明性が損なわれるが、本発明では、この液浸透性面に潤滑液が保持されているため、光の散乱による透明性の低下が有効に回避されている。
【実施例】
【0052】
本発明を次の実施例にて説明する。
尚、以下の実施例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及び容器(フィルム、ボトル)の成形に用いた樹脂等は次の通りである。
【0053】
内容物滑落速度測定;
後述の方法で作成したフィルムまたはボトルから10mm×60mmの試験片を切り出し、固定用治具に測定面(液浸透性面が形成された面)が上になるように貼り付けた。23℃50%RHの条件下、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)を用いて、試験片の測定面に70mgのケチャップ(カゴメ(株)製)、または60mgのマヨネーズ(キユーピー(株)製)をのせ、85°の傾斜角において、規定時間毎の画像を撮影した。測定で得られた画像から、ケチャップ、マヨネーズの時間―移動距離の関係を求め、そこから平均速度を算出した。
【0054】
内容物非付着性試験;
後述の方法で作成したフィルムまたはボトルから50mm×50mmの試験片を切り出し、アルミ板に試験片の測定面(液浸透性面が形成された面)が上になるように貼り付けた。測定面に約2gの内容物をのせ、試験片を貼り付けたアルミ板を傾け、内容物の付着性を目視にて評価した。内容物が付着せずに素早く移動したものを◎、付着せずにゆっくりと移動したものを△、付着しながら移動したものあるいは付着してほとんど移動しなかったものを×とした。
用いた内容物を下記に示す。なお、内容物の粘度として、音叉型振動式粘度計SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて25℃で測定した値を示した。
用いた内容物;
ケチャップ (トマトケチャップ、カゴメ(株)製、粘度=1050mPa・s)
マヨネーズ (キユーピーマヨネーズ、キユーピー(株)製、粘度=2500mPa・s)
ソース (お好みソース、オタフクソース(株)製、粘度=560mPa・s)
はちみつ (ブレンドはちみつ、(株)加藤美蜂園本舗製、粘度=8500mPa・s)
ジャム (ブルーベリージャム、ミナト商会)
チョコレートシロップ (ハーシーチョコレートシロップ)
マスタード (マスタード、エスビー食品(株)製、粘度=380mPa・s)
みそ (献立いろいろみそ、イチビキ(株)製)
【0055】
液浸透面の表面形状測定;
後述の方法で作製した液浸透性面が形成された多層フィルムにおいて、潤滑液を塗布する前の表面形状を、原子間力顕微鏡(NanoScopeIII、Digital Instruments社製)により測定した。測定条件を下記に示す。
カンチレバー:共振周波数f
0=363〜392kHz、
バネ定数k=20〜80N/m
測定モード:タッピングモード
Scanrate:0.6Hz
スキャン範囲:10μmx10μm
スキャンライン数:256
得られた3次元形状のデータから、前記原子間力顕微鏡に付属のソフトウェア(Nanoscope:version5.30r2)を用いて、スキャン範囲(100μm
2)の最大高低差R
MAX、および二乗平均面粗さRMSを求めた。最大高低差R
MAXは全データポイントZ(i)の最大値と最小値の差であり、二乗平均面粗さRMSは下記式で与えられる。
【数3】
式中、nはデータポイント数であり、
Z(i)は各データポイントのZの値であり、
Z
aveは全Z値の平均値である。
【0056】
潤滑液として用いた液体を下記に示す。なお、各種液体の表面張力は固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)を用いて23℃にて測定した値を用いた。なお、液体の表面張力測定に必要な液体の密度は、密度比重計DA−130(京都電子工業(株)製)を用いて23℃で測定した値を用いた。
また、各種液体の粘度は音叉型振動式粘度計SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて23℃にて測定した値を示した。用いた液体の各種物性値を表1に示す。
潤滑液;
a:シリコーンオイル
b:流動パラフィン (以下、流動パラフィンAと示す)
c:中鎖脂肪酸トリグリセライド
d:流動パラフィン (以下、流動パラフィンBと示す)
e:グリセリンジアセトモノオレート
f:グリセリントリオレート
g:オリーブ油
【0057】
【表1】
【0058】
実験に用いてフィルム或いは容器;
1.ポリプロピレン系多層フィルム(PP多層フィルム)
総厚み:90μm
層構成:PET/AD/AL/AD/PP (ADは接着層)
2.ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)
厚み:100μm
<オレイン酸アミド配合多層ポリエチレンボトル>
最内層および最外層形成用樹脂;
樹脂:低密度ポリエチレン
(オレイン酸アミド0.3重量部配合)
MFR;0.4g/10min
密度;0.92g/cm
3
接着剤層
無水マレイン酸変性ポリエチレン
ガスバリア層
エチレンビニルアルコール共重合体
(密度1.19g/cm
3、Tg69℃)
第2内層用樹脂
樹脂:低密度ポリエチレン
(オレイン酸アミド0.03重量部配合)
MFR;0.4g/10min
密度;0.92g/cm
3【0059】
(実施例1)
疎水性シリカ0.9g(平均一次粒径=7nm)、ポリプロピレン微粒子1.5g(平均粒子径=4μm)、エタノール13.8g、水13.8gをガラス瓶に秤量し、ディスパーを用いて4500rpmで10分間分散させ、液浸透性面形成用塗料Aを作製した。作製した塗料AをPP多層フィルムのPP面側にバーコーター(#6)を用いて塗布した後、100℃に設定したオーブン中で2分間乾燥させた。液浸透性面が形成されたPP多層フィルムから100mmx100mmを切り出し、潤滑液c(中鎖脂肪酸トリグリセライド)を塗布した。塗布後、フィルムを垂直にし、余剰の潤滑液cを充分に取り除いた。潤滑液cの塗布前後でのフィルムの重量変化から、潤滑液cの保持量を求めた。保持量は12.2g/m
2であった。作製した潤滑液保持フィルムを用いて、内容物滑落速度測定および内容物非付着性試験を行った。結果を表2に示す。
また、液浸透性面が形成されたPP多層フィルムの一部を切り取り、上述の液浸透面の表面形状測定を行った。結果を表3に示す。
【0060】
(実施例2)
実施例1と同様の条件で液浸透性面形成用塗料Aを用いて液浸透性面が形成されたPP多層フィルムを作成した。液浸透性面が形成されたPP多層フィルムから100mmx100mmを切り出し、潤滑液b(流動パラフィンA)を塗布した。塗布後、フィルムを垂直にし、余剰の潤滑液bを充分に取り除いた。潤滑液bの塗布前後でのフィルムの重量変化から、潤滑液bの保持量を求めた。保持量は7.2g/m
2であった。作製した潤滑液保持フィルムを用いて、内容物非付着性試験を行った。結果を表2に示す。
【0061】
(実施例3)
疎水性シリカ2g(平均一次粒径=7nm)、ポリプロピレン水性エマルジョン4g(固形分濃度30wt%)、エタノール18.4g、水15.6gをガラス瓶に秤量し、ディスパーを用いて4500rpmで10分間分散させ、液浸透性面形成用塗料Bを作製した。
作製した塗料BをPP多層フィルムのPP面側にバーコーター(#6)を用いて塗布した後、90℃に設定したオーブン中で2分間乾燥させた。液浸透性面が形成されたPP多層フィルムから100mmx100mmを切り出し、潤滑液c(中鎖脂肪酸トリグリセライド)を塗布した。
塗布後、フィルムを垂直にし、余剰の潤滑液cを充分に取り除いた。潤滑液cの塗布前後でのフィルムの重量変化から、潤滑液cの保持量を求めた。保持量は1.6g/m
2であった。
作製した潤滑液保持フィルムを用いて、内容物非付着性試験を行った。結果を表2に示す。
また、液浸透性面が形成されたPP多層フィルムの一部を切り取り、上述の液浸透面の表面形状測定を行った。結果を表3に示す。また、得られた表面形状の3次元像、および任意の断面におけるプロファイルを
図3に示す。
【0062】
(実施例4)
実施例3と同様の条件で液浸透性面形成用塗料Bを用いて液浸透性面が形成されたPP多層フィルムを作成した。液浸透性面が形成されたPP多層フィルムから100mmx100mmを切り出し、潤滑液d(流動パラフィンB)を塗布した。塗布後、フィルムを垂直にし、余剰の潤滑液dを充分に取り除いた。
潤滑液dの塗布前後でのフィルムの重量変化から、潤滑液dの保持量を求めた。保持量は12.5g/m
2であった。
作製した潤滑液保持フィルムを用いて、内容物非付着性試験を行った。結果を表2に示す。
【0063】
(実施例5)
実施例3と同様の条件で液浸透性面形成用塗料Bを用いて液浸透性面が形成されたPP多層フィルムを作成した。液浸透性面が形成されたPP多層フィルムから100mmx100mmを切り出し、潤滑液e(グリセリンジアセトモノオレート)を塗布した。塗布後、フィルムを垂直にし、余剰の潤滑液eを充分に取り除いた。
潤滑液eの塗布前後でのフィルムの重量変化から、潤滑液eの保持量を求めた。保持量は3.8g/m
2であった。
作製した潤滑液保持フィルムを用いて、内容物非付着性試験を行った。結果を表2に示す。
【0064】
(実施例6)
実施例3と同様の条件で液浸透性面形成用塗料Bを用いて液浸透性面が形成されたPP多層フィルムを作成した。液浸透性面が形成されたPP多層フィルムから100mmx100mmを切り出し、潤滑液f(グリセリントリオレート)を塗布した。塗布後、フィルムを垂直にし、余剰の潤滑液fを充分に取り除いた。
潤滑液fの塗布前後でのフィルムの重量変化から、潤滑液fの保持量を求めた。保持量は3.2g/m
2であった。
作製した潤滑液保持フィルムを用いて、内容物非付着性試験を行った。結果を表2に示す。
【0065】
(実施例7)
実施例3と同様の条件で液浸透性面形成用塗料Bを用いて液浸透性面が形成されたPP多層フィルムを作成した。液浸透性面が形成されたPP多層フィルムから100mmx100mmを切り出し、潤滑液a(シリコーンオイル)を塗布した。塗布後、フィルムを垂直にし、余剰の潤滑液aを充分に取り除いた。
潤滑液aの塗布前後でのフィルムの重量変化から、潤滑液aの保持量を求めた。保持量は14.9g/m
2であった。
作製した潤滑液保持フィルムを用いて、内容物非付着性試験を行った。結果を表2に示す。
【0066】
(実施例8)
実施例3と同様の条件で液浸透性面形成用塗料Bを調製した。調製した塗料BをPETフィルムの片面にバーコーター(#6)を用いて塗布した後、90℃に設定したオーブン中で2分間乾燥させた。液浸透性面が形成されたPETフィルムから100mmx100mmを切り出し、潤滑液c(中鎖脂肪酸トリグリセライド)を塗布した。塗布後、フィルムを垂直にし、余剰の潤滑液cを充分に取り除いた。
潤滑液cの塗布前後でのフィルムの重量変化から、潤滑液cの保持量を求めた。保持量は5.0g/m
2であった。
作製した潤滑液保持フィルムを用いて、内容物非付着性試験を行った。結果を表2に示す。
【0067】
(実施例9)
実施例8と同様の条件で液浸透性面形成用塗料Bを用いて液浸透性面が形成されたPETフィルムを作成した。液浸透性面が形成されたPETフィルムから100mmx100mmを切り出し、潤滑液d(流動パラフィンB)を塗布した。塗布後、フィルムを垂直にし、余剰の潤滑液dを充分に取り除いた。
潤滑液dの塗布前後でのフィルムの重量変化から、潤滑液dの保持量を求めた。保持量は11.3g/m
2であった。
作製した潤滑液保持フィルムを用いて、内容物非付着性試験を行った。結果を表2に示す。
【0068】
(実施例10)
実施例8と同様の条件で液浸透性面形成用塗料Bを用いて液浸透性面が形成されたPETフィルムを作成した。液浸透性面が形成されたPETフィルムから100mmx100mmを切り出し、潤滑液g(オリーブ油)を塗布した。塗布後、フィルムを垂直にし、余剰の潤滑液gを充分に取り除いた。
潤滑液gの塗布前後でのフィルムの重量変化から、潤滑液gの保持量を求めた。保持量は7.9g/m
2であった。
作製した潤滑液保持フィルムを用いて、内容物非付着性試験を行った。結果を表2に示す。
【0069】
(比較例1)
50mm押出機に第2内層用樹脂として、オレイン酸アミドを0.03重量%含有する低密度ポリエチレン、40mm押出機に最外層および最内層形成用樹脂として、オレイン酸アミド0.3重量%含有する低密度ポリエチレン、30mm押出機Aに接着剤層形成用樹脂として無水マレイン酸変性ポリエチレン、30mm押出機Bに滑剤遮断性中間層形成用樹脂としてエチレンビニルアルコール共重合体の樹脂ペレットをそれぞれ供給し、温度210度の多層ダイヘッドより溶融パリソンを押し出し、公知のダイレクトブロー成形法により内容量500g、重量20gの4種6層の多層ボトルを作製した。
【0070】
このボトルの胴部層構成は以下の通りである。
最外層:30μm
接着材層:10μm
滑剤遮断性中間層:25μm
接着材層:10μm
最内隣接層(第2内層):190μm
最内層:160μm
【0071】
成形後のボトルを22℃60%RHの環境下で10日保管し、内面側にオレイン酸アミドをブリードさせ、容器内面側にオレイン酸アミドから成る潤滑層を形成させた。その後、このボトル胴部を切り出し、内面側を測定面として内容物滑落試験および内容物非付着性試験を行った。結果を表2に示す。
【0072】
(比較例2)
実施例3と同様の条件で液浸透性面形成用塗料Bを用いて液浸透性面が形成されたPP多層フィルムを作成した。作製したフィルムに潤滑液を塗布せずに内容物非付着性試験を行った。結果を表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
内容物滑落速度測定の結果から、液浸透面に潤滑液を保持した実施例1ではケチャップの滑落速度が228mm/min、マヨネーズの滑落速度が59mm/minであるのに対し、液浸透面も潤滑液も無い比較例1ではケチャップの滑落速度が24mm/min、マヨネーズの滑落速度が0.49mm/minであり、いずれの内容物に対しても桁違いの速度を示していることが分かる。
また、内容物非付着性試験の結果から、液浸透面が無い比較例1および液浸透面を形成しても潤滑液を用いていない比較例2では多くの内容物で付着性が高く、移動速度が遅かったのに対し、液浸透面に潤滑液を保持した実施例1から実施例10では、全ての内容物で非付着性を示し、高い滑落性を示していることが分かる。
また、表3および
図3に示す液浸透面の表面形状測定の結果から、本発明における液浸透面には、突起が分布しており、そのサイズもランダムに分布していることが分かる。また、液浸透面の粗さは10μmx10μmの測定範囲でのRMSの値として、90nmから240nmの範囲となっていることが分かる。