(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971360
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】コヒーレント光受信装置およびコヒーレント光受信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/61 20130101AFI20160804BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20160804BHJP
【FI】
H04B9/00 610
H01L31/02 D
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-8717(P2015-8717)
(22)【出願日】2015年1月20日
(62)【分割の表示】特願2012-553798(P2012-553798)の分割
【原出願日】2012年1月20日
(65)【公開番号】特開2015-84594(P2015-84594A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2015年1月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-9701(P2011-9701)
(32)【優先日】2011年1月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森江 正夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 耕一
【審査官】
後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭64−039838(JP,A)
【文献】
特開2010−109847(JP,A)
【文献】
特開平05−347603(JP,A)
【文献】
特開2010−245772(JP,A)
【文献】
特開昭64−16036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
H01L 31/0232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長を有する局部発振光を出力する第1の手段と、
入力された光信号を、前記局部発振光と干渉させることにより受信する第2の手段と、
前記第2の手段が受信した前記光信号を電気的に処理する第3の手段と、
前記光信号のパワーの少なくとも一部をモニタする第4の手段と、
前記第4の手段がモニタした光パワーに応じて、良好な受信信号品質が得られるように、前記第1の手段が出力する前記局部発振光のパワーを制御する第5の手段、とを備える
コヒーレント光受信装置。
【請求項2】
前記光信号は複数の波長が多重された波長多重光信号であり、
前記第2の手段は、入力された前記波長多重光信号が含む所定の波長の光信号を、前記局部発振光と干渉させることにより選択的に受信する
請求項1に記載したコヒーレント光受信装置。
【請求項3】
前記光信号は異なる偏波が多重された偏波多重光信号であり、
入力された前記偏波多重光信号を、第1の偏波光信号と第2の偏波光信号とに分離する第6の手段と、
前記局部発振光を第1の分岐光と第2の分岐光とに分岐する第7の手段、とをさらに備え、
前記第2の手段は、前記第1の偏波光信号と前記第1の分岐光とを干渉させて受信し、前記第2の偏波光信号と前記第2の分岐光とを干渉させて受信する
請求項1または2に記載したコヒーレント光受信装置。
【請求項4】
前記第5の手段は、前記第4の手段がモニタした光パワーと前記局部発振光の光パワーとに応じて、前記第1の手段が出力する前記局部発振光のパワーを増加および減少のいずれかをさせる制御を行う
請求項1から3のいずれか一項に記載したコヒーレント光受信装置。
【請求項5】
所定の波長を有する局部発振光を出力し、
入力された光信号を、前記局部発振光と干渉させることにより受信し、
前記受信した光信号を電気的に処理し、
前記光信号のパワーの少なくとも一部をモニタし、
前記モニタした光パワーに応じて、良好な受信信号品質が得られるように、前記局部発振光のパワーを制御する
コヒーレント光受信方法。
【請求項6】
前記光信号は複数の波長が多重された波長多重光信号であり、
入力された前記波長多重光信号が含む所定の波長の光信号を、前記局部発振光と干渉させることにより選択的に受信する
請求項5に記載したコヒーレント光受信方法。
【請求項7】
前記光信号は異なる偏波が多重された偏波多重光信号であり、
入力された前記偏波多重光信号を、第1の偏波光信号と第2の偏波光信号とに分離し、
前記局部発振光を第1の分岐光と第2の分岐光とに分岐し、
前記第1の偏波光信号と前記第1の分岐光とを干渉させて受信し、前記第2の偏波光信号と前記第2の分岐光とを干渉させて受信する
請求項5または6に記載のコヒーレント光受信方法。
【請求項8】
前記モニタした光パワーと前記局部発振光の光パワーとに応じて、前記局部発振光のパワーを増加および減少のいずれかをさせる制御を行う
請求項5から7のいずれか一項に記載したコヒーレント光受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コヒーレント光受信装置およびコヒーレント光受信方法に関し、特に、受信信号品質が良好なコヒーレント光受信装置およびコヒーレント光受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット内の情報量(トラフィック)の増大に伴い基幹伝送システムの更なる大容量化が求められている。大容量化技術の一つとしてコヒーレント光伝送技術が注目されている。コヒーレント光伝送技術では、コヒーレント光受信装置において信号光と局部発振(Local Oscillator:LO)光を混合することによって増幅されたAC(Alternating Current)信号成分を受信する。このとき、局部発振(LO)光の光出力を大きくするほど信号光に大きな増幅作用が働くため、信号光に対して大きな局部発振(LO)光を入力することによって高いS/N(Signal/Noise)比での受信特性が得られる。
【0003】
このようなコヒーレント光受信装置の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたコヒーレント光受信装置は、光ハイブリッド、受光部、アナログ−デジタル変換器(ADC)、信号処理部を有し、さらに、信号品質モニタ、制御量付与部、入力光レベル制御部、および局部発振光源を備える。
【0004】
入力光レベル制御部は、制御量付与部からの制御を受けて、光ハイブリッドに導入される光信号、即ち、光伝送路を伝送した光信号のレベルを制御する。局部発振光源が光ハイブリッドに出力する局部発振光のレベルは、制御量付与部によって制御される。信号品質モニタは、信号処理部でのデジタル信号処理により得られる情報から受信信号品質をモニタする。
【0005】
制御量付与部は、信号品質モニタによるモニタ結果に基づき、入力光レベル制御部および局部発振光源にそれぞれ制御量を与えることにより、光ハイブリッドに導入され混合される入力光および局発光のパワー比を制御する。さらに、制御量付与部はパワー比を一定としながら、信号光および局部発振光の振幅を制御する。
【0006】
このような構成を採用したことにより、信号光パワーと局部発振光パワーのパワー比が少なくともある一定の範囲に収めるようにすることが可能となる。一方、受信信号の信号品質は局部発振光パワーを一定としたとき、信号光パワーが所定の範囲で最適となる。以上より、特許文献1に記載された関連するコヒーレント光受信装置によれば、信号光パワーと局部発振光パワーのパワー比を制御することにより、受信信号の信号品質を良好に保つことができることとしている。さらに、信号光および局部発振光各々の振幅自体についても最適化を図ることができることから、受信信号品質の更なる向上に資するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−245772号公報(段落「0031」〜「0071」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した関連するコヒーレント光受信装置においては、信号品質モニタからのモニタ値が所定の閾値条件を満たすまで、信号光および局発光についてのレベルの制御を行なうこととしている。そのため、受信信号の品質を良好に保つための制御処理が複雑になるという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、上述した課題である、関連するコヒーレント光受信装置においては、受信信号の品質を良好に保つための制御処理が複雑である、という課題を解決するコヒーレント光受信装置およびコヒーレント光受信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のコヒーレント光受信装置は、所定の波長を有する局部発振光を出力する第1の手段と、入力された光信号を、局部発振光と干渉させることにより受信する第2の手段と、第2の手段が受信した光信号を電気的に処理する第3の手段と、光信号のパワーの少なくとも一部をモニタする第4の手段と、第4の手段がモニタした光パワーに応じて、第1の手段が出力する局部発振光のパワーを制御する第5の手段、とを備える。
【0011】
本発明のコヒーレント光受信方法は、所定の波長を有する局部発振光を出力し、入力された光信号を、局部発振光と干渉させることにより受信し、受信した光信号を電気的に処理し、光信号のパワーの少なくとも一部をモニタし、モニタした光パワーに応じて、局部発振光のパワーを制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコヒーレント光受信装置およびコヒーレント光受信方法によれば、簡易な構成で受信信号の品質を良好に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るコヒーレント光受信装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】デバイス制限要因について説明するための関連するコヒーレント光受信装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】多重信号光を受信した場合の関連するコヒーレント光受信装置における入力信号光パワーと局部発振光パワーとの関係を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るコヒーレント光受信装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係るコヒーレント光受信装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係るコヒーレント光受信装置100の構成を示すブロック図である。コヒーレント光受信装置100は、コヒーレント光受信器110、入力パワーモニタ部120、コヒーレント光受信器110に接続された局部発振器(LO)130、および制御部140を有する。
【0016】
コヒーレント光受信器110は、90°ハイブリッド回路111、フォトダイオードなどからなる光電変換器112、および増幅器113を備える。そして、入力信号光を受信して検波し、検波後の信号を制御部140に出力する。
【0017】
入力パワーモニタ部120は、増幅器113よりも前段側の入力信号光の光路内に配置され、入力信号光のパワーに基づいて定まる入力パワー情報を取得し制御部140に出力する。具体的には、例えば、入力パワーモニタ部120は入力信号光から微小な光量を分岐させてフォトディテクタで検出する構成とし、フォトディテクタの電気出力信号を入力パワー情報することができる。
【0018】
制御部140は、入力パワーモニタ部120から入力パワー情報を取得し、入力パワー情報に基づいて局部発振器(LO)130が出力する局部発振光のパワーを制御する。
【0019】
また入力信号光が、信号光が多重された多重信号光である場合には、コヒーレント光受信器110は多重信号光を一括して受信し、局部発振器(LO)130が出力する局部発振光と干渉する信号光を多重信号光の中から選択的に検波して出力する。この場合、関連するコヒーレント光受信装置においては、多重信号光を受信する場合に特に問題となるダイナミックレンジの減少に対する改善が図れないという問題があった。この点について以下に詳細に説明する。
【0020】
コヒーレント光伝送方式においては、強度変調/直接検波(Intensity Modulation−Direct Detection:IM−DD)方式と異なり、高出力の局部発振(LO)光が常に入力されているので、入力信号光のパワー・ダイナミックレンジが制限される。つまり、最小受信感度特性を向上させるために局部発振(LO)光の出力を大きくすると、受信可能な最大入力パワーが小さくなってしまう。そのため、最小受信感度の改善および伝送距離の延伸と入力ダイナミックレンジがトレードオフの関係になる。そして、関連するコヒーレント光受信装置では、受光部を構成するフォトダイオード(Photodiode:PD)の定格や増幅器の増幅率の制限によって、光入力パワーのダイナミックレンジがIM−DD方式による受信器に比べて小さくなるという問題があった。
【0021】
ダイナミックレンジが小さくなると、光通信システムにおける光フィルタ、例えばROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)フィルタの損失変動、またはEDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)による波長損失変動などによる影響を吸収することが出来なくなる。そのため、光通信システム全体の設計が困難になり、現行システムに適用できないという問題があった。
【0022】
一方、コヒーレント光伝送方式には、局部発振(LO)光の周波数と適合する波長チャンネルの信号のみを受信することができるという特徴がある。このような特徴を利用して、WDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)方式における多重信号光(マルチチャンネル)を、光フィルタを通さずに直接コヒーレント受信器に入力し、所望のチャンネル信号を局部発振(LO)光の波長で選択する光FDM(Frequency Division Multiplexing、周波数分割多重)受信方式が検討されている。
【0023】
しかしながら、光FDM受信方式のように、光DMUX(De−multiplexer)フィルタなどの光フィルタを用いない光通信システムにおいて関連するコヒーレント光受信装置を用いることとすると、光入力パワーのダイナミックレンジがさらに狭くなるという問題があった。これは、チャンネル信号として使用しない不要チャンネルの光信号も含めた複数チャンネルの光信号が一括して入力されるため、コヒーレント光受信装置の平均入力パワーが増大するからである。
【0024】
本実施形態のコヒーレント光受信装置100では、上述したように、コヒーレント光受信器110が受信する入力信号光のパワーをモニタし、モニタ結果に基づいて局部発振器(LO)130が出力する局部発振光のパワーを制御する構成とした。このような構成を採用したことにより、本実施形態のコヒーレント光受信装置100によれば、簡易な構成で受信信号の品質を良好に保つことが可能となる。また、多重信号光を局部発振光の波長により選択的に受信する場合であっても、十分なダイナミックレンジを確保することができる。これらの点について、さらに詳細に説明する。
【0025】
まず、関連するコヒーレント光受信装置における受信信号の信号品質を決定するデバイス制限要因について説明する。
図2は、デバイス制限要因について説明するための関連するコヒーレント光受信装置300の構成を示すブロック図である。関連するコヒーレント光受信装置300は、コヒーレント光受信器310、コヒーレント光受信器310に接続された局部発振器(LO)330、および制御部340を有する。コヒーレント光受信器310は、90°ハイブリッド回路311、フォトダイオードなどからなる光電変換器312、および差動増幅器などの増幅器313を備える。
【0026】
図に示すように、関連するコヒーレント光受信装置300における実際の光信号の最大入力パワーは、光電変換器312の最大入力パワー制限(A)、増幅器313の増幅率(B)、および信号出力振幅の制限条件(C)によって決定される。入力光パワーが小さい場合には、増幅器313の最大増幅率(B)だけが問題になるが、入力パワーが大きい場合には、光電変換器312の最大入力パワー制限(最大入力定格)(A)、増幅器313の最小増幅率(B)および信号出力振幅最大値(C)が問題になる。
【0027】
具体的事例として、多重信号光(マルチチャンネル)を受信した場合における関連するコヒーレント光受信装置の入力制限について説明する。
図3は、多重信号光を受信した場合の関連するコヒーレント光受信装置における入力信号光パワーと局部発振光パワーとの関係を示す図である。横軸は入力信号光パワー、縦軸は局部発振(LO)光パワーである。
【0028】
図3において、領域(I)は光電変換器の最大定格による制限を示し、領域(II)は増幅器の利得上限による制限を、領域(III)は増幅器の利得下限による制限を示す。図から、光通信システムにおいて良好な品質の受信信号が得られる実際に使用可能な領域は、図中白抜きで示した領域(X)に限られることがわかる。
【0029】
このとき、本実施形態のコヒーレント光受信装置によれば、入力パワーモニタ部が入力信号光パワーをモニタし入力パワー情報を制御部に出力する。制御部は上述した制限要因と入力パワー情報から良好な受信信号品質が得られる局部発振光のパワーを求め、局部発振器(LO)がかかるパワーの局部発振光を出力するように制御する。
【0030】
すなわち、入力信号光パワーが光電変換器の最大定格による制限(領域(I))、または増幅器の利得下限による制限(領域(III))を受ける領域範囲にある場合、制御部は局部発振光のパワーを低減させるように制御する。一方、例えば、光通信システム上における不測の事態により入力信号光パワーが低下してしまう場合がある。この場合はコヒーレント光受信器が備える増幅器の利得上限による制限(領域(II))を受ける。このとき制御部は局部発振光のパワーを増加させるように制御することにより、良好な信号品質による受信が可能になる。
【0031】
また、多重信号光を局部発振光の波長により選択的に受信する場合、複数チャンネルの光信号が一括して入力される。そのため、光電変換器の最大入力パワー制限(領域(I))により、良好な信号品質が得られる入力信号光パワーの範囲(光入力ダイナミックレンジ)が狭くなる。この様な場合であっても本実施形態のコヒーレント光受信装置によれば、局部発振器が出力する局部発振光のパワーを低減させることにより、光電変換器の最大入力パワー制限を緩和させることができる。そのため、十分なダイナミックレンジを確保することができる。
【0032】
図3に示した例で説明すると、例えば、入力信号光パワーが−10dBmのとき、局部発振光パワーを20dBmとすると光電変換器の最大定格による制限(領域(I))により、良好な品質の受信信号が得られない。このとき、局部発振光のパワーを約16dBm程度以下に低減することにより、良好な品質の受信信号が得られる領域(領域(X))における動作が可能となる。さらに局部発振光のパワーを約13dBm程度とすることにより、光入力ダイナミックレンジを10dBm以上に拡大することができる。
【0033】
次に、本実施形態のコヒーレント光受信装置100の動作について
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態のコヒーレント光受信装置100の動作を示すフローチャートである。コヒーレント光受信装置100はまず、コヒーレント光受信器110で入力信号光を受信する(ステップS11)。このとき入力パワーモニタ部120は、入力信号光のパワーに基づいて定まる入力パワー情報を取得し(ステップS12)、制御部140に出力する。
【0034】
制御部140は、入力パワーモニタ部120から取得した入力パワー情報から得られる入力信号光パワーと局部発振光パワーから、良好な品質の受信信号が得られる領域(受信可能領域、
図3のX領域)における動作か否かを判断する(ステップS13)。受信可能領域における動作ではない場合(ステップS13/NO)、制御部140は局部発振器(LO)130が出力する局部発振光のパワーを増加または減少させる制御を行う(ステップS14)。それに対して受信可能領域における動作である場合(ステップS13/YES)には、制御部140は局部発振光のパワーを変更しない。ただし、入力信号として信号光が多重された多重信号光が入力された場合には、受信可能領域における動作であっても局部発振光のパワーを低減する制御(ステップS15)を行うことができる(ステップS13/YESからステップS15への点線)。これにより、光入力ダイナミックレンジを拡大することができる。
【0035】
次に、90°ハイブリッド回路111は局部発振器(LO)130が出力する局部発振光と入力された入力信号光を干渉させ(ステップS16)、その後、光電変換器112で光電変換を行う(ステップS17)。このとき、入力信号光として多重信号光が入力された場合には、局部発振器(LO)130が出力する局部発振光と干渉する信号光が多重信号光の中から選択的に検波される。増幅器113は光電変換された電気信号を増幅して制御部140に出力する(ステップS18)。
【0036】
上述したように、本実施形態によるコヒーレント光受信方法によれば、入力パワー情報に基づいて受信可能領域における動作か否かを判断する。そして受信可能領域における動作ではない場合には、局部発振光のパワーを増加または減少させる制御を行う。そのため、
簡易な構成で受信信号の品質を良好に保つことが可能となる。また、多重信号光を局部発振光の波長により選択的に受信する場合には、受信可能領域における動作であっても局部発振光のパワーを低減する制御を行うことができる。これにより、十分なダイナミックレンジを確保することができる。
【0037】
図1では、入力パワーモニタ部120はコヒーレント光受信器110の前段の入力信号光の光路内に配置した場合を示したが、これに限らず、増幅器113よりも前段側の入力信号光の光路内であれば、他の箇所に配置することとしてもよい。例えば、コヒーレント光受信器110の内部に入力パワーモニタ部120を備えることとしてもよい。また、光電変換器112がモニタ機能を備える場合、このモニタ機能を入力パワーモニタ部120として用いることとしてもよい。
【0038】
また、コヒーレント光受信器110を構成する光電変換器112および増幅器113は、それぞれ差動型構成とすることができる。
【0039】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、変調方式として偏波多重4相位相変調(Dual Polarization Quadrature Phase Shift Keying:DP−QPSK)方式を用いた場合を例として説明する。また、入力信号光として多重信号光が入力される場合について説明する。
【0040】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るコヒーレント光受信装置200の構成を示すブロック図である。コヒーレント光受信装置200は、コヒーレント光受信器210、入力パワーモニタ部120、コヒーレント光受信器210に接続された局部発振器(LO)130、および制御部240を有する。
【0041】
コヒーレント光受信器210は、90°ハイブリッド回路211、光電変換器212、および増幅器213を備える。そして、信号光が多重された多重信号光を一括して受信し、局部発振器(LO)130が出力する局部発振光と干渉する信号光を多重信号光の中から選択的に検波し、検波後の信号を出力する。入力パワーモニタ部120は、増幅器213よりも前段側の入力信号光の光路内に配置され、入力信号光のパワーに基づいて定まる入力パワー情報を取得し制御部240に出力する。これまでの構成は第1の実施形態によるコヒーレント光受信装置100と同様である。
【0042】
本実施形態によるコヒーレント光受信装置200では、制御部240はアナログ−デジタル変換器(ADC)241およびデジタル信号処理部(DSP)242を備える。そして、デジタル信号処理部(DSP)242が入力パワーモニタ部120から入力パワー情報を取得し、入力パワー情報に基づいて局部発振器(LO)130が出力する局部発振光のパワーを制御する構成とした。
【0043】
コヒーレント光受信装置200の構成について、以下にさらに具体的に説明する。コヒーレント光受信器210には、信号光入力ポートから位相変調された多重信号光が一括して入力される。一方、局部発振(LO)光ポートには局部発振器(LO)130から局部発振光が入力される。また、コヒーレント光受信器210は信号光の入力側に偏光ビームスプリッタ(PBS)214を、局部発振光の入力側にビームスプリッタ(BS)215を備えている。
【0044】
入力された多重信号光はコヒーレント光受信器210を構成する偏光ビームスプリッタ(PBS)214によって二つの偏波光に分岐され、それぞれ90°ハイブリッド回路(90° Hybrid)211に入力される。90°ハイブリッド回路211において多重信号光は同相成分(I)および直交成分(Q)に分離され、光電変換器212としてのフォトダイオード(PD)にそれぞれ差動入力される。より詳細には、多重信号光と局部発振(LO)光とのビート出力が偏波・位相・強度のそれぞれについてダイバーシティ分岐され、総数8種類の光信号がそれぞれフォトダイオード(PD)に入力される。
【0045】
フォトダイオード(PD)からの出力信号は、増幅器213としての差動増幅器によってAC信号成分のみが取り出され、後段のアナログ−デジタル変換器(ADC)241に適した出力振幅に増幅される。その後、4個のアナログ−デジタル変換器(ADC)241によってそれぞれデジタル信号に変換され、デジタル信号処理部(DSP)242において二つのI/Q平面にマッピングされた信号として処理される。
【0046】
デジタル信号処理部(DSP)242は、アナログ−デジタル変換器(ADC)241からのデジタル信号を用いて復号処理を行う。それとともに、入力パワーモニタ部120から取得した入力パワー情報と局部発振光パワーからコヒーレント光受信器210の動作状態を求める。ここで入力パワー情報には、入力信号光から分岐させたフォトディテクタの電気出力信号を用いることができ、入力パワー情報から入力信号光パワーが得られる。そして、コヒーレント光受信器210の動作が、良好な品質の受信信号が得られる領域(受信可能領域)における動作か否かを判定する。すなわち、コヒーレント光受信器210の動作状態が、光電変換器212の最大定格と、増幅器213の利得上限と、増幅器213の利得下限、とから定まる受信可能領域内における動作であるか否かを判断する。
【0047】
デジタル信号処理部(DSP)242が受信可能領域における動作ではないと判断した場合、デジタル信号処理部(DSP)242は局部発振器(LO)130が出力する局部発振光のパワーを増加または減少させる。それにより、コヒーレント光受信器210が受信可能領域内で動作するように制御する。さらに、受信可能領域内での動作状態において、局部発振光のパワーが減少するように局部発振器(LO)130を制御することにより、光電変換器の最大入力パワー制限を緩和させることができる。これによって、コヒーレント光受信装置200の光入力ダイナミックレンジを拡大することができる。
【0048】
図5では、入力パワーモニタ部120はコヒーレント光受信器210の前段の入力信号光の光路内に配置した場合を示したが、これに限らず、増幅器213よりも前段側の入力信号光の光路内であれば、他の箇所に配置することとしてもよい。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のコヒーレント光受信装置200では、コヒーレント光受信器210が受信する入力信号光のパワーをモニタし、モニタ結果に基づいて局部発振器(LO)130が出力する局部発振光のパワーを制御する構成とした。このような構成を採用したことにより、コヒーレント光受信器210が受信可能領域内において動作するように制御することが可能となり、また、多重信号光を受信する場合における光電変換器の最大入力パワー制限を緩和させることができる。以上より、本実施形態のコヒーレント光受信装置200によれば、簡易な構成で受信信号の品質を良好に保つことが可能となる。また、多重信号光を局部発振光の波長により選択的に受信する場合であっても、十分なダイナミックレンジを確保することができる。
【0050】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0051】
100、200 コヒーレント光受信装置
110、210 コヒーレント光受信器
111、211 90°ハイブリッド回路
112、212 光電変換器
113、213 増幅器
120 入力パワーモニタ部
130 局部発振器(LO)
140、240 制御部
241 アナログ−デジタル変換器(ADC)
242 デジタル信号処理部(DSP)
300 関連するコヒーレント光受信装置
310 コヒーレント光受信器
311 90°ハイブリッド回路
312 光電変換器
313 増幅器
330 局部発振器(LO)
340 制御部