(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材シートの表面に熱膨張層が形成された熱膨張性シートの前記基材シートの表面に光熱変換特性を有する材料により形成された第2の印刷画像に熱エネルギーを付与することにより、前記熱膨張層を膨張させて、前記熱膨張性シートの表面に前記第2の印刷画像に応じた凹凸形状を形成するための前記第2の印刷画像であって、前記第2の印刷画像が形成される生地部分の凹凸感を実現するための第2部分と、前記第2の印刷画像の凹凸感を実現するための部分であってかつ前記第2部分に重ならない第1部分と、を含む凹凸画像データに対応した実質的な凹凸形状を前記基材シートの前記表面側に形成すべく濃度設定された濃色部と淡色部を有する濃淡画像からなる前記第2の印刷画像を生成する、
ことを特徴とする立体画像形成用画像生成処理。
基材シートの一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートの前記一面側に形成される第1の印刷画像であって、特定の筆触又は筆致に基づいた凹凸感で表現された平坦な前記第1の印刷画像を生成する処理と、
前記熱膨張性シートの他面側に光熱変換特性を有する材料により形成される第2の印刷画像であって、前記第1の印刷画像が形成される生地部分の凹凸感を実現するための第2部分と、前記第1の印刷画像の凹凸感を実現するための部分であってかつ前記第2部分に重ならない第1部分と、を含む凹凸画像データに対応した実質的な凹凸形状を前記一面側に形成すべく濃度設定された濃色部と淡色部を有する濃淡画像からなる前記第2の印刷画像を生成する処理と、を含む、
ことを特徴とする立体画像形成用加工媒体形成方法。
基材シートの一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートの前記一面側に形成される第1の印刷画像であって、特定の筆触又は筆致に基づいた凹凸感で表現された平坦な前記第1の印刷画像を生成する処理と、
前記熱膨張性シートの他面側に光熱変換特性を有する材料により形成される第2の印刷画像であって、前記第1の印刷画像が形成される生地部分の凹凸感を実現するための第2部分と、前記第1の印刷画像の凹凸感を実現するための部分であってかつ前記第2部分に重ならない第1部分と、を含む凹凸画像データに対応した実質的な凹凸形状を前記一面側に形成すべく濃度設定された濃色部と淡色部を有する濃淡画像からなる前記第2の印刷画像を生成する処理と、
前記熱膨張性シートの前記他面側から、光を照射して、前記第2の印刷画像に熱エネルギーを付与することにより、前記熱膨張層を膨張させて前記熱膨張性シートの前記一面側の表面に、前記第2の印刷画像に応じた凹凸形状を形成する処理と、を含む、
ことを特徴とする立体画像形成方法。
基材シートの一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートの前記一面側に形成された第1の印刷画像であって、特定の筆触又は筆致に基づいた凹凸感で表現された実質的に平坦な前記第1の印刷画像と、
前記熱膨張性シートの他面側に光熱変換特性を有する材料により形成された実質的に平坦な第2の印刷画像であって、前記第1の印刷画像が形成される生地部分の凹凸感を実現するための第2部分と、前記第1の印刷画像の凹凸感を実現するための部分であってかつ前記第2部分に重ならない第1部分と、を含む凹凸画像データに対応した実質的な凹凸形状を前記一面側に形成すべく濃度設定された濃色部と淡色部を有する濃淡画像からなる前記第2の印刷画像と、を有する、
ことを特徴とする立体画像形成用加工媒体。
基材シートの一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートの前記一面側に形成された、 特定の筆触又は筆致に基づいた凹凸感で表現された実質的に平坦な第1の印刷画像と、
前記第1の印刷画像が形成された生地部分の凹凸感を実現するための実質的な凹凸形状である第2凹凸形状に設けられた第2印刷材料と、
前記第2凹凸形状に重ならない部分に、前記第1の印刷画像の前記凹凸感を実現するための実質的な凹凸形状である第1凹凸形状に設けられた第1印刷材料と、を含む、
ことを特徴とする立体画像。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した作品をより現実的な風合いで表現又は再現するためには、次のような問題を有している。すなわち、例えば油絵の特徴としては絵の具を厚塗りして立体的に盛り上げるのが一般的である。そのため、原画像から油絵風の作品を印刷物として作成する際に、表面形状が平坦ではなく凹凸を有していて、かつ、厚みのある印刷媒体に画像編集された画像を印刷することになり、家庭用のプリンタでは良好に印刷することができない。これは、家庭用のプリンタでは印刷可能な印刷媒体について規格が定められているためで、当該プリンタの機構上、表面形状が平坦ではない場合や、規定の厚み以上の印刷媒体には画像を印刷することができなかったり、所望の風合いを表現又は再現できないことが多い。このような問題を解決する方法として、例えば高粘度のインクを使用する業務用のインクジェットプリンタ等を用いて、画像を複数回スキャンして重ね塗りすることで立体画像を印刷する手法があるが、この場合、手間と費用がかかり、一般用途としては手軽なものでは無かった。
【0006】
また、油絵風の作品以外でも、同様に、例えば原画像を水彩画風、色鉛筆画風、パステル画風等に編集、加工した作品を作成する場合、家庭用のプリンタでは、それぞれの画風における筆触(タッチ)や筆致(筆遣い)等の凹凸感すなわち独特の風合いを表現又は再現することは難しかった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑み、原画像を所望の絵画風に画像編集、加工した作品を、
当該画風に応じた独特の風合いで印刷表現又は再現
することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る立体画像形成用画像生成処理は、
基材シートの表面に熱膨張層が形成された熱膨張性シートの前記基材シートの表面に光熱変換特性を有する材料により形成された第2の印刷画像に熱エネルギーを付与することにより、前記熱膨張層を膨張させて、前記熱膨張性シートの表面に前記第2の印刷画像に応じた凹凸形状を形成するための前記第2の印刷画像であって、前記第
2の印刷画像が形成される生地部分の凹凸感を実現するための第2部分と、前記第
2の印刷画像の凹凸感を実現するための部分であってかつ前記第2部分に重ならない第1部分と、を含む凹凸画像データに対応した実質的な凹凸形状を
前記基材シートの前記
表面側に形成すべく濃度設定された濃色部と淡色部を有する濃淡画像からなる前記第2の印刷画像を生成する、ことを特徴とする。
本発明に係る立体画像形成用加工媒体形成方法は、
基材シートの一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートの前記一面側に形成される第1の印刷画像であって、特定の筆触又は筆致に基づいた凹凸感で表現された平坦な前記第1の印刷画像を生成する処理と、
前記熱膨張性シートの他面側に光熱変換特性を有する材料により形成される第2の印刷画像であって、前記第1の印刷画像が形成される生地部分の凹凸感を実現するための第2部分と、前記第1の印刷画像の凹凸感を実現するための部分であってかつ前記第2部分に重ならない第1部分と、を含む凹凸画像データに対応した実質的な凹凸形状を前記一面側に形成すべく濃度設定された濃色部と淡色部を有する濃淡画像からなる前記第2の印刷画像を生成する処理と、を含む、ことを特徴とする。
本発明に係る立体画像形成方法は、
基材シートの一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートの前記一面側に形成される第1の印刷画像であって、特定の筆触又は筆致に基づいた凹凸感で表現された平坦な前記第1の印刷画像を生成する処理と、
前記熱膨張性シートの他面側に光熱変換特性を有する材料により形成される第2の印刷画像であって、前記第1の印刷画像が形成される生地部分の凹凸感を実現するための第2部分と、前記第1の印刷画像の凹凸感を実現するための部分であってかつ前記第2部分に重ならない第1部分と、を含む凹凸画像データに対応した実質的な凹凸形状を前記一面側に形成すべく濃度設定された濃色部と淡色部を有する濃淡画像からなる前記第2の印刷画像を生成する処理と、
前記熱膨張性シートの前記他面側から、光を照射して、前記第2の印刷画像に熱エネルギーを付与することにより、前記熱膨張層を膨張させて前記熱膨張性シートの前記一面側の表面に、前記第2の印刷画像に応じた凹凸形状を形成する処理と、を含む、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る立体画像形成用加工媒体は、
基材シートの一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートの前記一面側に形成された第1の印刷画像であって、特定の筆触又は筆致に基づいた凹凸感で表現された実質的に平坦な前記第1の印刷画像と、
前記熱膨張性シートの他面側に光熱変換特性を有する材料により形成された実質的に平坦な第2の印刷画像であって、前記第1の印刷画像が形成される生地部分の凹凸感を実現するための第2部分と、前記第1の印刷画像の凹凸感を実現するための部分であってかつ前記第2部分に重ならない第1部分と、を含む凹凸画像データに対応した実質的な凹凸形状を前記一面側に形成すべく濃度設定された濃色部と淡色部を有する濃淡画像からなる前記第2の印刷画像と、を有する、ことを特徴とする。
本発明に係る立体画像は、
基材シートの一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートの前記一面側に形成された、特定の筆触又は筆致に基づいた凹凸感で表現された実質的に平坦な第1の印刷画像と、
前記第1の印刷画像が形成された生地部分の凹凸感を実現するための実質的な凹凸形状である第2凹凸形状
に設けられた第1印刷材料と、
前記第2凹凸
形状に重ならない部分に、前記第1の印刷画像の前記凹凸感を実現するための実質的な凹凸形状である第1凹凸形状
に設けられた第2印刷材料と、を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原画像を所望の絵画風に画像編集、加工した作品を、
当該画風に応じた独特の風合いで印刷表現又は再現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る印刷表面加工方法及び印刷表面加工装置について、実施形態を示して詳しく説明する。
(印刷表面加工方法)
まず、本発明に係る印刷表面加工方法について説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る印刷表面加工方法の一例を示すフローチャートである。また、
図2は、本発明に係る印刷表面加工方法における一実施形態を示す概略平面図であり、
図3は、本実施形態に係る印刷表面加工方法における処理状態を示す概略断面図である。なお、
図2(b)に示した熱膨張性シートの裏面側に形成された特定画像、及び、
図2(c)に示した熱膨張性シートの表面側に形成された凹凸模様や所望の画風における筆触や筆致、並びに、
図3(d)に示した熱膨張層の膨張(発泡)状態は、説明の都合上、便宜的かつ概念的に示したものであって、実際の状態を示すものではない。
【0014】
本発明に係る印刷表面加工方法は、
図1に示すように、概略、画像データ生成処理(S101)と、表面画像形成処理(S102)と、裏面画像形成処理(S103)と、光照射・加熱処理(S104)と、を有している。ここで、本実施形態に係る印刷表面加工方法においては、例えば
図2(a)に示すように、熱膨張性シート30の表面側に犬の画像と山の画像からなる彩色画像33が印刷された作品において、複数種類の異なる表面形状や、複数種類の異なる筆触や筆致等で描かれたような風合いを有するように加工して、所望の風合いを表現又は再現する場合について説明する。
【0015】
画像データ生成処理(S101)においては、まず、画像変換ソフトや画像変換サービスを用いて、原画像を所望の画風(例えば特定の筆触や筆致表現)に編集、加工した彩色画像33の画像データ(表面画像データ)と、当該彩色画像33を印刷する印刷媒体として熱膨張性シート(又は熱発泡性シート)30と、を準備する。ここで、熱膨張性シート30は、例えば
図3(a)に示すように、概略、基材シート31の一面(図面上面)側に、加熱により膨張する発泡性のマイクロカプセルを含有する熱膨張層(又は発泡層)32が塗布形成された印刷媒体である。本実施形態において適用される熱膨張性シート30は、熱膨張層32の一面側である、その表面形状が略平坦で、かつ、その厚みが一般的な家庭用のプリンタにおいて印刷可能な印刷媒体の規格の範囲内に定められているものである。また、彩色画像33は、
図2(a)に示す犬の画像や山の画像のように、任意の絵柄(
図3(a)に示す絵柄33a〜33cに相当する)を有するカラー画像であってもよいし、モノクロ画像やモノトーン画像であってもよい。
【0016】
次いで、上記の彩色画像33を熱膨張性シート30の表面(熱膨張層32の一面)側に形成して作品を作成した場合に、当該作品において表現又は再現する所望の風合いを指定して、熱膨張性シート30の裏面(
図3(b)の下面;基材シート31の他面)側に形成する特定画像34の画像データ(裏面画像データ)を生成する。
【0017】
具体的には、
図3(a)に示す彩色画像33のうち、犬の画像の絵柄33aと山の画像の絵柄33b、33cを例えば絵の具を高く盛り上げた油絵風の筆触や筆致で表現又は再現し、また、当該画像部分以外の背景画像部分33gをキャンバスに描かれているような風合いで表現又は再現する場合には、犬と山の画像の絵柄33a〜33cが印刷される熱膨張性シート30の表面側の領域に、当該画風における筆触や筆致に近似又は類似する凹凸状の表面形状が形成され、また、背景画像部分33gが印刷される熱膨張性シート30の表面側の領域に、キャンバスの画布の地を表す糸模様に近似又は類似する細かな凹凸状の表面形状が形成されるように、上記特定画像34の画像データを生成する。
【0018】
ここで、熱膨張性シート30の表面に、任意の風合いの表面形状を形成する方法は、犬の画像と山の画像の絵柄33a〜33cにおいて、所望の筆触や筆致の風合いを表現又は再現する熱膨張性シート30表面の凹凸模様に対応するように、
図3(b)に示すように、黒色成分の濃色部と淡色部の配置及び濃度が設定された濃淡画像(モノクロ濃淡画像)からなる画像領域34a〜34cを設定する。また、背景画像部分33gにおいて、キャンバス地の風合いを表現又は再現する熱膨張性シート30表面の凹凸模様に対応するように、
図3(b)に示すように、黒色成分の濃色部と淡色部の配置及び濃度が設定された濃淡画像からなる画像領域34gを設定する。そして、これらの画像領域34a〜34c及び34gからなる特定画像34を、熱膨張性シート30の裏面側全域に形成して熱膨張処理を行うことにより、熱膨張性シート30の表面に、任意の風合いの表面形状が形成される。
【0019】
本実施形態において、上記の濃淡画像を形成する黒色成分とは、彩色としての黒色に限るものではなく、赤外線波長(広くは遠赤外線波長も意味する)を含む光を吸収することにより熱エネルギーを発生する光熱変換特性を有する材料を意味する。このような光熱変換特性を有する材料としては、例えばカーボンブラックを適用することができる。
【0020】
なお、この特定画像34の画像データ生成処理においては、当該特定画像34を形成する画像領域34a〜34c及び34gの濃色部と淡色部の配置や濃度を、ユーザが任意に調整することができるものであってもよい。これにより、犬の画像と山の画像の絵柄33a〜33cにおいて、筆触や筆致の風合いを表現又は再現する熱膨張性シート30表面の凹凸模様(例えば筆跡に対応する波状模様や点描模様等)の長さや細かさ、絵の具の盛り上がりの程度等を任意に設定することができる。また、背景画像部分33gにおいて、キャンバス地の風合いを表現又は再現する熱膨張性シート30表面の凹凸模様(すなわち、画布の糸模様)の目の粗さや隆起高さを任意に設定することができる。
【0021】
次いで、表面画像形成処理(S102)においては、
図2(a)、
図3(a)に示すように、熱膨張性シート30の表面側に、上記の画像データ生成処理(S101)において準備した彩色画像33の画像データに基づいて、犬の画像や山の画像の絵柄33a〜33c、及び、背景画像部分33gを有する彩色画像33を印刷(形成)する。具体的には、
図3(a)に示すように、熱膨張性シート30の表面(基材シート31の一面側;図面上面側)に、
図2(a)に示すように、犬の画像と山の画像からなる彩色画像33を印刷する。ここで、熱膨張性シート30の表面側への彩色画像33の印刷には、後述する印刷表面加工装置において示すインクジェット方式や、レーザー方式、熱転写方式等の種々の方式の印刷装置を適用することができる。
【0022】
次いで、裏面画像形成処理(S103)においては、
図2(b)、
図3(b)に示すように、熱膨張性シート30の裏面側に、上記の画像データ生成処理(S101)において生成した画像データに基づいて、モノクロ濃淡画像からなる特定画像34を印刷(形成)する。ここで、熱膨張性シート30の表面側に形成された犬の画像や山の画像の絵柄33a〜33cに対応する領域には、所望の筆触や筆致の風合いを表現又は再現するように、濃色部と淡色部の配置及び濃度が設定された画像領域34a〜34cが印刷され、また、背景画像部分33gに対応する領域には、キャンバス地の風合いを表現又は再現するように、濃色部と淡色部の配置及び濃度が設定された画像領域34gが印刷される。なお、画像領域34a〜34cもキャンバス地の上に形成された画像として表現すべく、所望の筆触や筆致の風合いで且つキャンバス地の風合いを表現又は再現するようにしてもよい。また、このとき、熱膨張性シート30の裏面側に印刷される特定画像34は、同表面側に印刷される彩色画像33の反転画像となる鏡像の関係にある。ここで、熱膨張性シート30の裏面側に形成される特定画像34は、黒色成分を含むインクやトナーにより形成される。また、この熱膨張性シート30の裏面側への特定画像34の印刷においても、後述する印刷表面加工装置において示すインクジェット方式や、レーザー方式、熱転写方式等の種々の方式の印刷装置を適用することができる。
【0023】
次いで、光照射・加熱処理(S104)においては、
図3(c)に示すように、熱膨張性シート30の裏面側から赤外線波長を含む光LTを均一に照射する。これにより、熱膨張性シート30の裏面側に形成された特定画像34を形成するモノクロ濃淡画像の濃色部と淡色部において、当該濃度に応じた熱エネルギーが発生し、対応する領域における熱膨張層32のマイクロカプセルが加熱されて膨張(発泡)することにより、熱膨張層32が隆起する。ここで、上述したように、特定画像34は、彩色画像33のうち、犬の画像と山の画像の絵柄33a〜33cに対応する画像領域34a〜34cが、例えば絵の具を高く盛り上げた油絵風の筆触や筆致の風合いを表現又は再現するように、濃色部と淡色部の配置や濃度が設定されているので、
図3(d)に示すように、熱膨張層32の膨張後の熱膨張性シート30の表面には、当該所望の画風における筆触や筆致の風合いに対応するように、筆跡や隆起高さを有する凹凸模様が形成される。また、彩色画像33のうち、背景画像部分33gに対応する画像領域34gが、キャンバス地の風合いを表現又は再現するように、濃色部と淡色部の配置や濃度が設定されているので、
図3(d)に示すように、熱膨張層32の膨張後の熱膨張性シート30の表面には、キャンバス地の風合いに対応するように、所定の目の粗さや隆起高さを有する凹凸模様が形成される。
【0024】
なお、上記
図1〜
図3の説明において、本実施形態においては、画像データ生成処理(S101)、表面画像形成処理(S102)、裏面画像形成処理(S103)、光照射・加熱処理(S104)を順に処理する例で説明したが、処理の順序としては、これに限らない。すなわち、画像データ生成処理(S101)において、彩色画像33の画像データ(表面画像データ)と、それに対応した特定画像34の画像データ(裏面画像データ)とをまず生成準備するが、その各画像の形成処理順は、表面画像形成処理(S102)と裏面画像形成処理(S103)のどちらを先に処理しても良い。つまり、本発明の印刷表面加工方法においては、その加工処理順を特定するものではない。
【0025】
したがって、本実施形態によれば、
図3(d)に示すように、表面側に所望の彩色画像33が印刷された熱膨張性シート30の表面形状を、彩色画像33の絵柄に応じて、複数種類の異なる風合いを有するように加工することができ、例えば
図2(c)に示すように、彩色画像33が、恰もキャンバス地の背景画像部分33gに、犬の画像と山の画像の絵柄33a〜33cが絵の具を盛り上げた筆触や筆致で描かれているような風合いで表現又は再現された作品を、簡易な手法で作成することができる。
【0026】
なお、本実施形態においては、彩色画像33のうち、犬の画像と山の画像の絵柄33a〜33cを絵の具を高く盛り上げた油絵風の筆触や筆致で表現又は再現し、また、背景画像部分33gをキャンバスに描かれているような風合いで表現又は再現した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、彩色画像内の任意の領域が他の領域とは異なる風合いで表現又は再現されているものであればよく、例えば水彩画風の背景にパステル画風の対象物が描かれているような風合いや、水彩画風と色鉛筆画風を混在させた背景に油絵風の対象物が描かれているような風合い等で表現又は再現されているものであってもよい。これによれば、1枚の作品中に様々な画風や、筆触や筆致の風合いを組み合わせて多彩な表現方法を実現することができ、ユーザの趣向を高めることができる。
【0027】
(印刷表面加工装置)
次に、上述したような印刷表面加工方法を実現可能な印刷表面加工装置について説明する。
図4は、本発明に係る印刷表面加工装置に適用される印刷装置の一例を示す概略構成図である。
図4(a)は、本実施形態に適用される印刷装置の概略構成を示す斜視図であり、
図4(b)は、本実施形態に適用される印刷装置の概略構成を示す内部断面図である。
図5は、本実施形態に適用される印刷装置における印刷機構部の一例を示す概略構成図である。ここで、
図5は、
図4(b)に示すV部(本明細書においては
図4中に示したローマ数字の「5」に対応する記号として便宜的に「V」を用いる)における斜視詳細図である。
【0028】
上述した印刷表面加工方法(
図1参照)のうち、少なくとも、画像データ生成処理(S101)と、表面画像形成処理(S102)と、裏面画像形成処理(S103)は、
図4に示すような印刷装置100により実行することができる。ここで、本実施形態に適用される印刷装置100は、例えばワードプロセッサ(以下、「ワープロ」と記す)機能を備えたインクジェット方式のプリンタであって、具体的には
図4(a)、(b)に示すように、装置本体110と、キーボード130からなる。
【0029】
装置本体110は、例えば
図4(a)、(b)に示すように、箱型の筐体を有し、概略、表示パネル111と、表示パネル収納部112と、給紙トレイ113と、排紙口114と、カードスロット115と、印刷機構部(
図5参照)120と、制御部(図示を省略;
図6参照)と、を有している。
【0030】
表示パネル111は、例えば液晶表示パネルからなり、一辺側に設けられたヒンジ部111aを軸にして装置本体110に対して回動するように取り付けられている。表示パネル111には、キーボード130から入力されたデータや各種の設定に必要なメニュー画面、また、メモリカードを介して取り込んだ写真画像等の各種の画像、その他、印刷装置で必要とする各種のデータが表示される。表示パネル収納部112は、装置本体110の上面部(図面上面側)に設けられ、印刷装置100を使用していないときに、上記表示パネル111を回動させて収納する。
【0031】
給紙トレイ113は、装置本体110の背面部(図面右方側)に設けられ、上部に設けられた開口部113aから給紙トレイ113の内部に、上述した実施形態に示した熱膨張性シート30が一枚ずつ、あるいは、複数枚重ねて収容される。給紙トレイ113の内部には、重ねて収容された熱膨張性シート30を1枚ずつ装置本体110内の印刷機構部120に送り出すピックアップローラ113bが設けられている。
【0032】
排紙口114は、装置本体110の前面(図面左方側)下部に設けられ、装置本体110内の印刷機構部120によって所定の画像が印刷された熱膨張性シート30を装置本体110の外に排出させる。カードスロット115は、装置本体110の前面に設けられ、メモリカード(図示を省略)を挿入することにより、画像データ等の読出しや書込みが実行される。
【0033】
また、装置本体110の内部には、
図4(b)に示すように、給紙トレイ113内部のピックアップローラ113bにより送り出された熱膨張性シート30を搬送案内するシート搬送路116が設けられている。このシート搬送路116の途中には、例えばインクジェット式の印刷機構部120が設けられている。この印刷機構部120の給紙側(図面右方側)及び排紙側(図面左方側)には、それぞれ、熱膨張性シート30を搬送するための給紙ローラ対121及び排紙ローラ対122が配設されている。
【0034】
印刷機構部120は、
図5に示すように、シート搬送路116に直交する矢印Aの方向に往復動作するキャリッジ123を備えている。キャリッジ123には、印字を実行するための印字ヘッド124とインクカートリッジ125が取り付けられている。インクカートリッジ125は、例えば黄(イエロー)、赤(マゼンタ)、青(シアン)、黒(ブラック)の各色インクを収容する個別のカートリッジ、又は、単体で各色のインク室を備えたカートリッジにより構成されている。各カートリッジ又は各インク室には、各色インクを吐出するためのノズルを有する印字ヘッド124が連結されている。ここで、本実施形態においては、インクカートリッジ125に収容される黒色インクとして、カーボンブラック等の光熱変換特性が高い材料が適用される。
【0035】
また、キャリッジ123は、ガイドレール126により上記往復動作が可能なように支持され、当該ガイドレール126の延在方向に平行して付設された駆動ベルト127を駆動することにより、キャリッジ123に取り付けられた印字ヘッド124とインクカートリッジ125が、キャリッジ123と同方向、すなわちシート搬送路116と直交する矢印Aの方向に往復動作する。
【0036】
印字ヘッド124は、フレキシブルケーブル128を介して、装置本体110に設けられた制御部から印字データや制御信号が送出される。ここで、上述したように熱膨張性シート30は、給紙ローラ対121と排紙ローラ対122により
図5の矢印Bの方向に間欠的に搬送される。そして、熱膨張性シート30の間欠搬送の停止期間中に、印字ヘッド124が駆動ベルト127の駆動に対応して往復動作しつつ、熱膨張性シート30に近接した状態でインク滴を噴射して、上記印字データに応じた画像を、熱膨張性シート30の表面又は裏面に印字する。このような熱膨張性シート30の間欠搬送と、印字ヘッド124による往復移動時の印字との繰り返しにより、熱膨張性シート30の全面に所望の画像(上述した彩色画像又は特定画像)が形成(印刷)される。印刷機構部120により所定の画像が印刷された熱膨張性シート30は、
図4(a)、(b)に示すように、シート搬送路116の排紙側に位置する排紙口114から装置本体110外に排出される。
【0037】
また、キーボード130は、例えば
図4(a)に示すように、装置本体110の前面(図面左方側)の手前側に配置され、装置本体110をワープロとして使用する場合等に、文書データの入力や編集、印刷等の各種機能を実行するために必要なデータ入力キー131や機能キー132等が設けられている。
【0038】
次に、上述した印刷装置100の装置本体110に設けられる制御部について説明する。
図6は、本実施形態に適用される印刷装置の一例を示す機能ブロック図である。
上述した印刷装置100は、
図6に示すように、概略、中央演算回路(以下、「CPU」と略記する)101と、当該CPU101に接続された、読出専用メモリ(以下、「ROM」と略記する)102と、ランダムアクセスメモリ(以下、「RAM」と略記する)103と、画像処理部104と、データ入出力部105と、プリンタコントローラ106と、読取制御部107と、上述した表示パネル111と、キーボード130と、を有している。ここで、CPU101、ROM102、RAM103、画像処理部104、データ入出力部105、プリンタコントローラ106、読取制御部107は、本実施形態に適用される印刷装置100の制御部に相当する。
【0039】
ROM102は、印刷装置100の動作制御に関するシステムプログラムを格納する。CPU101は、このシステムプログラムに従って、CPU110に接続された他の機能ブロックに指令信号を送出することにより、印刷装置100の各部を動作制御する。また、RAM103は、印刷装置100の動作制御中にCPU101等で生成される各種データや数値等を一時保存する。
【0040】
画像処理部104は、上述した印刷表面加工方法における画像データ生成処理(S101)を実行する。すなわち、カードスロット115等を介して装置本体110の外部から取り込まれ、表示パネル111に表示されている、又は、RAM103等に記憶されている彩色画像を、熱膨張性シート30に印刷した作品において、所望の風合いを表現又は再現するために、熱膨張性シート30の裏面側に形成する特定画像の画像データ(裏面画像データ)を生成する。このとき、ユーザが例えば表示パネル111とキーボード130を用いて、実現したい風合いを指定又は選択することにより、上記特定画像を形成するモノクロ濃淡画像が設定される。ここで、任意の風合いを表現又は再現するように、モノクロ濃淡画像における濃色部と淡色部の配置や濃度を、ユーザが適宜調整するものであってもよい。
【0041】
データ入出力部105は、画像データに関する印刷コマンドをノート型やデスクトップ型、タブレット型のパーソナルコンピュータ等の外部通信装置(図示を省略)との間で入出力する。プリンタコントローラ106は、印刷機構部120に接続され、印刷の対象となっている画像データに基づいて、印字ヘッド124におけるインクの吐出状態を制御する。また、プリンタコントローラ106は、印字ヘッド124が取り付けられたキャリッジ123の往復動作を制御するとともに、給紙ローラ対121及び排紙ローラ対122の駆動を制御することにより、熱膨張性シート30の排紙側への搬送を制御する。読取制御部107は、カードスロット115に接続され、カードスロット115に装着されたメモリカード(図示を省略)から画像データを読み出してCPU101や画像処理部104に送信する。
【0042】
このような構成を有する印刷装置100によれば、給紙トレイ113から供給される熱膨張性シート30の表面側に上記画像データに応じた彩色画像を形成(印刷)することができ、また、同裏面側に上記画像データに応じた特定画像を形成(印刷)することができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、印刷装置100として片面印刷機能を備える場合について説明した。すなわち、上述した印刷表面加工方法の表面画像形成処理(S102)においては、熱膨張性シート30の表面側が印字ヘッド124側に対向するようにして給紙することにより、当該表面側に所望の彩色画像が印刷される。また、裏面画像形成処理(S103)においては、熱膨張性シート30を裏返して、熱膨張性シート30の裏面側が印字ヘッド124側に対向するようにして給紙することにより、当該裏面側に特定画像が印刷される。本発明に係る印刷表面加工装置に適用される印刷装置は、これに限定されるものではなく、
図4(b)、
図5に示した装置本体110の印刷機構部120の給紙側及び排紙側に、両面印刷用のシート反転機構部を備えるものであってもよい。すなわち、印刷機構部120において、熱膨張性シート30の表面側(又は裏面側)への印刷が終了して排紙側へ搬送された熱膨張性シート30を、矢印Bとは逆方向に搬送して給紙側に戻し、当該給紙側で熱膨張性シート30を反転させて裏返して、熱膨張性シート30の裏面側(又は表面側)に印刷して排紙口114から排出するものであってもよい。これによれば、片面印刷の後、排紙された熱膨張性シート30を裏返して、再度給紙トレイ113に収容する作業を省略することができる。
【0044】
また、上述した実施形態においては、印刷装置100の制御部に設けられた画像処理部104により、本実施形態に係る印刷表面加工方法の画像データ生成処理(特に、特定画像の画像データの生成処理)を実行する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、データ入出力部105を介して印刷装置100に接続されたパーソナルコンピュータ等の外部通信装置において、上述した画像データ生成処理を実行して、彩色画像の画像データ(表面画像データ)、及び、当該彩色画像を所望の風合いで表現又は再現するための特定画像の画像データ(裏面画像データ)を生成し、印刷装置100に送信して、熱膨張性シート30に彩色画像及び特定画像を形成(印刷)するものであってもよい。
【0045】
さらに、上述した実施形態においては、印刷装置100により、本実施形態に係る印刷表面加工方法のうち、画像データ生成処理(S101)と、表面画像形成処理(S102)と、裏面画像形成処理(S103)を実行する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば
図4(b)中、二点鎖線で示すように、印刷機構部120の排紙側であって、シート搬送路116(又は、熱膨張性シート30)に対して上面側もしくは下面側に、ハロゲンランプ等の光源部140が配置された構成を有するものであってもよい。ここで、光源部140は、例えば
図6中、二点鎖線で示すように、CPU101からの指令に基づいて、熱膨張性シート30の搬送に応じて、赤外線波長を含む、所定の光量の光を放射する。
【0046】
このような構成において、上述した画像データ生成処理(S101)と、表面画像形成処理(S102)と、裏面画像形成処理(S103)を経て、表面に彩色画像が形成され、また、裏面に特定画像が形成された熱膨張性シート30に対して、裏面側から均一な光を照射することにより、熱膨張性シート30の熱膨張層32を所定の凹凸模様を有するように膨張させて、熱膨張性シート30の表面形状を所定の風合いに加工する光照射・加熱処理(S104)が実行される。すなわち、単一の印刷装置100において、上述した印刷表面加工方法の全ての処理工程を一括して実行することができる。
【0047】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0048】
(付記)
請求項1に記載の発明は、
基材シートの一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートの、前記一面側に特定の筆触や筆致で表現された第1の印刷画像を形成する処理と、
前記熱膨張性シートの他面側に、光熱変換特性を有する材料により、前記第1の印刷画像の前記筆触や前記筆致に基づく凹凸感に対応した所定の配置及び濃度に設定された濃色部と淡色部を有する濃淡画像からなる第2の印刷画像を形成する処理と、
前記熱膨張性シートの前記他面側から、光を照射して、前記第2の印刷画像において発生する熱エネルギーにより、前記熱膨張層を膨張させて前記熱膨張性シートの前記一面側の表面に、前記第2の印刷画像に応じた凹凸形状を形成する処理と、
を有することを特徴とする印刷表面加工方法である。
【0049】
請求項2に記載の発明は、
前記熱膨張性シートの前記他面側から照射する前記光は、赤外線波長を含むことを特徴とする請求項1に記載の印刷表面加工方法である。
【0050】
請求項3に記載の発明は、
特定の筆触や筆致で表現された第1の印刷画像データを生成し、前記第1の印刷画像データの前記筆触や前記筆致に基づく凹凸感に対応した所定の配置及び濃度に設定された濃色部と淡色部を有する濃淡画像に変換した第2の印刷画像データを生成する画像処理部と、
基材シートの一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートの、前記一面側に前記第1の印刷画像データに基づく第1の印刷画像を形成し、前記熱膨張性シートの他面側に、光熱変換特性を有する材料により、前記第2の印刷画像データに基づく第2の印刷画像を形成する印刷機能部と、
前記一面側に前記第1の印刷画像が形成され、前記他面側に前記第2の印刷画像が形成された前記熱膨張性シートの、前記他面側から、光を照射して、前記第2の印刷画像において発生する熱エネルギーにより、前記熱膨張層を膨張させて前記熱膨張性シートの前記一面側の表面に、前記第2の印刷画像に応じた凹凸形状を形成する光源部と、
を有することを特徴とする印刷表面加工装置である。
【0051】
請求項4に記載の発明は、
前記光源部から前記熱膨張性シートの前記他面側に照射する前記光は、赤外線波長を含むことを特徴とする請求項3に記載の印刷表面加工装置である。