特許第5971392号(P5971392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5971392ビニル系重合体の製造方法並びに製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5971392
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ビニル系重合体の製造方法並びに製造装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20160804BHJP
   C08F 2/06 20060101ALI20160804BHJP
   C08F 4/04 20060101ALN20160804BHJP
   C08F 4/32 20060101ALN20160804BHJP
【FI】
   C08F2/01
   C08F2/06
   !C08F4/04
   !C08F4/32
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-192207(P2015-192207)
(22)【出願日】2015年9月29日
【審査請求日】2016年2月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 潤
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 優大
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−107163(JP,A)
【文献】 特表2011−519990(JP,A)
【文献】 特開2012−012550(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/183520(WO,A1)
【文献】 特開2014−172924(JP,A)
【文献】 特開2009−057999(JP,A)
【文献】 特開2015−127425(JP,A)
【文献】 特表2013−543021(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/163246(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60
C08F 4/00−4/58
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル系単量体を重合してなり、
ビニル系単量体の反応率が90重量%以上99.9重量%未満であるビニル系重合体と溶剤とを含む流体に、
重合開始剤を混合した重合体混合物を、
加熱可能な狭小流路中を移動させることを特徴とするビニル系重合体の製造方法であって、
前記狭小流路の、下記一般式で表される等価直径が、3〜30mmであって、
かつ、前記混合物の流路中の最高液温が100℃以上210℃以下であって、
前記重合開始剤の1時間半減期温度は、60℃以上150℃以下であることを特徴とするビニル系重合体の製造方法。

一般式:
等価直径 = 4×流れ方向を法線とした流路断面積/断面濡れ縁長さ
【請求項2】
前記加熱可能な狭小流路中で、重合体混合物は、
前記重合開始剤の1時間半減期温度から、当該半減期温度より30℃高い温度まで、昇温させる間は、
毎分4℃以上の条件で加熱昇温されることを特徴とする、
請求項1記載のビニル系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記混合物の、
前記重合開始剤が少なくとも90重量%分解する時点まで滞留させることを特徴とする、請求項1または2記載のビニル系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記加熱可能な狭小流路の伝熱面温度が、220℃未満である、
請求項1〜3いずれか記載のビニル系重合体の製造方法。
【請求項5】
ビニル系単量体の反応率が99.9重量%未満であるビニル系重合体と溶剤とを含む流体に、
重合開始剤を添加し、前記混合物とする時点の、
前記混合物中の重合開始剤濃度I(mol/g)が、
下記の式を満たすことを特徴とする、請求項1〜4いずれか記載のビニル系重合体の製造方法。

I≦[I]max=-2.0×10-5×((P+M)/(S+P+M))2-1.0×10-5×((P+M)/(S+P+M)) + 4.3×10-5

ただし、Mは、流体中のビニル系単量体濃度(重量部)、
Pは、流体中のビニル系重合体濃度(重量部)、
Sは、流体中の溶剤濃度(重量部)を表す。
【請求項6】
前記ビニル系単量体の反応率が99.9重量%未満であるビニル系重合体と溶剤とを含む流体に、
重合開始剤を混合する際の温度が、
前記重合開始剤の一時間半減期温度以下であることを特徴とする、
請求項1〜5いずれか記載のビニル系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来、一般に低コストでのビニル系重合体の合成はバッチ式での常圧反応によって合成されている。合成されたビニル系重合体には多少なりとも未反応物である単量体が残留する。
ビニル系重合体に残留する単量体は、医療用、ヘルスケア用途に於いては例えば皮膚刺激の原因となる。同様に、生活空間内の用途においては例えば臭気源やシックハウス症候群の原因物質となってしまう。このため、年々あらゆる用途において残留単量体低減の要求が高まっている。
【0002】
特に、単量体のうち高沸点を有するものは、加熱乾燥工程を経たとしても除去されにくく、最終製品に残留しやすいため、問題になりやすい。
更に、一般にビニル樹脂溶液は任意の対象物に塗工して使用される事が多い。このため、均一な塗膜を得るために、塗工工程において、スジや抜け等の欠陥が発生しにくい液性を有していることは、低残留単量体濃度に加えて重要である。
【0003】
従来技術のバッチ式常圧重合で残留単量体を低減する場合は、ラジカル重合開始剤を適宜添加しながら反応時間を単純に延長する手法がある。
この単純な反応時間延長は装置の時間当たりの生産性の低下を意味し、コスト増につながってしまう。また長時間の反応はゲル化のリスクが高まる上、ゲル化に到らずとも塗工に適した液性を得るのは非常に困難である。更に長時間効果的なラジカル濃度を保つために、例えば過酸化物の添加によって、過酸化物自体が高濃度に残留してしまう。
【0004】
また、バッチ式での残留単量体低減手法として、常圧沸点を超える高温で反応させる技術が開示されている。(特許文献1)(特許文献2)
しかし、常圧沸点を超える温度での反応には、耐圧構造を備えた高価な反応槽が必要である。また従来より普及している常圧反応槽ではこの方法は実現不可能である。
【0005】
連続式での反応において、残留単量体が低減される手法として、微細流路内での連続重合が開示されている。(特許文献3)
しかし、微細流路の利用は、ゲル物異物での閉塞のリスクが常に付きまとう。そのため、任意の生産装置で合成されたビニル系重合体流体を流通させると、異物混入やゲル物発生等の理由での閉塞リスクが大きい。また、特に高粘度である樹脂流体を流す際には圧力損失が非常に大きくなってしまう。その為、送液ポンプや配管材料の選定に大きな制約が生じてしまう。また、微細流路の大規模化のために、高度にナンバリングアップされた複雑な高圧装置は高価になる上に、例えば各流路の閉塞検出等が難しい等、大規模化には運用上の問題があった。
【0006】
残留単量体等を高温条件で水蒸気を連行剤として留去する技術も公開されている。(特許文献4)
しかしこの手法は、溶剤や分散媒を含まない固形分100%の重合溶融体にしか用いることができない。
【0007】
回分式反応槽を多段設置して連続的に残留単量体が低減されたアクリル重合体を得る方法が開示されている。 (特許文献5)
この手法では連続的に、任意の量を製造することが出来るが、システム滞留液量が大きく、機器運転が平衡に達するまでのロスが大きい。そのため、1品種を大量に処理する用途以外には適さない。
【0008】
いずれの従来技術も、単量体を主な工程出発物質として、これを重合して得られた重合体を、その装置工程内で、残留単量体濃度を低減する方法である。従って、任意の外部装置で合成されたビニル系重合体の残留単量体低減を容易には達成できる方法ではなかった。また、何れの手法においても任意の外部装置で合成されたビニル系重合体を含む流体の良好な塗工適性を達成できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3633990号公報
【特許文献2】特許第3730723号公報
【特許文献3】特許第5541481号公報
【特許文献4】特開平7-196726 号公報
【特許文献5】特許第4336836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の問題点を鑑み、本発明は、ビニル系重合体の、残留単量体を低減し、塗工適性が良好な流体を得る製造装置並びに製造方法を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、任意の外部装置で合成されたビニル系重合体を含む流体に、重合開始剤を混合し、特定の寸法的特長を持つ流路を通じ、流体を加熱し、該重合開始剤を十分に分解させることで、非常に効率よく短時間で残留単量体を低減し、且つ、分子量分布に於ける特定の領域の成分を調整可能で、塗工適性も良好なビニル系重合体を含む流体を得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
すなわち、本発明は、
ビニル系単量体を重合してなり、
ビニル系単量体の反応率が90重量%以上99.9重量%未満であるビニル系重合体と溶剤とを含む流体に、
重合開始剤を混合した重合体混合物を、
加熱可能な狭小流路中を移動させることを特徴とするビニル系重合体の製造方法であって、
前記狭小流路の等価直径が、3〜30mmであって、
かつ、前記混合物の流路中の最高液温が100℃以上210℃以下であって、
前記重合開始剤の1時間半減期温度は、60℃以上150℃以下であることを特徴とするビニル系重合体の製造方法に関する。
【0013】
本発明は、前記加熱可能な狭小流路中で、重合体混合物は、
前記重合開始剤の1時間半減期温度から、当該半減期温度より30℃高い温度まで、昇温させる間は、
毎分4℃以上の条件で加熱昇温されることを特徴とする、
上記ビニル系重合体の製造方法に関する。
【0014】
本発明は、前記混合物の、
前記重合開始剤が少なくとも90重量%分解する時点まで滞留させることを特徴とする、
上記ビニル系重合体の製造方法に関する。
【0015】
本発明は、前記加熱可能な狭小流路の伝熱面温度が、220℃未満である、
上記ビニル系重合体の製造方法に関する。
【0016】
本発明は、ビニル系単量体の反応率が99.9重量%未満であるビニル系重合体と溶剤とを含む流体に、
重合開始剤を添加し、前記混合物とする時点の、
前記混合物中の重合開始剤濃度I(mol/g)が、
下記の式を満たすことを特徴とする、上記ビニル系重合体の製造方法に関する。

I≦[I]max

ただし、
[I]maxは、-2.0×10-5×((P+M)/(S+P+M))2-1.0×10-5×((P+M)/(S+P+M)) + 4.3×10-5
Mは、流体中のビニル系単量体濃度(重量部)、
Pは、流体中のビニル系重合体濃度(重量部)、
Sは、流体中の溶剤濃度(重量部)を表す。
【0017】
本発明は、前記重合開始剤の1時間半減期温度が60℃以上150℃以下の有機過酸化物である、
上記ビニル系重合体の製造方法に関する。
【0018】
本発明は、前記ビニル系単量体の反応率が99.9重量%未満であるビニル系重合体と溶剤とを含む流体に、
重合開始剤を混合する際の温度が、
前記重合開始剤の一時間半減期温度以下であることを特徴とする、
上記ビニル系重合体の製造方法に関する。
【0019】
本発明は、ビニル系単量体を重合してなり、少なくとも、
ビニル系単量体の反応率が99.9重量%未満であるビニル系重合体と溶剤とを含む流体を貯蔵する手段と、
前記流体に、重合開始剤を混合し、重合体混合物とさせる手段と、
前記重合体混合物を送液する手段と、
加熱可能な狭小流路と
を備えることを特徴とするビニル系重合体製造装置であって、
前記狭小流路の等価直径が、3mm以上、30mm以下である、ビニル系重合体製造装置に関する。
【0020】
本発明は、前記重合開始剤が少なくとも90重量%分解する時点まで、滞留させる手段を有することを特徴とする、
ビニル系重合体製造装置に関する。
【0021】
本発明は、前記狭小流路の内容積が、流体を貯蔵する手段の最大貯蔵量の五分の一以下であることを特徴とする、
上記ビニル系重合体製造装置に関する。
【0022】
本発明は、
重合体混合物の常圧沸点以下まで冷却可能であることを特徴とする
上記ビニル系重合体製造装置に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の、ビニル系重合体製造装置並びにビニル系重合体を製造する方法は、任意の外部装置で合成されたビニル系重合体を含む流体の、残留単量体の低減を達成出来る為、高価で且つ運用に専門知識が必要な専用重合装置を持たずとも、医薬品や生体接触用途において、例えば皮膚刺激や他の薬剤や添加物との不要な相互作用を防止し、低臭気やシックハウス症候群の原因物質の低減を達成することが出来る。
【0024】
また、ビニル系重合体の分子量分布に於ける特定領域の成分を調整でき、塗工適性良好なビニル系重合体を含む流体を得る事が出来るため、効率よく欠点の発生が少ない塗工物を得る事が出来る。
【0025】
更に、ビニル系重合体混合物に含まれるマイクロゲルが極めて少なく、例えば該ビニル系重合体が光学用途に使用された場合のマイクロゲルに起因する不良を削減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本願装置の概略図を示す。
図2図2に、高分子量成分ピーク高さを説明する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の、ビニル系重合体の製造方法並びに製造装置の実施の形態を以下に具体的に例示し説明する。
【0028】
本発明の装置は、任意の単一ないし複数の外部装置に接続されていても良い。
外部装置とは、
本発明の以外の装置、即ち、
ビニル系重合体と溶剤とを含む流体を貯蔵する手段と、
重合開始剤を混合し、重合体混合物とさせる手段と、
重合体混合物を送液する手段と、
加熱可能な狭小流路とを備える装置以外のあらゆる装置である。
【0029】
また、本発明の手段もしくは流路は、必要に応じて、任意の装置や機材を、任意の位置に追加し、または具備することができる。例えば、各種ポンプ等の送液機構、ストレーナー等の異物濾過装置、各種弁、加熱冷却装置、槽塔類、貯蔵容器、装置の状態を監視する為の各種センサー類や制御装置等が具備されていても良い。
【0030】
ポンプ等の機械式送液機構が具備される場合には、流体にかかるせん断力が小さいものが好ましい。
濾過装置が具備される場合には、目開きが、本発明でいう等価直径以下であり、保液量が小さく、圧力損失が小さいものが好ましい。
センサー類や各種弁は、圧力、流量、温度などを、より安全で適切な条件範囲で運転するために、自動制御になっているものが好ましい。
好ましくは本技術の装置の出口側に、冷却装置を追加することができる。これによって、ビニル系重合体を含む流体を必要な時間加熱した後、ビニル系重合体を含む流体の常圧沸点以下まで冷却することで、安定して、より安全に外部に排出することが出来る。
【0031】
流体と接触する、装置の接液部材に関しては、流体と接触しても腐食しない材質を選択する必要がある。例えば、SUS304、SUS316等のステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン、ハステロイ、インコネル、任意で充填剤により強化されたPTFE等のフッ素樹脂、PEEK、FFKM、ガラス、セラミック等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの部材は流体の腐食性や強度や活性エネルギー線透過性等、必要に応じて適宜選択されうる。
【0032】
本発明で言う、ビニル系重合体は、(メタ)アクリル系単量体、(メタ)アクリロニトリル系単量体、及び、芳香族ビニル系単量体等のビニル基を有するビニル系単量体を重合してなる重合体である。
【0033】
(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が挙げられ、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、等の直鎖または分岐または環状脂肪族または芳香族アルコール等との(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、アクリル酸、メタクリル酸、β―カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、無水フマル酸等などのカルボキシル基又は酸無水物基含有単量体や、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸などの水酸基含有単量体;アクリル酸グリシジルや、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体;アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミドなどのアミド基含有単量体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン誘導体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
その他ビニル系単量体としては、ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレン等の共役ジエン、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類やビニルピロリドン類等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
これらのビニル系単量体は、フッ素原子等のハロゲンおよびまたはケイ素原子等、任意の原子を含んでいてもよい。
【0037】
ビニル系重合体としては、(メタ)アクリル系単量体を主単量体として重合して製造された(メタ)アクリル系重合体が好ましく、アクリル系重合体がより好ましく、アクリル酸エステル単量体を主として重合して製造されたアクリル酸エステル系重合体がさらに好ましい。
【0038】
ビニル系単量体の反応率とは、ビニル系重合体混合物に含まれるビニル系単量体(残留単量体)と、ビニル系重合体との総量に対する、ビニル系重合体の重量分率である。
【0039】
本技術適用前のビニル系単量体の反応率は、99.9%未満であれば良く、好ましくは80%以上99.9%未満、より好ましくは90%以上99.9%未満であるとよい。
【0040】
ビニル系重合体に残留する単量体は、医療用、ヘルスケア用途に於いては例えば皮膚刺激の原因となる。同様に、生活空間内の用途においては例えば臭気源やシックハウス症候群の原因物質となってしまう。
【0041】
このため、本技術適応後の、ビニル系重合体混合物に含まれる残留単量体濃度は、ビニル系重合体混合物乾燥後重量に対して、好ましくは500ppm以下(ppmは重量基準、以下省略)、より好ましくは400ppm以下、更に好ましくは300ppm以下である。
【0042】
ビニル系重合体混合物には、公知公用の溶剤、分散媒、添加剤等が任意に混合されても良い。例えば溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの溶剤は、2種類以上混合して用いても良い。
【0043】
添加剤としては、例えば、樹脂、界面活性剤、粘着付与剤、表面潤滑剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、老化防止剤、粘度調整剤、レべリング剤、可塑剤、染料、顔料、医薬、香料、鉱物、有機または無機充填剤、粘着付与剤、導電性付与剤、が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0044】
ビニル系重合体混合物の不揮発分に特に制限はないが、10〜90重量%程度、好ましくは70〜20重量%、より好ましくは20〜60重量%であるとよい。
【0045】
ビニル系重合体混合物のビニル系単量体濃度は、ビニル系単量体の反応率を満たしていれば、に特に制限はないが、20重量%以下、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下であるとよい。

【0046】
ビニル系重合体混合物が狭小流路中を移動する前に、窒素等の不活性ガスでの置換によって、本技術系内と、ビニル系重合体混合物に含まれる酸素濃度を十分に低下させると良い。好ましくは溶存酸素濃度50ppm以下、より好ましくは20ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。
【0047】
ビニル系重合体混合物を加熱可能な狭小流路とは、等価直径が3mm以上30mm以下である、加熱可能な流路である。本発明の課題を解決するためには、等価直径3-30mmの範囲の加熱可能な流路が、狭小流路の全部または一部に存在すればよい。
【0048】
ビニル系重合体混合物を加熱可能な狭小流路の等価直径は下記一般式によって得られる。
(一般式) 等価直径 = 4×流れ方向を法線とした流路断面積/断面濡れ縁長さ
断面濡れ縁長さは断面に於いて壁面と接液している長さである。
【0049】
加熱可能な狭小流路が、複雑に分岐合流を繰り返す等によって、流れ方向が一定せず、法線を決定することが困難である場合は、該加熱可能な狭小流路を含む範囲で、最初の分岐部と、直後の合流部とを境に区分し、区分内における、ビニル系重合体混合物の、平均流れ方向を法線とする。
【0050】
前記分岐部による区分が困難である場合は、該加熱可能な狭小流路を含む範囲を、継手によって区分し、ビニル系重合体混合物の、入口側継手と、出口側継手との間における、平均流れ方向を法線とする。
【0051】
継手は、例えば、溶接継手のほか、ねじ継手、ボルト締めフランジ継手等、公知の継ぎ手を使用することが出来る。これら継ぎ手による区分は、例えばボルト締めフランジに関してはフランジ面、溶接継手に関しては周継手によって区分する。
【0052】
加熱可能な狭小流路が分岐しており、ビニル系重合体混合物が複数平行して流れている場合であって、各並行流路について、流れ方向を法線とした断面積が異なるものがある場合は、分岐より等距離における各平行流路の断面積を合計したものを流路断面積とする。
【0053】
同様に、加熱可能な狭小流路が分岐しており、ビニル系重合体混合物が複数平行して流れている場合であって、各並行流路の流れ方向を法線とした断面濡れ縁長さが異なるものがある場合は、分岐より等距離における平行流路の断面濡れ縁長さを合計したものを、流路濡れ縁長さとする。
【0054】
等価直径は3mm以上30mm以下の範囲であって、好ましくは3.2mm以上28.4mm以下であり、更に好ましくは3.2mm以上23mm以下であると、より良好な実施の形態になり得る。
【0055】
等価直径が大き過ぎれば加熱速度が低速になってしまうため、例えば設備容積に対する単位時間当たりの処理能力に劣る。逆に等価直径の値が小さいほど、例えば加熱速度が高速になるが、工業的に使用するにあたっては等価直径が過小であるとゲル物等の異物による閉塞リスクが高まり安定した運転の障害となる。更には等価直径が過小であると、装置内の最高圧力が過大になってしまうため、高圧に耐える高価で特殊な機器類が必要になってしまう。更に、等価直径値が過小であると、残留単量体の低減効率が低下してしまう。
【0056】
ビニル系重合体混合物を、加熱可能な狭小流路中を移動させる際の、前記混合物の最高液温は210℃以下であって、好ましくは100℃以上200℃以下、より好ましくは110℃以上180℃以下、更に好ましくは120℃以上170℃以下の範囲にあると好適である。
【0057】
ビニル系重合体混合物を、加熱可能な狭小流路中を移動させた後、加熱可能な狭小流路以外で、ビニル系重合体混合物を滞留させても良い。
【0058】
更に、ビニル系重合体混合物中の重合開始剤を、少なくとも、90重量%以上分解させた時点までの最高液温は、210℃以下であるとよく、好ましくは100℃以上200℃以下、より好ましくは110℃以上180℃以下、更に好ましくは120℃以上170℃以下の範囲にあると好適である。
【0059】
また、この最高液温は、得たい流体の塗工適性を調節するために適宜調整できる。特定の加熱速度で、より高温側で加熱することにより、溶液粘度を過剰に増大させ、スジ等の塗工トラブルの要因になる高分子量成分を効率よく削減出来る。
【0060】
加熱可能な流路の伝熱面は、任意の方法で加熱することが出来る。
例えば熱媒を利用して伝熱面を加熱することが出来る。熱媒としては、例えばスチーム、鉱物油、合成油等の流体が挙げられるが、これに限定されない。
例えば熱媒を用いない伝熱面の加熱方法としては、電気抵抗体による加熱、誘電加熱、電磁誘導加熱、等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの加熱方法を単独で使用することも、複合使用することも出来る。
更に、マイクロ波などの電磁波による流体の直接加熱など、壁面を介しての伝熱を用いずに流体を加熱することも出来る。この場合、伝熱面温度は液温と等しいとする。
【0061】
伝熱面温度は220℃未満であると好ましい。ビニル系重合体混合物を加熱し、重合開始剤を少なくとも90重量%以上分解させた時点までの最高液温と、伝熱面温度との差が30℃以下であると、より好ましい。その上で、伝熱面温度が180℃以下であるとより好ましく、伝熱面温度が130℃以上170℃以下の範囲にあると更に好ましい。
【0062】
加熱速度は、ビニル系重合体混合物の温度を、該混合物に混合された重合開始剤の1時間半減期温度から、当該半減期温度より30℃高い温度まで、昇温させる間の平均昇温率(℃/分)である。加熱速度に特に制限はないが、加熱速度は4℃/分以上であると良く、より好ましくは4℃/分以上2500℃/分以下、より好ましくは9℃/分以上1500℃/分以下、更に好ましくは30℃毎分以上800℃以下である事が好適である。
【0063】
加熱速度は、或いは伝熱計算によっても求めることが出来るが、実験的にも求めることが出来る。例えば、実験的には、各実験装置において流量を変更し、管型装置では管長を変更し、加熱可能な流路での滞留時間を変更し、該流路出口での液温を測定することで予め求めることが出来る。
【0064】
重合開始剤としては、アゾ系化合物および有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、 2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾ ビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、 2,2'−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン 等が挙げられるが、これらに限定されない。一方で、アゾ系開始剤は高濃度で使用すると生体に対し有毒な物質を生成し、乾燥後も残留することがある。
【0065】
好ましくは有機過酸化物が良い。有機過酸化物の例としては、たとえば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、 ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシ ジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチル パーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサ ノエート、t−ヘキシルパーオキシー2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキ シ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
これらの重合開始剤は、単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0066】
前記重合開始剤の1時間半減期温度が60℃以上150℃以下の有機過酸化物であるとより効果的に本技術の効果を享受しうる。
【0067】
任意の外部装置で調製されたビニル系重合体を含む流体に、重合開始剤を混合する際には、1時間半減期温度以下で行うことが好ましく、3時間半減期温度以下で行うことが更に好ましい。
【0068】
少なくとも、ビニル系単量体の反応率が99.9重量%未満であるビニル系重合体と溶剤とを含む流体に、重合開始剤を混合する方法は公知の方法を使用してよい。例えば、撹拌槽でのバッチ処理や、連続混合機やスタティックミキサーを用いた連続処理などがあるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0069】
重合開始剤はビニル系重合体混合物に対して任意の量添加して良い。添加量の目安としてはビニル系重合体混合物に対して、重合開始剤を0.05〜1重量%程度添加することで、好適な結果を享受しうる。また、ビニル系重合体を含む流体の残留単量体濃度によって、適宜重合開始剤添加量を増減することで更に好適な結果を享受しうる。
【0070】
より好ましくは、少なくとも、ビニル系単量体の反応率が99.9重量%未満であるビニル系重合体と溶剤とを含む流体に、重合開始剤を添加し、ビニル系重合体混合物とする時点の、前記混合物中の重合開始剤濃度I(mol/g)が、下記の式を満たすことでより効果的に本技術の効果を享受できる。すなわち、好ましいビニル重合体混合物中の重合開始剤のモル濃度(mol/g)範囲は、ビニル系単量体濃度と、ビニル系重合体濃度と、溶剤濃度との比率によって、経験的に数式化された式で、予測できる。

I≦[I]max=-2.0×10-5×((P+M)/(S+P+M))2-1.0×10-5×((P+M)/(S+P+M)) + 4.3×10-5

ただし、Mは、流体中のビニル系単量体濃度(重量部)、
Pは、流体中のビニル系重合体濃度(重量部)、
Sは、流体中の溶剤濃度(重量部)を表す。
【0071】
前記溶剤濃度Sを計算する際の溶剤とは、前記流体中に含まれる、ビニル系単量体と、ビニル系重合体と、重合開始剤以外の、液体成分をいう。
【0072】
複数の重合開始剤を添加し使用するにあたっては、その合計量の90重量%以上が分解する時間以上液温を保持すると良い。加熱処理後、添加した重合開始剤自体が残留することを避けるために、好ましくは95重量%以上、更に好ましくは99重量%以上、重合開始剤が、分解するまで液温を保持滞留することが望ましい。
【0073】
また、残留する開始剤の濃度は、ビニル系重合体混合物乾燥後重量に対して、500ppm未満が良く、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下が良い。残留開始剤の低減によって、最終製品の劣化変質を防ぐことが出来る。
【0074】
任意の温度で重合開始剤がx%分解する時間は、例えば、以下の式から概ね予測することが出来る。
tx% = ln (100/(100-x)) / kd
x=90(%); t90% :90%分解時間 (h)

kd = A e-Ea/RT
kd:分解速度定数 (1/h)
A:頻度因子 (1/h)
Ea:活性化エネルギー (J/mol)
R:気体定数 (J/mol・K)
T:絶対温度 (K)
【0075】
処理系内の最高圧力とは、本技術の実施に係る系内部の、ビニル系単量体混合物流路内の最高圧力を指す。
【0076】
装置内の最高圧力は、ビニル系重合体混合物の系内最高温度における蒸気圧以上であって、好ましくは4MPaを超えず、より好ましくは3.55MPaを超えない、更に好ましくは2.45MPaを超えない、最も好ましくは1.5MPaを超えないことで、より本技術の効果を効率的に享受しうる。更に、最高圧力が低いほど、より安全で、低コストで大規模化に最適な装置を構築出来る。
【0077】
ビニル系重合体に重合開始剤を混合した重合体混合物を、加圧下で、加熱可能な流路を移動させ、前記重合開始剤が少なくとも90重量%分解する時点まで、流路中に滞留させる、流路の内容積が、流体を貯蔵する手段の最大貯蔵量の五分の一以下であると、処理時間の観点に加えて、収率や装置コストの観点から好ましい。
【0078】
本発明によって、溶剤に不溶なマイクロゲル分が非常に少ないビニル系重合体混合物を得る事ができる。これによって意図しない塗膜欠点の形成を抑制することが出来る。またマイクロゲル含有量が少ないことによって良好な光学性能を期待できる。
【0079】
本発明によって、ビニル系重合体混合物の、特定の分子量領域を増減し、分子量分布を調整しうる。特に、ビニル系重合体を合成するものにあっては意図せず生成した、或いは、ビニル系重合体を含む流体を取り扱おうとする者にあって、不要に液の粘度や貯蔵弾性率を高める高分子量成分を低減し、ムラやスジの少ない塗工適性良好な液性を得ることが出来る。
【0080】
本発明によって得られたビニル系重合体混合物を加工し、光学用途として、顔料分散体として、又は生体に接触する用途として、又は人の生活空間に設置する用途において、好適に使用する事が出来る。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例及び比較例を示してより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。特に断らない限り、部は重量部、%は、重量%を表す。
【0082】
実施例及び比較例において記述のある物性、評価項目の測定方法について説明する。
【0083】
不揮発分:0.5g程度の試料を計量し、熱風オーブンにて乾燥条件150℃-20分で加熱し、減量分から不揮発分を測定した。
【0084】
残留単量体濃度の測定:GC-MS Agilent 6890N / 5973N を使用した。
GC-MSにて、各種単量体特有のピーク面積値から、検量線法によって、ビニル系重合体混合物中の残留単量体濃度を測定した。本技術適用後のビニル系重合体混合物をテトラヒドロフラン(THF)で希釈し、GC-MSで測定することで残留単量体濃度を測定した。この測定値に希釈倍率を乗じて、不揮発分で除して、ドライ換算残留単量体濃度ppmとした。
【0085】
残留開始剤濃度:LC-MS Waters ACQUITY UPLC / ZQ 2000 を使用した。
各種開始剤特有の質量電荷比ピーク面積値から、内部標準を併用した検量線法によって、ビニル系重合体混合物中の残留開始剤濃度を測定した。ビニル系重合体溶液とメタノールを十分に混合し、メタノール中に開始剤を抽出し、樹脂分を遠心分離後、上澄みメタノール液に内部標準物質を規定濃度添加し、LC-MSに導入して測定した。この測定値に希釈・抽出倍率を乗じて、不揮発分で除して、ドライ換算残留単量体濃度ppmとした。
【0086】
塗工適性:
厚さ50μmのPETフィルムに、乾燥後の粘着剤層厚みが25μmとなるようにナイフコーターを用いて、目開き10μmろ過材で予めろ過したビニル系重合体混合物を150mm/sで塗工した。評価は塗工直後の塗膜の外観を目視にて観察した。
◎:塗工スジ、ムラ、ヌケなど一切なく、非常に良好な塗膜
○:微かに塗工スジ、ムラはあるが、ヌケは一切なく、良好な塗膜
△:微かに塗工スジ、ムラ、ヌケなどがあるが、実用可能な塗膜
×:塗工スジ、ムラ、ヌケなどが多発しており、問題がある塗膜
【0087】
分子量分布:GPC 東ソー HLC8220 GPCを使用した。
分子量分布の測定はGPCにて行い、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)をポリスチレン換算で行った。
カラム:東ソー TSKgel Super HM-M ×4 直列
溶媒:THF 0.2mL/min. @40℃
サンプル:0.5μm PTFEフィルタ予備濾過 不揮発分0.2% 200μL
検出器:RI(屈折率)
【0088】
マイクロゲル:
ビニル系重合体溶液を目開き10μmフィルタで予備濾過した後、 固形分0.2% THF溶液として 2mLを、シリンジフィルター(東洋濾紙社製、DISMIC 13JP050AN細孔径0.5μm PTFEメンブレン)で濾過した際の濾過抵抗で評価した。30秒以内に2mL全て濾過通液すれば、マイクロゲルが十分に少ない事を示す。
○:速やかに抵抗なく2mL全て濾過通液できる
△:抵抗はあるが2mL全て濾過通液できる
×:抵抗があり2mL全てを濾過通液できない
【0089】
(合成例)(ビニル系重合体)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に窒素雰囲気下、アクリル酸2−エチルヘキシル88部、メタクリル酸2−エチルヘキシル10部、アクリル酸2部、酢酸エチル55部、アセトン5部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」と記述する。)0.03部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、AIBN 0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル65部を加え、重量平均分子量が67万の共重合体溶液を得た。
塗布乾燥工程において蒸発除去しづらい高沸点の単量体がドライ換算残留単量体濃度で6720ppmで残留した。
【0090】
(ビニル系重合体混合物A)
合成例で得られたビニル系重合体溶液に対し、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート(1時間半減期温度92.1℃、活性化エネルギーEa=120.6 kJ/mol、頻度因子A=1.23×1017 1/h)を0.3%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。
【0091】
(ビニル系重合体混合物B)
ビニル系重合体混合物Aに使用された重合開始剤t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエートに替えて、t−ブチルパーオキシピバレート(1時間半減期温度72.7℃、活性化エネルギーEa=:119.1 kJ/mol、頻度因子A:6.93×1017 1/h)を0.24%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。
【0092】
(ビニル系重合体混合物C)
ビニル系重合体混合物Aに使用された重合開始剤t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエートに替えて、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(1時間半減期温度:119.3℃、活性化エネルギーEa:137.7 kJ/mol、頻度因子A:1.52×1018 1/h)を0.34%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。
【0093】
(ビニル系重合体混合物D)
ビニル系重合体混合物Aに使用された重合開始剤t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエートに替えて、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(1時間半減期温度:84.4℃、活性化エネルギーEa:121.3 kJ/mol、頻度因子A:3.69×1018 1/h)を0.37%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。
【0094】
(ビニル系重合体混合物E)
合成例で得られたビニル系重合体溶液に、酢酸エチルを追加し、窒素雰囲気下で十分に混合し、不揮発分を20%とした後、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエートを0.3%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。
【0095】
(ビニル系重合体混合物F)
合成例で得られたビニル系重合体溶液に、酢酸エチルを追加し、窒素雰囲気下で十分に混合し、不揮発分を44%とした後、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエートを0.3%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。
【0096】
(ビニル系重合体混合物G)
合成例で得られたビニル系重合体溶液を、ロータリーエバポレーターで液温40℃で不揮発分を70%となるまで減圧濃縮後、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエートを0.3%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。尚、減圧濃縮工程によってドライ換算残留単量体濃度に変化はなかった。
【0097】
(ビニル系重合体混合物H)
合成例で得られたビニル系重合体溶液に、酢酸エチルを追加し、窒素雰囲気下で十分に混合し、不揮発分を20%とした後、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエートを0.8%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。
【0098】
(ビニル系重合体混合物I)
合成例で得られたビニル系重合体溶液に、酢酸エチルを追加し、窒素雰囲気下で十分に混合し、不揮発分を44%とした後、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエートを0.1%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。
【0099】
(ビニル系重合体混合物J)
合成例で得られたビニル系重合体溶液に、酢酸エチルを追加し、窒素雰囲気下で十分に混合し、不揮発分を44%とした後、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエートを0.65%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。
【0100】
(ビニル系重合体混合物K)
合成例で得られたビニル系重合体溶液に、アクリル酸2-エチルヘキシルを追加し、窒素雰囲気下で十分に混合し、残留単量体濃度を10000ppmとした後、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエートを0.3%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。
【0101】
(ビニル系重合体混合物L)
合成例で得られたビニル系重合体溶液に対し、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート(1時間半減期温度92.1℃、活性化エネルギーEa=120.6 kJ/mol、頻度因子A=1.23×1017 1/h)を0.65%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。
【0102】
(ビニル系重合体混合物M)
合成例で得られたビニル系重合体溶液を、ロータリーエバポレーターで液温40℃で不揮発分を70%となるまで減圧濃縮後、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエートを0.65%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。尚、減圧濃縮工程によってドライ換算残留単量体濃度に変化はなかった。
【0103】
(ビニル系重合体混合物N)
合成例で得られたビニル系重合体溶液を、ロータリーエバポレーターで液温40℃で不揮発分を83%となるまで減圧濃縮後、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエートを0.5%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。
【0104】
(ビニル系重合体混合物O)
合成例で得られたビニル系重合体溶液に、酢酸エチルを追加し、窒素雰囲気下で十分に混合し、不揮発分を44%とした後、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエートを0.8%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。
【0105】
(ビニル系重合体混合物P)
合成例で得られたビニル系重合体溶液に、酢酸エチルを追加し、窒素雰囲気下で十分に混合し、不揮発分を30%とした後、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエートを0.85%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。
【0106】
(ビニル系重合体混合物Q)
合成例で得られたビニル系重合体溶液に対し、重合開始剤として、AIBN(1時間半減期温度82.7℃、活性化エネルギーEa=128.9 kJ/mol、頻度因子A=5.69.23×1018 1/h)を0.6%添加し、室温、窒素雰囲気下で十分に混合した。

【0107】
以下に試験装置を説明する。各装置には加熱部出口等に温度センサーと、適宜圧力計が設置されている。
【0108】
(装置1)
50mLシリンジポンプと、オイルバスに没した内径3mm長さ0.5mのSUS304製の管と、水中に没した冷却部と、背圧弁と、受液容器とから成るSUS316製試験装置。
【0109】
(装置2)
装置1の、オイルバスに没した管の内径を3.68mm長さ0.5mとした試験装置。
【0110】
(装置3)
窒素導入管が接続された容器と、ギアポンプと、逆止弁と、内径7.4mm長さ300mm×7穴であって、シェル側にスチームを導入出来るシェル&チューブ式熱交換器と、冷却用水冷二重管と、圧力調整弁と、受液容器とから成るSUS304製試験装置。
【0111】
(装置4)
シリンジポンプと、オイルバスに没した内径7.5mm長さ0.15mのSUS304製の管と、内径14mm長さ500mmのスチーム二重管保温部と、水中に没した冷却部と、背圧弁と、受液容器とから成る試験装置。
【0112】
(装置5)
窒素導入管が接続された200L容器と、ギアポンプと、SUS316製スチーム加熱プレート式熱交換器(等価直径De=4.4mm,被加熱流体容積8L)と、内容積20L保温滞留部と、冷却用熱交換器と、背圧弁と、循環ラインと、受液容器とから成る試験装置。
【0113】
(装置6)
窒素導入管が接続された容器と、ギアポンプと、逆止弁と、加熱用の被加熱流体側内径14mm長さ500mmスチーム二重管と、冷却用水冷二重管と、圧力調整弁と、循環ラインと、受液容器とから成るSUS304製試験装置。
【0114】
(装置7)
窒素導入管が接続された容器と、ギアポンプと、逆止弁と、加熱用の被加熱流体側内径23mm長さ1000mmスチーム二重管と、冷却用水冷二重管と、圧力調整弁と、循環ラインと、受液容器とから成るSUS304製試験装置。
【0115】
(装置8)
窒素導入管が接続された容器と、ギアポンプと、逆止弁と、加熱用の被加熱流体側内径28.4mm長さ1000mmスチーム二重管と、冷却用水冷二重管と、圧力調整弁と、循環ラインと、受液容器とから成るSUS304製試験装置。
【0116】
(装置9)
二重管内に、幅28.4 長さ41mmの流れ方向を軸として180度捩じりを加えたリボン状スタティックミキサーエレメントを、捻り方向左右交互に、各90度位相で10個連結したものを設置した他は、装置8ど同様の試験装置。
【0117】
(装置10)
50mLシリンジポンプと、オイルバスに没した内径2.18mm長さ0.5mのSUS304製の管と、水中に没した冷却部と、背圧弁と、受液容器とから成るSUS316製試験装置。
【0118】
(装置11)
窒素導入管が接続された容器と、ギアポンプと、逆止弁と、加熱用の被加熱流体側内径37mm長さ1000mmスチーム二重管と、冷却用水冷二重管と、圧力調整弁と、循環ラインと、受液容器とから成るSUS304製試験装置。

【0119】
(実施例1)
装置1を使用した。シリンジポンプにビニル系重合体混合物Aを充填し、オイルバスの温度を150℃として、オイルバスに没したSUS管部分を、混合物Aが2分かけて通過するように送液し、サンプルを得た。
【0120】
本条件における混合物A中の重合開始剤1時間半減期温度92.1℃から122.1℃までの、予め実験的に求めた昇温速度は450℃/分であった。本条件では、熱交換器内における2分間の滞留で、該重合開始剤の90%以上が分解する時点まで、混合物Aを保持することが出来た。
以下、実施例の主要な条件と実験解析・評価結果とを表1〜4にまとめる。
【0121】
(実施例2)
装置2を使用した他は、実施例1と同様にして、サンプルを得た。
【0122】
(実施例3)
装置3を使用した。装置内を窒素置換した後、容器にビニル系重合体混合物Aを仕込み、ポンプを作動させ、装置内を混合物Aで満たした。次に、ポンプ吐出量を、混合物Aが加熱用熱交換器を9分かけて通過する流量に設定した。その後、加熱用熱交換器のスチーム圧力を、伝熱面温度150℃となるように調節し、液温149℃とした。熱交換器入口から装置出口まで、混合物Aが計算上全て入れ替わった時点で、サンプリングを行ない、サンプルを得た。
【0123】
(実施例4)
装置7を使用した。装置内を窒素置換した後、容器にビニル系重合体混合物Aを仕込み、ポンプを作動させ、装置内を混合物Aで満たした。次に、ポンプ吐出量を、混合物Aがスチーム二重管を16分かけて通過する流量に設定した。その後、スチーム二重管のスチーム圧力を、伝熱面温度150℃となるように調節し、液温146℃とした。スチーム二重管入口から装置出口まで、混合物Aが計算上全て入れ替わった時点で、サンプリングを行ない、サンプルを得た。
【0124】
(実施例5)
装置8を使用した。装置内を窒素置換した後、容器にビニル系重合体混合物Aを仕込み、ポンプを作動させ、装置内を混合物Aで満たした。次に、ポンプ吐出量を、混合物Aがスチーム二重管を22分かけて通過する流量に設定した。その後、スチーム二重管のスチーム圧力を、伝熱面温度150℃となるように調節し、液温146℃とした。スチーム二重管入口から装置出口まで、混合物Aが計算上全て入れ替わった時点で、サンプリングを行ない、サンプルを得た。
【0125】
(実施例6)
装置9を使用した他は、実施例5と同様にして、サンプルを得た。
【0126】
(実施例7)
装置3を使用した。ポンプ吐出量を、混合物Aが加熱用熱交換器を9分かけて通過する流量に設定し、加熱用熱交換器のスチーム圧力を、伝熱面温度124℃となるように調節し、液温123℃とした他は、実施例3と同様にして、サンプルを得た。
【0127】
(実施例8)
装置1を使用した。オイルバスの温度を200℃とした他は、実施例1と同様にして、サンプルを得た。
【0128】
(実施例9)
装置3を使用した。ポンプ吐出量を、混合物Aが加熱用熱交換器を9分かけて通過する流量に設定し、加熱用熱交換器のスチーム圧力を、伝熱面温度135℃となるように調節し、液温134℃とした他は、実施例3と同様にして、サンプルを得た。
【0129】
(実施例10)
装置6を使用した。装置内を窒素置換した後、容器にビニル系重合体混合物Aを仕込み、ポンプを作動させ、装置内を混合物Aで満たした。次に、ポンプ吐出量を、混合物Aがスチーム二重管を10分かけて通過する流量に設定した。その後、スチーム二重管のスチーム圧力を、伝熱面温度135℃となるように調節し、液温134℃とした。スチーム二重管入口から装置出口まで、混合物Aが計算上全て入れ替わった時点で、サンプリングを行ない、サンプルを得た。
【0130】
(実施例11)
装置7を使用した。ポンプ吐出量を、混合物Aがスチーム二重管を23分かけて通過する流量に設定し、スチーム二重管のスチーム圧力を、伝熱面温度135℃となるように調節し、液温134℃とした他は、実施例4はと同様にして、サンプルを得た。
【0131】
(実施例12)
装置5を使用した。装置内を窒素置換した後、容器にビニル系重合体混合物Aを仕込み、ポンプを作動させ、ラインを循環側に切り替えて送液し、装置内を混合物Aで満たした。次に、ポンプ吐出量を、混合物Aが、加熱用熱交換器入口から冷却用熱交換器入口まで、10分かけて通過する流量に設定した。その後、加熱用熱交換器のスチーム圧力を、伝熱面温度を140℃となるように調節し、液温140℃とした。熱交換器内と保温管の内容物が、計算上全て入れ替わった時点で、ラインを循環側から取り出し側に切り替え、サンプルを得た。
【0132】
(実施例13)
装置4を使用した。装置内を窒素置換した後、容器にビニル系重合体混合物Aを仕込み、ポンプを作動させ、装置内を混合物Aで満たした。保温用内径14mmのスチーム二重管のスチーム圧力を、伝熱面温度を134℃となるように調節した。ポンプ吐出量を、混合物Aが、164℃のオイルバスに没した内径7.5mm管を、40秒かけて通過する流量に設定し、液温134℃とした。オイルバスに没した部分から、装置出口まで、内容物が計算上全て入れ替わった時点で、サンプリングを行ない、サンプルを得た。
【0133】
(実施例14)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Bとし、加熱用熱交換器のスチーム圧力を、伝熱面温度110℃となるように調節し、液温109℃とした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。
【0134】
(実施例15)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Cとし、加熱用熱交換器のスチーム圧力を、伝熱面温度164℃となるように調節し、液温161℃とした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。
【0135】
(実施例16)
装置4を使用した。オイルバス温度を220℃とし、液温178℃となった他は、実施例13と同様にして、サンプルを得た。
【0136】
(実施例17)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Qとした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。
残留開始剤は検出されなかったが、毒性の非常に高い2,2,3,3-テトラメチルブタンジニトリルが高濃度に検出された。
【0137】
(実施例18)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Dとした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。
【0138】
(実施例19)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Eとした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。
【0139】
(実施例20)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Fとした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。
【0140】
(実施例21)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Gとした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。
【0141】
(実施例22)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Hとした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。
【0142】
(実施例23)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Iとした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。
【0143】
(実施例24)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Jとした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。
【0144】
(実施例25)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Kとした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。
【0145】
(実施例26)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Lとした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。
【0146】
(実施例27)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Mとした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。
【0147】
(実施例28)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Nとした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。
【0148】
(実施例29)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Oとした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。
【0149】
(実施例30)
装置3を使用した。容器に仕込むビニル系重合体混合物を、ビニル系重合体混合物Pとした他は、実施例3と同様に行ない、サンプルを得た。


【0150】
(比較例1)
装置10を使用した。シリンジポンプにビニル系重合体混合物Aを充填し、オイルバスの温度を150℃として、オイルバスに没したSUS管部分を、混合物Aが2分かけて通過するように送液し、サンプルを得た。
【0151】
(比較例2)
装置11を使用した。装置内を窒素置換した後、容器にビニル系重合体混合物Aを仕込み、ポンプを作動させ、装置内を混合物Aで満たした。次に、ポンプ吐出量を、混合物Aがスチーム二重管を37分かけて通過する流量に設定した。その後、スチーム二重管のスチーム圧力を、伝熱面温度150℃となるように調節し、液温145℃とした。スチーム二重管入口から装置出口まで、混合物Aが計算上全て入れ替わった時点で、サンプリングを実施し、サンプルを得た。
【0152】
(比較例3)
装置1を使用した。オイルバスの温度を220℃とした他は、実施例1と同様にして、サンプルを得た。
【0153】
(比較例4)
装置3を使用した。加熱用熱交換器を18分かけて通過する流量に設定し、加熱用熱交換器に温水を循環し、伝熱面温度98℃となるように調節し、液温97℃とした他は、実施例14と同様にして、サンプルを得た。
【0154】
以下表1、表2の通り、本技術を用いることで、残留単量体、残留開始剤共が低減され、かつ、塗工適正良好で、マイクロゲルの含有が少ない流体を得られる。

【0155】
【表1】
【0156】
【表2】
【0157】
以下、表3、表4の通り、数1を満たすことで、特に、塗工適性とマイクロゲル含有量に好適な結果をもたらす。
【0158】
【表3】
【0159】
【表4】

【0160】
(粘着物性)
(1)粘着力
得られた粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。23℃、相対湿度50%雰囲気下、前記粘着シートから剥離性シートを剥がしてSUS304ステンレス板に貼り付け、2kgロールで1往復圧着した24時間放置した後に引張試験機を用いて180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験において粘着力を測定した。
【0161】
(2)保持力
得られた粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。前記粘着シートから剥離性シートを剥がして研磨した幅30mm・縦150mmのステンレス板の下端部幅25mm・横25mmの部分に粘着剤層を貼着し、2kgロールで1往復圧着した後、40℃雰囲気で1kgの荷重をかけ、7万秒放置することで保持力を測定した。評価は、粘着シート貼付面上端部が下にずれた長さを測定した。
【0162】
(本技術適用前粘着剤)
合成例で得られた共重合体溶液に酢酸エチルを添加し、不揮発分を44%に調整し、本技術適用前粘着剤とした。粘着剤100部に対して、硬化剤としてコロネートL(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、東ソー社製)2部(不揮発分換算)を配合し、更に溶剤として酢酸エチルを加えて不揮発分を35%に調整した。
【0163】
(本技術適用後粘着剤)
実施例18で得られた本技術適用後サンプルに対しても同様に、サンプル100部に対して、硬化剤としてコロネートL(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、東ソー社製)2部(不揮発分換算)を配合し、更に溶剤として酢酸エチルを加えて不揮発分を35%に調整した。
【0164】
前記の粘着剤を、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)上に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗工を行い、150℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、厚さ50μmの基材(ポリエチレンテレフタレート製、以下、PETシートという)を貼り合せ、温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成することで「剥離性シート/粘着剤層/PETシート」という構成の粘着シートを得た。以下表5のとおり、本技術適用前後で粘着物性に変化はなかった。
【0165】
【表5】
【0166】
(特定領域分子量分布の調整)
分子量分布測定における分子量400万におけるピーク高さを、分子量1000以上400万未満の範囲での最高ピーク高さで除した数値を、表5における高分子量成分ピーク高さとした。図2に、高分子量分変化を説明する。本技術適用前後で高分子量成分ピーク高さが小さくなることは、高分子量成分が特異的に減少していることを示している。
【符号の説明】
【0167】
1:入口側容器
2:ポンプ
3:逆止弁
4:加熱用熱交換器
5:滞留部
6:冷却用熱交換器
7:背圧弁
8:出口側容器
【要約】
【課題】
本発明は、ビニル系重合体の、残留単量体を低減し、塗工適性が良好な流体を得る製造装置並びに製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
ビニル系単量体を重合してなり、ビニル系単量体の反応率が99.9重量%未満であるビニル系重合体と溶剤とを含む流体に、重合開始剤を混合した重合体混合物を、加熱可能な狭小流路中を移動させることを特徴とするビニル系重合体の製造方法であって、前記狭小流路の等価直径が、3〜30mmであって、かつ、前記混合物の流路中の最高液温が100℃以上210℃以下であることを特徴とするビニル系重合体の製造方法。
【選択図】図1
図1
図2