(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して本発明の各実施形態について説明する。
【0010】
燃料電池は電解質膜をアノード電極(燃料極)とカソード電極(酸化剤極)とによって挟み、アノード電極に水素を含有するアノードガス(燃料ガス)、カソード電極に酸素を含有するカソードガス(酸化剤ガス)を供給することによって発電する。アノード電極及びカソード電極の両電極において進行する電極反応は以下の通りである。
【0011】
アノード電極 : 2H
2 →4H
+ +4e
- …(1)
カソード電極 : 4H
+ +4e
- +O
2 →2H
2O …(2)
【0012】
この(1)(2)の電極反応によって燃料電池は1ボルト程度の起電力を生じる。
【0013】
燃料電池を自動車用動力源として使用する場合には、要求される電力が大きいため、数百枚の燃料電池を積層した燃料電池スタックとして使用する。そして、燃料電池スタックにアノードガス及びカソードガスを供給する燃料電池システムを構成して、車両駆動用の電力を取り出す。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による燃料電池システム100の概略図である。
【0015】
燃料電池システム100は、燃料電池スタック1と、カソードガス給排装置2と、アノードガス給排装置3と、電力系4と、コントローラ5と、を備える。
【0016】
燃料電池スタック1は、数百枚の燃料電池を積層したものであり、アノードガス及びカソードガスの供給を受けて、車両の駆動に必要な電力を発電する。燃料電池スタック1は、電力を取り出す端子として、アノード電極側出力端子11と、カソード電極側出力端子12と、を備える。
【0017】
カソードガス給排装置2は、燃料電池スタック1にカソードガスを供給するとともに、燃料電池スタック1から排出されるカソードオフガスを外気に排出する装置である。カソードガス給排装置2は、カソードガス供給通路21と、フィルタ22と、カソードコンプレッサ23と、カソードガス排出通路24と、カソード調圧弁25と、を備える。
【0018】
カソードガス供給通路21は、燃料電池スタック1に供給するカソードガスが流れる通路である。カソードガス供給通路21は、一端がフィルタ22に接続され、他端が燃料電池スタック1のカソードガス入口孔に接続される。
【0019】
フィルタ22は、カソードガス供給通路21に取り込むカソードガス中の異物を取り除く。
【0020】
カソードコンプレッサ23は、カソードガス供給通路21に設けられる。カソードコンプレッサ23は、フィルタ22を介してカソードガスとしての空気(外気)をカソードガス供給通路21に取り込み、燃料電池スタック1に供給する。
【0021】
カソードガス排出通路24は、燃料電池スタック1から排出されるカソードオフガスが流れる通路である。カソードガス排出通路24は、一端が燃料電池スタック1のカソードガス出口孔に接続され、他端が開口端となっている。
【0022】
カソード調圧弁25は、カソードガス排出通路22に設けられる。カソード調圧弁25は、コントローラ5によってその開度が任意の開度に制御されて、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの圧力を所望の圧力に調節する。
【0023】
アノードガス給排装置3は、燃料電池スタック1にアノードガスを供給するとともに、燃料電池スタック1から排出されるアノードオフガスを、カソードガス排出通路24に排出する装置である。アノードガス給排装置3は、高圧タンク31と、アノードガス供給通路32と、調圧弁33と、アノードガス排出通路34と、パージ弁35と、を備える。
【0024】
高圧タンク31は、燃料電池スタック1に供給するアノードガスを高圧状態に保って貯蔵する。
【0025】
アノードガス供給通路32は、高圧タンク31から排出されるアノードガスを燃料電池スタック1に供給するための通路である。アノードガス供給通路32は、一端が高圧タンク31に接続され、他端が燃料電池スタック1のアノードガス入口孔に接続される。
【0026】
調圧弁33は、アノードガス供給通路32に設けられる。調圧弁33は、コントローラ5によって開閉制御されて、高圧タンク31からアノードガス供給通路32に流れ出したアノードガスの圧力を所望の圧力に調節する。
【0027】
アノードガス排出通路34は、燃料電池スタック1から排出されるアノードオフガスが流れる通路である。アノードガス排出通路34は、一端が燃料電池スタック1のアノードガス出口孔に接続され、他端がカソードガス排出通路24に接続される。
【0028】
パージ弁35は、アノードガス排出通路34に設けられる。パージ弁35は、コントローラ5によって開閉制御され、アノードガス排出通路34からカソードガス排出通路24に排出するアノードオフガスの流量を制御する。
【0029】
電力系4は、電流センサ41と、電圧センサ42と、走行モータ43と、インバータ44と、バッテリ45と、DC/DCコンバータ46と、を備える。
【0030】
電流センサ41は、燃料電池スタック1から取り出される電流(以下「出力電流」という。)を検出する。
【0031】
電圧センサ42は、アノード電極側出力端子11とカソード電極側出力端子12の間の端子間電圧(以下「出力電圧」という。)を検出する。
【0032】
走行モータ43は、ロータに永久磁石を埋設し、ステータにステータコイルを巻き付けた三相交流同期モータである。走行モータ43は、燃料電池スタック1及びバッテリ45から電力の供給を受けて回転駆動する電動機としての機能と、ロータが外力によって回転させられる車両の減速時にステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機としての機能と、を有する。
【0033】
インバータ44は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの複数の半導体スイッチから構成される。インバータ44の半導体スイッチは、コントローラ5によって開閉制御され、これにより直流電力が交流電力に、又は、交流電力が直流電力に変換される。インバータ44は、走行モータ43を電動機として機能させるときは、燃料電池スタック1の発電電力とバッテリ45の出力電力との合成直流電力を三相交流電力に変換して走行モータ43に供給する。一方で、走行モータ43を発電機として機能させるときは、走行モータ43の回生電力(三相交流電力)を直流電力に変換してバッテリ45に供給する。
【0034】
バッテリ45は、燃料電池スタック1の発電電力(出力電流×出力電圧)の余剰分及び走行モータ43の回生電力を充電する。バッテリ45に充電された電力は、必要に応じてカソードコンプレッサ23などの補機類及び走行モータ43に供給される。
【0035】
DC/DCコンバータ46は、燃料電池スタック1の出力電圧を昇降圧させる双方向性の電圧変換機である。DC/DCコンバータ46によって燃料電池スタック1の出力電圧を制御することで、燃料電池スタック1の出力電流、ひいては発電電力が制御される。
【0036】
コントローラ5は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ5には、前述した電流センサ41や電圧センサ42の他にも、アクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセル操作量」という。)を検出するアクセルストロークセンサ51、バッテリ45の充電量を検出するSOCセンサ52、バッテリ45の温度を検出バッテリ温度センサ53などの燃料電池システム100を制御するために必要な各種センサからの信号が入力される。
【0037】
図2は、燃料電池スタック1の温度と、燃料電池スタック1の電流電圧特性(以下「IV特性」という。)と、の関係を示す図である。
図2において、実線で示したIV特性が、燃料電池スタック1の暖機が完了した後のIV特性(以下「基準IV特性」という。)である。
【0038】
図2に示すように、燃料電池スタック1のIV特性は燃料電池スタック1の温度に応じて変化し、燃料電池スタック1の温度が低い場合ほど、同じ電流値の出力電流を燃料電池から取り出したときの出力電圧は低くなる。すなわち、燃料電池スタック1の温度が低いときほど、燃料電池スタック1の発電効率は低下する。
【0039】
燃料電池スタック1の発電効率が低下した状態で車両の走行を許可してしまうと、走行時に走行モータ43の要求電力が大きくなって燃料電池スタック1の出力電流が増加したときに、燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回るおそれがある。ここで最低電圧は、予め実験等によって設定される電圧値であって、燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回ってしまうと、走行モータ43を駆動することができなくなる電圧値である。
【0040】
したがって、燃料電池システム100の起動後は、燃料電池スタック1を暖機しつつ、燃料電池スタック1の温度上昇に応じて時々刻々と変化するIV特性が、走行モータ43を駆動しても燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回ることのないIV特性になったことを確認して車両の走行許可を出す必要がある。
図2で言えば、燃料電池スタック1の出力電流が走行許可電流になったときの出力電圧が、最低電圧を下回らないIV特性になったことを確認して車両の走行許可を出す必要がある。走行許可電流は、走行モータ43を駆動して車両を発進又は走行させた場合に想定される出力電流の最低値に所定の余裕代を加えた値であって、予め実験等によって設定される値である。
【0041】
しかしながら、走行許可の出ていない暖機時に通電可能な電気部品は、走行モータ43以外のカソードコンプレッサ23や燃料電池スタック1を冷却する冷却水を加熱するヒータなどの補機及びバッテリ45に限られる。つまり、走行許可の出ていない暖機時は、補機及びバッテリ45に流すことのできる電流以上の出力電流を燃料電池スタック1から取り出すことができない。
【0042】
したがって、走行許可の出ていない暖機時における出力電流の最大値(以下「走行許可前最大電流」)は、補機に流すことのできる電流(以下「補機消費電流」という。)に、バッテリ45に流すことのできる電流(以下「充電電流」という。)を加えたものとなるが、この走行許可前最大電流は、走行許可電流よりも小さい値となる。
【0043】
そのため、走行許可の出ていない暖機時は、燃料電池スタック1から走行許可電流を取り出すことができないので、燃料電池スタック1から走行許可電流を取り出したときの出力電圧が最低電圧を下回っているかどうかを実際に判定することができない。
【0044】
そこで本実施形態では、燃料電池システム100の起動後は、燃料電池スタック1を暖機しつつ燃料電池スタック1のIV特性を推定し、推定したIV特性が、走行モータ43を駆動しても燃料電池スタック1の出力電圧が最低電圧を下回ることのないIV特性になった時点で車両の走行許可を出すようにしている。
【0045】
図3は、燃料電池システム100の起動時における燃料電池スタック1のIV特性の推定方法について説明する図である。
図3において、実線は基準IV特性を示す。破線は走行許可の出ていない暖機中のある時点における実際のIV特性(以下「実IV特性」という。)を示す。
【0046】
走行許可の出ていない暖機時は、出力電流を走行許可前最大電流までしか増大させることができない。そのため、走行許可前最大電流以上の領域における実IV特性を実際に検出することはできない。
【0047】
ここで、基準IV特性上の電圧(以下「基準電圧」という。)Vbと、実IV特性上の電圧(すなわち、電圧センサによって検出される実出力電圧)Vrと、の電圧差ΔVは、以下の(3)式に示すように、出力電流Iの増加に伴って単調増加する一次関数となることが実験的に証明されている。
ΔV=A×I+B …(3)
【0048】
したがって、出力電流を走行許可前最大電流までの間で変動させて、少なくとも任意の2点の実出力電流Irに対応する基準電圧Vb及び実出力電圧Vrから電圧差ΔVを求めれば、(3)式の傾きA及び切片Bを算出することができる。傾きA及び切片Bを算出することができれば、走行許可前最大電流以上の領域の任意の出力電流での電圧差ΔVを算出することができる。よって、基準電圧Vbから電圧差ΔVを減算することで、
図3に一点鎖線で示すように、走行許可前最大電流以上の領域における実IV特性を描くことができる。
【0049】
なお、
図3に示すように、出力電流がIV推定下限電流になるまでは、活性化分極による電圧降下が大きく、出力電流の変動に対する出力電圧の変動が相対的に大きくなるので近似精度が低下する。そのため、本実施形態では、IV推定下限電流から走行許可前最大電流までの間(以下「データ取得領域」という。)で出力電流を一定量以上の振り幅で変動させて、データ取得領域内の少なくとも2点以上の出力電流値に対応する基準電圧及び実出力電圧のデータを取得し、逐次最小二乗法によって(3)式の傾きA及び切片Bを算出している。
【0050】
ここで、データ取得領域内で出力電流を変動させて、そのときの基準電圧及び実出力電圧のデータを取得する場合、出力電流を増加させながらデータを取得する方法と、出力電流を低下させながらデータを取得する方法と、が考えられる。本実施形態では、以下の理由により、出力電流を低下させながらデータを取得する。
【0051】
図4は、出力電流を低下させながらデータを取得する理由について説明する図である。
図4(A)は、燃料電池システム100の起動時における燃料電池スタック1の実IV特性の推移と、出力電流を増加させながら取得したデータに基づき推定したIV特性(一点差線)と、出力電流を低下させながら取得したデータに基づき推定したIV特性(破線)と、を示す図である。
図4(B)は、基準IV特性と、実IV特性及び推定したIV特性と、の電圧差を出力電流に応じて示した図である。
【0052】
燃料電池スタック1の暖機中は、出力電流を一定量以上の振り幅で変動させてデータを取得している間も、IV特性は基準IV特性に向けて徐々に回復していく。したがって、
図4(A)に示すように、データ取得開始時の実IV特性と、データ取得終了時の実IV特性と、を比較すると、データ取得終了時のIV特性のほうが、データ取得開始時のIV特性よりも良いIV特性となる。
【0053】
そうすると、
図4(B)に一点鎖線で示すように、データ取得領域内で出力電流を増加させながら、任意の出力電流値のときに取得したデータ(基準電圧及び実出力電圧)に基づいて(3)式の傾きA及び切片Bを算出すると、算出した傾きAが、基準電圧とデータ取得終了時の実IV特性上の電圧との電圧差ΔVの一次関数の傾きよりも小さくなってしまう。
【0054】
そのため、
図4(A)に一点鎖線で示すように、データ取得領域内で出力電流を増加させながら取得したデータに基づき推定したIV特性は、データ取得終了時の実IV特性よりも良いIV特性になってしまう。実際のIV特性よりも良いIV特性に基づいて走行許可を出してしまうと、車両走行によって出力電流が増加したときに、出力電圧が車両走行用のモータを駆動するために必要な最低電圧を下回るおそれがある。
【0055】
これに対し、
図4(B)に破線で示すように、データ取得領域内で出力電流を低下させながら、任意の出力電流値のときに取得したデータに基づいて(3)式の傾きA及び切片Bを算出すると、算出した傾きAは、基準電圧とデータ取得終了時の実IV特性上の電圧との電圧差ΔVの一次関数の傾きよりも大きくなる。
【0056】
そのため、
図4(B)に一点鎖線で示すように、データ取得領域内で出力電流を低下させながら取得したデータに基づき推定したIV特性は、データ取得終了時の実IV特性よりも悪いIV特性となる。実際のIV特性よりも悪いIV特性に基づいて走行許可を出せば、車両走行によって出力電流が増加したとしても、出力電圧が最低電圧を下回るおそれはない。
【0057】
また、IV特性の推定精度を確保するためには、一定量以上の電流幅で燃料電池の出力電流を変化させたときのデータに基づいて、IV特性を推定する必要がある。そのため、燃料電池内の水や氷の影響で発電が不安定となる暖機中に、精度良くIV特性を推定するために燃料電池の出力電流を所定の電流幅分だけ急激に上昇させると、その急激な電流変化によって電圧落ちが発生するおそれがある。
【0058】
一方で、このような電圧落ちを防ぐために、燃料電池の出力電流を徐々に上昇させたときの出力電圧に基づいてIV特性を推定しようとすると、燃料電池の暖機中は時々刻々とIV特性が変化しているため、出力電流の上昇中に推定したいIV特性が変化してしまい、推定精度が確保できなくなるおそれがある。
【0059】
これに対し、データ取得領域内で出力電流を低下させながら取得したデータに基づいてIV特性を推定すれば、出力電流を増加させたときのように、発電によって燃料電池スタック内の水や氷が増加することがないので、これによる電圧落ちの発生を抑制できる。
【0060】
そして、電圧落ちの発生の心配がないので、出力電流の変化速度も、出力電流を増加させる場合と比較して速くすることができる。そのため、IV特性に必要なデータを取得する間のIV特性の変化が少なくて済むので、IV特性の推定精度を確保することができる。
【0061】
そのため本実施形態では、出力電流を低下させながら取得したデータに基づいてIV特性を推定している。
【0062】
このように、走行許可の出ていない暖機中にIV特性を推定するには、IV推定下限電流から走行許可前最大電流までの間で出力電流を一定量以上の振り幅で低下させるべく、出力電流をIV特性推定用の目標出力電流に制御する必要がある。
【0063】
図5は、本実施形態による目標出力電流を設定する制御ブロック図である。
【0064】
目標補機消費電力算出部61は、カソードコンプレッサ23などの各補機で消費させる電力の目標値(以下「目標補機消費電力」という。)を算出する。走行許可が出ていない暖機中は、目標補機消費電力は所定の暖機時目標消費電力に設定される。本実施形態では、暖機時目標消費電力を、各補機の消費電力を最大にしたときの電力に設定している。
【0065】
到達目標発電電力算出部62には、目標補機消費電力と、目標走行モータ供給電力と、が入力される。到達目標発電電力算出部62は、目標補機消費電力と目標走行モータ供給電力とを合算したものを、到達目標発電電力として算出する。目標走行モータ供給電力は、アクセル操作量が大きくなるほど大きくなり、走行許可が出ていない暖機中はアクセル操作量にかかわらずゼロとなる。
【0066】
基本目標出力電流算出部63には、到達目標発電電力と、実発電電力(実出力電流×実出力電圧)と、が入力される。基本目標出力電流算出部63は、到達目標発電電力と実発電電力との偏差に基づいて、実発電電力を到達目標発電電力に向けて変化させる際の発電電力の目標値を、基本目標発電電力として算出する。また、発電電力を基本目標発電電力にするために要求される出力電流の目標値を、基本目標出力電流として算出する。
【0067】
充放電可能電力算出部64には、バッテリ充電量と、バッテリ温度と、が入力される。充放電可能電力算出部64は、バッテリ充電量及びバッテリ温度に基づいて、バッテリ45に充電可能な電力(以下「充電可能電力」)及びバッテリ45から取り出し可能な電力(以下「放電可能電力」という。)を算出する。
【0068】
IV推定用目標電流算出部65には、基本目標発電電力と、充電可能電力と、放電可能電力と、が入力される。IV推定用目標電流算出部65は、これらの入力値に基づいて、IV特性を推定するときの出力電流の目標値(以下「IV推定用目標電流」という。)を算出すると共に、IV推定実施フラグのON・OFF信号を出力する。燃料電池システムの起動時は、IV推定実施フラグはOFFに設定される。IV推定用目標電流算出部65の詳しい内容については、
図6から
図9を参照して後述する。
【0069】
目標出力電流算出部66には、IV推定用目標電流と、基本目標出力電流と、が入力される。目標出力電流算出部66は、IV推定実施フラグがONになっていれば、IV推定用目標出力電流を目標出力電流として算出する。一方で、IV推定実施フラグがOFFになっていれば、基本目標出力電流を目標出力電流として算出する。
【0070】
図6は、
図5の制御ブロック図によって制御された出力電流及び発電電力の動作を示すタイムチャートである。
【0071】
図6(B)において、破線Aは、基本目標発電電力を示す。破線Bは、基本目標発電電力に充電可能電力を足した電力(以下「上限発電電力」という。)を示す。破線Cは、基本目標発電電力から放電可能電力を引いた電力(以下「下限発電電力」という。)を示す。
【0072】
なお、一点鎖線Dは、燃料電池システム起動後の走行許可が出ていない暖機時における到達目標発電電力、すなわち暖機時目標消費電力である。一点鎖線Eは、到達目標発電電力に充電可能電力を足した電力であって、補機消費電力が到達目標発電電力まで上昇した後の上限発電電力(以下「定常時上限発電電力」という。)である。一点鎖線Fは、到達目標発電電力から放電可能電力を引いた電力であって、補機消費電力が到達目標発電電力まで上昇した後の下限発電電力(以下「定常時下限発電電力」という。)である。
【0073】
図6(A)において、破線Aは、基本目標出力電流を示す。破線Bは、発電電力を上限発電電力にするために要求される出力電流(以下「上限出力電流」という。)I
c1を示す。破線Cは、発電電力を下限発電電力にするために要求される出力電流(以下「下限出力電流」という。)I
c2を示す。走行許可が出ていない暖機中は、下限出力電流I
c2から上限出力電流I
c1の間で出力電流を変動させることができる。
【0074】
なお、一点鎖線Dは、発電電力を定常時上限発電電力にするために要求される出力電流、すなわち走行許可前最大電流である。一点鎖線Eは、発電電力を定常時下限発電電力にするために要求される出力電流(以下「定常時下限電流」という。)I
t1である。一点鎖線Fは、IV推定下限電流I
c3である。
【0075】
燃料電池システム100が起動されると、
図6(B)に示すように、暖機時目標消費電力が到達目標出力電力として設定され、発電電力を暖機時目標消費電力にするための目標値が基本目標発電電力として設定される。
【0076】
その結果、燃料電池システム100の起動時はIV推定実施フラグがOFFに設定されているので、基本目標出力電流が目標出力電流として設定され、
図6(A)に示すように、出力電流が基本目標出力電流となるように制御される。
【0077】
時刻t0で燃料電池スタック1の出力電流が定常時下限電流I
t1に到達し、時刻t1で上限出力電流I
c1と定常時下限電流I
t1との差が、IV特性を推定したときに所定の精度を確保するために必要な所定の電流振り幅ΔI
t以上になると、IV推定実施フラグがONに設定される。そして、時刻t1における上限出力電流(以下「負荷上げ時目標電流」という。)I
t2がIV推定用目標電流に設定される。
【0078】
その結果、IV推定用目標電流が目標出力電流として設定され、
図6(A)に示すように、出力電流が負荷上げ時目標電流I
t2となるように制御される。
【0079】
時刻t2で出力電流が負荷上げ時目標電流I
t2に到達すると、その時点から所定時間が経過するまでは、出力電流が負荷上げ時目標電流I
t2に維持される。
【0080】
時刻t3で、時刻t2からの経過時間が所定時間に達すると、定常時下限電流I
t1がIV推定用目標電流に設定され、出力電流を所定の変化率で定常時下限電流I
t1へと変化させる。そして、出力電流を所定の変化率で定常時下限電流I
t1へと変化させている間に、任意の出力電流値に対応する基準電圧及び実出力電圧のデータを複数取得する。
【0081】
時刻t4で出力電流が定常時下限電流I
t1まで低下すると、取得したパラメータに基づいてIV特性を推定する。そして、IV推定実施フラグをOFFに設定し、再び出力電流が基本目標出力電流となるように制御する。
【0082】
図7は、本実施形態によるIV特性推定制御について説明するフローチャートである。
【0083】
ステップS1において、コントローラ5は、定常時下限電流I
t1を算出する。具体的には、走行許可が出ていない暖機時における到達目標発電電力(暖機時目標消費電力)から放電可能電力を引いて定常時下限発電電力を算出する。そして、発電電力を定常時下限発電電力にするために要求される出力電流を定常時下限電流I
t1として算出する。
【0084】
ステップS2において、コントローラ5は、上限出力電流I
c1と定常時下限電流I
t1との差が、IV特性を推定したときに所定の精度を確保するために必要な電流振り幅ΔIt以上になったか否かを判定する。コントローラ5は、上限出力電流I
c1と定常時下限電流I
t1との差が電流振り幅ΔI
t以上になるまで本処理を繰り返し、上限出力電流I
c1と定常時下限電流I
t1との差が電流振り幅ΔI
t以上になればステップS3の処理を行う。
【0085】
ステップS3において、コントローラ5は、過渡時IV特性推定処理を実施する。過渡時IV特性推定処理は、燃料電池システム100を起動した後に行われる1回目のIV特性推定処理であって、補機消費電力が暖機時目標消費電力に到達する前の過渡時に実施されるIV特性推定処理である。過渡時IV特性推定処理の詳細については、
図8を参照して後述する。
【0086】
ステップS4において、コントローラ5は、過渡時IV特性推定処理でIV特性が推定されたか否かを判定する。コントローラ5は、IV特性が推定されていればステップS5の処理を行い、そうでなければステップS8の処理を行う。
【0087】
ステップS5において、コントローラ5は、過渡時IV特性推定処理で推定したIV特性に基づいて、燃料電池スタック1から走行許可電流を取り出したときの出力電圧が最低電圧を下回っているかどうかを判定する。コントローラ5は、燃料電池スタック1から走行許可電流を取り出したときの出力電圧が最低電圧を下回っていなければステップS6の処理を行う。一方で、燃料電池スタック1から走行許可電流を取り出したときの出力電圧が最低電圧を下回っていればステップS7の処理を行う。
【0088】
ステップS6において、コントローラ5は、車両の走行許可を出す。
【0089】
ステップS7において、コントローラ5は、過渡時IV特性推定処理を実施してから後述する定常時IV特性推定処理を実施するまでのインターバル期間t
intをゼロに設定する。
【0090】
ステップS8において、コントローラ5は、定常時IV特性推定処理を実施する。定常時IV特性推定処理は、過渡時IV特性推定処理が実施された後に行われる2回目以降のIV特性推定処理であって、基本的に補機消費電力が暖機時目標消費電力に到達した後の定常時に実施されるIV特性推定処理である。定常時IV特性推定処理の詳細については、
図8を参照して後述する。
【0091】
ステップS9において、コントローラ5は、定常時IV特性推定処理で推定したIV特性に基づいて、燃料電池スタック1から走行許可電流を取り出したときの出力電圧が最低電圧を下回っているかどうかを判定する。コントローラ5は、燃料電池スタック1から走行許可電流を取り出したときの出力電圧が最低電圧を下回っていなければステップS6の処理を行う。一方で、燃料電池スタック1から走行許可電流を取り出したときの出力電圧が最低電圧を下回っていればステップS10の処理を行う。
【0092】
ステップS10において、コントローラ5は、インターバル期間t
intを可変値t
m1に設定する。可変値t
m1は、定常時IV特性推定処理で推定したIV特性が基準IV特性に近くなるほど、すなわちIV特性が回復するほど短くなるように設定される。
【0093】
図8は、過渡時IV特性推定処理について説明するフローチャートである。
【0094】
ステップS31において、コントローラ5は、IV推定実施フラグをONに設定する。
【0095】
ステップS32において、コントローラ5は、上限出力電流I
c1と定常時下限電流I
t1との差が所定の電流振り幅ΔI
t以上になったときの上限出力電流(以下「負荷上げ時目標電流」という。)I
t2と、現在の上限出力電流I
c1と、のうちの小さいほうを、IV推定用目標電流として設定する。このステップでは、基本的に負荷上げ時目標電流I
t2がIV推定用目標電流として設定されるが、このように負荷上げ時目標電流I
t2と、現在の上限出力電流I
c1と、のうちの小さいほうをIV推定用目標電流として設定するのは以下の理由による。すなわち、後述するステップS33で出力電流をIV推定用目標電流に保持しているときに、イレギュラー的に負荷上げ時目標電流I
t2が現在の上限出力電流I
c1よりも大きくなってしまうと、充電電流が過多となってバッテリ45が劣化するので、これを防止するためである。
【0096】
ステップS33において、コントローラ5は、出力電流が、ステップS32で設定されたIV推定用目標電流に到達してから所定時間が経過したか否かを判定する。コントローラ5は、出力電流がIV推定用目標電流に到達してから所定時間が経過していなければステップS34の処理を行い、経過していればステップS37の処理を行う。
【0097】
ステップS34において、コントローラ5は、電圧落ち判定を実施する。具体的には、出力電流をIV推定用目標電流に保持しているときに、出力電圧が所定の電圧落ち判定値未満になったか否かを判定する。コントローラ5は、出力電圧が所定の電圧落ち判定値未満になっていれば、過渡時IV特性推定処理を中止すべくステップS35の処理を行う。一方で、出力電圧が所定の電圧落ち判定値以上であれば、ステップS32の処理に戻る。
【0098】
ステップS35において、コントローラ5は、IV推定実施フラグをOFFに設定して過渡時IV特性推定処理を中止する。そして、基本目標出力電流を目標出力電流として設定して出力電流を基本目標出力電流に制御する。
【0099】
ステップS36において、コントローラ5は、インターバル期間t
intを所定の固定値t
m2に設定する。固定値t
m2は前述した可変値t
m1よりも大きい値である。
【0100】
ステップS37において、コントローラ5は、現在の出力電流(=ステップS32で設定したIV推定用目標電流)I
rから電流振り幅ΔI
tを引いた値が、下限出力電流I
c2及びIV推定下限電流I
c3以上か否かを判定する。コントローラ5は、現在の出力電流I
rから電流振り幅ΔI
tを引いた値が、下限出力電流I
c2及びIV推定下限電流I
c3以上であればステップS38の処理を行う。一方、現在の出力電流I
rから電流振り幅ΔI
tを引いた値が、下限出力電流I
c2及びIV推定下限電流I
c3未満であれば、過渡時IV特性推定処理を中止すべくステップS43の処理を行う
【0101】
ステップS38において、コントローラ5は、現在の出力電流I
rから電流振り幅ΔI
tを引いた値と、下限出力電流I
c2と、のうちの大きいほうを、IV推定用目標電流として設定し、出力電流を所定の変化率でIV推定用目標電流に向けて低下させる。
【0102】
ステップS39において、コントローラ5は、出力電流を低下させている間に基準電圧及び実出力電圧のデータを取得する。
【0103】
ステップS40において、コントローラ5は、出力電流が、ステップS38で設定したIV推定用目標電流まで低下したか否かを判定する。コントローラ5は、出力電流がIV推定用目標電流まで低下していればステップS41の処理を行い、そうでなければステップS39の処理に戻って上記の3つのパラメータを取得する。
【0104】
ステップS41において、コントローラ5は、基準電圧及び実出力電圧のデータの取得を終了し、取得したデータに基づいてIV特性を推定する。
【0105】
ステップS42において、コントローラ5は、IV推定実施フラグをOFFに設定し、基本目標出力電流を目標出力電流として設定して出力電流を基本目標出力電流に制御する。
【0106】
ステップS43において、コントローラ5は、IV推定実施フラグをOFFに設定して過渡時IV特性推定処理を中止する。そして、基本目標出力電流を目標出力電流として設定して出力電流を基本目標出力電流に制御する。
【0107】
ステップS44において、コントローラ5は、インターバル期間t
intをゼロに設定する。
【0108】
図9は、定常時IV特性推定処理について説明するフローチャートである。
【0109】
ステップS81において、コントローラ5は、インターバル期間t
intが設定されてからの経過時間が、設定されたインターバル期間t
intよりも大きくなったか否かを判定する。コントローラ5は、インターバル期間t
intが経過するまで本処理を繰り返し、インターバル期間t
intが経過すればステップS82の処理を行う。
【0110】
ステップS82において、コントローラ5は、上限出力電流I
c1と、下限出力電流I
c2及びIV推定下限電流I
c3の大きいほうと、の差が電流振り幅ΔI
t以上か否かを判定する。コントローラ5は、上限出力電流I
c1と、下限出力電流I
c2及びIV推定下限電流I
c3の大きいほうと、の差が電流振り幅ΔI
t以上であればステップS83の処理を行い、そうでなければ電流振り幅ΔI
t以上になるまで本処理を継続する。
【0111】
ステップS83において、コントローラ5は、IV推定実施フラグをONに設定する。
【0112】
ステップS84において、コントローラ5は、上限出力電流I
c1と、下限出力電流I
c2及びIV推定下限電流I
c3の大きいほうと、の差が電流振り幅ΔI
t以上になったときの上限出力電流I
c1と、現在の上限出力電流I
c1と、のうちの小さいほうを、負荷上げ時のIV推定用目標電流として設定する。
【0113】
ステップS85において、コントローラ5は、出力電流が、ステップS84で設定された負荷上げ時のIV推定用目標電流に到達してから所定時間が経過したか否かを判定する。コントローラ5は、出力電流が負荷上げ時のIV推定用目標電流に到達してから所定時間が経過していなければステップS86の処理を行い、経過していればステップS89の処理を行う。
【0114】
ステップS86において、コントローラ5は、電圧落ち判定を実施する。具体的には、出力電流を負荷上げ時のIV推定用目標電流に保持しているときに、出力電圧が所定の電圧落ち判定値未満になったか否かを判定する。コントローラ5は、出力電圧が所定の電圧落ち判定値未満になっていれば、再び所定のインターバル期間経過後に定常時IV特性推定処理を実施すべく、ステップS87の処理を行う。一方で、出力電圧が所定の電圧落ち判定値以上であれば、ステップS84の処理に戻る。
【0115】
ステップS87において、コントローラ5は、IV推定実施フラグをOFFに設定し、基本目標出力電流を目標出力電流として設定して出力電流を基本目標出力電流に制御する。
【0116】
ステップS88において、コントローラ5は、インターバル期間t
intを所定の固定値t
m2に設定し、その後はステップS81に戻って設定したインターバル期間経過後に再度IV特性の推定処理を開始する。
【0117】
ステップS89において、コントローラ5は、現在の出力電流I
rから電流振り幅ΔI
tを引いた値が、下限出力電流I
c2及びIV推定下限電流I
c3以上か否かを判定する。コントローラ5は、現在の出力電流I
rから所定の電流振り幅ΔI
tを引いた値が、下限出力電流I
c2及びIV推定下限電流I
c3以上であればステップS90の処理を行う。一方、現在の出力電流I
rから所定の電流振り幅ΔI
tを引いた値が、下限出力電流I
c2及びIV推定下限電流I
c3未満であれば、ステップS95の処理を行う。
【0118】
ステップS90において、コントローラ5は、現在の出力電流I
rから電流振り幅ΔI
tを引いた値と、下限出力電流I
c2と、のうちの大きいほうを、負荷下げ時のIV推定用目標電流として設定し、出力電流を所定の変化率で負荷下げ時のIV推定用目標電流に向けて低下させる。
【0119】
ステップS91において、コントローラ5は、出力電流を低下させている間に基準電圧及び実出力電圧のデータを取得する。
【0120】
ステップS92において、コントローラ5は、出力電流が、ステップS89で設定した負荷下げ時のIV推定用目標電流まで低下したか否かを判定する。コントローラ5は、出力電流が負荷下げ時のIV推定用目標電流まで低下していればステップS93の処理を行い、そうでなければステップ91の処理に戻ってデータを取得する。
【0121】
ステップS93において、コントローラ5は、基準電圧及び実出力電圧のデータの取得を終了してIV特性を推定する。
【0122】
ステップS94において、コントローラ5は、IV推定実施フラグをOFFに設定し、基本目標出力電流を目標出力電流として設定して出力電流を基本目標出力電流に制御する。
【0123】
ステップS95において、コントローラ5はIV推定実施フラグをOFFに設定する。そして、基本目標出力電流を目標出力電流として設定して出力電流を基本目標出力電流に制御し、ステップS82に戻って再度IV特性の推定処理を開始する。
【0124】
以上説明した本実施形態によれば、燃料電池スタック1の出力電流を低下させながら、任意の出力電流値のときに取得したデータ(基準電圧及び実出力電圧)に基づいて、燃料電池スタック1のIV特性を推定することとした。
【0125】
そのため、燃料電池スタック1の出力電流を増加させてIV特性を推定する場合のように、水や氷が急増することが無いので、これによる電圧落ちの発生を抑制できる。また、電圧落ちの発生の心配が少ないので、速やかに電流を低下させることができる。よって、IV推定に必要なデータを取得する間のIV特性の変化が少なくて済み、IV特性の推定精度を確保することができる。
【0126】
また、燃料電池スタック1の出力電流を低下させながら取得したデータに基づき推定したIV特性は、データ取得終了時の実IV特性よりも悪いIV特性となる。実際のIV特性よりも悪いIV特性に基づいて走行許可を出すことで、車両走行によって出力電流が増加したとしても、出力電圧が最低電圧を下回るのを抑制できる。
【0127】
また、本実施形態によれば、燃料電池スタック1の暖機中は、基本的に発電電力の目標値を暖機時目標消費電力に設定し、カソードコンプレッサ21等の各補機の消費電力を最大にすることで、自己発熱を積極的に利用した状態で燃料電池スタック1を発電させて、暖機を促進させる。そして、IV特性を推定する際には、燃料電池スタック1の発電電力の一部をバッテリ45に供給することで、発電電力を暖機時目標消費電力よりも大きくして出力電流を増加させた後に出力電流を低下させ、出力電流を低下させているときに取得したデータに基づいて燃料電池スタック1のIV特性を推定することとした。
【0128】
燃料電池スタック1の暖機促進のためには、各補機の消費電力を最大にして自己発熱を積極的に利用した状態で燃料電池スタック1を発電させることが望ましい。しかしながら、IV特性を推定するために、各補機の消費電力(各補機への供給電力)を減らして出力電流を低下させてしまうと、自己発熱分が低下するので暖機性能が悪化する。
【0129】
そこで本実施形態のように、各補機の消費電力を最大にした状態のまま、バッテリ45に燃料電池スタック1の発電電力を供給して出力電流を上げた後に出力電流を低下させることで、暖機性能の悪化を抑制しつつIV特性を推定することができる。
【0130】
また、本実施形態によれば、燃料電池システム100を起動した後、補機消費電力が暖機時目標消費電力に到達する前の過渡時からIV特性の推定を実施することにした。
【0131】
これにより、補機消費電力が暖機時目標消費電力に到達した後の定常時になってからIV特性の推定をする場合と比較して、より早期にIV特性を推定することができる。
【0132】
また、このような過渡時に出力電流を低下させながら所定のデータを取得してIV特性を推定しようとした場合は、出力電流を低下させている間に補機消費電力の上昇と共に下限出力電流も上昇していくので、所定の電流振り幅ΔI
tを確保できずにIV特性の精度が低下するおそれがある。
【0133】
これに対して本実施形態では、定常時下限電流I
t1、すなわち補機消費電力が暖機時目標消費電力に到達した後の定常時において取り得る出力電流の最低値を算出し、この定常時下限電流I
t1を基準として所定の電流振り幅ΔI
tを確保できたときにIV推定を実施することにした。定常時下限電流I
t1は、過渡時における下限出力電流の最大値と言い換えることもできる。したがって、定常時下限電流I
t1を基準として所定の電流振り幅ΔI
tを確保できたときにIV推定を実施することで、確実に出力電流を電流振り幅ΔI
t分だけ低下させることができるので、IV特性の精度を確保することができる。
【0134】
このように、本実施形態によれば、過渡時においてもIV特性の精度を確保することができる。そのため、暖機中に急激にIV特性が回復した場合等に素早く車両の走行許可を出すことができる。
【0135】
また本実施形態によれば、上限出力電流I
c1及び定常時下限電流I
t1をバッテリ充電量等のバッテリの状態に応じて算出することにしたので、バッテリ45の過充電及び過放電を防止でき、バッテリ45の劣化を防止することができる。
【0136】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0137】
例えば、上記実施形態では、確実に電流振り幅ΔI
tが取れること確認するため、上限出力電流I
c1と定常時下限電流I
t1との差が所定の電流振り幅ΔI
t以上になったときに、出力電流を負荷上げ時目標電流I
t2に制御してIV推定を開始していたが、出力電流が定常時下限電流I
t1に達したことを判定した後であれば、出力電流を上昇させてIV推定を開始させても良い。これによっても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0138】
本願は、2013年4月16日に日本国特許庁に出願された特願2013−85941号に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。