【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の回転電機用同期ロータの分解斜視図であって、以下、
図1に基づき全体構成を説明する。
【0011】
実施例1の回転電機用同期ロータ1は、ステータと共にモータを構成するものであり、例えば電気自動車やハイブリッド車両の走行駆動源として適用されるものである。
【0012】
前記回転電機用同期ロータ1は、円筒状のロータコア2と、ロータコア2に埋め込む永久磁石3と、ロータコア2に嵌合するロータシャフト4と、を有している。
【0013】
前記ロータコア2は、複数の円弧状のコアプレート2a(
図2及び
図3参照)を環状に配置すると共に、環状に配置した該コアプレート2aを積層することにより、内側に空間を持つ円筒状に形成されている。
【0014】
前記円弧状のコアプレート2aは、電磁鋼板からなり、
図2に示すように、円弧の角度θ1が120°となっていて、磁石穴3aと、溶接部5と、貫通穴6と、を有している。このコアプレート2aには、
図2に示すように、磁石穴3a、溶接部5及び貫通穴6のそれぞれが、等間隔に4つずつ形成されている。
【0015】
前記磁石穴3aは、
図2に示すように、プレート外周側に開穴した永久磁石3を挿入するための穴となっている。この磁石穴3aの形状は、周方向に広がった矩形形状に形成されている。
【0016】
前記溶接部5は、
図3に示すように、プレート内周端に形成されている。この溶接部5は、凹面5aと、凸部5bと、を有している。
前記凹面5aは、コアプレート2aの内周面2IPから外径方向に凹んで形成されている。凹面5aの形状は、実線と破線にて示したように曲面形状に形成されている。
前記凸部5bは、凹面5aの一部に、凹面5aからコアプレート2aの内周面2IPまでの範囲にて突出するように形成されている。凸部5bの形状は、三角形状に形成されている。
【0017】
前記貫通穴6は、
図3に示すように、磁石穴3aと溶接部5との径方向の間の位置に開穴されている。この貫通穴6の形状は、円形状に形成されている。
【0018】
図2に示すように、コアプレート2aの中心点Oと、磁石穴3aの周方向の中心位置とを径方向に結ぶ径方向軸線CLの同一軸線上に、溶接部5及び貫通穴6を配置している。すなわち、磁石穴3a、溶接部5及び貫通穴6のそれぞれの周方向の中心位置を、径方向軸線CLの同一軸線上に配置している。同様に、凹面5a及び凸部5bのそれぞれの周方向の中心位置も、径方向軸線CLの同一軸線上に配置している。
ここで、コアプレート2aの中心点Oは、複数の円弧状のコアプレート2aを環状に配置したときの中心点と同一となる。すなわち、この環状に配置した該コアプレート2aを積層することによりロータコア2が形成されるので、コアプレート2aの中心点Oは、ロータコア2の中心点と同一となる。なお、コアプレート2aの内周面2IP及びロータコア2の内周面2IPも同様の理由により同一となる。
【0019】
このような円弧状のコアプレート2aを複数積層して、円筒状のロータコア2が形成されている。
この形成されたロータコア2の内周面2IPに、ロータ軸Ax方向に積層した複数のコアプレート2a間の溶接部5により連続する直線状の連続溶接部10が形成される。
【0020】
この連続溶接部10を、溶接接合することにより、溶接ビード11(溶接接合部)が形成される。
この溶接接合は、母材、すなわち、連続溶接部10における溶接部5の凸部5bを溶融することにより行ってもよいし、その凸部5bと溶接ワイヤを溶融することにより行ってもよい。この溶接ワイヤの溶融量は、溶接部5の凹面5a内、すなわち、凹面5aからコアプレート2aの内周面2IPまでの範囲に収まる程度の量となっている。
【0021】
前記ロータシャフト4は、内側に空間を持つ円筒状に形成されている。この内側の空間には、不図示の回転軸などが挿入される。このロータシャフト4は、ロータコア2に対して圧入されることにより、ロータコア2にロータシャフト4が嵌合される。
【0022】
次に、作用を説明する。
実施例1の回転電機用同期ロータ1における作用を、「回転電機用同期ロータの製造作用」、「回転電機用同期ロータの特徴的作用」に分けて説明する。
【0023】
[回転電機用同期ロータの製造作用]
図2、
図4〜
図7に基づき、本発明の回転電機用同期ロータの製造作用を説明する。
複数の円弧状のコアプレート2aを積層することにより形成した円筒状のロータコア2と、ロータコア2に埋め込む永久磁石3と、を有する同期ロータ1を備えた回転電機用同期ロータ1の製造方法は、コアプレート成形工程と、ロータコア組み立て工程と、ロータ溶接接合工程と、永久磁石挿入工程と、を有している。以下、各工程について説明する。
【0024】
(コアプレート成形工程)
前記コアプレート成形工程では、
図2に示すように、円弧状のコアプレート2aに、プレート外周側に開穴された永久磁石3を挿入するための磁石穴3aと、プレート内周端に形成された溶接部5と、磁石穴3aと溶接部5との径方向の間の位置に開穴された貫通穴6と、が成形される。
【0025】
(ロータコア組み立て工程)
前記ロータコア組み立て工程では、
図4に示すように、複数の円弧状のコアプレート2aを、環状に配置される。すなわち、
図2に示すように、円弧の角度θ1が120°のコアプレート2aを3枚ほど使用して、環状に配置される。なお、
図5において、この環状に配置されたコアプレート2aを第1層とする。
この環状に配置したコアプレート2aを積層して円筒状のロータコア2が組み立てられる。すなわち、
図5に示すように、第1層コアプレート2aの上に、第1層コアプレート2aに対し右回りに角度θ2を30°ずらして、第2層コアプレート2bが積層される。
続いて、
図5に示すように、第2層コアプレート2bの上に、第2層コアプレート2bに対し右回りに30°ずらして、第3層コアプレート2cが積層される。
このように、前の層に対し右回りに30°ずらして、つまり、前の層のコアプレート2a間の継ぎ目をまたぐように、次の層が積層されていくことにより、円筒状のロータコア2が組み立てられる。この円筒状のロータコア2を組み立てるのに、例えば、コアプレート2aを54枚ほど用いて、18層ほど積層される。
【0026】
(ロータ溶接接合工程)
前記ロータ溶接接合工程では、ロータコア2のロータ軸Ax方向に積層した複数のコアプレート2a間の磁石穴3aが、ロータ軸Ax方向に連通するように位置合わせが行われる。すなわち、連通している磁石穴3aに永久磁石3を挿入することができるように、位置合わせが行われる(
図6参照)。なお、この位置合わせは、治具を用いて行われる。
この位置合わせが行われたロータコア2の内周面2IPに、
図6に示すように、ロータ軸Ax方向に積層した複数のコアプレート2a間の溶接部5により連続する直線状の連続溶接部10が形成される。
次に、磁石穴3aの周方向の中心位置とロータコア2の中心点(コアプレート2aの中心点)Oとを径方向に結ぶ径方向軸線CLの同一軸線上に、連続溶接部10及び貫通穴6が配置された状態にて、連続溶接部10が溶接接合される。これにより、
図7に示すように、溶接ビード11が形成される。
【0027】
(永久磁石挿入工程)
前記永久磁石挿入工程では、位置合わせが行われ、溶接接合された後、
図7に示すように、その連通している磁石穴3aに永久磁石3が挿入されていく。
このように製造されたロータコア2に対して、ロータシャフト4が圧入されることにより、ロータコア2にロータシャフト4が嵌合される。
【0028】
以上の工程を経過し、磁石穴3aに永久磁石3を挿入することに加え、複数のコアプレート2a間の溶接部5を溶接接合することにより、回転電機用同期ロータ1を製造することができる。
【0029】
例えば、磁石を挿入する磁石挿入孔が形成され、内周側に複数の凸部が設けられた複数の分割コアプレートをリング状に配置しながら積層して成形されるロータコアを形成し、その磁石挿入孔に磁石を挿入し、そのロータコアにロータシャフトが嵌合された、すなわち、かしめ構造により、分割コアプレート間が結合された同期ロータを比較例とする。この比較例の同期ロータによれば、ロータコアの耐遠心強度は、主にロータコアの周方向における磁石(と接着剤等)のせん断強度で保持する構成となっている。
【0030】
しかし、磁石のせん断強度のみでは、磁石の保持強度が十分に確保されず、耐久信頼性が低下する。また、一般的に、ロータコアの耐遠心強度を向上させるためには、積層した複数の分割コアプレートを溶接するが、これでは、溶接にて発生する熱により、分割コアプレートが熱歪変形する。このため、設計通りのロータコアが形成されないばかりか、ロータコアにロータシャフトを嵌合することができない。
【0031】
このように、磁石の保持強度が十分に確保されず、耐久信頼性が低下するという課題があった。また、耐久信頼性の低下とともに、部品精度(ロータコア積層精度)の低下による組立性及び歩留りも悪化するという課題もあった。
【0032】
これに対し、実施例1では、凸部5bを集中的に溶接することができるので、溶接時の入熱量を最小限としながら、溶接ビード11の溶け込み幅及び深さを一定(安定)且つ容易に調整することができ、ロータコア2の接合強度を高めることができる。加えて、コアプレート2a間は溶接接合により同期ロータ1組立体単品で耐遠心強度を確保することができるため、永久磁石3への荷重入力による破損等が防止される。
この結果、ロータコア2の耐遠心強度を確保することで、永久磁石3の耐久信頼性を向上することができる。
【0033】
しかも、連続溶接部10にて発生する熱は、磁石穴3aと溶接部5との径方向の間の位置に開穴されている貫通穴6により、磁石穴3a及びロータコア2の外径部への熱の拡散(伝導)が抑えられ、磁石穴3a及びロータコア2の外径部の熱歪変形を抑制することができる。
【0034】
この結果、複数のコアプレート2a間を溶接しても、径寸法精度、真円度及び磁石穴3a形状精度が良好な同期ロータ1組立体を形成することができる。
【0035】
加えて、溶接ビード11は、溶接部5の凹面5a内に収まるので、ロータコア2に合わせてロータシャフト4を加工する手間が不要となる。すなわち、ロータシャフト4面は、
図1に示すように、単純な円筒形状で良い。
【0036】
[回転電機用同期ロータの特徴的作用]
実施例1では、円弧状のコアプレート2aに、磁石穴3aと、溶接部5と、貫通穴6と、を有し、ロータコア2の内周面2IPに、直線状の連続溶接部10を溶接接合した溶接ビード11を形成し、径方向軸線CLの同一軸線上に溶接ビード11及び貫通穴6が配置した構成を採用した。
【0037】
すなわち、回転電機用同期ロータ1において、磁石穴3aに永久磁石3を挿入することに加え、連続溶接部10が溶接により接合される。このとき、貫通穴6を有することで、溶接部5で発生する熱の拡散(伝導)を小さくし、コアプレート2aの磁石穴3a及び外径部の熱歪変形を抑制することができるため、コアプレート2a間を溶接接合しても、径寸法精度や真円度、磁石穴形状精度が良好な同期ロータ1組立体を形成することができる。また、コアプレート2a間は溶接接合により同期ロータ1組立体単品で耐遠心強度を確保することができるため、永久磁石3への荷重入力による破損等が防止される。
【0038】
この結果、ロータコア2の耐遠心強度を確保することで、永久磁石の耐久信頼性を向上することができる。
【0039】
次に、効果を説明する。
実施例1の回転電機用同期ロータ1及び回転電機用同期ロータ1の製造方法にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0040】
(1) 複数の円弧状のコアプレート2aを積層することにより形成した円筒状のロータコア2と、前記ロータコア2に埋め込む永久磁石3と、を有する回転電機用同期ロータ1において、
前記円弧状のコアプレート2aは、プレート外周側に開穴した前記永久磁石3を挿入するための磁石穴3aと、プレート内周端に形成した溶接部5と、前記磁石穴3aと前記溶接部5との径方向の間の位置に開穴した貫通穴6と、を有し、
前記ロータコア2の内周面2IPに、ロータ軸Ax方向に積層した前記複数のコアプレート2a間の前記溶接部5により連続して形成される直線状の連続溶接部10を溶接接合した溶接接合部(溶接ビード11)を形成し、
前記磁石穴3aと前記ロータコア2の中心点Oとを径方向に結ぶ径方向軸線CLの同一軸線上に、前記溶接接合部(溶接ビード11)及び前記貫通穴6を配置した。
このため、ロータコア2の耐遠心強度を確保することで、永久磁石の耐久信頼性を向上することができる。
【0041】
(2) 前記溶接部5は、前記コアプレート2aの内周面2IPから外径方向に凹んで形成された凹面5aと、前記凹面5aの一部に、前記凹面5aから前記コアプレート2aの内周面2IPまでの範囲にて突出する凸部5bと、により形成した。
このため、複数のコアプレート2a間を溶接しても、径寸法精度、真円度及び磁石穴形状精度が良好なロータコア2を形成することができるので、同期ロータ1組立体を形成することができる。
【0042】
(3) 複数の円弧状のコアプレート2aを積層することにより形成した円筒状のロータコア2と、前記ロータコア2に埋め込む永久磁石3と、を有する回転電機用同期ロータ1の製造方法において、
前記円弧状のコアプレート2aに、プレート外周側に開穴した前記永久磁石3を挿入するための磁石穴3aと、プレート内周端に形成した溶接部5と、前記磁石穴3aと前記溶接部5との径方向の間の位置に開穴した貫通穴6と、を成形するコアプレート成形工程と、
前記複数の円弧状のコアプレート2aを、環状に配置すると共に、環状に配置した前記コアプレート2aを積層して前記円筒状のロータコア2を組み立てるロータコア組み立て工程と、
前記ロータコア2のロータ軸Ax方向に積層した前記複数のコアプレート2a間の前記磁石穴3aが、ロータ軸Ax方向に連通するように位置合わせを行い、該位置合わせを行った前記ロータコア2の内周面2IPに、前記ロータ軸Ax方向に積層した前記複数のコアプレート2a間の前記溶接部5により連続する直線状の連続溶接部10を形成し、前記磁石穴3aと前記ロータコア2の中心点Oとを径方向に結ぶ径方向軸線CLの同一軸線上に、前記連続溶接部10及び前記貫通穴6を配置した状態にて、前記連続溶接部10を溶接接合するロータ溶接接合工程と、
を有する。
このため、ロータコア2の耐遠心強度を確保することで、永久磁石3の耐久信頼性を向上することができる。加えて、複数のコアプレート2a間を溶接しても、径寸法精度、真円度及び磁石穴3a形状精度が良好な同期ロータ1組立体を形成することができる。この2つのことを達成することができる回転電機用同期ロータ1の製造方法を提供することができる。
【実施例2】
【0043】
実施例2は、溶接部5の凸部5b及び貫通穴6の変形例である。
図8に基づき実施例2の要部構成を以下に説明する。
【0044】
溶接部5の凸部5bの形状は、
図8に示すように、矩形形状に形成されている。
【0045】
貫通穴6は、
図8に示すように、磁石穴3aと溶接部5との径方向の間の位置に開穴されている。その穴は、直列に2つ形成されている。この2つの貫通穴6の形状は、共に円形状に形成されている。また、この2つの貫通穴6の穴径は、実施例1の貫通穴6の穴径よりも小さくなっている。
【0046】
凸部5b及び2つの貫通穴6のそれぞれの周方向の中心位置を、
図8に示すように、径方向軸線CLの同一軸線上に配置している。
なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
次に、実施例2の回転電機用同期ロータ1における「貫通穴の作用」について、
図8に基づいて説明する。
【0048】
連続溶接部10を溶接接合した場合に発生する熱は、磁石穴3aと溶接部5との径方向の間の位置に開穴されている2つの貫通穴6により、貫通穴6が1つの場合(実施例1)よりも、磁石穴3a及びロータコア2の外径部への熱の拡散(伝導)が抑えられ、磁石穴3a及びロータコア2の外径部の熱歪変形を抑制することができる。
【0049】
この結果、複数のコアプレート2a間を溶接しても、実施例1よりも、径寸法精度、真円度及び磁石穴3a形状精度が良好な同期ロータ1組立体を形成することができる。
【0050】
加えて、貫通穴6を2つにすることで、貫通穴6が1つの場合よりもその穴径を小さくすることができるため、磁束経路の確保性が高まる。これにより、実施例1よりも磁気回路形成時の影響を小さくすることができる。
なお、実施例1及び実施例2の貫通穴の作用が異なるのみで、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0051】
次に、効果を説明する。
実施例2の回転電機用同期ロータ1にあっては、実施例1の(1)〜(3)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0052】
(4) 前記貫通穴6を2つ(複数)開穴し、前記複数の貫通穴6のうち少なくとも1つの貫通穴6の周方向の中心位置を、前記径方向軸線CLに一致させて配置した。
このため、複数のコアプレート2a間を溶接しても、実施例1よりも、径寸法精度、真円度及び磁石穴3a形状精度が良好な同期ロータ1組立体を形成することができる。加えて、実施例1よりも磁束経路の確保性が高まることにより、実施例1よりも磁気回路形成時の影響を小さくすることができる。
【実施例3】
【0053】
実施例3は、溶接部5の凹面5a及び貫通穴6の変形例である。
図9に基づき実施例3の要部構成を以下に説明する。
【0054】
溶接部5の凹面5aは、
図9に示すように、実線と破線にて示したように平面の形状となっている。
【0055】
貫通穴6は、
図9に示すように、磁石穴3aと溶接部5との径方向の間の位置に開穴されている。その穴は、溶接部5を覆うように3つ形成されている。この3つの貫通穴6の形状は、共に円形状に形成されている。また、この3つの貫通穴6の穴径は、実施例1の貫通穴6の穴径よりも小さくなっている。
【0056】
凸部5b及び3つの貫通穴6のうち中央の貫通穴6aのそれぞれの周方向の中心位置は、
図9に示すように、径方向軸線CLの同一軸線上に配置している。
なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
次に、実施例3の回転電機用同期ロータ1における「貫通穴の作用」について、
図9に基づいて説明する。
【0058】
連続溶接部10を溶接接合した場合に発生する熱は、磁石穴3aと溶接部5との径方向の間の位置に3つの貫通穴6が開穴され、しかもその3つの貫通穴6は溶接部5を覆うように開穴されていることにより、貫通穴6が2つの場合(実施例2)よりも、磁石穴3a及びロータコア2の外径部への熱の拡散(伝導)が抑えられ、磁石穴3a及びロータコア2の外径部の熱歪変形を抑制することができる。
【0059】
この結果、複数のコアプレート2a間を溶接しても、実施例2よりも、径寸法精度、真円度及び磁石穴3a形状精度が良好な同期ロータ1組立体を形成することができる。
【0060】
加えて、貫通穴6を3つにすることで、貫通穴6が1つの場合よりもその穴径を小さくすることができるため、磁束経路の確保性が高まる。これにより、実施例1よりも磁気回路形成時の影響を小さくすることができる。
なお、実施例1及び実施例3の貫通穴の作用が異なるのみで、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0061】
次に、効果を説明する。
実施例3の回転電機用同期ロータ1にあっては、実施例1の(1)〜(3)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0062】
(5) 前記貫通穴6を3つ(複数)開穴し、前記複数の貫通穴6のうち少なくとも1つの貫通穴6の周方向の中心位置を、前記径方向軸線CLに一致させて配置した。
このため、複数のコアプレート2a間を溶接しても、実施例2よりも、径寸法精度、真円度及び磁石穴3a形状精度が良好な同期ロータ1組立体を形成することができる。加えて、実施例1よりも磁束経路の確保性が高まることにより、実施例1よりも磁気回路形成時の影響を小さくすることができる。
【0063】
以上、本発明の回転電機用同期ロータと回転電機用同期ロータの製造方法を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0064】
実施例1〜3では、1枚のコアプレート2aの構成に、磁石穴3a、溶接部5及び貫通穴6のそれぞれを、等間隔に4つずつ形成した。しかしながら、1枚のコアプレート2aの構成は、実施例1〜3に示した構成に限られるものではなく、磁石穴3a、溶接部5及び貫通穴6のそれぞれは等間隔に形成されていればよいので、それぞれ4つよりも少なく形成しても多く形成してもよい。
【0065】
実施例1〜3では、各層を構成するコアプレート2a枚数を3枚とした。しかしながら、各層を構成するコアプレート2a枚数は、実施例1〜3に示した構成に限られるものではなく、3枚よりも少なくしても多くしてもよい。ただし、各層を構成するコアプレート2aの枚数を変更した場合には、円弧の角度θ1及び角度θ2を、各層を構成するコアプレート2aの枚数に合わせて変更する。
【0066】
実施例1〜3では、角度θ2を30°とし、右回りにずらした。しかしながら、角度θ2は、実施例1〜3に示した構成に限られるものではなく、前の層のコアプレート2a間の継ぎ目をまたぐように、次の層が積層されていけばよいので、30°でなくてもよい。また、右回りにずらしたが、左回りにずらしてもよい。
【0067】
実施例1〜3では、溶接部5及び貫通穴6の配置を、径方向軸線CLの同一軸線上に、それらの周方向の中心位置に配置した。しかしながら、溶接部5及び貫通穴6の配置は、実施例1〜3に示した構成に限られるものではない。すなわち、溶接部5及び貫通穴6は、中心点Oと磁石穴3aとを径方向に結ぶ径方向軸線CLの同一軸線上に配置されていればよいので、それらの周方向の中心位置を、径方向軸線CLの同一軸線上に配置しなくてもよい。
【0068】
実施例1〜3では、磁石穴3aの形状を周方向に広がった矩形形状に形成し、その数を径方向軸線CLの同一軸線上に1つとした。しかしながら、磁石穴3aの形状及び数は、実施例1〜3に示した構成に限られるものではない。例えば、その形状は、楕円形状、ひし形形状又は台形形状等でもよいし、その数は、1つの径方向軸線CLに対して2つ以上の穴が開穴していてもよい。
【0069】
実施例1〜3では、溶接部5の凹面5aを曲面又は平面に形成し、その凸部5bの形状を三角形状又は矩形形状に形成した。しかしながら、溶接部5の凹面5a及び凸部5bの形状は、実施例1〜3に示した構成に限られるものではない。例えば、その凹面5aは、曲面及び平面を併せた形状等でもよいし、その凸部5bは、円形状、楕円形状、ひし形形状又は台形形状等でもよい。
【0070】
実施例1〜3では、貫通穴6の形状を円形状に形成し、その数は、磁石穴3aと溶接部5との径方向の間の位置に1〜3つ開穴した。しかしながら、貫通穴6の形状及び数は、実施例1〜3に示した構成に限られるものではない。例えば、適用する永久磁石3及び磁石穴3aに対して、最も磁束経路の確保性が高まるように、貫通穴6の形状及び数を形成してもよい。なお、貫通穴6の大きさ(実施例1〜3では穴径と示した)は、その貫通穴6の形状及び数に合わせて変更してもよい。また、その形状は、矩形形状、楕円形状、ひし形形状又は台形形状等でもよいし、その数は磁石穴3aと溶接部5との径方向の間の位置に4つ以上(複数)の穴が開穴していてもよい。貫通穴6を複数開穴した場合には、少なくとも1つの貫通穴6の周方向の中心位置を、径方向軸線CLに一致させて配置する。
【0071】
実施例1〜3では、ロータシャフト4はロータコア2に対して圧入されることにより、ロータコア2にロータシャフト4が嵌合された。しかしながら、実施例1〜3に示した構成に限られるものではない。例えば、圧入の他に、一般的なキー係合を用いてもよい。すなわち、ロータコア2の内周面2IP及びロータシャフト4の外周面に、各1箇所あるいは数か所のキー溝を形成し、このキー溝にキーを挿入して回り止めしてもよい。