(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971421
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】糸製造装置
(51)【国際特許分類】
D02G 3/16 20060101AFI20160804BHJP
D01F 9/127 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
D02G3/16
D01F9/127
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-528035(P2015-528035)
(86)(22)【出願日】2013年7月22日
(86)【国際出願番号】JP2013069813
(87)【国際公開番号】WO2015011768
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】矢野 史章
(72)【発明者】
【氏名】福原 修一
(72)【発明者】
【氏名】高嶌 弘樹
【審査官】
斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−116632(JP,A)
【文献】
特開2011−153392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00 − 31/14
D01F 9/08 − 9/32
D01H 1/00 − 17/02
D02G 1/00 − 3/48
D02J 1/00 − 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ繊維群を走行させつつ当該カーボンナノチューブ繊維群からカーボンナノチューブ糸を製造する糸製造装置であって、
前記カーボンナノチューブ繊維群の走行と伴に可動し、前記カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる凝集部を備え、
前記凝集部は、その一部に前記カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる溝が設けられていることを特徴とする糸製造装置。
【請求項2】
前記凝集部は、前記カーボンナノチューブ繊維群の走行方向に直交する方向を軸として回転すると共に前記カーボンナノチューブ繊維群を挟む位置に対向配置された一対のローラーであり、
前記溝は、一対の前記ローラーの少なくとも一方の外周部に設けられており、前記ローラーの周方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1記載の糸製造装置。
【請求項3】
前記溝は、一対の前記ローラーのそれぞれに設けられており、断面が円弧形状を呈していることを特徴とする請求項2記載の糸製造装置。
【請求項4】
前記溝は、断面が略半円形形状を呈していることを特徴とする請求項3記載の糸製造装置。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブ繊維群が引き出されるカーボンナノチューブ集合体を支持する支持面を有する支持部を備え、
一対の前記ローラーは、前記カーボンナノチューブ繊維群の走行方向に直交する方向で且つ前記支持部の前記支持面に直交する方向を軸として回転することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項記載の糸製造装置。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブ繊維群の走行方向における前記凝集部の下流側に、当該凝集部により凝集された前記カーボンナノチューブ繊維群を更に凝集させる第2凝集部を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の糸製造装置。
【請求項7】
前記第2凝集部は、外周部に前記カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる溝が設けられたローラー、前記カーボンナノチューブ繊維群に圧縮空気の旋回流によって仮撚りを施す糸製造部、前記カーボンナノチューブ繊維群にその走行に対する抵抗力を作用させつつ前記カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる細管部、及び、前記カーボンナノチューブ繊維群に機械的に撚りを施す撚糸部のいずれかであることを特徴とする請求項6記載の糸製造装置。
【請求項8】
前記第2凝集部は、外周部に前記カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる溝が設けられたローラーであり、
前記第2凝集部に設けられた前記溝は、前記凝集部に設けられた前記溝よりも断面積が小さいことを特徴とする請求項6記載の糸製造装置。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブ繊維群の走行方向において、外周部に前記カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる溝が設けられたローラー、前記カーボンナノチューブ繊維群に圧縮空気の旋回流によって仮撚りを施す糸製造部、前記カーボンナノチューブ繊維群にその走行に対する抵抗力を作用させつつ前記カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる細管部、及び、前記カーボンナノチューブ繊維群に機械的に撚りを施す撚糸部のいずれかで構成された第2凝集部の下流側において、当該第2凝集部で凝集された前記カーボンナノチューブ繊維群を前記凝集部で更に凝集させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の糸製造装置。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブ繊維群の走行方向における前記凝集部の上流側に、前記カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる第2凝集部を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の糸製造装置。
【請求項11】
前記第2凝集部は、外周部に前記カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる溝が設けられたローラー、前記カーボンナノチューブ繊維群に圧縮空気の旋回流によって仮撚りを施す糸製造部、前記カーボンナノチューブ繊維群にその走行に対する抵抗力を作用させつつ前記カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる細管部、及び、前記カーボンナノチューブ繊維群に機械的に撚りを施す撚糸部のいずれかであることを特徴とする請求項10記載の糸製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ糸を製造する糸製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糸製造装置として、カーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群を凝集させる一対のローラーと、一対のローラーによって凝集させられたカーボンナノチューブ繊維群に撚りを掛ける撚掛手段と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−116632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の糸製造装置においては、カーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群を一対のローラーにより挟持して凝集させている。ここで、カーボンナノチューブの繊維は、凝集し易い特性を有しており、一度凝集するとその形状を保持する。そのため、従来の糸製造装置では、一対のローラーを通過したカーボンナノチューブ繊維群が帯状(扁平な形状)に凝集し、所望する形状のカーボンナノチューブ糸を得ることが難しかった。
【0005】
本発明は、所望する形状のカーボンナノチューブ糸を得ることができる糸製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る糸製造装置は、カーボンナノチューブ繊維群を走行させつつ当該カーボンナノチューブ繊維群からカーボンナノチューブ糸を製造する糸製造装置であって、カーボンナノチューブ繊維群の走行と伴に可動し、カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる凝集部を備え、凝集部は、その一部にカーボンナノチューブ繊維群を凝集させる溝が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この糸製造装置では、凝集部の一部に、カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる溝が設けられている。これにより、糸製造装置では、溝の形状を所望するカーボンナノチューブ糸の断面形状とすることにより、所望する形状のカーボンナノチューブ糸を得ることができる。また、凝集部がカーボンナノチューブ繊維群の走行と伴に可動するため、カーボンナノチューブ繊維群への抵抗を軽減しつつ凝集できる。
【0008】
一実施形態においては、凝集部は、カーボンナノチューブ繊維群の走行方向に直交する方向を軸として回転すると共にカーボンナノチューブ繊維群を挟む位置に対向配置された一対のローラーであり、溝は、一対のローラーの少なくとも一方の外周部に設けられており、ローラーの周方向に沿って形成されていてもよい。これにより、糸製造装置では、凝集部において、カーボンナノチューブ繊維群を凝集させると共に、カーボンナノチューブ繊維群を走行方向に沿って送る(走行させる)ことができる。また、一対のローラーを離間及び近接させる操作により、カーボンナノチューブ繊維群を容易に通すことができる。
【0009】
一実施形態においては、溝は、一対のローラーのそれぞれに設けられており、断面が円弧形状を呈していてもよい。この場合、溝は、断面が略半円形形状を呈していてもよい。これにより、糸製造装置では、断面が略円形形状のカーボンナノチューブ糸を製造することができる。
【0010】
一実施形態においては、カーボンナノチューブ繊維群が引き出されるカーボンナノチューブ集合体を支持する支持面を有する支持部を備え、一対のローラーは、カーボンナノチューブ繊維群の走行方向に直交する方向で且つ支持部の支持面に直交する方向を軸として回転してもよい。カーボンナノチューブ繊維群は、物体と接触したときに凝集するため、ファーストタッチが重要となる。支持部の支持面に支持されたカーボンナノチューブ集合体は、支持面に沿って帯状に引き出される。このような構成に対して、糸製造装置では、支持部の支持面に垂直に直交する方向を軸としてローラーが回転する。このとき、ローラーの溝は、支持面の面方向に沿っている。これにより、カーボンナノチューブ集合体から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群は、ファーストタッチが溝となり、そのまま溝により凝集される。したがって、糸製造装置では、カーボンナノチューブ繊維群を良好に凝集することができ、所望する形状のカーボンナノチューブ糸をより良好に得ることができる。
【0011】
一実施形態においては、カーボンナノチューブ繊維群の走行方向における凝集部の下流側に、当該凝集部により凝集されたカーボンナノチューブ繊維群を更に凝集させる第2凝集部を備えていてもよい。これにより、糸製造部では、凝集部によって凝集されたカーボンナノチューブ繊維群を更に凝集させたカーボンナノチューブ糸を得ることができる。
【0012】
一実施形態においては、第2凝集部は、外周部にカーボンナノチューブ繊維群を凝集させる溝が設けられたローラー、カーボンナノチューブ繊維群に圧縮空気の旋回流によって仮撚りを施す糸製造部、カーボンナノチューブ繊維群にその走行に対する抵抗力を作用させつつカーボンナノチューブ繊維群を凝集させる細管部、及び、カーボンナノチューブ繊維群に機械的に撚りを施す撚糸部のいずれかであってもよい。
【0013】
一実施形態においては、第2凝集部は、外周部にカーボンナノチューブ繊維群を凝集させる溝が設けられたローラーであり、第2凝集部に設けられた溝は、凝集部に設けられた溝よりも断面積が小さくてもよい。これにより、糸製造装置では、凝集部の溝で凝集されたカーボンナノチューブ繊維群を、第2凝集部の溝により更に凝集させることができる。
【0014】
一実施形態においては、カーボンナノチューブ繊維群の走行方向において、外周部にカーボンナノチューブ繊維群を凝集させる溝が設けられたローラー、カーボンナノチューブ繊維群に圧縮空気の旋回流によって仮撚りを施す糸製造部、カーボンナノチューブ繊維群にその走行に対する抵抗力を作用させつつカーボンナノチューブ繊維群を凝集させる細管部、及び、カーボンナノチューブ繊維群に機械的に撚りを施す撚糸部のいずれかで構成された第2凝集部の下流側において、当該第2凝集部で凝集されたカーボンナノチューブ繊維群を凝集部で更に凝集させてもよい。これにより、糸製造装置では、カーボンナノチューブ繊維群を更に凝集させることができる。
【0015】
一実施形態においては、カーボンナノチューブ繊維群の走行方向における凝集部の上流側に、カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる第2凝集部を備えていてもよい。この場合、第2凝集部は、外周部にカーボンナノチューブ繊維群を凝集させる溝が設けられたローラー、カーボンナノチューブ繊維群に圧縮空気の旋回流によって仮撚りを施す糸製造部、カーボンナノチューブ繊維群にその走行に対する抵抗力を作用させつつカーボンナノチューブ繊維群を凝集させる細管部、及び、カーボンナノチューブ繊維群に機械的に撚りを施す撚糸部のいずれかであってもよい。これにより、糸製造部では、第2凝集部及び凝集部によって、カーボンナノチューブ繊維群を凝集させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、所望する形状のカーボンナノチューブ糸を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る糸製造装置を横から見た図である。
【
図3】
図3は、フロントローラーを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、フロントローラーの一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、第1実施形態に係る糸製造装置を示す図である。
図2は、
図1に示す糸製造装置の一部を示す斜視図である。各図に示されるように、糸製造装置1は、カーボンナノチューブ繊維群(以下、「CNT繊維群」という)Fを走行させつつ当該CNT繊維群Fからカーボンナノチューブ糸(以下、「CNT糸」という)Yを製造する装置である。
【0020】
糸製造装置1は、基板支持部3と、フロントローラー(凝集部)5a,5bと、糸製造部(第2凝集部)7と、ニップローラー(第2凝集部)9a,9bと、巻取装置11と、を備えている。基板支持部3、フロントローラー5a,5b、糸製造部7、ニップローラー9a,9b及び巻取装置11は、この順序で所定線上に配置されており、CNT繊維群Fは、基板支持部3から巻取装置11に向かって走行させられる。なお、CNT繊維群Fは、カーボンナノチューブからなる繊維が複数集合したものである。CNT糸Yは、CNT繊維群Fに仮撚りが掛けられたて凝集したものである。
【0021】
基板支持部3は、CNT繊維群Fが引き出されるカーボンナノチューブ形成基板(以下、「CNT形成基板」という)Sを保持した状態で支持する。CNT形成基板Sは、カーボンナノチューブフォレスト(carbon nanotube forest)、或いは、カーボンナノチューブの垂直配向構造体等と称されるものであり、化学気相成長法等によって基板B上に高密度且つ高配向にカーボンナノチューブ(例えば、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ等)が形成されたカーボンナノチューブ集合体である。基板Bとしては、例えば、プラスチック基板、ガラス基板、シリコン基板、金属基板等が用いられる。なお、CNT糸Yの製造開始時、CNT形成基板Sの交換時等には、マイクロドリルと称される治具によって、CNT形成基板SからCNT繊維群Fを引き出すことができる。基板支持部3は、CNT形成基板Sが載置される平坦な載置面(支持面)3aを有する。
【0022】
フロントローラー5a,5bは、CNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fを凝集させる。
図3は、フロントローラーを示す斜視図である。
図4は、フロントローラーの正面図である。フロントローラー5a,5bは、円柱状を成している。フロントローラー5a,5bは、走行するCNT繊維群Fを挟む位置に対向して配置されている。フロントローラー5aの外周面とフロントローラー5bの外周面とは、接触している。フロントローラー5a,5bは、CNT繊維群Fの走行と伴に可動する。具体的には、フロントローラー5a,5bは、CNT繊維群Fの走行方向に直交し、且つ、基板支持部3の載置面3aに垂直な方向に沿った軸AX1,AX2を中心に回転する。
【0023】
本実施形態では、フロントローラー5aは、例えば図示しない駆動源(モーター等)により駆動されて回転する。フロントローラー5bは、接触するフロントローラー5aの回転に従動して回転する。なお、フロントローラー5a,5bのいずれも駆動源により駆動されて回転する構成であってもよい。フロントローラー5a,5bの回転の同期の観点からは、一方のローラーが他方のローラーに従動して回転する構成であることが好ましい。また、フロントローラー5a,5bは、駆動源により駆動されずに回転自在に設けられていてもよい。本実施形態では、フロントローラー5a,5bは、例えば樹脂、金属等の材料により形成されている。フロントローラー5a,5bの材料は特に限定されるものではない。
【0024】
フロントローラー5a,5bのそれぞれには、凹状の溝6が設けられている。溝6は、フロントローラー5a,5bの周方向に沿って、全周に亘って形成されている。溝6は、フロントローラー5a,5bの軸方向において、略中央部に設けられている。溝6の内周面6aは、フロントローラー5a,5bが配置されたときに、CNT繊維群Fを走行方向に沿って搬送する搬送面である。
図4及び
図5に示されるように、本実施形態では、溝6は、断面が半円形形状(円弧形状)を呈している。つまり、
図4に示すように、フロントローラー5a,5bが配置された状態では、溝6,6により、正面視において略円形形状の空間Hが画成される。そのため、フロントローラー5a,5bを通過するCNT繊維群Fは、断面が略円形形状に凝集される。
【0025】
糸製造部7は、圧縮空気(エアー)の旋回流によってCNT繊維群Fに仮撚りを施して凝集させる。すなわち、糸製造部7は、フロントローラー5a,5bにより凝集されたCNT繊維群Fを更に凝集させる。
図6は、糸製造部を示す図である。
図6では、ノズル本体部20を断面で示している。
図6に示されるように、糸製造部7は、ノズル本体部20と、第1ノズル部30と、第2ノズル部40と、を備えている。第1ノズル部30及び第2ノズル部40は、ノズル本体部20に設けられており、ノズル本体部20、第1ノズル部30及び第2ノズル部40は、ユニット化されている。
【0026】
ノズル本体部20は、CNT繊維群Fを挿通させると共に、第1ノズル部30及び第2ノズル部40を保持するハウジングである。ノズル本体部20は、例えば真鍮等の材料により形成されている。ノズル本体部20には、第1ノズル部30及び第2ノズル部40が配置されている。
【0027】
第1ノズル部30は、CNT繊維群Fの走行方向において一端側(糸製造部7が
図1に示されるように配置されたときに、CNT繊維群Fの走行方向の上流側となる位置)に設けられている。第2ノズル部40は、CNT繊維群Fの走行方向において他端側(糸製造部7が
図1に示されるように配置されたときに、第1ノズル部30の下流側となる位置)に設けられている。
【0028】
第1ノズル部30と第2ノズル部40との間には、空気逃し部22が設けられている。空気逃し部22は、第1ノズル部30において発生した第1旋回流及び第2ノズル部40において発生した第2旋回流を逃す部分である。空気逃し部22は、ノズル本体部20の一部を切り欠いた切欠き部とされている。空気逃し部22は、CNT繊維群Fの走行路を含んで設けられている。第1ノズル部30と第2ノズル部40との間のCNT繊維群Fの走行路は、空気逃し部22により開放されている一方、ノズル本体部20により一部が囲われている。
【0029】
ノズル本体部20には、第1流路部24と、第2流路部26と、が設けられている。第1流路部24は、第1ノズル部30に圧縮空気を供給する流路である。第2流路部26は、第2ノズル部40に圧縮空気を供給する流路である。
【0030】
第1ノズル部30は、第1旋回流を発生させてCNT繊維群Fにバルーンを形成し、CNT繊維群Fに撚りを施す。第1ノズル部30は、例えばセラミックスにより形成されている。第1ノズル部30は、CNT繊維群Fを挿通させる共に、第1旋回流を発生させる空間を画成する筒状部32を有している。筒状部32は、CNT繊維群Fの走行方向に沿って設けられている。
【0031】
第2ノズル部40は、第2旋回流を発生させてCNT繊維群Fにバルーンを形成し、CNT繊維群Fに撚りを施す。第2ノズル部40は、例えばセラミックにより形成されている。第2ノズル部40には、CNT繊維群Fを挿通させると共に、第2旋回流を発生される空間を画成する筒状部42を有している。筒状部42は、CNT繊維群Fの走行方向に沿って設けられている。
【0032】
ニップローラー9a,9bは、糸製造部7により仮撚りされて凝集されたCNT糸Yを搬送する。ニップローラー9a,9bは、走行するCNT繊維群Fを挟む位置に対向して一対配置されている。ニップローラー9a,9bは、糸製造部7から伝播するCNT繊維群Fの撚り(バルーン)を止める。ニップローラー9a,9bには、フロントローラー5a,5bと同様に、溝(図示しない)が設けられている。この溝は、フロントローラー5a,5bの溝と同様の構成を有している。ニップローラー9a,9bの溝は、フロントローラー5a,5bの溝6よりも断面積が小さい形状であることが好ましい。糸製造部7により仮撚りされたCNT繊維群Fは、ニップローラー9a,9bの溝により更に凝集され、最終的な製造物であるCNT糸Yとされる。
【0033】
巻取装置11は、糸製造部7によって仮撚りされてニップローラー9a,9bを通過したCNT糸Yをボビンに巻き取る。
【0034】
続いて、糸製造装置1におけるCNT糸Yの製造方法について説明する。最初に、CNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fは、フロントローラー5a,5bの溝6により凝集される。次に、フロントローラー5a,5bにより凝集されたCNT繊維群Fは、糸製造部5に導入され、糸製造部5の第2ノズル部40の第2旋回流により撚りが開始される。第2旋回流により撚りが施され、凝集したCNT繊維群Fは、第1ノズル部30の第1旋回流により撚りが戻される。また、第1ノズル部30の第1旋回流により、第2旋回流により凝集されなかったCNT繊維群Fの一部(外面の部分)が凝集した表面に巻き付けられる。これにより、糸製造部5によりCNT繊維群Fを凝集させる。糸製造部5により撚りが施されたCNT繊維群Fは、ニップローラー9a,9bを通過してCNT糸Yとなり、巻取装置11によりボビンに巻き取られる。糸製造装置1では、例えば数十m/minでCNT糸Yが製造される。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係る糸製造装置1では、一対のフロントローラー5a,5bの外周部に、CNT繊維群Fを凝集させる溝6が設けられている。これにより、糸製造装置1では、溝6の形状を所望するCNT糸Yの断面形状とすることにより、所望する形状のCNT糸Yを得ることができる。また、フロントローラー5a,5bがCNT繊維群Fの走行と伴に回転するため、CNT繊維群Fへの抵抗を軽減しつつ凝集できる。
【0036】
本実施形態では、凝集部としてフロントローラー5a,5bを用いている。これにより、糸製造装置1では、フロントローラー5a,5bにおいて、CNT繊維群Fを凝集させると共に、CNT繊維群Fを走行方向に沿って送る(走行させる)ことができる。また、一対のフロントローラー5a,5bを離間及び近接させる操作により、CNT繊維群Fを容易に通すことができる。
【0037】
上記のフロントローラー5a,5bに設けられる溝6は、断面が略半円形形状を呈している。これにより、本実施形態の糸製造装置1では、断面が略円形形状のCNT糸Yを製造することができる。
【0038】
本実施形態では、CNT形成基板Sは、基板支持部3の載置面3aに載置されており、CNT繊維群Fは、載置面3aの面方向に沿って引き出される。このとき、
図2に示すように、CNT繊維群Fは、帯状に引き出されている。ここで、CNT繊維群Fは、物体と接触したときに凝集するため、ファーストタッチが重要となる。これについて、本実施形態では、載置面3aに垂直に直交する方向を軸としてフロントローラー5a,5bが回転する。このとき、フロントローラー5a,5bの溝6は、載置面3aの面方向に沿っている。これにより、CNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fは、ファーストタッチが溝6となり、そのまま溝6により凝集される。つまり、CNT繊維群Fは、溝6以外の部分に当たることなく凝集される。したがって、糸製造装置1では、CNT繊維群Fを良好に凝集することができ、所望する形状のCNT糸Yをより良好に得ることができる。
【0039】
本実実施形態では、CNT繊維群Fの走行方向におけるフロントローラー5a,5bの下流側に、フロントローラー5a,5bにより凝集されたCNT繊維群Fに仮撚りを施す(CNT繊維群Fを更に凝集させる)糸製造部7が設けられている。これにより、糸製造装置1では、フロントローラー5a,5bにより所望する形状に凝集されたCNT繊維群Fに旋回流により仮撚りが施されるため、所望する形状を有し且つ仮撚りにより更に凝集されたCNT糸Yを得ることができる。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、CNT繊維群Fの供給源として、CNT形成基板Sに替えて、カーボンナノチューブを連続的に合成してCNT繊維群Fを供給する浮遊触媒装置等を用いてもよい。
【0041】
上記実施形態では、CNT形成基板Sから引き出されたCT繊維群Fを凝集させる凝集部としてフロントローラー5a,5bを一例に説明したが、凝集部はこれに限定されない。この凝集部としては、溝を有すると共に、CNT繊維群Fの走行方向と伴に可動するベルト等であってもよい。また、ローラーが千鳥状に設けられていてもよい。
【0042】
上記実施形態では、フロントローラー5a,5bの溝6の形状を半円形形状としているが、溝の形状はこれに限定されない。溝の形状は、所望するCNT糸Yの断面形状に応じて適宜設定されればよく、例えば三角形形状等であってもよい。
【0043】
上記実施形態では、フロントローラー5a,5bのいずれにも溝6が設けられている構成を一例に説明したが、溝はフロントローラー5a,5bのいずれか一方に設けられていてもよい。この場合、溝の形状が所望するCNT糸Yの断面形状であればよい。
【0044】
上記実施形態では、ニップローラー9a,9bに溝が設けられる構成を一例に説明したが、ニップローラー9a,9bには溝が設けられていなくてもよい。また、上記実施形態では、ニップローラー9a,9bの溝が、フロントローラー5a,5bの溝6よりも断面積が小さい形状を一例に説明したが、ニップローラー9a,9bの溝は、フロントローラー5a,5bの溝6と同じ大きさであってもよい。
【0045】
上記実施形態では、フロントローラー5a,5bの下流側に設けられる第2凝集部として糸製造部7を一例に説明したが、この凝集部としては、CNT繊維群Fにその走行に対する抵抗力を作用させつつCNT繊維群Fを凝集させる細管部、又は、機械的にCNT繊維群Fに撚りを施すフライヤ式の撚糸部等であってもよい。
【0046】
上記実施形態では、ノズル本体部20に第1ノズル部30及び第2ノズル部40が配置さている構成を一例に説明したが、ノズル本体部20に形成される空間をそれぞれ第1ノズル部及び第2ノズル部としてもよい。すなわち、ノズル本体部20において、第1ノズル部30及び第2ノズル部40に相当する構成が一体に形成されていてもよい。
【0047】
上記実施形態に加えて、ニップローラー9a,9bの下流側に、更に凝集部を設けてもよい。
【0048】
上記実施形態に加えて、CNT繊維群Fの走行方向におけるロントローラー5a,5bの上流側に、更に凝集部(第2凝集部)を設けてもよい。この凝集部としては、CNT繊維群Fにその走行に対する抵抗力を作用させつつCNT繊維群Fを凝集させる細管部、又は、機械的にCNT繊維群Fに撚りを施すフライヤ式の撚糸部等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、所望する形状のカーボンナノチューブ糸を得ることができる糸製造装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1…糸製造装置、3…基板支持部(支持部)、3a…載置面(支持面)、5a,5b…フロントローラー(凝集部)、7…糸製造部(第2凝集部)、9a,9b…ニップローラー(第2凝集部)、F…CNT繊維群(カーボンナノチューブ繊維群)、S…CNT形成基板(カーボンナノチューブ集合体)、Y…CNT糸(カーボンナノチューブ糸)。