(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0017】
(実施形態1〜4)
以下
図1〜23を参照して、具体的に説明する。
図1〜4は実施形態1〜4を模式的に示すものである。
図5〜10は実施形態1の構造を具体的に示すものである。同様に、
図11〜15は実施形態2の構造を具体的に示し、
図16〜23は実施形態3の構造を具体的に示すものである。
図2において、軸方向DAは、ステアリングシャフトの軸方向を示し、前方DFおよび後方DBは、ステアリング装置を車体に取り付けた場合の車体の前方および後方を示している。
【0018】
実施形態1は、雄ステアリング軸106と雌ステアリング軸105からなるステアリングシャフトを支持するステアリングコラム装置120であって、ステアリングコラムはインナーコラム121とアウターコラム122からなり、テレスコピック調整可能、及び、衝撃吸収可能に軸方向にストロークする機能を備えており、車体に取り付けられるチルトブラケット123を介してチルト調整可能であり、チルトブラケット123に備えられた締付機構129でアウターコラム122を締め付けることでインナーコラム121を保持するものであって、締付機構129の摩擦面を増加させるテレスコ多板125を有しており、テレスコ多板125はコラム(121,122)の底面側、かつ、アウターコラム122のスリット間に設けた固定ブラケット124に固定され、インナーコラム121の孔と固定ブラケット124の孔を一致させてせん断ピンを挿通することで、固定ブラケット124からインナーコラム121が離脱可能に支持されていることを特徴とするステアリングコラム装置120である。
【0019】
実施形態2は、雄ステアリング軸106と雌ステアリング軸105からなるステアリングシャフトを支持するステアリングコラム装置120であって、ステアリングコラム装置120はインナーコラム121とアウターコラム122からなり、テレスコピック動作及び衝撃吸収可能機能を有し、相対的に軸方向にストロークするものであり、車体に取り付けられるチルトブラケット123を介してチルト調整可能に車体に取り付けられ、チルトブラケット123は締付機構129を備えており、アウターコラム122を締め付けることでインナーコラム121を保持するものであって、アウターコラム122はスリットを有し、スリットに対し左右方向から締付機構129の作用により押圧する押圧ブラケット1232でインナーコラム121を包持しており、このスリットの間に、インナーコラム121に離脱可能に取り付けられた固定板としての機能を有するカム及びギヤ機構148を配置し、締付機構129を構成するチルトレバー127の回転により、チルトレバー中央部のカムであるカムロック機構133を回転させることで、チルトボルト中央部153に形成されたカム部を固定板に下方から上方に向かって押し付け、保持する締付機構を有することを特徴とするステアリングコラム装置120である。
【0020】
実施形態3は、ステアリングシャフトを支持するステアリングコラム装置であって、ステアリングコラムはインナーコラムとアウターコラムからなり、テレスコピック調整機能及び衝撃吸収可能に軸方向にストロークするものであって、車体に取付られるチルトブラケットを備え、チルト調整可能に車体に取り付けられるものであって、締付機構により、チルトブラケットとアウターコラムと摩擦板としてのテレスコ多板とを締め付けることで、アウターコラムに内嵌されたインナーコラムを保持するものであって、アウターコラムはスリットを有し、締付機構により、スリットに対し左右方向から押圧する押圧ブラケットでインナーコラムを包持し、このスリット間にインナーコラムに離脱可能に取り付けられた摩擦板としての固定板であるインナープレート158を配置し、さらに摩擦板を固定する固定ブラケットとの間を樹脂の射出成形にて形成したせん断ピン137,138でインナーコラムに結合固定したことを特徴とするステアリングコラム装置である。
【0021】
実施形態4は、実施形態1〜3の何れかに記載のステアリングコラム装置を備えるステアリング装置である。
【0022】
実施形態4のステアリング装置は、車両の操向装置として好適に使用できる。
【0023】
(実施形態5)
図24は、実施形態5に係るステアリング装置の周辺を模式的に示す図である。
図25は、実施形態5に係るステアリング装置を底面側から見た斜視図である。
図24および
図25を用いて、実施形態5に係るステアリング装置の概要を説明する。また、以下の説明において、ステアリング装置100を車体VBに取り付けた場合の車体VBの前方は、単に前方と記載され、ステアリング装置100を車体VBに取り付けた場合の車体VBの後方は、単に後方と記載される。
図24において、前方は、図中の左側であり、後方は、図中の右側である。
【0024】
(ステアリング装置)
ステアリング装置100は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、ユニバーサルジョイント84と、ロアシャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、を備え、ピニオンシャフト87と、に接合している。
【0025】
ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを含む。入力軸82aは、一方の端部がステアリングホイール81に連結され、他方の端部が出力軸82bに連結される。出力軸82bは、一方の端部が入力軸82aに連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント84に連結される。実施形態5では、入力軸82a及び出力軸82bは、SPCC(Steel Plate Cold Commercial)等の一般的な鋼材等から形成される。
【0026】
ロアシャフト85は、一方の端部がユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。ピニオンシャフト87は、一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。
【0027】
また、ステアリング装置100は、入力軸82aを回転可能に支持する筒状のインナーコラム51と、インナーコラム51の少なくとも一部が内側に挿入される筒状のアウターコラム54と、を含むステアリングコラム50を備える。インナーコラム51は、アウターコラム54よりも後方側に配置されている。以下の説明において、インナーコラム51の軸方向およびアウターコラム54の軸方向は、適宜単に軸方向と記載される。
【0028】
ステアリング装置100は、車体側部材13に固定されてアウターコラム54を支持するアウターコラムブラケット52を備える。アウターコラムブラケット52は、車体側部材13に固定される取付板部52bと、取付板部52bに一体に形成された枠状支持部52aと、を備えている。アウターコラムブラケット52の取付板部52bは、例えば取付孔52hを有しており、取付孔52hおよびボルト等の固定部材を用いて車体側部材13に固定される。アウターコラムブラケット52の枠状支持部52aは、アウターコラム54の両側に配置され、アウターコラム54を締め付けている。また、枠状支持部52aには、車体VBの上下方向に長い長穴であるチルト調整孔23hが設けられている。
【0029】
また、アウターコラム54は、前方側端部に設けられるピボットブラケット55を有する。ピボットブラケット55は、回転軸55aを中心として回転可能に車体側部材12に支持されている。回転軸55aは、例えば水平方向に平行である。これにより、アウターコラム54は、鉛直方向に揺動可能に支持されている。
【0030】
図26は、
図24におけるd−d断面を示す図である。
図27は、
図26におけるe−e断面を示す図である。
図28は、実施形態5に係るステアリング装置の底面を示す図である。
図26に示すように、アウターコラム54は、2つのロッド貫通部31と、スリット54sと、を有する。ロッド貫通部31は、インナーコラム51の外周面から径方向外側に突出する部分であり、
図27に示すように丸孔であるロッド貫通孔31hを有する。径方向は、軸方向に対して直交する方向であり、以下の説明においても同様の意味で用いられる。2つのロッド貫通部31が有するそれぞれのロッド貫通孔31hは、径方向に対向している。また、ロッド貫通部31の一部は、枠状支持部52aと対向している。ロッド33は、2つのロッド貫通孔31hを貫通すると共に枠状支持部52aのチルト調整孔23hを貫通し、操作レバー53と連結されている。
【0031】
また、スリット54sは、インナーコラム51の挿入側の一端を切り欠いた長穴であって、アウターコラム54の外周面において2つのロッド貫通部31の間の位置に設けられている。アウターコラム54は、スリット54sを有するので、締め付けられると内径が小さくなる。これにより、アウターコラム54が締め付けられている状態では、アウターコラム54がインナーコラム51を覆う部分において、アウターコラム54の内周面とインナーコラム51の外周面とは接触している。このため、アウターコラム54とインナーコラム51との間に摩擦力が生じている。また、スリット54sの軸方向の両端が塞がれていてもよい。すなわち、スリット54sは閉構造であってもよい。
【0032】
図26に示すように、ステアリング装置100は、第1テレスコ摩擦板21と、第2テレスコ摩擦板22と、を有する。第1テレスコ摩擦板21は、軸方向を長手方向とする長穴であるテレスコ調整孔21hを有する板状部材である。第1テレスコ摩擦板21は、例えば、枠状支持部52aとロッド貫通部31との間の位置に2つずつ重ねて配置される。第2テレスコ摩擦板22は、例えば、板材を曲げて形成された部材であって、軸方向から見て略U字形状である。第2テレスコ摩擦板22は、2つの第1テレスコ摩擦板21の間に配置される2つの摩擦部22aと、2つの摩擦部22aを連結する連結部22bと、連結部22bに設けられる屈曲部22cと、を含む。なお、第1テレスコ摩擦板21は、必ずしも枠状支持部52aとロッド貫通部31との間の位置に配置されていなくてもよく、第1テレスコ摩擦板21とロッド貫通部31とで枠状支持部52aを挟むように配置されていてもよい。
【0033】
摩擦部22aは、丸孔であるロッド貫通孔22hを有する。ロッド33は、テレスコ調整孔21hおよびロッド貫通孔22hを貫通している。連結部22bは、2つの摩擦部22aを連結して一体にすることで、摩擦部22aを2つの第1テレスコ摩擦板21の間に配置する作業を容易にしている。また、連結部22bは、屈曲部22cを有することで、たわんだ状態を保つことができる。これにより、連結部22bは、アウターコラムブラケット52の締め付け状態が変化して2つの摩擦部22a同士の距離が変化した場合でも、摩擦部22aを引っ張りにくくなっている。このため、摩擦部22aが連結部22bに引っ張られることによって摩擦部22aと第1テレスコ摩擦板21との間に隙間が生じる事態が抑制されている。
【0034】
枠状支持部52aが締め付けられると、第1テレスコ摩擦板21および第2テレスコ摩擦板22の摩擦部22aは、枠状支持部52aによってアウターコラム54のロッド貫通部31に押し付けられる。これにより、枠状支持部52aと第1テレスコ摩擦板21との間、第1テレスコ摩擦板21と第2テレスコ摩擦板22の摩擦部22aとの間、第1テレスコ摩擦板21とロッド貫通部31との間においてそれぞれ摩擦力が生じる。このため、第1テレスコ摩擦板21および第2テレスコ摩擦板22を有さない場合に比較して、摩擦力が生じる面積が増加する。枠状支持部52aは、第1テレスコ摩擦板21および第2テレスコ摩擦板22によってより強固にアウターコラム54を締め付けることができる。
【0035】
また、操作レバー53が回転させられると、枠状支持部52aに対する締め付け力が緩められ、枠状支持部52aとアウターコラム54との間の摩擦力がなくなるまたは小さくなる。これにより、アウターコラム54のチルト位置の調整が可能となる。また、操作レバー53が回転させられると、枠状支持部52aに対する締め付け力が緩められ、アウターコラム54のスリット54sの幅が大きくなる。これにより、アウターコラム54がインナーコラム51を締め付ける力がなくなるため、インナーコラム51が摺動する際の摩擦力がなくなる。これにより、操作者は、操作レバー53を回転させた後、ステアリングホイール81を介してインナーコラム51を押し引きすることで、テレスコ位置を調整することができる。
【0036】
図27および
図28に示すように、ステアリング装置100は、インナーコラムブラケット4を備える。
図29は、実施形態5に係るインナーコラムブラケットの斜視図である。
図29に示すように、インナーコラムブラケット4は、例えば、腕部41と、差込部42と、首部44と、脚部43と、を含む。例えば、腕部41は、
図28に示すように、アウターコラム54の両側で対向する2組の第1テレスコ摩擦板21を接続する棒状の部分である。差込部42は、腕部41の両端に設けられ、第1テレスコ摩擦板21に設けられた孔に差し込まれる部分である。差込部42は、腕部41よりも細く形成されている。首部44は、腕部41の一部から腕部41の長手方向に対して直交方向に向かって突出する部分である。脚部43は、首部44の腕部41とは反対側の端部に設けられる板状の部分であって、インナーコラム51に接触している。
図29に示すように、脚部43のインナーコラム側表面43bは、インナーコラム51の外周面の形状に沿った形状にされている。
【0037】
インナーコラムブラケット4は、
図28に示すように、アウターコラム54の両側に配置された第1テレスコ摩擦板21に連結されている。インナーコラムブラケット4は、差込部42が第1テレスコ摩擦板21に設けられた孔に差し込まれることによって、第1テレスコ摩擦板21に支持されている。また、アウターコラム54の両側に配置される第1テレスコ摩擦板21は、インナーコラムブラケット4の腕部41を挟んで対向している。また、インナーコラムブラケット4は、脚部43でインナーコラム51に連結されている。
【0038】
インナーコラムブラケット4とインナーコラム51とを離脱可能に連結するため、
図27に示すようにインナーコラム51には第1孔51hが開けられ、脚部43には第2孔43hが開けられている。第1孔51hと第2孔43hとは、連通している。例えば実施形態5において、第1孔51hおよび第2孔43hは、それぞれ2つずつ設けられている。第1孔51hと第2孔43hとに跨る位置に連結部材Mが挿入されることで、インナーコラムブラケット4の脚部43とインナーコラム51とが離脱可能に連結されている。また、第1孔51hおよび第2孔43hは、アウターコラム54の両側に配置されたそれぞれの第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置される。
【0039】
また、インナーコラムブラケット4は、少なくとも一部がアウターコラム54のスリット54sに嵌まるように配置されている。具体的には、インナーコラムブラケット4の脚部43がスリット54sの内壁に対向するように嵌まっている。
【0040】
実施形態5において、連結部材Mは、樹脂部材であって、例えばポリアセタールで形成されている。樹脂部材である連結部材Mが第1孔51hと第2孔43hとに跨る位置に充填されて固まることで、インナーコラムブラケット4の脚部43とインナーコラム51とが連結される。
【0041】
図30は、実施形態5に係るインナープレートを遮蔽面側から見た斜視図である。
図31は、実施形態5に係るインナープレートを裏面側から見た斜視図である。ステアリング装置100は、第1孔51hおよび第2孔43hに充填される連結部材Mがインナーコラム51の内側に流出しないように、インナーコラム51の内周面にインナープレート6を備える。インナープレート6は、例えば、インナーコラム51の内周面の形状に沿った形状の板状部材である。インナープレート6は、インナーコラム51の内周面に設けられ第1孔51hの内側を覆う。インナープレート6は、インナーコラム51の内周面に対向する遮蔽面61に、突出部63と、凹部64と、を有する。
【0042】
突出部63は、例えば、遮蔽面61に対して垂直方向に向かって環状に隆起している。例えば、当該環状に隆起している部分の内側は、裏面62に向かって貫通する孔になっている。
図27に示すように、突出部63は、インナーコラム51に設けられた嵌合孔51haに嵌められる。例えば、インナープレート6は、突出部63が嵌合孔51haに加締められることによってインナーコラム51に固定される。なお、インナープレート6は、突出部63が嵌合孔51haに圧入されることによってインナーコラム51に固定されていてもよい。
【0043】
凹部64は、例えば、プレス加工により形成されている。このため、
図31に示すように、凹部64の裏側の部分において突出部64bが形成されている。凹部64は、
図27に示すように、第1孔51hに対向する位置に配置される。実施形態5において、凹部64は、1つであって、2つの第1孔51hに対向している。これにより、凹部64は、2つの第1孔51hを連通させている。
【0044】
インナーコラムブラケット4とインナーコラム51とを連結するときは、凹部64が2つの第1孔51hに対向している状態で、第2孔43h側から連結部材Mが充填される。第2孔43h側から充填された連結部材Mは、第2孔43h、第1孔51hおよび凹部64に充填されたあと固まる。これにより、凹部64で固まった連結部材Mが抜け止めになるので、連結部材Mが第1孔51hおよび第2孔43hから脱落する事態が抑制される。
【0045】
また、例えば連結部材Mは、凹部64からはみ出すように充填される。連結部材Mが凹部64からはみ出すことで、インナープレート6の遮蔽面61とインナーコラム51との間の隙間が連結部材Mで埋められる。これにより、インナープレート6のガタつきが抑制される。
【0046】
また、連結部材Mが凹部64からはみ出す様子は、インナーコラム51の端面から目視される。このため、連結部材Mは、より確実に所定量以上の量で充填されることを確認することができる。なお、連結部材Mが凹部64からはみ出す様子を見やすくするために、インナーコラム51は、インナープレート6の裏面62に対向する部分または当該部分付近に目視用のスリットを設けていてもよい。
【0047】
ステアリングホイール81に過大荷重が加えられると、当該荷重は、入力軸82aを介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4は移動しない。このため、連結部材Mにせん断力が加わるので、当該荷重が連結部材Mの許容せん断力を超える場合、連結部材Mは切断される。連結部材Mが切断されると、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除される。インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除されると、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。よって、操作者がステアリングホイール81に衝突して過大荷重が加わった場合、過大荷重が加わった直後にインナーコラム51を移動させるための力が低減し衝撃を吸収する。
【0048】
また、連結部材Mが切断されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、連結部材Mが切断されても、ステアリングコラム50は落下しない。
【0049】
また、連結部材Mが切断された後において、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動することが望ましい。インナーコラム51の移動する方向がアウターコラム54の軸方向に対して角度をなす方向である場合、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる事態が生じやすくなるためである。
【0050】
実施形態5において、インナーコラムブラケット4は、
図28に示したようにアウターコラム54の両側に配置された第1テレスコ摩擦板21に接合されている。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力を受けている。このため、連結部材Mが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対して真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなる。
【0051】
また、第1孔51hおよび第2孔43hは、インナーコラムブラケット4を挟んだ両側で対向する第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置されている。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力をより均等に受けるので、連結部材Mが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対してより真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対してより真っ直ぐ移動しやすくなる。
【0052】
また、仮にインナーコラムブラケット4が、アウターコラム54の両側からの締付力を均等に受けることができなかった場合であっても、インナーコラムブラケット4の脚部43がスリット54sの内壁に対向するように嵌まっているので、インナーコラムブラケット4がスリット54sに案内され、連結部材Mが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。
【0053】
なお、連結部材Mの許容せん断力は、第1孔51hおよび第2孔43hの個数、第1孔51hおよび第2孔43hの断面積、連結部材Mの材料を変更することで調節することができる。例えば、第1孔51hおよび第2孔43hの個数は、それぞれ1個でもよいし3個以上であってもよい。また、連結部材Mは、例えば、非鉄金属を含む金属、接着剤、またはゴムで形成されていてもよい。
【0054】
図32は、比較例におけるステアリングコラムの変位量とステアリングコラムを移動させるために必要な荷重との関係を示す図である。
図33は、実施形態5におけるステアリングコラムの変位量とステアリングコラムを移動させるために必要な荷重との関係を示す図である。
図32および
図33において、横軸はステアリングコラムの前方への変位量であり、縦軸はステアリングコラムを前方へ移動させるために必要な荷重である。
【0055】
比較例は、特許文献1に記載の技術のように、アウターコラムがカプセルを介して車体に取り付けられている場合の例である。比較例においては、アウターコラムがインナーコラムよりも後方側に配置されており、アウターコラムに過大荷重が加わると、アウターコラムと一体に設けられたテレスコ調整孔の端部にロッドが接触し、ブラケットを介して荷重がカプセルに伝わるようになっている。
図32に示す力F5は、カプセルの許容せん断力を示している。
【0056】
比較例において、アウターコラムは、ブラケットの締め付けによってインナーコラムとの間に生じる摩擦力によって軸方向に支持されている。
図32で示す力F4は、アウターコラムを支持している当該摩擦力を示している。力F4は、力F5よりも小さい。通常使用において加わるような荷重によってアウターコラムが移動しないようにするために、力F4は、所定値以上に保たれる必要がある。
【0057】
比較例において、アウターコラムに力F5以上の荷重が加わると、カプセルが切断されアウターコラムが車体から離脱する。その後、アウターコラムが、インナーコラムとの摩擦力で衝撃を吸収しながら軸方向に移動する。しかし、上述したように、力F4が所定値以上に保たれているので、アウターコラムの移動を滑らかにして操作者を2次衝突からより保護しやすくすることが難しい。
【0058】
一方、実施形態5において、インナーコラム51は、アウターコラムブラケット52の締め付けによってアウターコラム54との間に生じる第1摩擦力と、第1テレスコ摩擦板21と第1テレスコ摩擦板21に接触する部材(アウターコラムブラケット52、第2テレスコ摩擦板22、アウターコラム54)との間に生じる第2摩擦力と、によって軸方向に支持されている。
図33に示す力F1は、第1摩擦力を示しており、力F3は、第1摩擦力と第2摩擦力との和を示している。また、
図33に示す力F2は、連結部材Mの許容せん断力を示している。力F2は、力F3より小さくかつ力F1よりも大きい。
【0059】
実施形態5において、インナーコラム51に力F2以上の荷重が加わると、連結部材Mが切断され、インナーコラム51がインナーコラムブラケット4から離脱する。これにより、インナーコラム51と第1テレスコ摩擦板21との連結が解除されるので、上述した第2摩擦力がインナーコラム51に対して作用しなくなる。このため、連結部材Mが切断された後において、インナーコラム51は、上述した第1摩擦力で衝撃を吸収しながら軸方向に移動する。実施形態5に係るステアリング装置100は、第1摩擦力を小さく設定すると、インナーコラム51の移動を滑らかにして操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
【0060】
実施形態5においては、仮に第1摩擦力の設定値を小さくしたとしても、インナーコラム51を軸方向に支持するための力のうち、第1摩擦力を小さくした分を第2摩擦力が補完することができる。このため、実施形態5に係るステアリング装置100は、第1摩擦力の設定値と第2摩擦力の設定値を調節することで、通常使用において加わるような荷重によってインナーコラム51が移動することを抑制でき、かつ操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
【0061】
上述したように、実施形態5に係るステアリング装置100は、ステアリングホイール81に連結される入力軸82aを回転可能に支持し、第1孔51hが開けられた筒状のインナーコラム51と、インナーコラム51の少なくとも一部が内側に挿入される筒状であって、インナーコラム51の挿入側の一端を切り欠いたスリット54sを有するアウターコラム54と、を備える。また、ステアリング装置100は、車体側部材13に固定され、アウターコラム54を支持し、板材であるテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)と共にアウターコラム54を締め付けるアウターコラムブラケット52を備える。また、ステアリング装置100は、テレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)に支持され、第2孔43hが開けられたインナーコラムブラケット4を備える。また、ステアリング装置100は、第1孔51hと第2孔43hとに跨る位置にあって、インナーコラム51およびインナーコラムブラケット4を離脱可能に連結する連結部材Mを備える。テレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)は、アウターコラム54の両側に配置される。インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側に配置されるテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)を接続する腕部41と、腕部41から腕部41の長手方向に対して直交方向に向かって突出する首部44と、首部44の腕部41とは反対側の端部に設けられ且つインナーコラム51に接触する脚部43と、を備える。
【0062】
これにより、実施形態5に係るステアリング装置100において、ステアリングホイール81に過大荷重が加えられると、当該荷重は、入力軸82aを介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4は移動しない。このため、連結部材Mにせん断力が加わるので、当該荷重が連結部材Mの許容せん断力を超える場合、連結部材Mは切断される。連結部材Mが切断されると、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除される。インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除されると、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。このため、ステアリングコラム50のうちインナーコラム51が車体前方に移動することができるようになる。また、連結部材Mが切断されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、連結部材Mが切断されても、ステアリングコラム50は落下しない。よって、実施形態5に係るステアリング装置100は、ステアリングコラム50が車体前方に移動する離脱荷重の設定値(連結部材Mの許容せん断力)を下げても、誤動作によってステアリングコラム50が落下する事態を抑制することができる。
【0063】
さらに、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力を受けている。このため、連結部材Mが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対して真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる事態が生じることが抑制される。
【0064】
また、実施形態5に係るステアリング装置100において、アウターコラム54の両側に配置されるテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)は、インナーコラムブラケット4を挟んで対向し、第1孔51hおよび第2孔43hは、インナーコラムブラケット4を挟んだ両側で対向するそれぞれのテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)からの距離が等しい位置に配置される。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力をより均等に受けるので、連結部材Mが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対してより真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる事態が生じることが抑制される。
【0065】
また、実施形態5に係るステアリング装置100において、アウターコラム54は、車体前方側に位置し、ピボットブラケット55を備え、離脱したインナーコラム51を挿入可能である。これにより、アウターコラム54は、軸方向をインナーコラム51の軸方向に合わせることができる。このため、アウターコラム54は、インナーコラム51が軸方向に移動する際に、インナーコラム51を案内しやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる事態が生じることが抑制される。
【0066】
(実施形態5の変形例)
図34は、実施形態5の変形例に係るインナープレートを遮蔽面側から見た斜視図である。
図35は、実施形態5の変形例に係るインナープレートを裏面側から見た斜視図である。実施形態5の変形例は、上述した実施形態5と比較してインナープレートの構成が異なる。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0067】
実施形態5の変形例に係るステアリング装置100は、第1孔51hおよび第2孔43hに充填される連結部材Mがインナーコラム51の内側に流出しないように、インナーコラム51の内周面にインナープレート6Aを備える。インナープレート6Aは、例えば、インナーコラム51の内周面の形状に沿った形状の板状部材である。インナープレート6Aは、インナーコラム51の内周面に対向する遮蔽面61に、突出部63と、2つの凹部64Aと、を有する。
【0068】
凹部64Aは、例えば、プレス加工により形成されている。このため、
図35に示すように、凹部64Aの裏側の部分において突出部64Abが形成されている。2つの凹部64Aは、互いに所定の距離をあけて配置されている。1つの凹部64Aは、1つの第1孔51hに対向している。なお、凹部64Aは、必ずしも2つでなくてもよく、第1孔51hと同数あればよい。
【0069】
インナーコラムブラケット4とインナーコラム51とを連結するときは、凹部64Aが第1孔51hに対向している状態で、第2孔43h側から連結部材Mが充填される。第2孔43h側から充填された連結部材Mは、第2孔43h、第1孔51hおよび凹部64Aに充填されたあと固まる。これにより、凹部64Aで固まった連結部材Mが抜け止めになるので、連結部材Mが第1孔51hおよび第2孔43hから脱落する事態が抑制される。
【0070】
また、実施形態5の変形例においては、2つの凹部64A同士が連通していないので、第2孔43h、第1孔51hおよび凹部64Aで連通する空間が実施形態5に比較して小さくなる。このため、充填された連結部材Mが固まりやすくなるので、インナーコラムブラケット4とインナーコラム51とがより確実に連結される。
【0071】
また、上述した実施形態5においては、2つの異なる第2孔43hから充填された連結部材Mが、凹部64で合流することになる。このため、凹部64で合流する連結部材Mが一体となって固まりにくくなる可能性がある。これに対して、実施形態5の変形例に係るインナープレート6Aを用いた場合、2つの異なる第2孔43hから充填された連結部材Mは、それぞれ異なる凹部64Aに流入するため、凹部64Aでより確実に固まることができる。
【0072】
(実施形態6)
図36は、実施形態6に係るステアリング装置を、
図26のe−e断面に相当する平面で切った図である。
図37は、実施形態6に係るステアリング装置の底面を示す図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0073】
図36および
図37に示すように、ステアリング装置100は、インナーコラムブラケット4Bを備える。
図38は、実施形態6に係るインナーコラムブラケットの斜視図である。
図38に示すように、インナーコラムブラケット4Bは、例えば、腕部41と、差込部42と、首部44と、脚部43Bと、を含む。例えば、腕部41は、
図37に示すように、アウターコラム54の両側で対向する2組の第1テレスコ摩擦板21を接続する棒状の部分である。差込部42は、腕部41の両端に設けられ、第1テレスコ摩擦板21に設けられた孔に差し込まれる部分である。差込部42は、腕部41よりも細く形成されている。首部44は、腕部41の一部から腕部41の長手方向に対して直交方向に向かって突出する部分である。脚部43Bは、首部44の腕部41とは反対側の端部に設けられる板状の部分であって、インナーコラム51に接触している。
図38に示すように、脚部43Bのインナーコラム側表面43Bbは、インナーコラム51の外周面の形状に沿った形状にされている。
【0074】
インナーコラムブラケット4Bは、
図37に示すように、アウターコラム54の両側に配置された第1テレスコ摩擦板21に連結されている。インナーコラムブラケット4Bは、差込部42が第1テレスコ摩擦板21に設けられた孔に差し込まれることによって、第1テレスコ摩擦板21に支持されている。また、アウターコラム54の両側に配置される第1テレスコ摩擦板21は、インナーコラムブラケット4Bの腕部41を挟んで対向している。また、インナーコラムブラケット4Bは、脚部43Bでインナーコラム51に連結されている。
【0075】
インナーコラムブラケット4Bとインナーコラム51とを離脱可能に連結するため、
図36に示すようにインナーコラム51には第1孔51hが開けられ、脚部43Bには第2孔43Bhが開けられている。この脚部43Bは首部44を中心にして、インナーコラムの軸方向の前方と後方にそれぞれ設けられており、第1孔51hと第2孔43Bhとは、連通している。例えば実施形態6において、第1孔51hおよび第2孔43Bhは、それぞれの脚部43Bに1つずつあり少なくとも、計2箇所に設けられている。第1孔51hと第2孔43Bhとに跨る位置に連結部材Mが挿入されることで、インナーコラムブラケット4Bの脚部43Bとインナーコラム51とが離脱可能に連結されている。また、第1孔51hおよび第2孔43Bhは、アウターコラム54の両側に配置されたそれぞれの第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置される。
【0076】
また、インナーコラムブラケット4Bは、少なくとも一部がアウターコラム54のスリット54sに嵌まるように配置されている。具体的には、インナーコラムブラケット4Bの脚部43Bがスリット54sの内壁に対向するように嵌まっている。
【0077】
実施形態6において、連結部材Mは、樹脂部材であって、例えばポリアセタールで形成されている。樹脂部材である連結部材Mが第1孔51hと第2孔43Bhとに跨る位置に充填されて固まることで、インナーコラムブラケット4Bの脚部43Bとインナーコラム51とが連結される。
【0078】
図39は、実施形態6に係るインナープレートを遮蔽面側から見た斜視図である。
図40は、実施形態6に係るインナープレートを裏面側から見た斜視図である。ステアリング装置100は、第1孔51hおよび第2孔43Bhに充填される連結部材Mがインナーコラム51の内側に流出しないように、インナーコラム51の内周面にインナープレート6Bを備える。インナープレート6Bは、例えば、インナーコラム51の内周面の形状に沿った形状の板状部材である。インナープレート6Bは、インナーコラム51の内周面に設けられ第1孔51hの内側を覆う。インナープレート6Bは、インナーコラム51の内周面に対向する遮蔽面61Bに、突出部63Bと、凹部64Bと、を有する。
【0079】
突出部63Bは、例えば、遮蔽面61Bに対して垂直方向に向かって環状に隆起している。例えば、当該環状に隆起している部分の内側は、裏面62Bに向かって貫通する孔になっている。
図36に示すように、突出部63Bは、インナーコラム51に設けられた嵌合孔51haに嵌められる。例えば、インナープレート6Bは、突出部63Bが嵌合孔51haに加締められることによってインナーコラム51に固定される。なお、インナープレート6Bは、突出部63Bが嵌合孔51haに圧入されることによってインナーコラム51に固定されていてもよい。
【0080】
凹部64Bは、例えば、プレス加工により形成されている。このため、
図40に示すように、凹部64Bの裏側の部分において突出部63Bが形成されている。凹部64Bは、
図36に示すように、第1孔51hに対向する位置に配置される。実施形態6において、凹部64Bは、1つであって、2つの第1孔51hに対向している。これにより、凹部64Bは、2つの第1孔51hを連通させている。
【0081】
インナーコラムブラケット4Bとインナーコラム51とを連結するときは、凹部64Bが2つの第1孔51hに対向している状態で、第2孔43Bh側から連結部材Mが充填される。第2孔43Bh側から充填された連結部材Mは、第2孔43Bh、第1孔51hおよび凹部64Bに充填されたあと固まる。これにより、凹部64Bで固まった連結部材Mが抜け止めになるので、連結部材Mが第1孔51hおよび第2孔43Bhから脱落する事態が抑制される。
【0082】
また、例えば連結部材Mは、凹部64Bからはみ出すように充填される。連結部材Mが凹部64Bからはみ出すことで、インナープレート6Bの遮蔽面61Bとインナーコラム51との間の隙間が連結部材Mで埋められる。これにより、インナープレート6Bのガタつきが抑制される。
【0083】
また、連結部材Mが凹部64Bからはみ出す様子は、インナーコラム51の端面から目視される。このため、連結部材Mは、より確実に所定量以上の量で充填されることを確認することができる。なお、連結部材Mが凹部64Bからはみ出す様子を見やすくするために、インナーコラム51は、インナープレート6Bの裏面62Bに対向する部分または当該部分付近に目視用のスリットを設けていてもよい。
【0084】
実施形態6において、インナーコラムブラケット4Bは、
図37に示したようにアウターコラム54の両側に配置された第1テレスコ摩擦板21に接合されている。これにより、インナーコラムブラケット4Bに軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4Bは、アウターコラム54の両側からの締付力を受けている。このため、連結部材Mが切断されるときのインナーコラムブラケット4Bの姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対して真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなる。
【0085】
また、第1孔51hおよび第2孔43Bhは、インナーコラムブラケット4Bの首部44を中心に、インナーコラム51の軸方向の前方と後方にそれぞれ、首部44の近隣に配置されている。よってインナーコラムブラケット4Bに軸方向荷重が加わったときでも、第1テレスコ摩擦板21と固定されている差込部42と連結部材Mの切断部分の距離が極めて短いため、インナーコラムブラケット4Bに作用するモーメント力が小さいためにインナーコラムブラケット4Bの姿勢が安定した状態で、連結部材Mが切断される。
【0086】
また、第1孔51hおよび第2孔43Bhは、インナーコラムブラケット4Bを挟んだ両側で対向する第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置されている。これにより、インナーコラムブラケット4Bに軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4Bは、アウターコラム54の両側からの締付力をより均等に受けるので、連結部材Mが切断されるときのインナーコラムブラケット4Bの姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対してより真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対してより真っ直ぐ移動しやすくなる。
【0087】
また、仮にインナーコラムブラケット4Bが、アウターコラム54の両側からの締付力を均等に受けることができなかった場合であっても、インナーコラムブラケット4Bの脚部43Bがスリット54sの内壁に対向するように嵌まっているので、インナーコラムブラケット4Bがスリット54sに案内され、連結部材Mが切断されるときのインナーコラムブラケット4Bの姿勢が安定する。
【0088】
実施形態6におけるステアリングコラムの変位量とステアリングコラムを移動させるために必要な荷重との関係を示す図は、
図33と同様である。
【0089】
実施形態6において、インナーコラム51は、アウターコラムブラケット52の締め付けによってアウターコラム54との間に生じる第1摩擦力と、第1テレスコ摩擦板21と第1テレスコ摩擦板21に接触する部材(アウターコラムブラケット52、第2テレスコ摩擦板22、アウターコラム54)との間に生じる第2摩擦力と、によって軸方向に支持されている。
図33に示す力F1は、第1摩擦力を示しており、力F3は、第1摩擦力と第2摩擦力との和を示している。また、
図33に示す力F2は、連結部材Mの許容せん断力を示している。力F2は、力F3より小さくかつ力F1よりも大きい。
【0090】
実施形態6において、インナーコラム51に力F2以上の荷重が加わると、連結部材Mが切断され、インナーコラム51がインナーコラムブラケット4Bから離脱する。これにより、インナーコラム51と第1テレスコ摩擦板21との連結が解除されるので、上述した第2摩擦力がインナーコラム51に対して作用しなくなる。このため、連結部材Mが切断された後において、インナーコラム51は、上述した第1摩擦力で衝撃を吸収しながら軸方向に移動する。実施形態6に係るステアリング装置100は、第1摩擦力を小さく設定すると、インナーコラム51の移動を滑らかにして操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
【0091】
実施形態6においては、仮に第1摩擦力の設定値を小さくしたとしても、インナーコラム51を軸方向に支持するための力のうち、第1摩擦力を小さくした分を第2摩擦力が補完することができる。このため、実施形態6に係るステアリング装置100は、第1摩擦力の設定値と第2摩擦力の設定値を調節することで、通常使用において加わるような荷重によってインナーコラム51が移動することを抑制でき、かつ操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
【0092】
(実施形態7)
図41は、実施形態7に係るステアリング装置を底面側から見た斜視図である。
図42は、実施形態7に係るステアリング装置を、
図24のd−d断面に相当する平面で切った図である。
図43は、実施形態7に係るステアリング装置を、
図42のf−f断面に相当する平面で切った図である。
図44は、実施形態7に係るステアリング装置の底面を示す図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0093】
図43および
図44に示すように、ステアリング装置100は、インナーコラムブラケット4Cを備える。
図45は、実施形態7に係るインナーコラムブラケットの斜視図である。
図45に示すように、インナーコラムブラケット4Cは、例えば、腕部41Cと、差込部42Cと、首部44Cと、脚部43Cと、を含む。例えば、腕部41Cは、
図44に示すように、アウターコラム54の両側で対向する2組の第1テレスコ摩擦板21を接続する棒状の部分である。差込部42Cは、腕部41Cの両端に設けられ、第1テレスコ摩擦板21に設けられた孔に差し込まれる部分である。差込部42Cは、腕部41Cよりも細く形成されている。首部44Cは、腕部41Cの一部から腕部41Cの長手方向に対して直交方向に向かって突出する部分である。脚部43Cは、首部44Cの腕部41Cとは反対側の端部に設けられる板状の部分であって、インナーコラム51に接触している。
図45に示すように、脚部43Cのインナーコラム側表面43Cbは、インナーコラム51の外周面の形状に沿った形状にされている。また、脚部43Cは、例えば、インナーコラム51に対向する表面とは反対側の表面に円形の凹部45Cを2つ備える。
【0094】
図45に示すように、腕部41Cは、首部44Cと第1テレスコ摩擦板21との間の位置でインナーコラム51に近付く方向に湾曲する湾曲部46Cを備える。腕部41Cは2つの湾曲部46Cを備えており、2つの湾曲部46Cが首部44Cを挟んだ両側に配置されている。これにより、腕部41Cが湾曲部46Cを有さない場合に比較して、差込部42Cの位置がインナーコラム51に近くなる。また、腕部41Cは、インナーコラム51の軸方向に対して直交方向に突出するリブ47Cを備える。リブ47Cは、例えば腕部41Cの長手方向に沿う方向に長く形成されている。また、
図43に示すように、リブ47Cは、腕部41Cの下方側表面から突出しており、且つ腕部41Cの前方端部に配置されている。腕部41Cにリブ47Cが設けられることにより、腕部41Cの剛性が向上する。
【0095】
インナーコラムブラケット4Cは、
図44に示すように、アウターコラム54の両側に配置された第1テレスコ摩擦板21に連結されている。インナーコラムブラケット4Cは、差込部42Cが第1テレスコ摩擦板21に設けられた孔に差し込まれることによって、第1テレスコ摩擦板21に支持されている。また、アウターコラム54の両側に配置される第1テレスコ摩擦板21は、インナーコラムブラケット4Cの腕部41Cを挟んで対向している。また、インナーコラムブラケット4Cは、脚部43Cでインナーコラム51に連結されている。
【0096】
インナーコラムブラケット4Cとインナーコラム51とを離脱可能に連結するため、
図43に示すようにインナーコラム51には第1孔51hが開けられ、脚部43Cの凹部45Cの底面には第2孔43Chが開けられている。第1孔51hと第2孔43Chとは、連通している。例えば実施形態7において、第1孔51hおよび第2孔43Chは、それぞれ2つずつ設けられており、内周は全て同じである。第1孔51hと第2孔43Chとに跨る位置にシェアピンPが挿入されることで、インナーコラムブラケット4Cとインナーコラム51とが離脱可能に連結されている。また、第1孔51hおよび第2孔43Chは、アウターコラム54の両側に配置されたそれぞれの第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置される。
【0097】
また、インナーコラムブラケット4Cは、少なくとも一部がアウターコラム54のスリット54sに嵌まるように配置されている。具体的には、インナーコラムブラケット4Cの脚部43Cがスリット54sの内壁に対向するように嵌まっている。インナーコラムブラケット4Cの材質は、アルミニウム合金の一つであるADC12を使用している。ADC12(JIS H 5302に記載)はアルミダイカストの中で最も使用されているアルミニウム合金であり、Al(アルミニウム)−Si(シリコン)−Cu(銅)成分が含まれ、一般にその性質は機械的な剛性があり、被切削性に優れ、鋳造性が良いとされており、生産性・低コスト性を兼ね備えている。インナーコラムブラケット4Cの素材としては最適である。
【0098】
図46は、
図43のシェアピンの周辺部分を拡大して示す図である。
図47は、実施形態7に係るインナーピンがアウターピンに挿入される前の状態でのシェアピンを示す斜視図である。
図48は、実施形態7に係るインナーピンがアウターピンに挿入された後の状態でのシェアピンを示す斜視図である。実施形態7において、シェアピンPは、アウターピンPoと、インナーピンPiと、を備える。アウターピンPoおよびインナーピンPiは、例えばポリアセタール等の樹脂で形成されている。
【0099】
図46に示すように、アウターピンPoは、第1孔51hおよび第2孔43Chを貫通する筒状の部材である。アウターピンPoは、例えば、本体部Po1と、抜止部Po2と、フランジ部Po3と、ガイド孔Pohと、を備える。
図46、8に示すように、本体部Po1は、円筒状であって、第1孔51hおよび第2孔43Chを貫通している。抜止部Po2は、本体部Po1の一端に設けられ、インナーコラム51の内側に位置している。抜止部Po2は、円筒状であって、第1孔51hの内周および第2孔43Chの内周よりも大きな外周を有する。これにより、抜止部Po2がインナーコラム51の内周面に接するので、アウターピンPoが第1孔51hおよび第2孔43Chから抜け落ちることが抑制される。フランジ部Po3は、本体部Po1の他端に設けられ、第2孔43Chよりもインナーコラム51の径方向外側に位置している。フランジ部Po3は、例えば円盤状であって、第1孔51hの内周および第2孔43Chの内周よりも大きな外周を有する。これにより、フランジ部Po3が凹部45Cの底面に接するので、アウターピンPoが第1孔51hおよび第2孔43Chから抜け落ちることが抑制される。ガイド孔Pohは、フランジ部Po3から抜止部Po2までを貫通する貫通孔である。
【0100】
実施形態7において、アウターピンPoは、圧入により第1孔51hおよび第2孔43Chに挿入されている。アウターピンPoが第1孔51hおよび第2孔43Chに挿入されることで、第1孔51hおよび第2孔43Chが位置決めされる。例えば、抜止部Po2が第2孔43Ch側から第1孔51hおよび第2孔43Chに挿入される。抜止部Po2は、本体部Po1とは反対側の端部Poeにおける外周が第1孔51hの内周および第2孔43Chの内周よりも小さくなるように形成されている。これにより、抜止部Po2は、第2孔43Chに挿入しやすくなっている。なお、アウターピンPoは、第1孔51h側から第1孔51hおよび第2孔43Chに挿入されてもよい。また、アウターピンPoは、本体部Po1の外壁にリブ等を設けた上で圧入されてもよい。
【0101】
図47および
図48に示すように、アウターピンPoは、抜止部Po2からフランジ部Po3に向かって設けられるノッチPosを1つ備える。抜止部Po2が第2孔43Chに挿入されると、アウターピンPoの周方向におけるノッチPosの幅dsが小さくなることで、抜止部Po2の外周が小さくなる。これにより、抜止部Po2は、第1孔51hおよび第2孔43Chを通過しやすくなっている。以下の説明において、アウターピンPoの周方向におけるノッチPosの幅dsは、単にノッチPosの幅dsと記載される。なお、アウターピンPoは、ノッチPosを複数備えていてもよく、複数のノッチPosは、アウターピンPoの周方向で等間隔に配置されることが好ましい。
【0102】
アウターピンPoが第1孔51hおよび第2孔43Chを貫通する前の状態において、本体部Po1の外周は、第1孔51hの内周および第2孔43Chの内周よりも大きい。そして、アウターピンPoが第1孔51hおよび第2孔43Chを貫通している状態において、本体部Po1の外周は、第1孔51hの内周および第2孔43Chの内周に等しくなっている。これにより、本体部Po1が第1孔51hの内壁および第2孔43Chの内壁を付勢している。このため、本体部Po1と第1孔51hの内壁との間の隙間および本体部Po1と第2孔43Chの内壁との間の隙間が生じにくくなっている。これにより、アウターピンPoのガタつきが抑制されている。
【0103】
インナーピンPiは、ガイド孔Pohを貫通しガイド孔Pohの内壁をガイド孔Pohの径方向外側に付勢する部材である。以下の説明において、ガイド孔Pohの径方向外側は、単に径方向外側と記載される。インナーピンPiは、例えば、胴体部Pi1と、大径部Pi2と、を備える。
図46および
図47に示すように、胴体部Pi1は、円柱状であってガイド孔Pohを貫通している。大径部Pi2は、胴体部Pi1の両端に設けられて、ガイド孔Pohの外部に位置している。大径部Pi2は、ガイド孔Pohの内周よりも大きな外周を有する。これにより、大径部Pi2がガイド孔Pohの両端の縁に接するので、インナーピンPiがアウターピンPoから抜け落ちることが抑制される。なお、ガイド孔Pohは、両端部に内周を拡大した段差部を備えていてもよい。この場合、大径部Pi2が段差部の縁に接するので、インナーピンPiがガイド孔Pohの両端から突出しにくくなる。
【0104】
実施形態7において、インナーピンPiは、圧入によりガイド孔Pohに挿入されている。例えば、大径部Pi2がフランジ部Po3側からガイド孔Pohに挿入される。大径部Pi2は、胴体部Pi1とは反対側の端部Pieにおける外周がアウターピンPoの内周よりも小さくなるように形成されている。これにより、大径部Pi2は、ガイド孔Pohに挿入しやすくなっている。また、インナーピンPiは、両端に同じ大径部Pi2を備えているので、どちらの端部からでもガイド孔Pohに挿入することができる。これにより、シェアピンPの組み立てが容易になっている。
【0105】
インナーピンPiがガイド孔Pohを貫通する前の状態において、胴体部Pi1の外周は、ガイド孔Pohの内周よりも大きい。そして、インナーピンPiがガイド孔Pohを貫通している状態において、胴体部Pi1の外周は、ガイド孔Pohの内周に等しくなっている。これにより、胴体部Pi1がガイド孔Pohの内壁を付勢している。このため、胴体部Pi1とガイド孔Pohの内壁との間の隙間が生じにくくなっている。これにより、インナーピンPiのガタつきが抑制されている。
【0106】
胴体部Pi1がガイド孔Pohの内壁を径方向外側に付勢することで、ノッチPosの幅dsを拡げる力がアウターピンPoに作用する。これにより、アウターピンPoが第1孔51hの内壁および第2孔43Chの内壁を径方向外側に付勢する力が大きくなる。また、胴体部Pi1がガイド孔Pohの内壁を径方向外側に付勢することで、抜止部Po2におけるノッチPosの幅dsは大きくなる。これにより、抜止部Po2の外周が大きくなる。このため、アウターピンPoとインナーピンPiとが一体となったシェアピンPは、第1孔51hおよび第2孔43Chに跨る位置に固定され、インナーコラム51およびインナーコラムブラケット4Cを連結している。
【0107】
また、実施形態7に係るステアリング装置100は、第1孔51hおよび第2孔43ChにシェアピンPを用いることで、樹脂部材を第1孔51hおよび第2孔43Chに充填する場合に比較して、樹脂部材を充填するための装置および樹脂部材を受けるための部材が不要となる。このため、実施形態7に係るステアリング装置100は、組み立てを容易にすることができる。
【0108】
ステアリングホイール81に過大荷重が加えられると、当該荷重は、入力軸82aを介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4Cは移動しない。このため、シェアピンPにせん断力が加わるので、当該荷重がシェアピンPの許容せん断力を超える場合、シェアピンPは切断される。シェアピンPが切断されると、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4Cとの連結が解除される。インナーコラム51とインナーコラムブラケット4Cとの連結が解除されると、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。よって、操作者がステアリングホイール81に衝突して過大荷重が加わった場合、過大荷重が加わった直後にインナーコラム51を移動させるための力が低減し衝撃を吸収する。
【0109】
また、シェアピンPが切断されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、シェアピンPが切断されても、ステアリングコラム50は落下しない。
【0110】
図49は、切断された後のシェアピンの状態を説明するための説明図である。
図49に示すように、シェアピンPは切断面BKで切断される。切断面BKは、インナーコラム51の外周面であり、すなわち脚部43Cのインナーコラム側表面43Cbである。アウターピンPoは本体部Po1で切断され、インナーピンPiは胴体部Pi1で切断される。このため、シェアピンPの許容せん断力は、切断面BKにおける本体部Po1の断面積および胴体部Pi1の断面積に依存する。
【0111】
図50は、
図43のシェアピンの周辺部分を拡大し、シェアピンのみを側面図として示す図である。
図50に示すように、フランジ部Po3からノッチPosの先端Posbまでの距離d3は、フランジ部Po3からインナーコラム51の外周面までの距離d4よりも大きいことが好ましい。これにより、シェアピンPが切断される時の切断面BKにノッチPosが含まれなくなる。このため、切断面BKにおける本体部Po1の断面にノッチPos分の欠損部分がなくなるので、シェアピンPの許容せん断力のバラつきが抑制される。
【0112】
また、シェアピンPが切断された後において、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動することが望ましい。インナーコラム51の移動する方向がアウターコラム54の軸方向に対して角度をなす方向である場合、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる事態が生じやすくなるためである。
【0113】
実施形態7において、インナーコラムブラケット4Cは、
図44に示したようにアウターコラム54の両側に配置された第1テレスコ摩擦板21に接合されている。これにより、インナーコラムブラケット4Cに軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4Cは、アウターコラム54の両側からの締付力を受けている。このため、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4Cの姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対して真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなる。
【0114】
また、第1孔51hおよび第2孔43Chは、インナーコラムブラケット4Cを挟んだ両側で対向する第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置されている。これにより、インナーコラムブラケット4Cに軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4Cは、アウターコラム54の両側からの締付力をより均等に受けるので、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4Cの姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対してより真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対してより真っ直ぐ移動しやすくなる。
【0115】
また、仮にインナーコラムブラケット4Cが、アウターコラム54の両側からの締付力を均等に受けることができなかった場合であっても、インナーコラムブラケット4Cの脚部43Cがスリット54sの内壁に対向するように嵌まっているので、インナーコラムブラケット4Cがスリット54sに案内され、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4Cの姿勢が安定する。
【0116】
また、
図46に示すように、凹部45Cの深さd1は、シェアピンPの第2孔43Chから突出する部分の長さd2以上であることが好ましい。これにより、シェアピンPがインナーコラムブラケット4Cの表面よりも突出しなくなる。このため、シェアピンPが外力によって破損する可能性が低減される。
【0117】
なお、シェアピンPの許容せん断力は、第1孔51hおよび第2孔43Chの個数、第1孔51hおよび第2孔43Chの断面積、シェアピンPの材料を変更することで調節することができる。例えば、第1孔51hおよび第2孔43Chの個数は、それぞれ1個でもよいし3個以上であってもよい。また、シェアピンPは、例えば、非鉄金属を含む金属、またはゴム等で形成されていてもよい。
【0118】
実施形態7におけるステアリングコラムの変位量とステアリングコラムを移動させるために必要な荷重との関係を示す図は、
図33と同様の図である。
【0119】
実施形態7において、インナーコラム51は、アウターコラムブラケット52の締め付けによってアウターコラム54との間に生じる第1摩擦力と、第1テレスコ摩擦板21と第1テレスコ摩擦板21に接触する部材(アウターコラムブラケット52、第2テレスコ摩擦板22、アウターコラム54)との間に生じる第2摩擦力と、によって軸方向に支持されている。
図33に示す力F1は、第1摩擦力を示しており、力F3は、第1摩擦力と第2摩擦力との和を示している。また、
図33に示す力F2は、シェアピンPの許容せん断力を示している。力F2は、力F3より小さくかつ力F1よりも大きい。
【0120】
実施形態7において、インナーコラム51に力F2以上の荷重が加わると、シェアピンPが切断され、インナーコラム51がインナーコラムブラケット4Cから離脱する。これにより、インナーコラム51と第1テレスコ摩擦板21との連結が解除されるので、上述した第2摩擦力がインナーコラム51に対して作用しなくなる。このため、シェアピンPが切断された後において、インナーコラム51は、上述した第1摩擦力で衝撃を吸収しながら軸方向に移動する。実施形態7に係るステアリング装置100は、第1摩擦力を小さく設定すると、インナーコラム51の移動を滑らかにして操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
【0121】
実施形態7においては、仮に第1摩擦力の設定値を小さくしたとしても、インナーコラム51を軸方向に支持するための力のうち、第1摩擦力を小さくした分を第2摩擦力が補完することができる。このため、実施形態7に係るステアリング装置100は、第1摩擦力の設定値と第2摩擦力の設定値を調節することで、通常使用において加わるような荷重によってインナーコラム51が移動することを抑制でき、かつ操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
【0122】
上述したように、実施形態7に係るステアリング装置100は、ステアリングホイール81に連結される入力軸82aを回転可能に支持し、第1孔51hが開けられた筒状のインナーコラム51と、インナーコラム51の少なくとも一部が内側に挿入される筒状であって、インナーコラム51の挿入側の一端を切り欠いたスリット54sを有するアウターコラム54と、を備える。また、ステアリング装置100は、車体側部材13に固定され、アウターコラム54を支持し、板材であるテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)と共にアウターコラム54を締め付けるアウターコラムブラケット52を備える。また、ステアリング装置100は、テレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)に支持され、第2孔43Chが開けられたインナーコラムブラケット4Cを備える。また、ステアリング装置100は、第1孔51hと第2孔43Chとに跨る位置にあって、インナーコラム51およびインナーコラムブラケット4Cを離脱可能に連結するシェアピンPを備える。テレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)は、アウターコラム54の両側に配置される。インナーコラムブラケット4Cは、アウターコラム54の両側に配置されるテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)を接続する腕部41Cと、腕部41Cから腕部41Cの長手方向に対して直交方向に向かって突出する首部44Cと、首部44Cの腕部41Cとは反対側の端部に設けられ且つインナーコラム51に接触する脚部43Cと、を備える。
【0123】
これにより、実施形態7に係るステアリング装置100において、ステアリングホイール81に過大荷重が加えられると、当該荷重は、入力軸82aを介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4Cは移動しない。このため、シェアピンPにせん断力が加わるので、当該荷重がシェアピンPの許容せん断力を超える場合、シェアピンPは切断される。シェアピンPが切断されると、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4Cとの連結が解除される。インナーコラム51とインナーコラムブラケット4Cとの連結が解除されると、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。このため、ステアリングコラム50のうちインナーコラム51が車体前方に移動することができるようになる。また、シェアピンPが切断されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、シェアピンPが切断されても、ステアリングコラム50は落下しない。よって、実施形態7に係るステアリング装置100は、ステアリングコラム50が車体前方に移動する離脱荷重の設定値(シェアピンPの許容せん断力)を下げても、誤動作によってステアリングコラム50が落下する事態を抑制することができる。
【0124】
さらに、インナーコラムブラケット4Cに軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4Cは、アウターコラム54の両側からの締付力を受けている。このため、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4Cの姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対して真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる事態が生じることが抑制される。
【0125】
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、腕部41Cは、首部44Cと第1テレスコ摩擦板21との間の位置でインナーコラム51に近付く方向に湾曲する湾曲部46Cを備える。これにより、腕部41Cと第1テレスコ摩擦板21との接合部分(差込部42C)の位置がインナーコラム51に近くなる。このため、腕部41Cと第1テレスコ摩擦板21との接合部分(差込部42C)から、シェアピンPが切断される時の切断面BKまでの、インナーコラム51の軸方向に対する直交方向の距離が小さくなる。したがって、シェアピンPが切断される時において、インナーコラムブラケット4Cにモーメント力が加わりにくくなるので、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4Cの姿勢が安定する。
【0126】
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、腕部41Cは、インナーコラム51の軸方向に対して直交方向に突出するリブ47Cを備える。これにより、腕部41Cの剛性が向上する。このため、インナーコラムブラケット4Cにモーメント力が加わった場合であっても、インナーコラムブラケット4Cの変形が抑制される。したがって、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4Cの姿勢が安定する。
【0127】
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、シェアピンPは、一端から他端まで貫通するガイド孔Pohを備える筒状の部材であって第1孔51hおよび第2孔43Chを貫通するアウターピンPoと、ガイド孔Pohを貫通しガイド孔Pohの内壁をガイド孔Pohの径方向外側に付勢するインナーピンPiと、を備える。これにより、ステアリング装置100は、アウターピンPoによって第1孔51hおよび第2孔43Chの位置決めをした後にインナーピンPiを挿入して組み立てられるので、容易に組み立てることができる。
【0128】
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、アウターピンPoは、第1孔51hおよび第2孔43Chを貫通する筒状の本体部Po1と、本体部Po1の一端に設けられて第1孔51hの内周および第2孔43Chの内周よりも大きな外周を有する抜止部Po2と、抜止部Po2から本体部Po1の他端に向かって設けられるノッチPosと、を備える。これにより、抜止部Po2が第1孔51hまたは第2孔43Chに挿入されると、アウターピンPoの周方向におけるノッチPosの幅dsが小さくなることで、抜止部Po2の外周が小さくなる。これにより、抜止部Po2は、第1孔51hおよび第2孔43Chを通過しやすくなっている。このため、アウターピンPoは、第1孔51hおよび第2孔43Chに容易に取り付けることができる。
【0129】
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、アウターピンPoは、本体部Po1の他端に設けられて第1孔51hの内周および第2孔43Chの内周よりも大きな外周を有するフランジ部Po3を備える。フランジ部Po3からノッチPosの先端Posbまでの距離d3は、フランジ部Po3からインナーコラム51の外周面までの距離d4よりも大きい。これにより、シェアピンPが切断される時の切断面BKにノッチPosが含まれなくなる。このため、切断面BKにおける本体部Po1の断面にノッチPos分の欠損部分がなくなる。よって、実施形態7に係るステアリング装置100は、シェアピンPの許容せん断力のバラつきが抑制されやすくなる。
【0130】
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、インナーピンPiは、ガイド孔Pohの内壁をガイド孔Pohの径方向外側に付勢する円柱状の胴体部Pi1と、胴体部Pi1の両端に設けられてガイド孔Pohの内周よりも大きな外周を有する大径部Pi2と、を備える。これにより、大径部Pi2がガイド孔Pohの両端の縁に接するので、インナーピンPiがアウターピンPoから抜け落ちることが抑制される。
【0131】
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、インナーコラムブラケット4Cは、インナーコラム51に対向するインナーコラム側表面43Cbとは反対側の表面に凹部45Cを有する。第2孔43Chは、凹部45Cの底面の一部に開けられ、凹部45Cの深さd1は、シェアピンPの第2孔43Chから突出する部分の長さd2以上である。これにより、シェアピンPがインナーコラムブラケット4Cの表面よりも突出しなくなる。このため、シェアピンPが外力によって破損する可能性が低減される。
【0132】
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、テレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)は、アウターコラム54の両側に配置される。これにより、インナーコラムブラケット4Cに軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4Cは、アウターコラム54の両側からの締付力を受けるので、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4Cの姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対して真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる事態が生じることが抑制される。
【0133】
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、アウターコラム54の両側に配置されるテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)は、インナーコラムブラケット4Cを挟んで対向し、第1孔51hおよび第2孔43Chは、インナーコラムブラケット4Cを挟んだ両側で対向するそれぞれのテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)からの距離が等しい位置に配置される。これにより、インナーコラムブラケット4Cに軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4Cは、アウターコラム54の両側からの締付力をより均等に受けるので、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4Cの姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対してより真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる事態が生じることが抑制される。
【0134】
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、アウターコラム54は、車体前方側に位置し、ピボットブラケット55を備え、離脱したインナーコラム51を挿入可能である。これにより、アウターコラム54は、軸方向をインナーコラム51の軸方向に合わせることができる。このため、アウターコラム54は、インナーコラム51が軸方向に移動する際に、インナーコラム51を案内しやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる事態が生じることが抑制される。
【0135】
また、上述したように、実施形態7に係るステアリング装置100は、シェアピンPを用いた部材連結構造によって組み立てられている。この部材連結構造は、第1孔51hが開けられた第1固定部材(インナーコラム51)と、第1固定部材(インナーコラム51)に接して配置され、第2孔43Chが開けられた第2固定部材(インナーコラムブラケット4C)と、を備える。また、部材連結構造は、第1孔51hと第2孔43Chとに跨る位置にあって、第1固定部材(インナーコラム51)および第2固定部材(インナーコラムブラケット4C)を連結し、2次衝突の発生時の第1固定部材(インナーコラム51)の移動により第1固定部材(インナーコラム51)と第2固定部材(インナーコラムブラケット4C)との境界部分の切断面BKで切断されるシェアピンPを備える。シェアピンPは、一端から他端まで貫通するガイド孔Pohを備える筒状の部材であって第1孔51hおよび第2孔43Chを貫通するアウターピンPoと、ガイド孔Pohを貫通しガイド孔Pohの内壁をガイド孔Pohの径方向外側に付勢するインナーピンPiと、を備える。アウターピンPoは、第1孔51hおよび第2孔43Chを貫通する円筒状の本体部Po1と、本体部Po1の一端に設けられて第1孔51hの内周および第2孔43Chの内周よりも大きな外周を有する抜止部Po2と、抜止部Po2から本体部Po1の他端に向かって設けられるノッチPosと、を備える。ノッチPosは、切断面BKに重ならない。
【0136】
これにより、シェアピンPが切断される時の切断面BKにノッチPosが含まれなくなる。このため、切断面BKにおける本体部Po1の断面にノッチPos分の欠損部分がなくなる。よって、実施形態7に係る部材連結構造は、シェアピンPの許容せん断力のバラつきが抑制されやすくなる。
【0137】
なお、上述した部材連結構造は、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4Cとの連結に用いられるだけでなく、他の部材同士の連結に用いられてもよい。例えば、部材連結構造は、車体側部材13とアウターコラムブラケット52との連結に用いられてもよい。部材連結構造は、2次衝突の発生時に一方の部材(第1固定部材)が他方の部材(第2固定部材)に対して離脱できるように部材同士を連結する、離脱部材連結用の部材連結構造である。また、実施形態7においては抜止部Po2が本体部Po1の外周面よりもガイド孔Pohの径方向外側に突出しているが、本体部Po1の内周面よりもガイド孔Pohの径方向内側に突出していてもよい。
【0138】
(実施形態7の変形例1)
図51は、実施形態7の変形例1に係るシェアピンの周辺部分を拡大し、シェアピンのみを側面図として示す説明図である。
図52は、
図51におけるg−g断面を示す図である。実施形態7の変形例1は、上述した実施形態7と比較して、実施形態7に係るアウターピンPoと異なるアウターピンPoAを備える点が相違する。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0139】
図51に示すように、実施形態7の変形例1に係るアウターピンPoAは、本体部Po1の外周面に突起部prを備える。突起部prは、弾性変形可能な部材であって、例えばゴム等の材料で形成されている。突起部prは、例えばフランジ部Po3から抜止部Po2に向かって直線状に設けられている。
図52に示すように、アウターピンPoAは8つの突起部prを備えている。8つの突起部prは、本体部Po1の周方向に等間隔に配置されている。なお、アウターピンPoAが備える突起部prは必ずしも8つでなくてもよく、7つ以下であってもよいし、9つ以上であってもよい。
【0140】
仮に、インナーピンPiがガイド孔Pohに挿入される前の状態で本体部Po1と第1孔51hとの間に間隙があっても、インナーピンPiがガイド孔Pohに挿入されるとノッチPosの幅dsが大きくなり、本体部Po1の第1孔51hに対向する部分の外周が大きくなる。このため、本体部Po1と第1孔51hとの間の間隙は埋められやすい。これに対して、インナーピンPiがガイド孔Pohに挿入される前の状態で本体部Po1と第2孔43Chとの間に間隙がある場合、インナーピンPiがガイド孔Pohに挿入されても本体部Po1の第2孔43Chに対向する部分の外周は大きくなりにくい。このため、本体部Po1と第2孔43Chとの間の間隙は埋められない可能性がある。
【0141】
図51に示すように、第2孔43Chの内周が公差の範囲内で第1孔51hの内周よりも大きい場合、本体部Po1と第2孔43Chの内壁との間に間隙Δrが生じる可能性がある。間隙Δrは、シェアピンPAがガタつく原因となる可能性がある。これに対して、実施形態7の変形例1に係るアウターピンPoAは弾性変形可能な突起部prを備えるので、突起部prが間隙Δrを埋めることができる。これにより、本体部Po1の第2孔43Chに対向する部分の外周が大きくなりにくい点を、突起部prが補完することができる。このため、実施形態7の変形例1に係るステアリング装置100は、シェアピンPAがガタつく可能性を抑制できる。
【0142】
図51に示すように、突起部prの長さd5は、第2孔43Chの深さd4に等しいことが好ましい。これにより、第2孔43Chの内周が公差の範囲内で第1孔51hの内周よりも大きい場合であっても、間隙Δrが深さd4の全長に亘って埋められる。このため、実施形態7の変形例1に係るステアリング装置100は、シェアピンPAがガタつく可能性をより抑制できる。なお、突起部prの長さd5は、第2孔43Chの深さd4より短くてもよいし長くてもよい。
【0143】
上述したように、実施形態7の変形例1に係るステアリング装置100において、アウターピンPoAは、本体部Po1の外周面に弾性変形可能な突起部prを備える。これにより、突起部prが、本体部Po1と第1孔51hの内壁との間の間隙または本体部Po1と第2孔43Chの内壁との間の間隙を埋めることができる。このため、実施形態7の変形例1に係るステアリング装置100は、シェアピンPAがガタつく可能性を抑制できる。
【0144】
(実施形態7の変形例2)
図53は、実施形態7の変形例2に係るステアリング装置を、
図42におけるf−f断面に相当する平面で切った断面を示す図である。実施形態7の変形例2は、上述した実施形態7と比較して、実施形態7に係るインナーコラムブラケット4Cと異なるインナーコラムブラケット4Dを備える点が相違する。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0145】
図53に示すように、インナーコラムブラケット4Dは、脚部431と、脚部432と、を備える。脚部431は、首部44Cの腕部41Cとは反対側の端部から前方側に向かって設けられる板状の部分であって、インナーコラム51に接触している。脚部432は、首部44Cの腕部41Cとは反対側の端部から後方側に向かって設けられる板状の部分であって、インナーコラム51に接触している。脚部431、432のインナーコラム側表面は、インナーコラム51の外周面の形状に沿った形状にされている。脚部431、432は、例えば、インナーコラム51に対向する表面とは反対側の表面に円形の凹部45Cを1つずつ備える。脚部431の凹部45Cの底面には、第2孔431hが開けられている。脚部432の凹部45Cの底面には、第2孔432hが開けられている。第1孔51hと第2孔431hとに跨る位置および第1孔51hと第2孔432hとに跨る位置にシェアピンPが挿入されることで、インナーコラムブラケット4Dとインナーコラム51とが離脱可能に連結されている。
【0146】
インナーコラムブラケット4Dは、第1テレスコ摩擦板21による支持点である腕部41Cに対して、前方側および後方側の両側に第2孔431h、432hを備える。これにより、上述した実施形態7のように腕部41Cよりも後方側に2つの第2孔43hが設けられる場合と比較して、腕部41Cから第2孔431h、432hまでの距離が近くなりやすくなる。このため、第1テレスコ摩擦板21に荷重が加えられ、腕部41Cの長手方向に平行な軸廻りのモーメントがインナーコラムブラケット4Dに伝わった場合であっても、シェアピンPに加わるモーメントは抑制されやすくなる。
【0147】
また、上述した実施形態7のように腕部41Cよりも後方側に2つの第2孔43Chが設けられる場合と比較して、インナーコラムブラケット4Dは第2孔431h、432h同士の距離を大きくすることができる。これにより、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4Dの姿勢が安定する。このため、シェアピンPの許容せん断力のバラつきが抑制されやすくなる。