(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記未焼成マザーセラミック基板が複数のセラミックグリーンシートを積層することにより形成された積層構造を有するものであり、前記(d)の分割工程で前記焼成済みのマザーセラミック基板を分割することにより得られる前記セラミック基板が多層セラミック基板であることを特徴とする請求項1記載のセラミック基板の製造方法。
前記未焼成マザーセラミック基板を、前記(c)の焼成工程で消失する樹脂層を介して積層した状態で、前記(a)のカット工程、前記(b)のプレス工程、および前記(c)の焼成工程を実施して、前記樹脂層を消失させた後、前記(d)の分割工程を実施することを特徴とする請求項1または2記載のセラミック基板の製造方法。
前記未焼成マザーセラミック基板として、焼成後に金属導体となる材料からなる導体パターンを内部に備えたものを用い、前記(a)のカット工程、前記(b)のプレス工程、前記(c)の焼成工程、および前記(d)の分割工程を経て、内部に金属導体を有するセラミック基板が得られるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセラミック基板の製造方法。
表面実装部品が搭載されたマザーセラミック基板を所定の位置で分割して、複数の個々のセラミック基板に分割する工程を経て製造されるモジュール部品の製造方法であって、
(a)焼成前の未焼成マザーセラミック基板を、所定の位置で、一方側主面から他方側主面に達するように切断して、未焼成マザーセラミック基板を未焼成の個々のセラミック基板に分割するカット工程と、
(b)カットされた前記未焼成マザーセラミック基板を、その主面に沿う方向に押圧力が加わるようにプレスして、前記(a)のカット工程で形成された切断端面どうしを接合させて、分割された個々の前記セラミック基板を一体化させるプレス工程と、
(c)前記切断端面どうしが接合された端面接合部を有する前記未焼成マザーセラミック基板を焼成する焼成工程と、
(d)焼成済みのマザーセラミック基板を構成する各セラミック基板上に表面実装部品を搭載する部品搭載工程と、
(e)各セラミック基板上に前記表面実装部品が搭載された前記マザーセラミック基板を、前記端面接合部に沿ってブレイクすることにより、各セラミック基板上に前記表面実装部品が搭載された個々のモジュール部品に分割する分割工程と
を備えることを特徴とするモジュール部品の製造方法。
前記未焼成マザーセラミック基板が複数のセラミックグリーンシートを積層することにより形成された積層構造を有するものであり、前記(e)の分割工程で前記焼成済みのマザーセラミック基板を分割することにより得られる前記モジュール部品を構成するセラミック基板が多層セラミック基板であることを特徴とする請求項5記載のモジュール部品の製造方法。
前記未焼成マザーセラミック基板を、前記(c)の焼成工程で消失する樹脂層を介して積層した状態で、前記(a)のカット工程、前記(b)のプレス工程、および前記(c)の焼成工程を実施して、前記樹脂層を消失させた後、焼成済みの各マザーセラミック基板について、前記(d)の部品搭載工程および前記(e)の分割工程を実施することを特徴とする請求項5または6記載のモジュール部品の製造方法。
前記未焼成マザーセラミック基板として、焼成後に金属導体となる材料からなる導体パターンを内部に備えたものを用い、前記(a)のカット工程、前記(b)のプレス工程、前記(c)の焼成工程、前記(d)の部品搭載工程、および前記(e)の分割工程を経て、内部に金属導体を有するセラミック基板上に前記表面実装部品が搭載された個々のモジュール部品が得られるようにしたことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のモジュール部品の製造方法。
【背景技術】
【0002】
セラミック基板を製造するにあたっては、焼成後にマザーセラミック基板を分割して、個々のセラミック基板に分割する方法が広く用いられている。
【0003】
そして、焼成後のマザー基板を、所定の寸法の個々のセラミック基板に分割する方法として、例えば、特許文献1には、焼結フェライト板(セラミック板)の一方の表面に粘着材層を設けた焼結フェライト基板に、少なくとも1つの連続する溝を設け、上記の連続する溝を起点として分割可能に構成された焼結フェライト基板を形成し、これを分割することにより、個々のセラミック基板に分割する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、複数の基板用グリーンシートを積層してなる積層体の両面に、収縮抑制用グリーンシートを配するとともに、収縮抑制用グリーンシートの少なくとも一方には、表面に分割溝の形成位置の基準となる分割溝形成パターンを形成した収縮抑制用グリーンシートを用い、収縮抑制用グリーンシートの上記分割溝形成パターンを利用して上記積層体の表面に基板分割用の分割溝を形成し、焼成した後、分割溝に沿って分割することにより多層セラミック基板を製造する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1および特許文献2に開示されている方法では、
図20(a),(b)に示すように、マザー基板200の一方側の表面200aに、ブレイク用の分割溝201を形成し、この分割溝を起点としてマザー基板200をブレイクするように構成されているため、意図したとおり、分割端面202がマザー基板200の表面200aに垂直になるようにマザー基板200を分割することは困難で、
図21に模式的に示すように、分割端面202が斜めになってしまう場合があり、さらなる改善が求められているのが実情である。
【0006】
また、上記の特許文献1および特許文献2に開示されている方法では、
図20(a),(b)に示すように、マザー基板200の表面200aにブレイクの起点となる分割溝201を形成するようにしているため、複数枚のマザー基板に分割溝を形成するにあたっては、マザー基板200の1枚ずつにそれぞれ分割溝201を形成することが必要になり、生産効率が悪いという問題点もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、マザーセラミック基板を、分割端面がその表面に垂直になるように分割することが可能で、形状精度の高いセラミック基板および、該セラミック基板上に表面実装部品が搭載されたモジュール部品を効率よく製造することが可能なセラミック基板の製造方法およびモジュール部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のセラミック基板の製造方法は、
マザーセラミック基板を所定の位置で分割して、複数の個々のセラミック基板に分割する工程を経て製造されるセラミック基板の製造方法であって、
(a)焼成前の未焼成マザーセラミック基板を、所定の位置で、一方側主面から他方側主面に達するように切断して、未焼成マザーセラミック基板を未焼成の個々のセラミック基板に分割するカット工程と、
(b)カットされた前記未焼成マザーセラミック基板を、その主面に沿う方向に押圧力が加わるようにプレスして、前記(a)のカット工程で形成された切断端面どうしを接合させて、分割された個々の前記セラミック基板を一体化させるプレス工程と、
(c)前記切断端面どうしが接合された端面接合部を有する前記未焼成マザーセラミック基板を焼成する焼成工程と、
(d)焼成済みのマザーセラミック基板を、前記端面接合部に沿ってブレイクすることにより、個々のセラミック基板に分割する分割工程と
を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明のセラミック基板の製造方法においては、前記未焼成マザーセラミック基板が複数のセラミックグリーンシートを積層することにより形成された積層構造を有するものであり、前記(d)の分割工程で前記焼成済みのマザーセラミック基板を分割することにより得られる前記セラミック基板が多層セラミック基板であってもよい。
【0011】
上記構成とすることにより、複数のセラミック層が積層された構造を有する多層セラミック基板を効率よく製造することができる。
【0012】
また、前記未焼成マザーセラミック基板を、前記(c)の焼成工程で消失する樹脂層を介して積層した状態で、前記(a)のカット工程、前記(b)のプレス工程、および前記(c)の焼成工程を実施して、前記樹脂層を消失させた後、前記(d)の分割工程を実施することが好ましい。
【0013】
上記構成とすることにより、未焼成マザーセラミック基板を、所定枚数積層した状態で、カット工程から焼成工程までの諸工程が実施されるため、セラミック基板(単層セラミック基板や多層セラミック基板などを含む複数のセラミック基板)を効率よく製造することができる。
【0014】
本発明のセラミック基板の製造方法においては、前記未焼成マザーセラミック基板として、焼成後に金属導体となる材料からなる導体パターンを内部に備えたものを用い、前記(a)のカット工程、前記(b)のプレス工程、前記(c)の焼成工程、および前記(d)の分割工程を経て、内部に金属導体を有するセラミック基板が得られるようにすることも可能である。
【0015】
上記構成とすることにより、内部に回路や電極などの導体を備えたセラミック基板を効率よく製造することが可能になる。
【0016】
また、本発明のモジュール部品の製造方法は、
表面実装部品が搭載されたマザーセラミック基板を所定の位置で分割して、複数の個々のセラミック基板に分割する工程を経て製造されるモジュール部品の製造方法であって、
(a)焼成前の未焼成マザーセラミック基板を、所定の位置で、一方側主面から他方側主面に達するように切断して、未焼成マザーセラミック基板を未焼成の個々のセラミック基板に分割するカット工程と、
(b)カットされた前記未焼成マザーセラミック基板を、その主面に沿う方向に押圧力が加わるようにプレスして、前記(a)のカット工程で形成された切断端面どうしを接合させて、分割された個々の前記セラミック基板を一体化させるプレス工程と、
(c)前記切断端面どうしが接合された端面接合部を有する前記未焼成マザーセラミック基板を焼成する焼成工程と、
(d)焼成済みのマザーセラミック基板を構成する各セラミック基板上に表面実装部品を搭載する部品搭載工程と、
(e)各セラミック基板上に前記表面実装部品が搭載された前記マザーセラミック基板を、前記端面接合部に沿ってブレイクすることにより、各セラミック基板上に前記表面実装部品が搭載された個々のモジュール部品に分割する分割工程と
を備えることを特徴としている。
【0017】
また、本発明のモジュール部品の製造方法においては、前記未焼成マザーセラミック基板が複数のセラミックグリーンシートを積層することにより形成された積層構造を有するものであり、前記(e)の分割工程で前記焼成済みのマザーセラミック基板を分割することにより得られる前記モジュール部品を構成するセラミック基板が多層セラミック基板であってもよい。
【0018】
上記構成とすることにより、複数のセラミック層が積層された構造を有する多層セラミック基板上に表面実装部品が搭載されたモジュール部品を効率よく製造することができる。
【0019】
また、前記未焼成マザーセラミック基板を、前記(c)の焼成工程で消失する樹脂層を介して積層した状態で、前記(a)のカット工程、前記(b)のプレス工程、および前記(c)の焼成工程を実施して、前記樹脂層を消失させた後、焼成済みの各マザーセラミック基板について、前記(d)の部品搭載工程および前記(e)の分割工程を実施することが好ましい。
【0020】
上記構成とすることにより、未焼成マザーセラミック基板を、所定枚数積層した状態で、カット工程から焼成工程までの諸工程が実施されるため、単層のセラミック基板や多層セラミック基板上に表面実装部品が搭載されたモジュール部品を効率よく製造することができる。
【0021】
また、前記未焼成マザーセラミック基板として、焼成後に金属導体となる材料からなる導体パターンを内部に備えたものを用い、前記(a)のカット工程、前記(b)のプレス工程、前記(c)の焼成工程、前記(d)の部品搭載工程、および前記(e)の分割工程を経て、内部に金属導体を有するセラミック基板上に前記表面実装部品が搭載された個々のモジュール部品が得られるようにすることが望ましい。
【0022】
上記構成とすることにより、内部に回路や電極などの導体を備えたセラミック基板上に表面実装部品が搭載されたモジュール部品を効率よく製造することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
上述のように、本発明のセラミック基板の製造方法は、未焼成マザーセラミック基板を一方側主面から他方側主面に達するようにカットして未焼成の個々のセラミック基板に分割するカット工程と、カットされた前記未焼成マザーセラミック基板をプレスして、カット工程で形成された切断端面どうしを接合させて、分割された個々のセラミック基板を一体化させるプレス工程と、切断端面どうしが接合された端面接合部を有する未焼成マザーセラミック基板を焼成する焼成工程と、焼成済みのマザーセラミック基板を、上述の端面接合部に沿ってブレイクすることにより、個々のセラミック基板に分割する分割工程とを備えているので、焼成済みのマザーセラミック基板を、上記端面接合部に沿ってブレイクすることにより、マザーセラミック基板を所定の位置で確実にブレイクして、意図する形状を備えたセラミック基板を効率よく製造することができる。
【0024】
ただし、本発明のセラミック基板を構成するセラミック材料としては、磁性体セラミック、誘電体セラミック、圧電体セラミック、半導体セラミックなど、種々のセラミック材料を用いることが可能である。
【0025】
また、本発明におけるセラミック基板とは、表面や内部に回路などを備えたいわゆる回路基板に限られるものではなく、回路導体などが形成されない平板状のセラミック成形体を製造する場合にも本発明を適用することが可能である。
【0026】
また、本発明のモジュール部品の製造方法は、未焼成マザーセラミック基板を一方側主面から他方側主面に達するようにカットして未焼成の個々のセラミック基板に分割するカット工程と、カットされた前記未焼成マザーセラミック基板をプレスして、カット工程で形成された切断端面どうしを接合させて、分割された個々のセラミック基板を一体化させるプレス工程と、切断端面どうしが接合された端面接合部を有する未焼成マザーセラミック基板を焼成する焼成工程と、焼成済みのマザーセラミック基板に表面実装部品を搭載する部品搭載工程と、焼成済みのマザーセラミック基板を、上記端面接合部に沿ってブレイクすることにより、個々のモジュール部品に分割する分割工程とを備えているので、焼成済みのマザーセラミック基板を、上記端面接合部に沿ってブレイクすることにより、マザーセラミック基板を所定の位置で確実にブレイクして、意図する形状を備えたセラミック基板上に表面実装部品が搭載されたモジュール部品を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態(実施形態1)で用いた未焼成マザーセラミック基板の正面図、(b)はその平面図である。
【
図2】(a)は本発明の実施形態1において、未焼成マザーセラミック基板をカットした状態を示す正面図、(b)はその平面図である。
【
図3】本発明の実施形態1において、カットされた未焼成マザーセラミック基板をプレスして、カット工程で形成された切断端面どうしを接合させた状態を示す正面図である。
【
図4】切断端面どうしを接合させた状態の未焼成マザーセラミック基板を焼成した後の状態を示す正面図である。
【
図5】焼成後のマザーセラミック基板を個々のセラミック基板に分割した状態を示す正面図である。
【
図6】本発明の実施形態2で、セラミックグリーンシートを積層した積層体を、樹脂層を介して5層積層することにより形成した未焼成の複合積層体を示す正面図である。
【
図7】
図6の未焼成の複合積層体をカットした状態を示す正面図である。
【
図8】
図7のカットした未焼成の複合積層体をプレス(静水圧プレス)することにより、カット工程で形成された切断端面どうしを接合させた状態を示す正面図である。
【
図9】プレス工程で切断端面どうしを接合させた複合積層体を焼成した後の、各マザーセラミック基板が分離した状態を示す正面図である。
【
図10】焼成後の各マザーセラミック基板を個々のセラミック基板に分割した状態を模式的に示す正面図である。
【
図11】本発明の実施形態2の変形例を示す正面図である。
【
図12】本発明の実施形態3にかかるモジュール部品の製造方法により製造したモジュール部品の構成を示す斜視図である。
【
図13】本発明の実施形態3において、セラミックグリーンシートに、導体パターンを配設したパターン形成シートを示す斜視図である。
【
図14】
図13のパターン形成シートを所定の順序で積層した状態を示す斜視図である。
【
図15】
図13のパターン形成シートを積層した積層体を圧着することにより得た積層体(未焼成マザーセラミック基板)を示す斜視図である。
【
図16】
図15の積層体(未焼成マザーセラミック基板)をカットした状態を示す斜視図である。
【
図17】
図16のカットした未焼成の積層体(未焼成マザーセラミック基板)をプレス(静水圧プレス)することにより、カット工程で形成された切断端面どうしを接合させた状態を示す斜視図である。
【
図18】
図17の、切断端面どうしを接合させた状態のマザーセラミック基板を焼成した後のマザーセラミック基板に表面実装部品を搭載した状態を示す斜視図である。
【
図19】焼成後のマザーセラミック基板をブレイクして、個々のモジュール部品に分割した状態を模式的に示す斜視図である。
【
図20】(a)は従来のマザー基板の分割方法を示す正面図、(b)は平面図である。
【
図21】従来のマザー基板の分割方法の問題点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0029】
[実施形態1]
この実施形態1では、セラミック材料として、磁性体セラミックを用いたセラミック基板(多層セラミック基板)の製造方法について説明する。
【0030】
(1)まず、磁性体セラミック粉末(この実施形態1ではフェライト粉末)とバインダー樹脂と有機溶剤とを混合して、溶解、分散させた後、脱泡することにより、セラミック原料スラリーを作製した。
それから、厚さ50μmのPETフィルム(支持フィルム)上に、ドクターブレード法などの公知の方法により、上述のようにして作製したセラミック原料スラリーを塗布し、乾燥することにより、厚さ50μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0031】
(2)次に、得られたセラミックグリーンシートを200mm×200mmに打ち抜いた。そして、打ち抜いたセラミックグリーンシートをPETフィルム上から剥離した。
剥離したセラミックグリーンシートを4枚積層することにより、平面寸法が200mm×200mm、厚さ0.2mmの積層体を作製した。
【0032】
なお、積層される各セラミックグリーンシートには、表面導体となる表面導体パターンや、内部導体となる内部導体パターン、さらには層間接続のためのビア導体などが形成されていてもよい。
【0033】
(3)得られた積層体を、袋に入れて脱気した後、密閉し、所定の温度に加熱した。それから20MPaで1分間、静水圧プレスを行った。これにより、
図1(a),(b)に示すように、4枚のセラミックグリーンシート1が積層、圧着された未焼成マザーセラミック基板10を得た。
【0034】
(4)それから、
図2(a),(b)に示すように、この未焼成マザーセラミック基板10を、粘着保持シート20上に載置し、厚さが0.10mmのカット刃30を使用して、押し切り工法により、2.44mm間隔でカットした。
【0035】
このとき、カット刃30の刃先を粘着保持シート20に達するまで、すなわち、未焼成マザーセラミック基板10の一方側主面10aから他方側主面10bに達するまで浸入させて、未焼成マザーセラミック基板10をカットした。
【0036】
カットすることにより形成された端面(切断端面)10cは、未焼成マザーセラミック基板10の主面10a,10bに垂直な端面となる。
なお、未焼成マザーセラミック基板10が、粘着保持シート20上に粘着保持された状態でカットを行うようにしていることから、カットにより未焼成マザーセラミック基板10は完全に個片化するもののカット後の個片(焼成後にセラミック基板となる個々の片)11a(
図2(a),(b))は、カット前と同じ位置に保持され、ばらばらになることはない。
【0037】
(5)そして、カットされた後の未焼成マザーセラミック基板10を、袋に入れて脱気した後、密閉し、所定の温度に加熱した。それから、100MPaで1分間静水圧プレスを行った。この静水圧プレスの工程では、未焼成マザーセラミック基板10の主面10a,10bに直交する方向だけではなく、主面10a,10bに沿う方向に押圧力が加わるような態様でプレスが行われるため、カットされることにより形成された端面(切断端面)10cどうしが接合された端面接合部10dを有する未焼成マザーセラミック基板(切断端面10cどうしが接合されて一体となった接合未焼成マザーセラミック基板)10Xが得られる(
図3)。
【0038】
(6)それから、この接合未焼成マザーセラミック基板10Xの周縁部を切り落として、180mm×180mmの接合体を得る。
なお、上記の
図1〜
図3では、周縁部の切り落とされるべき部分を含まない状態の未焼成マザーセラミック基板を示している。
【0039】
(7)次に、上記接合体(接合未焼成マザーセラミック基板)10Xから上述の粘着保持シート20を取り除いた後、950℃で2時間焼成することにより、焼結済みのマザーセラミック基板10Y(
図4)を得た。
【0040】
この段階でも上記端面(切断端面)10cは、接合された状態にあり、全体が一体の状態にある焼結済みのマザーセラミック基板10Yが得られる。
なお、焼結済みのマザーセラミック基板10Yは、平面寸法が150mm×150mm、厚み150μmで、2mm間隔で縦横に、切断端面10c(
図3)が接合した、他の部分に比べて、強度の小さい、分割されるべき部分(端面接合部)10dが形成された状態となる。
【0041】
(8)それから、焼結済みのマザーセラミック基板10Yに、厚み10μmの粘着PETフィルム(図示せず)を張り付け、ローラーブレイク機でブレイクして、焼結済みのマザーセラミック基板10Yを個々の焼結済みのセラミック基板11に分割した。その結果、
図5に示すように、焼結済みのマザーセラミック基板10Yは、上述の端面接合部10dに沿って分割され、分割端面11cがその主面12aに垂直な、寸法精度、形状精度の高いセラミック基板(多層セラミック基板)11を得ることができた。
【0042】
すなわち、上述の実施形態1の方法によれば、端面(切断端面)が接合した、他の部分より強度の小さい端面接合部10dが分割面となり、得られるセラミック基板11の端面(分割面)11cが、目標とする端面接合部10dに沿ってブレイクされるため、分割端面11cが斜めにならずに,その主面12aに垂直なセラミック基板(多層セラミック基板)11を得ることができる。
【0043】
[実施形態2]
この実施形態2では、上述の実施形態1の場合よりもさらに効率よくセラミック基板を製造することが可能なセラミック基板の製造方法について説明する。
【0044】
(1)実施形態1で作製したセラミックグリーンシートと同じセラミックグリーンシートを、実施形態1の場合と同じ方法で作製した。
なお、この実施形態2の場合においても、各セラミックグリーンシートには、表面導体となる表面導体パターンや、内部導体となる内部導体パターン、さらには層間接続のためのビア導体などが形成されていてもよい。
【0045】
そして、このセラミックグリーンシートを、200mm×200mmに打ち抜き、PETフィルム上から剥離したセラミックグリーンシートを4枚積み重ねることにより、上記実施形態で作製した積層体と同じ積層体、すなわち、平面寸法が200mm×200mm、厚さ0.2mmの積層体を作製した。
【0046】
(2)それから、
図6に示すように、積層体(個々の未焼成マザーセラミック基板)10を、厚さ10μmの樹脂層21を介して、5層積層し、複合積層体(未焼成複合積層体)110を形成した。
【0047】
具体的には、一つの積層体10の上面にこの後の焼成工程の熱により燃焼して消失する樹脂ペーストを塗布して樹脂層21を形成し、その上に平面寸法が200mm×200mm、厚さ0.2mmの積層体10を積み重ね、これを繰り返して、積層体10が5層積層された、未焼成複合積層体110を形成した。なお、樹脂ペーストの代わりに焼成工程の熱により燃焼して消失する樹脂シートによる樹脂層21を設けてもよい。
【0048】
(3)それから、この未焼成複合積層体110を、袋に入れて脱気した後、密閉し、所定の温度に加熱した。それから20MPaで1分間、静水圧プレスを行った。
【0049】
(4)次に,プレスされた未焼成複合積層体110を、
図7に示すように、粘着保持シート20上に載置し、厚さが0.10mmのカット刃30を使用して、押し切り工法により、2.44mm間隔でカットした。
【0050】
このとき、カット刃30の刃先を粘着保持シート20に達するまで、すなわち、未焼成複合積層体110の一方側主面110aから他方側主面110bに達するまで浸入させて、未焼成複合積層体110をカットした。
【0051】
カットすることにより形成された端面(切断端面)110c(10c)は、未焼成複合積層体110の主面110a,110bに垂直な端面となる。
なお、未焼成複合積層体110が、粘着保持シート20上に粘着保持された状態でカットを行うようにしていることから、カット後の個片積層体111aは、カット前と同じ位置に保持され、ばらばらになることはない。
【0052】
(5)そして、カットされた後の未焼成複合積層体110を、袋に入れて脱気した後、密閉し、所定の温度に加熱した。それから100MPaで1分間静水圧プレスを行った。この静水圧プレスの工程では、未焼成複合積層体110の主面110a,110bに直交する方向だけではなく、主面110a,110bに沿う方向に押圧力が加わるような態様で静水圧プレスが行われるため、
図8に示すように、カットされることにより形成された端面(切断端面)110c(10c)が接合されて再び一体となった接合体(接合未焼成複合積層体)110Xが得られる。
【0053】
(6)それから、この接合体(接合未焼成複合積層体)110Xの周縁部を切り落として、180mm×180mmの接合体を得る。
なお、上記の
図6〜
図8では、周縁部の切り落とされるべき部分を含まない状態の未焼成複合積層体を示している。
【0054】
(7)次に、上記接合体(接合未焼成複合積層体)110Xから上述の粘着保持シート20を取り除いた後、950℃で2時間焼成した。このとき、樹脂層21が、燃焼して消失することにより、樹脂層21(
図8)により結合されていた各マザーセラミック基板が分離した状態の、焼結済みのマザーセラミック基板10Y(
図9)が得られる。
【0055】
この段階でも焼結済みの各マザーセラミック基板10Yの切断端面10cは、接合された状態にあり、全体が一体の状態にある焼結済みの各マザーセラミック基板10Yが得られる。
なお、焼結済みの各マザーセラミック基板10Yにおいては、平面寸法が150mm×150mm、厚み150μm、2mm間隔で縦横に、端面(切断端面)10cが接合した、他の部分に比べて、強度の小さい、分割されるべき部分(端面接合部)10dが形成された状態となる。
【0056】
(8)それから、焼結済みの各マザーセラミック基板10Yを、厚み10μmの粘着PETフィルム(図示せず)を張り付け、ローラーブレイク機でブレイクして、各マザーセラミック基板10Yを個々の焼結済みのセラミック基板11に分割した(
図10参照)。その結果、焼結済みの各マザーセラミック基板10Yは、上述の端面接合部10dに沿って分割され、分割端面11cがその主面12aに垂直な、寸法精度、形状精度の高いセラミック基板(多層セラミック基板)11を得ることができた。
【0057】
この実施形態2の方法によれば、上記(4)のカット工程、(5)の端面どうしを接合させるプレス工程、(7)の焼成工程などを、複数のマザーセラミック基板が積層された複合積層体の状態で、一括して実施することができるため、寸法精度、形状精度の高いセラミック基板(多層セラミック基板)を効率よく製造することができる。
【0058】
[実施形態2の変形例]
上記実施形態2では、セラミックグリーンシートを4枚積み重ねた積層体(未焼成マザーセラミック基板)10を、樹脂層21を介して5層積層した複合積層体(未焼成複合積層体)110を形成したが、
図11に示すように、単層のセラミックグリーンシート1を樹脂層21を介して5層積層することにより、樹脂層21を4層、単層のセラミックグリーンシート1を5層備えた複合積層体(未焼成複合積層体)110を形成するようにしてもよい。
【0059】
そして、上述のようにして複合積層体(未焼成複合積層体)110を形成することを除いて、実施形態2と同様の工程を実施することにより、単層構造のセラミック基板を効率よく製造することができる。なお、上述の複合積層体(未焼成複合積層体)110を形成する工程以外の工程は、実施形態2の場合と同様であることから、詳細な説明や図示については省略する。
【0060】
この実施形態2の変形例の場合においても、セラミックグリーンシートには、表面導体となる表面導体パターンが形成されていてもよいし、何も形成されていなくてもよい。
【0061】
この方法によれば、実施形態2と同様に複数のセラミックグリーンシートが積層された複合積層体の状態で、一括して実施することができるため、寸法精度、形状精度の高いセラミック基板(セラミック成形体)を効率よく製造することができる。
【0062】
[実施形態3]
この実施形態3では、
図12に示すように、表面導体、内部導体、ビア導体などを備えた多層セラミック基板11に表面実装部品151を搭載してなるモジュール部品150の製造方法について説明する。
【0063】
(1)まず、上記実施形態1の場合と同様の方法でセラミックグリーンシート1を作製し、得られたセラミックグリーンシート1に、例えば、表面導体や内部導体となる導体パターンの形成、ビアホールの形成および該ビアホールへのビア導体となる導体材料の充填などを行って、
図13に示すように、必要な導体パターン140を備えたパターン形成シート101aを作製する。
【0064】
(2)それから、導体パターン140を備えたパターン形成シート101aを所定の順序で積層し(
図14)、得られた積層体を袋に入れて、脱気した後、密閉し、所定の温度に加熱した後、静水圧プレスを行うことにより、
図15に示すように、各パターン形成シート101aが圧着された積層体(未焼成マザーセラミック基板)10を得た。
【0065】
(3)それから、
図16に示すように、未焼成マザーセラミック基板10を、粘着保持シート20上に載置し、厚さが0.10mmのカット刃(図示せず)を使用して、押し切り工法により所定の間隔でカットした。
このとき、カット刃の刃先を粘着保持シート20に達するまで、すなわち、未焼成マザーセラミック基板10の一方側主面10aから他方側主面10bに達するまで浸入させて、未焼成マザーセラミック基板10をカットした。
【0066】
カットすることにより形成された端面(切断端面)10cは、未焼成マザーセラミック基板10の主面10a,10bに垂直な端面となる。
なお、未焼成マザーセラミック基板10が、粘着保持シート20上に粘着保持された状態でカットを行うようにしていることから、カット後の個片(焼成後にセラミック基板となる個々の片(未焼成セラミック基板))11a(
図16)は、カット前と同じ位置に保持され、ばらばらになることはない。
【0067】
(4)そして、カットされた後の未焼成マザーセラミック基板10を、袋に入れて脱気した後、密閉し、所定の温度に加熱した。それから100MPaで1分間静水圧プレスを行った。この静水圧プレスの工程では、未焼成マザーセラミック基板10の主面10a,10bに沿う方向に押圧力が加わるような態様で静水圧プレスが行われるため、カットされることにより形成された端面(切断端面)10cどうしが接合された端面接合部10dを有する未焼成マザーセラミック基板(切断端面10cどうしが接合されて一体となった接合未焼成マザーセラミック基板)10X(
図17)が得られる。
【0068】
(5)それから、この接合未焼成マザーセラミック基板10Xの周縁部を切り落として、180mm×180mmの接合体を得る。
なお、上記の
図13〜
図17では、周縁部の切り落とされるべき部分を含まない状態の未焼成マザーセラミック基板を示している。
【0069】
(6)次に、上記接合未焼成マザーセラミック基板10Xから上述の粘着保持シート20を取り除いた後、950℃で2時間焼成することにより、焼結済みのマザーセラミック基板10Y(
図18)を得た。
【0070】
この段階でも上記端面(切断端面)10cは、接合された状態にあり、全体が一体の状態にある焼結済みのマザーセラミック基板10Yが得られる なお、この段階で焼結済みのマザーセラミック基板10Yは、切断端面10c(
図16)が接合した、他の部分に比べて、強度の小さい、分割されるべき部分(端面接合部)10dが形成された状態となる。
【0071】
(7)それから、焼結済みのマザーセラミック基板10Y(
図18)の、焼成後にセラミック基板となる個々の片(セラミック基板)11上に、各表面実装部品151を搭載した。
なお、表面実装部品151として、例えば、ICチップ、積層セラミックコンデンサ、チップインダクタ、チップ抵抗などが搭載される。
【0072】
(8)そして、各セラミック基板上に表面実装部品151が搭載されたマザーセラミック基板10Yを、端面接合部10dに沿ってブレイクした(
図19)。これにより、分割端面11cがその主面12aに垂直な、寸法精度、形状精度の高い、各セラミック基板(多層セラミック基板)11上に表面実装部品151が搭載された個々のモジュール部品150が得られる。
【0073】
この実施形態3の方法によれば、上記(4)のカット工程、上記(5)のプレス工程、(6)の焼成工程、(7)の搭載工程などを、個々のセラミック基板が集合した状態で一括して実施することができるため、寸法精度、形状精度の高いセラミック基板上に表面実装部品が搭載されたモジュール部品を効率よく製造することができる。
【0074】
なお、上記実施形態1および2では多層セラミック基板を例にとって説明したが、本発明は単層のセラミック基板を製造する場合にも適用することが可能である。
【0075】
また、上記実施形態3では多層セラミック基板上に表面実装型電子部品が搭載されたモジュール部品を例にとって説明したが、本発明は、単層のセラミック基板上に表面実装型電子部品が搭載されたモジュール部品を製造する場合にも適用することが可能である。
【0076】
なお、本発明は、さらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、製造するセラミック基板の寸法や形状、製造工程で未焼成マザーセラミック基板をカットする場合のカット方法やそれに用いる装置の種類、プレス工程において用いるプレス方法や、焼結済みのマザーセラミック基板をブレイクする方法などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。