特許第5971449号(P5971449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5971449
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ケーシングのシール構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   F16J15/08 H
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-520111(P2016-520111)
(86)(22)【出願日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】JP2015079158
【審査請求日】2016年4月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-231082(P2014-231082)
(32)【優先日】2014年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(72)【発明者】
【氏名】相原 主弥
(72)【発明者】
【氏名】中岡 真哉
(72)【発明者】
【氏名】丹治 功
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−30248(JP,A)
【文献】 特開2001−107884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08
F04D 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が仕切り壁によって上流室及び下流室に仕切られると共に、前記上流室及び前記下流室の上部がそれぞれ開放されているケースと、
前記ケースの上部に取り付けられることにより、内部に前記上流室と前記下流室とを連通させる流体の流路を形成するカバーと、
前記ケースと前記カバーとの突き合わせ面に設けられ、前記ケース側に配置される第1ガスケット、前記カバー側に配置される第2ガスケット及び前記第1ガスケットと前記第2ガスケットの間に配置されるセンタープレートが積層された積層ガスケットとを備え、
前記第1ガスケット及び前記第2ガスケットは、前記突き合わせ面に沿って形成されたビードを有し、
前記第1ガスケット及び前記センタープレートは、前記仕切り壁に沿うように設けられた仕切り壁シール部をそれぞれ有すると共に、前記第1ガスケットの前記仕切り壁シール部にはビードを有してなるケーシングのシール構造であって、
前記カバーに、前記センタープレートの前記仕切り壁シール部に対して当接力を作用させる当接部を形成したことを特徴とするケーシングのシール構造。
【請求項2】
前記当接部は、前記カバーの内底面から前記仕切り壁に向けて突出する突起部によって構成されていることを特徴とする請求項1記載のケーシングのシール構造。
【請求項3】
前記当接部は、前記仕切り壁の上端面に対面するように該仕切り壁に沿って前記カバーに設けられた梁部によって構成され、
前記梁部と前記カバーの内底面との間に、前記流体の流路となる流路穴が形成されていることを特徴とする請求項1記載のケーシングのシール構造。
【請求項4】
前記第2のガスケットは、前記仕切り壁に沿うように形成された仕切り壁シール部を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のケーシングのシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケーシングのシール構造に関し、詳しくは、内部に仕切り壁を有するケーシングを積層ガスケットによってシールするようにしたケーシングのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車等の水冷エンジンの冷却水を循環させるウォーターポンプは、ケースとカバーとが突き合わされることによって形成されたケーシング(ボディともいう。)の内部空間にインペラーが配置され、インペラーを回転させることにより、ラジエーターからケーシング内に冷却水を吸引し、ケーシング外のエンジンへ向けて流出させるようになっている(特許文献1)。
【0003】
ケーシングとしては、図6図7に示すように、ケース100側の内部に、ラジエーターにつながる上流室101と、インペラーが配置される下流室102とに仕切る仕切り壁103が設けられたものがある。仕切り壁103は、インペラー400の回転によって径方向に放射される冷却水が、上流室101側から吸引される冷却水の流れを妨げることのないように、インペラー400の先端とほぼ同一高さとなるように形成されている。なお、図6ではウォーターポンプの構成要素を図示省略した。
【0004】
そして、このケース100の上部開口を塞ぐようにカバー200が取り付けられることにより、カバー200の内部でケース100側の上流室101と下流室102とを連通させ、インペラーの回転によってケーシング内の上流室101に吸引された冷却水を、カバー200の内部を通って仕切り壁103を越えて下流室102に流入させ、該下流室102からケーシング外に流出させるようになっている。
【0005】
ケース100とカバー200との間を水密状にシールするために、積層ガスケット300が用いられている。積層ガスケット300は、ビードを有する2枚のガスケット301、301と、これらガスケット301、301の間に、金属薄板からなるセンタープレート302が積層されている。積層ガスケット300は、ケース100とカバー200とが図示しないボルトで締結されることによってビードが圧縮され、そのときのビードの反力でケース100とカバー200との間をシールするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−158589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の積層ガスケット300は、ケース100側に配置されるガスケット301とセンタープレート302に、仕切り壁103に沿うようにそれぞれ仕切り壁シール部301a、302aが形成されている。図6には図示していないが、ガスケット301の仕切り壁シール部301aにもビードが形成されている。
【0008】
しかし、上記のケーシングでは、ケース100の仕切り壁103に対応するカバー200側の部位は冷却水の流路となっているため、構造上、ケース100とカバー200とを突き合わせても、ガスケット301の仕切り壁シール部301aに形成されたビードを圧縮することができない。
【0009】
この場合、カバー200の代わりにセンタープレート302の仕切り壁シール部302aによって仕切り壁103上に配置されるガスケット301の仕切り壁シール部301aのビードを圧縮する必要があるが、一般にセンタープレート302は薄板状で剛性が低いため、ビードの反力によって容易に変形してしまい、仕切り壁シール部301aのビードを十分に圧縮することはできない。
【0010】
また、このようなケーシングを有するウォーターポンプの冷却水の流れは、図8に示すように、上流室101から下流室102に向かって流れる。このとき、インペラー400の回転によって、該インペラー400が配置されている下流室102側が正圧、上流室101側が負圧となる。ここで、積層ガスケット300を挟んでケース100とカバー200とがボルトによって締め付けられると、センタープレート302の仕切り壁シール部302aがガスケット301の仕切り壁シール部301aのビードの反力によって上方に撓み、両仕切り壁シール部301a、302aの間に隙間が形成されてしまう。そして、ここにインペラー400の回転よって径方向に放射された正圧の冷却水が入り込むことにより、上流室101側への漏れ流路Aが形成されてしまうおそれもある。
【0011】
この対策のため、センタープレート302の厚みを、ガスケット301の仕切り壁シール部301aのビードを圧縮できる程度の剛性を持つように十分に厚く形成することも考えられるが、軽量化及び低コスト化を図る観点からは現実的ではない。
【0012】
そこで、本発明は、センタープレートを厚くすることなく、仕切り壁上のセンタープレートの変形を抑制でき、仕切り壁上のガスケットのビードの圧縮量を確保できるようにしたケーシングのシール構造を提供することを課題とする。
【0013】
本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0015】
1.内部が仕切り壁によって上流室及び下流室に仕切られると共に、前記上流室及び前記下流室の上部がそれぞれ開放されているケースと、
前記ケースの上部に取り付けられることにより、内部に前記上流室と前記下流室とを連通させる流体の流路を形成するカバーと、
前記ケースと前記カバーとの突き合わせ面に設けられ、前記ケース側に配置される第1ガスケット、前記カバー側に配置される第2ガスケット及び前記第1ガスケットと前記第2ガスケットの間に配置されるセンタープレートが積層された積層ガスケットとを備え、
前記第1ガスケット及び前記第2ガスケットは、前記突き合わせ面に沿って形成されたビードを有し、
前記第1ガスケット及び前記センタープレートは、前記仕切り壁に沿うように設けられた仕切り壁シール部をそれぞれ有すると共に、前記第1ガスケットの前記仕切り壁シール部にはビードを有してなるケーシングのシール構造であって、
前記カバーに、前記センタープレートの前記仕切り壁シール部に対して当接力を作用させる当接部を形成したことを特徴とするケーシングのシール構造。
2.前記当接部は、前記カバーの内底面から前記仕切り壁に向けて突出する突起部によって構成されていることを特徴とする前記1記載のケーシングのシール構造。
3.前記当接部は、前記仕切り壁の上端面に対面するように該仕切り壁に沿って前記カバーに設けられた梁部によって構成され、
前記梁部と前記カバーの内底面との間に、前記流体の流路となる流路穴が形成されていることを特徴とする前記1記載のケーシングのシール構造。
4.前記第2のガスケットは、前記仕切り壁に沿うように形成された仕切り壁シール部を有することを特徴とする前記1、2又は3記載のケーシングのシール構造。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、センタープレートを厚くすることなく、仕切り壁上のセンタープレートの変形を抑制でき、仕切り壁上のガスケットのビードの圧縮量を確保できるケーシングのシール構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るケーシングのシール構造の一実施形態を示す分解斜視図
図2】(a)は、カバー、積層ガスケット及びケースをボルト締結した状態のケーシングを図1中の(iia)-(iia)線に沿って切断した断面図、(b)は、カバー、積層ガスケット及びケースをボルト締結した状態のケーシングを図1中の(iib)-(iib)線に沿って切断した断面図
図3】本発明に係るケーシングのシール構造の他の実施形態を示す分解斜視図
図4】カバー、積層ガスケット及びケースをボルト締結した状態のケーシングを図3中の(iv)-(iv)線に沿って切断した断面図
図5図3における第2ガスケットの仕切り壁シール部にビードを形成した例を示し、カバー、積層ガスケット及びケースをボルト締結した状態のケーシングを図3中の(iv)-(iv)線に沿って切断した断面図
図6】従来のケーシングのシール構造を説明する分解斜視図
図7】カバー、積層ガスケット及びケースをボルト締結した状態のケーシングを図6中の(vii)-(vii)線に沿って切断した断面図
図8】従来のウォーターポンプの冷却水の流れを説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明に係るケーシングのシール構造の一実施形態を示す分解斜視図、図2(a)は、カバー、積層ガスケット及びケースをボルト締結した状態のケーシングを図1中の(iia)-(iia)線に沿って切断した断面図、図2(b)は、カバー、積層ガスケット及びケースをボルト締結した状態のケーシングを図1中の(iib)-(iib)線に沿って切断した断面図である。
【0020】
なお、以下の各実施形態は、ウォーターポンプ用ケーシングのシール構造について説明する。また、各図面において、ウォーターポンプは公知の構成であるため、本発明の明瞭化を図るために、ウォーターポンプの構成要素を図示省略し、ケーシングのシール構造に関係する部位のみを図示している。
【0021】
ケーシング1は、ケース2とカバー3とを有し、ケース2の上部開口を塞ぐようにカバー3が取り付けられることにより、内部に冷却水の流路を構成している。なお、ケース2及びカバー3は、それぞれ独立した構成部品として図示されているが、例えばエンジンまたはそれに関連する部品の一部として構成されるものであってもよい。
【0022】
ケース2は、内底面21の周縁から立設された側周壁22の内側に、ラジエーターと連通する上流室23及びエンジンと連通する下流室24を有している。上流室23は、ラジエーターから冷却水を流入させる流入口(図示せず)を有している。また、下流室24は、インペラーと該インペラーの回転によってエンジンに冷却水を流出させる流出口(いずれも図示せず)とを有している。
【0023】
上流室23と下流室24は、ケース2の内部が、対向する側周壁22間に亘って設けられた仕切り壁25によって2つの領域に仕切られることによって形成されている。仕切り壁25の上端面25aは側周壁22の端面と同一高さとなるように形成されている。また、ケース2の側周壁22の端面は、カバー3との突き合わせ面22aとなっている。これら上流室23と下流室24は、カバー3が設けられるケース2の上部に向けて開放されている。
【0024】
なお、下流室24内に配置される図示しないインペラー(図8のインペラー400を参照)の先端の高さは、該インペラーの回転によって径方向に放射される冷却水が、上流室23側から吸引される冷却水の流れを妨げることのないように、仕切り壁25の上端面25aの高さとほぼ同一高さとなるように配置される。
【0025】
カバー3は、ケース2の側周壁22に合致するように内底面31の周縁から立設された側周壁32を有している。この側周壁32の端面はケース2の側周壁22の突き合わせ面22aとの突き合わせ面32aとなっており、該側周壁22の突き合わせ面22aと突き合わされることにより、ケース2の上部開口を塞ぎ、仕切り壁25によって仕切られたケース2の上流室23と下流室24とをカバー3の内部空間によって連通させるようになっている。
【0026】
ケース2とカバー3の突き合わせ面22a、32aの間に積層ガスケット4が配置されている。積層ガスケット4は、第1ガスケット41及び第2ガスケット42と、センタープレート43とからなり、ケース2とカバー3との突き合わせ面22a、32aに沿ってケーシング1の内部空間を囲繞する形状に形成されている。センタープレート43は第1ガスケット41と第2ガスケット42との間に配置されている。
【0027】
第1ガスケット41と第2ガスケット42は、例えばステンレス、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合板等からなる薄い金属基板の表面に弾性体がコーティングされることによって形成されている。弾性体としては、例えばニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコンゴムのうちの少なくとも一種を含む合成ゴム(発泡ゴムを含む。)を使用することができる。
【0028】
また、センタープレート43は、上記金属基板と同様の金属を使用した薄板によって形成されている。
【0029】
積層ガスケット4のうちのケース2側に配置される第1ガスケット41とセンタープレート43には、それぞれ仕切り壁シール部41a、43aが形成されている。仕切り壁シール部41a、43aは、第1ガスケット41及びセンタープレート43においてケース2とカバー3との突き合わせ面22a、32aに沿うように形成された部位を、ケース2の仕切り壁25に沿って橋渡しするように形成されている。従って、積層ガスケット4がケース2とカバー3との間に配置された際、仕切り壁シール部41a、43aは、仕切り壁25の上端面25a上に重なるように配置される。
【0030】
第1ガスケット41及び第2ガスケット42には、図1には図示しないが、それぞれケース2とカバー3の突き合わせ面22a、32aに沿ってビード41b、42bが形成されている。第1ガスケット41のビード41bは、仕切り壁シール部41aにも形成され、突き合わせ面22a、32aに沿って形成されたビード41bとつながっている。
【0031】
そして、積層ガスケット4は、ケース2とカバー3の突き合わせ面22a、32a同士が突き合わされた後、ボルト孔26、33及び積層ガスケット4のボルト孔41c、42c、43cに亘って嵌挿された図示しないボルトによってケース2とカバー3が締結されることにより、突き合わせ面22a、32a間に挟まれているビード41b、42bが圧縮され、そのときのビード41b、42bの反力でケース2とカバー3との間を水密状にシールする。
【0032】
カバー3の内部には、本発明における当接部の一例である突起部34が形成されている。突起部34は、カバー3の内底面31におけるケース2の仕切り壁25に対応する部位から該仕切り壁25に向けて突出するように形成されている。本実施形態に示す突起部34は棒状に突出するように形成されているが、具体的な形状は特に問わない。この突起部34は、カバー3の内底面31から突出していても、側周壁32との間には隙間が形成されており、突起部34がカバー3の内部を2つの空間に仕切ることはないため、突起部34の周囲と側周壁32との間には冷却水の流路が確保されている。このため、突起部34がケーシング1内の上流室23からカバー3の内部を経由して下流室24に向かう冷却水の流れを妨げることはない。
【0033】
図2に示すように、突起部34の突出高さh1は、カバー3の側周壁32の内底面31からの高さh2よりも高く形成されている。従って、突起部34の先端面34aは、カバー3の突き合わせ面32aよりもケース2側に向けて突出した位置に配置されている。具体的には、突起部34の高さと側周壁32の高さとの差(h1−h2)が、積層ガスケット4の第2ガスケット42の非圧縮時のビード42bを含む厚さと同一又はそれよりも僅かに大きくなるように形成されている。
【0034】
これにより、ケース2とカバー3とがボルトによって締結された際、突起部34の先端面34aがセンタープレート43の仕切り壁シール部43a上に当接し、ボルト締結による積層ガスケット4のビード41b、42bの圧縮に伴って、該仕切り壁シール部43aを第1ガスケット41の仕切り壁シール部41aに向けて圧接するように当接力を作用させる。
【0035】
このため、センタープレート43を厚くしなくても、センタープレート43の仕切り壁シール部43aが、第1ガスケット41の仕切り壁シール部41a上のビード41bの反力や循環時の冷却水の圧力によって撓み変形してしまうことを抑制することができる。
【0036】
また、センタープレート43の仕切り壁シール部43aを介して、第1ガスケット41の仕切り壁シール部41aのビード41bにも、突起部34による十分な当接力が作用するため、該仕切り壁シール部41aのビード41bも、仕切り壁25との間で他の部位のビード41bと同様の十分な圧縮量を確保でき、仕切り壁25の上端面25aに対して良好なシール性を発揮することができる。
【0037】
突起部34は、その先端面34aでセンタープレート43の仕切り壁シール部43aの長さ方向中央部に対して当接するように配置されている。仕切り壁シール部43aの長さ方向中央部は最も変形量が大きくなる部位であるため、突起部34の先端面34aでこの部位を当接することにより、仕切り壁シール部43aの撓み変形を効率良く抑制することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、カバー3の内部に突起部34を1つだけ形成した例を挙げたが、カバー3内の冷却水の流路の大きさや仕切り壁25の長さ、幅に応じて2つ以上の突起部34を形成するようにしてもよい。
【0039】
図3は、本発明に係るケーシングのシール構造の他の実施形態を示す分解斜視図、図4は、カバー、積層ガスケット及びケースをボルト締結した状態のケーシングを図3中の(iv)-(iv)線に沿って切断した断面図である。図1図2と同一符号の部位は同一構成の部位を示しているため、それらの説明は図1図2の説明を援用し、ここでは省略する。
【0040】
本実施形態では、積層ガスケット4のうちのカバー3側に配置される第2ガスケット42にも、ケース2の仕切り壁25に沿うように仕切り壁シール部42aが形成されている。第1ガスケット41及び第2ガスケット42には、図3には図示しないが、それぞれ全周に亘ってビード41b、42bが形成されている。第1ガスケット41のビード41bは、仕切り壁シール部41aにも形成されている。但し、第2ガスケットの仕切り壁シール部42aにはビードは形成されていない。
【0041】
カバー3の内部には、本発明における当接部の他の一例である梁部35が形成されている。梁部35は、カバー3の側周壁32の内面においてケース2の仕切り壁25を挟むように対向配置される部位に亘って、該仕切り壁25の上端面25aに対面するように該仕切り壁25に沿って橋渡し状に形成されている。
【0042】
梁部35は、カバー3の内底面31までは達しておらず、該カバー3の内底面31との間に冷却水の流路となる流路穴36が形成されている。従って、ケーシング1の内部において、上流室23からカバー3の内部を経由して下流室24に至る冷却水の流れが妨げられることはない。なお、流路穴36の具体的な形状は、必要量の冷却水が流れる程度に、梁部35を境にしたカバー3の内部が該流路穴36によって連通していればよく、本実施形態に示す形状に限定されず、適宜の形状を選択することができる。
【0043】
また、梁部35の端面35aは、カバー3の側周壁32の突き合わせ面32aと同一高さとなるように形成されている。
【0044】
これにより、ケース2とカバー3とがボルトによって締結された際、積層ガスケット4の各仕切り壁シール部41a、42a、43aは、仕切り壁25の上端面25aと梁部35の端面35aとの間に挟まれた状態となる。そして、ボルト締結による積層ガスケット4のビード41b、42bの圧縮に伴って、梁部35の端面35aは第2ガスケット42の仕切り壁シール部42aに徐々に近づき、やがて当接し、仕切り壁シール部42aを介してセンタープレート43の仕切り壁シール部43aに当接力を作用させる。
【0045】
これにより、センタープレート43の仕切り壁シール部43aは、梁部35の端面35aによってカバー3側から押さえつけられた状態となる。このため、梁部35をカバー3に設けることによっても、センタープレート43を厚くすることなく、該センタープレート43の仕切り壁シール部43aが、第1ガスケット41の仕切り壁シール部43a上のビード41bの反力や循環時の冷却水の圧力によって撓み変形してしまうことを抑制することができる。
【0046】
また、第2ガスケット42の仕切り壁シール部42a及びセンタープレート43の仕切り壁シール部43aを介して、第1ガスケット41の仕切り壁シール部41aのビード41bにも、梁部35よる当接力を作用させることができるため、該仕切り壁シール部41aのビード41bの圧縮量も確保でき、仕切り壁25の上端面25aに対するシール性を確保することができる。
【0047】
さらに、梁部35の端面35aが面接触するので、センタープレート43の仕切り壁シール部43aの全体に亘って当接力を作用させて該仕切り壁シール部43aの撓み変形を効果的に抑制することができる。
【0048】
本実施形態では、第2ガスケット42の仕切り壁シール部42aにビードを形成しない例を挙げたが、図5に示すように、この仕切り壁シール部42aにもビード42bを形成することにより、梁部35と仕切り壁25との間に、第1ガスケット41の仕切り壁シール部41a上のビード41bと第2ガスケット42の仕切り壁シール部42a上のビード42bとを圧縮してさらに大きな反力が得られるようにしてもよい。この場合は、梁部35によってセンタープレート43の仕切り壁シール部43aの全体に亘ってビード41b、42bを押圧でき、センタープレート43の仕切り壁シール部43aの撓み変形抑制効果とビード41b、42bの反力によるシール性維持効果を最も高くすることができる。
【0049】
また、本実施形態において、第2ガスケット42は、図1図2に示した第2ガスケット42と同様に仕切り壁シール部42aを設けない態様とすることもできる。この場合、センタープレート43の仕切り壁シール部43aに梁部35による当接力を作用させることができるように、梁部35の端面35aの位置を、突起部34と同様に、カバー3の側周壁32の突き合わせ面32aよりもケース2側に向けて突出した位置に配置させるようにすればよい。
【0050】
なお、図1図2に示した積層ガスケット4の第2ガスケット42にも、本実施形態に示した第2ガスケット42と同様の仕切り壁シール部42aを形成してもよいことはもちろんである。
【0051】
また、以上の各実施形態は、ウォーターポンプ用ケーシングのシール構造について説明したが、本発明に係るケーシングのシール構造はウォーターポンプ用に何ら限定されない。
【符号の説明】
【0052】
1:ケーシング
2:ケース
21:内底面
22:側周壁
22a:突き合わせ面
23:上流室
24:下流室
25:仕切り壁
25a:上端面
26:ボルト孔
3:カバー
31:内底面
32:側周壁
32a:突き合わせ面
33:ボルト孔
34:突起部(当接部)
34a:先端面
35:梁部(当接部)
35a:端面
36:流路穴
4:積層ガスケット
41:第1ガスケット
41a:仕切り壁シール部
41b:ビード
41c:ボルト孔
42:第2ガスケット
42b:ビード
42c:ボルト孔
42a:仕切り壁シール部
43:センタープレート
43a:仕切り壁シール部
43c:ボルト孔
【要約】
本発明は、積層ガスケットのセンタープレートを厚くせずに、仕切り壁上のセンタープレートの変形を抑制でき、仕切り壁上のビードの圧縮量を確保できるケーシングのシール構造を提供することを目的とし、その目的は、内部が仕切り壁25によって上流室23及び下流室24に仕切られたケース2と、内部に上流室23と下流室24とを連通させる流体の流路を形成するカバー3と、ケース2とカバー3との突き合わせ面22a,32aに設けられ、第1ガスケット41、センタープレート43、第2ガスケット42が積層された積層ガスケット4とを備え、第1ガスケット41及び第2ガスケット42は突き合わせ面22a,32aに沿うビード41b,42bを有し、第1ガスケット41及びセンタープレート43は仕切り壁25に沿う仕切り壁シール部41a,43aを有し、第1ガスケット41の仕切り壁シール部41aはビード41bを有し、カバー3に、センタープレート43の仕切り壁シール部43aに対して当接力を作用させる当接部34を形成することによって解決される。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8