特許第5971462号(P5971462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5971462
(24)【登録日】2016年7月22日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】アクティブソーナー装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/62 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   G01S7/62 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-70720(P2012-70720)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-205031(P2013-205031A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】姫野 真宏
【審査官】 中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−249783(JP,A)
【文献】 特開2001−272459(JP,A)
【文献】 特開2004−101251(JP,A)
【文献】 特開平11−030662(JP,A)
【文献】 特開平05−126941(JP,A)
【文献】 特開昭59−145981(JP,A)
【文献】 特表2007−517208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52− 7/64
G01S15/00−15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に音波を送信し、水中の目標によって反射されたエコーと、エコー以外の残響とを含む、水中からの音波を受信して探索受信信号として出力するソーナー送受波部と、
前記ソーナー送受波部の探索受信信号に基づいて、目標までの距離と方位とを検出する制御部と、
前記制御部が検出した目標までの距離と方位とをグラフィカルに表示する表示部とを有し、
前記制御部は、
音波を送信しないで前記ソーナー送受波部によって受信した水中からの音波を、雑音データとして保持する雑音データメモリと、
目標探索時に前記ソーナー送受波部による探索受信信号のうちのエコーを残響ならびに雑音データとレベル比較し、エコーが雑音データよりも高く、かつ、残響と同じレベルである点を近距離側の検出限界距離として算出すると共に、探索受信信号のうちの残響を雑音データとレベル比較し、残響が雑音データと同じレベルである点を遠距離側の検出限界距離として算出するレベル比較演算器とを備え、
前記表示部は、目標までの距離と方位に加え、前記レベル比較演算部が算出した前記近距離側の検出限界距離および前記遠距離側の検出限界距離によって規定される検出可能範囲をも表示することを特徴とするアクティブソーナー装置。
【請求項2】
前記ソーナー送受波部の送受信音波を周回走査するビーム整相部をさらに有し、
前記雑音データメモリは、音波を送信しないで前記ソーナー送受波部によって受信した水中からの音波を、雑音データとして全方位について保持し、
前記レベル比較演算器は、前記近距離側の検出限界距離および前記遠距離側の検出限界距離全方位について算出する請求項1に記載のアクティブソーナー装置。
【請求項3】
前記制御部は、
目標探索時に前記ソーナー送受波部による、エコーおよび残響を含む探索受信信号を保持する探索受信信号メモリと、
前記ソーナー送受波部からの信号が、探索受信信号のときは前記探索受信信号メモリに、雑音データのときは前記雑音データメモリに、データの保持先を切り替えるメモリ切替器をさらに備える請求項1または2に記載のアクティブソーナー装置。
【請求項4】
前記表示部は、目標までの距離と方位をBスコープ形式で表示する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアクティブソーナー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に音波を送信し、水中の目標によって反射された音波を受信することにより、目標の位置を算出して表示するアクティブソーナー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のアクティブソーナー装置は、例えば、特許文献1〜4に開示されている。
【0003】
アクティブソーナー装置において、その捜索効率を向上するためには、検出可能な範囲を把握することが重要である。現状、オペレーターが聴音により、検出限界距離をいわば感覚的に見出すことで検出可能範囲を把握している。即ち、図1に示されるようにオペレーターが手動でBスコープ上のカーソルで指定した任意の単一ビームチャネルの聴音を捉え、送信音波による残響をオペレーターが判別できなくなった距離を検出限界距離としてみなしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−002421号公報
【特許文献2】特開2001−272459号公報
【特許文献3】特開平11−030662号公報
【特許文献4】特開平10−300841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この聴音による検出限界距離の把握は、オペレーターに残響の有無を判別できる程度の習熟が必要であった。
【0006】
また、実際の海中の環境は方位ごとに異なるため、実用するには、全周において検出限界距離を把握しなければならない。そして、全周において検出限界距離を把握するには、オペレーターがBスコープ上で各方位毎にカーソルを合わせて検出限界距離を聴音によって推定し、その距離を記録していくという煩雑な作業が必要であった。
【0007】
それ故、本発明の課題は、自動的に、検出限界距離を検出し、それに応じた検出可能範囲を表示することができるアクティブソーナー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、水中に音波を送信し、水中の目標によって反射された音波を受信するソーナー送受波部と、前記ソーナー送受波部の探索受信信号に基づいて、目標までの距離と方位とを検出する制御部と、前記制御部が検出した目標までの距離と方位とをグラフィカルに表示する表示部とを有し、前記制御部は、音波を送信しないで前記ソーナー送受波部によって受信した水中からの音波を、雑音データとして保持する雑音データメモリと、目標探索時に前記ソーナー送受波部による探索受信信号を、雑音データとレベル比較し、探索受信信号と雑音データのレベルが同じである点を検出限界距離として算出するレベル比較演算器とを備え、前記表示部は、目標までの距離と方位に加え、前記レベル比較演算部が算出した検出限界距離に応じた検出可能範囲をも表示することを特徴とするアクティブソーナー装置が得られる。
【0009】
前記ソーナー送受波部の送受信音波を周回走査するビーム整相部をさらに有し、前記雑音データメモリは、音波を送信しないで前記ソーナー送受波部によって受信した水中からの音波を、雑音データとして全方位について保持し、前記レベル比較演算器は、目標探索時に前記ソーナー送受波部による探索受信信号を、雑音データとレベル比較し、探索受信信号と雑音データのレベルが同じである点を検出限界距離として全方位について算出してもよい。
【0010】
前記制御部は、目標探索時に前記ソーナー送受波部による探索受信信号を保持する探索受信信号メモリと、前記ソーナー送受波部からの信号が、探索受信信号のときは前記探索受信信号メモリに、雑音データのときは前記雑音データメモリに、データの保持先を切り替えるメモリ切替器をさらに備えていてもよい。
【0011】
前記表示部は、目標までの距離と方位をBスコープ形式で表示するものであってもよい。
【0012】
前記レベル比較演算器は、目標探索時に前記ソーナー送受波部による探索受信信号を、雑音データならびにエコーとレベル比較し、探索受信信号が雑音データ以上かつエコー以下である範囲を検出可能範囲として算出し、前記表示部は、目標までの距離と方位に加え、前記レベル比較演算部が算出した検出可能範囲をも表示するものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるアクティブソーナー装置は、自動的に、検出限界距離を検出し、それに応じた検出可能範囲を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】関連技術によるアクティブソーナー装置のBスコープ上の表示例を示す図である。
図2】本発明によるアクティブソーナー装置の動作を説明するための図であり、距離に応じた残響のレベルを示す図である。
図3】本発明の実施例1によるアクティブソーナー装置の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施例1によるアクティブソーナー装置のBスコープ上の表示例を示す図である。
図5】本発明の実施例1によるアクティブソーナー装置の動作を説明するための図であり、海中雑音のレベルを示す図である。
図6】本発明の実施例1によるアクティブソーナー装置におけるレベル比較演算器の動作を説明するためのフロー図である。
図7】本発明の実施例1によるアクティブソーナー装置の動作を説明するための図であり、距離に応じた残響のレベルと海中雑音のレベルとを示す図である。
図8】本発明の実施例2によるアクティブソーナー装置の動作を説明するための図であり、エコーのレベルを示す図である。
図9】本発明の実施例2によるアクティブソーナー装置の動作を説明するための図であり、距離に応じた残響のレベルとエコーのレベルとを示す図である。
図10】本発明の実施例2によるアクティブソーナー装置のBスコープ上の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によるアクティブソーナー装置は、水中に音波を送信し、水中の目標によって反射された音波を受信するソーナー送受波部と、ソーナー送受波部の探索受信信号に基づいて、目標までの距離と方位とを検出する制御部と、制御部が検出した目標までの距離と方位とをグラフィカルに表示する表示部とを有している。
【0016】
特に、本アクティブソーナー装置において、制御部は、音波を送信しないでソーナー送受波部によって受信した水中からの音波を、雑音データとして保持する雑音データメモリと、目標探索時にソーナー送受波部による探索受信信号を、雑音データとレベル比較し、探索受信信号と雑音データのレベルが同じである点を検出限界距離として算出するレベル比較演算器とを備えている。
【0017】
表示部は、目標までの距離と方位に加え、レベル比較演算部が算出した検出限界距離に応じた検出可能範囲をも表示する。
【0018】
ここで、図2に示されるように、アクティブソーナー装置がアクティブ送信した後の検出信号(探索受信信号)のレベルは、概ね遠方ほど残響の影響が減っていき、最終的にはアクティブ送信しない時の雑音レベルと同じになる。残響レベルと雑音レベルが同じになる距離を検出限界距離とし、この処理を全周のビームチャネルにおいて行う。これより得られた距離をBスコープ上に描画して繋ぐことにより、図4に示されるように方位ごとの伝搬状況の違いを考慮した検出限界ラインを境界とした検出可能範囲を全周に亘り視覚的に表すことができる。
【0019】
上記構成により、本アクティブソーナー装置は、自動的に、検出限界距離を検出し、それに応じた検出可能範囲を表示することができる。より具体的には、本アクティブソーナー装置は、次の効果を奏する。
【0020】
第1の効果は、熟練したオペレーターでなくとも容易にアクティブソーナーの検出限界距離を知ることができることである。その理由は、オペレーターが手動で聴音を取得して距離を決めていた従来の方法とは異なり、残響が聞こえない範囲を自動で読み取り描画するためである。
【0021】
第2の効果は、方位ごとの環境状況の違いを考慮して、全方位に亘り描画できることである。その理由は、単一ビームの聴音で得られた検出限界距離を把握していた従来の方法とは異なり、全方位分のビームで同時に検出限界点を抽出するためである。
【0022】
第3の効果は、Bスコープ上に表示される輝点に対し、目標と誤目標の判断材料を提供できることである。その理由は、この発明により示された検出限界ラインよりも遠方からはアクティブ送信の反響音が得られることは少なく、表示された目標が誤目標である確率が高いと判断できるようになるためである。
【0023】
第4の効果は、目標を保続探知するための自艦の移動のリコメンドをする情報を与えられることである。その理由は、反響音が得られない範囲が既知であることにより、その範囲に目標が入ってしまわないような自艦移動の提言ができるためである。
【0024】
第5の効果は、効率的な捜索レンジ選択の判断材料に利用できることである。その理由は、反響音が得られない範囲が既知であることにより、その範囲までアクティブ送信する必要がないと判断できるようになるためである。
【0025】
以下、図面を参照して、本発明によるアクティブソーナー装置のより具体的な実施例を説明する。
【実施例1】
【0026】
図3を参照すると、本発明の実施例1によるアクティブソーナー装置10は、ソーナー送受波部110と、ビーム整相部120と、制御部130と、表示部140とを有している。
【0027】
ソーナー送受波部110は、水中に音波を送信し、水中の目標によって反射された音波を受信する。ビーム整相部120は、ソーナー送受波部110の送受信音波を周回走査する。
【0028】
制御部130は、ソーナー送受波部110の探索受信信号に基づいて、目標までの距離と方位とを検出する。表示部140は、制御部130が検出した目標までの距離と方位とをグラフィカルにBスコープ形式で表示する。制御部130は、メモリ切替器131と、探索受信信号メモリ132と、雑音データメモリ133と、レベル比較演算器134とを備えている。
【0029】
メモリ切替器131は、ソーナー送受波部110からの信号が、探索受信信号のときは探索受信信号メモリ132に、雑音データのときは雑音データメモリ133に、データの保持先を切り替える。
【0030】
探索受信信号メモリ132は、目標探索時にソーナー送受波部110による探索受信信号を保持する。
【0031】
雑音データメモリ133は、音波を送信しないでソーナー送受波部110によって受信した水中からの音波を、雑音データとして保持する。
【0032】
レベル比較演算器134は、目標探索時にソーナー送受波部110による探索受信信号を、雑音データとレベル比較し、探索受信信号と雑音データのレベルが同じである点を検出限界距離として算出する。
【0033】
表示部140は、目標までの距離と方位に加え、レベル比較演算器134が算出した検出限界距離に応じた検出可能範囲をも表示する。
【0034】
次に、アクティブソーナー装置の動作を説明する。
【0035】
まず、アクティブ送信していない状態、即ち、ソーナー送受波部110から音波を送信せずに、ソーナー送受波部110を経て、ビーム整相部120において各方位毎にビームを向けて受信する。受信された雑音を、メモリ切替器131の制御により雑音データメモリ133に出力し、図5に示されるように雑音レベルを平均したデータとして格納しておく。このとき、ソーナー送受波部110による探索受信信号は、メモリ切替器131により、雑音データメモリ133に出力されるように制御される。つまり、反響音の成分を含まない雑音だけの情報を抽出し格納しておく。
【0036】
次いで、目標捜索時において、アクティブ送信、即ち、ソーナー送受波部110から音波を送信する。この際のアクティブソーナーでのビーム探索受信信号は、送信による残響と雑音が混在した状態である。探索受信信号は、メモリ切替器131の制御により探索受信信号メモリに出力されて格納される。このとき、ソーナー送受波部110による探索受信信号は、メモリ切替器131により、探索受信信号メモリ132に出力されるように制御される。
【0037】
次に、レベル比較演算器での動作について、さらに図6のフロー図を参照して説明する。
【0038】
レベル比較演算器134は、先の手順において探索受信信号メモリ132に保持された探索受信信号データを取得し(ステップS10)、同じく先の手順において雑音データメモリ133に保持された雑音データのレベル比較を行う(ステップS20、S30)。
【0039】
即ち、探索受信信号(残響)と雑音レベルデータとレベル比較を行う。図7に示されるように、比較したレベルが同じであれば、残響が無くなった、即ち、反響音の判別が困難になるものとし、その時の距離を検出限界距離として算出し、表示部140に対して出力する(ステップS40)。検出限界距離の算出は、全方位分のデータで行う。
【0040】
表示部140では、図4に示されるように、各方位のビームにおける検出限界距離を結んだラインをBスコープ上に描画する。図示の例では、検出限界距離ラインよりも下側が検出可能範囲を表している。
【実施例2】
【0041】
本発明の実施例2は、検出可能範囲を求める方法が、検出限界距離に加えて、さらにエコーレベルにも基づく点が、実施例1と異なる。このため、実施例1と同一または同様の部分については、実施例1における説明と参照図面を援用することとし、詳細な説明は省略する。
【0042】
ところで、アクティブソーナー装置は、エコーレベルが残響レベルを上回るときに、反響音を捉えることができる。エコーレベルは海中における伝搬損失による影響で、概ね図8に示されるように距離に反比例して小さくなっていく。
【0043】
このことを本発明に応用すると、図9に示されるように、検出可能範囲を設定することができるようになる。尚、図9において、検出可能範囲の図中右端は、実施例1と同様の処理で算出した検出限界距離である。
【0044】
これをBスコープに描画すると、図10に示されるように、より詳細な検出可能範囲を表示することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明した実施例に限定されることなく、本発明は、特許請求の範囲に記載された技術範囲内であれば、種々の変形が可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0046】
110 ソーナー送受波部
120 ビーム整相部
131 メモリ切替器
130 制御部
132 探索受信信号メモリ
133 雑音データメモリ
134 レベル比較演算器
140 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10